説明

型押し表面を有する素材とその製造法

本発明は剥離ウェブおよびフローリング材、壁紙型押しラミネートのような最終製品の双方を含んだ様々な型押し、素材を形成するための工程および設備を特徴としている。ここに記載された工程は、硬化可能な材料が適用されるのではなく、型押し媒体を通過して放射線硬化することを可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型押し表面を有する素材とその製造法に関する。
従来の技術
【0002】
シート状または巻き取り紙(ウェブ:web;以下「ウェブ」と呼ぶ)状の素材表面に、例えば三次元のパターンなどの型(テクスチャ:texture)を与えることは、硬化性被覆が塗布されたウェブ状素材の硬化性被覆に対して、彫刻された金属ローラーの彫刻された複製面を刻印して転写した後、前記被覆部を前記ローラーに当接させながら前記ウェブ状素材を通じた照射により硬化させる製造過程により実施することができる。前記ウェブが透明な場合は、前記被覆は紫外線(UV)照射により硬化が可能であり、一方不透明の場合は、一般的に電子線照射が硬化に用いられる。この種の製造過程が使用可能な基材(ウェブ)は、照射が貫通できる十分な薄さを持ち、また不透明な基材では電子線照射に耐え得る能力を持つものに限定される。ある場合には前記浮き彫りされた金属ローラーからの素材の離型が問題となり、および/または、例えば空気の取り込みや筋の形成などの、被覆の質における問題も存在する。
【0003】
この製造過程により形成されるシートやウェブなどの素材は、離型シートまたは離型膜としても使用でき、これらの離型シートまたは離型膜の上で、またはこれらに向き合わせてプラスチック膜またはシートを設置し、前記プラスチック素材を冷却または硬化後に前記離型シートより分離して成型することができる。離型シートは、取り付けられたプラスチックが直ちに分離できる表面を提供し、プラスチック素材の離型された表面に仕上げの性質を付与する。例えばプラスチック素材を、所望の型押し表面の鏡像の型を有する型押し表面を有する離型シートの上、またはこれと向き合わせて成型することにより、所望の型押し表面をプラスチック素材の表面に与えることができる。
【0004】
このような成型製造過程の一例が「鋳造」(キャスティング)であり、流動可能な状態のポリ塩化ビニルやポリウレタン樹脂などの樹脂状素材を、離型シート上に堆積させるかまたは「流し込み」、加熱、硬化、冷却して樹脂状素材を連続的自立膜に強化・固定した後、離型シートから剥がす。通常、離型シートには、高度の光沢、生地、浮き彫り形状などの所望の表面効果が与えられ、この表面効果が流し込まれたフィルム上に再生される。
【0005】
引用によりその全体が本願に包含される、特許文献1(Grayら)および特許文献2(Grayら)では、鋳造製造過程において離型シートの離型被覆に表面効果を生成する技術を開示している。開示されたひとつの方法では、電子線照射により硬化する素材をウェブ基材の一面に塗布し、前記基材の塗布面を所望の表面効果を有する複製表面(浮き彫りのある媒体)に押し付け、塗布面を複製表面に合致させた後、被覆を電子線で照射し被覆を硬化し、基材に接着した硬化被覆とともに基材を複製表面より離型させる。複製表面は、その表面に彫刻を備えるか、またはその表面が高度に研磨された金属ローラーであることが望ましい。この技術の重要な利点は、複製表面のパターンまたは仕上げが、本質的に100%の忠実度で硬化された被覆に再生されることである。この技術は、プラスチックの鋳造物の表面の木目や皮革の肌理などの高度に緻密なパターンの離型シート上での複製を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,289,821号明細書
【特許文献2】米国特許第4,322,450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化性被覆に型を付与した後に前記被覆を硬化することにより形成される型押し表面を有する素材の製造とその装置に関する。ここで、「型」(テクスチャー:texture)および「型押し(された)表面」(textured surface)は、例えば可視光の波長未満の形態(トポグラフィー:topography)を有する高度に緻密な型を含む。しかしながら、ここで議論される型は所定の型、すなわち、表面に意図的に付与される型であって、表面に生得的に存在する型や、表面の汚染などによる単なる形態による型ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のように形成される型押しされた素材とは、鋳造製造過程で使用される離型膜および例えば、床材、壁紙、型押し薄板などのシート、板、厚板、またはウェブの形状を有する完成製品の両者を意味する。本願記載の製造過程は、彫刻されたローラーよりも、むしろ型押しウェブを型押し用媒体として利用するものであり、これにより硬化用の照射は前記型を備え硬化された被覆を生ずる前記基材を通過するのではなく、前記型押し用媒体を通過することができる。
