説明

埋設物探査装置

【課題】地中レーダ装置の受信信号に含まれる縞状ノイズ成分を容易に除去して画像の視認性を向上する。
【解決手段】2次元画像データにおける全ての反射時間軸方向の1次元画像データf(t)について、1次元ウェーブレット解析により時間−周波数領域へ変換して時間−周波数データを算出して縦縞ノイズの周波数成分を算出した後、ノイズ成分を抽出する第1フィルタリング処理を実行し、元の2次元画像データから抽出した縦縞ノイズ成分を除去する第2フィルタリング処理を実行して縦縞ノイズを除去し、更に、2次元画像データにおける全ての移動距離軸方向の1次元画像データf(t)について、同様のノイズ除去処理を実行して横縞ノイズを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質中に放射した電磁波の受信信号に基づいて埋設物を探査する埋設物探査装置に関し、特に、受信信号データに含まれるノイズ成分の除去処理を容易とした埋設物探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒質中の埋設物を探査する埋設物探査装置として、例えば地中レーダ装置がある。地中レーダ装置は、地上を移動しながら地中に向かって電磁波を放射してその反射波を受信し、その受信信号をデータ処理し、移動距離を横軸、電磁波を放射してから受信するまでの経過時間示す反射時間(深度に対応する)を縦軸とする2次元画像を生成し、この2次元画像から埋設物の反射波を検出して埋設物を探査する。
【0003】
ところで、地中レーダ装置の受信信号には、地中を進むことによる減衰に加え、ランダムノイズ(外来ノイズ、回路の信号の漏れ込み等)の影響や、地表面からの反射波の影響や、地表面の凹凸等による地表面とのカップリングによりアンテナ感度の増減等に起因する信号の揺らぎの影響等がノイズとして存在し、これらノイズ成分の存在は、2次元画像内の埋設物からの反射波の検出を困難にしている。2次元画像において、ランダムノイズの影響についてはデータの平均化処理により除去できるが、地表面反射波の影響は地表面近くに横縞状の像(以後、これを横縞ノイズと呼ぶこととする)として表れ、例えば板状や箱状等の埋設物のように横方向に連続して発生する所望の反射波との識別を難しくしている。また、信号の揺らぎの影響は縦縞状の像(以後、これを縦縞ノイズと呼ぶこととする)として表れ、信号の揺らぎが大きい場合には深い埋設物からの微弱な反射波より信号強度が大きくなり、埋設物の反射波が埋もれ埋設物の検出精度を低下させる虞れがある。
【0004】
このような縦縞ノイズや横縞ノイズのような縞状ノイズによる問題を解決する方法として、例えば特許文献1に記載されたような縞状ノイズの影響を軽減するための探査装置が提案されている。この探査装置は、受信強度情報と反射時間情報を持つ受信信号データについてフーリエ変換を用いて受信強度−周波数領域へのデータ変換を行って周波数解析し、ノイズ成分の周波数帯域を特定してフィルタリング処理し、ノイズ成分を除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2893010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された探査装置のように、フーリエ変換による周波数解析を用いた場合、反射時間軸方向に周波数解析すると反射時間情報が失われてしまい、以下のような問題点がある。即ち、埋設物からの反射信号は受信強度が微小であるため、受信信号に埋設物からの反射信号が含まれていたとしても周波数解析時にはほとんどわからないレベルにある。このため、ノイズ成分と所望の反射信号成分の切り分けが難しく、ノイズ成分の周波数帯域の特定が難しく熟練者による解析が必要である。また、特許文献1では、所望の反射信号成分を50MHz〜200MHzとして帯域通過フィルタを設計してノイズ成分を除去するようにしているが、例えば、地中レーダ装置の特性から、地表面の状況(凹凸具合)や媒質の違い(誘電率の違い)、或いは埋設物の深度等により、所望の反射信号の周波数成分やノイズの周波数成分が異なり、確実にノイズ成分を除去できるとは限らない。
【0007】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、受信信号に含まれる縞状ノイズ成分の除去処理が容易な埋設物探査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明の埋設物探査装置は、媒質の表面を移動しながら電磁波を前記媒質中に放射してその反射波を受信する電磁波送受信手段と、前記受信信号データに基づいて、受信強度に対する移動距離と電磁波の放射から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データを生成する画像データ生成手段と、生成した前記2次元画像データについて、時間情報と関連させた時間−周波数データを算出する時間−周波数データ算出手段と、前記2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分特定のために算出した前記時間−周波数データに基づいてフィルタリング処理を行って前記2次元画像データについて縞状ノイズ成分の除去処理を行う縞状ノイズ除去処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、電磁波送受信手段で、媒質の表面を移動しながら電磁波を媒質中に放射してその反射波を受信して受信信号データを収集する。