説明

基地局装置および通信対象端末決定方法

【課題】データ送信が連続していない場合でも、可及的に正確な通信品質を報告させて、適切な条件で適切な通信端末装置にデータを送信することができる基地局装置および通信対象端末決定方法を提供する。
【解決手段】基地局装置1と通信可能な通信端末装置に対して、報告指示部18から通信品質報告指示を与え、無線送信部12との間の通信品質を報告させる。このとき、測定対象の通信端末装置に、無線送信部12から通信端末装置毎に設定された個別送信条件で送信データが送信中である場合には、送信データに基づいて、予め定める時間毎に通信品質を求めて報告する指示をブロードキャスト送信で通信端末装置に与える。送信データが送信中でない場合には、通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを無線送信部12から個別送信条件でユニキャスト送信させ、無線送信部12から送信された指示データに基づいて通信品質を求めて報告させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置、および前記基地局装置における通信対象端末決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポイントトゥーマルチポイント(Point to Multipoint)の無線通信システムでは、通信端末装置の位置によって、基地局装置から通信端末装置に送信されて受信されるダウンリンク信号の受信強度が変わる。このように、受信強度を含む通信品質は変化するので、基地局装置は、各通信端末装置に対して、受信したダウンリンク信号の通信品質を報告させるようにしている(たとえば特許文献1参照)。以下の説明において、各通信端末装置が、基地局装置から送信されて受信したダウンリンク信号の通信品質を基地局装置へ報告することを「レポーティング」という。
【0003】
基地局装置は、各通信端末装置から報告された通信品質に基づいて、各通信端末装置に適用する変調方式および符号化率を決定する。レポーティングの精度が悪いと、基地局装置によって不適切な変調方式が選ばれ、基地局装置と通信端末装置との間の通信効率が悪化するおそれがある。通信品質は時々刻々と変化するので、基地局装置は、通信端末装置に対して定期的にレポーティングの指示を与える必要がある。
【0004】
また基地局装置が複数の通信端末装置と通信するときには、無線リソースのスケジューリングが必要になる。無線リソースのスケジューリングとは、基地局装置に届いた複数の通信端末装置宛のデータを、どのような順番で、どれくらいの量を、どの通信端末装置に送信するかを決定する機能をいう。スケジューリングでは、通信端末装置間の公平性を保つこと、および高い無線利用効率を実現すること、換言すれば基地局装置全体の高いスループットを実現することの2つの要求を同時に満たす必要がある。この2つの要求を同時に満たすスケジューリング方法として、プロポーショナルフェアネス(Proportional Fairness)が広く利用されている。
【0005】
プロポーショナルフェアネスでは、通信端末装置毎に送信の優先度を決定し、その決定した優先度順に通信端末装置にデータを送信する。送信の優先度は、過去の送信データ量が小さければ小さいほど優先度が高く、過去の平均通信品質と現在の通信品質との比、または通信品質の値自体が大きいほど優先度が高いという規則に従って決定される。したがってプロポーショナルフェアネスでは、データが送信される度に優先度が低下するので、データ送信が連続しない可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−219341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のようにプロポーショナルフェアネスでは、データが送信される度に優先度が低下するので、データ送信が連続しない可能性が高い。データ送信が連続している場合には、直前のデータ送信のときに報告された通信品質に基づいて、適切な変調方式を選択することが可能である。これに対し、データ送信が連続していない場合、現在の通信品質は、以前に報告された通信品質から変化している可能性が高いので、以前に報告された通信品質に基づいて変調方式を選択すると、不適切な変調方式が選ばれ、基地局装置と通信端末装置との間の通信効率が悪化するおそれがある。したがって、データの送信間隔が一定時間以上空いている場合には、低い変調方式からデータ送信を開始し、通信品質に応じて変調方式のシフトアップを試行する必要がある。これによって、最初の送信では、本来適用可能な変調方式よりも低い変調方式が適用され、送信効率が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、データ送信が連続していない場合でも、可及的に正確な通信品質を報告させて、適切な条件で適切な通信端末装置にデータを送信することができる基地局装置および通信対象端末決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基地局装置は、複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置であって、各前記通信端末装置に、前記通信端末装置毎に設定された個別送信条件で、送信するべき送信データをユニキャスト送信で送信する送信部と、各前記通信端末装置に、前記送信部との間の通信品質を報告する指示を表す通信品質報告指示を与える報告指示部と、前記通信品質報告指示に応答して前記通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、前記複数の通信端末装置の中から、前記送信部が前記送信データを送信する通信対象の通信端末装置を決定する通信対象決定部とを備え、前記報告指示部は、前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中であると判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記送信データに基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示を表す定期報告指示をブロードキャスト送信で与え、前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、その通信端末装置に前記通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを前記個別送信条件にてユニキャスト送信で送信する指示を表す送信指示を前記送信部に与えるとともに、前記報告指示メッセージによって、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記指示データに基づいて前記通信品質を求めて報告する指示を表す応答報告指示を与えることを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記送信部は、前記複数の通信端末装置に共通する共通送信条件で、前記複数の通信端末装置に共通する共通情報をブロードキャスト送信で送信し、前記報告指示部は、前記通信端末装置に前記応答報告指示を与えた後、前記応答報告指示が与えられた通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記共通情報に基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示をブロードキャスト送信で与え、前記通信対象決定部は、前記指示データに基づいて求められて報告される前記通信品質と、前記共通情報に基づいて求められて報告される前記通信品質とに基づいて、前記通信対象の通信端末装置を決定することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記通信対象決定部は、前記複数の通信端末装置のうちのいずれの通信端末装置に優先して前記送信データを送信するかの優先度合いを示す優先度を求め、前記優先度の高い順に前記通信端末装置を前記通信対象の通信端末装置として決定し、前記優先度は、報告された前記通信品質の値、または前記通信品質が報告される前の平均通信品質に対する、報告された前記通信品質の比が大きいほど高く、かつ、前記通信品質報告指示に応答して前記通信品質が報告される前までに前記優先度を求めるべき通信端末装置に送信されたデータ量が小さいほど高く設定されることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記報告指示部は、前記通信対象決定部によって前記優先度が求められた後に前記通信品質報告指示を与えるときに、前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、前記優先度に応じて、前記送信部に前記送信指示を与える頻度を変更することによって、前記通信端末装置に前記応答報告指示を与える頻度を変更することを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記送信部は、前記無線通信の指向性を制御するビームフォーミングによって、前記送信データを送信することを特徴とする。
【0014】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記送信部は、複数のアンテナを用いた多入力多出力通信によって、前記送信データを送信可能であることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る基地局装置の一態様では、前記基地局装置は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式で定義された複数のサブキャリアを用いて、前記複数の通信端末装置と多元接続通信を行う、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)における基地局装置であって、前記送信データおよび前記指示データは、時間−サブチャネル平面上で定義される下りサブフレーム内に割り当てられる下りバースト領域を用いて送信され、前記送信データに基づいて求められる前記通信品質および前記指示データに基づいて求められる前記通信品質は、時間−サブチャネル平面上で定義される上りサブフレーム内に割り当てられる上りバースト領域を用いて報告されることを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る通信対象端末決定方法は、複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置における通信対象端末決定方法であって、各前記通信端末装置に、前記通信端末装置毎に設定された個別送信条件で、送信するべき送信データを送信部からユニキャスト送信で送信する送信工程と、各前記通信端末装置に、前記送信部との間の通信品質を報告する指示を表す通信品質報告指示を与える報告指示工程と、前記通信品質報告指示に応答して前記通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、前記複数の通信端末装置の中から、前記送信部が前記送信データを送信する通信対象の通信端末装置を決定する通信対象決定工程とを備え、前記報告指示工程では、前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中であると判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記送信データに基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示を表す定期報告指示をブロードキャスト送信で与え、前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、その通信端末装置に前記通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを前記個別送信条件にてユニキャスト送信で送信する指示を表す送信指示を前記送信部に与えるとともに、前記報告指示メッセージによって、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記指示データに基づいて前記通信品質を求めて報告する指示を表す応答報告指示を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、送信部と報告指示部と通信対象決定部とを備えて、複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置が構成される。各通信端末装置には、通信端末装置毎に設定された個別送信条件で送信データが送信部によってユニキャスト送信され、また通信品質報告指示が報告指示部によって与えられる。この通信品質報告指示に応答して通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、通信対象決定部によって通信対象の通信端末装置が決定される。