【0009】
前記型押し用媒体の照射通過による硬化は一連の利点をもたらす。すなわち、これにより箔、ボード、プレートなどのより厚い基材を用いることが可能になり、より広範な完成品の製造が可能になる。また照射被曝による基材損傷の軽減または除去が可能となり、例えばセルロース誘導体などの被曝により損傷される基材の使用が可能になる。このように、いくつかの例では、被覆の硬化後も基材の機械的性質(引っ張り強度および引裂強度)は、硬化の製造過程の前のものと比較して、実質的に変化しない。
【0010】
本願記載の製造過程は、例えば浮き彫りを持つ媒体からの離型、空気の取り込みや筋の形成など上記問題点により生ずる製造過程の問題点のいくつかを解決し、一貫して高品質の完成製品を提供する。
【0011】
彫刻されたローラーではなくウェブ型の型押し用媒体の使用は、一連の顕著な製造過程上の利点を提供する。例えば型を変える場合には、型押し用媒体を変えるほうが彫刻されたローラーを変えるよりも容易である。さらに彫刻されたローラーは時折(型押し用媒体を製造するマスターとして)しか使われないため、仮に彫刻されたローラーに切り傷やその他の損傷による問題があったとしても、その問題は最小化または除去され、より容易に型の複製の忠実度を維持できる。加えて一般にウェブ状の型押し媒体を被覆することは、彫刻されたローラーの被覆より容易であり、これにより被覆による空気の取り込みを起こさずに高速で加工することができる。
【0012】
一つの実施態様では、本発明は型押し表面を有する素材の製造法を特徴とし、前記製造法は、(a)可撓性ウェブと複製用の表面を決定する三次元の型を有する表面層を含む型押し用媒体の提供、(b)型押し表面が付与される素材の提供、(c)複製表面の被覆および/または前記基材の硬化性被覆による被覆、(d)前記被覆が前記基材と前記型押し用媒体の間に挟持されるように、前記基材を前記型押し用媒体に当接させる操作、(e)前記被覆の硬化、および(f)前記硬化被覆が前記基材上に残置されるよう前記型押し用媒体から前記基材を離型する操作より成る。
【0013】
いくつかの実施形態は、以下の一つ以上の特徴を含む。
【0014】
硬化の工程が型押し用媒体を通過する例えばUVまたは電子線の照射より成る。前記照射が好ましくは前記型押し用媒体側から行われる。いくつかの実施形態では前記基材または前記型押し用媒体に加圧することなく硬化が行われる。型押し用媒体を提供する工程は可撓性ウェブへの硬化性被覆の塗布、型の被覆への付与、および表面層形成のための被覆の硬化より成ることができる。前記型押し用媒体形成時に、前記型を複製用の型の彫刻されたローラーを用いて可撓性ウェブに付与することができる。または、その代わりにマスターの型押し用媒体(それ自身が可撓性ウェブと型押しされた硬化被覆を有する型押し用媒体である)を用いて前記型を前記可撓性ウェブに付与することができる。
【0015】
前記型押し用媒体は、連続ウェブから成ることができる。この場合製造法は、コーティング、硬化、離型の工程の間、さらに供給用ローラーから前記型押し用媒体を巻き取り用ローラーへ引き延ばす操作を含む。型の付与工程は、被覆された前記型押し用媒体と前記基材を挟み部分(ニップ:nip)を通して通過させることを含むことができる。前記型押し用媒体は例えば紙または膜ウェブより成ることができる。
【0016】
前記基材はポリマー膜、複数の個別のボードもしくはプレート、またはその他の任意の基材の素材より成ることができる。前記基材は一般にウェブ、シート、プレートもしくはボードの形状を有する。
【0017】
前記被覆は、後続する鋳造工程において前記硬化被覆が離型層として機能するために必要な、選択された離型剤を含むことができる。
【0018】
硬化工程中の前記被覆の収縮を最小化または防止するために前記被覆は100%固体の被覆であることが好ましく、これにより前記型押し媒体からの前記被覆への、前記複製表面の型の複製の忠実度が確保できる。好適な実施形態では、複製表面の型の逆の型が100%の忠実度で硬化した被覆に再生される。前記型押し媒体の製造に彫刻されたローラーを最初に使用する実施形態では、彫刻されたローラーの再生パターンが硬化被覆に100%の忠実度で再生されることが好ましい。
【0019】
前記型押し媒体は複数の生産工程にわたり再使用できるものであることが有利である。このように、いくつかの本発明の実施形態においては、さらに製造法に使用された前記型押し媒体を巻き取る巻き取りローラーの位置を供給用ローラーの位置に転移し、前記型押し媒体を再使用することが含まれる。
