説明

埋め込まれたトランスポンダとタイヤの組立体およびその製造方法

【課題】トランスポンダまたはタイヤの性能を損なわない、トランスポンダとタイヤの組立体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤカーカスが、環状のビード部材の周りをプライ折り返し部分へと延びる半径方向内側のプライ部品を有する。カーカスバリア部品が、プライ部品から軸方向内側に、かつプライ部品に隣接して位置し、電子タグ装置が、タイヤカーカスのサイドウォール下側の領域内で、バリア層部品とプライ部品との間のタイヤカーカス内に埋め込まれている。電子タグは、サイドウォール下側のトー位置から、タイヤの断面高さの10パーセントよりも大きい半径方向のタグ距離に位置している。半径方向のタグ距離は、サイドウォール下側のトー位置を基準として測ったとき、タイヤの断面高さの15パーセントから35パーセントの範囲にあるのが好ましい。タグは、生タイヤの製造中、タイヤカーカス内に埋め込まれたとき、通信動作が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、トランスポンダとタイヤの組立体およびその製造方法に関し、特に、トランスポンダが、動作可能に配置されるために組立体として埋め込まれたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブUHF無線周波数の識別トランスポンダのような埋め込み電子装置を組み込むタイヤ組立体によって、タイヤ寿命の間、自動識別プロセスを用いることが可能になっている。そのような識別は、製造および物流サプライチェーンにおける、そしてタイヤ保守サービスおよび他のサービス業務の間における効率化を可能にしている。これらの効率化は、タイヤに組み込まれたトランスポンダに割り当てられたEPCコードのような固有の資産識別子を用いたタイヤを追跡する機能によって実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トランスポンダを、タイヤ製造工程においてできるだけ早期にタイヤに埋め込むことは、考えられる利点を最大にするが、タイヤ製造工程の間またはタイヤの耐用年数の間にトランスポンダの性能またはタイヤの性能を損なわないようになされなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、空気タイヤとタグの組立体は、環状のビード部材のまわりをプライ折り返し部分へと延びる1つ以上の、半径方向内側のプライ部品を有するタイヤカーカスを含み、プライ折り返し部分はビード部材から半径方向外側にプライ折り返し端へと延びている。タイヤカーカスは、プライ部品から軸方向内側に、かつプライ部品に隣接して位置するバリア層部品と、タイヤカーカスのサイドウォール下側の領域内でバリア層部品とプライ部品の間でタイヤカーカスに埋め込まれている電子タグ装置をさらに含んでいる。
【0005】
他の態様では、電子タグは、サイドウォール下側のトー位置からのプライ折り返し端の半径方向距離よりも大きい、サイドウォール下側のトー位置からのタグの半径方向距離の位置に位置している。タグの半径方向距離は、サイドウォール下側のトー位置を基準に測ってタイヤ断面の高さの15パーセントから35パーセントの半径方向の範囲にあるのが好ましい。
【0006】
さらに他の態様では、タグは、生タイヤの製造中、バリア層部品とプライ部品の間で、タイヤカーカス内に埋め込まれたとき、通信が可能である。
【0007】
本発明の他の態様では、前述の構成を有する、空気タイヤとタグの組立体を製造する方法が提供される。
【0008】
定義
タイヤの「アスペクト比」は、パーセントとして表示するために、タイヤの断面幅(SW)に対するタイヤの断面高さ(SH)の比に100%を掛けたものを指す。
【0009】
「非対称のトレッド」は、タイヤの中央面、すなわち赤道面EPのまわりに対称ではないトレッドパターンを有するトレッドを指す。
【0010】
「軸方向の」および「軸方向に」は、タイヤの回転軸線に平行な線または方向を指す。
【0011】
「キャンバ角」は、車両の前輪の傾き角を指す。垂直方向に対して頂部が外側にあるのが正キャンバ、頂部が内側にあるのが負キャンバである。
【0012】
「周方向の」は、軸方向に垂直な環状のトレッドの表面の周囲に沿って延びる線または方向を指す。
【0013】
「赤道中央面(CP)」は、タイヤの回転中心に垂直で、トレッドの中心を通過する平面を指す。
【0014】
