説明

基板の分割装置および分割方法

【課題】本発明は、分割溝を有し、その分割溝に沿って確実に小片に分割することが可能な基板の分割装置およびこの分割装置を用いた基板の分割方法を提供することを目的とする。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーが破損することなく分割できる分割装置および分割方法を提供する。
【解決手段】分割溝を有する基板を搬送する搬送機構と、搬送途中の所定位置において基板を分割溝に沿って割る分割機構とを有し、前記分割機構は上下動可能に構成され前記所定位置に搬送された基板を分割溝に沿って押圧可能な押圧部と、逃げ溝Xと逃げ溝Xに直交した逃げ溝Yとを有する支持部材を具備し、押圧部の下動によって前記逃げ溝Xを受け部として基板を押圧することで、分割溝に沿って割るようにしたことを特徴とする基板の分割装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割溝を有し、その分割溝に沿って分割することで小片が得られる構成の基板を、分割溝に沿って歩留まりよく小片に分割するための基板の分割装置およびそれを用いた基板の分割方法に関する。特に、各小片にキャビティーを有するものを良好に分割するための基板の分割装置およびそれを用いた基板の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分割溝を有するセラミック基板を分割溝に沿って割り、チップコンデンサーやチップ抵抗器等のセラミック電子部品や小型セラミックパッケージ等のセラミック小基板を得るのに様々な分割装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、分割溝を有する基板を両面側から一組のゴム状弾性体ベルトで挟持し、一方のゴム状弾性体ベルトの外面側に固定板を配置し、他方のゴム状弾性体ベルトの外面側に、このゴム状弾性体ベルトを介し基板の分割溝の上面近傍を押圧して分割する押圧部を配置した基板分割装置が提案されている。この基板分割装置においては、押圧部を、センサが基板の始点を検出したとき駆動させるようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、以下の(1)〜(5)の構成要素を有するセラミック基板の分割装置が提案されている。
(1)下面に一定の繰返し間隔で互いに平行な複数の分割溝を有するセラミック基板を分割溝が移送方向と直角となるように載置して、一端側に設けた供給部から他端側に設けた排出部に向けて水平に移送する移送部を構成する下側無端ベルト。
(2)供給部から排出部までの間で移送部に対向配置され、セラミック基板を移送しつつ移送部側に押える押え部を構成する上側無端ベルト。
(3)供給部から移送部と押さえ部との対向領域の途中までの間で下側無端ベルトの下面に当接してセラミック基板を支持する支持板。
(4)該支持板の排出部側の縁端から排出部側に繰返し間隔と同じ距離だけ離間した位置で、かつ支持板よりも0.05〜0.5mm上方に突出して下側無端ベルトの下面に当接してセラミック基板を支持する支持ローラー。
(5)押え部において支持板の排出部側の縁端の直上で上側無端ベルトの上面に当接して、セラミック基板に上方から押圧力を印加する押圧ローラー。
【0005】
さらに、特許文献3には、分割溝を有する基板をシート上に載せて搬送する搬送機構と、搬送途中における基板を分割溝に沿って割る分割機構とを有する分割溝を有する基板の分割装置が提案されている。この分割装置において該分割機構は、上下動可能に構成された割り部及び押え部と、割り部に可動自在に設けられ、かつ押え部に横架された連結部と、該連結部と当接し、クランク機構によって上下動する駆動軸と、押え部の下動を規制するストッパー機構と、シートを挟んで割り部及び押え部と対向配置され、割り部と押え部との間に配設される受け部とから構成されている。この装置の特徴は、搬送機構によって基板の分割溝が割り部と押え部との間に位置するように搬送し、駆動軸の下動によって割り部及び押え部を下動させ、ストッパー機構によって押え部の下動を規制して基板と当接させるとともに、連結部のシーソー機構によって割り部を押え部よりさらに下動させて基板を押圧することにより、受け部を支点として基板を分割溝に沿って割るようにしたことにある。
【0006】
このような従来の基板の分割装置を用いれば、分割して得られる小片の押え部と対向する面の面積がある程度の広さがあれば、分割溝に押え部の押圧力が十分に加えられ、分割溝に沿って分断することができる。しかしながら、小片の小型化にともない対向する面の面積が狭くなると、分割溝への押圧力が十分に加えられず、分割溝に沿って分割できないことや、小片に分割できないことが生じるという問題があった。特に、小片にキャビティーが形成されている場合には、キャビティーの壁が破損するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−38957号公報