【0018】
報告指示部は、通信端末装置に通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に送信部が送信データを送信中であると判断すると、その通信端末装置に定期報告指示をブロードキャスト送信で与えて、送信部から個別送信条件で送信された送信データに基づいて、予め定める時間毎に通信品質を求めさせ、報告させる。また報告指示部は、通信端末装置に通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に送信部が送信データを送信中でないと判断すると、送信部に送信指示を与えて、通信端末装置に応答報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを個別送信条件にてユニキャスト送信で送信させ、指示データに基づいて通信品質を求めさせて報告させる。これによって、送信部から通信端末装置毎に設定された個別送信条件で送信データが送信中である場合および送信中でない場合のいずれの場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を通信端末装置によって求めさせて、報告させることができる。
【0019】
この個別送信条件を反映した通信品質に基づいて通信対象の通信端末装置が決定されるので、通信品質が個別送信条件を反映していない場合に比べて、より適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができる。たとえば、報告された通信品質に基づいて、いずれの通信端末装置に優先してデータを送信するかの優先度合いを示す優先度を求めて、優先度の高い順に通信対象の通信端末装置として決定するとき、優先度をより正確に求めることができるので、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することが可能である。したがって、データ送信が連続していない場合でも、可及的に正確な通信品質を報告させて、適切な条件で適切な通信端末装置にデータを送信することができる。
【0020】
また本発明の一態様によれば、送信部によって複数の通信端末装置に共通する共通送信条件で共通情報がブロードキャスト送信で送信される。報告指示部は、通信端末装置に応答報告指示を与えて、指示データに基づいて通信品質を求めさせて報告させた後、その応答報告指示が与えられた通信端末装置に通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に送信部が送信データを送信中でないと判断すると、共通情報に基づいて、予め定める時間毎に通信品質を求めて報告する指示をブロードキャスト送信で与え、通信品質を求めさせて報告させる。この共通情報に基づいて求められた通信品質と、先に指示データに基づいて求められた通信品質とに基づいて、通信対象決定部によって通信対象の通信端末装置が決定される。これによって、指示データを個別送信条件で送信させることなく、個別送信条件を反映した通信品質を通信対象決定部に見積らせて、それに基づいて通信対象の通信端末装置を決定することができる。したがって、簡単な処理で、適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができる。
【0021】
また本発明の一態様によれば、通信対象決定部によって優先度が求められ、優先度の高い順に通信対象の通信端末装置が決定される。優先度は、報告された通信品質の値、または通信品質が報告される前の平均通信品質に対する、報告された通信品質の比が大きいほど高く、かつ、通信品質報告指示に応答して通信品質が報告される前までに優先度を求めるべき通信端末装置に送信された送信データ量(以下「過去の送信データ量」という場合がある)が小さいほど高く設定される。送信部が送信データを送信すると、送信データが送信された通信端末装置の優先度が低くなるので、次の送信データが送信されるまでに時間がかかり、その間の通信品質が正確に求められないおそれがあるが、本発明では、前述のように送信部から送信データが送信中でない場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を報告させることができる。これによって、通信品質が個別送信条件を反映していない場合に比べて、より正確に優先度を求めることができる。したがって、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することができる。
【0022】
また本発明の一態様によれば、通信対象決定部によって優先度が求められた後に報告指示部によって通信品質報告指示が与えられるときに、送信部が送信データを送信中でないと判断されると、優先度に応じて、送信部に送信指示を与える頻度が変更されて、通信端末装置に応答報告指示を与える頻度が変更される。これによって、たとえば優先度が、予め定める基準優先度未満である場合には、通信対象の通信端末装置に決定される頻度が低いので、送信部に送信指示を与える頻度を比較的低く設定して、通信端末装置に応答報告指示を与える頻度を比較的低くし、無線リソースの無駄な割り当てを抑えることができる。優先度が基準優先度以上になった場合には、送信部に送信指示を与える頻度を高めることで、通信端末装置に応答報告指示を与える頻度を高めて、通信品質の精度を高めることができるので、より適切な通信端末装置を通信対象の通信端末装置に決定することができる。したがって、無線利用効率を高めることができる。
【0023】
また本発明の一態様によれば、送信部は、ビームフォーミングによって、各通信端末装置に応じた指向性で送信データを送信するので、送信データを送信するときの通信品質を向上させることができる。本発明では、前述のように送信部から送信データが送信中でない場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を報告させることができるので、ビームフォーミングによる通信品質の向上効果を、通信対象の通信端末装置の決定に精度良く反映させることができる。したがって、適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができるので、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することができる。
【0024】
また本発明の一態様によれば、送信部は、複数のアンテナを用いた多入力多出力通信によって送信データを送信可能である。多入力多出力通信で送信データを送信することによって、通信品質を向上させることができる。本発明では、前述のように送信部から送信データが送信中でない場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を報告させることができるので、適切なタイミングで多入力多出力通信を適用することができ、また多入力多出力通信による通信品質の向上効果を、通信対象の通信端末装置の決定に精度良く反映させることができる。したがって、適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができるので、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することができる。
【0025】
また本発明の一態様によれば、基地局装置は、WiMAXにおける基地局装置である。送信部が送信データを送信中であるとき、送信データは、下りサブフレーム内の下りバースト領域を用いて通信端末装置に送信される。この送信データに基づいて、通信端末装置によって、予め定める時間毎に通信品質が求められ、上りサブフレーム内の上りバースト領域を用いて報告される。送信部が送信データを送信中でないときは、下りサブフレーム内の下りバースト領域を用いて通信端末装置に報告指示メッセージを含む指示データが送信され、この指示データに基づいて通信端末装置で通信品質が求められ、上りサブフレーム内の上りバースト領域を用いて報告される。本発明では、前述のように送信部から送信データが送信中である場合および送信中でない場合のいずれの場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を各通信端末装置によって報告させることができるので、適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができる。したがって、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することが可能なWiMAX用の基地局装置を実現することができる。
【0026】
また本発明によれば、通信対象端末決定方法は、送信工程と報告指示工程と通信対象決定工程とを備える。送信工程において、通信端末装置毎に設定された個別送信条件で、送信部から各通信端末装置に送信データがユニキャスト送信される。また報告指示工程において、通信品質報告指示が各通信端末装置に与えられる。この通信品質報告指示に応答して通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、通信対象決定工程で、通信対象の通信端末装置が決定される。
【0027】
報告指示工程では、通信端末装置に通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に送信部が送信データを送信中であると判断すると、その通信端末装置に定期報告指示をブロードキャスト送信で与えて、送信部から個別送信条件で送信された送信データに基づいて、予め定める時間毎に通信品質を求めさせ、報告させる。また送信部が送信データを送信中でないと判断すると、送信部に送信指示を与えて、通信端末装置に応答報告指示表す報告指示メッセージを含む指示データを個別送信条件にてユニキャスト送信で送信させ、指示データに基づいて通信品質を求めさせて報告させる。これによって、送信部から通信端末装置毎に設定された個別送信条件で送信データが送信中である場合および送信中でない場合のいずれの場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を通信端末装置によって求めさせて、報告させることができる。
【0028】
