説明

基地局及び通信システム

【課題】ヌルステアリングを行う周辺基地局において、ヌルを向ける必要性のある通信端末に対してヌルが向く可能性を高めることを可能にする技術を提供する。
【解決手段】通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められている。無線リソース割り当て部122は、下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる上り無線リソースを割り当てる。また、無線リソース割り当て部122は、下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる上り無線リソースを割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、LTE(Long Term Evolution)に関する技術が開示されている。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−099079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LTE等の通信システムにおいては、複数のアンテナから成るアレイアンテナの指向性を適応的に制御するアダプティブアレイアンテナ方式が採用されることがある。ある基地局の周辺に位置する周辺基地局においては、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて通信端末に対して信号を送信する際に、当該ある基地局と通信する通信端末に対して干渉を与えることを抑制するために、当該通信端末にヌルを向けるように、アレイアンテナの送信指向性に関してヌルステアリングを行うことがある。ヌルステアリングにおいて設定可能なヌルの数は、アレイアンテナを構成する複数のアンテナの数に依存することから、周辺基地局では、ヌルを向ける必要性のある通信端末に対して、ヌルを向けることができないことがある。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、ヌルステアリングを行う周辺基地局において、ヌルを向ける必要性のある通信端末に対してヌルが向く可能性を高めることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る基地局は、複数の基地局を備える通信システムでの一の基地局であって、前記通信システムにおいては、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、通信端末が使用する無線リソースを、当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部とを備え、前記無線リソース割り当て部は、下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる。
【0007】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信部は、前記第1上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信する通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行う。
【0008】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信システムにおいては、前記既知信号の送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、大きさが互いに異なる複数の帯域幅が定められており、前記第2上り無線リソースを用いて通信端末から送信される前記既知信号の送信周波数帯域幅は、前記複数の帯域幅のうちの最小値が設定されている。
【0009】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記第2上り無線リソースを使用する複数の通信端末からの前記既知信号が同一周波数帯域で多重されている。
【0010】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記無線リソース割り当て部は、前記第2上り無線リソースを割り当てた通信端末に対して下り無線リソースを割り当てるようになった際には、当該通信端末に対して前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースを、前記第2上り無線リソースから前記第1上り無線リソースに変更する。
【0011】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記通信部は、前記無線リソース割り当て部において、前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースが前記第2上り無線リソースから前記第1上り無線リソースに変更された通信端末に対して、上り無線リソースの割り当て変更を通知する信号を送信する際には、当該通信端末にビームが向くように、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて前記複数のアンテナの送信指向性に関してビームフォーミングを行う。
【0012】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記無線リソース割り当て部は、前記第1上り無線リソースを割り当てた通信端末に対して下り無線リソースを割り当てないようになった際には、当該通信端末に対して前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースを、前記第1上り無線リソースから前記第2上り無線リソースに変更する。
【0013】
また、本発明に係る基地局は、複数の基地局を備える通信システムでの一の基地局であって、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、前記通信部が通信端末との通信で使用する無線リソースを、当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部とを備え、前記無線リソース割り当て部は、下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる。
【0014】
また、本発明に係る通信システムは、複数の基地局を備える通信システムであって、前記通信システムにおいては、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、前記複数の基地局のそれぞれは、複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、前記通信部が通信する通信端末に対して、当該通信端末が使用する無線リソースを割り当てる無線リソース割り当て部とを備え、前記複数の基地局のそれぞれでは、前記無線リソース割り当て部は、下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヌルステアリングを行う周辺基地局において、ヌルを向ける必要性のある通信端末に対してヌルが向く可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る基地局の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係るTDDフレームの構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係るTDDフレームの構成の種類を示す図である。
【図5】実施の形態に係るTDDフレームの構成の詳細を示す図である。
【図6】SRS送信帯域が周波数ホッピングされる様子を示す図である。
【図7】SRSの構成を示す図である。
【図8】SRSを送信することが可能な上り無線リソースを示す図である。
【図9】本実施の形態に係る通信システムの動作を示す図である。
【図10】SRS送信用上り無線リソースと下りサブフレームとの対応付けを示す図である。
【図11】通信端末に対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図12】基地局と周辺基地局が通信端末と通信する様子の一例を示す図である。
【図13】本実施の形態に係る基地局の動作を示すフローチャートである。
【図14】通信端末に対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図15】本実施の形態に係る基地局の動作を示すフローチャートである。
【図16】SRS送信帯域幅が4RBに設定されている様子を示す図である。
【図17】通信端末に対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図18】割り当て無し用SRSが3多重されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本実施の形態に通信システム100の構成を示す図である。本通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTEであって、複数の基地局1を備えている。各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。したがって、基地局1から通信端末2への送信にはOFDMA方式が使用され、通信端末2から基地局1への送信にはSC−FDMA方式が使用される。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【0018】
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在する。
【0019】
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
【0020】
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
【0021】
