説明

基材の表面改質方法及び基材の表面改質装置

【課題】 レーザーアブレーションを利用した改質方法であるにも拘らず、改質処理されるべき基材を回転させたり平行移動させることなく固定配置した状態で、その表面を均一に改質させることが可能な基材の表面改質装置を提供すること。
【解決手段】 レーザー光3を発生するレーザー光発生装置2と、
表面に照射されたレーザー光3により飛散粒子を発生させるターゲット6と、
飛散粒子の付着により表面が改質される基材7と、
ターゲット6の表面上のレーザー光照射位置Pを支点にして、レーザー光3の入射方向Lとターゲット6の表面の垂線方向Lとの間の角度θを変化させるようにターゲット6を揺動させるターゲット揺動手段10と、
を備えることを特徴とする基材の表面改質装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面改質方法及び基材の表面改質装置に関し、より詳しくは、ターゲットの表面にレーザー光を照射して発生させた飛散粒子を基材の表面に付着させて改質する方法、並びにそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂や金属等からなる基材の表面にX線や紫外線、更には真空紫外線を照射することにより基材表面を活性化させる様々な技術が開発されている。中でも、基材表面を活性化させた直後に飛散粒子を付着せしめて改質することが可能な方法として、特開2004−2962号公報(特許文献1)には、ターゲットの表面にレーザー光を照射して飛散粒子と共に真空紫外光を発生させ、その真空紫外光を照射しつつ飛散粒子を基材の表面に付着させて改質する、いわゆるレーザーアブレーションを利用した改質方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、このような従来のレーザーアブレーションを利用した改質方法においては、改質処理されるべき基材を単に固定配置した状態とするとその改質の程度が不均一となるため、基材を回転させたり平行移動させながらその表面を改質させる必要があった。そのため、従来のレーザーアブレーションを利用した改質方法にあっては、改質処理することが可能な基材がこのように回転や平行移動をさせることができるものに実質的に限られてしまい、このことが基材の大型化を阻害する大きな要因となっていた。
【特許文献1】特開2004−2962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、レーザーアブレーションを利用した改質方法であるにも拘らず、改質処理されるべき基材を回転させたり平行移動させることなく固定配置した状態で、その表面を均一に改質させることが可能な基材の表面改質方法、並びに、その方法を実施するための基材の表面改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ターゲットの表面上のレーザー光照射位置を支点にして、レーザー光の入射方向とターゲット表面の垂線方向との間の角度を変化させるようにターゲットを揺動させながら基材に対して改質処理を施すことにより上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の基材の表面改質方法は、ターゲットの表面にレーザー光を照射して飛散粒子を発生させ、基材の表面に前記飛散粒子を付着させて前記基材の表面を改質する方法であって、前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置を支点にして、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の角度を変化させるように前記ターゲットを揺動させることを特徴とする方法である。
【0007】
また、本発明の基材の表面改質装置は、
レーザー光を発生するレーザー光発生装置と、
表面に照射された前記レーザー光により飛散粒子を発生させるターゲットと、
前記飛散粒子の付着により表面が改質される基材と、
前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置を支点にして、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の角度を変化させるように前記ターゲットを揺動させるターゲット揺動手段と、
を備えることを特徴とする装置である。
【0008】
このような本発明の基材の表面改質方法及び装置においては、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度を25°〜65°とし、前記初期角度の±10°〜±30°となるように前記ターゲットを揺動させることが好ましい。また、前記基材の改質される表面の中心と前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置とを結ぶ線と、前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度が0°〜60°となるように前記基材を配置することが好ましい。
【0009】