この個別送信条件を反映した通信品質に基づいて通信対象の通信端末装置が決定されるので、通信品質が個別送信条件を反映していない場合に比べて、より適切な通信端末装置を、通信対象の通信端末装置として決定することができる。たとえば、報告された通信品質に基づいて、いずれの通信端末装置に優先してデータを送信するかの優先度合いを示す優先度を求めて、優先度の高い順に通信対象の通信端末装置として決定するとき、優先度をより正確に求めることができるので、通信端末装置間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することが可能である。したがって、データ送信が連続していない場合でも、可及的に正確な通信品質を報告させて、適切な条件で適切な通信端末装置にデータを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の一形態である基地局装置1を備える無線通信システム3の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態である基地局装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】フレーム100の構成例を示す図である。
【図4】測定対象の通信端末装置2に対する通信品質報告指示の種類とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。
【図5】通信端末装置2に対する変調方式および符号化率、ならびに優先度の決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】通信端末装置2における通信品質報告処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】BFされたデータが連続して送信される場合の通信品質報告とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。
【図8】BFされたデータの送信間隔が長い場合の通信品質報告とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。
【図9】プリアンブルを用いて通信品質を求める場合のCINRの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<前提技術>
本発明の基地局装置について説明する前に、本発明の前提技術となる基地局装置を含む無線通信システムについて説明する。ポイントトゥーマルチポイント(Point to Multipoint)の無線通信システムでは、通信端末装置の位置によって、基地局装置から通信端末装置に送信されて受信されるダウンリンク信号の受信強度が変わる。このように、受信強度を含む通信品質は変化するので、基地局装置は、ダウンリンク信号の変調方式および復号化率を決定するときに、各通信端末装置に対して、受信したダウンリンク信号の通信品質を報告させるようにしている。以下の説明において、各通信端末装置が、基地局装置から送信されて受信したダウンリンク信号の通信品質を基地局装置へ報告することを「レポーティング」という。
【0031】
基地局装置は、各通信端末装置から報告された通信品質に基づいて、各通信端末装置に適用する変調方式および符号化率を決定する。変調方式としては、たとえば通信品質が比較的高い場合は、64値直交振幅変調(64 Quadrature Amplitude Modulation;略称:64QAM)が選ばれる。64QAMでは、1サブキャリアで6ビットの信号の送信が可能である。通信品質が中程度の場合は、16値直交振幅変調(16 Quadrature Amplitude Modulation;略称:16QAM)が選ばれる。16QAMでは、1サブキャリアで4ビットの信号の送信が可能である。通信品質が比較的低い場合は、4相位相変調(Quadrature Phase Shift Keying;略称:QPSK)が選ばれる。QPSKでは、1サブキャリアで2ビットの信号の送信が可能である。
【0032】
通信品質は時々刻々と変化するので、基地局装置は、通信端末装置に対して定期的にレポーティングの指示を与える必要がある。レポーティングの精度が悪いと、基地局装置によって不適切な変調方式が選ばれ、基地局装置と通信端末装置との間の通信効率が悪化するおそれがある。
【0033】
基地局装置が通信端末装置と通信するときには、無線リソースのスケジューリングが必要になる。スケジューリングとは、基地局装置に届いた複数の通信端末装置宛のデータを基地局装置がどのように送信するかを決定する機能をいう。たとえば、100台の通信端末装置が基地局装置に接続されている場合に、全ての通信端末装置宛に送信するべき送信データが同時に届いたとしても、一度に全ての通信端末装置に送信データを送信することは不可能である。このような場合、送信データの送信タイミング、送信データ量および送信先の通信端末装置を決定する機能が必要となる。この機能を果たすのがスケジューリングである。
【0034】
スケジューリングでは、通信端末装置間の公平性を保つこと、および高い無線利用効率を実現すること、換言すれば基地局装置全体の高いスループットを実現することの2つの要求を同時に満たす必要がある。たとえば、通信品質が良く、64QAMを使用可能な通信端末装置と、通信品質が悪く、QPSKしか使用できない通信端末装置とが存在する場合、全ての無線リソースを64QAMの通信端末装置に割り振ると、無線利用効率は高くなる。しかし、これでは通信端末装置間の公平性を保つことができない。逆に、通信端末装置間の公平性を保つ観点で、無線リソースを複数の通信端末装置に均等に割り振ると、通信品質が悪い通信端末装置にも無線リソースが多く割り振られることになり、基地局装置全体のスループットが上がらないという問題が生じる。
【0035】
前述の2つの要求を同時に満たすスケジューリング方法として、プロポーショナルフェアネス(Proportional Fairness)が広く利用されている。プロポーショナルフェアネスでは、通信端末装置毎に送信の優先度を決定し、その決定した優先度順に通信端末装置にデータを送信する。送信の優先度は、過去の送信データ量が小さければ小さいほど優先度が高く、過去の平均通信品質と現在の通信品質との比、または現在の通信品質の値自体が大きいほど優先度が高いという規則に従って決定される。したがって、送信データ量が比較的大きい通信端末装置は、送信データ量が比較的小さい通信端末装置に比べて、送信の優先度が下がる。
【0036】
このようにプロポーショナルフェアネスでは、通信品質が良好な通信端末装置に対して、通信品質が良好である間になるべく多くのビット数のデータを送信するように送信の優先度を設定することで、短時間で送信を完了することができるようにしている。また過去のデータ送信量の多い通信端末装置については優先度を下げることで、データ送信量の少ない通信端末装置も通信できるようにして、公平性を保っている。
【0037】
したがって、プロポーショナルフェアネスを実行するためにも、前述のレポーティングによって、通信端末装置の通信品質を継続して取得する必要がある。
【0038】
WiMAXにおけるレポーティング方法としては、たとえば、通信端末装置からの報告を受信するために、基地局装置によって、上り通信であるアップリンク(UpLink;略称:UL)のフレームのデータ領域の1つである高速フィードバック(FastFeedback;略称:FF)領域に、通信端末装置が測定したチャネル品質情報(Channel Quality Information;略称:CQI)を配置して送信させる方式がある。この方式を、以下ではCQICH(Channel Quality Information Channel)方式という。
【0039】
CQICH方式では、基地局装置は、FF領域を各通信端末装置へ割り当てるために、ブロードキャストデータである後述のUL−MAP(Uplink Map)メッセージに、CQICH−ALLOC−IEと呼ばれるパラメータの構造体を格納する。CQICH−ALLOC−IEの中には、通信対象の通信端末装置のID(Identification)、FF領域内の割り当てられた領域の位置、およびレポート方法の詳細などを示す情報が含まれている。通信端末装置は、自装置に割り当てられた領域へ下りの通信品質を報告する。ここで、ブロードキャストデータとは、ブロードキャスト送信で送信されるデータのことであり、ブロードキャスト送信とは、ネットワーク内の全ての通信端末装置に同じ情報を送信する通信形態のことである。
【0040】
他のレポーティング方法として、レイヤ2上にて基地局装置と通信端末装置との間で送受信されるメディアアクセス制御(Media Access Control;略称:MAC)メッセージを用いたレポート−リクエスト/レスポンス方式がある。この方式を、以下では「REP−REQ/RSP方式」という。
【0041】
REP−REQ/RSP方式では、基地局装置は、無線通信の通信品質の報告要求を表す無線品質要求情報を含むレポート要求メッセージであるレポート−リクエスト(Report Request;略称:REP−REQ)メッセージを、単一のアドレスを指定して特定の通信端末装置に送信する、いわゆるユニキャスト送信を行う。通信端末装置は、REP−REQに応答して、無線通信の通信品質の報告要求への応答を表す無線品質応答情報を含む制御メッセージであるレポート−レスポンス(Report Response;略称:REP−RSP)メッセージを基地局装置に送信することによって、通信品質を報告する。REP−REQおよびREP−RSPは、いずれもMACメッセージであるので、前方誤り訂正(Forward Error Correction;略称:FEC)などが必要である。FECなどのオーバーヘッドを考えると、REP−REQ/RSP方式は、CQICH方式よりも負荷は大きいが、CQICH方式よりも詳細な内容のレポートが可能となっている。
【0042】
これに対し、CQICH方式では、REP−REQ/RSP方式のような複雑な内容のレポーティングはできないが、FECが不要であり処理が速いという利点、ならびに基地局装置および通信端末装置間のプロトコルオーバーヘッドが少ないという利点がある。
【0043】
またCQICH方式では、ブロードキャストデータであるUL−MAPメッセージによって、通信端末装置へのレポーティングを指示するのに対して、REP−REQ/RSP方式では、ユニキャストデータであるREP−REQメッセージによって、通信端末装置へのレポーティングを指示するという違いがある。ここで、ユニキャストデータとは、ユニキャスト送信で送信されるデータのことである。
【0044】
また無線通信システムでは、チャネル容量の増大、通信品質の改善および通信速度の高速化を実現するために、基地局装置のアンテナの指向性を環境に応じて変化させることが可能な技術として、スマートアンテナ技術が知られている。たとえば、スマートアンテナ技術の1つであるビームフォーミングでは、基地局装置は、複数のアンテナ素子から成るアレイアンテナを備えており、複数のアンテナ素子にそれぞれ重み付けを行うことによって、アレイアンテナによる指向性を通信対象の通信端末装置に向けている。このようにして、各通信端末装置宛の送信データを通信端末装置の方向に絞って送信することによって、通信品質を向上させるようにしている。
【0045】
このようなスマートアンテナ技術を下りのデータ送信に用いる場合、通信端末装置毎の通信路の特性を利用して性能を向上させる手法が採られる。スマートアンテナ技術の効果は、通信路の特性によって異なるので、スマートアンテナ技術によって通信品質がどの程度変化するかは、スマートアンテナ技術を適用した後でなければ把握することができない。
【0046】
データ送信が連続している場合には、直前のスマートアンテナ技術を適用したデータ送信のときの通信品質に基づいて、適用する変調方式を選択することが可能であるが、送信間隔が一定時間以上空いている場合には、低い変調方式からデータ送信を開始し、通信品質に応じて変調方式のシフトアップを試行する必要がある。したがって最初の送信では、本来適用可能な変調方式よりも低い変調方式が適用され、送信効率が低下するという問題が生じる。