画像データ生成手段は、電磁波送受信手段によって収集した受信信号データに基づいて、受信強度に対する移動距離と電磁波の放射から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データを生成する。時間−周波数データ算出手段は、例えばウェーブレット変換を用いて、生成した2次元画像データについて時間−周波数領域への変換を行い時間情報と関連させた時間−周波数データを算出する。縞状ノイズ除去処理手段は、2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分特定のために算出した時間−周波数データに基づいてフィルタリング処理を行って2次元画像データについて縞状ノイズ成分の除去処理を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の埋設物探査装置によれば、媒質中に電磁波を放射して収集した受信信号データから生成した2次元画像データについて時間情報と関連させた時間−周波数データを算出し、この時間−周波数データから2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分を特定してフィルタリング処理を行って2次元画像データから縞状ノイズ成分を除去する構成としたので、2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分と埋設物からの反射波の周波数成分の識別が容易となり、容易に縞状ノイズの周波数成分を特定できるため、縞状ノイズ成分の除去処理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る埋設物探査装置の第1実施形態である地中レーダ装置の構成図。
【図2】同上実施形態のデータ処理動作のフローチャート。
【図3】図2の縞状ノイズ成分除去処理工程のフローチャート。
【図4】送受信部で収集される2次元画像を説明する概略図。
【図5】縦縞ノイズ除去工程で選択する反射時間軸方向の1次元画像データの例を示す図。
【図6】図5で選択した1次元画像データのウェーブレット変換を用いた解析結果を示す図。
【図7】横縞ノイズ除去工程で選択する移動距離軸方向の1次元画像データの例を示す図。
【図8】図7で選択した1次元画像データのウェーブレット変換を用いた解析結果を示す図。
【図9】原画像と第1実施形態のデータ処理後の画像の比較図。
【図10】本発明の第2実施形態による縞状ノイズ成分除去処理工程のフローチャート。
【図11】第2実施形態のデータ処理後の画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る埋設物探査装置の第1実施形態である地中レーダ装置の構成図を示す。
【0013】
図1において、地中レーダ装置1は、筐体2内に電磁波を送受信して受信信号データを収集する電磁波送受信部としての送受信部10と、送受信部10の収集した受信信号データを解析するデータ解析部20とを備えて構成される。この地中レーダ装置1を、例えば台車に載置して一方向に移動させながら電磁波を媒質として例えば土壌表面に向けて放射し、その反射波を受信して送受信部10により受信信号データを収集し、受信信号データをデータ解析部20で解析し、土壌内の埋設物を探査する。尚、地中レーダ装置1に直接車輪を取付けて移動可能な構成としてもよい。
【0014】
前記送受信部10は、送信器11と、受信器12と、信号強度変調部13と、制御部14と、を備える。前記送信器11は、例えばチャープ波等のパルス状の電磁波を送信アンテナ11aから媒質として例えば土壌表面に向けて放射する。前記受信器12は、地中から反射した埋設物3からの反射波を受信アンテナ12aで受信する。前記信号強度変調部13は、電磁波の送信から受信までの経過時間を示す反射時間が長くなる(即ち、深度が深くなる)につれて受信信号強度が減衰するのを補正するもので、例えば電磁波の送信タイミングに同期して反射時間の増加に伴い受信器12の増幅率を所定の変化率で自動的に高くして受信信号の振幅を増大補正して必要な信号強度を確保する。前記制御部14は、送受信部10の動作を制御するもので、送信器11の電磁波送信タイミングや信号強度変調部13による受信信号増幅率変化タイミング等を制御する。また、制御部14は、受信器12から入力する振幅補正後の受信信号に対して、例えば波形のスムーシング等の雑音除去処理やA/D変換処理等の前置処理を施し、ディジタル信号としてデータ解析部20へ出力する。
【0015】
