説明

基板の接合方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置

【課題】 アクチュエータを構成する基板同士を高精度で位置決めして接合できる基板の接合方法、この接合方法を用いた液滴吐出ヘッドの製造方法、この製造方法を用いて製造された液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】 電極部8を有するガラス基板1の接合面に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15と、振動板部が形成される前のシリコン基板2に形成された第2のアライメントマークとしての凹部16とをガラス基板1の背面から可視光カメラ50を有する光学系で観測しながら位置合わせする。そしてガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合した後に、凹部16を基準としてシリコン基板2に異方性エッチングで振動板部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の接合方法、この接合方法を用いた液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填された液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドとしては、複数のノズル孔と、該ノズル孔のそれぞれに連通する複数の独立した吐出室と、吐出室の下面に形成された振動板(振動板部)と、振動板に空隙をもって対向する個別電極(電極部)とを備え、振動板と個別電極との間に電圧を印加して振動板を変形させて、ノズル孔よりインク滴を吐出させるインクジェットヘッドが知られている。この液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドの製造方法は、振動板を構成することとなる第1の基板と個別電極を備えた第2の基板とを接合した後に、第1の基板の厚みを減らして少なくとも振動板を形成する方法である(特許文献1)。
【0003】
また、このインクジェットヘッドの製造方法は、インクジェット記録装置の高速印字及び高解像度化に対応したノズルの数量増加と狭ピッチ化に伴う静電アクチュエータ(振動板とこれに所定の間隔で対向配置された電極部との構成による)の高密度化で生じた静電アクチュエータ間のクロストークを、第1の基板の厚みを減らすことで改善しようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の静電アクチュエータを有する液滴吐出ヘッドでは、隣り合う吐出室との間隔は高密度化によって非常に狭くなってきている。例えば、ノズルピッチ70μmの液滴吐出ヘッドでは、吐出室を隔てる隔壁の厚みは20〜30μmであるため、振動板を構成することとなる第1の基板と、個別電極を備えた第2の基板とを接合する場合、ミクロンオーダーの高精度な接合方法が求められている。もしも接合にズレが生ずると、振動板とこれに所定の間隔で対向配置された電極部とが平面方向にズレて、静電アクチュエータが正常に動作しない可能性がある。
【0006】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、アクチュエータを構成する基板同士を高精度で位置決めして接合できる基板の接合方法、この接合方法を用いた液滴吐出ヘッドの製造方法、この製造方法を用いて製造された液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板の接合方法は、第1の基板の少なくとも1面に第1のアライメントマークを形成する第1マーク形成工程と、シリコン基板である第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークを形成する第2マーク形成工程と、第1のアライメントマークと第2のアライメントマークと位置合わせして、第1の基板と第2の基板との位置調整をするアライメント工程と、位置調整された第1の基板と第2の基板とを接合する接合工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1マーク形成工程で形成された第1のアライメントマークと第2マーク形成工程で形成された第2のアライメントマークとを用いて第1の基板と第2の基板とをアライメント工程で位置合わせして、接合されるため、高い位置精度で第1の基板と第2の基板とを接合することができる。
【0009】
この場合、第1の基板はガラス基板であって、第1の基板と第2の基板とを陽極接合することを特徴とする。これによれば、ガラス基板である第1の基板とシリコン基板である第2の基板とを高い位置精度で陽極接合することができる。
【0010】
またこの場合、第2マーク形成工程では、第2の基板に平行四辺形または台形状の第2のアライメントマークを異方性エッチングによって形成することが好ましい。これによれば、第2のアライメントマークは、シリコン基板である第2の基板に平行四辺形または台形状に異方性エッチングで形成されるため、形状が安定した第2のアライメントマークとすることができ、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0011】
またこの場合、第1マーク形成工程では、第1の基板の中心に対して略点対称な位置に第1のアライメントマークを形成することが好ましい。これによれば、第1マーク形成工程において、第1のアライメントマークは、第1の基板の中心に対して略点対称な位置に形成されるため、アライメント工程において、第1の基板と第2の基板とが回転方向にずれていても容易にずれ方向を認識して修正することができる。
【0012】
またこの場合、アライメント工程では、第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとをそれぞれ撮像して一方のアライメントマークを画像として記憶し、記憶された第1のアライメントマークの画像と第2のアライメントマークの画像とを重ねるように第1の基板と第2の基板とを相対移動させることによって位置合わせすることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、アライメント工程において、第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを同時に認識することができない場合でも、それぞれのアライメントマークを撮像して一方のアライメントマークを画像として記憶し、この画像を重ねるように第1の基板と第2の基板とを相対移動させることによって、第1の基板と第2の基板とを正確に位置合わせすることができる。
【0014】