【0047】
通信品質は、たとえば、ブロードキャストデータであるプリアンブルで測定される。プリアンブルは、フレームの同期をとるためのフレーム同期信号であり、フレームの先頭に配置される。スマートアンテナ技術を適用したときに、ブロードキャストデータのみで、つまり、プリアンブルのみで通信品質を測定し続けると、スマートアンテナ技術の適用によって通信品質が向上した分を考慮して変調方式を選択することができなくなる。たとえば、前述のビームフォーミングを適用すれば、より高い変調方式を選択できる可能性が高まるが、その恩恵を活かすことができない。
【0048】
また前述のプロポーショナルフェアネスでは、通信端末装置毎の通信品質によって優先度を決定している。他方、スマートアンテナ技術によってどの程度通信品質が変化するかは、前述のように、スマートアンテナ技術が適用された後でなければ把握することができない。したがって、プロポーショナルフェアネスとスマートアンテナ技術とを併用する場合、種々の問題が生じる。
【0049】
スマートアンテナ技術とプロポーショナルフェアネスとの併用を実現するためには、たとえば、スマートアンテナ技術を適用して送信するまでは、ブロードキャストデータから通信品質を測定しておき、スマートアンテナ技術の適用開始後は、スマートアンテナ技術が適用されたデータで通信品質を測定することが考えられる。この場合、スマートアンテナ技術の適用後は確実に通信品質が変化するので、優先度が不必要に変化してしまうという問題が生じる。たとえば、ビームフォーミングを適用した場合には、適用後に大幅に通信品質が向上するので、不必要に優先度が高くなるという問題が生じる。
【0050】
またプロポーショナルフェアネスでは、データが送信される度に優先度が低下するので、データが連続して送信されない可能性が高くなる。データが連続送信にならない場合、スマートアンテナ技術の適用時に必要以上に低い変調方式が選択され続けるおそれがある。そこで本発明では、以下に示す実施の形態の構成を採用している。
【0051】
<実施の形態>
図1は、本発明の実施の一形態である基地局装置1を備える無線通信システム3の構成を示す図である。図2は、本発明の実施の一形態である基地局装置1の構成を示すブロック図である。
【0052】
無線通信システム3は、基地局装置1および複数の通信端末装置2を備えて構成される。本実施の形態の無線通信システム3は、たとえば、IEEE802.16eに規定されているモバイルWiMAXに準拠したシステムであって、基地局装置1はOFDMA方式で定義された複数のサブキャリアを用いて、複数の通信端末装置2と双方向の無線通信である多元接続通信を行う。OFDMA方式で通信を行う基地局装置1は、サブチャネルとOFDMシンボルとで特定される無線リソースを複数の通信端末装置2にそれぞれ個別に割り当てることによって、複数の通信端末装置2と同時に通信することが可能となっている。
【0053】
基地局装置1は、無線通信部10と、データ処理部14と、ウェイト算出部15と、通信対象決定部16と、無線リソース割り当て部17と、報告指示部18とを備えて構成される。無線通信部10は、無線受信部11、無線送信部12およびアレイアンテナ13を備える。アレイアンテナ13は、複数のアンテナ素子13aを有する。無線送信部12は、送信部に相当する。
【0054】
無線受信部11および無線送信部12は、アレイアンテナ13を共有している。つまり、アレイアンテナ13は、通信端末装置2に無線信号を送信する送信アンテナおよび通信端末装置2からの無線信号を受信する受信アンテナとして機能する。アレイアンテナ13は、無線通信部10に含まれるが、図2では、理解を容易にするために、無線通信部10を表すブロックの外に記載している。
【0055】
基地局装置1は、アレイアンテナ13を構成する複数のアンテナ素子13aにそれぞれウェイト付け、すなわち重み付けを行うことによってビームフォーミングを行い、アレイアンテナ13による指向性を通信対象の通信端末装置2に向けることが可能である。
【0056】
無線受信部11は、アレイアンテナ13の複数のアンテナ素子13aで受信された信号に対してそれぞれ増幅処理およびダウンコンバートを行って、複数のアンテナ素子13aで受信された信号をそれぞれベースバンド信号に変換してデータ処理部14に出力する。
【0057】
ウェイト算出部15は、通信対象の通信端末装置2毎に、通信端末装置2から送信されてくる既知のサウンディング信号に基づいて、通信端末装置2に割り当てる各サブキャリアの伝送路の品質を推定する。通信端末装置2からのサウンディング信号は、データ処理部14によって取得され、ウェイト算出部15に与えられる。ウェイト算出部15は、前述の推定結果に基づいて、通信対象の通信端末装置2毎に、アレイアンテナ13に適用する受信用のウェイトと送信用のウェイトとを、通信端末装置2に割り当てる各サブキャリアについて算出する。送信用のウェイトは、通信端末装置2毎に設定される個別送信条件に相当する。ウェイト算出部15では、受信用および送信用のウェイトは、たとえば、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムなどを用いた収束演算で算出される。
【0058】
たとえば、ある通信端末装置2が基地局装置1にデータを送信するときに使用するサブキャリアとして100本のサブキャリアが割り当てられている場合には、本実施の形態におけるアレイアンテナ13は3つのアンテナ素子13aで構成されていることから、ウェイト算出部15では、通信端末装置2について、(100×3)個の受信用のウェイトが算出される。また、基地局装置1が、ある通信端末装置2にデータを送信するときに使用するサブキャリアとして150本のサブキャリアが割り当てられている場合には、ウェイト算出部15では、通信端末装置2について、(150×3)個の送信用のウェイトが算出される。
【0059】
このように、ウェイト算出部15では、受信用および送信用のウェイトとしてそれぞれ、アレイアンテナ13を構成するアンテナ素子13aの数と、通信端末装置2に割り当てられたサブキャリアの数とを掛け合わせて得られる数のウェイトが、通信端末装置2毎に求められる。
【0060】
データ処理部14は、無線受信部11から出力される複数のベースバンド信号に対してそれぞれ高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;略称:FFT)処理を行って、複数のベースバンド信号についてそれぞれ、それに含まれる複数のサブキャリアを分離して取得する。データ処理部14は、複数のベースバンド信号に含まれていた同一周波数のサブキャリア毎に、同一周波数のサブキャリアに対してそれぞれ、ウェイト算出部15で算出された、対応する受信用のウェイトを設定して、各サブキャリアの位相および振幅を制御する。そして、データ処理部14は、複数のベースバンド信号に含まれていた同一周波数のサブキャリア毎に、ウェイト設定後の同一周波数のサブキャリアを合成する。これによって、アレイアンテナ13のビームを希望波に向けることができ、妨害波を除去することができる。データ処理部14は、ウェイト設定後の同一周波数のサブキャリアを合成して得られた信号(以下「合成サブキャリア」という場合がある)に対してそれぞれ復調処理などを行って、通信端末装置2からのサウンディング信号などの各種データを再生する。
【0061】
通信端末装置2は、その通信端末装置2と基地局装置1との間の通信品質を表す搬送波対干渉・雑音比(Carrier-to-Interference-plus-Noise Ratio;略称:CINR)を重畳した無線信号を、基地局装置1に送信する。したがって、データ処理部14が前述の合成サブキャリアに対してそれぞれ復調処理などを行うことによって再生される各種データには、基地局装置1と通信端末装置2との間、具体的には無線送信部12と通信端末装置2との間の通信品質を表すCINRが含まれる。データ処理部14は、前述の合成サブキャリアに対してそれぞれ復調処理などを行うことによって再生されるCINRを、通信対象決定部16に出力する。
【0062】
またデータ処理部14は、シリアル送信データを生成する。データ処理部14は、生成したシリアル送信データをパラレル送信データに変換して、パラレル送信データで、送信に使用する複数のサブキャリアを変調する。この変調後の複数のサブキャリアから成るサブキャリア群は、アンテナ素子13aの数だけ準備される。本実施の形態では、同一の3つのサブキャリア群が準備される。データ処理部14は、複数のサブキャリア群に含まれる同一周波数のサブキャリア毎に、同一周波数のサブキャリアに対してそれぞれ、ウェイト算出部15で算出された、対応する送信用のウェイトを設定する。そして、データ処理部14は、複数のサブキャリア群についてそれぞれ、サブキャリア群に含まれるウェイト設定後の複数のサブキャリアを合成してベースバンド信号を生成する。これによって、アレイアンテナ13のアンテナ素子13aの数だけ、ベースバンド信号が生成される。データ処理部14は、生成された複数のベースバンド信号を無線送信部12に出力する。
【0063】
無線送信部12は、データ処理部14から入力された複数のベースバンド信号を、アップコンバートおよび増幅処理した後、複数のアンテナ素子13aにそれぞれ入力する。これによって、アレイアンテナ13から、通信対象の通信端末装置2に向かって無線信号が送信される。これによって無線送信部12は、各通信端末装置2に、通信端末装置2毎に設定された個別送信条件で、送信するべき送信データをユニキャスト送信で送信する。
【0064】
報告指示部18は、各通信端末装置2に、基地局装置1との間、具体的には無線送信部12との間の通信品質を報告する指示を表す通信品質報告指示を与える。通信端末装置2は、報告指示部18から与えられる通信品質報告指示に応答して、無線送信部12との間の通信品質を基地局装置1に報告する。具体的には、通信端末装置2は、無線送信部12との間の通信品質を表す前述のCINRを基地局装置1に送信することによって、無線送信部12との間の通信品質を基地局装置1に報告する。
【0065】
報告指示部18は、各通信端末装置2に通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置2に無線送信部12が、通信端末装置2毎に設定される個別送信条件で送信データを送信中であるか否かを判断する。そして報告指示部18は、個別送信条件で送信データを送信中であると判断すると、通信品質報告指示として、無線送信部12から送信された送信データに基づいて、予め定める時間毎に通信品質を求めて報告する指示を表す定期報告指示を通信端末装置2に与える。定期報告指示は、無線送信部12によって、ブロードキャスト送信で通信端末装置2に与えられる。
【0066】
また報告指示部18は、個別送信条件で送信データを送信中でないと判断すると、その通信端末装置2に通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを個別送信条件にてユニキャスト送信で送信する指示(以下「送信指示」という場合がある)を無線送信部12に与えるとともに、報告指示メッセージによって、通信品質報告指示として、無線送信部12から送信された指示データに基づいて通信品質を求めて報告する指示(以下「応答報告指示」という場合がある)を通信端末装置2に与える。
【0067】
本実施の形態では、通信端末装置2への送信データおよび指示データは、時間−サブチャネル平面上で定義される下りサブフレーム内に割り当てられる下りバースト領域を用いて送信される。報告指示メッセージとしては、MACメッセージの1つである前述のREP−REQメッセージが用いられる。また通信端末装置2において、受信した送信データに基づいて求められる通信品質、および指示データに基づいて求められる通信品質は、時間−サブチャネル平面上で定義される上りサブフレーム内に割り当てられる上りバースト領域を用いて報告される。