「フットプリント」は、速度がゼロで、通常の負荷および圧力下で平坦な面を有する、タイヤトレッドの接触部位または接触領域を指す。
【0015】
「溝」は、トレッドのまわりを、真っ直ぐに、曲線状に、またはジグザグに周方向にまたは横方向に延びることがある、トレッド内の細長い空隙領域を指す。周方向におよび横方向に延びる溝は共通の部分を有することがある。「溝幅」は、溝または溝部分によって占められるトレッド表面領域を、そのような溝または溝部分の長さで割った値に等しく、したがって溝幅は、その長さにわたるその平均幅である。溝はタイヤにおいて異なった深さを有していてもよい。溝の深さはトレッドの外周のまわりで変化してもよく、あるいは1つの溝の深さは一定であるが、タイヤ内の他の溝の深さとは異なっていてもよい。そのような狭いまたは広い溝が、相互接続する広い周方向の溝と比べてかなり小さければ、それらは、当該トレッド領域においてリブのような特徴を維持しようとする「タイバー」を形成するものと見なされる。
【0016】
「インボード側」は、タイヤがホイールにとりつけられ、ホイールが車両に取り付けられたとき、タイヤの、車両に最も近い側を指す。
【0017】
「横の」は軸方向を指す。
【0018】
「横エッジ」は、通常の荷重でありタイヤに空気を入れた状態で測ったとき、軸方向に最も外側のトレッドの接触部位、すなわちフットプリントに接し、赤道中央面に平行な線を指す。
【0019】
「総接触面積」は、横エッジ同士間のトレッド全体の総面積で割った、トレッドの全周のまわりの横エッジ同士の間のトレッド要素に接触する地面の総面積を指す。
【0020】
「非方向性トレッド」は、前方移動の好ましい方向を持たないトレッドであって、トレッドパターンが移動の好ましい方向に確実に揃うようにするために特定の1つまたは複数のホイール位置において車両上に配置されることが要求されないトレッドを指す。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイール位置を必要とする好ましい移動方向を有する。
【0021】
「アウトボード側」は、タイヤがホイールにとりつけられ、ホイールが車両に取り付けられたとき、タイヤの、車両から最も遠い側を指す。
【0022】
「半径方向の」および「半径方向に」は、タイヤの回転軸に半径方向に向かい、またはタイヤの回転軸から半径方向に離れる方向を指す。
【0023】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向の溝によって定められ、第2のそのような溝または横エッジである、トレッド上の、周方向に延びるゴムのストリップを指し、ストリップは完全な深さの溝によっては横方向に分割されていない。
【0024】
「SENER」は、定められた位置における歪エネルギ密度周期を考慮している、測定要素の変形による消失エネルギの測定値を指す。周期は最大値を最小値により定められている。
【0025】
「サイプ」は、トレッド表面を細分してトラクションを改善する、タイヤのトレッド要素に成形された小さい細長い隙間を指し、タイヤのフットプリント内に開いたままの溝とは反対に、サイプは一般に幅が狭く、タイヤのフットプリント内で閉じている。
【0026】
「スリップ角」は、回転平面とタイヤの移動方向との間のずれの角度を指す。
【0027】
「トレッド要素」または「トラクション要素」は、隣接した溝の形状を有することによって定まるリブまたはブロック要素を指す。
【0028】
「トレッド弧幅」は、トレッドの横エッジ同士間で測定されたトレッドの弧長さを指す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】電子タイヤタグ組立体の斜視図である。
【図2】ストリップに入れられたタグの斜視図である。
【図3】タグメモリの機能ブロック図である。
【図4A】電子タグの、従来技術のタイヤにおける位置を示す斜視図である。
【図4B】図4Aの電子タグの、従来技術のタイヤにおける位置を示す断面図である。
【図5A】電子タグの、従来技術のタイヤにおける他の位置を示す斜視図である。
【図5B】図5Aの、タイヤにおける他の位置を示す拡大断面図である。
【図6】本発明を含む、電子タグの他の位置を示す断面図である。
【図7A】SENER勾配対スキージプライ間のタグ位置におけるプライ端からの距離のグラフである
【図7B】タイヤの各断面におけるSENER勾配対タイヤの各断面における歪エネルギ密度周期のグラフである
【図8】RFIDタグの、プライ端に対する位置DR1、DR2を示す、他の構成のタイヤのタイヤビート゛領域を通る断面図である。
