説明

基地局および干渉低減方法

【課題】通信端末が遠方の基地局と通信することで、システムに影響を及ぼすことがある。通信端末と基地局との伝搬距離、及び、上りリンクの回線状態を把握することにより、適切でない通信環境を抑制する。
【解決手段】基地局が通信している端末に対し、伝搬距離、上りリンクの状態を監視し、伝搬距離の大きい端末、上りリンク電波品質が不十分な端末を切断する。基地局にて取得された伝搬距離(S03)、上りリンク干渉量(S04)、端末の送信電力(S07)と設定された各要素に関する閾値を比較し、通信を切断すべきと判断された端末が存在した場合は、基地局は、当該端末に対して、ConnectionCloseメッセージを送信する。基地局は、これにより通信を切断する。切断後、当該端末に、通信対象として最も適切な基地局を改めてサーチさせ、接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局および干渉低減方法に係り、特に基地局と端末間の無線区間における干渉を低減する基地局および干渉低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基地局が存在する移動体通信システムにおいて、端末が通信対象とする基地局を選択する際、端末は、周辺に存在する基地局から飛来する電波を測定し判断する。この際、主に下りリンクにおける、干渉状態、電界強度の強さが電波の判断基準として参照される。その結果、端末は、位置する場所において、下りリンクにおける最も通信状態が良好な基地局を通信対象として選択する。
【0003】
通信を行なっている端末と基地局において、呼処理制御部を参照することで、上りリンクにおける端末の干渉状態、送信電力、基地局が全ての端末より受信する送受信電力、通信対象となっている端末数を把握することが可能である。基地局は、これらの情報を端末の状態監視、システムの監視に利用する。
【0004】
基地局は、基地局が発するパイロット信号の伝搬遅延情報について、Route Update Messageを受信したとき、Round Trip Delay(RTD)を計算する。基地局は、RTDに基づいて、伝搬距離を把握することが可能である。
非特許文献1は、cdma2000 EVDOシステムの技術的要件を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP2:C.S0024、”cdma2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端末が下りリンクを参照し、通信対象となる基地局を選定した際、上りリンクにおいては当該基地局が適切な通信対象ではない場合がある。その原因として、基地局が有する設備と端末が有する装置の相違、周波数分割通信における下りリンクと上りリンクの帯域の相違、上りリンクの通信回線ひっ迫がある。上りリンクの電波環境が良好でない場合、端末は上りリンクの品質を確保するため、より高い出力で通信を行なう。その結果、端末の消費電力が大きくなり、端末の電池の消耗につながる。端末の消費電力増大は、同時に、当該端末の周辺にある他の端末に対しての雑音が高まることになる。これは、周辺端末のアップロードスループットの低下にもつながるため、セクタースループットの低下を招く。
【0007】
端末は、通信対象となる基地局を電波環境に基づき選定する。このため、見通しのよい高台、乱立するビル群に面する道幅の広い道路、電波の伝搬しやすい水面周辺等に端末が位置する場合、端末は、隣接する基地局を通信対象とせず、より遠方の基地局を通信対象とする現象が発生することがある。複数の基地局、端末を跨ぐ通信経路である程、上りリンクの及ぼす影響範囲は大きくなる。端末が遠方の基地局と通信する際、隣接する基地局へハンドオフさせるためのネイバーリストが存在せず、適切な基地局へ通信経路を切り替えできない状況も起こりえる。
【0008】
端末が下りリンクの電波品質のみで通信対象となる基地局を判断することは、局所的に高トラヒックが予想されるポイントに対する回線容量確保のための基地局を設計する際、想定した範囲を超えるトラヒックが遠方で発生する分、その設計を困難としている。
【0009】
本発明は、従来方式である下りリンクの無線品質を参照することで、通信対象となる基地局を選定する方式に加えて、端末と基地局との伝搬距離、上りリンク回線状態により、適切でない通信環境を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