【0068】
通信対象決定部16は、報告指示部18から与えられる通信品質報告指示に応答して通信端末装置2から報告される通信品質に基づいて、複数の通信端末装置2の中から、無線送信部12がデータを送信する通信対象の通信端末装置2を決定する。
【0069】
本実施の形態では、通信対象決定部16は、複数の通信端末装置2のうちのいずれの通信端末装置2に優先してデータを送信するかの優先度合いを示す優先度を求め、求めた優先度の高い順に通信端末装置2を通信対象の通信端末装置として決定する。優先度は、本実施の形態では、通信品質が報告される前の平均通信品質である過去の平均通信品質に対する、報告された通信品質である現在の通信品質の比が大きいほど高く、かつ、報告指示部18によって与えられる通信品質報告指示に応答して通信品質が報告される前までに、優先度を求めるべき通信端末装置2に送信されたデータ量である過去の送信データ量が小さいほど高く設定される。
【0070】
優先度を決定するパラメータとしては、過去の平均通信品質に対する現在の通信品質の比に代えて、現在の通信品質である、報告された通信品質の値を用いてもよい。この場合、優先度は、現在の通信品質の値自体、すなわちCNIRの値自体が大きいほど高く、かつ、過去の送信データ量が小さいほど高く設定される。
【0071】
通信対象決定部16は、具体的には、データ処理部14から出力される、無線送信部12と通信端末装置2との間の通信品質を表すCINRに基づいて、通信対象の通信端末装置2を決定する。
【0072】
通信対象決定部16は、データ処理部14から出力されるCINRを記憶する記憶部16aを備える。通信対象決定部16は、通信端末装置2毎に、データ処理部14から出力されるCINRを記憶部16aに記憶する。そして、通信対象決定部18は、通信端末装置2毎に、通信端末装置2から送信されて無線受信部11で受信した1フレームでのCINRを、記憶部16aに記憶された過去の複数フレームでのCINRの平均値で割った値を、品質評価値として算出する。品質評価値は、前述の通信品質が報告される前の平均通信品質に対する、報告された通信品質の比に相当する。前述のように、優先度を決定するパラメータとして、過去の平均通信品質に対する現在の通信品質の比に代えて、現在の通信品質の値を用いる場合には、通信端末装置2から送信されて無線受信部11で受信した1フレームでのCINRの値が、品質評価値として用いられる。
【0073】
また通信対象決定部16の記憶部16aは、過去の複数フレームで各通信端末装置2に送信されたデータ量(以下「過去の送信データ量」という場合がある)を記憶する。過去の送信データ量は、前述の報告指示部18によって与えられる通信品質報告指示に応答して通信品質が報告される前までに、優先度を求めるべき通信端末装置2に送信されたデータ量に相当する。過去の送信データ量は、データ処理部14から与えられる。
【0074】
通信対象決定部16は、各通信端末装置2からCINRを取得する度に、品質評価値が大きいほど高く、かつ過去の送信データ量が小さいほど高くなるように、各通信端末装置2の優先度を決定する。通信対象決定部16は、通信端末装置2毎に、決定した優先度を記憶部16aに記憶する。記憶部16aに記憶される優先度は、各通信端末装置2からCINRが報告される度に更新される。
【0075】
通信対象決定部16は、複数の通信端末装置2の中から、優先度の高い順に通信端末装置2を通信対象の通信端末装置2として選択する。その結果、長期的にみれば、全ての通信端末装置2がそれぞれ、均等の機会で、かつ、平均よりも通信品質が良くなったときに、通信対象の通信端末装置2として選択されることになる。このように通信対象決定部16が、優先度に基づいて通信対象の通信端末装置2を決定することによって、プロポーショナルフェアネスが実現される。本発明の通信対象端末決定方法は、データ処理部14、通信対象決定部16および報告指示部18によって実行される。
【0076】
無線リソース割り当て部17は、下り方向の通信対象の通信端末装置2に割り当てる無線リソースを決定する。より詳細には、無線リソース割り当て部17は、基地局装置1が下り方向の通信対象の通信端末装置2にデータを送信するときに使用する無線リソースを決定する。また無線リソース割り当て部17は、上り方向の通信対象の通信端末装置2に割り当てる無線リソースを決定する。より詳細には、無線リソース割り当て部17は、上り方向の通信対象の通信端末装置2が基地局装置1にデータを送信するときに使用する無線リソースを決定する。複数の通信端末装置2に無線リソースが割り当てられるときには、各OFDMシンボルにおいて、周波数軸上に配置された複数のサブキャリアが重複しないように複数の通信端末装置2に無線リソースが割り当てられる。
【0077】
具体的に述べると、無線リソース割り当て部17は、基地局装置1から通信端末装置2へ信号を送信するための下りサブフレーム内に、ユーザデータの下り方向の送信に使用される少なくとも1つの下りバースト領域を割り当てる。下りバースト領域は、OFDMシンボルとサブチャネルとで特定され、1つの下りバースト領域には少なくとも1つの通信端末装置2向けのユーザデータが含められる。下りサブフレーム内に下りバースト領域が割り当てられることによって、基地局装置1では、通信対象の通信端末装置2にユーザデータを送信するときに使用する無線リソースが決定する。
【0078】
また、無線リソース割り当て部17は、通信端末装置2から基地局装置1へ信号を送信するための上りサブフレーム内に、ユーザデータの上り方向の送信に使用される上りバースト領域を割り当てる。上りバースト領域は、OFDMシンボルとサブチャネルとで特定され、1つの上りバースト領域には、1つの通信端末装置2からのユーザデータが含められる。上りサブフレーム内に上りバースト領域が割り当てられることによって、基地局装置1では、通信対象の通信端末装置2がユーザデータを送信するときに使用する無線リソースが決定する。
【0079】
次に、モバイルWiMAXでのフレーム100の構成について説明する。図3は、フレーム100の構成例を示す図である。モバイルWiMAXでは、基地局装置1と通信端末装置2との間の複信方式には、時分割複信(Time Division Duplexing;略称:TDD)方式が採用されている。図3に示すように、1つのフレーム100は、基地局装置1から通信端末装置2へ信号を送信するための下りサブフレーム101と、通信端末装置2から基地局装置1に信号を送信するための上りサブフレーム102とを含んで構成されている。フレーム100内には、基地局装置1が送信から受信に切り替えるときのガード時間であるTTG(Transmit Transition Gap)と、基地局装置2が受信から送信に切り替えるときのガード時間であるRTG(Receive Transition Gap)とが設けられている。
【0080】
下りサブフレーム101および上りサブフレーム102はそれぞれ、図3に示すように、OFDMシンボルの番号で与えられる時間軸と、サブチャネルの番号で与えられる周波数軸とから成る2次元で表現される。換言すれば、下りサブフレーム101および上りサブフレーム102はそれぞれ、時間−サブチャネル平面上で定義される。OFDMA方式では、複数のサブキャリアが複数のサブチャネルにグループ分けされ、通信端末装置2へのサブキャリアの割り当ては、サブチャネル単位で行われる。また、OFDMA方式では、各通信端末装置2に対する無線リソースの割り当てが、周波数軸と時間軸とで表現される2次元で行われる。
【0081】
下りサブフレーム101内には、たとえば図3に示すように、プリアンブル領域101a、フレーム制御ヘッダ(Frame Control Header;略称:FCH)領域101b、DL−MAP(Downlink Map)領域101c、UL−MAP(Uplink Map)領域101dおよび複数の下りバースト領域101eが割り当てられる。下りサブフレーム101における、プリアンブル領域101aなどの各領域の範囲は、サブチャネル数とOFDMシンボル数とで決定される。
【0082】
他方、上りサブフレーム102内には、たとえば図3に示すように、レンジング領域102a、CQICH領域102b、ACK領域102c、サウンディングゾーン102dおよび複数の上りバースト領域102eが割り当てられる。上りサブフレーム102における、レンジング領域102aなどの各領域の範囲は、下りサブフレーム101と同様に、サブチャネル数とOFDMシンボル数とで決定される。
【0083】
プリアンブル領域101aには、通信端末装置2が基地局装置1との同期をとるために必要な信号が含められる。FCH領域101bには、DL−MAP領域101c中の後述のDL−MAPメッセージの長さと、そこで使用されている誤り訂正符号の方式および繰り返し符号の繰り返し数を示す下りフレームプレフィックス(Downlink Frame Prefix;略称:DLFP)などが含められる。通信端末装置2は、DLFPの内容に従ってDL−MAPメッセージを復調する。
【0084】
複数の下りバースト領域101eにはそれぞれ、少なくとも1つの通信端末装置2をDL−MAPメッセージ101cによって割り当てることが可能であって、各下りバースト領域101eには、対応する通信端末装置2へのユーザデータが含められる。図3に示す下りサブフレーム101では、♯1〜♯5までの5つの下りバースト領域101eが配置されている。時間−サブチャネル平面上で下りバースト領域101eが占める時間帯、すなわちOFDMシンボルおよびサブチャネルが、下りバースト領域101eに対応付けられた通信端末装置2に割り当てられた無線リソースとなる。
【0085】
DL−MAP領域101cには、それが属する下りサブフレーム101において通信を行う各通信端末装置2に対する無線リソースの割り当てを示す制御メッセージであるDL−MAPメッセージが含められる。DL−MAPメッセージには、下りサブフレーム101において各下りバースト領域101eがどの領域に割り当てられているのかを示す情報、および各下りバースト領域101eに対してどの通信端末装置2が割り当てられているのかを示す情報などが含まれている。したがって、DL−MAPメッセージによって、それが属する下りサブフレーム101で通信を行う通信端末装置2と、通信端末装置2と通信を行うときに使用されるサブチャネルと、通信端末装置2と通信を行う時間帯とが特定される。各通信端末装置2は、DL−MAPメッセージの内容を解析することによって、自装置宛のデータが基地局装置1からどの時間帯、すなわちどのOFDMシンボルで、どのサブチャネルを使用して送信されるかを知ることができる。その結果、各通信端末装置2では、基地局装置1からの自装置宛のデータを適切に受信することができる。
【0086】
UL−MAP領域101dには、それが属する下りサブフレーム101に続く上りサブフレーム102において通信対象となる各通信端末装置2に対する無線リソースの割り当てを示すUL−MAPメッセージが含められる。UL−MAPメッセージには、上りサブフレーム102において各上りバースト領域102eがどの領域に割り当てられているのかを示す情報、および上りサブフレーム102中の各上りバースト領域102eに対してどの通信端末装置2が割り当てられているのかを示す情報などが含まれている。したがって、UL−MAPメッセージによって、それが属する下りサブフレーム101に続く上りサブフレーム102において通信を行う通信端末装置2と、通信端末装置2と通信を行うときに使用されるサブチャネルと、通信端末装置2と通信を行う時間帯とが特定される。各通信端末装置2は、UL−MAPメッセージの内容を解析することによって、基地局装置1宛のデータをどの時間帯でどのサブチャネルを使用して送信すべきかを知ることができる。