またこの場合、アライメント工程は、第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを、第1の基板の接合面に対して反対面側から観測しながら位置合わせすることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1の基板は、透明なガラス基板であるため、アライメント工程では、第1の基板の接合面に対して反対面側から第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを第1の基板を透かして観測しながら位置合わせすることができる。そして、接合工程で第1の基板と第2の基板とをより高い精度で接合することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、少なくとも、アクチュエータを構成する第1の基板と、少なくとも1面に液体が充填される吐出室となる流路を有する第2の基板と、吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、アクチュエータにより吐出室に充填された液体を加圧してノズルから液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、上記発明の基板の接合方法を用いて第1の基板と第2の基板とを接合することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、アクチュエータを構成する第1の基板と少なくとも1面に液体が充填される吐出室となる流路を有する第2の基板とを上記発明の基板の接合方法を用いて接合するため、アクチュエータと吐出室となる流路とが高い位置精度で位置合わせされ、接合された液滴吐出ヘッドを製造することができる。ゆえにアクチュエータと流路との位置ずれによる歩留まり低下を改善して、高い歩留まりで液滴吐出ヘッドを製造することができる。
【0018】
また本発明の他の液滴吐出ヘッドの製造方法は、電極部を有する第1の基板と、吐出室の一面を構成する振動板部を有する第2の基板と、吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、振動板部と、この振動板部に所定の間隔を置いて対向配置された電極部とからなる電気機械変換素子を有するアクチュエータにより振動板部を変位させて、液体を収容した吐出室の容積を変化させることによりノズルから液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、上記発明の基板の接合方法を用いて第1の基板と第2の基板とを接合することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電極部を有する第1の基板と振動板部を有する第2の基板とは、上記発明の基板の接合方法を用いて接合されるため、電極部と振動板部とが高い位置精度で位置合わせされ、接合された液滴吐出ヘッドを製造することができる。ゆえに電極部と振動板部との位置ずれによる歩留まり低下を改善して、高い歩留まりで液滴吐出ヘッドを製造することができる。
【0020】
本発明の液滴吐出ヘッドは、電極部を有する第1の基板と、吐出室の一面を構成する振動板部を有する第2の基板と、吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、振動板部と、この振動板部に所定の間隔を置いて対向配置された電極部とからなる電気機械変換素子を有するアクチュエータにより振動板部を変位させて、液体を収容した吐出室の容積を変化させることによりノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドであって、第1の基板の少なくとも1面には、第1のアライメントマークが形成されており、シリコン基板である第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークが形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、液滴吐出ヘッドを構成する第1の基板の少なくとも1面には、第1のアライメントマークが形成されており、シリコン基板である第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークが形成されているため、この第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを用いて第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合すれば、たとえ高密度に電極部および振動板部が形成されていても電極部と振動板部とを高い位置精度で対向配置させたアクチュエータを有する液滴吐出ヘッドとすることができる。ゆえに電極部と振動板部の相対位置ずれによるアクチュエータの動作不良発生が少ない、高い信頼性品質を有する液滴吐出ヘッドとすることができる。
【0022】
この場合、第1のアライメントマークは、第2の基板と接合する第1の基板の接合面に形成されていることが好ましい。これによれば、電極部を有する第1の基板の第1のアライメントマークは、振動板部を有する第2の基板との接合面に形成されているため、この第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを用いて第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合すれば、電極部と振動板部とをより高い位置精度で対向配置させることができる。
【0023】
またこの場合、第1アライメントマークは、第1の基板の中心に対して略点対称な位置で第2の基板との接合面に形成されていることが好ましい。これによれば、第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを用いて第1の基板と第2の基板とを位置合わせする際に、第1アライメントマークは、第1の基板の中心に対して略点対称な位置で第2の基板との接合面に形成されているため、第1の基板と第2の基板とが回転方向にずれていてもずれ方向を容易に認識して位置修正することができる。ゆえに電極部と振動板部とを回転方向のずれが少ない状態で接合した液滴吐出ヘッドとすることができる。
【0024】
またこの場合、第2のアライメントマークは、第1の基板と接合する第2の基板の接合面に形成されていることが好ましい。振動板部を有する第2の基板の第2のアライメントマークは、電極部を有する第1の基板との接合面側に形成されているため、この第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを用いて第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合すれば、電極部と振動板部とをより高い位置精度で対向配置させることができる。
【0025】
またこの場合、第2のアライメントマークは、第1の基板と接合する第2の基板の接合面に対する反対面に形成してもよい。また、第1の基板と接合する前記第2の基板の接合面及び反対面に形成してもよい。これによれば、第2のアライメントマークは、第1の基板と接合する第2の基板の接合面に対する反対面に形成されている。または、第1の基板と接合する前記第2の基板の接合面及び反対面の両方に形成されているため、不透明なシリコン基板である第2の基板の第1の基板との接合面に対して反対面に形成された第2のアライメントマークは可視光で容易に認識することができ、第1の基板と第2の基板とを精度よく位置合わせして接合することができる。