【特許文献2】特開2002−18830号公報
【特許文献3】特許第3485519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、分割溝を有し、その分割溝に沿って確実に小片に分割することが可能な基板の分割装置およびこの分割装置を用いた基板の分割方法を提供することを目的とする。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーが破損することなく分割できる分割装置および分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板の分割装置は、
分割溝により区切られた領域を設けた基板を、前記分割溝に沿って小片に分割するための基板の分割装置であって、
前記分割溝を有する基板を、上・下緩衝シートに挟持した状態で搬送する搬送機構と、搬送途中の所定位置において前記基板を分割溝に沿って割る分割機構とを有し、
前記分割機構は、上下動可能に構成され前記所定位置に搬送された前記基板を分割溝に沿って押圧可能な押圧部;および前記基板と上・下緩衝シートを挟んで前記押圧部の反対側に位置し、前記押圧部に対向するように形成された受け部としての逃げ溝Xと、前記逃げ溝Xに直交し逃げ溝Xより浅く、前記分割溝により区切られた領域の逃げ溝X方向の長さより短い幅で形成された逃げ溝Yとを有する支持部材;を具備し、
前記搬送機構によって前記上・下緩衝シートに挟持された基板を前記分割溝が押圧部と支持部材の逃げ溝Xとの間に位置する分割位置に搬送し、押圧部の下動によって、前記下側緩衝シートを介して逃げ溝Xを受け部とし、上側緩衝シートを介して基板を押圧することで、分割溝に沿って割るようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の基板の分割装置を用いて、平面形状が矩形であり、隣り合う2辺にそれぞれ平行して一定の繰返し単位で複数の分割溝を有し、前記分割溝により区切られた各領域がキャビティーを有してもよい基板を、前記分割溝に沿って小片に分割するための基板の分割方法であって、少なくとも一方向において、前記分割溝を1本置きに未分割の状態で残すように前記基板を分割溝に沿って分割する工程と、前記未分割の分割溝に沿って基板をさらに分割する工程とを含む基板の分割方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板の分割装置を用いれば、分割溝に押圧力が十分に与えられ基板を小片に確実に分割することができる。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーの壁を破損させることなく分割することができる。
この分割装置を用いた本発明の基板の分割方法によれば、分割溝に押圧力が十分に与えられ基板を小片に確実に分割することができる。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーの壁を破損させることなく分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基板の分割装置の一実施形態における基板の分割溝に直交する方向の断面図である。
【図2】本発明の基板の分割装置が適用される基板の一例の斜視図である。(I)は、分割前の基板を示す。(II)は分割後の基板を示す。
【図3】本発明の基板の分割装置を用いて得られる小片の幅方向の断面図(図2(II)におけるB−B’線に相当する部分の断面図)である。
【図4】図1に示す本発明の基板の分割装置の実施形態の図1におけるA−A’線に相当する部分の断面図である。
【図5】図1に示す本発明の基板の分割装置の実施形態における支持部材の斜視図である。
【図6】本発明の基板の分割装置の別の実施形態における基板の分割溝方向の断面図である。
【図7】本発明の基板の分割方法の一実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<基板の分割装置>
本発明の基板の分割装置の一実施形態(以下、「第1の実施形態」という。)を図1〜5を用いて説明する。図1は、本発明の基板の分割装置の一実施形態における基板の分割溝に直交する方向の断面図である。図2は、本発明の基板の分割装置が適用される基板の一例の斜視図である。(I)は、分割前の基板を示す。(II)は分割後の小片を示す。図4は、図1に示す本発明の基板の分割装置の実施形態の図1におけるA−A’線に相当する部分の断面図である。
【0014】