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
【0022】
また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
【0023】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12は、機能ブロックとして、送信信号生成部120、受信データ取得部121、無線リソース割り当て部122、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124を備えている。
【0024】
送信信号生成部120は、通信対象の通信端末2に向けた送信データを生成する。そして、送信信号生成部120は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
【0025】
送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト処理部123は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に出力する。
【0026】
受信ウェイト処理部124は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、受信ウェイト処理部124は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号を生成する。
【0027】
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部124で生成された新たな受信信号に対して、逆離散フーリエ変換や復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる制御データやユーザデータなどを取得する。
【0028】
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信を行う通信部13が構成されている。通信部13は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、通信部13は、受信ウェイト処理部124において、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での受信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。また、通信部13は、送信ウェイト処理部123において、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での送信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2からの既知信号に基づいて求めることができる。
【0029】
無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2への送信に使用する下り無線リソース(送信周波数及び送信時間帯)を割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべき送信信号を生成するとともに、当該下り無線リソースに基づいたタイミングで当該送信信号を送信ウェイト処理部123に入力する。これにより、通信端末2に送信すべき送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた下り無線リソースを用いて通信部13から送信される。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた下り無線リソースを当該通信端末2に通知するための送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、自装置宛ての信号の送信で使用される下り無線リソースを知ることができ、基地局1からの自装置宛ての信号を適切に受信することができる。
【0030】
また無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2が基地局1に送信する際に使用する上り無線リソースを割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1への送信に使用する上り無線リソースを知ることができ、当該上り無線リソースを用いて基地局1に信号を送信する。
【0031】
<TDDフレームの構成>
次に基地局1と通信端末2との間で使用されるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。TDDフレーム300の周波数帯域幅(システム帯域幅)は例えば10MHzであって、TDDフレーム300の時間長は10msである。基地局1は、TDDフレーム300から、各通信端末2に対して割り当てる上り無線リソース及び下り無線リソースを決定する。
【0032】
図3はTDDフレーム300の構成を示す図である。図3に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。以後、TDDフレーム300を構成する10個のサブフレーム302を、先頭から順に第0〜第9サブフレーム302とそれぞれ呼ぶことがある。
【0033】
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。
【0034】
以上のように構成されるTDDフレーム300には、上り通信専用のサブフレーム302と下り通信専用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信専用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信専用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。
【0035】
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に7シンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック(RB)」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。無線リソース割り当て部122での通信端末2に対する上り無線リソース及び下り無線リソースの割り当ては、1リソースブロック単位で行われる。なお、上り通信ではSC−FDMA方式が使用されていることから、上りサブフレーム302の1つのスロット303において、ある通信端末2に対して複数のリソースブロックが割り当てられる際には、周波数方向に連続した複数のリソースブロックが当該通信端末2に割り当てられる。
【0036】
また、LTEでは、TDDフレーム300の構成については、上りサブフレーム302と下りサブフレーム302の組み合わせが異なる7種類の構成が規定されている。図4は当該7種類の構成を示す図である。
【0037】
図4に示されるように、LTEでは、0番〜6番までのTDDフレーム300の構成が規定されている。本通信システム100では、この7種類の構成のうちの1つの構成が使用される。図4では、「D」で示されるサブフレーム302は、下りサブフレーム302を意味し、「U」で示されるサブフレーム302は、上りサブフレーム302を意味している。また、「S」で示されるサブフレーム302は、通信システム100において、下り通信から上り通信への切り替えが行われるサブフレーム302を意味している。このサブフレーム302を「スペシャルサブフレーム302」と呼ぶ。
【0038】
0番の構成を有するTDDフレーム300では、第0及び第5サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2〜第4サブフレーム302及び第7〜第9サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1及び第6サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。また、4番の構成を有するTDDフレーム300では、第0サブフレーム302及び第4〜第9サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2及び第3サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。
【0039】
図5は、1番の構成を有するTDDフレーム300の構成を詳細に示す図である。図5に示されるように、スペシャルサブフレーム302は、時間方向に、下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351と、ガードタイム(GP)350と、上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352とを含んでいる。ガードタイム350は、下り通信から上り通信に切り替えるために必要な無信号期間であって、通信には使用されない。以下の説明では、通信システム100では、1番の構成を有するTDDフレーム300が使用されるものとする。
【0040】
LTEでは、下りパイロットタイムスロット351、ガードタイム350及び上りパイロットタイムスロット352の時間長の組み合わせについて、複数種類の組み合わせが規定されている。図5の例では、下りパイロットタイムスロット351の時間長は11シンボル期間304に設定されており、上りパイロットタイムスロット352の時間長は2シンボル期間304に設定されている。
【0041】
本実施の形態に係る通信システム100では、下りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の下りパイロットタイムスロット351においても下り通信を行うことが可能である。また、本通信システム100では、上りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352においても上り通信を行うことが可能である。
【0042】