【0026】
またこの場合、第2のアライメントマークは、平行四辺形または台形状となるように第2の基板に異方性エッチングによって形成されていることが好ましい。これによれば、異方性エッチングで平行四辺形または台形状となるように形成された第2のアライメントマークは、形状が安定しているため、この第2のアライメントマークを用いて第1の基板と第2の基板とを位置合わせして接合すれば、第2の基板の振動板部と第1の基板の電極部とを高い位置精度で接合した液滴吐出ヘッドとすることができる。
【0027】
またこの場合、第1のアライメントマークは、電極部の形成領域外に形成され、第2のアライメントマークは、振動板部の形成領域外に形成されていることが好ましい。これによれば、たとえ電極部および振動板部が高密度に形成されていても、第1のアライメントマークは電極部の形成領域外に、第2のアライメントマークは振動板部の形成領域外に形成されているため、それぞれのアライメントマークを容易に見つけ出して認識し、位置合わせすることができる。
【0028】
本発明の液滴吐出装置は、上記発明の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。これによれば、電極部および振動板部が高密度に形成されていても、電極部と振動板部の相対位置ずれによるアクチュエータの動作不良発生が少ない、高い信頼性品質を有する液滴吐出ヘッドが搭載されているため、高い品質特性を有する液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
まず本発明の一実施形態である液滴吐出ヘッドについて図1〜図3に基づいて説明する。図1は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略分解斜視図である。図2は、図1の各基板が積層された液滴吐出ヘッドの概略断面図である。図2(a)は全体の概略断面図、同図(b)は等電位点の接合状態を示す概略断面図である。
【0030】
図1に示すように本実施形態の液滴吐出ヘッド10は、電極部8を有する第1の基板としてのガラス基板1と吐出室5の一面を構成する振動板部4を有する第2の基板としてのシリコン基板2とノズル12を有する第3の基板としてのノズルプレート3が積層された三層構造となっている。
【0031】
そして液滴吐出ヘッド10は、図2に示すように振動板部4と振動板部4に所定の間隔Gで対向配置された電極部8とからなる電気機械変換素子19を有する静電アクチュエータ20によって振動板部4を変位させて、液体(インク)を収容した吐出室5の容積を変化させることにより、ノズル12から液体(インク)を液滴として吐出するものである。したがって、以降インクジェットヘッド10として説明する。また、図1に示すようにインクジェットヘッド10には、ノズル12に連通する吐出室5と静電アクチュエータ20とが、複数のノズル12に対応して各基板に複数区画形成されている。
【0032】
第1の基板としてのガラス基板1は、厚みがおよそ1mmのホウ珪酸系の耐熱硬質硝子を用いている。図1に示すようにガラス基板1には、電気機械変換素子19を構成する電極部8とこれに繋がる端子部11が凹部9の底面にITO(Indium Tin Oxide)をスパッタ法で厚みおよそ0.1μmに成膜して形成されている。
【0033】
また後にガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する際に、振動板部4とITOからなる電極部8との間で放電が起こることを防ぐために振動板部4と電極部8とを接合時に等電位とする等電位点25が、成膜されたITOを用いてガラス基板1の接合面に電極部8と並列して形成されている。
【0034】
第2の基板としてのシリコン基板2は、厚みおよそ140μmの面方位(110)の単結晶シリコン基板を用いている。図1または図2に示すようにシリコン基板2には、振動板部4を一構成面とする吐出室5と吐出室5にインク(液体)を供給するための共通インクキャビティであるリザーバ7とが異方性エッチングによって形成されている。
【0035】
またリザーバ7は、インクを外部から供給するためにガラス基板1に設けられたインク供給孔13と連通するように底面の一部が穿孔されている。
【0036】
そして、図2に示すようにガラス基板1とシリコン基板2とを接合し、振動板部4とこれに所定の間隔Gで対向配置された電極部8との間に形成される隙間の一部を封止剤26で封止して振動室18を密閉状態に形成する。この際に、封止剤26を各振動室18に行き渡らせるため、ガラス基板1に設けられた封止剤注入孔24に連通するように封止溝23がシリコン基板2の接合面に異方性エッチングによって形成されている。
【0037】
第3の基板としてのノズルプレート3は、厚みがおよそ180μmのシリコンの薄板を用いている。図1および図2に示すようにノズルプレート3には、吐出室5と連通するノズル12が複数形成されている。また吐出室5にリザーバ7からインクを供給するための流路であるオリフィス6を構成するための凹部6aが異方性エッチングにより形成されている。尚、ノズルプレート3は、第1の基板と同様にホウ珪酸系の硬質ガラスやステンレス等の鋼板、プラスチック等の樹脂板等も材料として用いることができる。
【0038】
本実施形態のインクジェットヘッド10は、振動板部4が所望の厚さとなるようにシリコン基板2の接合面側にあらかじめボロンドープ層4aを形成する。ボロンドープ層4aは、高濃度(約5×1019atoms・cm-3以上)のボロンドープ領域を有しており、シリコン基板2をアルカリ性水溶液で異方性エッチングすると、このボロンドープ層4aでエッチングがストップする。このエッチングストップ技術を用いて振動板部4は形成されている。
【0039】
また静電アクチュエータ20を駆動したときに、振動板部4と電極部8とが当接して電気的に短絡しないように、シリコン基板2の接合面には、絶縁膜14が形成されている。この絶縁膜14は、TEOS(Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane)をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚みおよそ0.1μmに成膜して形成されている。
【0040】
したがって、先に説明した等電位点25をボロンドープ層4aに接触させ電極部8と等電位とするには、図2(b)に示すように、電極部8および等電位点25が形成されたガラス基板1と振動板部4が形成されたシリコン基板2を接合する前に、シリコン基板2の接合面に形成された絶縁膜14は、等電位点25がボロンドープ層4aと接することができるように部分的にエッチングして取り除かれる。
【0041】