図1に示す本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1においては、分割する基板4として、図2の(I)に示す1本の分割溝2を有するとともに、この分割溝2により区切られた2つの領域がそれぞれキャビティー3を有しその開口部を一方の面側に設けた基板4が用いられている。本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1において基板4は、図1に示す分割溝に直交する方向(以下、「横方向」ということもある。)にほぼ隙間なく複数個配列され、さらに図2に示す分割溝に平行な方向(以下、「縦方向」ということもある。)にも同様に複数個配列されている。基板の分割装置1には、基板4が縦横に複数個ずつ配列され固定された状態でセッティングされており、以下に説明する搬送機構により、この基板4の縦横配列のセットが順次横方向に搬送され、分割のための所定位置に到達した縦方向一列の複数個の基板4が、以下に説明する分割機構により、同時に前記分割溝2に沿ってそれぞれ2個ずつの小片5に分割される。
【0015】
ここで、本発明の基板の分割装置において、分割対象となる基板については、少なくとも1本の分割溝を有し、その分割溝に沿って分割することで小片が得られるものであれば特に制限されない。ただし、本発明の基板の分割装置は、好適には分割して得られる各小片が少なくとも一方の面にキャビティーを有するものに用いられる。小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーの壁を破損させることなく分割することができ、本発明の分割装置による利点が大きい。このように分割後に得られる小片がキャビティーを有する場合には、小片はキャビティーをその片面にのみ有していてもよく、両面に有していてもよい。また小片が有するキャビティーの個数についても特に制限されない。さらに、例えば、キャビティー内に機能性素子が搭載され開口部が封止されたような構成を有する小片であってもよいし、単にキャビティーのみを有する構成の小片であってもよい。キャビティー内に機能性素子が搭載され開口部が封止された構成を有する小片として、具体的には、発光素子用パッケージ、MEMS用パッケージ等が挙げられる。また、図2の(I)に示す基板4のように、分割溝に沿って分割して得られるキャビティー付き小片が2個となるような基板の分割に本発明の基板の分割装置を用いれば、本発明の効果が特に顕著である。
本発明の基板の分割装置において、分割対象となる基板の材質については、特に制限されない。通常、電子・電気部品関連の基板に用いられる材質、例えば、ガラス、セラミックス等の材質の基板において、本発明の分割装置が適用可能である。
【0016】
上記好ましくはキャビティーを有する、またはそのキャビティー内に機能性素子が搭載され開口部が封止された構成の小片単位が複数個配列された基板は、通常、図2(I)に示す基板4のような小片単位が2個組み合わされたかたちで製造されるのではなく、縦横複数列に亘って小片単位が配列された矩形の基板として製造され、さらにこの基板を小片に分割するための分割溝が、従来公知の方法で形成される。本発明の基板の分割装置においては、このようにして製造された、分割溝により縦横複数列に亘って小片単位に区切られた矩形の基板を小片に分割することが可能である。このような基板の具体的な分割方法については、後述の本発明の基板の分割方法で説明するが、図1においては、分割溝により縦横複数列に亘って小片単位に区切られた矩形の基板が、基板4のような小片単位を2個ずつ有する基板に分割された後の状態が示されている。
【0017】
また図1に示される基板4が有する分割溝2は、基板のキャビティー開口部を有する面側から、反対側の面に向かって形成されているが、分割溝はこれに限定されず、基板のキャビティー開口部を有する面の反対側の面からキャビティー開口部を有する面に向かって形成されていてもよい。さらには、これらの2者の分割溝を有する基板を用いることも可能である。
【0018】
本発明の基板の分割装置が、好ましく適応される基板の分割としては、分割溝に沿って分割して得られるキャビティーを有していてもよい小片が略直方体であり、前記小片が有する面積の小さい側の分割面における、分割方向の辺の長さ(a)とそれに直交する辺の長さ(b)の比(a)/(b)が、0.5以上である基板の分割が挙げられる。
図3は、本発明の基板の分割装置を用いて得られるキャビティー付き小片の一例の幅方向の断面図(図2(II)におけるB−B’線に相当する部分の断面図)を示すが、上記分割方向の辺の長さ(a)が、図3に示すキャビティーを有する面を上にして幅方向に切断した断面における高さ(a)に相当する。同様に、上記分割方向の辺に直交する辺の長さ(b)が、図3に示すキャビティーを有する面を上にして幅方向に切断した断面における幅(b)に相当する。以下、小片が有する面積の小さい側の分割面における分割方向の辺の長さ(a)を「高さ(a)」、上記分割方向の辺に直交する辺の長さ(b)を「幅(b)」という。また、小片における高さ(a)は基板の厚さ(高さ)と同じであり、以下、基板の高さについても(a)で表すことがある。