【図9A】SENER勾配対、補強部材を有しないAPEX2上のタグ位置におけるプライ端からの距離のグラフである
【図9B】図9Aのタグ位置の場合の、SENER勾配対タイヤの各断面における歪エネルギ密度のグラフである。
【図10】プライ端からの特定の基準距離における、新しいタイヤと耐久試験後のタイヤにおけるタグの読み取り範囲のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、一例によって、そして図面を参照して説明する。
【0031】
まず、図1と図2を参照すると、電子タイヤタグ、すなわちトランスポンダ10は、従来の、市販の構成を有するタイプであり、一対のコイル状アンテナ部分20、22によって形成されたアンテナを含んでいる。集積回路パッケージ(IC)12は、支持基板14に取り付けられ、対向するICパッケージ側部からそれぞれ延びて、導体パッド18と係合する相互接続リード線16を含んでいる。アンテナ20、22はICリード線16に電気的に接続され、かつ外部の送受信機(不図示)とRF信号を送受信するための所定の無線周波数「f」に適切に合わせられている。エポキシのような適切な材料で作られた被覆24がトランスポンダ10をすっぽり覆って、これを保護し、覆われたトランスポンダ10は一対の、層状の生のゴムのストリップ25、26の上面27に取り付けられている。図示されたパッケージは次に、タイヤ製造の間、生タイヤカーカスに組み込まれ、硬化サイクルの間ずっと、生タイヤ内に保持される。
【0032】
動作時、問い合わせ信号がアンテナ部分20、22によって遠隔の送受信機(不図示)から受信され、パッケージ12内の集積回路に送信される。パッケージ12内の集積回路はRF問い合わせ信号を処理して、従来のROM、RAM、または他の知られた種類の記憶装置および記憶回路を含む論理回路に電力を供給する電力信号に変換する。これによって、記憶装置からのデータ送信が可能になり、格納されているデータがアンテナ部分20、22によって送信され外部の読み取り装置または送受信機(不図示)に戻される。
【0033】
タグ10は様々な製品内に組み込まれて、そのような製品に関する格納されたデータを遠隔の読み取り装置に送信するために使用されてもよい。このように、タグ10は、タイヤの寿命までの間、自動識別処理を可能にするパッシブUHF無線周波数識別トランスポンダとして働く。このような識別は、製造および物流サプライチェーンにおける、そしてタイヤ保守サービスおよび他のサービス処理の間における処理効率を上げることを可能にする。これらの効率は、固有の資産識別子(unique asset identifer)を用いることによってもたらされる、固有の資産(unique asset)の正確な追跡機能によって実現される。識別器は、トランスポンダ10に付けられた96ビットのEPCコードであってもよい。トランスポンダ10を、タイヤ製造工程においてできるだけ早期に生タイヤ内に埋め込むことによって、固有コード識別器の使用から可能な考えられる利点が最大になる。
【0034】
図3は、市販されている種類の電子ICタグメモリを概略的に示している。タグメモリは、ICメーカによって、永久的に固定された状態で焼き付けられまたは書き込まれる、部品番号、製造番号などのタグ識別を有する。1つまたは複数の識別番号はこのように、タイヤの製造およびタイヤの使用サイクルを通してアクセス可能である。さらに、ユーザ識別子も、関連するプロトコル制御およびメモリ内容確認CRCを有するEPC番号のように、タグに符号化してもよい。EPCコードは、タイヤ内に埋め込まれたタグに関連し、したがってタグとタイヤの組立体の出生証明書(birth certificate)を表している。さらに、書き込みロック、アクセス、およびキルの各パスワードを、動作アクセスのセキュリティの目的のためにタグ番号に組み込んでもよい。
【0035】