なお、上記本発明の基材の表面改質方法及び装置において、改質処理されるべき基材を回転させたり平行移動させることなく固定配置した状態で、その表面を均一に改質させることが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、ターゲットにレーザー光が照射されると、ターゲット表面に高温のプラズマが形成され、レーザー光が照射されたターゲットからはターゲットを構成する材料の中性原子、イオン、並びに前記の中性原子及びイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって飛散する。そして、このような飛散粒子の多くは、ターゲット表面の垂直方向に飛ぶこととなる。これは、レーザー光が照射されたターゲット表面でレーザー光のエネルギーを吸収した材料が急速に加熱されてプラズマ化された飛散粒子は本来は四方八方に飛散しようとするが、ターゲット表面には固体が存在するため、その反作用でターゲット表面の垂直方向に反発力を受けるためである。さらに、このような飛散粒子はターゲット表面に対して平行な速度成分も持つため、飛散粒子間で衝突がない場合にはターゲット表面の垂直方向に対してCOSθの分布を持つことになる。しかし、実際には飛散粒子間で衝突が起こり、それによりターゲット表面に対して垂直方向の速度成分はその殆どが保存されるのに対し、水平方向の速度成分は小さくなるため、実際の飛散粒子の角度依存性はCOSθの整数倍の分布を重ね合わせた分布を持つことになる。そのため、従来は、基材が固定配置されているとその表面に到達して付着する飛散粒子の量が不均一となり、均一な改質処理が達成されなかった。それに対して、本発明においては、ターゲット表面の角度をレーザー光照射位置を支点にして変化(揺動)させるため、上記分布における角度θが変化することになって基板表面上における各位置での角度依存性がなくなり、しかもその際にターゲット表面に対するレーザー光照射強度はほぼ一定に維持される。そのため、本発明においては、基材を固定配置した状態であっても、基材表面に飛散粒子が均一に到達して付着することとなり、それによって均一な改質処理が達成されるようになるものと本発明者らは推察する。
【0010】
さらに、本発明の基材の表面改質方法及び装置においては、前記レーザー光がパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光であることが好ましく、その場合、ターゲットに前記パルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び前記飛散粒子を発生させ、基材の表面に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を付着させて改質せしめることが可能となる。そして、特に基材が炭素原子を含有するものである場合、このような真空紫外光は炭素原子含有材料(炭素原子)に対する吸収率が高いので、炭素原子含有基材に真空紫外光が照射されると、基材表面では炭素原子の外殻電子であるp電子が励起もしくは電離することにより炭素原子とその炭素原子に結合する原子との間の結合が破壊され、炭素原子含有基材の表面が活性化されて活性末端が形成されるようになる。このように炭素原子を含有する基材に対して真空紫外光が照射されると基材の表面がより活性化される傾向にあり、活性化された基材上に到達した飛散粒子は基材表面により強固に結合することとなる。
【0011】
なお、ここでいう波長50nm〜100nmの真空紫外光とは、50nm〜100nmの波長領域における少なくとも一部の波長を有する真空紫外光のことをいうが、以下の条件のうちの少なくとも一つの条件を満たしていることが好ましい。
(i)50nm〜100nmの波長領域に少なくとも一つの光強度のピークを有すること、
(ii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが100nm〜150nmの波長領域の光の全エネルギーより高いこと、
(iii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが50nm以下の波長領域の光の全エネルギーより高いこと
(iv)50nm〜100nmの波長領域の光のエネルギー密度が基材上で0.1μJ/cm〜10mJ/cm(より好ましくは1μJ/cm〜100μJ/cm)であること。なお、基材上における前記エネルギー密度が0.1μJ/cmより低くなると処理に要する時間が過度に長くなってしまう傾向にあり、他方、10mJ/cmより高くなると基材が分解されてしまう傾向にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基材の表面改質方法及び装置によれば、レーザーアブレーションを利用した改質方法であるにも拘らず、改質処理されるべき基材を回転させたり平行移動させることなく固定配置した状態で、その表面を均一に改質させることが可能となる。そのため、本発明の基材の表面改質方法及び装置を使用することにより、従来のように基材を回転させたり平行移動させる必要はなくなるため、従来は処理が困難であった大型の基材に対しても効率良くかつ確実に改質処理を施すことが可能となり、さらに基材を回転させたり平行移動させる手段が不要となるため表面改質装置の小型化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の基材の表面改質装置並びに本発明の基材の表面改質方法について、それらの好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の基材の表面改質装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図であり、図1に示す基材の表面改質装置はいわゆるレーザーアブレーション装置1として構成されている。すなわち、図1に示すレーザーアブレーション装置1は、レーザー光源2と、レーザー光源2から発せられたレーザー光3が光学系4により集光されて導入される処理容器5とを備えており、処理容器5の内部にはレーザー光3が照射されるターゲット6と、改質処理される対象の基材7とが配置されている。