【0019】
ここで、例えば、通常発光素子用パッケージに用いられる小片の大きさは、幅(b)については、2〜10mm、高さ(a)については、0.6〜1.5mm、長さについては、2〜10mm程度であり、(a)/(b)は、概ね0.5未満である。本発明の基板の分割装置が適用されるキャビティー付き小片の大きさについても特に制限されないが、分割して得られる小片(幅(b)が1.5mm以下)においてキャビティーが大きく壁厚の薄い小片、例えば、上記発光素子のサイズにおいて、キャビティーサイズが、幅0.2〜1mm、長さ2〜4mm、深さ0.5mm程度以下、幅方向の壁厚が0.1〜0.3mm程度のキャビティー付き小片のための基板の分割に用いれば、本発明の効果が顕著である。
【0020】
図1に示す本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1は、前記分割溝2を有する縦横複数列に配列された基板4を、キャビティー3の開口部側を下側にして、上側緩衝シート6、下側緩衝シート7に挟持した状態で搬送する搬送機構と、搬送途中の所定位置において基板4を分割溝2に沿って割る分割機構とを有する。なお、ここでは基板4はキャビティー3の開口部側を下側にして、上側緩衝シート6および下側緩衝シート7の間に挟持されているが、必要に応じて基板は開口部側を上側にして挟持されていてもよい。
【0021】
上記搬送機構が有する上側緩衝シート6および下側緩衝シート7は、両側から基板を挟持することで基板を固定した状態で搬送することを可能とするとともに、分割機構を用いて分割操作を実行する際に基板の表面に傷等が発生することを防ぐ働きを有する。また、下側緩衝シート7は、分割操作において発生する可能性のある基板の破片等を搬送することによって、その後の分割に際に、破片残り等が原因の分割不良の発生を防止するとともに、最終的に得られる小片から分離回収する機能も果たす。下側緩衝シート7を構成する材質としては、接触部の倣い作用、緩衝作用などを有する材質であれば、特に制限されず、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリウレタン等製のプラスチックフィルムが挙げられる。下側緩衝シート7の厚さとしては、上記機能を果たすことが可能な範囲であれば特に制限されないが、概ね基板高さ(a)の1/10以下の厚さであることが好ましい。
【0022】
上側緩衝シート6を構成する材質としては、接触部の倣い作用、緩衝作用などを有する材質であれば、特に制限されず、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリウレタン等製のプラスチックフィルムが挙げられる。上側緩衝シート6の厚さとしては、上記機能を果たすことが可能な範囲であれば特に制限されないが、概ね基板高さ(a)の1/10以下の厚さであることが好ましい。また、上側緩衝シート6として特に基板の固定を目的として、基板側に接着層を有する片面接着フィルムを用いることも可能である。
【0023】
図1に示す本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1においては、上側緩衝シート6および下側緩衝シート7により挟持された基板4は、送り出し手段11により、所定の分割位置に搬送される。基板への上側緩衝シート6および下側緩衝シート7の装着は、送り出し手段11の前段階で行われ、上・下緩衝シートにより挟持された基板4が送り出し手段11に設置され搬送される。送り出し手段11は、所定の分割位置をセンサ等の通常の方法で認識し、分割位置において基板4の搬送を一時停止して、以下に説明する分割機構により基板4が小片に分割される。図1に示す基板の分割装置1においては、送り出し手段11が、横方向に複数列配置された基板4を順次、分割位置まで搬送し、分割機構により分割する操作を繰り返し行う。送り出し手段としては、公知の手段、例えば、パルスカウントによるモーター送り量制御や精密ボールネジ等を用いることができる。また、この分割装置1によって分割された小片5は、送り出し手段11によって上記分割位置から一定距離をもった位置まで搬送された段階で、挟持固定されていた上側緩衝シート6および下側緩衝シート7から、適宜分離され、回収される。
【0024】