端末が隣接する基地局と適切な通信を行なっているかを確認するため、基地局は、通信中の端末に対して伝搬距離、上りリンクの干渉、端末の送信電力を監視する。端末が隣接する基地局を超え、伝搬距離の大きい遠方の基地局と通信を行なっている場合、基地局は、適切な基地局と通信を行なうよう、当該端末における通信を停止し、適切な基地局を再度探索させる。より伝搬距離の小さい隣接局との通信を確立させることで、当該端末の上りリンクの伝搬損失を小さくし、電波品質を改善させることで、当該端末の出力を低減し、アップロードスループットを向上させる。同時に、他の端末に対する雑音が低減されるため、他の端末の上りリンクに及ぼす干渉の影響度、影響範囲が小さくなる。伝搬距離の大きい遠方の基地局との通信を低減させることで、回線容量確保のための基地局設計の精度を高めることができる。
【0011】
伝搬距離が端末の隣接する基地局を超えない場合においても、端末の上りリンク干渉状態、送信電力、当該基地局が端末より受信する総電力、および当該基地局にて通信を行なう端末数を監視する。上りリンク干渉状態が良好でない端末に対して、隣接する基地局に通信経路を変更するよう促す。また、基地局にかかる負荷を適切に分散させるため、当該基地局が端末より受信する総電力が高い場合、あるいは通信を行なう端末数が多い場合は、送信電力が高い端末に対して、同様に通信を停止し、端末が適切な基地局と通信できるよう試みる。
【0012】
基地局と通信を実施している端末に対して、通信を継続させるか、適切な基地局と通信させるべく通信を切断させるかを判断するため、システム内の各基地局にて、通信中の端末に対する伝搬距離、上りリンク干渉量、端末の送信電力、当該基地局配下の端末より受信する総受信電力、当該基地局の収容可能端末数を閾値として設定する。
【0013】
伝搬距離、上りリンク干渉量、端末の送信電力は、各端末および周辺の他の端末に及ぼす影響を低減させるための条件として閾値を設定する。
【0014】
基地局配下の端末より受信する総受信電力、および収容可能端末数は、当該基地局が通信を行なっている各端末が適切なスループットを確保できる条件として閾値を設定する。
【0015】
都市部、郊外、山間部等、地域によって基地局設置密度は異なり、許容される伝搬距離も異なる。一基地局が通信対象とする想定端末数も、基地局装置、基地局が設置されている地域、目的によって異なるため、これら閾値は、基地局毎に個別に設定可能なものとする。
【0016】
基地局が通信を行なっている各端末に対する伝搬距離を得るために、無線区間における通信に要する伝搬遅延が取得できるため、これを伝搬距離とする。上りリンク干渉量は呼処理制御部を参照し、基地局のカバーエリアにおける上りリンク干渉状態を把握することができる。同じく、呼処理制御部を参照することで、基地局が通信を行なっている各端末に対して、各端末の送信電力を取得することが可能である。取得された情報は、基地局内のテーブルに格納する。
【0017】
基地局にて取得された伝搬距離、上りリンク干渉量、端末の送信電力と設定された各要素に関する閾値を比較し、通信を切断すべきと判断された端末が存在した場合は、基地局は、当該端末に対して、ConnectionCloseメッセージを送信する。基地局は、これにより通信を切断する。切断後、当該端末に、通信対象として最も適切な基地局を改めてサーチさせ、接続させる。
【0018】
切断後、当該端末が切断前に通信を実施していた基地局に対して、再度接続を要求した場合は、当該端末にConnectionDenyメッセージを送信し、再接続を拒否することで、より適切な基地局との通信を促す。当該端末に対して、通信するためのより適切な基地局が存在せず、同一基地局に繰り返し接続を要求する場合、基地局は、当該端末の通信対象と成り得るより適切な基地局が存在しないと判断し、当該端末に発行するConnectionDenyを取り消し、例外的に切断前の基地局への接続を許可する。
【0019】
上述した課題は、移動体通信システムにおける基地局において、伝搬経路長の閾値を記述された接続判断テーブルと、移動機の識別子とその移動機の伝搬経路長情報とが記述された状態参照テーブルとを保持する呼処理制御部とを含み、前記呼処理制御部は、伝搬遅延に基づいて第1の移動機の第1の伝搬経路長を測定し、前記状態参照テーブルを更新し、前記第1の伝搬経路長が前記閾値より長いとき、前記第1の移動機に通信切断要求を送信する基地局により、達成できる。
【0020】
また、伝搬経路長の閾値を記述された接続判断テーブルと、移動機の識別子とその移動機の伝搬経路長情報とが記述された状態参照テーブルとを保持する基地局の干渉低減方法であって、伝搬遅延に基づいて第4の移動機の第4の伝搬経路長を測定するステップと、前記状態参照テーブルを更新するステップと、前記第4の伝搬経路長が前記閾値より長いとき、前記第4の移動機に通信切断要求を送信するステップとからなる干渉低減方法により、達成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、端末が通信対象とする基地局が当該端末に隣接する適切な基地局となる傾向を高め、アップロードスループットの向上、適正化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】不適切な伝搬経路、適切な伝搬経路について説明するブロック図である。