図4A、図4B、図5A、および図5Bを参照すると、タイヤ28に、接着剤のような適切な手段によってタグ10が貼られている、タイヤとトランスポンダの従来の組立体が示されている。タイヤ28は、複数のビード30と、各々各ビード30の半径方向外側に近くに位置する一対のエイペックス32とを含んでいる。エイペックス32は、ビード30の上の、タイヤ内の領域に位置するゴムの充填物を構成しており、その領域は、充填物を構成していなければ空気が閉じ込められうる。エイペックス32の各々は、半径方向外側のエイペックス端33で終わっている。1つ以上のタイヤプライ34、44、インナーライナー36、サイドウォール38がタイヤ製造においてさらに追加される。ベルトパッケージ40がタイヤのクラウンにおいてトレッド42の下に位置している。プライ34、44は、ビードからビードへ延びる、ゴムで被覆されたすだれ織りの複数の層を構成し、ビード30のまわりに折り返されて、ビード30を組立体またはカーカス内へ固定している。複数の平行なコード46が、タイヤカーカスとベルトに強度を与える、ポリエステルレーヨン、ナイロン、スチール、または他の材料からなる、ねじれた繊維またはフィラメントによって形成されて、タイヤプライを補強している。一般に、複数の平行なコード46はビード30から他のビード30へ延びて、タイヤを補強している。
【0036】
生タイヤ28は部品毎に作られる。ビード30は、層端が巻かれ、ビードのまわりに折り返されているので、製造工程を通して生タイヤの完全な状態を維持している。プライ44からのプライ折り返し48は、図示されているように、ビード30の下で巻かれている。各エイペックス32は各ビード30の上方に、かつ各ビード30から半径方向外側に位置し、エイペックス端33へと延びている。トーガード部品50が、タイヤ製造の間、ビード30の外側に位置している。チェーファー部品54がビードのまわりに補強材料で作られ、リムフランジ領域と係合し、それによってリム部品によるタイヤの擦り減りを防ぐように軸方向外側に位置している。チェーファー部品54はチェーファー端56へと延びている。
【0037】
図4A、4B、5A、5Bに示された被覆動作に引き続いて、タグ組立体10は、生タイヤの製造動作の間、タイヤに組み込まれるのが好ましい。図4A、4Bに示すように、タグ組立体10は、エイペックス32、チェーファー54、プライ44とサイドウォール38の間のプライ折り返しの上方のサイドウォールに位置していてもよい。タグ組立体10は、接着剤の使用のような周知の適切な技術によってプライ層44に貼り付けられている。タグは、タグアンテナ部分20、22が、周方向に延びるプライ層に直交して延びるように、タイヤプライ44に対して方向づけられている。特に、スチールで補強されたプライタイヤの場合、タグアンテナ部分20、22はプライ44内のプライコード46に直交して延びている。タグ組立体10をそのような向きに埋め込むことは、タグ組立体10の背後にあるプライのコード46を利用して、タグ組立体10に構造上の支持および補強を与える。タグ組立体10内のアンテナ部分20、22は可撓性があるが、それにもかかわらずアンテナ部分20、22の完全な状態と、それらの、タグ装置10のリード線16との接続を維持するためにアンテナ部分20、22の曲げの程度を制限することが望ましい。アンテナ部分20、22をプライコードに直交させることによって、タイヤの寿命までの間、アンテナ部分20、22の曲げが最小になる。
【0038】
図4Aと図4Bに示されたタグ組立体10の位置は、遠隔の読み取り器によってタグからの良好な読み取りを実現する上で有利であるが、タイヤのサイドウォールはタイヤ内の曲げの大きい領域である。そのような位置で起こる曲げはタグ組立体10に損傷を引き起こすことがあり、そのような位置にタグ組立体10が存在することは、サイドウォールの疲労、損傷、割れの少なくとも1つを生じさせる傾向がある。その結果、タグ組立体10はサイドウォールの領域内の厳しい機械環境によって完全な状態が脅かされることがある。
【0039】
タグ組立体10の、タイヤ28内の他の位置として、図5Aと図5Bの位置を代わりに選択してもよい。この位置では、タグ組立体10は、エイペックス32とプライ34の折り返し35の間の、タイヤエイペックス32の外側表面に接触して位置している。図4Aと図4Bのタグ位置の場合のように、図5Aと図5Bにおけるタグ10の向きは、アンテナ部分20、22がプライコード46の方向に直交するような向きになっている。タグ10は、エイペックス32の両端の間の、エイペックス32の外側表面に当たるように配置されている。タグ組立体10は、接着剤のような適切な手段によってエイペックス32の外側に直接、取り付けられてもよい。図5Aと図5Bに示された位置では、タグ10はプライ端52(から半径方向外側)の上方に位置している。
【0040】
図4A、図4B、図5A、および図5Bに示された、タイヤエイペックスまたはプライの半径方向外側へのタグの貼り付けは機能的なものであるが、タグは、タイヤの製造中、製造ドラムにおける、幾何学的な外周の形状変化の影響から遮断されていない。そのような幾何学的な形状変化は、タグをその意図した位置から移動させることがあり、タグの性能にとって不利になる。さらに、意図した位置にあっても、(タグの付いた)タイヤが後でタイヤのリムに取り付けられ、車両に配置されたとき、タグは最適な耐久性、最適な読み取り範囲、そして最適な性能をもたらさないことがある。