本実施の形態では、基地局1は、下りパイロットタイムスロット351の各シンボル期間304においてユーザデータや制御データを通信端末2に送信する。また、通信端末2は、上りパイロットタイムスロット352の各シンボル期間304において、「サウンディング基準信号(SRS)」と呼ばれる既知信号を送信する。SRSは、複数のサブキャリアを変調する複数の複素シンボルで構成されている。本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352において送信されるSRSを、送信ウェイトを算出するために使用する。つまり、基地局1は、通信端末2が上りパイロットタイムスロット352で送信するSRSに基づいてアレイアンテナ110での送信指向性を制御する。
【0043】
なお、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能である。以後、特に断らない限り、SRSと言えば、上りパイロットタイムスロット352を使用して送信されるSRSを意味するものとする。
【0044】
また、SRSは、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352ごとに送信されることから、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352の先頭から、その次のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352の先頭までを「SRS送信周期360」と呼ぶ。
【0045】
また、上りパイロットタイムスロット352の前方のシンボル期間304を「前方SRS送信シンボル期間370a」と呼び、上りパイロットタイムスロット352の後方のシンボル期間304を「後方SRS送信シンボル期間370b」と呼ぶ。そして、前方及び後方SRS送信シンボル期間を特に区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS送信シンボル期間370」と呼ぶ。各通信端末2は、各スペシャルサブフレーム302において(SRS送信周期360ごとに)、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bの少なくとも一方でSRSを送信する。
【0046】
<SRSの送信周波数帯域>
LTEにおいては、一つのSRS送信シンボル期間370においてSRSを送信する際には、システム帯域の全領域を使用することはできない。具体的には、一つのSRS送信シンボル期間370においてSRSを送信する際には、システム帯域の低周波側の端部及び高周波側の端部のどちらか一方は使用することができない。つまり、システム帯域において、SRSの送信に使用可能な周波数帯域は、高周波側に寄せて配置されるか、低周波側に寄せて配置されるかのどちらかである。以後、SRSの送信に使用可能な周波数帯域を「SRS送信可能帯域400」と呼ぶ。図5では、SRS送信可能帯域400が斜線で示されている。システム帯域幅が10MHzの場合には、SRS送信可能帯域400は、40個のリソースブロック分の周波数帯域(180kHz×40)となる。
【0047】
図5に示されるように、本通信システム100では、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bのそれぞれにおいて、SRS送信可能帯域400がシステム帯域の高周波側に寄せられて配置されたスペシャルサブフレーム302と、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bのそれぞれにおいて、SRS送信可能帯域400がシステム帯域の低周波側に寄せられて配置されたスペシャルサブフレーム302とが交互に現れるようになっている。つまり、SRS送信可能帯域400は、SRS送信周期360ごとに、システム帯域の高周側及び低周波側に交互に配置されるようになっている。
【0048】
また、本実施の形態に係る通信システム100では、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する周波数帯域(以後、「SRS送信帯域」と呼ぶ)は、SRS送信可能帯域400内において、スペシャルサブフレーム302ごと(SRS送信周期360ごと)に変化し、1つの通信端末2がSRSを複数回送信することによって、SRS送信可能帯域400の全帯域にわたってSRSが送信されるようになっている。この動作は「周波数ホッピング」と呼ばれている。
【0049】
図6は、ある通信端末2が使用するSRS送信帯域450が周波数ホッピングする様子の一例を示す図である。図6の例では、SRS送信可能帯域400が第1〜第4周波数帯域に分割されている。そして、SRS送信可能帯域400の帯域幅の4分の1の帯域幅を有するSRS送信帯域450が、SRS送信周期360ごとに、第1周波数帯域、第3周波数帯域、第2周波数帯域、第4周波数帯域の順に変化している。なお、前方SRS送信シンボル期間370aでのSRS送信帯域450と、後方SRS送信シンボル期間370bでのSRS送信帯域450とは、互いに独立して周波数ホッピングする。
【0050】
<SRSの構成>
本実施の形態に係る通信システム100では、“transmissionComb”と呼ばれるパラメータkTCで識別される2種類のSRSが規定されている。各通信端末2は、この2種類のSRSのうちのどちらか一方のSRSを、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bのどちらか一方で送信する。
【0051】
パラメータkTCは“0”あるいは“1”の値をとることが可能である。パラメータkTC=0で特定されるSRS(以後、「SRS0」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、連続的に配置されているのではなく、櫛歯状に配置されている。言い換えれば、SRS0のキャリア周波数は周波数方向において櫛歯状に配置されている。同様にして、パラメータkTC=1で特定されるSRS(以後、「SRS1」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において櫛歯状に配置されている。そして、SRS0とSRS1とが同じ周波数帯域で送信される場合には、当該SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0と、当該SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において交互に配置される。したがって、SRS0のキャリア周波数とSRS1のキャリア周波数とは周波数方向において互いに重なることはない。
【0052】
図7は、SRS送信可能帯域400に含まれる、ある周波数帯域470において、SRS0とSRS1との両方が送信される様子を示している。図7に示されるように、SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。同様に、SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。そして、同じ周波数帯域470に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは、周波数方向において交互に配置されている。
【0053】
このように、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する複数のサブキャリアは周波数方向において櫛歯状に配置されていることから、当該通信端末2が使用するSRS送信帯域でのすべてのサブキャリアがSRSの送信に使用されるわけではない。そして、同じ周波数帯域に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは交互に配置されることから、SRS0を送信する通信端末2と、SRS1を送信する通信端末2とは、同じSRS送信シンボル期間370において同じSRS送信帯域を使用することができる。基地局1側から見れば、基地局1は、同じSRS送信シンボル期間370において同じSRS送信帯域で送信されるSRS0及びSRS1を区別することができる。
【0054】
さらに、本通信システム100においては、SRSを構成する複数の複素シンボルから成る符号パターンが8種類規定されている。この8種類の符号パターンには、互いに直交する8種類の符号系列がそれぞれ採用されている。通信端末2は、8種類の符号パターンのいずれか一つをSRSとして送信する。
【0055】
このように、SRSにおいては、互いに直交する8種類の符号系列が採用された8種類の符号パターンが規定されていることから、最大で8つの通信端末2が、同じSRS送信シンボル期間370において同じSRS送信帯域を用いてSRS0を送信することが可能である。さらに、最大で8つの通信端末2が、同じSRS送信シンボル期間370において同じSRS送信帯域を用いてSRS1を送信することが可能である。
【0056】
以後、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bに送信されるSRS0を、それぞれ「前方SRS0」及び「後方SRS0」と呼ぶ。また、前方SRS送信シンボル期間370a及び後方SRS送信シンボル期間370bに送信されるSRS1を、それぞれ「前方SRS1」及び「後方SRS1」と呼ぶ。
【0057】
また、前方SRS送信シンボル期間370aと、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「前方SRS0用上り無線リソース500a」と呼び、前方SRS送信シンボル期間370aと、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS1の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特定される上り無線リソースを「前方SRS1用上り無線リソース500b」と呼ぶ。
【0058】