【図2】基地局と、基地局の複数の隣接局よりなる無線エリアを説明する図である
【図3】基地局のハードウェアブロック図である。
【図4】端末接続判断テーブルを説明する図である。
【図5】端末状態参照テーブルを説明する図である。
【図6】基地局の端末切断の判断処理のフローチャートである。
【図7】移動機、基地局、PCF−SC、PDSN間の端末切断のシーケンス図である。
【図8】移動機、基地局間の接続拒否のシーケンス図である。
【図9】移動機、隣接基地局、PCF−SC、PDSN間の隣接基地局接続のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実質同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0024】
図1を参照して、基地局100と移動機との配置と、実施例の概要を説明する。図1において、無線通信システムは、2台の基地局100と、2台の移動機200とから構成されている。基地局100−1は、エリアA01を電波が支配的なエリアとする。また、基地局100−2は、エリアA02を電波が支配的なエリアとする。移動機200−1はエリアA01に在圏する。また、移動機200−2はエリアA02に在圏する。
【0025】
しかし、移動機200−2は、遠方の基地局100−1と伝搬経路D02にて通信が行なわれていた。基地局100−1は、通信状態を判断し、移動機200−2に報知し、伝搬経路D04にて基地局100−2と通信するように促す。なお、本明細書において、端末は、移動機と同じ意味である。
【0026】
図2を参照して、基地局群のレイアウトと基地局100からの距離の定義を説明する。図2において、基地局群はハニカム状のエリアの中心に配置されている。ここでは、中心の基地局100−1と、基地局100−1の2時方向に配置された基地局100−2に注目する。
【0027】
基地局100−1のエリアA01には、移動機200−1が存在する。基地局100−2のエリアA02には、移動機200−2が存在する。エリアA01とエリアA02の境界には、移動機200−3が存在する。移動機200−1〜200−3は、いずれも基地局100−1と通信している。
【0028】
ここでは、基地局100−1の近傍のエリアA01に位置する端末200−1と基地局100−1との伝搬距離D01を「自局エリア通信距離」と呼ぶ。また、基地局100−1に隣接する基地局100−2のエリアA02内に位置する端末200−2と基地局100−1との伝搬距離D02を「遠方エリア通信距離」と呼ぶ。さらに、基地局100−1より飛来する電波と隣接局100−2から飛来する電波が拮抗し、いずれの基地局100とも通信を行なえる端末200−3と基地局100−1との伝搬距離D03を「自局エリア端距離」と定義する。
【0029】
基地局100は、自局エリア通信距離と遠方エリア通信距離について、基地局毎に設定したRTDに基づく伝搬距離の閾値より区別する。基地局100は、自局エリア端距離について、閾値近傍にある端末により送信されるRoute Update Messageを参照し、基地局100−1と隣接局100−2双方と通信可能な状態にある移動機200−3を対象とした伝搬距離とする。
【0030】
なお、RTDは、無線区間に於ける下りおよび上りの往復の伝搬遅延時間である。基地局100と移動機200の間の距離L(m)は、RTD(s)を用いて、(式1)より、算出する。
L=RTD×c/2
=RTD×1.5×10^8(m)…(式1)
なお、cは光速(m/s)、^はべき乗である。拡散の単位である1chip時間(0.813μs)に電波が進む距離は、約244mである。
【0031】
基地局100は、Access Channel PacketまたはTraffic Channel Packetを受信するたびに受信パスのタイミング情報からRTDを算出する。
【0032】
図3を参照して、基地局100のハードウェア構成を説明する。図3において、基地局100は、送受信アンテナ105と、CPLU(Coupler Unit)110と、FLU(Filter Unit)120と、CMBU(Combiner Unit)130と、MFR(Multi Function Receiver)150と、TXM(Transmitter Module)140と、ABSS(rev.A Baseband Signal Selector)160と、ACSP(rev.A Call & Signaling Processor)170と、ACSM(rev.A System Control Manager)180と、ALIF(rev.A Line Interface for T1-12 Line)190とから構成されている。
【0033】