図3は、図1の第1の基板の概略平面図である。図3に示すように等電位点25は、ガラス基板1の電極部8と並列するように接合面に形成されている。また等電位点25は、ガラス基板1とシリコン基板2とノズルプレート3とがそれぞれ接合された後に、1つのインクジェットヘッド10を取り出すために切断するダイシングライン33の右側で端子部11を経由して複数の電極部8と繋がっている。ゆえにダイシングライン33で切断すると、等電位点25は複数の電極部8と分断される。また複数の電極部8の間も分断されて個別の電極部8となる。
【0042】
上記のようなインクジェットヘッド10を駆動する方法は、図2(a)に示すように電極部8の端子部11とシリコン基板2に設けられた共通電極21との間に発振回路22を接続する。そして発振回路22から例えば24kHzで電極部8と共通電極21との間に駆動電圧30Vの電圧パルスを印加する。すると電極部8が正に帯電した場合、電極部8に対向する振動板部4は負に帯電して振動板部4は静電気力により電極部8に引き付けられる。電圧パルスの印加が解除され蓄えられた電荷が放電されると振動板部4は元の位置に戻る。このような振動板部4の変位により吐出室5の容積が変化して充填されたインクが加圧されノズル12から液滴として吐出される。
【0043】
尚、使用されるインクは、水、アルコール等の主溶媒にエチレングリコール等の界面活性剤と、染料または顔料とを溶解または分散させることにより調整される。さらに、インクジェットヘッド10にヒーター等を付設すれば、ホットメルトタイプのインクも使用できる。また本実施形態のインクジェットヘッド10は、フェイスインクジェット方式であるが、インクを吐出するノズル12をシリコン基板2またはノズルプレート3の端面に開口させたエッジインクジェット方式であってもよい。
【0044】
次にインクジェットヘッド10の製造方法について、図4〜図8に基づいて説明する。本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法は、第2の基板としてのシリコン基板2と接合する第1の基板としてのガラス基板1の少なくとも1面に第1のアライメントマークを形成する第1マーク形成工程と、第1マーク形成工程で形成された第1のアライメントマークに対応する位置でシリコン基板2の少なくとも1面に第2のアライメントマークを形成する第2マーク形成工程とを備えている。またガラス基板1とシリコン基板2とを第1のアライメントマークと第2のアライメントマークとを用いて位置合わせし陽極接合する接合工程とを備えている。さらに接合工程は、電極部8が形成されたガラス基板1と振動板部4が形成される前のシリコン基板2とを陽極接合するものである。
【0045】
図4は、インクジェットヘッドの製造方法を示すフローチャートである。図5は、図4のフローチャートに対応した各基板の加工状態を示す概略断面図である。詳しくは、図5.1は、(a)〜(f)までの概略断面図、図5.2は(g)〜(k)までの概略断面図、図5.3は(l)〜(p)までの概略断面図である。
【0046】
図4のステップS1は、ガラス基板1に電極部8及び等電位点25並びに第1のアライメントマークとしての凹部15を形成する工程である。図5.1(a)に示すようにガラス基板1は、まず厚み1mmのホウ珪酸系硬質ガラスに凹部9及び凹部15を深さおよそ0.3μmとなるようにエッチングする。エッチング方法は、ガラス基板1のエッチング面以外の表面をCr−Auでマスクし、常温でフッ化アンモニウムと過酸化水素水の混合液にガラス基板1を浸漬する方法で行う。
【0047】
そして凹部9,15が形成された接合面1aに電極部となるITO膜をスパッタ法でおよそ0.1μmの厚みに成膜し、フォトリソグラフィ方式で電極部8を対応する凹部9の底面に形成すると共に、等電位点25を接合面1aに形成する。尚、等電位点25の形状は、本実施形態では線状となっているが、ボロンドープ層4aと接することができればどのような形状であってもよい。
【0048】
さらにガラス基板1は、接合面1a側からダイヤモンドドリル等を用いた切削方法で、インク供給孔13と封止剤注入孔24とを穿孔する。ただし、ガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合した後に行う加工工程で使用する薬剤や異物等が振動室18に侵入しないようにガラス基板1を貫通させない位置で穿孔を止めておく。そしてステップS2へ進む。
【0049】
ステップS2は、シリコン基板2に第2のアライメントマークとしての凹部16をガラス基板1との接合面2aに、同じく第2のアライメントマークとしての凹部17を凹部16に対して反対側の接合面2bに形成する工程である。図5.1(b)に示すようにシリコン基板2は、酸素濃度の低い面方位(110)の単結晶シリコン基板の両面を鏡面研磨して得られたものであり、厚みはおよそ525μmである。このシリコン基板2を水蒸気雰囲気中にて温度1075℃で4時間放置することにより、表面に厚さおよそ1μmのシリコン酸化膜27を形成する。
【0050】
そして両面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ方式によりシリコン酸化膜27をフッ酸水溶液に浸漬エッチングして凹部16,17に対応したパターンを形成する。そしてステップS3へ進む。
【0051】
ステップS3は、図5.1(c)に示すようにステップS2でシリコン基板2に形成されたシリコン酸化膜27のパターンをマスクとし第2のアライメントマークとしての凹部16,17を深さおよそ10μmにエッチングする工程である。このときのエッチング方法は、シリコン基板2を35wt%の水酸化カリウム水溶液に浸漬して異方性エッチングする。そしてステップS4へ進む。
【0052】
ステップS4は、ステップS3で形成された第2のアライメントマークとしての凹部16(または凹部17)を基準として、シリコン基板2のガラス基板1との接合面2aに封止溝23を形成する工程である。図5.1(d)に示すように封止溝23は、接合面2aにフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ方式でまずフッ酸水溶液を用いてシリコン酸化膜27をエッチングする。次にシリコン基板2を35wt%の水酸化カリウム水溶液に浸漬して深さおよそ100μm異方性エッチングする。そしてステップS5へ進む。
【0053】
ステップS5は、シリコン基板2の両面に形成されたシリコン酸化膜27を除去する工程である。図5.1(e)に示すようにシリコン基板2は、次のステップS6でボロンドープ層4aを形成するが、その際に表面にシリコン酸化膜27が存在するとボロンが拡散しにくいためこれを除去しておく。この場合、フッ酸水溶液にシリコン基板2を浸漬して除去する。そしてステップS6へ進む。
【0054】
ステップS6は、シリコン基板2にボロンドープ層4aを形成する工程である。シリコン基板2は、まずボロンドープ層4aを形成する接合面2aに付着している微小異物や金属等を除去して清浄化する洗浄を行う。この場合は、アンモニア水と過酸化水素水の混合液による洗浄および塩酸と過酸化水素水の混合液による洗浄を行っている。
【0055】
