説明

埋込形照明灯

【課題】
基台内に浸入した水が凍って灯体を破壊することが抑制される埋込形照明灯を提供する。
【解決手段】
埋込形照明灯1は、光源18および上面9a側に光源18の放射光が出射される出射口15を有する灯体2と、開口部39を有する有底の箱状に形成され、地面3に埋め込まれているとともに、灯体2を開口部39に取り付けている基台6と、基台6内に浸入した水に溶け出すように基台6内に配設されている凍結防止剤5とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、地面に埋め込み設置される埋込形照明灯に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の埋込形照明灯としては、例えば空港の滑走路や誘導路に設置され、航空機を誘導する埋込形航空標識灯が知られている。この埋込形航空標識灯は、灯体を備え、この灯体の上部が路面から少し突出した状態で路面に埋め込み設置されており、その灯体の上部に側方へ向けて設けられている窓部から出射溝を経由して光を出射し、航空機の操縦者から視認できるようにしている。
【0003】
そして、灯体は、路面に埋設された基台に、間座および調整リングを介して埋め込み設置されている。基台は、ゴムトランスを配設しているハンドホールに配管により接続され、基台内には、ハンドホールから配管を通して電源線が引き込まれている。この電源線は、レセプタクルなどを介して灯体に接続されている(例えば特許文献1参照。)。また、灯体は、防水用パッキンを介して基台側に液密に取り付けられており、基台内に雨水などの水分が浸入しないようにしている。
【0004】
しかしながら、基台内には、ハンドホール側から配管を介して水が浸入している。これは、埋込形航空標識灯を設置する業者が配管に防水用パッキンなどを介在させずに電源線を配線していることによる。基台内は、浸入した水が相応に溜まり、灯体に達するまで溜まっていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223253号公報(第7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、灯体に配設される光源は、発熱量が比較的小さい発光ダイオードが用いられている。そして、寒冷地の空港においては、地面が凍結することがある。
【0007】
灯体が水に浸った状態で地面が凍結すると、発光ダイオードの発熱によっては水の温度低下を阻止することができず、水が凝固して体積が膨張する。そして、この凝固によって形成された氷から膨張に伴う圧力が灯体に加わって灯体が破壊することがあった。
【0008】
本発明の実施形態は、基台内に浸入した水が凝固して灯体を破壊することが抑制される埋込形照明灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の埋込形照明灯は、灯体、基台および凍結防止剤を備える。
【0010】
灯体は、光源および上面側に光源の放射光が出射される出射口を有してなる。
【0011】
基台は、開口部を有する有底の箱状に形成されている。そして、地面に埋め込まれて、灯体を開口部に取り付ける。
【0012】
凍結防止剤は、基台内に浸入した水に溶け出すように基台内に配設される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、基台内に浸入した水に凍結防止剤が溶け出すことにより、水の凝固点が低下するので、基台が埋め込まれる地面の温度が低下しても、基台内の水が凝固しにくくなり、これにより、基台内に浸入した水の凝固によって形成される氷から加わる圧力によって灯体が破壊されることが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す埋込形照明灯の概略上面図である。
【図2】同じく、埋込形照明灯の概略縦断面図である。
【図3】同じく、埋込形照明灯への配線を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の埋込形照明灯は、空港の滑走路や誘導路などの地面(路面)に埋め込み設置される埋込形航空標識灯1であり、図1ないし図3に示すように構成される。
【0017】
図3において、埋込形航空標識灯1は、灯体2、この灯体2を取り付けて地面(路面)3に埋め込まれて設置されている設置体4および灯体2に取り付けられ設置体4内に配設されている凍結防止剤5を備えている。そして、設置体4は、有底で略円筒状の基台6、この基台6上に取り付けられた埋め込み深さ調整用の略円筒状の間座7およびこの間座7上に取り付けられた水平軸調整のための円環状の調整リング8を備えている。そして、設置体4は、調整リング8の上面8a周辺部が地面3と略同一高さとなるように埋め込み設置されている。