送受信アンテナ105は、無線信号を送受波する。CPLU110は、送信信号/受信信号の分離を行なう。CMBU130は、ダウンリンク信号を合成する。複数のMFR140は、それぞれアップリンクRF信号の受信処理を行なう。複数のTXM150は、それぞれダウンリンク信号を送信する。ABSS160は、ベースバンド信号セレクタ機能を実現する。また、ABSS160は、基準クロックを配信する。ACSP170は、無線リソースを管理する。また、ACSP170は、トラヒックを制御する。さらに、ACSP170は、呼処理を実施する。ACSM180は、基地局全体を装置管理する。ALIF190は、バックホール回線との回線インタフェースである。
【0034】
図4を参照して、ACSP170が保持する端末接続判断テーブルT01を説明する。図4において、端末接続判断テーブルT01は、基地局100が端末の通信を切断するか判断するために参照する閾値を保持する。端末接続判断テーブルT01は、伝搬距離閾値C01、伝搬境界範囲C02、上りリンク干渉閾値C03、端末送信電力閾値C04、基地局総受信電力閾値C05、収容可能端末数C06、下りリンク干渉閾値C07、端末受信電力閾値C08から構成されている。
【0035】
伝搬距離閾値C01(単位:m)は、自局エリア通信距離と遠方エリア通信距離を区別するために設定する。伝搬距離閾値C01より小さい伝搬距離を、自局エリア通信距離とする。伝搬境界範囲C02(単位:m)は、伝搬距離閾値C01近傍と定義する範囲を設定する。伝搬距離閾値C01より当該範囲に収まる伝搬距離を自局エリア端距離とする。すなわち、自局エリア端距離は、400〜600mの範囲である。上りリンク干渉閾値C03(単位:dB)は、上りリンクの干渉により通信が困難となるEcp/Nt(energy-per-chip-to-noise-plus-interference ratio)の値を定義する。Ecp/Ntは、1chipあたりのエネルギをノイズのエネルギで除した干渉の単位である。端末送信電力閾値C04(単位:dBm)は、端末の送信電力が通信に悪影響を及ぼすとみなす値を定義する。基地局総受信電力閾値C05(単位:dBm)は、基地局100が全ての端末より受信する総電力の大きさが、上りリンクにおいて許容される範囲か判断するための閾値として設定する。収容可能端末数C06(単位:台)は、基地局装置が処理できる端末数を設定する。当該閾値を超える端末は、基地局総受信電力閾値C05、および収容可能端末数C06での判断に基づき端末を切断する必要性が発生した場合の切断対象端末となる。
【0036】
下りリンクの干渉、受信電力が不良とみなされる値を基地局毎に定義するため、下りリンク干渉閾値C07、端末受信電力閾値C08も設定できる。
【0037】
図5を参照して、ACSP170が保持する端末状態参照テーブルT02を説明する。図5において、端末状態参照テーブルT02は、基地局100の通信対象となっている全端末に対して、状態を把握するためのテーブルである。端末状態参照テーブルT02は、各基地局100が保持する。端末状態参照テーブルT02は、端末識別子C11、遠方飛来許可端末C12、伝搬距離区分C13、上りリンク干渉C14、端末送信電力C15から構成されている。
【0038】
端末識別子C11は、通信対象の各端末のUATI(Unicast Access Terminal Identifier)情報を記録する。UATIは、基地局100が端末に割当てた端末の識別情報である。遠方飛来許可端末C12は、「0」が無効を意味する。また、「1」は、有効を意味する。伝搬距離区分C13は、「00」が遠方エリア通信距離の端末であることを表す。「01」は、自局エリア通信距離の端末であることを表す。「10」は、自局エリア端距離の端末であることを表す。上りリンク干渉C14は、「1」は干渉状態が良好であることを意味する。「0」は、干渉状態が不良であることを意味する。端末送信電力C15は、「1」が送信電力小を意味する。「0」は、送信電力大を意味する。
【0039】
遠方飛来許可端末C12には、通信を一旦切断し、再度サーチを実施させたが、より適切な基地局100−Xが他になかったため、当該基地局100との通信を許可した端末であるか否かが記録されている。上りリンク干渉C13、端末送信電力C14は、各々端末接続判断テーブルT01の上りリンク干渉閾値C03、端末送信電力閾値C04を基準として上りリンク干渉状態、端末送信電力状態が分類された結果である。
【0040】
端末状態参照テーブルT02の各項目は、端末が基地局100に接続し、端末にUATIが割り当てられる時に生成される。遠方飛来許可端末C12は、無効(0)としてデフォルト登録する。但し、接続前に当該基地局100と通信されており、当該基地局100の端末状態参照テーブルT02に当該端末の端末識別子が残っている場合には、新たに生成せず、既存の項目を更新する処理とする。
【0041】