【0087】
上りサブフレーム102での複数の上りバースト領域102eにはそれぞれ、互いに異なった通信端末装置2がUL−MAPメッセージによって割り当てられており、各上りバースト領域102eには、対応する通信端末装置2が送信するユーザデータが含められる。図3に示す上りサブフレーム102では、♯1〜♯4までの4つの上りバースト領域102eが割り当てられている。時間−サブチャネル平面上で上りバースト領域102eが占める時間帯、すなわちOFDMシンボルおよびサブチャネルが、上りバースト領域102eに対応付けられた通信端末装置2に割り当てられた無線リソースとなる。
【0088】
報告指示部18から通信端末装置2に応答報告指示が与えられた場合は、対応する通信端末装置2に割り当てられた上りバースト領域に、測定した通信品質を表す応答メッセージ、具体的にはCINRを含む応答メッセージが含められ、基地局装置1に送信される。応答メッセージとしては、MACメッセージの1つである前述のREQ−RSPメッセージが用いられる。
【0089】
レンジング領域102aには、帯域要求やレンジングを行うための信号が含められる。CQICH領域102bは、前述のFF領域に相当する。CQICH領域102bには、前述のチャネル品質情報(CQI)が含められる。報告指示部18から通信端末装置2に定期報告指示が与えられた場合は、CQICH領域102bに、チャネル品質情報として、CINRが含められ、基地局装置1に送信される。ACK領域102cには、基地局装置1からのハイブリッド自動再送要求(Hybrid Automatic Repeat Request;略称:HARQ)に対する確認応答(Acknowledgement;略称:ACK)または否定応答(Negative Acknowledgement;略称;NACK)が含められる。
【0090】
サウンディングゾーン102dには、基地局装置1のウェイト算出部15がアレイアンテナ13に適用するウェイトを算出するときに使用する既知のサウンディング信号が含められる。サウンディングゾーン102dには、すべてのサブチャネル、つまりすべてのサブキャリアが割り当てられている。サウンディングゾーン102dに割り当てられている複数のサブチャネルは、サウンディングゾーン102dが属する上りサブフレーム102において基地局装置1と通信を行う複数の通信端末装置2に対して重複しないように割り振られている。
【0091】
上りサブフレーム102において基地局装置1と通信を行う各通信端末装置2は、サウンディング信号を、割り当てられているサブチャネルを使用して基地局装置1に送信する。上りサブフレーム102において基地局装置1と通信を行う通信端末装置2が1つの場合には、1つの通信端末装置2にすべてのサブチャネルが割り当てられ、1つの通信端末装置2は、すべてのサブチャネルを使用してサウンディング信号を送信する。
【0092】
通信端末装置1に対する、サウンディング信号用のサブキャリアの割り当ては、UL−MAP領域101d中のUL−MAPメッセージで行われている。UL−MAPメッセージでは、それが属する下りサブフレーム101に続く上りサブフレーム102において基地局装置1と通信する各通信端末装置2がサウンディング信号を送信するときにどのサブチャネルを使用するかが記述されている。UL−MAPメッセージが送られる下りサブフレーム101の後に続く上りサブフレーム102において基地局装置1と通信を行う各通信端末装置2は、UL−MAPメッセージにおいて自装置用として指定されているサブチャネルを使用してサウンディング信号を基地局装置1に送信する。具体的には、通信端末装置2は、指定された複数のサブキャリアをサウンディング信号で変調し、変調後の複数のサブキャリアを重畳して得られる信号を基地局装置1に送信する。
【0093】
図4は、測定対象の通信端末装置2に対する通信品質報告指示の種類とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。図4では、通信品質を測定するべき測定対象の通信端末装置2に対して、nフレームでビームフォーミング(以下「BF」と略称する場合がある)されたデータが送信された後、BFされたデータが送信されていない期間T1を経て、再びn+aフレームからBFされたデータが送信される場合を示す。図4において、横軸は、OFDMフレーム番号で与えられる時間軸を示す。また参照符号T1は、データが送信されていない期間(以下「データ非送信期間」という場合がある)を示し、参照符号T2は、データが送信されている期間(以下「データ送信期間」という場合がある)を示す。
【0094】
図5は、通信端末装置2に対する変調方式および符号化率、ならびに優先度の決定処理の手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートにおける各処理は、基地局装置1のデータ処理部14、通信対象決定部16および報告指示部18によって実行される。図5に示すフローチャートの処理は、測定対象の通信端末装置2が生じると開始され、ステップa1に移行する。通信端末装置2は、たとえば、基地局装置1の通信可能な範囲内に入ると、測定対象の通信端末装置2となる。また通信端末装置2は、通信品質を測定してから、予め定める時間が経過すると、再び測定対象の通信端末装置2となる。
【0095】
ステップa1では、報告指示部18は、測定対象の通信端末装置2にデータを送信中であるか否かを判断し、送信中であると判断するとステップa2に移行し、送信中でないと判断するとステップa3に移行する。たとえば、前述の図4に示すデータ送信期間T2の間は、データが送信中であると判断されてステップa2に移行し、データ非送信期間T1の間は、データが送信中でないと判断されて、ステップa3に移行する。
【0096】
ステップa2では、報告指示部18は、測定対象の通信端末装置2に、CQICH方式によるレポーティングを指示する。具体的には、報告指示部18は、図3に示すUL−MAP領域101dに含まれるUL−MAPメッセージに、測定対象の通信端末装置2のIDなどを示す情報を含めたCQICH−ALLOC−IEを格納して送信する。このようにしてCQICH方式によるレポーティングを指示すると、ステップa4に移行する。
【0097】
ステップa3では、報告指示部18は、測定対象の通信端末装置2に、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングを指示する。具体的には、報告指示部18は、図3に示す下りバースト領域101eに、測定対象の通信端末装置2を指定してREP−REQメッセージを含めて送信する。図4に示す例では、たとえばn+1フレームの下りフレームにREP−REQメッセージが含められて送信される。このようにしてREP−REQ/RSP方式によるレポーティングを指示すると、ステップa4に移行する。
【0098】
図4では、説明の便宜上、基地局装置1がREP−REQメッセージを送信したフレームの次のフレームで、通信端末装置2がREP−RSPメッセージを送信しているが、通信端末装置2の処理能力および上り通信の送信リソースの割り当て方法によって、REP−RSPメッセージの送信タイミングは異なる。基地局装置1が送信したREP−REQメッセージを通信端末装置2が処理してREP−RSPメッセージを生成して応答するまでに、数フレームを要する場合もある。したがって、REP−RSPメッセージの送信タイミングは、通信端末装置2の処理能力および上り通信の送信リソースの割り当て方法などを考慮して設定すればよい。
【0099】
図5に戻って、ステップa4では、データ処理部14は、測定対象の通信端末装置2から通信品質が報告されたか否かを判断する。データ処理部14は、再生したデータの中に測定対象の通信端末装置2から送信されたCINRが含まれているか否かに基づいて、通信品質が報告されたか否かを判断する。データ処理部14は、再生したデータの中に測定対象の通信端末装置2からのCINRが含まれていると判断すると、通信品質が報告されたと判断してステップa5に移行する。データ処理部14は、再生したデータの中に測定対象の通信端末装置2からのCINRが含まれていないと判断すると、通信品質が報告されていないと判断して、再生したデータの中に測定対象の通信端末装置2からのCINRが含まれるようになるまで、すなわちCINRを取得するまで、ステップa4で待機する。
【0100】
ステップa5では、データ処理部14は、測定対象の通信端末装置2から報告された通信品質、具体的には、再生したCINRに基づいて、測定対象の通信端末装置2にデータを送信するときの変調方式および符号化率を決定する。またデータ処理部14は、再生したCINR、および現時点における過去の送信データ量を通信対象決定部16に与える。ステップa5で決定された変調方式および符号化率は、データ処理部14の不図示のメモリに記憶される。このようにして変調方式および符号化率を決定すると、ステップa6に移行する。
【0101】
ステップa6では、通信対象決定部16は、測定対象の通信端末装置2から報告された通信品質、具体的には、データ処理部14から与えられたCINRに基づいて、測定対象の通信端末装置2の優先度を決定する。より詳細には、通信対象決定部16は、データ処理部14から与えられたCINRを用いて前述の品質評価値を算出し、算出した品質評価値と、データ処理部14から与えられた過去の送信データ量とに基づいて、優先度を決定する。決定した優先度は、通信対象決定部16の記憶部16aに記憶される。測定対象の通信端末装置2の優先度が既に記憶部16aに記憶されていた場合は、ステップa6で決定した優先度に更新する。このようにしてステップa6で優先度を決定すると、全ての処理手順を終了する。
【0102】
図6は、通信端末装置2における通信品質報告処理の手順を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートにおける各処理は、通信端末装置2の不図示の制御部によって実行される。図6に示すフローチャートの処理は、基地局装置1から何らかの指示を受信すると開始され、ステップb1に移行する。
【0103】
ステップb1では、通信端末装置2は、基地局装置1からCQICH方式によるレポーティングの指示、すなわち定期報告指示を受信したか否かを判断し、受信したと判断するとステップb2に移行し、受信していないと判断するとステップb6に移行する。具体的には、通信端末装置2は、図3に示すUL−MAP領域に含まれるUL−MAPメッセージに、自装置のIDを含むCQICH−ALLOC−IEが格納されていれば、定期報告指示を受信したと判断してステップb2に移行し、自装置のIDを含むCQICH−ALLOC−IEが格納されていなければ、定期報告指示を受信していないと判断して、ステップb6に移行する。
【0104】
ステップb2では、通信端末装置2は、下りバースト領域で受信したデータに基づいて、通信品質を求める。具体的には、受信したデータのCINRを求める。このようにCINRを求めることによって通信品質を測定すると、ステップb3に移行する。
【0105】
ステップb3では、通信端末装置2は、CQICHによって通信品質を基地局装置1に報告する。より詳細には、通信端末装置2は、基地局装置1から受信したCQICH−ALLOC−IEに基づいて、図3に示す上りフレーム102内のCQICH領域102bの割り当てられた領域に、ステップb2で求めた通信品質、具体的にはチャンネル品質情報(CQI)であるCINRを格納して、基地局装置1に送信する。前述の図4に示すデータ送信期間T2の間は、基地局装置1からCQICH方式によるレポーティングの指示が送信されるので、たとえばn+(a+1)フレームにおいて、上りフレーム102内のCQICH領域102bの割り当てられた領域に、CQIが格納されて送信される。このようにして通信品質を報告するとステップb4に移行する。
【0106】