【0020】
他の本発明の実施態様では、型押しされた製品がシート、ボードまたはウェブの形状の基材から成り、製品の露出した表面には、三次元の表面の型を有する照射硬化性被覆の硬化被覆を有することを特徴とする。重要なことは、基材の物理的性質(引っ張り強度と引裂強度)が、被覆を塗布して硬化させる前の性質と実質的に同じであることである。この重要な利点は、製造過程において前記照射硬化性被覆に、前記基材を通してではなく、前記型押し媒体を通して照射を与えることによって得られる。
【0021】
ある実施形態では、以下の一つ以上の特徴を有することができる。前記基材は例えば硬化性の被覆の下層に、基材に印刷された図形パターンを有することができる。ある実施形態では、前記パターンは前記表面の型に見当合わせ(レジストレーション)されている。ある場合には前記基材はボードより成ることができる。前記基材が例えば壁紙や床材の場合、その露出面と反対側の表面に接着剤を保持することができる。ある場合には前記硬化被覆は鋳造工程の間に前記硬化被覆が離型層として機能できるように離型剤を含む。
【0022】
本発明の実施例の詳細は添付図面と以下の明細書において定義される。本発明の他の特徴と利点は前記明細書、図面および特許請求の範囲から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】型押しされた離型膜の製造過程の模式的側面図である。
【図2】薄板状の製品の製造過程の模式的側面図である。
【図3】型押し媒体の製造過程の模式的側面図である。
【図4】図1から3に示される製造過程の異なる使用の選択肢を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、最初に上記「従来の技術」で述べた鋳造過程またはその他の加圧成型、ラミネート化、加硫処理、ローラーによる硬化などの製造過程で使用できる離型ウェブ、すなわちウェブまたはシート基材の製造に、本願で開示される型押し製品の製造過程がどのように利用できるかを説明する。例えばこれらの方法で製造される離型ウェブは、その後に前記離型膜の型と逆である所望の表面の型を有する最終製品を製造するための鋳型として使用できる。次に本願で開示される製造過程が、露出面に型押し媒体の型とは逆の型を持つ硬化被覆を有する基材より成る最終製品の直接的な作成に、どのように使用できるかを説明する。最後に本願で開示される製造過程で使用される前記型押し媒体を製造する好適な方法について説明する。
【0025】
離型ウェブの製造
図1を参照しながら説明する。離型ウェブ状基材を製造する機械10は、供給ローラー14から供給され巻き取りローラー16に巻き取られる型押しウェブ12を備える。前記型押しウェブ12は、離型ウェブの基材が挟まれる複製表面18を提供する。被覆部位20において硬化性被覆が表面18に塗布される。硬化性被覆が硬化した際に型押しウェブから離型できるような型押しウェブおよび硬化性被覆が選択される。
【0026】
前記基材22は、供給ローラー23から供給され、挟みローラー26および28の間に挟まれた部分24から前記機械に入る。前記挟み部分は前記型押しウェブ12の被覆面を、前記基材22の前記被覆面に対面する表面に接着する。このように形成されたサンドイッチは、UVランプなどの照射提供機器を有する硬化部位30を通して運ばれる。
【0027】
基材が不透明の場合または所望の場合には、前記照射提供機器は紫外線の代わりに電子線を照射することができる。好ましくは、前記照射提供機器は、図中に示すように基材22側ではなく、前記型押しウェブ12の側に設置される。結果として、前記照射は前記基材の厚みを通過しなくてもよく、また通常は通過しない。前記照射は前記基材を通過しないため、前記基材の物理的性質は硬化過程による劣化を起こさない。
【0028】
硬化後、硬化被覆を有する前記基材(完成された離型ウェブ34)は、前記硬化被覆が前記基材22に付いたままの状態で前記型押しウェブ12から剥がされる。その後完成された離型ウェブ34は、巻き取りローラー36に巻き取られる。前記型押しウェブ12は巻き取りローラー16に巻き取られる。通常前記型押し、ウェブは複数回、例えば50回以上、ある場合には70回以上、再使用することができる。
【0029】
完成品の製造
次いで図2を参照しながら説明する。上記機械10のように、完成製品を製造する機械10´は、供給ローラー14から供給され、巻き取りローラー16に巻き取られる型押しウェブ12を備える。前記型押しウェブ12は、完成製品のための前記基材が挟まれる複製表面18を提供する。被覆部位20において硬化性被覆が表面18に塗布される。硬化性被覆が硬化した際に型押しウェブから離型できるような型押しウェブおよび硬化性被覆が選択される。図2に示され、以下に説明される技術の重要な利点は、前記複製表面18の表面の型が硬化被覆に100%の忠実度で再生されることである。このように本技術は、大変に緻密なオリジナルのパターンの前記硬化被覆の表面への実質的に100%の忠実度での再生を可能とする。