【0041】
図6は、オンロードで使用される代表的なトラックタイヤを示している。タイヤ60は、サイドウォール62、第1のエイペックス68、そして第1のエイペックス68から軸方向外側に位置する第2のエイペックス70を含んでいる。チッパー部品72とフリッパー部品74がビードバンドル76を囲み、チェーファー部品78がビード領域の下に位置し、かつサイドウォール62の下で、外側端79における位置へと半径方向外側に延びている。ライナー層82がタイヤキャビティの範囲を定めている。ここでは、「スキージ」層80とも呼ぶバリア層が、軸方向外側に、ライナー82に隣り合って配置されている。スキージ層80は、タイヤのサイドウォール62の底部にあるトー88を越えて延びている。補強プライ84がスキージ層80から半径方向外側にあり、かつビードバンドル76のまわりに巻かれ、プライ折り返し端86へと延びる折り返し部分85を含んでいる。一対のエイペックス部品68、70がビード領域内に位置し、エイペックス68はエイペックス70から半径方向外側に、かつエイペックス70に隣り合って位置している。寸法の説明のために、ビード領域におけるトー端88が図6と図8に示され、かつ以下で参照される。
【0042】
ゴムのストリップ25、26は、タグ10を支持し、かつ、1つの考えられる構成96では、プライ層84からの折り返し85が、図示のように、ゴムのストリップ25、26同士の間を延びるようにエイペックス68、70同士の間に位置している。タグ10の他の代わりの配置では、位置90に示され、ここでは「プライ/エイペックス1」と呼ぶように、タグ10は、プライ84と、エイペックス70の半径方向内側の表面との間に位置している。タグ10は、タイヤの製造中、接着剤のような適切な手段によってプライ84に貼り付けられる。タグ10の他の代わりの配置では、タグ10は、位置92において、プライ84の半径方向内側の側面と、バリア層80との間に位置している。位置92はここでは「プライ/バリア」位置と呼ぶ。タグ10のさらに他の代わりの配置では、タグ10は、位置94に示すように、インナーライナー82の内側を向いた表面に貼り付けられている。そのような位置を、必要ならば、タイヤの耐用年数の間、タグの修理を行うために用いてもよい。
【0043】
図8は、バスで用いられる種類の市販タイヤ98を示している。タイヤ98は、サイドウォール100と、ゴムのストリップ102によって支持された1つ以上の電子タグ10と、第1のエイペックス106と、第1のエイペックス106から軸方向外側に位置する第2のエイペックス104とを含む。チッパー部品108とフリッパー部品110はビードバンドル112を囲む。チェーファー部品114がビード領域の下に位置し、かつサイドウォール100の下の位置へと半径方向外側に延びている。ライナー層118がタイヤキャビティの範囲を定めている。バリア層116である「スキージ」が、軸方向外側に、ライナー118に隣り合って配置されている。補強プライ120がスキージ層116から軸方向外側にあり、かつビードバンドル112のまわりに巻かれ、プライ折り返し端124へと延びる折り返し部分122を含んでいる。一対のエイペックス部品68、70がビード領域内に位置し、エイペックス68はエイペックス70から半径方向外側に、かつエイペックス70に隣り合って位置している。寸法の説明のために、トー端88が図6と図8においてビード領域に特定および参照され、タグ配置の比較分析のために以下で使用される。
【0044】
ゴムストリップ102は、代わりのタグ位置126、128に配置してもよいタグ10を支持している。位置126において、RFIDタグ10はエイペックス106と104の間でエイペックス106に接触して設けられている。位置128で示された代わりの位置において、タグ10は、該タグがプライ120とスキージバリア116との間でプライ120に取り付けられている「スキージ‐プライ」位置に配置されている。したがって、図8のタグ位置128は図6のタグ位置92に対応している。
【0045】