また、後方SRS送信シンボル期間370bと、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「後方SRS0用上り無線リソース500c」と呼び、後方SRS送信シンボル期間370bと、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS1の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特性される上り無線リソースを「後方SRS1用上り無線リソース500d」と呼ぶ。
【0059】
図8は、前方SRS0用上り無線リソース500a、前方SRS1用上り無線リソース500b、後方SRS0用上り無線リソース500c及び後方SRS1用上り無線リソース500dを示す図である。図8に示されるように、前方SRS0用上り無線リソース500a、前方SRS1用上り無線リソース500b、後方SRS0用上り無線リソース500c及び後方SRS1用上り無線リソース500dは、時間方向及び周波数方向の少なくとも一方で互いに異なっている。以後、これらの上り無線リソースを区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り無線リソース」と呼ぶ。
【0060】
本実施の形態では、無線リソース割り当て部122は、基地局1と通信する各通信端末2に対して、前方SRS0用上り無線リソース500aに含まれる上り無線リソース、前方SRS1用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソース、後方SRS0用上り無線リソース500cに含まれる上り無線リソース及び後方SRS1用上り無線リソース500dに含まれる上り無線リソースのいずれか一つを、SRSの送信用として割り当てる。具体的には、無線リソース割り当て部122は、基地局1と通信する各通信端末2に対して、SRS送信帯域の帯域幅(以後、「SRS送信帯域幅」と呼ぶ)、SRS送信シンボル期間370、SRS送信帯域の周波数ホッピングの方法、パラメータkTCの値及びSRSの符号パターンの種類を割り当てることによって、当該各通信端末2に対してSRSの送信用の上り無線リソースを割り当てる。
【0061】
ここで、LTEにおいては、SRS送信帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、互いに大きさが異なる複数の帯域幅が定められている。例えば、システム帯域幅が10MHzの場合には、40個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×40)と、20個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×20)と、4個のリソースブロック分の帯域幅(180kHz×4)の3種類の帯域幅が定められている。無線リソース割り当て部122は、この複数の帯域幅の一つをSRS送信帯域幅として通信端末2に割り当てる。以後、x個のリソースブロック分の帯域幅を「xRB」と呼ぶ。
【0062】
送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122において通信端末2に割り当てられたSRSの送信用の上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御信号(以後、「SRS制御信号」と呼ぶ)を含む送信信号を生成する。この送信信号は、通信部13から当該通信端末2に向けて送信される。これにより、各通信端末2にはSRS制御信号が送信され、各通信端末2は、自身に割り当てられたSRSの送信用の上り無線リソースを認識することができる。つまり、各通信端末2は、自身に割り当てられたSRS送信帯域幅、SRS送信シンボル期間305、SRSの符号パターンの種類、SRS送信帯域の周波数ホッピングの方法及びパラメータkTCの値を認識することができる。各通信端末2は、自身に割り当てられた上り無線リソースを用いてSRS送信周期360ごとにSRSを送信する。なお、SRS制御信号は、LTEにおいて、“RRCConnectionReconfiguration message”と呼ばれている。
【0063】
<SRSの送信を制御する際の通信システムの基本動作>
次に、通信端末2が新たなSRS制御信号を受信してから、当該通信端末2が新たなSRS制御信号に基づいてSRSを送信するまでの通信システム100の基本動作について説明する。図9は当該動作を示す図である。以後、説明の対象となる通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶことがある。
【0064】
図9に示されるように、例えば、(N−2)番目のTDDフレーム300の末尾に位置する下りサブフレーム302において、基地局1から対象通信端末2に向けて新たなSRS制御信号が送信されると、その次の(N−1)番目のTDDフレーム300の先頭から8番目の上りサブフレーム302において、対象通信端末2は、新たなSRS制御信号を正常に受信した旨を通知するための応答信号を基地局1に送信する。この応答信号は“RRCConnectionReconfigurationComplete message”と呼ばれている。これにより、対象通信端末2では、SRSの送信用の上り無線リソースが新たに設定される。
【0065】
応答信号を送信した対象通信端末2は、次のN番目のTDDフレーム300以降において、SRS送信周期360ごとに、(N−2)番目のTDDフレーム300で受信した新たなSRS制御信号によって通知された上り無線リソースを用いてSRSを送信する。なお、対象通信端末2は、新たなSRS制御信号によって通知される上り無線リソースを用いてSRSを送信するまでは、その前に受信したSRS制御信号によって通知される上り無線リソースを用いてSRSを送信することになる。
【0066】
このように、基地局1が、あるTDDフレーム300において、対象通信端末2に対して新たなSRS制御信号を送信すると、そのTDDフレーム300の2つの後のTDDフレーム300以降において、対象通信端末2は、当該新たなSRS制御信号に基づいたSRSの送信を行うようになる。
【0067】
基地局1では、あるSRS送信周期360において対象通信端末2からSRSを受信すると、そのSRS送信周期360における、対象通信端末2向けのデータの送信時に、受信したSRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性が制御される。つまり、あるSRS送信周期360において、対象通信端末2にデータ送信する際の送信指向性の制御は、そのSRS送信周期360において対象通信端末2から受信されたSRSに基づいて行われる。
【0068】
基地局1において、対象通信端末2からのSRSが通信部13で受信されると、受信ウェイト処理部124が当該SRSに基づいて受信ウェイトを算出する。そして、送信ウェイト処理部123が、受信ウェイト処理部124で算出された受信ウェイトに基づいて、対象通信端末2に向けた送信信号に適用する送信ウェイトを算出する。送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された、対象通信端末2へのデータを含む複数の送信信号に対して、算出した送信ウェイトを設定し、送信ウェイトが設定された複数の送信信号を無線処理部11に入力する。これにより、アレイアンテナ110における、対象通信端末2への送信信号の周波数帯域での送信指向性に関するビームが、対象通信端末2に向くようになり、対象通信端末2に対して適切にデータを送信することができる。
【0069】
また、無線リソース割り当て部122は、基地局1が通信している各通信端末2からのSRSに基づいて、上りの伝送路の状態を推定する。そして、無線リソース割り当て部122は、上りの伝送路の状態の推定結果等に基づいて、各通信端末2に対して上りサブフレーム302における上り無線リソースを割り当てる。
【0070】
<SRS用上り無線リソースと下り無線リソースとの対応付け>
本実施の形態に係る通信システム100では、各SRS送信周期360において、前方SRS0用上り無線リソース500aと、その後の最初の下りサブフレーム302とが対応付けられており、後方SRS0用上り無線リソース500cと、その後の2番目の下りサブフレーム302とが対応付けられており、後方SRS1用上り無線リソース500dと、その後のスペシャルサブフレーム302における、下りパイロットタイムスロット351を時間方向に含む部分とが対応付けられている。図10はその様子を示す図である。図10では、TDDフレーム300の最初のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360について示されているが、TDDフレーム300の2つ目のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360についても同様である。
【0071】
以後、前方SRS0用上り無線リソース500aに対応付けられている下りサブフレーム302を「第1下りサブフレーム501」と呼ぶことがある。また、後方SRS0用上り無線リソース500cに対応付けられている下りサブフレーム302を「第2下りサブフレーム502」と呼ぶことがある。後方SRS1用上り無線リソース500dと対応付けられている、スペシャルサブフレーム302における、下りパイロットタイムスロット351を時間方向に含む部分については、TDDフレーム300に含まれる下りサブフレーム302には相当しないが、便宜上、「第3下りサブフレーム503」と呼ぶことがある。以後、下りサブフレームと言えば、「第3下りサブフレーム503」も含むものとする。
【0072】
基地局1の通信部13では、下りサブフレームにおいて、各種データを含む送信信号を対象通信端末2に送信する際には、当該下りサブフレームに対応付けられているSRS用上り無線リソースにおいて対象通信端末2から送信されてくるSRSに基づいて、当該送信信号に適用する送信ウェイトを算出する(詳細には、SRSに基づいて受信ウェイトを算出し、その受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを算出する)。つまり、基地局1では、下りサブフレームを用いて送信信号を対象通信端末2に送信する際には、対象通信端末2が、当該下りサブフレームに対応付けられているSRS用上り無線リソースに含まれる上り無線リソースを用いて送信するSRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性を制御して、当該送信指向性のビームが、当該送信信号の周波数帯域において対象通信端末2に向くようにしている。