前記データ解析部20は、メモリ22を含むデータ処理部21と、入力部23と、表示部24と、ハードディスク25と、を備え、送受信部10から送信される受信信号データを解析して縞状ノイズ成分の除去処理を行い、受信強度に対する移動距離x(図1中のx軸方向)を横軸、前記反射時間t(図1中のt軸方向)を縦軸とした2次元画像を表示部24に表示するもので、例えばパーソナルコンピュータである。前記データ処理部21は、送受信部10から送信される受信信号データに基づいて、受信強度に対する移動距離xと反射時間tとの関係を示す2次元画像データを生成してメモリ22に格納し、生成した2次元画像データについて例えばウェーブレット変換を用いて時間-周波数領域への変換を行うことにより時間情報と関連させた時間−周波数データを算出し、2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分特定のために算出した前記時間−周波数データに基づいてフィルタリング処理を行って2次元画像データについて縞状ノイズ成分の除去処理を行う。尚、時間情報と関連させた時間−周波数データとは、時間情報を持った信号周波数データを意味する。従って、データ処理部21が、画像データ生成手段、時間−周波数データ算出手段及び縞状ノイズ除去手段の機能を備える。前記入力部23は、データ処理部21に対する外部からの指示を入力するもので、例えばキーボード等である。前記表示部24は、データ処理部21における各処理段階での画像データや出力結果等を表示するもので、例えば液晶ディスプレイ等である。前記ハードディスク25は、各処理段階での画像データや出力結果等を保管格納するもので、例えば磁気ディスク等である。
【0016】
次に、図2及び図3のフローチャートを参照してデータ処理部21のデータ処理動作を説明する。
図2は、本実施形態の全体的処理工程の概略を示すフローチャートである。
ステップ1(図中、S1で示し以下同様とする)では、前述したように送受信部10で収集しディジタル化された受信信号データを取得し、受信強度に対する2次元画像データを生成し、メモリ22に格納する。2次元画像データは、所定のサンプリング間隔でサンプリングされた多数の移動距離xと反射時間tの関係を示す2次元画像データf(x、t)として格納される。尚、2次元画像データf(x、t)は、図4に示すように移動距離xを横軸、反射時間tを縦軸として表示部24に表示されるものである。この2次元画像データf(x、t)には、地表面からの強い反射波等に起因する横縞ノイズ成分や、地表面の凹凸等による地表面とのカップリングによるアンテナ感度の増減等に起因する縦縞ノイズ成分が存在している。
【0017】
ステップ2では、ステップ1で生成した2次元画像データf(x、t)について、図3に示す縞状ノイズの除去処理を実行する。
【0018】
ステップ3では、ステップ2で得られる縞状ノイズの除去された2次元画像データについて、ランダムノイズ除去のための平均化処理を実行する。平均化処理は、従来周知の処理手法であり、例えば予め設定した数の2次元画像データの反射時間t毎の信号強度を加算平均処理する。
【0019】
ステップ4では、平均化処理後のデータの信号強度(振幅)について、反射時間t軸方向にレベル調整する。これにより、画像のコントラストが調整されて表示部24で表示される画像の視認性を向上させることができる。
【0020】
図3は、図2のステップ2の縞状ノイズの除去処理動作を示すフローチャートである。
本実施形態は、縞状ノイズとして縦縞ノイズと横縞ノイズの両方の除去処理を含むものである。ステップ11〜15に、縦縞ノイズの除去処理手順を示す。
【0021】
ステップ11で、図4における縦方向の反射時間t方向1次元画像データf(t)を任意に選択する。
【0022】
ステップ12では、選択した1次元画像データf(t)について、1次元ウェーブレット解析により、縦縞ノイズの周波数成分を算出する。具体的には、選択した1次元画像データf(t)について、1次元ウェーブレット変換を用い、数1に示す(1)式のウェーブレット変換式により時間−周波数領域への変換を行って時間−周波数データを算出することにより、縦縞ノイズの周波数成分を算出する。
【0023】
【数1】

ここで、Wは変換結果、Ψは母関数、*は複素共役を表す。また、aはスケールパラメータ、bはシフトパラメータと呼び、1/(a)1/2はウェーブレットのエネルギーを規格化するものである。aとbによりつくられる基底関数を核関数とする積分変換がウェーブレット変換である。
【0024】
ステップ13では、2次元画像データf(x、t)について、全ての反射時間t方向の1次元画像データf(t)の解析が完了したか否かを判定し、判定がNOであればステップS11で別の1次元画像データf(t)を選択してS12の動作を行う。全データの解析が完了して判定がYESになれば、ステップ14に進む。
【0025】