【0030】
図2に一連の個別のボードとして示される基材22´は、ローラー26´に対して挟まれた部分24から前記機械に入る。ボードはコンベアまたは図示されない一連のローラーによって担持される。前記ローラー26´は前記型押しウェブ12の被覆された表面を、対面する前記基材22´の表面に対して押し付ける。このように形成されたサンドイッチは、例えばUVランプまたは電子線照射装置などの照射提供機器32を備える硬化部位30を通して運ばれる。この場合図1に示される前記機械10の場合とは異なり、前記ボードがコンベアまたはローラーに担持された状態で、その被覆が前記型押し媒体を通した照射によって硬化できるように、前記照射提供機器は前記サンドイッチの上方に取り付けられ、前記型押し媒体は前記基材22´の上方に位置する。図2に示されるように、硬化の間は圧力を前記サンドイッチに加えないことが好ましい。このことにより製造コストの低減、通常前記型押しウェブ12の損傷の最小化、ある場合にはその多数回にわたる再使用が可能となる。
【0031】
硬化後、該型押しウェブ12は離型ローラー13の周囲を通過させることにより、硬化被覆を保持する前記基材から引き剥がされる。硬化し型の付与された被覆は基材22の表面に残留し完成製品35を特徴付ける。図2に示される実施形態では離型の間、ボードは自身の重量によりコンベアまたはローラーに対して保持される。他の実施形態では、ほかの種類の方法を用いることができる。前記型押しウェブ12を巻き取りローラー16に巻き取り、複数回、例えば50回以上、ある場合には70回以上、再使用することができる。
【0032】
所望する場合には、ボードまたは他の基材22´は、あらかじめ印刷された図形パターンを備えることができる。この場合、もし前記図形パターンの型押しされた被覆の所定位置への見当合わせ(レジスター)を所望する場合には、見当合わせには前記基材および前記型押し媒体上の見当合わせマークおよび光学的見当合わせ装置のような見当合わせ技術を用いることができる。
【0033】
硬化が前記型押しウェブ側より行われるため、前記基材には、例えば、任意の厚さの、セルロース誘導体、セラミックス、金属、ウェブ物質など任意の原料を用いることができる利点がある。その結果、この製造過程により広範囲の完成製品の製造が可能となる。ある実施形態では、原料として金属を使う場合、完成製品としてコールプレート(caul plate)またはアルミの羽目板などを製造することができ、可撓性のウェブを使用する場合には壁紙を製造することができる。
【0034】
型押し媒体の製造
ある実施形態では、型押し媒体(例えば、図1に示す型押しウェブ12)は、硬化性液体の基材への塗布、例えば鋳型のローラーなどによる被覆への型の付与、硬化被覆のある前記基材の型を付与する表面からの離型を含む方法により製造することができる。
【0035】
図2に示される製造過程では、型押し媒体上のパターンは完成製品上の所望の型とは逆であり、このようにこの場合(図4の選択肢A)には彫刻された鋳型ローラー上のパターンは完成製品上に表されるパターンと同一になる。図1に示される製造過程では、完成された鋳造製品の型(図4の選択肢Bを参照のこと)は、離型用ウェブのものとは逆であり、このために彫刻された鋳型ローラー上のパターンは完成製品上に表される所望のパターンと逆になり、前記型押し媒体上のパターンは完成製品上の所望の型と同一となる。
【0036】
好適には、前記彫刻された鋳型ローラーを使用して前記型押し媒体を製造する全製造過程は、例えば図3に模式的に示される一連の加工装置から引き出される素材の連続ウェブ上で行われる。図3に示される製造過程により、所望のパターンが、前記型押し媒体により製造される製品に、例えば実質的に100%の非常に高い忠実度で複製されることができる。
【0037】
ついで図3を参照して説明する。例えばポリマー性膜などのウェブ110は、最初に供給ローラー102から引き出され、前記ウェブの表面117に塗布ヘッド116により湿式塗装を施す塗布部分112を通過する。ついで、被覆されたウェブは、支持ローラー120と彫刻されたローラー122の間の挟み部分118を通過し、前記湿式被覆116は前記彫刻されたローラー122に対面する。前記彫刻されたローラー122は、その表面に前記湿式被覆116に付与されるパターンとは逆のパターンを備えている。挟み圧は比較的低く(例えば「キス」の圧力)、その圧力は、前記被覆がウェブの上から絞り出されずに、なおかつ彫刻された型が前記被覆に付与されるように、前記被覆の粘度に基づいて決定される。通常は被覆の粘度が高いほど、またパターンの深さがより深いほど高い挟み圧が必要となる。