ステップb4では、通信端末装置2は、ステップb3で通信品質を報告した時点から予め定める時間(以下「規定報告時間」という場合がある)が経過したか否かを判断し、経過したと判断するとステップb5に移行する。規定報告時間が経過したと判断されるまでは、ステップb4で待機する。規定報告時間としては、たとえばフレーム8個分に相当する時間が設定される。また図4に示す例では、フレーム2個分に相当する時間が、規定報告時間として設定されている。
【0107】
ステップb5では、通信端末装置2は、基地局装置1からデータを受信したか否かを判断する。通信端末装置2は、データを受信したと判断するとステップb2に戻って前述の処理を繰返す。これによって通信端末装置2は、予め定める時間毎に、通信品質を基地局装置1に報告する。たとえば、前記予め定める時間として、フレーム8個分に相当する時間が設定される場合、通信端末装置2は、8フレームに1回の時間間隔で、通信品質を求めて基地局装置1に報告する。前述の図4に示す例では、2フレームに1回の時間間隔で、通信品質が求められて基地局装置1に報告されている。
【0108】
ステップb5において、通信端末装置2は、データを受信していないと判断すると、全ての処理手順を終了する。ステップb5でデータを受信していないと判断されるのは、たとえばステップb4で規定報告時間が経過する間に、図4に示すデータ送信期間T2が終了して、新たなデータ非送信期間に移行した場合である。この場合、新たに前述の図5に示すステップa1に移行したときに、データが送信中でないと判断されるので、ステップa3に移行して、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングに切換えられる。
【0109】
図6において、ステップb1からステップb6に移行した場合は、ステップb6において、通信端末装置2は、基地局装置1からREP−REQ/RSP方式によるレポーティングの指示、すなわち応答報告指示を受信したか否かを判断し、受信したと判断するとステップb7に移行し、受信していないと判断すると、全ての処理手順を終了する。具体的には、通信端末装置2は、図3に示す下りバースト領域101eに、自装置が指定されたREP−REQメッセージが格納されていれば、応答報告指示を受信したと判断してステップb7に移行し、自装置が指定されたREP−REQメッセージが格納されていなければ、応答報告指示を受信していないと判断して、全ての処理手順を終了する。
【0110】
ステップb6で受信していないと判断されて、全ての処理手順を終了するのは、たとえば基地局装置1から定期報告指示および応答報告指示以外の指示を受信したときである。この場合、図5に示す全ての処理手順を終了した後に、受信した指示に対応する別の処理が開始される。
【0111】
ステップb7では、通信端末装置2は、受信したREP−REQメッセージを含む指示データに基づいて、通信品質を求める。具体的には、REP−REQメッセージを含む指示データが含まれる下りバースト領域のデータから通信品質を求める。本実施の形態では、WiMAX規格であるので、指示データが含まれる下りバースト領域のパイロット信号を使用して通信品質、具体的にはCINRを求める。このようにCINRを求めることによって通信品質を測定すると、ステップb8に移行する。
【0112】
ステップb8では、通信端末装置2は、REP−RSPメッセージによって通信品質を基地局装置1に報告する。より詳細には、通信端末装置2は、基地局装置1から受信したREP−REQメッセージを含む指示データに基づいて、ステップb7で求めた通信品質、具体的にはCINRを、図3に示す上りフレーム内のバースト領域102eの割り当てられた領域に格納して、基地局装置1に送信する。
【0113】
前述の図4に示すデータ非送信期間T1の間は、基地局装置1からREP−REQ/RSP方式によるレポーティングの指示が送信される。たとえば、n+1フレームにおいて、下りフレーム101内の下りバースト領域101eの割り当てられた領域に、REP−REQメッセージが格納されて送信され、次のn+2フレームにおいて、上りフレーム102内の上りバースト領域102eの割り当てられた領域に、REP−RSPメッセージが格納されて送信される。図4では、REP−REQメッセージが格納される領域を白抜きの四角で示し、REP−RSPメッセージが格納される領域を斜線で示している。以上のようにして通信品質を報告すると、全ての処理手順を終了する。
【0114】
以上のように本実施の形態によれば、報告指示部18は、図5に示すように、各通信端末装置2に通信品質報告指示を与えるときに、ステップa1において、その通信端末装置2に無線送信部12からBFされたデータが送信中であるか否かを判断する。そして報告指示部18は、BFされたデータが送信中であると判断すると、ステップa2において、その通信端末装置2に、定期報告指示として、CQICH方式によるレポーティング指示を与える。これによって通信端末装置2は、図6に示すように、ステップb2〜b5において、予め定める時間毎に、無線送信部12から送信されたBFされたデータに基づいて通信品質を求め、基地局装置1に報告する。
【0115】
また報告指示部18は、図5に示すステップa1において、BFされたデータが送信中でないと判断すると、ステップa3において、応答報告指示を表す報告指示メッセージとして、REP−REQメッセージをBFして通信端末装置2に送信させる。これによって、通信端末装置2は、図6に示すように、ステップb7において、BFされたREP−REQメッセージに基づいて通信品質を求め、ステップb8において、REP−RSPメッセージによって通信品質を基地局装置1に報告する。
【0116】
このように、スマートアンテナおよびプロポーショナルフェアネスを採用しているWiMAX基地局である本実施の形態の基地局装置1では、ある通信端末装置2に対して、下り送信データがあるフレームでは、スマートアンテナ技術を適用した送信データについて、通信端末装置2に通信品質を測定させ、CQICHでレポートさせる。そして、その通信品質に基づいて適応変調を行い、プロポーショナルフェアネスによるスケジューリングを実行する。
【0117】
他方、送信データが無い場合には、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングに切り替えて、REP−REQメッセージの送信時にスマートアンテナ技術を適用して、その通信品質を通信端末装置2に測定させ、適応変調を行い、プロポーショナルフェアネスによるスケジューリングを実行する。
【0118】
したがって、図4に示すデータ送信期間T2のように、無線送信部12からBFされたデータが送信中である場合、および図4に示すデータ非送信期間T1のように、無線送信部12からBFされたデータが送信中でない場合のいずれの場合でも、BFを反映した通信品質を通信端末装置2に求めさせて、報告させることができる。
【0119】
図7は、BFされたデータが連続して送信される場合の通信品質報告とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。図8は、BFされたデータの送信間隔が長い場合の通信品質報告とデータの送信状況との関係を模式的に示す図である。図7および図8において、横軸は、OFDMフレーム番号で与えられる時間軸を示す。また下向きの矢印は、BFされたデータが基地局装置1から通信端末装置2に送信されていることを表し、上向きの矢印は、CQIが通信端末装置2から基地局装置1に送信されていることを表す。
【0120】
本実施の形態のように、下りのデータ送信にBFを用いる場合、BFによって通信品質がどの程度変化するかは、BFを適用した後でなければ把握することができない。たとえば図7に示すようにBFされたデータの送信が連続している場合には、直前のデータ送信のときの通信品質に基づいて、次のフレームで適用する変調方式および符号化率を選択することが可能である。
【0121】
しかし、本実施の形態のようにプロポーショナルフェアネスを適用する場合には、図8に示すようにデータの送信間隔が一定時間以上空いてしまう。たとえば、nフレームでBFされたデータが送信された後、n+2000フレームで、次のBFされたデータが送信される場合がある。この場合、n+2フレームでCQIとして通信品質を基地局装置1に報告していたとしても、n+2000フレームでデータが送信されるときには、通信品質が変化してしまっている可能性が高いので、報告された通信品質を用いることは適切でない。したがって、低い変調方式からデータ送信を開始し、通信品質に応じて変調方式のシフトアップを試行する必要がある。これによって、最初の送信では、本来適用可能な変調方式よりも低い変調方式が適用されるおそれがあり、送信効率が低下するという問題が生じる。
【0122】
これに対し、本実施の形態では、BFされたデータが送信されない期間が続くと、CQICH方式によるレポーティングから、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングに切り換えて、BFされたREP−REQメッセージを送信して、BFが反映された通信品質を求めさせて、報告させる。したがって本実施の形態では、前述のようにBFされたデータが送信中である場合および送信中でない場合のいずれの場合でも、BFを反映した通信品質を通信端末装置2に求めさせて、報告させることができる。
【0123】
通信対象決定部16は、このBFを反映した通信品質に基づいて通信対象の通信端末装置2を決定するので、BFによる通信品質の向上効果を、通信対象の通信端末装置2の決定に精度良く反映させることができる。具体的には、通信品質がBFを反映していない場合に比べて、優先度をより正確に求めることができるので、より適切な通信端末装置2を、通信対象の通信端末装置2として決定することができる。したがって、通信端末装置2間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することが可能である。
【0124】
以上に述べた本実施の形態では、図5に示すように、測定対象の通信端末装置2にデータが送信中でない場合には、測定対象の通信端末装置2にユニキャスト送信されるREP−REQメッセージを用いたREP−REQ/RSP方式で通信品質を報告させている。このようにして通信品質を報告させた後は、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングを継続してもよいが、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングを止めて、全ての通信端末装置2にブロードキャスト送信される全ての通信端末装置2に共通する共通送信条件で送信される共通情報に基づいて、通信品質を求めさせて報告させるようにしてもよい。共通送信条件で送信するとは、BFせずに各通信端末装置2に同じ送信条件で送信することを意味する。共通情報としては、たとえばブロードキャスト送信されるプリアンブルを用いることができる。
【0125】
図9は、プリアンブルを用いて通信品質を求める場合のCINRの一例を示す図である。図9において、横軸は時間を示し、縦軸はCINRの値を示す。図9では、時刻t5およびt11では、REP−REQメッセージに基づいてCINRを求め、その他の時刻では、プリアンブルに基づいてCINRを求める場合を示す。図9において、符号Aで示されるラインは、BFされたREP−REQメッセージに基づいて求めたCINRの平均値を示す。符号Bで示されるラインは、プリアンブルに基づいて求めたCINRの平均値を示す。
【0126】