【0015】
レーザー光源2は、レーザー光(好ましくは波長が150nm〜11μm、パルス幅が1ps〜1μs、1パルスあたりのエネルギーが0.01J〜100Jであるパルスレーザー光)を照射することができるレーザー光発生装置であればよく、特に制限されないが、例えばヘムト秒レーザー装置、エキシマレーザー装置、YAGレーザー装置によって構成され、中でもパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒であるパルスレーザー光を照射することができるYAGレーザー装置によって構成されることが好ましい。そして、レーザー光源2は、処理容器5の内部に配置されているターゲット6に向かってレーザー光3を照射する位置に配置されている。また、レーザー光3をターゲット6に照射した際にターゲット6の表面から飛散粒子(図示せず)が効率的に発生するように、レーザー光3の光路の途中に光学系(例えば集光レンズ、鏡等)4が配置されている。このような光学系4によりレーザー光3のエネルギー密度や照射角度が調整され、ターゲット4に照射されるレーザー光3の照射強度が10W/cm〜1012W/cmとなるようにすることが好ましく、10W/cm〜1011W/cmとなるようにすることがより好ましい。
【0016】
処理容器5は、少なくともターゲット6と基材7とを内部に収容するための容器(例えばステンレス製の容器)であり、レーザー光3を処理容器5内に配置されたターゲット6の表面に導入するための窓8(例えば石英製の窓)を備えている。また、処理容器5には真空ポンプ(図示せず)が接続されており、処理容器5の内部を所定圧力の減圧状態に維持することが可能となっている。このように内部が減圧状態となる処理容器5を用いると、レーザー光3の照射により真空紫外光(図示せず)が発生した場合にその真空紫外光が空気中の酸素等の紫外光吸収物質に吸収されることなく基材7の表面に照射されるため基材7の表面がより効率良く活性化される傾向にある。なお、処理容器5の内部を減圧状態に維持する際の圧力としては、1Torr以下の圧力が好ましく、1×10−3Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
【0017】
ターゲット6は、前述のレーザー光3の照射により飛散粒子を発生し、その飛散粒子を基材7上に担持せしめて基材7の表面を改質させるための成分からなるものである。このようなターゲット6を構成する成分としては、特に制限されず、金属、金属化合物、炭素、樹脂等の各種材料が挙げられ、具体的には表面改質された基材(製品)の用途や基材を構成する成分の種類等によって適宜決定される。
【0018】
このような金属材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属、半金属(メタロイド)、又はそれらの合金を用いることができ、例えば、Cu、Al、Ti、Si、Cr、Pt、Au、Ag、Pd、Zr、Mg、Ni、Fe、Co、Zn、Sn、W、Be、Ge、Mn、Mo、Nb、Ta、Hf、それらを主成分とする合金等が挙げられる。なお、ここでいう金属材料は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、砒化ガリウム、InP、ZnTe等の半導体であってもよい。また、金属化合物材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属又は半金属の酸化物、窒化物、炭化物等を用いることができ、例えば、Al、AlN、Si、SiO、SiO、TiO、TiN、ZnO等が挙げられる。なお、ここでいう金属化合物材料は複数の金属元素を含有していてもよく、更に非金属元素を含んでいてもよい。また、炭素材料としては、各種の無定形炭素、グラファイト等が挙げられ、中でもグラファイトが好ましい。また、樹脂材料としては、オレフィン系樹脂{ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリメチルペンテン等}、ブチルゴム、ポリエステル、ポリカーボーネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、アクリル樹脂{ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等}、アクリルゴム、フッ素樹脂{ポリ4フッ素化エチレン等}、フッ素ゴム、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン、シリコーン樹脂(ポリシロキサン等)、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、スチレン樹脂{ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−水添ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等}、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等の重合体(単独重合体又は共重合体)、並びにそれらの積層体が挙げられる。
【0019】