【0073】
また、基地局1の無線リソース割り当て部122は、所定数のTDDフレーム300ごとに、基地局1が通信する各通信端末2について、プロポーショナルフェアネス(PF)等に基づいて、下り無線リソースの割り当て優先度(以後、「下り割り当て優先度」と呼ぶことがある)を決定する。そして、無線リソース割り当て部122は、基地局1が通信する各通信端末2について下り割り当て優先度を決定すると、下り割り当て優先度が基準値よりも高い通信端末2については、下り無線リソースを割り当てる通信端末2(以後、「下り割り当て有り端末2」と呼ぶことがある)として、下り割り当て優先度が基準値以下の通信端末2については、下り無線リソースを割り当てない通信端末2(以後、「下り割り当て無し端末2」と呼ぶことがある)とする。なお、通信端末2に対する送信データが存在しない場合には、当該通信端末2の割り当て優先度は最も低くなる。また、通信端末2に対して緊急に制御データ等のデータを送信する必要がある場合には、当該通信端末2の下り割り当て優先度が高くなる。
【0074】
その後、無線リソース割り当て部122は、下り無線リソースの割り当て対象の各通信端末2に対して、下り割り当て優先度及び送信データ量等に基づいて、下り無線リソースを割り当てる。このとき、無線リソース割り当て部122は、ある下りサブフレームで通信端末2に送信する送信信号の周波数帯域が、当該下りサブフレームに対応付けられているSRS用上り無線リソースで送信されるSRSの送信周波数帯域に含まれるように、当該通信端末2に対して下り無線リソースを割り当てる。
【0075】
基地局1の通信部13では、SRS用上り無線リソースにおいて対象通信端末2から送信されるSRSのうち、当該SRS用上り無線リソースに対応付けられている下りサブフレームで対象通信端末2に送信する送信信号の周波数帯域と同じ周波数帯域の部分を用いて送信ウェイトが算出される。つまり、基地局1では、SRS用上り無線リソースにおいて対象通信端末2が送信するSRSを構成する複数の複素シンボルのうち、当該SRS用上り無線リソースに対応する下りサブフレームで対象通信端末2に送信する送信信号の周波数帯域と同じ周波数帯域を用いて送信された複数の複素シンボルを用いて送信ウェイトが算出される。このように、送信信号の周波数帯域と、その送信信号に適用する送信ウェイトを求める際に使用するSRSの周波数帯域とを一致させることによって、精度の良い送信ウェイトを算出することができる。
【0076】
なお、前方SRS1用上り無線リソース500bには、下りサブフレームが対応付けられていないことから、原則、前方SRS1用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(前方SRS1)を送信する通信端末2には下りサブフレームを用いて信号が送信されない。ただし、後述するように、例外的に、前方SRS1用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(前方SRS1)を送信する通信端末2に対して、第1下りサブフレーム501〜第3下りサブフレーム503のいずれか一つを用いて信号が送信されることがある。
【0077】
図11は、通信端末2に対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図11の例では、端末番号1,2の通信端末2が前方SRS0用上り無線リソース500aに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(前方SRS0)を送信し、端末番号3,4の通信端末2が後方SRS0用上り無線リソース500cに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(後方SRS0)を送信し、端末番号5,6の通信端末2が後方SRS1用上り無線リソース500dに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(後方SRS1)を送信している。また、端末番号7〜9の通信端末2が、前方SRS1用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソースを用いてSRS(前方SRS1)を送信している。図11の例では、端末番号1〜6の通信端末2のそれぞれについて、当該通信端末2に送信される送信信号の周波数帯域480と、当該通信端末2についてのSRS送信帯域450とは一致している。
【0078】
<通信端末に対するSRSの送信用の上り無線リソースの割り当て方法>
本実施の形態では、無線リソース割り当て部122は、下り割り当て有り端末2に対しては、SRSの送信用として、前方SRS0用上り無線リソース500aに含まれる上り無線リソース、後方SRS0用上り無線リソース500cに含まれる上り無線リソース及び後方SRS1用上り無線リソース500dに含まれる上り無線リソースのいずれか一つを割り当てる。つまり、下り割り当て有り端末2に対しては、送信するSRSとして、前方SRS0、後方SRS0及び後方SRS1のいずれか一つが割り当てられる。そして、無線リソース割り当て部122は、下り割り当て無し端末2に対しては、SRSの送信用として、前方SRS1用上り無線リソース500bに含まれる上り無線リソースを割り当てる。つまり、下り割り当て無し端末2に対しては、送信するSRSとして前方SRS1が割り当てられる。以後、下り割り当て有り端末2が送信するSRS(本例では、前方SRS0、後方SRS0及び後方SRS1)を「割り当て有り用SRS」と呼ぶことがある。また、下り割り当て無し端末2が送信するSRS(本例では、前方SRS1)を「割り当て無し用SRS」と呼ぶことがある。
【0079】
通信部13は、割り当て有り用SRSを送信する通信端末2に対して、当該通信端末2に割り当てられた下り無線リソースを用いて信号を送信する際には、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングを行う。
【0080】
上述の図8からも理解できるように、本実施の形態では、割り当て有り用SRSの送信に使用することが可能な上り無線リソース、つまり、前方SRS0用上り無線リソース500a、後方SRS0用上り無線リソース500c及び後方SRS1用上り無線リソース500dから成る上り無線リソースと、割り当て無し用SRSの送信に使用することが可能な上り無線リソース、つまり、前方SRS1用上り無線リソース500bとは、時間方向において異なっている。言い換えれば、割り当て有り用SRSの送信に使用することが可能な上り無線リソースと、割り当て無し用SRSの送信に使用することが可能な上り無線リソースとは時間方向において重複していない。
【0081】
このように、各基地局1において、下り無線リソースが割り当てられる通信端末2が送信するSRSの送信に使用することが可能な上り無線リソース(以後、「第1のSRS用上り無線リソース」と呼ぶことがある)と、下り無線リソースが割り当てられない通信端末2が送信するSRSの送信に使用することが可能な上り無線リソース(以後、第2のSRS用上り無線リソース」と呼ぶことがある)とを、時間方向及び周波数方向の少なくとも一方(本例では時間方向)で異ならせることによって、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリングを行う基地局1及びその周辺基地局1のそれぞれにおいて、ヌルを向ける必要性のある通信端末2に対してヌルが向く確率が高くなる。以下にこのことについて詳細に説明する。
【0082】
図12は基地局1a及びその周辺基地局1b,1cが、通信端末2と通信する様子を示す図である。例えば、基地局1aが下り割り当て有り端末2a−1に信号を送信する際に使用する上り無線リソースと、周辺基地局1bが下り割り当て有り端末2b−1に信号を送信する際に使用する上り無線リソースとが一致する場合には、周辺基地局1bが通信する下り割り当て有り端末2b−1は、周辺基地局1bからの送信信号とともに、基地局1aからの送信信号を干渉波と受信することになる。これを防止するためには、基地局1aでは、下り割り当て有り端末2a−1に信号を送信する際に、周辺基地局1bと通信する下り割り当て有り端末2b−1に対してヌルが向く必要がある。
【0083】
一方で、周辺基地局1bが通信する下り割り当て無し端末2b−2については、周辺基地局1bからの送信信号を受信することは無いことから、基地局1aにおいては、下り割り当て有り端末2a−1に信号を送信する際に、周辺基地局1bと通信する下り割り当て無し端末2b−2に対してヌルが向かなくてもそれほど問題とならない。
【0084】
周辺基地局1b,1cについても同様であって、周辺基地局1bでは、下り割り当て有り端末2b−1に信号を送信する際に、基地局1aと通信する下り割り当て有り端末2a−1に対してヌルが向く必要があるものの、基地局1aと通信する下り割り当て無し端末2a−2に対してヌルが向かなくてもそれほど問題とならない。また、周辺基地局1cでは、下り割り当て有り端末2c−1に信号を送信する際に、基地局1aと通信する下り割り当て有り端末2a−1に対してヌルが向く必要があるものの、基地局1aと通信する下り割り当て無し端末2a−2に対してヌルが向かなくてもそれほど問題とならない。
【0085】