【0018】
図2において、灯体2は、略円盤状の上部灯体9および略皿状の下部灯体10による2つ割り構造に形成されている。そして、上部灯体9および下部灯体10は、Oリング11を介して覆合され、ビス12により固着されている。これにより、内部空間13が液密に形成されている。上部灯体9は、高強度金属例えばアルミニウム(Al)を鋳造して形成され、下部灯体10は、例えばアルミダイキャストにより形成されている。
【0019】
上部灯体9の上面9aは、平坦状の頂面14を有するように膨出されているとともに、図1に示すように、頂面14の両端側が切り欠きされている。さらに頂面14の一端側が切り欠きされて、出射口としての光導出溝15が形成されている。光導出溝15は、図2に示すように、内部空間13に連通し、平坦状の頂面14に対して斜め上方に向かうように形成されている。
【0020】
下部灯体10は、内部空間13に平面状の取付け板16を配設している。この取付け板16には、取付け部材17を介して光源18が取り付けられている。光源18は、基板18aに実装された発光ダイオード18bなどを有して形成されている。
【0021】
また、上部灯体9には、プリズム19を収容するプリズム収容部20が形成されている。このプリズム収容部20は、光導出溝15に連通されている。プリズム19は、例えば強化ガラスからなり、略台形状に形成され、プリズム収容部20に収納されている。そして、プリズム19には、シリコーンゴム製の枠状をなすパッキング21が配設されている。プリズム19は、光導出溝15および内部空間13に液密に配設されている。
【0022】
プリズム19は、光源18からの光が入射され、この光が光導出溝15から斜め上方に出射されるように光路規制を行うものである。そして、光源18は、その放射光がプリズム19に入射するように、プリズム19の入射面に対向して内部空間13に配設されている。
【0023】
光源18は、図示しないリード線により、取付け板16に配設された電源装置22に接続されている。この電源装置22は、図示しないリード線により、下部灯体10の底面部23に設けられた受電端子24に接続されている。電源装置22は、受電端子24に外部電源が供給されると、光源18に所定の電流を供給するように形成されている。これにより、光源18は、点灯して可視光を放射する。
【0024】
そして、灯体2は、図1に示すように、その上部灯体9の上面9aの周縁側に凹部25が形成されている。この凹部25に形成された図示しない通孔に、調整リング8からスタットボルト26が挿通されて、上部灯体9の上面9a側においてナット27が締め付けられている。灯体2は、スタットボルト26およびナット27により、調整リング8に収容されて固定されている。
【0025】
図2において、調整リング8は、それぞれアルミニウム製の第1および第2の部材28、29からなっている。第1の部材28は、リング状に形成され、第2の部材29は、環状座に形成されている。第1および第2の部材28、29は、4個のボルト30により一体化されている。すなわち、第1の部材28の周縁部側には、図1に示すように、周方向に90°回転間隔で4個の凹所31が形成されている。そして、図2に示すように、凹所31には、ボルト30の図示しない挿通孔が形成され、第2の部材29には、ボルト30のねじ孔32が形成されている。
【0026】
そして、第2の部材29は、上述したように、スタットボルト26およびナット27により、灯体2に固定されている。これにより、灯体2は、調整リング8に固定されている。そして、調整リング8は、間座7に固定されている。
【0027】
間座7は、例えばアルミニウムからなり、リング体33およびリング体34に2分割されている。リング体33は、基台6に跨座している。リング体34は、リング体33に上側から嵌合して、図示しないねじによりリング体33に固定されている。
【0028】
そして、リング体34は、調整リング8の第2の部材29にボルト35により固定されている。すなわち、第2の部材29の周縁部側には、図1に示すように、第1の部材28によって、第1の部材28の凹所31の中間であって周方向に90°回転間隔で4個の凹所36が設けられている。この凹所36には、ボルト35が上下方向に貫通される長孔37が形成されている。そして、図2に示すように、リング体34には、ボルト35のねじ孔38が形成されている。ボルト35がねじ孔38に完全にねじ込まれることにより、調整リング8および灯体2は、間座7に取り付けられている。このとき、調整リング8の上面8aが地面3にほぼ位置するように、間座7の大きさが設定されている。