次に清浄化されたシリコン基板2をB23を主成分とする固体の拡散源を有する拡散炉内に接合面2aと拡散源が対向するようにセットし、炉内を窒素雰囲気にして温度1050℃で7時間保持する。これによって、図5.1(f)に示すようにボロンをシリコン基板2の接合面2aに拡散させボロンドープ層4aを形成する。
【0056】
ステップS6において、拡散炉内にシリコン基板2を投入するときと、取り出すときの温度は、いずれも800℃とすることが好ましい。これによれば、シリコン基板2に酸素欠陥が生じやすい600〜800℃の温度領域をすばやく通過させて酸素欠陥が発生することを防止することができる。酸素欠陥が生じるとその部分に穴が開くことがある。またシリコン基板2を異方性エッチングする際に酸素欠陥部でエッチング異常が発生し易い。さらには、ボロンドープ層4aの表面に形成されたボロン化合物(SiB6)(図示せず)は除去することが好ましい。これによれば、このボロン化合物は、次のステップS7で形成される絶縁膜14の密着性を阻害することがわかっている。したがって、シリコン基板2を酸素及び水蒸気雰囲気で600℃に加熱し1時間半放置してボロン化合物を酸化し、B23+SiO2としてからフッ酸水溶液でエッチングして除去する。そしてステップS7へ進む。
【0057】
ステップS7は、図5.2(g)に示すようにボロンドープ層4aの表面に絶縁膜14を形成する工程である。絶縁膜14は、TEOSをプラズマCVD法により厚みおよそ0.1μmに成膜して形成する。この場合の成膜条件は、例えば温度360℃、高周波出力250W、圧力66.7Pa(0.5Torr)、TEOSガス流量100cm3/分(100sccm)、酸素流量1000cm3/分(1000sccm)である。そしてステップS8へ進む。
【0058】
ステップS8は、ステップS1でガラス基板1に形成された等電位点25がボロンドープ層4aと接することができるように前段のステップS7で形成された絶縁膜14の一部を図5.2(h)に示すようにエッチングして取り除く工程である。絶縁膜14の表面にフォトレジストを塗布しパターニングして、フッ酸水溶液でエッチングすることによって、開口部2cを形成する。そしてステップS9へ進む。尚、図5.2(h)は、等電位点25に対応した位置のシリコン基板2の概略断面図である。
【0059】
ステップS9は、ガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する接合工程である。この接合工程は、第1のアライメントマークとしての凹部15と第2のアライメントマークとしての凹部16または凹部17とを用いてガラス基板1とシリコン基板2とを位置調整するアライメント工程を備えており、アライメント工程については、詳しく後述する。
【0060】
ステップS9の陽極接合方法は、アライメント工程で位置合わせが終了したガラス基板1とシリコン基板2とを温度360℃で30分加熱した後に、ガラス基板1を負極とし、シリコン基板2を正極として800Vの電圧を5分間印加して接合する。このとき、電圧の昇圧レートを速くし過ぎると、等電位点25に大電流が流れ、ITO配線が損傷する惧れがあるため、電流が10mAを越さないようにして接合することが好ましい。そしてステップS10へ進む。
【0061】
ステップS10は、図5.2(j)に示すようにシリコン基板2の表面をシリコン基板2の厚みがおよそ150μmとなるように研削する工程である。また研削によってシリコン基板2の表面に組成が脆い加工変質層が現れるため、この加工変質層を32wt%の水酸化カリウム水溶液でおよそ10μmエッチングする。これによってシリコン基板2の厚みは、およそ140μmとなる。そしてステップS11へ進む。
【0062】
ステップS11は、図5.2(k)に示すように加工変質層が取り除かれたシリコン基板2の表面にTEOS膜28を形成する工程である。TEOS膜28は、次のステップS12でシリコン基板2を異方性エッチングする際のエッチングマスクとする。TEOS膜28の成膜条件は、例えば温度360℃、高周波出力700W、圧力33.3Pa(0.25Torr)、TEOSガス流量100cm3/分(100sccm)、酸素流量1000cm3/分(1000sccm)である。これにより厚さおよそ1.5μmのTEOS膜28を形成する。そしてステップS12へ進む。
【0063】
ステップS12は、図5.3(l)に示すようにシリコン基板2に振動板部4と吐出室5を構成する凹部29及びリザーバ7を構成する凹部30、電極取り出し口32(同図(m)参照)を形成するための凹部31を異方性エッチングで形成する工程である。この場合、キャビティエッチング工程と呼ぶ。
【0064】
まず、TEOS膜28の表面にフォトリソグラフィ方式で各凹部29,30,31に対応するレジストパターンを形成する。そして、TEOS膜28をフッ酸水溶液でエッチングしてエッチングマスクパターンを形成する。このとき、凹部30に対応するTEOS膜28の面にはTEOS膜28が厚さおよそ0.3μm残るようにエッチングする。
【0065】
次に接合されたガラス基板1とシリコン基板2とを35wt%の水酸化カリウム水溶液に浸漬し、凹部29の底面部の厚みがおよそ10μmとなるように異方性エッチングを行う。そして今度は、3wt%の水酸化カリウム水溶液に浸漬して、ボロンドープ層4aでエッチングがストップするまで異方性エッチングを行う。このように濃度の異なる2段階の異方性エッチングを行うことによって、エッチング面荒れを抑制して厚みが0.8±0.05μm以下の精度を有する振動板部4が形成される。また凹部30は、TEOS膜28が0.3μm残されていたことにより、異方性エッチングが遅く始まって厚みおよそ40μmを残して形成される。振動板部4の厚み精度が確保されることにより、静電アクチュエータ20としての特性が安定する。すなわちインクジェットヘッド10のインク吐出特性を安定させることができる。そしてステップS13へ進む。
【0066】
ステップS13は、図5.3(m)に示すようにシリコン基板2に電極取り出し口32を形成する工程である。まず接合されたガラス基板1とシリコン基板2とをフッ酸水溶液に浸漬してシリコン基板2のTEOS膜28をエッチング除去する。次に電極取り出し口32に対応する部分以外をマスキングしてRIEドライエッチングによって開口させる。このときのドライエッチング条件は、例えばRFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4流量30cm3/分(30sccm)で50分間エッチングする。そしてステップS14へ進む。
【0067】
ステップS14は、図5.3(n)に示すように振動室18を封止剤26を用いて密閉封止する工程である。またシリコン基板2に共通電極21を形成する工程である。まずガラス基板1の接合面1aの反対面から未貫通となっているインク供給孔13と封止剤注入孔24とをレーザー加工により貫通させる。次に貫通した封止剤注入孔24から封止剤26を注入し封止溝23を通って振動板部4と電極部8とが対向配置された各振動室18に封止剤26を充填する。これによって各振動室18は密閉状態となる。