本実施の形態とは異なり、下り割り当て有り端末2が送信するSRSの送信に使用することが可能な第1のSRS用上り無線リースと、下り割り当て無し端末2が送信するSRSの送信に使用することが可能な第2のSRS用上り無線リソースとが区別されず、それらが同一の場合には、基地局1aにおいては、例えば、自身が通信する下り割り当て有り端末2a−1からのSRSと、周辺基地局1bが通信する下り割り当て有り端末2b−1からのSRSと、周辺基地局1cが通信する下り割り当て無し端末2c−2からのSRSとが、同じ上り無線リソースを用いて、つまり同じ送信周波数帯域及び送信時間帯を用いて送信されることがある。つまり、基地局1aにおいては、自身が通信する下り割り当て有り端末2a−1からのSRSに対して、周辺基地局1bが通信する下り割り当て有り端末2b−1からのSRSと、周辺基地局1cが通信する下り割り当て無し端末2c−2からのSRSとが干渉波として重畳されることがある。基地局1が、このような、下り割り当て有り端末2a−1からのSRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリングを行う場合には、基地局1aにおいては、ヌルを向ける必要性がある、周辺基地局1bが通信する下り割り当て有り端末2b−1だけではなく、ヌルを向ける必要性に乏しい、周辺基地局1cが通信する下り割り当て無し端末2c−2についても、ヌルが向く対象となる。
【0086】
ここで、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルステアリングにおいて、設定可能なヌルの数は、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数に依存する。具体的には、アンテナの数をMとすると、ヌルが設定できる最大数は(M−1)となる。したがって、基地局1において、ヌルが向く対象が多くなると、その対象のすべてにヌルを向けることができなくなる。
【0087】
上述のように、第1のSRS用上り無線リースと、第2のSRS用上り無線リソースとが同一の場合には、基地局1においては、ヌルを向ける必要性のある通信端末2だけではなく、ヌルを向ける必要性に乏しい通信端末2についても、ヌルが向く対象となることから、基地局1において、ヌルを向ける必要性に乏しい通信端末2の数が増加すると、ヌルを向ける必要性のある通信端末2にヌルが向かない可能性が高くなる。周辺基地局1についても同様であって、周辺基地局1においては、ヌルを向ける必要がある通信端末2にヌルが向かない可能性が高くなる。
【0088】
これに対して、本実施の形態では、第1のSRS用上り無線リースと、第2のSRS用上り無線リソースとが異なっていることから、基地局1においては、自身が通信する下り割り当て有り端末2からのSRSに対して、周辺基地局1が通信する下り割り当て無し端末2からのSRSが干渉波として重畳されることはない。したがって、基地局1においては、ヌルを向ける必要性に乏しい通信端末2が、ヌルが向く対象とはならず、ヌルを向ける必要性のある通信端末2にヌルが向く可能性が高くなる。よって、基地局1が、周辺基地局1と通信する通信端末2に与える干渉波を抑制することができる。周辺基地局1についても同様であって、周辺基地局1においては、ヌルを向ける必要性に乏しい通信端末2が、ヌルが向く対象とはならず、ヌルを向ける必要性のある通信端末2にヌルが向く可能性が高くなる。その結果、基地局1は、周辺基地局1から受ける干渉波を抑制することができる。
【0089】
本実施の形態に係る各基地局1では、上述のように、下りサブフレームにおいて下り割り当て有り端末2に信号を送信する際には、当該下り割り当て有り端末2が送信するSRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングが行われる。本実施の形態では、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて、SRSに含まれる複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトを複数回更新し、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求めることによって、ヌルステアリングとビームフォーミングの両方を行う。なお、下り割り当て有り端末2に信号を送信する際には、ヌルステアリングだけを行ってもよい。
【0090】
送信ウェイトは、例えば、1リソースブロックの周波数帯域ごとに求められる。以後、1リソースブロックの周波数帯域を「割り当て単位帯域」と呼ぶ。例えば、下りサブフレームにおいて対象通信端末2に送信される送信信号の周波数帯域が4つの割り当て単位帯域で構成されているとすると、4つの割り当て単位帯域のそれぞれについて送信ウェイトが求められる。ある割り当て単位帯域を用いて対象通信端末2に送信される信号に対して適用する送信ウェイトは、対象通信端末2から受信したSRSを構成する複数の複素シンボルのうち、当該ある割り当て単位帯域を用いて送信された12個の複素シンボルに基づいて求められる。1リソースブロックには12個のサブキャリアが含まれることから、1つの割り当て単位帯域を用いて12個の複素シンボルを送信することが可能である。
【0091】
<通信端末に対するSRSの送信用の上り無線リソースの割り当て変更>
次に、基地局1が通信端末2に対して割り当てるSRSの送信用の上り無線リソースを、第2のSRS用上り無線リソースに含まれる上り無線リソース(以後、「第2上り無線リソース」と呼ぶことがある)から、第1のSRS用上り無線リソースに含まれる上り無線リソース(以後、「第1上り無線リソース」と呼ぶことがある)に変更する際の当該基地局1の動作について説明する。図13は当該動作を示すフローチャートである。
【0092】
図13に示されるように、ステップs1において、第2上り無線リソースが割り当てられている、下り割り当て無し端末2である対象通信端末2についての下り割り当て優先度が高くなって、ステップs2において、対象通信端末2が下り無線リソースの割り当て対象となると、ステップs3において、無線リソース割り当て部122は、対象通信端末2に割り当てるSRSの送信用の上り無線リソースを、第2上り無線リソースから第1上り無線リソースに変更する。その後、送信信号生成部120が、対象通信端末2に対して、SRSの送信用として割り当てられる上り無線リソースが、第2上り無線リソースから第1上り無線リソースに変更されたことを通知するSRS制御信号を生成する。つまり、送信信号生成部120は、対象通信端末2に対してSRSの送信用として新たに割り当てられた第1上り無線リソースを通知するためのSRS制御信号を生成する。以後、このSRS制御信号を特に「変更通知用SRS制御信号」と呼ぶ。
【0093】
その後、ステップs4において、無線リソース割り当て部122は、変更通知用SRS制御信号を対象通信端末2に送信するための下り無線リソースを対象通信端末2に割り当てる。そして、ステップs5において、通信部13は、対象通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号の送信用として割り当てられた下り無線リソースを使用して、対象通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を送信する。このとき、通信部13は、対象通信端末2にビームが向くように、対象通信端末2からの割り当て無し用SRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性に関してビームフォーミングを行う。なお、このときに、基地局1はヌルステアリングも行っても良い。
【0094】
通信部13においては、対象通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を送信する際にはビームフォーミングが行われることから、無線リソース割り当て部122は、対象通信端末2に対して、変更通知用SRS制御信号の送信用の下り無線リソースを割り当てる際には、当該下り無線リソースの周波数方向の範囲が、対象通信端末2からの割り当て無し用SRSについてのSRS送信帯域450に含まれるようにする。このとき、下り無線リソースに空きが無いときには、いずれか一つの下り割り当て有り端末2に割り当てられている下り無線リソースの少なくとも一部を、対象通信端末2に対して、変更通知用SRS制御信号の送信用の下り無線リソースとして割り当てる。図14はその様子を示す図である。
【0095】
図14の例では、端末番号7の通信端末2が対象通信端末2となっている。図14の例では、下り割り当て有り端末2である、端末番号1の通信端末2に割り当てられている下り無線リソースのうち、端末番号7の通信端末2が送信するSRSのSRS送信帯域450と同じ周波数帯域を周波数方向に含む部分(第1下りサブフレーム501の斜線部分)が、端末番号7の通信端末2に対して、変更通知用SRS制御信号の送信用の下り無線リソースとして割り当てられている。
【0096】
その後、基地局1は、対象通信端末2から応答信号を受信すると、上述の図9に示されるように、応答信号を受信したTDDフレーム300の次のTDDフレーム300以降において、対象通信端末2から第1上り無線リソースを使用して送信される割り当て有り用SRSを受信するようになり、当該割り当て有り用SRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性を制御して、下りサブフレームにおいて対象端末2に対して信号を送信する。
【0097】
このように、基地局1においては、割り当て無し用SRSを送信する通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を下りサブフレームで送信する際には、当該割り当て無し用SRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性を制御している。上述のように、割り当て無し用SRSの送信に使用することが可能な第2のSRS用上り無線リースと、割り当て有り用SRSの送信に使用することが可能な第1のSRS用上り無線リソースとが異なっていることから、基地局1が通信する通信端末2から送信される割り当て無し用SRSに対して、周辺基地局1が通信する下り割り当て有り端末2からの割り当て有り用SRSが干渉波として重畳されることはない。したがって、各基地局1が、通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を送信する際に、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリングを行ったとしても、周辺基地局1が通信する下り割り当て有り端末2にヌルを意図的に向けることはできない。よって、基地局1においては、通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を送信する際にヌルステアリングを行うメリットがあまり無い。一方で、ビームフォーミング及びヌルステアリングの両方を行う場合には、ビームフォーミングだけを行う場合と比較して、ビームのゲインが小さくなる傾向にある。したがって、通信端末2に対して変更通知用SRS制御信号を送信する際には、ビームフォーミング及びヌルステアリングのうちのビームフォーミングだけを行うことが望ましい。