図1に示す本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1において、分割機構は、上下動可能に構成され前記所定位置に搬送された基板4を分割溝2に沿って押圧可能な押圧部8と、前記基板4と上・下緩衝シート6、7を挟んで前記押圧部8の反対側に位置する支持部材としての支持板9を備えている。支持板9は前記押圧部8に対向するように形成された受け部としての逃げ溝Xと、前記逃げ溝Xに直交し逃げ溝Xより浅く、前記分割溝により区切られた領域の逃げ溝X方向の長さより短い幅で、前記基板が分割溝に沿って割られる分割位置に搬送されたときに、前記キャビティー3の開口部に対応する領域を含むかたちに形成された逃げ溝Yとを有する。
【0025】
押圧部8は、分割溝に沿って基板を均等に押圧可能なものであれば材質や形状は制限されないが、具体的には、円筒形状、三角柱形状の硬質ピン等が挙げられる。硬質ピンの具体的な材質としては、超硬材等が挙げられる。硬質ピンの具体的な大きさとしては、基板の大きさや高さにもよるが、直径0.5〜2mm程度が挙げられる。上記分割機構においては、また、押圧部8を下動させることで基板4を分割溝2に沿って押圧せしめる手段として加圧手段10を有する。加圧手段としては、公知の手段、例えば、エアシリンダーによる空圧制御やモータによるトルク制御等を用いることができる。押圧部8は、加圧手段10によって下動可能であるが、押圧部8と、加圧手段10はそれぞれ独立して上下動可能に構成されている。基板押圧時には、押圧部8は、分割装置を用いた基板の搬送→分割の一連の操作中、最も下側に位置するように加圧手段10と押圧部8を上下動可能とする手段(図示せず)により位置調整される。また、基板搬送時においては、上側緩衝シート6に押圧部8が当接しないような位置に加圧手段10と押圧部8の位置制御がなされる。
【0026】
図5に、本発明の基板の分割装置の第1の実施形態における支持部材としての支持板9の斜視図を示す。支持板9における逃げ溝Xは押圧部8と対応するものであり、本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1においては1本である。ただし、基板の分割装置の分割機構に押圧部を複数設ける場合には、押圧部の数に対応する数の逃げ溝Xが必要となる。逃げ溝Xは、基板分割操作時に押圧部8が基板を押圧する際の受け部として機能する。したがって、逃げ溝Xの形状、大きさは上記押圧部8の形状や大きさによるが、形状としては、V字溝、U字溝、凹状の溝等が挙げられる。また、逃げ溝Xの大きさは、最大幅で、0.2〜1.5mm、深さが最大深さで、0.5mm以下であることが好ましい。
【0027】
支持板9における逃げ溝Yは、図2の(I)に示すような分割溝2を有する基板4のような分割後2個の小片が得られる基板単位を、基板の分割溝方向に複数個並べて、1回の分割操作で複数の基板単位の分割が可能なように、複数本形成されていることが好ましい。具体的には、逃げ溝Yの本数は、1〜10本であることが好ましい。
【0028】
逃げ溝Yは、基板分割操作時に押圧部8が基板を押圧する際にキャビティーの壁部分への応力負荷を軽減する役割を果たす。したがって、逃げ溝Yの形状、大きさは基板の有するキャビティーおよびその開口部の形状や大きさによる。逃げ溝Yの形状としては、V字溝、U字溝、凹状の溝等が挙げられるが好ましくは凹状の溝である。より好ましくは側壁部分の溝の深さが端から中央部分に向かって漸増するように傾斜し、溝の中央部分において一定深さの領域を有する形状である。逃げ溝Yの大きさは、最大幅で、前記キャビティーまたはキャビティー開口部の分割溝に平行する辺の長さと略同じ幅であり、深さが最大深さで、0.1mm以下であることが好ましい。なお、逃げ溝Yの深さは、分割のための変位を与える目的ではなく、押し圧によるキャビティーの壁への応力負荷を低減または無くすために上記逃げ溝Xより浅く構成される。
【0029】
なお、キャビティーを有さない小片を得るために基板を分割する場合においても、逃げ溝Yは、押圧部が基板を押圧する際に分割溝以外の部分に必要以上にかかる応力付加を軽減する役割を果たす。また、この場合、逃げ溝Yは、分割溝により区切られた領域の逃げ溝X方向の長さ、すなわち小片の長さより短い幅で支持板上に、上記逃げ溝Xに直交して形成される。
【0030】
支持部材である支持板9の材質としては、押圧による応力負荷に対して変形せず、表面が平滑で硬質の部材であれば特に制限されないが、具体的には、炭素鋼の表面処理、工具鋼鋼材、セラミック等が挙げられる。
【0031】
図1に示す本発明の第1の実施形態による基板の分割装置1においては、上記搬送機構によって上記上・下緩衝シートに挟持された基板4を、その分割溝2が押圧部8と支持板9の逃げ溝Xとの間に位置する分割位置に搬送し、押圧部8の下動によって、下側緩衝シート7を介して逃げ溝Xを受け部とし、上側緩衝シート6を介して基板4を押圧することで、分割溝2に沿って割ることができる。
【0032】
