説明

型、型の製造方法、および、型の製造装置

【課題】優れた利便性を有する型を提供する。
【解決手段】型10は、被加工体50に凹凸模様11,12を形成するための型である。型は、第1表面18aと、前記第1表面とは反対側の第2表面18bと、を含むシート状の基材18と、前記基材の前記第1表面上に積層された第1の被覆層20と、前記基材の前記第2表面上に積層された第2の被覆層30と、を備える。前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様11が、前記第1の被覆層の側の表面10aから形成されている。前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様12が、前記第2の被覆層の側の表面10bから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた利便性を有する型に関する。また、本発明は、優れた利便性を有する型の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合皮製品、化粧シート、内装材等に用いられるシート状部材(被加工体の一例)は、離型紙と呼ばれる型(型紙)を用い、離型紙に形成された凹凸模様を転写されることによって製造され得る。一般的に、離型紙は、基材および基材上に積層された樹脂層を有する原反に対して樹脂層側の表面からエンボス加工を施し、原反に凹凸模様を形成することによって、作製され得る(例えば、特許文献1)。作成された離型紙は、一種類の凹凸模様が形成された一つの型面を有するようになる。
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の概要】
【0003】
ところで、一枚の離型紙が型面を二面有していれば、離型紙の使い勝手を格段に向上させることができる。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0004】
本発明による型は、被加工体に凹凸模様を形成するための型であって、第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、を含むシート状の基材と、前記基材の前記第1表面上に積層された第1の被覆層と、前記基材の前記第2表面上に積層された第2の被覆層と、を備え、前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様が、前記第1の被覆層の側の表面から形成され、前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様が、前記第2の被覆層の側の表面から形成されていることを特徴とする。
【0005】
本発明による型において、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層は、それぞれ、樹脂からなる単一の層として形成されていてもよい。
【0006】
また、本発明による型において、前記第1の凹凸模様および前記第2の凹凸模様は互いに異なる模様であるようにしてもよい。
【0007】
さらに、本発明による型において、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、金属からなる金属層を含んでいてもよい。このような本発明による型において、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、前記金属層の前記基材に対面する側とは反対の側に設けられ、シリコーンを含有する表面層をさらに含むようにしてもよい。ここで、前記表面層は、シリコーンを含有する硬化型の樹脂からなるようにしてもよい。また、このような本発明による型において、前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、前記金属層の前記基材に対面する側とは反対側の表面上に積層された層であって、硬化型樹脂からなる硬化型樹脂層をさらに含むようにしてもよい。
【0008】
本発明による型の製造方法は、上述したいずれかの型を製造するための製造方法であって、第1表面および前記第1表面とは反対側の第2表面を含むシート状の基材と、前記基材の前記第1表面上に積層された第1の被覆層と、前記基材の前記第2表面上に積層された第2の被覆層と、を有する原反を準備する工程と、前記原反の前記第1の被覆層に第1のエンボス型を押し当て、前記第1の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様を前記原反に形成するとともに、前記原反の前記第2の被覆層に第2のエンボス型を押し当て、前記第2の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様を前記原反に形成する工程と、を備え、前記第1の凹凸模様および前記第2の凹凸模様を形成する工程において、前記第1のエンボス型および前記第2のエンボス型は、前記原反を間に挟んで対向する位置に配置され、互いに向けて押圧されることを特徴とする。
【0009】