基地局100は、端末より送信されるRoute Update Messageを受信したタイミングで、RTDを計算する。基地局100は、RTDに基づく伝搬距離を、伝搬距離閾値C01と伝搬距離範囲C02とに比較する。基地局100は、比較結果に基づいて、自局エリア通信距離か遠方エリア通信距離か自局エリア端距離かを、伝搬距離区分C13に登録する。基地局100は、搭載している呼処理制御部(ACSP)を参照し、上りリンク干渉閾値C03を上回る場合は、上りリンク干渉状態良好として、上りリンク干渉C14に登録する。基地局100は、下回る場合は、上りリンク干渉状態不良として上りリンク干渉C14に登録する。同じく、基地局100は、呼処理制御部を参照し、端末の送信電力が端末送信電力閾値C04を下回る場合は、送信電力小とし、端末送信電力C15に登録する。基地局100は、上回る場合は送信電力大として、端末送信電力C15に登録する。
【0042】
端末状態参照テーブルT02に登録された各端末のレコードは、端末状態参照テーブルT02を保持する基地局100と端末との通信が切断されたタイミングより10秒以内に当該基地局100への接続要求が無い場合は、他の基地局100−Xへの接続が数回にわたり実施された、または通信が完了したと判断し、端末状態参照テーブルT02より削除される。
【0043】
図6を参照して、基地局100による端末状態参照テーブルに存在する通信中の各端末に対して、通信を継続させるか、または切断させるかを判断する処理を説明する。図6において、基地局100は、定期的に端末状態参照テーブルT02、端末接続判断テーブルT01を参照して、端末状態と接続判断情報とを獲得し、カウンタであるIに1をセットする(S01)。基地局100は、対象とする端末が遠方飛来許可端末か判定する(S02)。YES(有効)のとき、基地局100は、通信を継続させる(S09)。ステップ02でNOのとき、基地局100は、伝搬距離区分C13を参照し、伝搬距離区分を判定する(S03)。自局エリア通信距離であれば、基地局100は、ステップ09に遷移する。ステップ03で、遠方エリア通信距離であれば、基地局100は、通信切断処理の対象に設定する(S08)。ステップ03で自局エリア端距離のとき、基地局100は、上りリンクの干渉が閾値を超えているか判定する(S04)。YESのとき、基地局100は、ステップ08に遷移する。ステップ04でNOのとき、基地局100は、基地局総受信電力が閾値を超えているか判定する(S06)。YESのとき、基地局100は、端末送信電力が閾値を超えているか判定する(S07)。YESのとき、基地局100は、ステップ08に遷移する。
【0044】
ステップ06でNOのとき、基地局100は、収容可能端末数が超過しているか判定する(S11)。YESのとき、基地局100は、端末送信電力が閾値を超えているか判定する(S07)。YESのとき、基地局100は、ステップ08に遷移する。ステップ07でNOのとき、基地局100は、ステップ11に遷移する。ステップ11でNOのとき、基地局100は、ステップ09に遷移する。ステップ12でNOのとき、基地局100は、ステップ09に遷移する。ステップ08およびステップ09のあと、基地局100は、Iをインクリメントする(S13)。基地局100は、データが有るか判定する(S14)。YESのとき、基地局100は、ステップ02に遷移する。ステップ14でNOのとき、基地局100は、終了する。
【0045】
ステップ04にて、上りリンク干渉C14が上りリンク干渉閾値C03より低い値であれば、基地局100は、当該端末の上りリンク干渉が劣化状態にあると判断する。基地局100は、通信切断処理対象端末に設定S08する。上りリンク干渉C14が上りリンク干渉閾値C03より高い場合、基地局100は、当該端末における干渉の影響は少ないと判断する。
【0046】
ステップ06にて、基地局100は、全端末より受信している電界強度の総和を基地局総受信電力閾値C05と比較する。当該閾値より電界強度の総和が上回っている場合、基地局100は、当該基地局配下の端末からの受信電力を減らす必要がある。基地局100は、当該端末を切断させるか判断するため、端末送信電力C15を参照する。端末送信電力C15が、端末送信電力閾値C04を上回っている場合、基地局100は、通信を切断することで、基地局100が端末より受信する電力の低下が見込める。基地局100は、当該端末を通信切断処理対象端末に設定Sする。基地局総受信電力閾値C05より端末から受信する電界強度の総和が下回っている場合、または当該端末送信電力C15が、端末送信電力閾値C04を下回っている場合、基地局100は、収容可能端末数超過判断に移る。
【0047】