図1に示す本発明の基板の分割装置1においては、基板4が押圧部8により押圧される際に、支持板9に設けられた逃げ溝Xと逃げ溝Yの上記構成により、必要な部分、具体的には、基板4の四隅に応力を集中させ、不要な部分、具体的は、キャビティー開口部とその近傍には応力負荷が軽減される等、応力負荷の分布の制御が可能となる。それにより、基板4は、分割溝に沿って寸法精度よく分割され、また破損等の不具合の発生も少なく、歩留まりよく小片5を得ることができる。
【0033】
このような基板4が押圧部8により押圧される際の基板への応力分布を制御する観点から、本発明の基板の分割装置においては、押圧部が、前記基板を押圧する際の基板と接触する面積について、前記キャビティー近傍においては小さくそれ以外では大きくなるように設定されることが好ましい。図6に、押圧部が上記構成となるように設計された、本発明の基板の分割装置の実施形態(以下、「第2の実施形態」という。)における基板の分割溝方向の断面図を示す。
【0034】
図6に示す本発明の第2の実施形態の基板の分割装置1において、押圧部8以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。本発明の第2の実施形態において、押圧部8は、図6に断面が示されるように、キャビティー3近傍において幅が小さく、それ以外の部分では幅が大きく構成されている。押圧部8をこのような形状とすることで、押圧部8が、基板4を押圧する際の基板4と接触する面積については、キャビティー3の近傍においては小さくそれ以外では大きくなり、基板4を分割して小片とする上で分割面の寸法精度をより高いものとすることができる。
【0035】
<基板の分割方法>
本発明の基板の分割方法は、上記本発明の基板の分割装置を用いて、平面形状が矩形であり、隣り合う2辺にそれぞれ平行して一定の繰返し単位で複数の分割溝を有し、前記分割溝により区切られた各領域がキャビティーを有してもよい基板を、前記分割溝に沿って小片に分割するための基板の分割方法であって、少なくとも一方向において、前記分割溝を1本置きに未分割の状態で残すように前記基板を分割溝に沿って分割する工程と、前記未分割の分割溝に沿って基板をさらに分割する工程とを含むことを特徴とする。
【0036】
以下、本発明の基板の分割方法を図7を用いて説明する。図7は本発明の基板の分割方法の一実施形態を模式的に示す図である。
図7において(1)は、平面形状が矩形であり、隣り合う2辺にそれぞれ平行して一定の繰返し単位で複数の分割溝を有し、前記分割溝により区切られた各領域がキャビティーを有する基板20を示す。図7には、分割溝が図示されていないが、基板20が有する分割溝は、キャビティーの短辺に平行する方向の分割溝については8本であり、キャビティーの長辺に平行する方向の分割溝については17本である。
【0037】
図7(2)は、上記(1)に示す基板20を、キャビティーの短辺に平行する方向の分割溝について、全ての分割溝8本に沿って分割した状態を示す。このように基板20を(1)から(2)に示す状態に分割する工程は、通常は、上記本発明の基板分割装置によって行われるが、従来の基板の分割装置によって行われてもよい。なお、本発明の分割装置を用いて図7の(1)→(2)→(3)→(4)までの分割工程を実行する場合には、上記(1)の状態の基板20を予め上側緩衝シートおよび下側緩衝シートに挟持させ、一連の分割工程に用いればよい。上側緩衝シートとして好ましい接着フィルムを用いる場合には、一連の分割工程においてこれを取り外すことはないが、下側緩衝シートについては、分割工程毎に必要に応じて取り替えることも可能である。
【0038】
図7(3)は、上記(2)のように分割された基板を、さらにキャビティーの長辺に平行する方向の分割溝について、分割溝を1本置きに未分割の状態で残すようにして、分割溝8本に沿って分割した状態を示す。ここで得られる個々の基板は、図2の(I)に示す基板4と同様に最終的に中央の分割溝で分割され2個の小片となる構成の基板である。このように上記(2)のように分割された基板を、さらに(3)に示す状態に分割する工程は、通常は、上記本発明の基板分割装置によって行われるが、従来の基板の分割装置によって行われてもよい。
【0039】
図7(4)は、上記(3)のように分割された基板を、未分割の分割溝9本に沿って基板をさらに分割し、最終的に小片にした状態を示す。ここで得られる個々の小片は、図2の(II)に示す小片5と同様の小片である。このように上記(3)のように分割された基板を、さらに(4)に示す状態に分割する工程は、上記本発明の基板分割装置によって行われる。上記図1〜図6に示された本発明の基板の分割装置の第1の実施形態および第2の実施形態においては、上記(3)のように分割された基板を、さらに(4)に示す状態に分割する分割操作を示すものである。
【0040】