本発明による型の製造装置は、上述したいずれかの型を製造するための製造装置であって、前記原反の前記第1の被覆層に当接し、前記第1の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様を前記原反に形成する第1のエンボス型と、前記原反の前記第2の被覆層に当接し、前記第2の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様を前記原反に形成する第2のエンボス型と、を備え、前記第1のエンボス型および前記第2のエンボス型は、前記原反を間に挟んで対向する位置に配置され、互いに向けて押圧されるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
以上のように、本発明による型は、一方の面側に形成された第1の凹凸模様と、他方の面側に形成された第2の凹凸模様と、を含んでいる。すなわち、型は、一方の面および他方の面のそれぞれに型面を有しており、これにより、型は優れた利便性を有するようになる。本発明による型の製造方法および製造装置によれば、優れた利便性を有する型を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0012】
図1乃至図4は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は離型紙(型)を示す断面図であり、図2は離型紙を用いた被加工体の作製方法を説明するための図であり、図3は原反の作製方法および作製装置を説明するための図であり、図4はエンボス加工の加工方法および加工装置を説明するための図である。
【0013】
まず、主に図1および図2を参照しながら、離型紙(型)10について説明する。
【0014】
図1に示すように、離型紙10は、第1表面18aおよび第1表面18aとは反対側の第2表面18bとを含むシート状の基材18と、基材18の第1表面18a上に積層された第1の被覆層20と、基材18の第2表面18b上に積層された第2の被覆層30と、を備えている。そして、離型紙10は、第1の被覆層20によって画定される一方の表面10aと、第2の被覆層30によって画定される他方の表面10bと、を含むシート状の部材として構成されている。一方の表面10aの側には、凹部11bと凸部11aとを有する第1の凹凸模様11が形成されている。これにより、後述するように、一方の表面10aが第1の型面として機能するようになる。また、他方の表面10bの側には、凹部12bと凸部12aとを有する第2の凹凸模様12が形成されている。これにより、後述するように、他方の表面10bが第2の型面として機能するようになる。
【0015】
基材18は、例えば、紙、より具体的には、80g/m2〜200g/m2程度の坪量を有したクラフト紙から構成され得る。基材18の厚みは、数百μm、より具体的には250μm〜500μm程度とすることができる。
【0016】
本実施の形態において、第1の被覆層20および第2の被覆層30は、それぞれ、樹脂からなる単一の層として形成されている。第1の被覆層20および第2の被覆層30を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン系樹脂等、離型紙に用いられ得る樹脂として既知な種々の樹脂を用いることができる。第1の被覆層20の厚みおよび第2の被覆層30の厚みは、70μm〜140μm程度とすることができる。
【0017】
図2に示すように、このような離型紙10は、一方の表面10aまたは他方の表面10bを型面として用いることにより、ビニールレザーや壁紙等のシート状部材(被加工体の一例)50を作製するための型紙として機能する。図2には、一方の表面10aを型面として用い、シート状部材50を作製する例が示されている。この例では、まず、離型紙10の第1の被覆層20の側の表面10aを熱硬化性樹脂等からなる塗料でコーティングし、さらに基布53をラミネートする。また、離型紙10の第2の被覆層30の側の表面10bに、ゴム硬度の低い押さえ板57を当接させる。その後、押さえ板57と基布53とを互いに向けて押圧しながら塗料を硬化させ、塗料からなる塗料層52を形成する。このとき、押さえ板57のゴム硬度を適切に設定しておけば、図2に示すように、押さえ板57が、離型紙10の第2の被覆層30の側の表面10bに形成された第2の凹凸模様12に追従して変形し、第2の凹凸模様12を変形させてしまうことを防止することができる。
【0018】
塗料層52が形成された後に、基布53とともに塗料層52を離型紙10から剥離させる。これにより、基布53と塗料層52とを有したシート状部材50を得ることができる(図2参照)。このとき、塗料層52に当接する第1の被覆層20に用いられる樹脂材料を適切に選択しておくことにより、第1の被覆層20が十分な剥離性を有するようになる。これにより、シート状部材50の離型紙10からの離型が促進され、塗料層52を破壊してしまうことなく表面層23から引き離すことができる。
【0019】
このようにして得られたシート状部材50の塗料層52には、離型紙10の第1の被覆層20の側の表面10aに形成された第1の凹凸模様11が転写されており、転写された凹凸模様51により、シート状部材50の意匠性を向上させている。
【0020】