図6の、代わりのタグ位置90、92、94、96、そして図8中の位置126、128では、タグ10は、タグ10の読み取り性能に影響を与えることがある、タイヤ内の種々の歪レベルを受ける。説明の都合上、タグ位置90、92、94、96(図6)とタグ位置126、128(図8)は、タイヤのサイドウォールのトー先端88からの半径方向距離が基準によって区別されている。図7Aと図7Bのグラフは、図6の位置92(プライ/バリア)のプライ86の端部と、図8のプライ124の端部と、からの異なる半径方向距離にあるタグにおける種々の歪レベルの効果を示している。図7Aでは、プライ端86(図6)からのタグ距離に対するSENER勾配(Gradient)がグラフ化されている。図7Aのグラフは、図7Aの囲み内に示されるフットプリントの入口、フットプリントの中央左、フットプリントの中央右、およびフットプリントの出口の各位置におけるSENER勾配を棒グラフで示している。このようにして、タグが取り付けられるタイヤの領域がタイヤのフットプリントに入り、タイヤのフットプリントを出るときの、タグの性能が与えられる。SENER勾配は、タグのタイヤ取り付け位置のような、測定要素の変形による、タグから消失したエネルギの測定値である。図7Aは、プライ層とスキージバリア層間の定められた位置のデータを表している。周期は最大値と最小値によって定まる。所与のタグ位置におけるSENER勾配が小さければ小さいほど、消失エネルギは少なくなり、タグによってもたらされる読み取り性能は良好になる。図7Bは、中央から水平軸に沿ったタイヤの断面の、J/cmで示されるSENERレベルに対する歪エネルギ密度周期を示している。タグのコード化された配置位置は、図7Bの右側の囲み内に縦に示され、図7Aの横軸に沿って示された、タグの配置位置に対応している。
【0046】
図7Aと図7Bによって示された結果の分析から、スキージ層とプライ層の間のタグの読み取り性能に対する最良の位置は、図6に示されたタイヤの断面高さの15パーセントと25パーセントの間にあることがわかる。したがって、好ましい範囲は、トーから測ったタグの半径方向距離として、市販のタイヤの構造の範囲を考慮すると、タイヤの断面高さの15パーセントと35パーセントの範囲と定められる。図8のDR1とDR2は、サイドウォールの下側のトー端88に対する代わりのタグ位置を参照する方法を示している。好ましいタグ位置はプライの終端位置とは無関係であり、このタグ位置にあるタグは最小のエネルギ消失によって、最適な読み取り性能を有している。図10は、読み取り範囲モデリング結果を、プライ折り返し端からのタグ10の、ミリメータで示される基準距離に対する、読み取り範囲をパーセントで示している。新しいタイヤと、耐久力を試験したタイヤの両方の状態に対する結果が示されている。図10の棒グラフは、図6における位置92と図8における位置126に対して、14mmから22mmの範囲にある読み取り範囲が最適であることを確証している。
【0047】
上記で要約した位置92に対する解析と同様の解析が、タグ10の、図6のエイペックスの位置96に関して図9A、図9Bの棒グラフによって示されている。位置96では、タグ10は、第2のエイペックス68上で、エイペックス68、70同士の間に位置している。図9Aの棒グラフは、エイペックスに取り付けられたタグ位置96の最良の位置はプライ端86から18mmと26mmの間であることを経験によって示している。図9A、図9BのSENER測定値は、そのような位置では、タグが最適な読み取り性能と最小のエネルギ消失を有するであろうことを証明している。
【0048】
タグ10の位置96(図6)または位置126(図8)に対して位置92において試験することによって得られた結果を比較することによって、位置92と位置126におけるSENERレベルから、タグ10の位置がエイペックスの位置96の外部と比較して3倍有利であることが明らかである。最適なプライ/バリア位置92、126はプライ終端高さと無関係であり、したがってフラットなベースタイヤを含む全てのサイズのタイヤにわたる最適な位置を表している。エイペックス位置96はタイヤの製造工程によって動き易いため、プライ/バリア位置92、96におけるタグの位置は、エイペックス位置96の外側よりも、タグの正確、かつ確実な配置を容易にする。
【0049】
要約すると、プライ部品がビード位置のまわりをプライ端へと延び、バリア部品と1つ以上のエイペックス部品から半径方向外側を向いたプライ部品とを含む市販のタイヤでは、読み取り性能の好ましく、かつ有用な結果は、タグ10を、プライ終端(から半径方向外側)の上方14mmから22mmの範囲内でプライ部品とバリア部品の間の位置に取り付けることによって得られる。そのような位置は、エネルギ消失を減らすことによって、タグの読み取り範囲性能のためになり、タグを、タイヤの製造中、より安全確実な位置に置く。