【0038】
前記挟み部分を通過後、被覆され型押しされたウェブは、例えば電子線またはUV照射装置などを備える硬化部分124を通過する。前記被覆は前記彫刻されたローラー表面に当接中に硬化される。通常、化学線または電子ビームのエネルギーが、ウェブの裏面126から加えられ前記ウェブを貫通し前記被覆116を硬化させ、前記ウェブ110に強固に接着する硬いが可撓性の型押しされた被覆128を生成させる。前記ウェブ110および硬化被覆128は、剥ぎ取りローラー132により前記彫刻されたローラーから引き剥がされ、巻き取りローラー130に巻き取られる。図に示されるように、前記ウェブの裏面よりの紫外線による硬化を用いる場合は、前記ウェブは透明または半透明でなければならない。
【0039】
前記被覆116は任意の適切な方法により塗布することができる。好適な方法にはオフセット・グラビア印刷、直接グラビア印刷、ナイフ・オーバー・ロール(knife over roll)、カーテン塗装やその他の印刷、塗装技術が含まれる。
【0040】
前記彫刻されたローラーは、前記湿式被覆にパターンを付与する複製表面の一例である。他のパターン付与装置を使用することができる。しかしながら一般に複製表面は、例えばローラー、ドラムや他の円筒状表面のような回転する無限表面に周設されることが好ましい。図3に示すように、前記基材がローラーに当接する前に、前記被覆を前記ウェブに直接塗布することができる。または、その代わりに、前記被覆を直接前記ローラーに塗布することができ、その場合には前記基材は塗布されたローラーに対して圧迫される。前記被覆を熱硬化により硬化することもできるが、好ましくは照射(例えば、電子線または紫外線照射)により硬化される。所望のパターンが厚い被覆を必要とする場合には、電子線照射が厚い被覆を貫通できるために好ましい。電子線照射装置は容易に入手可能であり、通常は線間電圧を増大させる能力のある変圧器および電子加速器から構成されている。電子線放射装置の製造者には、Energy Sciences, Inc.およびPCT Engineered Systems, LLC(アイオワ州、ダベンポート:Davenport, Iowa)が含まれる。好適な紫外線硬化装置は、例えば、Fusion, Inc.(メリーランド州ガイサーズバーグ:Gaithersburg, Maryland)から入手できる。
【0041】
被覆と基材の原料については以下の「原料」の項目で説明する。
【0042】
前記型押し媒体は、他の方法で提供することができる。例えば、図1に示すように、新しい型押し媒体に所望されるパターンと逆のパターンを有する前記型押しウェブ12を用いる製造過程により前記型押し媒体を製造できる(図4の選択肢C)。この場合、前記型押しウェブ12は「マスター」の型押し媒体として機能する。前記型押し媒体は、従来の浮き彫り技術によっても製造できる。
【0043】
原料
図1に示される製造過程で用いられる前記基材22は、硬化性被覆が接着できる所望の任意のシート状またはウェブ状の原料、例えば、紙または膜である。通常被覆が接着しないポリマー性膜も、例えば 火炎処理、コロナ放電や接着促進剤の前塗装などにより取り扱うことができる。好適な基材には、紙、ポリエステル膜、三酢酸セルロース膜、2軸配向(延伸)のポリスチレンまたはアクリル系化合物が含まれる。図2に示される製造過程で好適に使用される基材は、これらの基材および上述の他の基材を含む。
【0044】
前記硬化性被覆は好適にはアクリレート化オリゴマー、単官能基性モノマーおよび架橋用の多官能基性モノマーを含む。アクリル機能性被覆の硬化に紫外線照射を用いる場合、前記被覆は当技術分野で周知の光開始剤を含むことができる。好適なアクリレート化オリゴマーには、アクリレート化ウレタン化合物、エポキシ化合物、ポリエステル、アクリル系化合物およびシリコンが含まれる。前記オリゴマーは実質的に被覆の最終的物性に寄与する。所望の最終物性を実現するための適切なオリゴマーの選択は当業者には周知である。本願記載の離型ウェブの好ましい最終物性には、通常、可撓性と耐久性を与えるオリゴマーが必要である。広範囲のアクリル化されたオリゴマーが商業的に入手可能であり、Ebecryl 6700,4827,3200, 1701,および80などはCytec Surface Specialties Corporationから、CN−120,CN−999 およびCN−2920はSartomer Company,Inc.から入手できる。
【0045】