なお、一枚の離型紙10が繰り返し用いられ、複数枚のシート状部材50を作製することができる。また、離型紙10によって、合成皮革として用いられるシート状部材50を作製する場合には、シート状部材50の塗料層52を、例えば、ポリウレタン樹脂に着色剤を配合してなる塗料から形成することができる。ところで、離型紙10の第1の凹凸模様11と第2の凹凸模様12とは、同一の模様であってもよいし、異なる模様であってもよい。第1の凹凸模様11と第2の凹凸模様12とが同一の模様である場合には、一枚の離型紙10が、同一の凹凸模様を転写することができる二枚の型面を有することになる。したがって、離型紙10一枚あたりの寿命を長くすることができる。第1の凹凸模様11と第2の凹凸模様12とが異なる模様である場合には、一枚の離型紙10により、被加工体50に異なる模様を形成することができるようになる。また、一枚の離型紙10が二つの型面を有していることにより、離型紙10の保管場所を省スペース化することができるといった利点も有している。
【0021】
次に、主に図3および図4を参照して、上述した離型紙10を製造することができる製造装置および製造方法の一例について説明する。まず、離型紙の製造装置60について説明する。
【0022】
図3および図4に示すように、離型紙の製造装置60は、原反15を作成する手段(原反作製装置)61と、作製された原反15にエンボス加工を施して凹凸模様11,12を原反15形成する手段(エンボス加工装置)71と、を備えている。
【0023】
このうち、まず、図3を参照して、原反作製装置61について説明する。原反作製装置61は、第1表面18aおよび第1表面18aとは反対側の第2表面18bを含むシート状の基材18と、基材18の第1表面18a上に積層された第1の被覆層20と、基材18の第2表面18b上に積層された第2の被覆層30と、を有する原反15を作製するための手段である。
【0024】
図3に示すように、原反作製装置61は、帯状に延びる基材18を巻き取った供給ローラ62と、供給ローラ62から繰り出される基材18の第1表面18aに第1塗工液を供給する第1塗工液供給装置63と、供給ローラ62から繰り出される基材18の第2表面18bに第2塗工液を供給する第2塗工液供給装置65と、を有している。また、原反作製装置61は、第1塗工液供給装置63の下流側に、基材18上の第1塗工液を乾燥させる第1乾燥装置64をさらに有している。同様に、原反作製装置61は、第2塗工液供給装置65の下流側に、基材18上の第2塗工液を乾燥させる第2乾燥装置66をさらに有している。第1塗工液供給装置63および第1乾燥装置64は、供給ローラ62から供給される基材18の第1表面18aに対面するようにして、配置されている。一方、第2塗工液供給装置65および第2乾燥装置66は、供給ローラ62から供給される基材18の第2表面18bに対面するようにして、配置されている。第1塗工液供給装置63および第2塗工液供給装置65は、コータ等の既知の供給装置(塗工装置)から構成され得る。
【0025】
次に、図4を参照しながら、エンボス加工装置71について説明する。図4に示すように、エンボス加工装置71は、原反15に形成されるべき第1の凹凸模様11に対応した凹凸部72aを含む第1のエンボス型72と、原反15に形成されるべき第2の凹凸模様12に対応した凹凸部73aを含む第2のエンボス型73と、を有している。図4に示すように、第1のエンボス型72および第2のエンボス型73は、供給されてくる原反15を間に挟んで、対向する位置に配置されている。また、第1のエンボス型72および第2のエンボス型73は、互いに向けて押圧され得るように構成されている。したがって、原反15は、第1のエンボス型72および第2のエンボス型73によって、第1のエンボス型72および第2のエンボス型73の間で挟圧されるようになる。
【0026】
第1のエンボス型72は、その凹凸部72aが供給される原反15の一方の表面10aに対面するようにして、配置されている。そして、第1のエンボス型72は、原反15の第1の被覆層20に当接し、第1の被覆層20および基材18を変形させて、被加工体50に転写されるべき第1の凹凸模様11を原反15に形成するようになっている。一方、第2のエンボス型73は、その凹凸部73aが供給される原反15の他方の表面10bに対面するようにして、配置されている。そして、第2のエンボス型73は、原反15の第2の被覆層30に当接し、第2の被覆層30および基材18を変形させて、被加工体50に転写されるべき第2の凹凸模様12を原反15に形成するようになっている。本実施の形態において、第1のエンボス型72および第2のエンボス型73は、共に、ロール状のエンボスロールとして構成されている。そして、各エンボスロール72,73の外周面に、凹凸模様11,12に対応した凹凸部72a,73aが形成されている。
【0027】
次に、以上のような構成からなる離型紙の製造装置60を用いて、離型紙10を製造する方法を説明する。
【0028】
まず、原反作製装置61の供給ローラ62から、ウェブ状の基材18が連続的に供給される。供給された基材18は、第1塗工液供給装置63および第1乾燥装置64に対面する位置へと搬送される。そして、第1塗工液供給装置63から、基材18の第1表面18aに塗工液が供給され、基材18上に塗工液膜が形成される。その後、第1乾燥装置64によって塗工液膜に乾燥処理が施され、塗工液膜から溶剤が蒸発する。この結果、基材18の第1表面18aに、塗工液中に含まれていた所望の樹脂材料からなる第1の被覆層20が形成される。