【0029】
基台6は、例えばアルミニウムからなり、例えば鋳造により、上端側6aに開口部39、側面6bに接続部40および内部に内部空間41を有する有底の箱状(略円筒状)に形成されている。そして、基台6は、図示しないねじにより、間座7のリング体33を固定している。すなわち、リング体33の凹部42には、ねじが貫通される図示しない貫通孔が形成され、基台6の上端側6aには、当該貫通孔に対応する図示しないねじ孔が形成されている。基台6に間座7が固定されることにより、基台6は、調整リング8および灯体2を取り付けている。すなわち、基台6は、その開口部39に間座7および調整リング8を介して灯体2を取り付けている。
【0030】
基台6の側面6bに形成された接続部40は、配管43が嵌入される貫通口であり、配管43が接続されている。この配管43を介して後述のハンドホール48から電源ケーブル44が引き込まれている。電源ケーブル44の先端には、レセプタクル45が取り付けられている。
【0031】
灯体2の下部灯体10の底面部23の下面23bには、受電端子24を配設している防水コネクタ46が設けられている。この防水コネクタ46に装着されるコネクタ47を有するプラグ付き電源線48,48が基台6内に収納されている。当該電源線48,48は、電源ケーブル44のレセプタクル45および防水コネクタ46(受電端子24)を電気接続している。なお、レセプタクル45、コネクタ47およびプラグ付き電源線48,48などは、防水性を有するように形成されている。
【0032】
そして、基台6の内面6cは、水や凍結防止剤5などに腐食しにくくするために、アルマイト6eが形成されている。すなわち、基台6の内面6cは、凍結防止剤5に対する腐食処理が施されている。
【0033】
配管43は、図3に示すように、地面3に埋め込み設置されたハンドホール48に接続されている。ハンドホール48内には、ゴムトランス(ゴム被覆絶縁変圧器)49が配設されている。ゴムトランス49は、定電流電源装置(CCR)50から出力された交流定電流が一次ケーブル51,52を通じて入力され、変換した交流定電流を電源ケーブル(二次ケーブル)44を通じて埋込形航空標識灯1に供給する。
【0034】
そして、ハンドホール48は、大気に開放され又は雨水などに対する防水対策が施されていないので、その内部に雨水などの水が浸入し、ハンドホール48内に溜まる。ハンドホール48内に溜まった水は、その水面が配管43の配設位置まで上昇すると、配管43を通じて埋込形航空標識灯1の基台6内に浸入する。そして、ハンドホール48内の水面(水位)が上昇するにしたがい、基台6内の水面が上昇していくものである。
【0035】
図2において、灯体2の下部灯体10の底面部23の下面23bには、鍔部(取付け部)53を有するメッシュ構造の箱体54が配設されている。箱体54は、その鍔部53が底面部23の下面23bに図示しない取付けねじ等の固定手段により取り付けられている。そして、箱体54内に、凍結防止剤5が配設されている。
【0036】
箱体54は、仮に凍結防止剤5が配設されていなく、基台6内の水が凝固して体積が膨張した氷が形成されたときに、その氷の表面が灯体2の下部灯体10の下面23bに当接するときの凝固前の水の水面位置が前記下面23bからの高さとなるように形成されている。こうして、凍結防止剤5は、灯体2の下部灯体10の下面23b側近傍に配設されている。
【0037】
凍結防止剤5は、水に容易に溶け出すとともに水の凝固点を低下させるもの例えば顆粒状の酢酸ナトリウム(CH3CO2Na)が用いられている。そして、凍結防止剤5は、埋込形航空標識灯1内に水が充満して全て溶け出したときに、その濃度が例えば25%以上となるように箱体54内に収納されている。
【0038】
なお、凍結防止剤5は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)などの塩化物も用いてもよい。しかし、それらは、金属である基台6や灯体2などを腐食しやすいので、金属などを腐食させにくいものを用いるのが望ましい。
【0039】
また、凍結防止剤5は、基台6の底面6dに載置するように設けられていてもよい。すなわち、凍結防止剤5は、基台6内に浸入した水に溶け出すように基台6内に配設されていればよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用について述べる。
【0041】
ハンドホール48内に浸入した水の水面(水位)が配管44の配設位置に上昇すると、設置体4の基台6内に配管44を通じて水が浸入する。基台6内は、ハンドホール48内の地面3表面からの水位と略同等の水位となるように水が溜まる。そして、ハンドホール48内の水面が上昇するにしたがい、基台6内の水面が上昇する。