ステップ14では、ノイズ成分を抽出する第1フィルタリング処理を実行する。これは、ステップ13で算出した信号周波数データから縦縞ノイズ成分を抽出するためのカットオフ角周波数ωcを特定し、特定したカットオフ角周波数ωcにより数2の(2)式を用いてガウシアンパラメータσを計算し、縦縞ノイズ成分を通過させる数3の(3)式で表される周波数特性H(z)を有するフィルタを設計し、そのフィルタを用いて縦縞ノイズ成分を抽出する。
【0026】
【数2】

【0027】
【数3】

ここで、Δはサンプリング周期、nは時点(時間インデックス)を示す。
【0028】
ステップ15では、元の2次元画像データから抽出した縦縞ノイズ成分を除去する第2フィルタリング処理を実行する。これは、2次元画像データf(x、t)から抽出した縦縞ノイズ成分を引く処理を行う。このフィルタリング処理は、元の2次元画像データを原信号としてU(z)とし、フィルタリング処理後の信号をY(z)とすると、下記の式で表される。
Y(z)={1−H(z)}U(z)
=U(z)−H(z)・U(z) ・・・ (4)
ここで、H(z)・U(z)が縦縞ノイズ成分を示している。
【0029】
ステップ16では、ステップ15で得られた信号Y(z)に対して、図4における横方向の移動距離x方向1次元画像データf(x)を任意に選択して横縞ノイズの除去処理を実行する。この横縞ノイズ除去処理は、ウェーブレット解析に用いる1次元画像データを、f(t)からf(x)に置き換え、縦縞ノイズ除去処理と同様の式を用いてウェーブレット解析により、時間−周波数データを算出すればよい。
【0030】
図5〜図8に、ウェーブレット解析の一例を示す。図5は、原画像に対して縦縞ノイズの周波数成分を特定するための1次元画像データf(t)の選択例を示し、図6(a)〜(c)は、図5の3つの1次元画像データf1(t)〜f3(t)のウェーブレット解析結果をそれぞれ示したものである。尚、図5の右側の図は左側の円内を拡大した図である。図7は、原画像に対して横縞ノイズの周波数成分を特定するための1次元画像データf(x)の選択例を示し、図8(a)〜(c)は、図7の3つの1次元画像データf1(x)〜f3(x)のウェーブレット解析結果をそれぞれ示したものである。尚、図5及び図7は、深い位置の反射波を視認し易くするためにコントラストを強く調整した画像である。また、図6及び図8において、右側のスケールは強度を示し、図中の色が薄い部分程、受信信号強度が強い。図8の縦軸は波数である。
【0031】
図6から、反射波の位置により反射波の反応が移動しているが、周波数帯域が150〜200MHz付近で一定しており、縦縞ノイズ成分が100MHz以下に存在していると見なすことができる。また、図8において、1次元画像データf1(x)の解析結果を示す(a)から、0.5(1/m)付近に強い反応が広く見られ、1次元画像データf2(x)の解析結果を示す(b)から、反射波が1〜2(1/m)に強く出現することが分かり、1次元画像データf3(x)の解析結果を示す(c)から、0.5(1/m)付近での反応が見られない。従って、0.5(1/m)付近の強い反応が地表面反射波の成分と見なすことができる。これら解析結果から、縦縞ノイズ成分及び横縞ノイズ成分を抽出するためのカットオフ周波数角ωcを特定することができる(例えば、図6及び図8の解析結果からは、縦縞ノイズ成分を抽出するためのカットオフ周波数角は100MHz、横縞ノイズ成分を抽出するためのカットオフ周波数角は0.5(1/m)と特定する)。
【0032】
図9に、本実施形態のデータ処理を適用して生成された2次元画像の例を、データ処理前の原画像と共に示す。図9(a)の原画像に見られる縦縞及び横縞ノイズは、同図(b)の除去処理後の画像では存在していないことがわかる。
【0033】
本実施形態のデータ処理を適用すれば、縞状ノイズ成分の除去処理が容易になると共に、図9に示すように縞状ノイズ成分のない生成画像により埋設物からの反射波(図中の三日月状の部分)の視認性が向上する。
【0034】
上記実施形態では、縞状ノイズ成分をフィルタリング処理で抽出し、原信号から抽出したノイズ成分を除去するフィルタリング処理を行うことにより、縞状ノイズを除去した画像データを生成したが、図10に示すように、原信号から所望の反射信号成分を直接抽出することにより最終の画像データを生成してもよい。
【0035】
図10は、本発明の第2実施形態によるデータ処理部によるノイズ除去処理動作のフローチャートである。尚、第2実施形態は、縞状ノイズの除去処理動作が第1実施形態と異なるだけであり、ハードウエア構成及びその他のデータ処理動作に関しては第1実施形態と同じであるので、これらの説明はここでは省略する。
【0036】
以下に、図10のフローチャートを参照しながら第2実施形態の縞状ノイズ成分の除去処理動作を説明する。
ステップ21では、第1実施形態と同様にして送受信部10で収集しメモリ22に格納した2次元画像データから、例えば、縦方向の反射時間t方向1次元画像データf(t)を任意に選択する。尚、任意に選択する1次元画像データは、横方向の移動距離x方向1次元画像データf(x)であってもよい。
【0037】