上記(3)のように分割された基板を、さらに(4)に示す状態に分割する工程を行う際には、特に、基板の中央の分割溝に十分な押圧力が選択的に与えられることが必要であり、本発明の分割装置を用いることにより、これが達成され、基板の小片への分割が確実に実行できる。なお、従来法では、(1)→(2)→(4)のように基板は分割されるが、(2)→(4)の分割においては十分な精度がでない。本発明の分割方法においては(2)→(3)→(4)のように分割し、さらに(3)→(4)の分割については特に本発明の分割装置を用いることで、基板の小片への分割を確実にしたものである。また、特に小片のサイズが小さく、上記(a)/(b)が、0.5以上である基板の分割において本発明の基板の分割方法を用いれば、効果は顕著である。
【0041】
本発明の基板の分割方法について、図7を用いて実施形態の一例を説明したが、分割工程の順番を変えることも可能である。
例えば、本発明の分割装置を用いて、上記(1)に示す基板20を、キャビティーの長辺に平行する方向の分割溝について、分割溝を1本置きに未分割の状態で残すようにして、分割溝8本に沿って分割する工程を実行し、次いで、キャビティーの短辺に平行する方向の分割溝について、全ての分割溝8本に沿って分割する工程を実行して、上記(3)に示す状態となった基板を、最後に、キャビティーの長辺に平行する方向の未分割の分割溝9本に沿ってさらに分割し、最終的に小片にすることも可能である。
【0042】
また、本発明の分割装置を用いて、上記(1)に示す基板20を、キャビティーの長辺に平行する方向の分割溝について、分割溝を1本置きに未分割の状態で残すようにして、分割溝8本に沿って分割する工程を実行し、次いで、上記キャビティーの長辺に平行する方向の未分割の分割溝9本に沿って基板をさらに分割し、最後に、キャビティーの短辺に平行する方向の分割溝について、全ての分割溝8本に沿って分割する工程を実行して小片にすることも可能である。
【0043】
なお、小片の形状や、小片の有するキャビティーの形状によっては、一方向のみでなく二方向において、それぞれ、分割溝を1本置きに未分割の状態で残すように基板を分割溝に沿って分割した後、前記未分割の分割溝に沿って基板をさらに分割する方法をとってもよい。この場合も分割装置は、本発明の基板の分割装置を用いる。
ここまで、本発明の基板の分割方法について、キャビティー付き小片を得る際の基板の分割方法を例にして説明したが、本発明の基板の分割方法はキャビティーを有さない小片のための基板の分割にも、上記同様に適用可能である。
【0044】
本発明の基板の分割装置を用いれば、分割溝に押圧力が十分に与えられ基板を小片に確実に分割することができる。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーの壁を破損させることなく分割することができる。この分割装置を用いた本発明の基板の分割方法によれば、分割溝に押圧力が十分に与えられ基板を小片に確実に分割することができる。また、小片がキャビティーを有する場合には、キャビティーの壁を破損させることなく分割することができる。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
上記図1に示す分割装置を用いて、セラミックス基板(低温焼成セラミック基板)の分割を行った。なお、用いた基板は図2(I)に示される基板と同様であり、この基板の小片20個分を分割装置に、押圧部と反対側に分割溝がくるように横一列に設置した。設置された基板は、送り出し手段により順次、分割位置まで搬送され、分割位置で押圧部の下動によって小片に分割された。分割は問題なく行われた。この搬送・分割を繰返し行い、上記小片20個分の基板から20個の小片を得た。
なお、基板における小片単位のサイズは、幅(a):0.8mm、長さ:3.8mm、高さ(b):0.8mm((a)/(b)=1.0)であり、小片毎に有するキャビティーの形状は、幅:0.4mm、長さ:2.9mm、深さ:0.3mmであり、分割溝は基板の片面のみから焼成前に形成された深さ0.2mmのV形状溝である。
また、装置の詳細な仕様は以下の通りである。
【0047】
<装置仕様>
上側緩衝シート:4×30mm、厚さ0.04mmのセルロース系接着シート
下側緩衝シート:4×30mm、厚さ0.2mmのポリプロピレン製シート
押圧部:、直径0.8mm、長さ10mmの円筒形状、SUS304製硬質ピン
支持板:1本の逃げ溝X(最大幅:0.9mm、最大深さ:0.2mmのU字溝)を有する支持板
【0048】
<結果>
得られた小片においては、20個中15個において不良箇所(クラック、欠損、キャビティー壁の破損、分割面不良等)はなかった。また、不良箇所のない小片について、幅(a)のバラツキは0.8mm±0.05mm以内であり、分割状態が良好であった。
【0049】
(比較例1)