【0050】
本発明における変形が、ここに記載した説明に鑑みて可能である。本発明を説明するために幾つかの代表的な実施形態と詳細な説明を示したが、種々の変形や修正が本発明の範囲から逸脱することなく、ここでなされ得ることが当業者にとって明らかとなろう。したがって、変更が、次の添付の特許請求の範囲によって定まる、発明の意図された全範囲内にある、記載された特定の実施形態においてなされ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気タイヤとタグの組立体において、
環状のビード部材から半径方向外側に位置するプライ折り返し部およびその先端であるプライ折り返し端へと、前記ビード部材のまわりをつながって延びる少なくとも1つの半径方向内側プライ部品および、ビードバンドルのまわりに延びていない前記プライ部品から軸方向内側に、かつ前記プライ部品に隣接して位置するバリア層部品を有し、生タイヤの製造によって形成されるタイヤカーカスと、
前記タイヤカーカスのタイヤの断面高さの10パーセントと40パーセントの間のサイドウォール下側の領域内で、前記バリア層部品と前記プライ部品との間の前記タイヤカーカス内に埋め込まれた電子タグ装置と、
を有することを特徴とする、空気タイヤとタグの組立体。
【請求項2】
前記内側プライ部品が、前記ビード部材のまわりに、前記ビード部材の軸方向内側からその軸方向外側に向かって巻かれていることを特徴とする、請求項1に記載の空気タイヤとタグの組立体。
【請求項3】
前記電子タグが、サイドウォール下側のトー位置からタイヤの断面高さ距離の10パーセントよりも大きい、前記サイドウォール下側のトー位置からのタグの半径方向距離に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の空気タイヤとタグの組立体。
【請求項4】
前記タグの半径方向距離が、前記サイドウォール下側のトー位置を基準に測ったとき、前記タイヤの断面高さの10パーセントよりも大きく、40パーセントよりも小さい半径方向の範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の空気タイヤとタグの組立体。
【請求項5】
前記タグは、該タグが、生タイヤの製造中、前記バリア層部品と前記プライ部品の間で前記タイヤカーカス内に作動するように埋め込まれたとき、通信動作が可能であることを特徴とする、請求項1に記載の空気タイヤとタグの組立体。
【請求項6】
空気タイヤとタグの組立体を製造する方法において、
バリア層部品を、タイヤ製造ドラムの上方で、タイヤカーカスのタイヤサイドウォール領域内に形成することと、
先端であるプライ折り返し端が環状のビード部材から半径方向外側に位置するプライ折り返し部分まで、前記ビード部材の周りをつながって延びる少なくとも1つの半径方向内側のタイヤプライ部品を前記タイヤ製造ドラムの上の前記バリア層の上方に形成することと、
電子タグ装置を、前記タイヤカーカスのサイドウォール下側の領域内の、前記バリア層部品と前記プライ部品の間で前記タイヤカーカス内に埋め込むことと、
を含む、ことを特徴とする、空気タイヤとタグの組み立て体を製造する方法。
【請求項7】
前記電子タグを、サイドウォール下側のトー位置からタイヤの断面高さの距離の10パーセントよりも大きい、前記サイドウォール下側のトー位置からのタグの半径方向距離に配置することを含むことを特徴とする、請求項6に記載の空気タイヤとタグの組立体を製造する方法。
【請求項8】
前記電子タグを、前記サイドウォール下側のトー位置を基準に測ったとき、前記タイヤの断面高さの10パーセントよりも大きく40パーセントよりも小さい、タグの半径方向位置に配置することを含むことを特徴とする、請求項7に記載の空気タイヤとタグの組立体を製造する方法。
【請求項9】
前記電子タグを、前記タイヤカーカスの生タイヤの製造中、前記バリア層部品と前記タイヤ部品との間に通信可能な状態で埋め込むことを含むことを特徴とする、請求項8に記載の空気タイヤとタグの組立体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−240680(P2012−240680A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115793(P2012−115793)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】