【0068】
そしてシリコン基板2の接合面2bに開口したキャビティ部をマスキングしてクロム−金(Cr−Au)または白金(Pt)をスパッタ法で成膜し共通電極21を形成する。そしてステップS15へ進む。
【0069】
ステップS15は、図5.3(o)に示すようにシリコン基板2の接合面2bにノズルプレート3を接合する接合工程である。ノズルプレート3は、あらかじめ複数のノズル12とオリフィス6を構成することとなる凹部6aが異方性エッチングし形成されている。ノズル12や凹部6aは、ドライエッチングでも形成することができる。
【0070】
またノズルプレート3をシリコン基板2に接合する前に、リザーバ7となる凹部30の底面にインク供給孔13に連通する孔を切削またはレーザーによって形成する。
【0071】
そしてシリコン基板2とノズルプレート3の接合は、エポキシ樹脂等の熱硬化型樹脂を用いて接着している。またこの場合、シリコン基板2の接合面2aに形成した第2のアライメントマークとしての凹部16に対応して、ノズルプレート3の接着面に対して反対面にアライメントマーク(図示省略)を異方性エッチングで形成し、シリコン基板2とノズルプレート3を位置合わせしている。そしてステップS16へ進む。
【0072】
ステップS16は、ダイシングによる切断工程である。本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法は、ウェハ状の各基板(ガラス基板1、シリコン基板2、ノズルプレート3)を用いるものであり、複数のノズル12に対応する静電アクチュエータ20を1単位として、複数個分のインクジェットヘッド10が形成される形成領域がウェハ内に区画配置されている。よって図5.3(p)に示すようにダイシングライン33(図3参照)で切断し1つのインクジェットヘッド10を取り出す。以上の工程を経てインクジェットヘッド10の製造工程が終了する。尚、この後、発振回路22(図2参照)を接続する実装工程やプリンタ等の記録装置に組み込む組立工程があることは言うまでもない。
【0073】
次にアライメントマークの形成方法について図6に基づいて詳しく説明する。図6(a)〜(g)は、アライメントマークの形成方法を示す概略図である。
【0074】
図6(a)は、ウェハ状の基板にアライメントマークを配置した概略平面図である。ガラス基板1及びシリコン基板2はウェハ状であって、複数のノズル12に対応する複数の静電アクチュエータ20を1単位とする複数の電極部8及び複数の振動板部4を形成する区画された複数の形成領域61をウェハ状のそれぞれの基板(ウェハ60)内に有し、アライメントマーク62は、複数の形成領域61以外のウェハ領域(形成領域外)に1組形成されている。さらにアライメントマーク62は、ウェハ60の中心に対して略点対称な位置に形成されている。
【0075】
尚、アライメントマーク62は、前述の第1のアライメントマークとしての凹部15および第2のアライメントマークとしての凹部16(または凹部17)を総称して形成位置を示すものである。またアライメントマーク62を形成領域61毎に少なくとも1組形成してもよい。これによれば、完成したインクジェットヘッド10毎にアライメントマーク62が存在することになり、ガラス基板1とシリコン基板2の接合状態をインクジェットヘッド10毎に確認することができる。
【0076】
図6(b)〜(d)はシリコン基板に形成されるアライメントマークの形状を示す概略平面図である。単結晶シリコン基板である第2の基板としてのシリコン基板2には、面方位(110)面に平面形状が平行四辺形または台形状の第2のアライメントマークとしての凹部16,17が異方性エッチングで形成されている。例えば図6(b)のような所定の角度を有する平行四辺形であればエッチングは、(111)面に沿って進行し、想像線で示す稜が現れた深さでストップしてそれ以上進まない。よって、第2のアライメントマークとしての凹部16,17は安定した形状の平行四辺形となる。同図(c)の平行四辺形、同図(d)の台形も同様である。
【0077】
図6(e)は、ガラス基板とシリコン基板とを位置合わせする際のアライメントマークの相対位置関係を示す概略平面図である。第1の基板としてのガラス基板1の接合面に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15と第2の基板としてのシリコン基板2に形成された第2のアライメントマークとしての凹部16(または凹部17)とが正しく位置合わせされたときには、平面視で所定の間隔を置いて位置している。例えば図6(e)に示すように凹部15,16を平行四辺形として重なり合うようにすれば、所定の間隔は8μmとなりミクロンオーダーの位置合わせが可能となる。
【0078】
図6(f)は、図6(e)のA−A線で切断したアライメントマークを示す概略断面図である。図6(e)に示したガラス基板1に形成された凹部15とシリコン基板2に形成された凹部16とが接合面で相対した場合は、図6(f)に示す状態となり、凹部16は深さ方向に30度の角度を持って異方性エッチングがストップした稜16aが現れる。
【0079】
図6(g)は、他のアライメントマークの配置を示す概略平面図である。例えば図6(g)に示すようにガラス基板1の接合面に4つの凹部15を配置し、平面視で凹部15が配置された中央部に所定の間隔を置いて位置するようにシリコン基板2に凹部16を形成してもよい。このようなアライメントマークの配置方法は、アライメント工程で用いる光学系の視野の広さや視認し易いアライメントマークの大きさなどを考慮して適宜配置すればよい。
【0080】
次に上記のようなアライメントマークを用いて位置合わせを行うアライメント工程について図7に基づいて説明する。本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法において、第1の基板としてのガラス基板1と振動板部4が形成される前の第2の基板としてのシリコン基板2とを陽極接合する接合工程は、ガラス基板1に形成された第1のアライメントマークとシリコン基板2に形成された第2のアライメントマークとを用いてガラス基板1とシリコン基板2とを位置調整するアライメント工程を有している。図7(a)〜(e)は、ガラス基板とシリコン基板のアライメント方法を示す概略断面図である。このアライメント方法は、可視光カメラ50を有する光学系でアライメントマークを観測して認識する方法である。
【0081】
その1つは、図7(a)に示すように、まず可視光カメラ50をガラス基板1の接合面の上方に位置させて、ガラス基板1に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15を撮像して画像として記憶する。次に図7(b)に示すように、ガラス基板1の接合面に、接合面を所定の間隔を置いて対向配置させる状態にシリコン基板2を配置し、シリコン基板2のガラス基板1との接合面に対して反対面に形成された第2のアライメントマークとしての凹部17を撮像して画像として逐時記憶する。先に記憶した凹部15の画像と凹部17の画像とを重ね合わせるようにガラス基板1とシリコン基板2とを平面方向に相対移動させることにより位置合わせする。そして図7(c)に示すように、位置合わせされたガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する。その後、シリコン基板2に凹部17を基準として振動板部4をエッチング形成すれば、所定の位置で振動板部4と電極部8とを対向配置させることができる。この場合、ガラス基板1との接合面側に形成されたシリコン基板2の凹部16は無くしてもよい。