ステップ11にて、基地局100は、通信を実施している端末数と収容可能端末数C06を比較する。通信を実施している端末数が閾値を上回っている場合、基地局100は、端末数超過に伴うスループットの低下が発生していると判断する。基地局100は、端末送信電力C15を参照する。端末送信電力C15が、端末送信電力閾値C04を上回っている場合、基地局100は、当該端末の通信を切断することで、当該基地局配下の他の端末のアップロードスループットの向上に寄与できると判断する。基地局100は、当該端末を通信切断処理対象端末に設定する。基地局100が通信を実施している端末数が収容可能端末数C06以下の場合、または端末送信電力C15が端末送信電力閾値C04を下回っている場合、基地局100は、当該端末について、通信上問題無い端末であると判断し、通信を継続させる。
【0048】
図7ないし図9を参照して、端末の切断処理、同一基地局接続要求時の接続拒否処理、適切な基地局100に対する再接続処理を説明する。図7ないし図9において、PCF−SC(Packet Control Function-Session Controller)300は、データパケット制御およびセッション管理を行なう。PCF−SC300は、基地局100とPDSN400間のパケットデータ引渡機能、PDSN選択機能を実現する。PDSN(Packet Data Serving Node)400は、モバイルネットワークに対してインターネットプロトコル機能を提供し、IP網とのインタフェースを提供する。
【0049】
図7において、初期状態は、移動機200−2とPDSN400との間でPPP接続がアクティブ状態である。コネクションを確立している基地局100−1は、通信切断処理対象移動機200−2に対して、ConnectionCloseリクエストメッセージを送信する(S21)。ConnectionCloseリクエストメッセージを受信した移動機200−2は、ConnectionCloseリプライメッセージを基地局100−1に送信する(S22)。基地局100−1は、A9−Release−A8リクエストメッセージをPCF−SC300に送信する(S23)。PCF−SC300は、A11−RegistrarionリクエストメッセージをPDSN400に送信する(S24)。PDSN400は、A11−RegistrarionリプライメッセージをPCF−SC300に送信する(S26)。PCF−SC300は、A9−Release−A8コンプリートメッセージを基地局100−1に送信する(S27)。以上で、移動機200−2とPDSN400との間でPPP接続がドーマント状態に遷移し、通信を一時的に停止する。
【0050】
移動機200−2は、適切な基地局100へ接続するべく、ConnectionRequestメッセージを送信する。しかし、通信が停止する前に接続されていた同一基地局100−1に対して再度接続を要求した場合は、基地局100−1は、当該端末に対する接続を拒否する。この処理について、図8を参照して、説明する。図8において、移動機200−2は、基地局100−1にConnectionRequestメッセージを送信する(S31)。ConnectionRequestメッセージを受信した基地局100−1は、移動機200−2にConnectionDenyメッセージを返信する(S32)。ここで、ConnectionDenyメッセージは、接続を拒否するメッセージである。
【0051】
ただし、1秒以上、基地局100−1に対し、端末200−2からの接続要求が繰り返された場合、基地局100−1は、端末200−2の周辺において、より接続に適した基地局100が無く、基地局100−1が安定して通信に適した基地局100であると判断する。その結果、基地局100−1は、端末状態参照テーブルT02の遠方飛来許可端末項目を設定する。その後、端末200−2より再度当該端末より基地局100−1にConnectionRequestメッセージが送信された際は、端末切断判断フローの遠方飛来許可端末として、接続を許可する。
【0052】
図9を参照して、通信が停止する前に接続されていた基地局100−1以外のより適した基地局100−2に対して接続する処理を説明する。図9において、初期状態は、移動機200−2とPDSN400との間でPPP接続がドーマント状態である。移動機200−2は、基地局100−2に、ConnectionRequestメッセージを送信する(S41)。基地局100−2は、PDF−SC300に、A9−Setup−A8メッセージを送信する(S42)。PDF−SC300は、PDSN400に、A11−Registrationリクエストメッセージを送信する(S44)。PDSN400は、PDF−SC300に、A11−Registrationリプライメッセージを送信する(S46)。PDF−SC300は、基地局100−2に、A9−Connect−A8メッセージを送信する(S47)。基地局100−2は、移動機200−2に、TrafficChannelAssignmentメッセージを送信する(S48)。なお、ステップ42からステップ47までの期間をTA8Setupと呼ぶ。