典型的な単官能基性モノマーには、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、(エトキシエチル)アクリル酸エチルまたはアクリル酸イソデシルが含まれる。好適な単官能基性モノマーはアクリル酸イソデシルである。単官能基性モノマーは希釈剤として機能する、すなわち被覆の粘度を低下させ被覆の可撓性を増加させる。単官能基性モノマーの例には、Sartomer Companyから入手可能なSR−395およびSR−440、Cytec Surface Specialties Corporationから入手可能なEbecryl 111およびODA−N(アクリル酸オクチルまたはデシル)が含まれる。
【0046】
架橋形成の目的で通常使用される多官能基性モノマーにはトリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート(PGTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、およびジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)が含まれる。好適には前記多官能基性モノマーはTMPTA、TPGDAとそれらの混合物からなるグループより選択される。前記好適な多官能基性モノマーは架橋剤として機能する。前記多官能基性モノマーの例には、Sartomer Company,Inc.により製造されるSR−9020、SR−351、SR−9003およびSR−9209、Cytec Surface Specialties Corporationにより製造されるTMPTA−N、OTA−480およびDPGDAが含まれる。
【0047】
好適には、前記被覆は硬化前には20から50%のアクリレート化オリゴマー、15から35%の単官能基性モノマー、および20から50%の多官能基性モノマーを含む。前記被覆の形成は、硬化した被覆の最終目標となる粘度と所望の物性に依存する。ある実施形態では室温(21から24℃)における好適な粘度は0.2から5パスカル・秒であり、より好適には0.3から1パスカル・秒である。
【0048】
前記被覆の組成は、不透明化剤、染料、スリップ/展開剤、静電防止剤または耐磨耗剤のような他の成分を含むことができる。二酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムのような各種顔料の添加、中空または固形のガラス・ビーズの添加、または水のような不適合な液体の添加により前記被覆の不透明度を変化させることができる。不透明の程度は添加物の量の変化にことにより変化させられる。
【0049】
上述のように、前記皮膜を紫外線硬化する場合には、光開始剤または光開始剤のパッケージを含むことができる。好適な光開始剤は、Sartomer Companyより、K.TO−46の商標名のものが入手可能である。前記光開始剤を例えば0.5から2%の濃度で含有することができる。
【0050】
離型ウェブではなく完成製品を製造するための製造過程では、前記被覆は離型性を有さなくてもよい。
【0051】
他の実施例
本発明の一連の実施例はすでに述べられている。しかしながら本発明の精神と範囲を逸脱しない限り、各種の変更が可能であることが理解されるべきである。
【0052】
例えば、所望の場合には、挟み部に導入する前に図1および2に示される製造過程の前記型押しウェブ12を被覆するのではなく、前記基材22または22´を被覆することができる。さらに、いくつかの実施形態では、照射による硬化ではなく熱による硬化を用いることができる。この場合には、前記硬化性原料は熱硬化性物質である。前記型押し媒体の側から、例えば赤外線などの熱エネルギーが加えられる。
【0053】
結果的に他の実施例は以下の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0054】
10 ・・・製造機械
12 ・・・型押しウェブ
14 ・・・供給ローラー
16 ・・・巻き取りローラー
18 ・・・表面
20 ・・・被覆部位
22 ・・・基材
23 ・・・供給ローラー
26,28 ・・・挟みローラー
30 ・・・硬化部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型押し表面を有する素材の製造法であって、該製造方法は、
可撓性ウェブと複製面を決定する三次元の型を持つ表面層を含む型押し媒体を提供する工程;
型押し表面が塗布される素材を提供する工程;
前記複製表面および/または前記基材に硬化性被覆を塗布する工程;
前記基材を前記型押し媒体と、前記被覆が前記基材と前記型押し媒体との間に挟まれるように当接させる工程;
前記被覆を硬化させる工程;および
前記硬化被覆が前記基材上に残留するように前記基材を前記型押し媒体から離型する工程を含んでいることを特徴とする型押し表面を有する素材の製造法。
【請求項2】