ステップ22では、選択した1次元画像データf(t)について、1次元ウェーブレット解析により、所望の反射信号の周波数成分を算出する。この処理は、第1実施形態と同様に、選択した1次元画像データf(t)について、1次元ウェーブレット変換を用い、時間−周波数領域への変換を行って時間−周波数データを算出することにより、所望の反射信号の周波数成分を算出する
【0038】
ステップ23では、2次元画像データf(x、t)の全ての反射時間t方向の1次元画像データf(t)の解析が完了した否かを判定し、全ての反射時間t方向の1次元画像データf(t)の解析が完了するまでステップ22の動作を繰返し、完了したらステップ24に進む。
【0039】
ステップ24では、ステップ14と同様に、ステップ23で算出した時間−周波数データから所望の反射信号成分を抽出するための周波数領域を特定して所望の反射信号成分を抽出するフィルタを設計し、そのフィルタを用いて所望の反射信号成分を抽出するフィルタリング処理を実行する。
【0040】
このように、原画像から所望の反射信号成分を直接抽出するデータ処理を適用して生成された2次元画像の例を図11に示す。図9の(b)と図11と比較しても明らかなように、両者の画像にはほとんど違いがなく、縞状ノイズを適切に除去できる。
【0041】
尚、上記第1実施形態では、縞状ノイズ成分除去処理として、縦縞ノイズと横縞ノイズの両成分の除去処理を行ったが、縦縞ノイズ成分と横縞ノイズ成分のいずれか一方についてだけ除去処理を行うものでもよい。
【0042】
また、第1実施形態のノイズ成分の抽出に用いるフィルタとして、本実施形態で述べた(3)式で示すフィルタに代えて直線位相を持つFIR型フィルタを使用することもできる。
【0043】
また、本実施形態では、時間情報と関連させた時間−周波数データを算出するのにウェーブレット変換を用いたが、短時間フーリエ変換を用いて時間−周波数データを算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 地中レーダ装置
3 埋設物
10 送受信部
11 送信器
11a 送信アンテナ
12 受信器
12a 受信アンテナ
14 制御部
20 データ解析部
21 データ処理部
22 メモリ
23 入力部
24 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質の表面を移動しながら電磁波を前記媒質中に放射してその反射波を受信する電磁波送受信手段と、
前記受信信号データに基づいて、受信強度に対する移動距離と電磁波の放射から受信までの経過時間を示す反射時間との関係を示す2次元画像データを生成する画像データ生成手段と、
生成した前記2次元画像データについて、時間情報と関連させた時間−周波数データを算出する時間−周波数データ算出手段と、
前記2次元画像データに含まれる縞状ノイズの周波数成分特定のために算出した前記時間−周波数データに基づいてフィルタリング処理を行って前記2次元画像データについて縞状ノイズ成分の除去処理を行う縞状ノイズ除去処理手段と、
を備えることを特徴とする埋設物探査装置。
【請求項2】
前記時間−周波数データ算出手段は、前記2次元画像データについてウェーブレット変換を用いて時間−周波数領域への変換を行い、前記時間−周波数データを算出する請求項1に記載の埋設物探査装置。
【請求項3】
前記時間−周波数データ算出手段は、前記2次元画像データの反射時間軸方向と移動軸方向の少なくとも一方について、前記ウェーブレット変換を用いて時間−周波数領域への変換を行う請求項2に記載の埋設物探査装置。
【請求項4】
前記縞状ノイズ除去処理手段は、前記時間−周波数データに基づいて縞状ノイズ成分を抽出する第1フィルタリング処理を行い、前記第1フィルタリング処理で抽出した縞状ノイズ成分を前記2次元画像データから除去する第2フィルタリング処理を行う構成である請求項1〜3のいずれか1つに記載の埋設物探査装置。
【請求項5】
前記縞状ノイズ除去処理手段は、前記時間−周波数データに基づいて埋設物からの反射信号成分を抽出するフィルタリング処理を行い、前記2次元画像データから縞状ノイズ成分を除去する請求項1〜3のいずれか1つに記載の埋設物探査装置。
【請求項6】
前記画像データ生成手段で生成した2次元画像データ及び前記縞状ノイズ除去処理手段によって縞状ノイズ成分を除去した後の2次元画像データのどちらか一方の画像データについて平均化処理を施す平均化処理手段を備える請求項1〜5のいずれか1つに記載の埋設物探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−247844(P2011−247844A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123940(P2010−123940)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 電気学会主催2009年12月2日産業計測制御研究会
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】