【0029】
次に、第1の被覆層20が形成された基材18は、第2塗工液供給装置65および第2乾燥装置66に対面する位置へと搬送される。そして、第2塗工液供給装置65から、基材18の第2表面18bに塗工液が供給され、基材18上に塗工液膜が形成される。その後、第2乾燥装置66によって塗工液膜に乾燥処理が施され、塗工液膜から溶剤が蒸発する。この結果、基材18の第2表面18bに、塗工液中に含まれていた所望の樹脂材料からなる第2の被覆層30が形成される。
【0030】
以上のようにして、シート状の基材18と、基材18の第1表面18a上に積層された第1の被覆層20と、基材18の第2表面18b上に積層された第2の被覆層30と、を含む原反15が準備される。
【0031】
図4に示すように、得られた原反15は、エンボス装置71の第1エンボスロール(第1のエンボス型)72と第2エンボスロール(第2のエンボス型)73との間に送り込まれ、第1エンボスロール72と第2エンボスロール73との間で挟圧される。なお、図4に示すように、原反15の第1の被覆層20側の表面(一方の表面)10aが第1エンボスロール72に対面し、原反15の第2の被覆層30側の表面(他方の表面)10bが第2エンボスロール73に対面するようになる。したがって、原反18の第1の被覆層20側の表面18aに第1のエンボスロール72の凹凸部72aが押し当てられ、第1の被覆層20および基材18を変形させて、第1エンボスロール72の凹凸部72aの形状に対応した第1の凹凸模様11が原反15に形成されるようになる。同時に、原反18の第2の被覆層30側の表面18bに第2のエンボスロール73の凹凸部73aが押し当てられ、第2の被覆層30および基材18を変形させて、第2エンボスロール73の凹凸部73aの形状に対応した第2の凹凸模様12が原反15に形成されるようになる。
【0032】
以上のようにして、エンボス加工により凹凸模様11,12が原反に形成され、帯状に延びる離型紙10が製造されていく。得られた離型紙10において、被加工体50に転写されるべき第1の凹凸模様11が、第1の被覆層20の側の表面10aから形成されている。また、被加工体50に転写されるべき第2の凹凸模様12が、第2の被覆層30の側の表面10bから形成されている。なお、図4に示す例において、製造された離型紙10は、回収ローラ75に巻き取られていく。ただし、回収ローラ75に離型紙10を巻き取ることに代え、離型紙10を適当な長さに切断して、所望の大きさを有した枚葉状の離型紙が製造されていくようにしてよい。
【0033】
以上のような離型紙の製造方法および製造装置60によれば、エンボス加工装置70の第1のエンボス型72および第2のエンボス型73が、原反15を間に挟んで対向する位置に配置され、互いに向けて押圧されることにより、原反15の両面10a,10bに凹凸模様11,12がそれぞれ形成されるようになっている。すなわち、上述した製造方法および製造装置においては、原反15の両面10a,10bに二つの凹凸模様11,12が同時に形成されるようになっている。したがって、二つの型面を短時間で形成することができる。また、同時に二つの凹凸模様を形成することによって、一枚の原反15に二つの凹凸模様11,12を形成することを可能にしている。すなわち、時間を空けて二つの凹凸模様を別々に形成する場合には、後に形成される凹凸模様を形成するためのエンボス加工圧力によって、先に形成された凹凸模様の形状が平坦化して損なわれてしまうという不具合が生じてしまう。そして、上述の製造方法および製造装置によれば、同時に二つの凹凸模様11,12を形成することによりこの不具合を解消し、一枚の離型紙10が二つの型面を有することを可能にしている。
【0034】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、上述した実施の形態において、第1の被覆層20および第2の被覆層30がいずれも樹脂からなる単一の層として形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、第1の被覆層20および第2の被覆層30の少なくとも一方が、樹脂以外の材料、例えば金属からなる金属層22を含むようにしてもよい。また、第1の被覆層20および第2の被覆層30の少なくとも一方が、複数の層を含むようにしてもよい。
【0036】
一例として、第1の被覆層20および第2の被覆層30の少なくとも一方が、金属層22を含むとともに、金属層22の基材18に対面する側とは反対の側に設けられた一以上の樹脂層23,27をさらに含むようにしてもよい。以下、このような変形例について、図5乃至図7を参照しながら説明する。なお、図5乃至図7において、上述した実施の形態と同一部分には同一符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0037】