前記硬化が前記型押し媒体を通した照射より成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項3】
前記型押し媒体を提供する工程が、前記可撓性ウェブに硬化性被覆を塗布し、型を前記被覆に付与し、前記表面層を形成するために前記被覆を硬化することより成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項4】
前記型が前記可撓性ウェブ上の被覆に複製面を彫刻したローラーにより付与されることを特徴とする請求項3記載の製造法。
【請求項5】
前記型が前記可撓性ウェブ上の被覆にマスターの型押し媒体により付与されることを特徴とする請求項3記載の製造法。
【請求項6】
前記型押し媒体が連続ウェブから成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項7】
前記型押し媒体が供給ローラーから引き出され、巻き取りローラーに巻き取られることをさらに含んでいることを特徴とする請求項6記載の製造法。
【請求項8】
前記の型の付与工程において、被覆された前記型押し媒体と前記基材とが挟み部を通過することを含んでいることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項9】
前記型押し媒体が紙または膜のウェブより成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項10】
前記照射が紫外線または電子線より成ることを特徴とする請求項2記載の製造法。
【請求項11】
前記基材がポリマー膜より成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項12】
前記基材が複数の個別のボードまたは板(プレート)より成ることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項13】
前記被覆が、前記硬化被覆が後続の工程で離型層として機能することを可能とする離型剤を含んでいることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項14】
前記被覆が100%固体の被覆であることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項15】
前記複製表面の型の逆が前記硬化被覆上に100%の忠実度で再生されることを特徴とする請求項1記載の製造法。
【請求項16】
前記彫刻されたローラーの複製パターンが前記硬化被覆上に100%の忠実度で再生されることを特徴とする請求項4記載の製造法。
【請求項17】
前記巻き取りローラーを前記供給ローラーの位置に移動して前記型押し媒体を再使用することをさらに含んでいることを特徴とする請求項7記載の製造法。
【請求項18】
型押しされた製品であって、
シート、ボードまたはウェブ状の基材;および
製品の露出表面に、オリジナルの三次元の型を100%の忠実度で再生した三次元の型を持つ照射硬化性被覆を有した型押しされた製品において、
前記基材の物理的性質が前記被覆に型の付与と硬化を行う前の前記基材の物理的性質と実質的に同じであることを特徴とする型押しされた製品。
【請求項19】
前記基材が図形パターンを有し、前記図形パターンは前記表面の型と見当合わせ(レジスター)されていることを特徴とする請求項18記載の型押しされた製品。
【請求項20】
前記基材がボードまたはプレートから成ることを特徴とする請求項18記載の型押しされた製品。
【請求項21】
前記基材が前記基材の露出表面の反対の表面に接着剤を保持していることを特徴とする請求項18記載の型押しされた製品。
【請求項22】
前記製品が壁紙または床材より成ることを特徴とする請求項21記載の型押しされた製品。
【請求項23】
前記硬化被覆が鋳造工程で離型層として機能できるように前記硬化被覆が離型剤を含んでいることを特徴とする請求項18記載の型押しされた製品。
【請求項24】
硬化中に、前記基材または複製表面に圧力を加えないことを特徴とする請求項1記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525968(P2010−525968A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506568(P2010−506568)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/061847
【国際公開番号】WO2008/137400
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504445633)エス・ディ・ウォレン・カンパニー (5)
【Fターム(参考)】