【0053】
この結果、移動機200−2と基地局200−2とは、TCH Establishment状態となる。移動機200−2は、基地局200−2に、TrafficChannelCompleteメッセージを送信する(S49)。この結果、移動機200−2とPDSN400との間でPPP接続がアクティブ状態となる。
【0054】
移動機200−2は、基地局100−2の端末状態参照テーブルT02に登録される。一方、移動機200−2は、基地局100−1の端末状態参照テーブルT02より削除される。
【0055】
本実施例に拠れば、端末が隣接基地局を超えて通信する状態を回避することで、当該端末の上りリンクでの無線品質が改善され、スループットが向上される。遠方の基地局に対する通信を抑制することにより、上りリンクに必要となる端末送信電力が低く抑えられることで、端末消費電力も減少できる。同時に、周辺の端末に及ぼす雑音が低減されるため、周辺の端末におけるアップロードスループットが向上される。また、上りリンクにおける周辺への干渉の影響範囲も狭められる。
【0056】
本実施例に拠れば、想定を超える範囲より遠方での通信を低減できるため、基地局からの距離に基づくカバーエリアの想定がより確実になり、トラヒックを考慮したエリア設計を容易にすることが可能となる。端末が遠方の基地局と通信している際に、隣接局がネイバーリストに無い場合にも、隣接局へ接続先を変えることを可能とする。
【符号の説明】
【0057】
100…基地局、105…送受信アンテナ、110…、CPLU(Coupler Unit)、120…FLU(Filter Unit)、130…CMBU(Combiner Unit)、150…MFR(Multi Function Receiver)、140…TXM(Transmitter Module)、160…ABSS(rev.A Baseband Signal Selector)、170…呼処理制御部(ACSP)、180…ACSM(rev.A System Control Manager)、190…ALIF(rev.A Line Interface for T1-12 Line)、200…移動機、300…PCF−SC、400…PDSN。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信システムにおける基地局において、
伝搬経路長の閾値を記述された接続判断テーブルと、移動機の識別子とその移動機の伝搬経路長情報とが記述された状態参照テーブルとを保持する呼処理制御部とを含み、
前記呼処理制御部は、伝搬遅延に基づいて第1の移動機の第1の伝搬経路長を測定し、前記状態参照テーブルを更新し、前記第1の伝搬経路長が前記閾値より長いとき、前記第1の移動機に通信切断要求を送信することを特徴とする基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記切断判断テーブルは、さらに上りリンクの干渉閾値と、移動機の送信電力閾値とを記述され、
前記状態参照テーブルは、さらに移動機の送信電力が記述され、
前記呼処理制御部は、上りリンクの干渉値と、移動機の送信電力値とに基づいて選択した第2の移動機に通信切断要求を送信することを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項2に記載の基地局であって、
前記切断判断テーブルは、さらに収容移動機数閾値とを記述され、
前記呼処理制御部は、収容する移動機数が前記収容移動機数閾値を超えたとき、移動機の送信電力値に基づいて選択した第3の移動機に通信切断要求を送信することを特徴とする基地局。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の基地局であって、
切断要求を送信した移動機から接続要求を繰り返し受信したとき、予め定めた時間を経過後に接続を許容することを特徴とする基地局。
【請求項5】
伝搬経路長の閾値を記述された接続判断テーブルと、移動機の識別子とその移動機の伝搬経路長情報とが記述された状態参照テーブルとを保持する基地局の干渉低減方法であって、
伝搬遅延に基づいて第4の移動機の第4の伝搬経路長を測定するステップと、
前記状態参照テーブルを更新するステップと、
前記第4の伝搬経路長が前記閾値より長いとき、前記第4の移動機に通信切断要求を送信するステップとからなる干渉低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−250369(P2011−250369A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124340(P2010−124340)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】