【0082】
また他の1つは、図7(d)に示すように、ガラス基板1とシリコン基板2との接合面で相対する第1のアライメントマークとしての凹部15と第2のアライメントマークとしての凹部16とを、ガラス基板1の接合面に対して反対面側から可視光カメラ50を有する光学系で撮像して認識し位置合わせを行う方法である。この場合は、ガラス基板1とシリコン基板2とを所定の間隔で対向配置したままで、透明なガラス基板1側からこのガラス基板1を透かして、接合面に位置する凹部15と凹部16とを撮像して画像として逐時記憶しながら位置合わせすることが可能である。そして図7(e)に示すように、位置合わせされたガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する。その後、シリコン基板2に凹部16を基準として振動板部4をエッチング形成すれば、所定の位置で振動板部4と電極部8とを対向配置させることができる。この場合、シリコン基板2の凹部17は無くしてもよい。
【0083】
図8(a)〜(c)は、赤外光を用いたアライメント方法を示す概略断面図である。上記の可視光を用いる方法とは別に赤外光を用いる方法である。シリコン基板2は、不透明な基板であるため、シリコン基板2のガラス基板1との接合面に形成された第2のアライメントマークとしての凹部16を認識するためにIR(赤外)カメラ51を有する光学系を用いる。図8(a)に示すように、まずガラス基板1とシリコン基板2とを対向配置し、シリコン基板2を介してガラス基板1に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15を撮像して画像として逐時記憶する。続いて図8(b)に示すように、シリコン基板2の接合面に形成された第2のアライメントマークとしての凹部16を撮像して画像として逐時記憶する。そして先に記憶した凹部15の画像に後から記憶した凹部16の画像を重ね合わせるようにガラス基板1とシリコン基板2とを平面方向に相対移動させることによって位置合わせを行う。これによれば、ガラス基板1とシリコン基板2とを対向配置させた状態で凹部15と凹部16とを観測しながら位置合わせすることができる。そして図8(c)に示すように位置合わせされたガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する。その後、シリコン基板2に凹部16を基準として振動板部4をエッチング形成すれば、所定の位置で振動板部4と電極部8とを対向配置させることができる。この場合、シリコン基板2の凹部17は無くすことができる。
【0084】
尚、上記アライメント工程は、モニタをオペレータが観察して行う方法であるが、画像処理により2つのアライメントマークが一致あるいは所定の相対位置にあることを認識して第1の基板と第2の基板とを位置合わせするようにしてもよい。
【0085】
また、上記のアライメントマークの形成方法およびこの方法で形成されたアライメントマークを有する単結晶シリコンからなるシリコン基板を接合する方法は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術として適用することができる。
【0086】
次に本発明の一実施形態であるインクジェットプリンタについて図9に基づいて説明する。本実施形態の液滴吐出装置としてのインクジェットプリンタ400は、液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド10を搭載したものである。
【0087】
図9は、インクジェットプリンタの構造を示す概略図である。詳しくは、インクジェットヘッド10が搭載されたキャリッジ406の走査方向から見た概略図である。
【0088】
図9に示すとおり、インクジェットプリンタ400は、記録紙401を搬送するための送りローラ402,405と、送りローラ402,405に対向配置された記録紙401を押さえる押さえローラ403,404と、インクジェットヘッド10と、インク供給管41と、インクタンク部材409とで構成されている。
【0089】
インクジェットヘッド10は、ノズル面44が記録紙401の印字面と所定の間隔で平行となるようにベース部材43を介してキャリッジ406に固定されている。またガラス面45にインクタンク部材409に繋がったインク供給管41が接合されている。
【0090】
インクジェットヘッド10を移動させるキャリッジ406は、キャリッジ軸408に軸支され、図示しない駆動機構と連結してキャリッジ406を移動させるベルト407を有している。
【0091】
このインクジェットプリンタ400は、フェイスインクジェット方式のインクジェットヘッド10を搭載しており、インクジェットヘッド10のガラス面45に接合したインク供給管41を通じてインクタンク部材409からインクが供給される。すなわちインク供給方向Kとインク吐出方向Lが同一方向となるように構成されている。したがって、インクジェットヘッド10が駆動されると、インク液滴42がノズル面44と平行に位置した記録紙401に吐出され、キャリッジ406の走査と記録紙401の送りによって印刷される。
【0092】
本実施形態の効果は、以下のとおりである。
(1)インクジェットヘッド10の製造方法は、電極部8を有するガラス基板1に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15と振動板部4が形成される前のシリコン基板2に形成された第2のアライメントマークとしての凹部16(または凹部17)とを用いてガラス基板1とシリコン基板2とを位置決めし、ガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する。その後、凹部16(または凹部17)を基準としてシリコン基板2に振動板部4を形成するため、振動板部4と電極部8とが高い精度で所定の位置に対向配置されたインクジェットヘッド10を製造することができる。
(2)振動板部4と電極部8とが高い精度で所定の位置に対向配置されるように位置決めされるため、ガラス基板1とシリコン基板2とを陽極接合する際に、ガラス基板1に形成された等電位点25が確実にシリコン基板2のボロンドープ層4aと接触し、振動板部4と電極部8との間で放電が起こることなく陽極接合され、電極部8の損傷等の接合不良を防ぐことができる。