さらに、ターゲット6は、このような金属、金属化合物、炭素、樹脂等の各種材料の複合材料であってもよい。また、ターゲット6の形状等は特に制限されず、板状、ロッド状等に成形された前記ターゲット材料からなるバルク材や、前記ターゲット材料をテープ上に塗布、蒸着等によって形成したテープ状ターゲット等を用いることができる。
【0020】
また、ターゲット6にはターゲット駆動装置(例えばターゲット回転用モータ)9が接続され、レーザー光3の照射位置Pにターゲットの新鮮な面(レーザー光未照射面)が順次繰り出されるようになっている。
【0021】
そして、本発明においては、ターゲット6には更にターゲット揺動手段10が接続されており、ターゲット6の表面上のレーザー光照射位置Pを支点にして、レーザー光3の入射方向Lとターゲット6の表面の垂線方向Lとの間の角度θを変化させるようにターゲット6が揺動(図1中、揺動方向をSで示す)するように構成されている。
【0022】
その際、レーザー光3の入射方向Lに対するターゲット6の位置的関係は特に限定されないが、レーザー光3の入射方向Lとターゲット6の表面の垂線方向Lとの間の初期角度θを25°〜65°とすることが好ましい。初期角度θが前記下限未満では処理するための基材がレーザーの光路を塞いでターゲットにレーザー光を照射できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると揺動に伴うレーザー光の照射面積の変化が大きくなり、レーザー光の照射強度の変化によって基材に対する改質の均一性が阻害され易くなる傾向にある。
【0023】
また、ターゲット6をその表面上のレーザー光照射位置Pを支点にして揺動させる角度も特に制限されないが、ターゲット6の揺動角度(θ、θ)が±10°〜±30°(より好ましくは±10°〜±20°)となるように、すなわちレーザー光3の入射方向Lとターゲット6の表面の垂線方向(L、L)との間の角度が初期角度θの±10°〜±30°(より好ましくは±10°〜±20°)となるようにターゲット6を揺動させることが好ましい。ターゲット6の揺動角度(θ、θ)が前記下限未満では基材に対する改質の均一性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると揺動に伴うレーザー光の照射面積の変化が大きくなり、レーザー光の照射強度の変化によって基材に対する改質の均一性が阻害され易くなる傾向にある。
【0024】
なお、ターゲット6を揺動させる速度は特に制限されず、基材に対する改質処理に要する時間や用いるレーザー光の周期等との関係で適宜選択され、一般的には10〜600往復/分程度が好適に採用される。
【0025】
また、ターゲット6を揺動させるターゲット揺動手段10は、ターゲット6を上記のように揺動させることができるものであればよく、その具体的な構成は特に制限されない。図2に、ターゲット揺動手段10の一実施形態の基本構成を模式的に示す。
【0026】
すなわち、図2に示すターゲット揺動手段10は、
カム回転用モータ11に接続されたカムシャフト12と、
カムシャフト12に向けて付勢されており(付勢手段は図示せず)、その一端がカムシャフト12に当接した状態でカムシャフト12の回転に伴ってスライド可能なガイド部13と、
ガイド部13に接続されており、カムシャフト12の回転に伴って回転軸Aを中心に揺動可能(図2中、揺動方向をSで示す)な回転台14と、
を備えている。そして、回転台14の上に、ターゲット6の表面上のレーザー光照射位置Pが回転台14の回転軸Aと一致するようにターゲット6とその駆動装置9が載置されており、カムシャフト12の回転に伴ってターゲット6がレーザー光照射位置Pを支点にして揺動するように構成されている。
【0027】
基材7は、前記飛散粒子の付着によりその表面が改質されるものであり、このような基材7を構成する成分としては、特に制限されず、金属、金属化合物、炭素、樹脂等の各種材料が挙げられ、具体的には表面改質された基材(製品)の用途等によって適宜選択される。このような基材7を構成し得る金属、金属化合物、炭素、樹脂としては、前述のターゲット6を構成し得る金属、金属化合物、炭素、樹脂と同様のものが挙げられ、基材7はこのような金属、金属化合物、炭素、樹脂等の各種材料の複合材料であってもよい。また、基材7を構成する成分とターゲット6を構成する成分との組み合わせは、表面改質の目的や表面改質された基材(製品)の用途等によって適宜選択される。
【0028】
このような基材7の形状に関しても特に制限はなく、板状、ハニカム状、粉末状、ペレット状、モノリス状、繊維状等の形状を得られる基材の用途等に応じて選択することができる。また、基材7の大きさも特に制限はなく、表面改質された基材(製品)の用途等に応じて適宜決定されるが、本発明によれば従来は処理が困難であった大型の基材に対しても効率良くかつ確実に改質処理を施すことが可能となる。
【0029】
上述の基材7とターゲット6との位置的関係は特に限定されないが、基材7の改質される表面の中心Cとターゲット6の表面上のレーザー光照射位置Pとを結ぶ線Lと、ターゲット6の表面の垂線方向Lとの間の初期角度θが0°〜60°となるように基材7を配置することが好ましい。初期角度θが前記下限未満では処理するための基材がレーザーの光路を塞いでターゲットにレーザー光を照射できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると基材7の表面にターゲット6の表面から発生した飛散粒子が付着する効率が低下する傾向にある。
【0030】