まず、図5に示された離型紙10の変形例について説明する。なお、図5は、図1に対応する図であって、離型紙の第1の変形例を示す断面図である。図5に示された離型紙10は、上述した実施の形態の離型紙10と、第1の被覆層21の構成が異なるだけで、他は略同一の構成となっている。本変形例における離型紙10において、第1の被覆層21は、基材18の第1表面18a上に積層された金属からなる金属層22と、金属層22の基材18に対面する側とは反対の側に設けられた表面層23と、を含んでいる。本例において、表面層23は、金属層22の基材18に対面する側とは反対側の表面上に配置されている。
【0038】
金属層22は、例えば、アルミニウムや銅等のような、樹脂と比較して弾性変形量が少ない金属の箔から形成され得る。また、金属層22の厚みは、数μm〜数十μm程度、より具体的には5μm〜80μm程度とすることができる。表面層23は、シリコーンを含有した樹脂から構成されている。表面層23の厚みは、例えば0.1μm〜10μm程度とすることができる。
【0039】
図5に示された離型紙10は、例えば、図6に示す原反作製装置61によって作製された原反に対して、上述した方法と同様の方法で凹凸模様11,12を形成することにより製造され得る。図6は、図3に示された原反作製装置61の一変形例を示している。図6に示された原反作製装置61は、帯状に延びる金属シート24を巻き取った供給ローラ68と、二つの供給ローラ62,68の下流側に配置されたニップローラ69と、供給ローラ62とニップローラ69との間に配置された粘着剤供給装置67と、をさらに有している点において、図3に示された原反供給装置61と異なっており、その他は略同一となっている。粘着剤供給装置67は、供給ローラ62から供給される基材18の第1表面18aに対面するようにして、配置されている。また、ニップローラ69は、供給ローラ62から供給された基材18と、供給ローラ68から供給された金属シート24と、をラミネートするようになっている。なお、粘着剤供給装置67は、コータ等の既知の供給装置(塗工装置)から構成され得る。
【0040】
このような構成からなる原反作製装置61においては、まず、供給ローラ62からウェブ状の基材18が連続的に供給される。そして、供給ローラ62から供給されニップローラ69へと搬送される基材18の第1表面18a上に、粘着剤供給装置67から粘着剤が供給されていく。また、供給ローラ62からの基材18の供給と並行して、供給ローラ68から、金属層22をなすようになるウェブ状の金属シート24が連続的に供給される。そして、図6に示すように、ニップローラ69によって、供給ローラ62から供給された基材18および供給ローラ68から供給された金属シート24が、粘着剤を介し、互いに向けて押圧される。この結果、基材18および金属シート24が互いに接着されて、基材18と、基材18上に積層された金属シート24からなる金属層22と、の積層体が得られる。
【0041】
また、本例においては、第1塗工液供給装置63は、表面層23をなすようになるシリコーン樹脂が溶け込んだ塗工液を、基材18上に供給するようになっている。そして、第1塗工液供給装置63および第1乾燥装置64が、上述した実施の形態と略同様に操作されて、金属層22上に表面層23が形成される。このようにして、基材18の第1表面18a上に第1の被覆層21が作製される。また、原反供給装置61およびエンボス加工装置71を含む離型紙製造装置60が、上述した実施の形態と同様に操作されることにより、基材18の第2表面18b上に第2の被覆層30が作製され、図5に示された離型紙10が得られるようになる。
【0042】
以上にようにして得られた本変形例による離型紙10(図5参照)は、樹脂に比べて弾性変形量が少ない金属からなる金属層22が、基材18の第1表面18a上に形成されている。そして、離型紙10は、この金属層22の側の表面から凹凸模様11を形成されている。したがって、凸部11aと凹部11bとの間のギャップが大きくなっている凹凸模様11を精度良く形成することができる。これにより、この離型紙10によれば、優れたコントラストを有する所望の模様をシート状部材50に転写することができる。また、金属層22の塑性変形量は、樹脂の塑性変形量と比較して加工速度の影響を受けにくい。すなわち、エンボス加工によって凹凸模様11を原反20に形成する際に、エンボス型72,73を長時間にわたって原反20に押しつけることなく、所望の形状の凹凸模様11を原反20に形成することができる。以上のことから、本変形例によれば、優れたコントラストを有する所望の模様11を転写し得る離型紙10を、短時間で、またこれにより安価に製造することができる。加えて、離型紙10の一方の表面10aが優れた剥離性を呈示するシリコーン樹脂からなる表面層23によって形成されている。したがって、シート状部材(比加工体)50の作製時に、シート状部材(被加工体)50の離型性10からの離型が促進され、塗料層52を破壊してしまうことなく表面層23から引き離すことができる。
【0043】
なお、本変形例において、離型紙10の第1の被覆層21のみが、金属層22および表面層23を有する例を示したが、これに限られず、第2の被覆層30のみが、金属層22および表面層23を有するようにしてもよいし、第1の被覆層21および第2の被覆層30の両方が、金属層22および表面層23を有するようにしてもよい。また、被覆層21,30から表面層23を省いてもよい。