図9に示すように、REP−REQ/RSP方式によるレポーティングの結果が安定して、REP−REQメッセージに基づいて求められるCINRの値が一定になっている場合には、BF効果も安定していると推測される。したがって、この場合には、ブロードキャスト送信される共通情報、たとえばプリアンブルから通信品質を求めて、CQICHで報告する方式に切り換えることが可能である。この場合、BFされたデータであるREP−REQメッセージから求めたCINRと、ブロードキャストデータである共通情報、たとえばプリアンブルから求めたCINRとの差分をBFの効果分と考えて、プロポーショナルフェアネスに反映すればよい。
【0127】
具体的には、通信対象決定部16において、BFされたデータであるREP−REQメッセージから求めたCINRと、ブロードキャストデータであるプリアンブルから求めたCINRとに基づいて、優先度を決定し、その優先度に従って通信対象の通信端末装置2を決定すればよい。より詳細には、REP−REQメッセージから求めたCINRの平均値と、プリアンブルから求めたCINRの平均値との差分値Dを、通信端末装置2から与えられるプリアンブルから求めたCINRの値に加算して、優先度を求めるように構成すればよい。
【0128】
これによって、ユニキャストデータであるREP−REQメッセージを送信させることなく、BFを反映した通信品質を通信対象決定部16に見積らせて、それに基づいて通信対象の通信端末装置2を決定することができる。したがって、簡単な処理で、適切な通信端末装置2を、通信対象の通信端末装置2として決定することができる。
【0129】
また本実施の形態では、測定対象の通信端末装置2は、通信品質を測定してから、予め定める時間が経過すると、再び測定対象の通信端末装置2となって、図5に示すフローチャートの処理が開始されるように構成されている。この予め定める時間(以下「測定間隔」という)は、複数の通信端末装置2で同じ値にしてもよいが、通信端末装置2の優先度に応じて、変更してもよい。つまり、基地局装置1が無線送信部12に送信指示を与える頻度および通信端末装置2に応答報告指示を与える頻度は、その通信端末装置2の優先度に応じて変更してもよい。
【0130】
たとえば測定対象の通信端末装置2の優先度が、予め定める基準優先度未満である場合には、通信対象決定部16で通信対象の通信端末装置2に決定される頻度が低いので、測定間隔を長くして、無線送信部12に送信指示を与える頻度および通信端末装置2に応答報告指示を与える頻度を比較的低く設定してもよい。たとえば、測定間隔をフレーム64個分にして、64フレームに1回、通信品質を報告させるようにしてもよい。これによって、無線リソースの無駄な割り当てを抑えることができる。
【0131】
また優先度が低い状態から、基準優先度以上になった場合には、無線送信部12に送信指示を与える頻度および通信端末装置2に応答報告指示を与える頻度を高く設定することで、通信品質の精度を高めることができる。これによって、より適切な通信端末装置2を通信対象の通信端末装置2に決定することができる。したがって、無線利用効率を高めることができる。
【0132】
また本実施の形態では、無線送信部12は、無線通信の指向性を制御するビームフォーミングによって、データを送信するように構成されるが、これに限定されず、他のスマートアンテナ技術によってデータを送信するように構成されてもよい。たとえば、無線送信部12は、複数のアンテナを用いた多入力多出力(Multi Input Multi Output;略称:MIMO)による通信(以下「MIMO通信」という場合がある)によって、データを送信可能に構成されてもよい。
【0133】
MIMO通信でデータを送信することによって、通信品質を向上させることができる。本実施の形態では、前述のように無線送信部12からデータが送信中でない場合でも、個別送信条件を反映した通信品質を報告させることができるので、適切なタイミングでMIMO通信を適用することができ、またMIMO通信による通信品質の向上効果を、通信対象の通信端末装置の決定に精度良く反映させることができる。したがって、適切な通信端末装置2を、通信対象の通信端末装置2として決定することができるので、通信端末装置2間の公平性を保つとともに、高い無線利用効率を実現することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 基地局装置
2 通信端末装置
3 無線通信システム
10 無線通信部
11 無線受信部
12 無線送信部
13 アレイアンテナ
14 データ処理部
15 ウェイト算出部
16 通信対象決定部
17 無線リソース割り当て部
18 報告指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置であって、
各前記通信端末装置に、前記通信端末装置毎に設定された個別送信条件で、送信するべき送信データをユニキャスト送信で送信する送信部と、
各前記通信端末装置に、前記送信部との間の通信品質を報告する指示を表す通信品質報告指示を与える報告指示部と、
前記通信品質報告指示に応答して前記通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、前記複数の通信端末装置の中から、前記送信部が前記送信データを送信する通信対象の通信端末装置を決定する通信対象決定部とを備え、
前記報告指示部は、
前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中であると判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記送信データに基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示を表す定期報告指示をブロードキャスト送信で与え、
前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、その通信端末装置に前記通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを前記個別送信条件にてユニキャスト送信で送信する指示を表す送信指示を前記送信部に与えるとともに、前記報告指示メッセージによって、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記指示データに基づいて前記通信品質を求めて報告する指示を表す応答報告指示を与えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記複数の通信端末装置に共通する共通送信条件で、前記複数の通信端末装置に共通する共通情報をブロードキャスト送信で送信し、
前記報告指示部は、前記通信端末装置に前記応答報告指示を与えた後、前記応答報告指示が与えられた通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記共通情報に基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示をブロードキャスト送信で与え、
前記通信対象決定部は、前記指示データに基づいて求められて報告される前記通信品質と、前記共通情報に基づいて求められて報告される前記通信品質とに基づいて、前記通信対象の通信端末装置を決定することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記通信対象決定部は、前記複数の通信端末装置のうちのいずれの通信端末装置に優先して前記送信データを送信するかの優先度合いを示す優先度を求め、前記優先度の高い順に前記通信端末装置を前記通信対象の通信端末装置として決定し、
前記優先度は、報告された前記通信品質の値、または前記通信品質が報告される前の平均通信品質に対する、報告された前記通信品質の比が大きいほど高く、かつ、前記通信品質報告指示に応答して前記通信品質が報告される前までに前記優先度を求めるべき通信端末装置に送信されたデータ量が小さいほど高く設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記報告指示部は、前記通信対象決定部によって前記優先度が求められた後に前記通信品質報告指示を与えるときに、前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、前記優先度に応じて、前記送信部に前記送信指示を与える頻度を変更することによって、前記通信端末装置に前記応答報告指示を与える頻度を変更することを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記無線通信の指向性を制御するビームフォーミングによって、前記送信データを送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項6】
前記送信部は、複数のアンテナを用いた多入力多出力通信によって、前記送信データを送信可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項7】
前記基地局装置は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式で定義された複数のサブキャリアを用いて、前記複数の通信端末装置と多元接続通信を行う、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)における基地局装置であって、
前記送信データおよび前記指示データは、時間−サブチャネル平面上で定義される下りサブフレーム内に割り当てられる下りバースト領域を用いて送信され、
前記送信データに基づいて求められる前記通信品質および前記指示データに基づいて求められる前記通信品質は、時間−サブチャネル平面上で定義される上りサブフレーム内に割り当てられる上りバースト領域を用いて報告されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の基地局装置。
【請求項8】
複数の通信端末装置と無線通信可能な基地局装置における通信対象端末決定方法であって、
各前記通信端末装置に、前記通信端末装置毎に設定された個別送信条件で、送信するべき送信データを送信部からユニキャスト送信で送信する送信工程と、
各前記通信端末装置に、前記送信部との間の通信品質を報告する指示を表す通信品質報告指示を与える報告指示工程と、
前記通信品質報告指示に応答して前記通信端末装置から報告される通信品質に基づいて、前記複数の通信端末装置の中から、前記送信部が前記送信データを送信する通信対象の通信端末装置を決定する通信対象決定工程とを備え、
前記報告指示工程では、
前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中であると判断すると、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記送信データに基づいて、予め定める時間毎に前記通信品質を求めて報告する指示を表す定期報告指示をブロードキャスト送信で与え、
前記通信端末装置に前記通信品質報告指示を与えるときに、その通信端末装置に前記送信部が前記送信データを送信中でないと判断すると、その通信端末装置に前記通信品質報告指示を表す報告指示メッセージを含む指示データを前記個別送信条件にてユニキャスト送信で送信する指示を表す送信指示を前記送信部に与えるとともに、前記報告指示メッセージによって、前記通信品質報告指示として、前記送信部から送信された前記指示データに基づいて前記通信品質を求めて報告する指示を表す応答報告指示を与えることを特徴とする通信対象端末決定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−109379(P2011−109379A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261820(P2009−261820)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】