以上、本発明の基材の表面改質装置の一実施形態について説明したが、本発明の基材の表面改質装置は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば上記実施形態では、レーザー光3の入射方向L並びに基材7の改質される表面の中心Cとターゲット6の表面上のレーザー光照射位置Pとを結ぶ線Lを含む面に対して平行にターゲット6を揺動させているが、ターゲット6を揺動させる方向は上記実施形態に限定されるものではなく、レーザー光照射位置Pを支点として上記面に対して垂直又は任意の角度となるように揺動させてもよく、或いはレーザー光照射位置Pを支点として三次元的に揺動させてもよい。また、ターゲット6を揺動させる動作は、連続的であっても断続的であってもよい。
【0031】
さらに、上記実施形態ではターゲット6を揺動させるターゲット揺動手段10として図2に示すようなカムシャフトを利用したものを用いているが、ターゲット揺動手段10は上記実施形態に限定されるものではなく、各種のギヤ、ステッピングモータ、アクチュエータ等を用いて機械的及び/又は電気的にターゲット6を上記のように揺動させることができる種々の機構を有するものを採用することができる。
【0032】
また、上記実施形態では処理容器5が真空ポンプ(図示せず)に接続されているが、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のシールドガスを導入するためのガスボンベ(図示せず)に接続されていてもよく、その場合は処理容器5の内部を所定のシールドガス雰囲気に維持することが可能となる。このように内部がシールドガス雰囲気となっている処理容器5を用いると、レーザー光3の照射により真空紫外光(図示せず)が発生した場合に、処理容器5の内部を減圧状態とせずともその真空紫外光が吸収されることなく基材7の表面に照射されるため基材7の表面がより効率良く活性化される傾向にある。また、処理容器5に真空ポンプ(図示せず)及びガスボンベ(図示せず)の双方を接続し、処理容器5の内部を所定のシールドガス雰囲気にすると共に所定の圧力条件に維持することが好適である。このような条件としては、例えばヘリウムガス雰囲気で大気圧以下の圧力が好ましく、500Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
【0033】
さらに、上記実施形態ではレーザー光源2が処理容器5の外部に配置されているが、処理容器5の内部に配置されていてもよく、その場合はレーザー光3を処理容器5内に導入するための窓8は不要となる。
【0034】
また、ターゲット6としてレーザー光3を透過可能なものを用い、ターゲット6をレーザー光源2と基材7との間に配置せしめ、ターゲット6の裏面(レーザー光源側)から表面(基材側)に透過したレーザー光3によってターゲット6の表面から飛散粒子(或いは飛散粒子及び真空紫外光)が発生し、それらが基材7の表面に供給されるようにしてもよい。このような構成にすると、比較的大型の基材に対する表面改質処理がより容易になる傾向にある。また、このような構成に用いるターゲットとしては、レーザー光に対して透明なフィルム(例えばPETフィルム)上に前述のターゲット材料を蒸着、貼着等により積層したテープ状ターゲットが好ましい。
【0035】
次に、本発明の基材の表面改質方法の好適な一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。
【0036】
本発明の基材の表面改質方法においては、前述のターゲット6にレーザー光3(好ましくは波長が150nm〜11μm、パルス幅が1ps〜1μs、1パルスあたりのエネルギーが0.01J〜100Jであるパルスレーザー光)がレーザー光源2から照射される。すると、ターゲット6の表面に高温のプラズマが形成され、レーザー光3が照射されたターゲット6からはターゲットを構成する材料の中性原子、イオン、並びに前記の中性原子及びイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって飛散する。
【0037】
このようにレーザー光3の照射によりターゲット6の表面から発生した飛散粒子(アブレータ)は高いエネルギーをもっているため、前述の基材7上に到達すると基材7の表面に付着し、それによって基材7の表面が改質される。そして、本発明においては、前述の通り、レーザー光3の入射方向Lに対するターゲット6の表面の角度をレーザー光照射位置Pを支点にして変化(揺動)させるため、ターゲット6の表面から発生して基材7上に到達する飛散粒子の量に関する基板表面上の各位置における角度依存性がなくなり、しかもその際にターゲット6の表面に対するレーザー光照射強度はほぼ一定に維持される。そのため、本発明の基材の表面改質方法においては、基材7を固定配置した状態であっても、基材7の表面に飛散粒子が均一に到達して付着することとなり、それによって均一な改質処理が達成されるようになる。
【0038】
なお、レーザー光3の波長が前記下限未満では大気による吸収が大きく、ターゲット6に十分なエネルギーを供給できなくなってプラズマが形成されなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると高温のプラズマが形成できなくなるため、十分量の飛散粒子を形成できなくなる傾向にある。また、レーザー光3のパルス幅が前記下限ではごく短時間にレーザーのエネルギーが集中するため飛散粒子の運動エネルギーが過大となり、飛散粒子が基材7上に到達したときに基材7が破壊されてしまう傾向にあり、他方、上記上限を超えるとエネルギーが時間的に集中しないために十分大きなエネルギーをもった飛散粒子が発生しなくなる傾向にある。また、レーザー光3の1パルスあたりのエネルギーが前記下限未満ではエネルギー不足で高温のプラズマが形成されなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えるとターゲット6への投与熱量が多過ぎてターゲット6が溶融し、ドロップレットやスパッターを生じ易くなる傾向にある。