【0098】
次に基地局1が通信端末2に対して割り当てるSRSの送信用の上り無線リソースを、第1上り無線リソースから第2上り無線リソースに変更する際の当該基地局1の動作について説明する。図15は当該動作を示すフローチャートである。
【0099】
図15に示されるように、ステップs21において、SRSの送信用として第1上り無線リソースが割り当てられている、下り割り当て有り端末2である対象通信端末2についての下り割り当て優先度が低くなって、ステップs22において、対象通信端末2が下り無線リソースの割り当て対象外となると、ステップs23において、無線リソース割り当て部122は、対象通信端末2に割り当てるSRSの送信用の上り無線リソースを、第1上り無線リソースから第2上り無線リソースに変更する。その後、送信信号生成部120が、対象通信端末2に対して、SRSの送信用として割り当てられる上り無線リソースが、第1上り無線リソースから第2上り無線リソースに変更されたことを通知するSRS制御信号を生成する。つまり、送信信号生成部120は、対象通信端末2に対してSRSの送信用として新たに割り当てられた第2上り無線リソースを通知するためのあらたなSRS制御信号を生成する。
【0100】
その後、ステップs24において、通信部13は、あらたに生成されたSRS制御信号を対象通信端末2に送信する。このとき、通信部13は、対象通信端末2にすでに割り当てられている下り無線リソースを用いて対象通信端末2にあらたなSRS制御信号を送信する。また、通信部13は、対象通信端末2に対してあらたなSRS制御信号を送信する際には、対象通信端末2からの割り当て有り用SRSに基づいて、ヌルステアリング及びビームフォーミングを行う。
【0101】
その後、基地局1は、対象通信端末2から応答信号を受信すると、応答信号を受信したTDDフレーム300の次のTDDフレーム300以降において、対象通信端末2からは割り当て無し用SRSを受信するようになり、対象通信端末2に対しては信号を送信しなくなる。
【0102】
<割り当て無し用SRSの送信周波数帯域幅について>
上述のように、本通信システム100では、SRS送信帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、互いに大きさが異なる複数の帯域幅(本例では、40RB、20RB、4RB)が定められている。割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅としては、それらの複数の帯域幅のいずれに設定しても良い。
【0103】
割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅として、複数の帯域幅のうちの最小値(本例では、4RB)を設定した場合には、割り当て無し用SRSの送信に使用することが可能な第2のSRS用上り無線リソース、つまり前方SRS1用上り無線リソース500bを用いて、多くの下り割り当て無し端末2がSRSを基地局1に送信することができる。よって、基地局1が通信することができる下り割り当て無し端末2を増やすことができる。その結果、基地局1の通信端末2の収容数が増加する。
【0104】
図16は、割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅が4RBに設定されている様子を示す図である。図16に示されるように、システム帯域幅が10MHzの場合に、割り当て無し用SRSを多重せずに、割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅を4RBに設定する場合には、前方SRS1用上り無線リソース500bを用いて、10台の通信端末2(図15の例では、端末番号1〜10までの通信端末2)が割り当て無し用SRSを送信することができる。
【0105】
なお、基地局1では、割り当て無し用SRSを送信する通信端末2に対しては、変更通知用SRS制御信号を送信する以外においては、割り当て無し用SRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性を制御して信号を送信することはないため、割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅については小さく設定しても問題とならない。
【0106】
<SRSの多重化について>
上述のように、SRSにおいては、互いに直交する8種類の符号系列が採用された8種類の符号パターンが規定されている。複数の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSあるいは割り当て無し用SRSについては、同一の送信周波数帯域で多重しても良いし、しなくても良い。
【0107】
基地局1と通信する複数の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSを多重すると、周辺基地局1においては、ヌルを向ける必要性のある通信端末2にヌルが向く確率が低くなるため、割り当て有り用SRSについては多重しないようにすることが望ましい。
【0108】
図17は通信端末2に対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図17の例では、端末番号1〜3の通信端末2が、前方SRS0用上り無線リソース500aに含まれる上り無線リソースを用いて送信する割り当て有り用SRSが多重されている。
【0109】
図17に示されるように、あるSRS送信周期360において、端末番号1〜3の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSが多重されていたとしても、当該SRS送信周期360の第1下りサブフレーム501においては、同じ周波数帯域を用いて端末番号1〜3の通信端末2のすべてに信号を送信することはできない。つまり、第1下りサブフレーム501において、端末番号1〜3の通信端末2のすべてに信号を送信しようとしたとしても、端末番号1〜3の通信端末2への送信信号は、互いに異なった周波数帯域で送信されることになる。
【0110】
一方で、周辺基地局1においては、それと通信する通信端末2、例えば端末番号10の通信端末2が、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSと同じ送信周波数帯域及び送信時間帯で、割り当て有り用SRSを送信する際には、周辺基地局1は、端末番号10の通信端末2からの割り当て有り用SRSを、端末番号1〜3の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSの干渉を受けた状態で受信することになる。したがって、この場合には、周辺基地局1では、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2のすべてが、ヌルが向く対象となる。
【0111】
端末番号1〜3が送信する割り当て有り用SRSの送信周波数帯域に含まれる、ある特定の周波数帯域に注目した場合には、その注目周波数帯域では、基地局1からは、端末番号1〜3の通信端末2のいずれか一つの通信端末2だけに信号が送信される。したがって、周辺基地局1と通信する端末番号10の通信端末2は、注目周波数帯域では、端末番号1〜3の通信端末2のいずれか一つの通信端末2からの信号しか受信しない。よって、注目周波数帯域においては、周辺基地局1が端末番号1〜3の通信端末2のすべてにヌルを向ける必要性に乏しい。それにもかかわらず、周辺基地局1では、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2のすべてが、ヌルが向く対象となる。つまり、端末番号1〜3の通信端末2が送信する割り当て有り用SRSが多重されると、周辺基地局1においては、ヌルを向ける必要性に乏しい通信端末2に対してヌルが向く可能性がある。よって、周辺基地局1においては、ヌルを向ける必要性のある通信端末2に対してヌルが向く可能性が低くなる。
【0112】
このように、割り当て有り用SRSについては多重すると、周辺基地局1において、ヌルを向ける必要性のある通信端末2に対してヌルが向く可能性が低くなることから、割り当て有り用SRSは多重しない方が望ましい。
【0113】
一方で、割り当て無し用SRSについては、周辺基地局1が通信する通信端末2が送信する割り当て有り用SRSと干渉しないことから、上記のような問題は生じない。したがって、基地局1が通信することできる下り割り当て無し端末2の数を多くするために、つまり、基地局1が収容できる通信端末2の数を多くするために、割り当て無し用SRSについては多重を許容することが望ましい。図18は、割り当て無し用SRSが同一周波数帯域で3多重されている様子を示す図である。割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅を4RBとし、割り当て無し用SRSを3多重すると、基地局1は、30台の下り割り当て無し端末2(図18の例では、端末番号1〜30の通信端末2)を収容することができる。本実施の形態では、最大で8つの通信端末2が送信する割り当て有り用SRSを、同一の送信周波数帯域で多重することができることから、割り当て無し用SRSのSRS送信帯域幅を4RBとすると、基地局1は、最大で80台の下り割り当て無し端末2を収容することができる。
【0114】
<変形例>