【0044】
また、本変形例において、金属層22の基材18に対面しない側の表面上に、剥離性を有した表面層23を設ける例を示したが、これに限られない。図7に示すように、金属層22の基材18に対面する側とは反対の側の表面上に、金属層22に隣接して、硬化型の樹脂からなる硬化型樹脂層27を積層するようにしてもよい。なお、図7に示す変形例は、第1の被覆層26が表面層23に代えて硬化型樹脂層27を有する点において、図5に示された離型紙10と異なり、その他は略同一である。図7において、図5に示された離型紙と同一部分には、同一符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0045】
図7に示された硬化型樹脂層27は、上述した表面層23と同様にして形成することができる。すなわち、塗工液供給装置63から硬化型の樹脂を含んだ塗工液を、金属層22上に供給することによって、硬化型樹脂層27を金属層22上に形成することができる。そして、この硬化型樹脂層27の硬化処理は、エンボス加工後に実施されることが好ましい。すなわち、図4において二点鎖線で示すように、エンボス加工装置71の下流側に配置された硬化装置77によって、硬化型樹脂層27を硬化することが好ましい。この場合、エンボス加工時に硬化型樹脂層27がまだ硬化していないので、エンボス加工における成型性に悪影響を与えることはない。その一方で、エンボス加工によって凹凸模様11を形成した後に硬化型樹脂層27を硬化させることにより、いったん離型紙10に形成された凹凸模様11の形状が変形してしまうことを抑制することができる。すなわち、いったん離型紙10に形成された凹凸模様11の形状が、離型紙10の使用回数の増加にともなって、変形していくことを大幅に抑制することができる。これにより、離型紙10を長寿命化することができる。また、硬化型樹脂層27をなす樹脂は、一般的に、金属層22をなす金属よりも弾性変形しやすい。したがって、離型紙10の取り扱い中に外部の物にぶつける等して離型紙10を損傷してしまうことを大幅に抑制することができる。
【0046】
なお、硬化型樹脂層27の厚みは、数μm〜数十μm程度、一例として5μmとすることができる。また、硬化装置77の構成は、塗工液供給装置63から供給される樹脂の硬化方法に応じて適宜選定され得る。例えば、塗工液供給装置63から熱硬化型の樹脂が供給される場合には、硬化装置77は塗工液膜を加熱し得るヒータとして構成され得る。また、塗工液供給装置63からUV硬化型の樹脂が供給される場合には、硬化装置77は塗工液膜にUV光を照射し得るUV孔照射装置として構成され得る。さらに、塗工液供給装置63から電子線硬化型の樹脂が供給される場合には、硬化装置77は塗工液膜に電子線を照射し得る電子線照射装置として構成され得る。
【0047】
ところで、この硬化型樹脂層27の金属層22に対面しない側の表面上に、上述したシリコーンを含有する樹脂からなる表面層23をさらに形成してもよい。あるいは、シリコーンを含有する硬化型樹脂から上述した表面層23を形成することにより、表面層23に硬化型樹脂層27の機能を持たせるようにしてもよい。
【0048】
また、被覆層20,21,26,30の構成以外についても、上述した実施の形態に対して種々の変形が可能である。
【0049】
例えば、離型紙の製造装置60が、原反作製装置61およびエンボス加工装置71を一つのラインとして有していてもよいし、あるいは、原反作製装置61およびエンボス加工装置71を別々のラインとして有していてもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙10を製造する例を示したが、これに限られず、その他の用途に用いられる離型紙(一例として、壁紙用の離型紙)を製造するようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス加工装置71がエンボスロールからなるエンボス型72,73を有する例を示したが、これに限られず、種々の既知なエンボス装置を採用することができる。例えば、ベルト式や平板式のエンボス型を被加工体に押圧するプレス装置を、エンボス加工装置として採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、離型紙(型)の厚さ方向に沿った断面図である。
【図2】図2は、図1に示された離型紙を用いたシート状部材の作製方法を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、離型紙(型)の製造方法および製造装置を示す図である。
【図4】図4は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、離型紙(型)の製造方法および製造装置を示す図である。
【図5】図5は、図1に対応する図であって、離型紙(型)の変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示された離型紙の原反の作製方法および作製装置を説明するための図である。