【0039】
また、ターゲット6に照射されるレーザー光3を、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光とすることが特に好ましい。このような条件を満たすパルスレーザー光3がターゲット6に照射されると、ターゲット6の表面に形成された高温のプラズマから波長50nm〜100nmの真空紫外光が発生する。そして、特に基材7が炭素原子を含有するものである場合、基材7上にこの真空紫外光が照射されるとその表面がより活性化されるため、活性化された基材7上に到達した飛散粒子が基材7の表面により強固に結合される傾向にある。
【0040】
なお、パルスレーザー光3のパルス幅が100ピコ秒未満では短時間にレーザーのエネルギーが集中してターゲットに照射されるため波長50nm未満の光が発生するようになり、他方、100ナノ秒を超えるとレーザーのエネルギーが時間的に十分集中して照射されないため発生する光の波長が100nmを超えてしまう。また、パルスレーザー光3の照射強度が10W/cm未満では波長50nm〜100nmの真空紫外光が十分に発生しない傾向にあり、他方、1012W/cmを超えるとターゲットに照射されたときに発生する電磁波の主たる波長域が50nm以下の波長域になるため、波長50nm〜100nmの真空紫外光の光量が減少してしまう傾向にある。
【0041】
上述の本発明の基材の表面改質方法においては、基材7の表面に飛散粒子を付着させる際における温度は特に制限されず、一般的には室温〜50℃程度であればよい。また、基材7の表面に飛散粒子を付着させて改質せしめるのに要する時間(レーザー光照射時間)も特に制限されず、用いる基材とターゲット材料との組み合わせや目的とする改質の程度等に応じて適宜決定される。
【0042】
このように本発明の基材の表面改質方法によれば、ターゲット材料に由来する成分が基材7の表面に均一に付着してその表面特性が均一に改質されるが、具体的に改質される特性は特に制限されず、用いる基材とターゲット材料との組み合わせに応じて種々の表面特性を改質することが可能である。例えば、炭素原子を含有する材料(例えば樹脂や炭素材料)からなる基材に対して本発明の表面改質方法を適用することにより、用いるターゲット材料に応じて、耐デント性、濡れ性、撥水性、耐傷性、親油性、ガスバリア性、付着性、密着性(例えば塗装、めっき等の被覆に対する密着性)、耐スクラッチ性、耐オゾン性、黄変防止性、耐グルーミング性、防汚性、親水性、防カビ性、摩擦性、染色性、印刷性、筆記性、潤滑性等の機械的、物理的又は化学的特性を均一に改質することが可能となる。また、金属や金属化合物(例えば金属酸化物)からなる基材に対して本発明の表面改質方法を適用することにより、用いるターゲット材料に応じて、基材の表面に吸着機能、触媒機能等の各種の機能を均一に付与したり、導電性被膜、半導体被膜、絶縁性被膜、不動態被膜等の各種の被膜を均一に形成したりして、様々な用途の複合材料を得ることが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
図1に示す基材の表面改質装置を作製した。すなわち、レーザー光源2としてYAGレーザー装置(スペクトラフィジックス社製、商品名:PRO−290)と、処理容器5として石英窓付の真空容器(ステンレス鋼製、容量30リットル)と、ターゲット6と、樹脂基材7とを備える。そして、基材7に付着する飛散粒子の分布を調べるために、ターゲット6として錫板(直径40mm、厚さ5mm)、基材7としてポリプロピレンからなる板材にプライマ塗装した後に吹付け塗装法を用いて塗装(関西ペイント社製、メタリックベース塗料)した塗装基材(50mm×50mm×3mm)を用い、以下のようにして図1に示す基材を表面改質するための飛散粒子の付着状況を評価した。なお、レーザー光3の入射方向Lとターゲット6表面の垂線方向Lとの間の初期角度θが30°となるように、ターゲット6を図2に示すターゲット揺動手段10の上に配置した。また、基材7表面の中心Cとターゲット6表面のレーザー光照射位置Pとを結ぶ線Lと、ターゲット6表面の垂線方向Lとの間の初期角度θが60°となり、基材7表面の中心Cとターゲット6表面のレーザー光照射位置Pとの間の距離(中心間の距離)が80mmとなるように基材7を処理容器5内に固定配置した。
【0045】
次に、作製された装置を用い、処理容器5の内部を圧力が1×10−2Torrの真空度とし、ターゲット6の回転速度を2rpm、揺動角度(θ、θ)を±30°、揺動速度を10往復/分とした状態で、レーザー光源2から波長532nm、パルス幅7ナノ秒、エネルギー1J/パルス、周波数10Hz、照射強度4×10W/cm(4GW/cm)のパルスレーザー光3をターゲット6に5分間照射した。処理容器5内部が真空状態のためパルスレーザー光3は減衰することなくターゲット6に到達し、ターゲット6の表面には高温のプラズマが形成され、波長が50nm〜100nmの範囲にある真空紫外光が発生し、同時に、ターゲット6の表面から錫の中性原子、イオン、及びこれら中性原子及びイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタ等の飛散粒子(アブレータ)が高いエネルギーをもって飛散した。そして、基材7の表面に真空紫外光が照射されて十分に活性化され、そこに上記飛散粒子が高いエネルギーをもって高速で到達して付着し、基材7の表面に錫微粒子からなる薄膜が形成されて改質された。