上記の実施の形態では、前方SRS1用上り無線リソース500bを、下り割り当て無し端末2がSRSの送信に使用することが可能な第2のSRS用上り無線リソースとしていたが、前方SRS0用上り無線リソース500a、後方SRS0用上り無線リソース500c及び後方SRS1用上り無線リソース500dのいずれか一つを第2のSRS用上り無線リソースとしても良い。
【0115】
また、上記の例では、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のそれぞれにおいてSRSを送信していたが、当該2つのシンボル期間304のうちのどちらか一方だけにSRSを送信しても良い。この場合には、SRSを送信するシンボル期間304と、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースと、SRSを送信するシンボル期間304と、SRS送信可能帯域400に含まれる、SRS1の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特定される上り無線リソースとのどちらか一方が第1のSRS用上り無線リソースとなり、他方が第2のSRS用上り無線リソースとなる。この第1及び第2のSRS用上り無線リソースは周波数方向において異なるようになる。
【0116】
また、上述のように、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能であることから、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304から送信されるSRS0,SRS1を、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のいずれか一方から送信されるSRS0,SRS1の代わりに使用しても良い。また、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304において送信されるSRS0,SRS1の一方を割り当て有り用SRSとして使用し、他方を割り当て無し用SRSとして使用しても良い。なお、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304にSRSを送信する際には、システム帯域の中央部分しか使用することができない。例えば、システム帯域が10MHzの場合には、システム帯域において、高周波側の端から5RBと、低周波側の端から5RBとは、SRSの送信に使用することができない。
【0117】
また、上記の例では、SRS0及びSRS1の両方を使用したが、どちらか一方だけを使用しても良い。この場合には、例えば、先方SRS送信シンボル期間370aと、SRS送信可能帯域400に含まれる、使用対象のSRSの送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアとで特性される上り無線リソースと、後方SRS送信シンボル期間370bと、SRS送信可能帯域400に含まれる、使用対象のSRSの送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアとで特性される上り無線リソースとのどちらか一方を第1のSRS用上り無線リソースとし、他方を第2のSRS用上り無線リソースとする。この場合、第1及び第2のSRS用上り無線リソースは時間方向において異なるようになる。
【0118】
また、上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の通信システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1,1a 基地局
1b,1c 周辺基地局
2 通信端末
2a−1,2b−1,2c−1 割り当て有り端末
2a−2,2b−2,2c−2 割り当て無し端末
13 通信部
122 無線リソース割り当て部
100 通信システム
110a アンテナ
500a 前方SRS0用上り無線リソース
500b 前方SRS1用上り無線リソース
500c 後方SRS0用上り無線リソース
500d 後方SRS1用上り無線リソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局を備える通信システムでの一の基地局であって、
前記通信システムにおいては、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、
複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信端末との通信で使用する無線リソースを、当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と
を備え、
前記無線リソース割り当て部は、
下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、
下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる、基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記通信部は、前記第1上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信する通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行う、基地局。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記通信システムにおいては、前記既知信号の送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、大きさが互いに異なる複数の帯域幅が定められており、
前記第2上り無線リソースを用いて通信端末から送信される前記既知信号の送信周波数帯域幅は、前記複数の帯域幅のうちの最小値が設定されている、基地局。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記第2上り無線リソースを使用する複数の通信端末からの前記既知信号が同一周波数帯域で多重されている、基地局。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記無線リソース割り当て部は、前記第2上り無線リソースを割り当てた通信端末に対して下り無線リソースを割り当てるようになった際には、当該通信端末に対して前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースを、前記第2上り無線リソースから前記第1上り無線リソースに変更する、基地局。
【請求項6】
請求項5に記載の基地局であって、
前記通信部は、前記無線リソース割り当て部において、前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースが前記第2上り無線リソースから前記第1上り無線リソースに変更された通信端末に対して、上り無線リソースの割り当て変更を通知する信号を送信する際には、当該通信端末にビームが向くように、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて前記複数のアンテナの送信指向性に関してビームフォーミングを行う、基地局。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記無線リソース割り当て部は、前記第1上り無線リソースを割り当てた通信端末に対して下り無線リソースを割り当てないようになった際には、当該通信端末に対して前記既知信号の送信用として割り当てる上り無線リソースを、前記第1上り無線リソースから前記第2上り無線リソースに変更する、基地局。
【請求項8】
複数の基地局を備える通信システムでの一の基地局であって、
通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、
複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信端末との通信で使用する無線リソースを、当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と
を備え、
前記無線リソース割り当て部は、
下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、
下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる、基地局。
【請求項9】
複数の基地局を備える通信システムであって、
前記通信システムにおいては、通信端末が既知信号を送信する際に使用することが可能な上り無線リソースとして、第1の既知信号用上り無線リソースと、当該第1の既知信号用上り無線リソースとは周波数方向及び時間方向の少なくとも一方において異なる第2の既知信号用上り無線リソースとが定められており、
前記複数の基地局のそれぞれは、
複数のアンテナを用いて通信端末と通信を行い、通信端末に対して信号を送信する際には、当該通信端末からの前記既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信する通信端末に対して、当該通信端末が使用する無線リソースを割り当てる無線リソース割り当て部と
を備え、
前記複数の基地局のそれぞれでは、
前記無線リソース割り当て部は、
下り無線リソースを割り当てる通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第1の既知信号用上り無線リソースに含まれる第1上り無線リソースを割り当て、
下り無線リソースを割り当てない通信端末に対しては、前記既知信号の送信用として、前記第2の既知信号用上り無線リソースに含まれる第2上り無線リソースを割り当てる、通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−182660(P2012−182660A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44282(P2011−44282)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】