公知のセラミック基板分割機(基本構造が、特許第3031384号の実施例1、図1〜図4に記載された装置)を用いて、基板押さえ具を付加して、上記実施例1と同じ材質のキャビティーを有するセラミックス基板(低温焼成セラミック基板)の分割を行った。基板における小片単位のサイズ、小片毎に有するキャビティーの形状および分割溝のサイズは、上記実施例1と同様であるが、基板サイズは、幅:40mm、長さ:3.8mm、高さ:0.8mmであった。この基板を上記装置に押圧部側に分割溝がくるように設置し、分割溝に沿って順次上記小片サイズ(幅(a):0.8mm)に分割することで小片を得ようとした。支持部の傾斜により分割はできるが、端面傾斜や下端ソゲが生じ、不良が多発した。主原因は板押さえ位置が分割時にずれ易いことであった。
【0050】
<結果>
作製予定の小片数50個に対し、不良箇所なしで得られた小片基板は無かった。さらに、幅(a)のバラツキは、0.8mm±0.2mmで、製品とならないサイズのものが多かった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の基板の分割装置および分割方法は、分割面の寸法精度が要求される発光素子等の小片の分割に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1…基板の分割装置、2…分割溝、3…キャビティー、4…分割溝を有する基板、5…小片、6…上側緩衝シート、7…下側緩衝シート、8…押圧部、9…支持板、10…加圧手段、11…送り出し手段、X…逃げ溝X、Y…逃げ溝Y

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割溝により区切られた領域を設けた基板を、前記分割溝に沿って小片に分割するための基板の分割装置であって、
前記分割溝を有する基板を、上・下緩衝シートに挟持した状態で搬送する搬送機構と、搬送途中の所定位置において前記基板を分割溝に沿って割る分割機構とを有し、
前記分割機構は、上下動可能に構成され前記所定位置に搬送された前記基板を分割溝に沿って押圧可能な押圧部;および前記基板と上・下緩衝シートを挟んで前記押圧部の反対側に位置し、前記押圧部に対向するように形成された受け部としての逃げ溝Xと、前記逃げ溝Xに直交し逃げ溝Xより浅く、前記分割溝により区切られた領域の逃げ溝X方向の長さより短い幅で形成された逃げ溝Yとを有する支持部材;を具備し、
前記搬送機構によって前記上・下緩衝シートに挟持された基板を前記分割溝が押圧部と支持部材の逃げ溝Xとの間に位置する分割位置に搬送し、押圧部の下動によって、前記下側緩衝シートを介して逃げ溝Xを受け部とし、上側緩衝シートを介して基板を押圧することで、分割溝に沿って割るようにしたことを特徴とする基板の分割装置。
【請求項2】
前記分割溝に沿って分割して得られる小片が少なくとも一方の面にキャビティーを有することを特徴とする請求項1に記載の基板の分割装置。
【請求項3】
前記押圧部が、前記基板を押圧する際の基板と接触する面積について、前記キャビティー近傍においては小さくそれ以外では大きくなるように設定されてなる請求項1または2記載の基板の分割装置。
【請求項4】
前記分割溝に沿って分割して得られる小片が略直方体であり、前記小片が有する面積の小さい側の分割面における、分割方向の辺の長さ(a)とそれに直交する辺の長さ(b)の比(a)/(b)が、0.5以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板の分割装置。
【請求項5】
前記逃げ溝Xの最大深さが0.5mm以下であり、前記逃げ溝Yの最大深さが0.1mm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板の分割装置。
【請求項6】
前記搬送機構における上側緩衝シートが基板と接着されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板の分割装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板の分割装置を用いて、平面形状が矩形であり、隣り合う2辺にそれぞれ平行して一定の繰返し単位で複数の分割溝を有し、前記分割溝により区切られた各領域がキャビティーを有してもよい基板を、前記分割溝に沿って小片に分割するための基板の分割方法であって、
少なくとも一方向において、前記分割溝を1本置きに未分割の状態で残すように前記基板を分割溝に沿って分割する工程と、前記未分割の分割溝に沿って基板をさらに分割する工程とを含む基板の分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−37104(P2011−37104A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185823(P2009−185823)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】