【0046】
基材7の表面に形成された錫微粒子からなる薄膜の状態を観察したところ、図3に示す写真の通り、非常に均一で膜厚がほぼ一定の薄膜であり、基材7の表面は均一に改質されていることが確認された。
【0047】
(比較例1)
ターゲット6を揺動させなかったこと以外は実施例1と同様にして基材7の表面に錫微粒子からなる薄膜を形成させて改質せしめた。
【0048】
基材7の表面に形成された錫微粒子からなる薄膜の状態を観察したところ、図4に示す写真の通り、場所によってむらができていて膜厚が不均一な薄膜であり、基材7の表面は均一に改質されていないことが確認された。
【0049】
(実施例2)
市販のシリコンウエハー(住友三菱シリコン社製、商品名:P型OS−087)を10mm×10mm×0.4mmに切り出して基材とし、これを用いて図1に示す基材の表面改質装置を作製した。すなわち、レーザー光源2としてYAGレーザー装置(スペクトラフィジックス社製、商品名:PRO−290)、処理容器5として石英窓付の真空容器(ステンレス鋼製、容量30リットル)、ターゲット6として炭素板(グラファイト製、直径40mm、厚さ4mm)、基材7として上記シリコン基板、をそれぞれ用いて図1に示す基材の表面改質装置を作製した。なお、レーザー光3の入射方向Lとターゲット6表面の垂線方向Lとの間の初期角度θが45°となるように、ターゲット6を図2に示すターゲット揺動手段10の上に配置した。また、基材7表面の中心Cとターゲット6表面のレーザー光照射位置Pとを結ぶ線Lと、ターゲット6表面の垂線方向Lとの間の初期角度θが60°となり、基材7表面の中心Cとターゲット6表面のレーザー光照射位置Pとの間の距離(中心間の距離)が150mmとなるように基材7を処理容器5内に固定配置した。
【0050】
次に、作製された装置を用い、処理容器5の内部を圧力が1×10−2Torrの真空度とし、ターゲット6の回転速度を2rpm、揺動角度(θ、θ)を±30°、揺動速度を5往復/分とした状態で、レーザー光源2から波長532nm、パルス幅7ナノ秒、エネルギー1J/パルス、周波数10Hz、照射強度1×10W/cm(1GW/cm)のパルスレーザー光3をターゲット6に20分間照射した。処理容器5内部が真空状態のためパルスレーザー光3は減衰することなくターゲット6に到達し、ターゲット6の表面には高温のプラズマが形成され、波長が50nm〜100nmの範囲にある真空紫外光が発生し、同時に、ターゲット6の表面から炭素の中性原子、イオン、及びこれら中性原子及びイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタ等の飛散粒子(アブレータ)が高いエネルギーをもって飛散した。そして、基材7の表面に真空紫外光が照射されて十分に活性化され、そこに上記飛散粒子が高いエネルギーをもって高速で到達して付着し、基材7の表面に炭素微粒子からなる薄膜が形成されて改質された。
【0051】
基材7の表面に形成された炭素微粒子からなる薄膜の厚さ分布を段差計(A subsidiary of Veeco instrument社製、デクタック stoan Dektak-ST)により測定したところ、図5に示す通り、非常に均一で膜厚がほぼ一定の薄膜であり、基材7の表面は均一に改質されていることが確認された。
【0052】
(比較例2)
ターゲット6を揺動させなかったこと以外は実施例2と同様にして基材7の表面に炭素微粒子からなる薄膜を形成させて改質せしめた。
【0053】
基材7の表面に形成された炭素微粒子からなる薄膜の厚さ分布を前記段差計により測定したところ、図5に示す通り、場所によってむらができていて膜厚が不均一な薄膜であり、基材7の表面は均一に改質されていないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明の基材の表面改質方法及び装置によれば、レーザーアブレーションを利用した改質方法であるにも拘らず、改質処理されるべき基材を回転させたり平行移動させることなく固定配置した状態で、その表面を均一に改質させることが可能となる。そのため、本発明の基材の表面改質方法及び装置を使用することにより、従来のように基材を回転させたり平行移動させる必要はなくなるため、従来は処理が困難であった大型の基材に対しても効率良くかつ確実に改質処理を施すことが可能となり、さらに基材を回転させたり平行移動させる手段が不要となるため表面改質装置の小型化も可能となる。
【0055】
このように、本発明は、種々の基材に対して均一な改質処理を施すための方法及びそのための装置として有用であり、例えば樹脂や炭素材料からなる基材に対して、耐デント性、濡れ性、撥水性、耐傷性、親油性、ガスバリア性、付着性、密着性(例えば塗装、めっき等の被覆に対する密着性)、耐スクラッチ性、耐オゾン性、黄変防止性、耐グルーミング性、防汚性、親水性、防カビ性、摩擦性、染色性、印刷性、筆記性、潤滑性等の機械的、物理的又は化学的特性を均一に改質することが可能となる。また、本発明によって、金属や金属化合物からなる基材に対して、その表面に吸着機能、触媒機能等の各種の機能を均一に付与したり、導電性被膜、半導体被膜、絶縁性被膜、不動態被膜等の各種の被膜を均一に形成したりして、様々な用途の複合材料を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の基材の表面改質装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。