【図7】図7は、図1に対応する図であって、離型紙(型)の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 型(離型紙)
10a,10b 表面
11,12 凹凸模様
15 原反
18 基材
18a 第1表面
18b 第2表面
20,21,26,30 被覆層
22 金属層
23 表面層
27 硬化型樹脂層
50 シート状部材(被加工体の一例)
60 製造装置
61 手段(原反作製装置)
71 手段(エンボス加工装置)
77 手段(硬化装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工体に凹凸模様を形成するための型であって、
第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、を含むシート状の基材と、
前記基材の前記第1表面上に積層された第1の被覆層と、
前記基材の前記第2表面上に積層された第2の被覆層と、を備え、
前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様が、前記第1の被覆層の側の表面から形成され、
前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様が、前記第2の被覆層の側の表面から形成されている
ことを特徴とする型。
【請求項2】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層は、それぞれ、樹脂からなる単一の層として形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の型。
【請求項3】
前記第1の凹凸模様および前記第2の凹凸模様は互いに異なる模様である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の型。
【請求項4】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、金属からなる金属層を含んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の型。
【請求項5】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、前記金属層の前記基材に対面する側とは反対の側に設けられ、シリコーンを含有する表面層をさらに含む
ことを特徴とする請求項4に記載の型。
【請求項6】
前記表面層は、シリコーンを含有する硬化型の樹脂からなる
ことを特徴とする請求項5に記載の型。
【請求項7】
前記第1の被覆層および前記第2の被覆層の少なくとも一方は、前記金属層の前記基材に対面する側とは反対側の表面上に積層された層であって、硬化型樹脂からなる硬化型樹脂層をさらに含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の型。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の型を製造するための製造方法であって、
第1表面および前記第1表面とは反対側の第2表面を含むシート状の基材と、前記基材の前記第1表面上に積層された第1の被覆層と、前記基材の前記第2表面上に積層された第2の被覆層と、を有する原反を準備する工程と、
前記原反の前記第1の被覆層に第1のエンボス型を押し当て、前記第1の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様を前記原反に形成するとともに、前記原反の前記第2の被覆層に第2のエンボス型を押し当て、前記第2の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様を前記原反に形成する工程と、を備え、
前記第1の凹凸模様および前記第2の凹凸模様を形成する工程において、前記第1のエンボス型および前記第2のエンボス型は、前記原反を間に挟んで対向する位置に配置され、互いに向けて押圧される
ことを特徴とする型の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の型を製造するための製造装置であって、
前記原反の前記第1の被覆層に当接し、前記第1の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第1の凹凸模様を前記原反に形成する第1のエンボス型と、
前記原反の前記第2の被覆層に当接し、前記第2の被覆層および前記基材を変形させて、前記被加工体に転写されるべき第2の凹凸模様を前記原反に形成する第2のエンボス型と、を備え、
前記第1のエンボス型および前記第2のエンボス型は、前記原反を間に挟んで対向する位置に配置され、互いに向けて押圧されるように構成されている
ことを特徴とする型の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−51085(P2009−51085A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219707(P2007−219707)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】