【0042】
基台6内の水面が灯体2の下部灯体10の下面23b近傍に上昇すると、箱体54に配設されている凍結防止剤5が水に浸されるようになる。凍結防止剤5は、水に徐々に溶け出していく。そして、水の水面がさらに上昇すると、凍結防止剤5は、水に浸される部分が多くなり、水に溶け出す量が多くなっていく。また、灯体2は、水に浸る部分が多くなっていく。さらに、調整リング8も水に浸されるようになる。
【0043】
水に溶け出した凍結防止剤5は、水内に拡散し、溶け出す量が多くなるにしたがって、水内での濃度が次第に上昇していく。この濃度上昇に伴って、水の凝固点が次第に低下していく。水の凝固点は、凍結防止剤5の水内での濃度が所定値(27%程度)となったときに、−25℃となる。この水の凝固点が低下した状態で、地面3が凍っても、少なくとも−25℃となるまでは、設置体4の水は、凍らないものである。したがって、水が凝固して形成された氷の体積が膨張し、灯体2などに圧力を加えることがないので、灯体2や設置体4などの破壊が防止される。
【0044】
そして、凍結防止剤5としての酢酸ナトリウム(CH3CO2Na)は、金属等を腐食させにくいので、水に溶け出した酢酸ナトリウムによって、灯体2や設置体4などが腐食されることが抑制される。
【0045】
また、ハンドホール48内の水の水面が低下すると、基台6内の水面も低下していくとともに、基台6の内面6cに酢酸ナトリウムが付着する。酢酸ナトリウムは、金属等を腐食させにくく、また、基台6の内面6cには例えばアルマイト6eによる防食処理が施されているので、基台6に錆びなどが発生するなどの防食が防止される。
【0046】
上述したように、少なくとも地面3の温度が−25℃に低下するまでは、基台6内に浸入した水が凍ることがなく、灯体2が破壊されることがないので、光源18からの放射光がプリズム19を介して光出射溝15から灯体2の側方へ向けて出射される。
【0047】
本実施形態によれば、基台6内に浸入した水に凍結防止剤5が溶け出すことにより、水の凝固点が低下するので、基台6が埋め込まれる地面3の温度が低下しても、基台6内の水が凝固しにくくなり、これにより、基台6内に浸入した水の凝固によって形成される氷からの圧力による灯体2や設置体4の破壊を抑制することができるという効果を有する。
【0048】
また、凍結防止剤5は、灯体2の下面23b近傍に配設されているので、基台6内に浸入した水に不所望に溶け出すことがなく、水に溶け出すことによる防食などの悪影響を相応に抑制することができるという効果を有する。
【0049】
また、基台6の内面6cは、例えばアルマイト6eにより、凍結防止剤5に対する防食処理が施されているので、凍結防止剤5が高濃度に凝縮された水が基台6内に長期間溜まる状態であっても、基台6の防食を抑制することができるという効果を有する。
【0050】
なお、本実施形態は、埋込形照明灯として埋込形航空標識灯1で説明したが、これに限らず、例えば道路や広場などの地面3に設置される案内灯、看板や標識などを照明する標識灯、あるいは周囲を照明するための設置灯などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…埋込形照明灯としての埋込形航空標識灯、 2…灯体、 5…凍結防止剤、 6…基台、 15…出射口としての光導光溝、 18…光源、 39…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源および上面側に前記光源の放射光が出射される出射口を有する灯体と;
開口部を有する有底の箱状に形成され、地面に埋め込まれているとともに、前記灯体を前記開口部に取り付けている基台と;
この基台内に浸入した水に溶け出すように前記基台内に配設されている凍結防止剤と;
を具備していることを特徴とする埋込形照明灯。
【請求項2】
前記凍結防止剤は、前記基台内に浸入して基台内に溜まった水の水面が前記灯体の下面側近傍に上昇したときに当該水に溶け出すように配設されていることを特徴とする請求項1記載の埋込形照明灯。
【請求項3】
前記基台の内面は、前記凍結防止剤に対する防食処理が施されていることを特徴とする請求項1または2記載の埋込形照明灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−227007(P2012−227007A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94105(P2011−94105)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】