【図2】ターゲット揺動手段の一実施形態の基本構成を示す模式図である。
【図3】実施例1において改質された基材の表面に形成された錫微粒子からなる薄膜の状態を示す写真である。
【図4】比較例1において改質された基材の表面に形成された錫微粒子からなる薄膜の状態を示す写真である。
【図5】実施例1及び比較例1において改質された基材の表面に形成された炭素微粒子からなる薄膜の厚さ分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1…基材の表面改質装置、2…レーザー光源、3…レーザー光、4…光学系、5…処理容器、6…ターゲット、7…基材、8…窓、9…ターゲット駆動装置、10…ターゲット揺動手段、11…カム回転用モータ、12…カムシャフト、13…ガイド部、14…回転台、A…回転軸、C…基材表面の中心、P…レーザー光照射位置、S…揺動方向、L…レーザー光の入射方向、L,L,L…ターゲット表面の垂線方向、L…基材表面の中心Cとレーザー光照射位置Pとを結ぶ線、θ…LとLとの間の角度、θ,θ…ターゲットの揺動角度、θ…LとLとの間の角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの表面にレーザー光を照射して飛散粒子を発生させ、基材の表面に前記飛散粒子を付着させて前記基材の表面を改質する方法であって、前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置を支点にして、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の角度を変化させるように前記ターゲットを揺動させることを特徴とする基材の表面改質方法。
【請求項2】
前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度を25°〜65°とし、前記初期角度の±10°〜±30°となるように前記ターゲットを揺動させることを特徴とする請求項1に記載の基材の表面改質方法。
【請求項3】
前記基材の改質される表面の中心と前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置とを結ぶ線と、前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度が0°〜60°となるように前記基材を配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の基材の表面改質方法。
【請求項4】
前記ターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び前記飛散粒子を発生させ、前記基材の表面に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を付着させることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の基材の表面改質方法。
【請求項5】
レーザー光を発生するレーザー光発生装置と、
表面に照射された前記レーザー光により飛散粒子を発生させるターゲットと、
前記飛散粒子の付着により表面が改質される基材と、
前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置を支点にして、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の角度を変化させるように前記ターゲットを揺動させるターゲット揺動手段と、
を備えることを特徴とする基材の表面改質装置。
【請求項6】
前記ターゲット揺動手段が、前記レーザー光の入射方向と前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度を25°〜65°とし、前記初期角度の±10°〜±30°となるように前記ターゲットを揺動させるものであることを特徴とする請求項5に記載の基材の表面改質装置。
【請求項7】
前記基材の改質される表面の中心と前記ターゲットの表面上のレーザー光照射位置とを結ぶ線と、前記ターゲットの表面の垂線方向との間の初期角度が0°〜60°となるように前記基材を配置することを特徴とする請求項5又は6に記載の基材の表面改質装置。
【請求項8】
前記ターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び前記飛散粒子を発生させ、前記基材の表面に前記真空紫外光を照射しつつ前記飛散粒子を付着させることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の基材の表面改質装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−9072(P2006−9072A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185867(P2004−185867)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】