(3)振動板部4と電極部8とがミクロンオーダーの高い精度で所定の位置に対向配置されるように位置決め可能で、且つガラス基板1とシリコン基板2とが陽極接合されるため、振動板部4とこれに対向配置された電極部8とからなる電気機械変換素子19を有する静電アクチュエータ20は、高密度に形成されていても高い接合信頼性を有して正常に動作することができる。ゆえに高密度に形成された静電アクチュエータ20を備え高い信頼性を有するインクジェットヘッド10を提供することができる。
(4)第2のアライメントマークとしての凹部16または凹部17は、シリコン基板2の面方位(110)面に平面形状で平行四辺形または台形状となるように異方性エッチングで形成される。したがってエッチングは面方位(111)に沿って進行し、30度の角度を有した深さでストップしてそれ以上進まない。ゆえに寸法バラツキが少ない安定した形状の凹部16または凹部17を形成することができる。よって凹部16または凹部17を用いた位置合わせの精度を向上させることができる。
(5)第1のアライメントマークとしての凹部15と第2のアライメントマークとしての凹部16とは、ガラス基板1とシリコン基板2とが正しく接合されたときに、平面視で所定の間隔(8μm)を置いて位置するようにガラス基板1とシリコン基板2の接合面に相対配置されているため、この間隔を確認すれば正しく位置合わせできているか容易に判別することができる。
(6)インクジェットヘッド10の製造方法は、電極部8が形成されたガラス基板1と振動板部4が形成される前のシリコン基板2(厚さ525μm)を陽極接合し、その後シリコン基板2を研削して厚さ140μmとしてから振動板部4を異方性エッチングで形成するため、初めから厚さ140μmの薄いシリコン基板2を用いて加工を行う場合に比べて、シリコン基板2の取り扱いによる破損の発生を低減することができる。ゆえに歩留まりよくインクジェットヘッド10を製造することができる。
(7)アライメントマーク62は、複数の形成領域61以外のウェハ60領域に、ウェハ60の中心に対して略点対称な位置で少なくとも1組形成されているため、アライメントマーク62の視認性がよく、且つ回転方向に位置ズレしても容易に修正方向と修正量の判別がつき易い。また形成領域61内にアライメントマーク62を配置する場合に比べて、アライメントマーク62の配置スペースを確保する必要がなく、形成領域61を効率的にウェハ60内に配置することができる。ゆえにウェハ60からのインクジェットヘッド10の取り数が低下することを防ぐことができる。
(8)アライメント工程では、可視光を用いて、ガラス基板1に形成された第1のアライメントマークとしての凹部15を撮像し画像として記憶する。そしてシリコン基板2のガラス基板1との接合面に対して反対面に形成された第2のアライメントマークとしての凹部17を撮像し画像として逐時記憶し、先に記憶した凹部15の画像と凹部17の画像とを重ね合わせることによって、第1の基板と第2の基板とを位置合わせする。ゆえにシリコン基板2は不透明であるが、正確に位置合わせすることができる。
(9)アライメント工程では、可視光を用いて、ガラス基板1とシリコン基板2との接合面で相対して位置している凹部15と凹部16とを透明なガラス基板1側からガラス基板1を透かして撮像し画像として逐時記憶しているため、この凹部15と凹部16とを同時に観測しながら位置合わせすることができる。
(10)アライメント工程では、IR(赤外光)を用いて、ガラス基板1とシリコン基板2との接合面で相対して位置している凹部15と凹部16とを不透明なシリコン基板2側から撮像し画像として逐時記憶しているため、シリコン基板2のガラス基板1との接合面に対して反対面側からこの凹部15,16とを同時に観測しながら位置合わせすることができる。
(11)アライメント工程において、IR(赤外光)を用いて各アライメントマーク(第1のアライメントマークおよび第2のアライメントマーク)を撮像する方法は、各アライメントマークが形成されている面の面荒れによる光の散乱や基板の厚み方向の光の減衰等の影響を受けやすく撮像された画像が不鮮明となる場合がある。これに対して可視光を用いて各アライメントマークを撮像して画像として認識または記憶する方法は、各基板(第1の基板,第2の基板)に形成された各アライメントマークをより鮮明に撮像することができる。ゆえにより正確に第1の基板と第2の基板とを位置合わせすることができる。
(12)インクジェットプリンタ400は、高密度に形成されていても確実に動作する静電アクチュエータ20を備えたインクジェットヘッド10を搭載しているため、高い品質特性を有するインクジェットプリンタ400を提供することができる。
【0093】
本実施形態以外の変形例は、以下のとおりである。
(変形例1)ノズルプレート3は、ウェハ状に限定されない。例えばシリコン以外の材料を用いた場合は、ウェハ状以外の形状とすることも可能である。
(変形例2)液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド10に充填する液体はインクに限定されない。例えば金属材料の微粒子を液媒体に分散した分散溶液を用いれば、これを液滴として基板(ワーク)に吐出し金属材料からなる配線パターンを形成することができる。
【0094】
本実施形態および変形例から把握される技術的思想は、以下のとおりである。
(1)電極部を有する第1の基板と振動板部を有する第2の基板とノズルを有する第3の基板とによって構成され、前記振動板部が面して位置する吐出室に充填された液体を前記振動板部と前記振動板部に所定の間隔で対向配置された前記電極部とからなる電気機械変換素子を有する静電アクチュエータで加圧し、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記第2の基板と接合する前記第1の基板の接合面に第1のアライメントマークを形成する第1マーク形成工程と、前記第1マーク形成工程で形成された前記第1のアライメントマークに対応する位置で前記第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークを形成する第2マーク形成工程と、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークとを用いて位置合わせし接合する接合工程とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法。
(2)(1)において、前記接合工程は、前記電極部が形成されたガラス基板である前記第1の基板と前記振動板部を形成する前の単結晶シリコン基板である前記第2の基板とを陽極接合する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記第2マーク形成工程は、単結晶シリコン基板である第2の基板の(110)面に平面形状が平行四辺形または台形状の第2のアライメントマークを異方性エッチングによって少なくとも1組形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれか一項において、前記第1マーク形成工程は、前記第1の基板と前記第2の基板とが正しく位置合わせされたときに、前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークとが平面視で所定の間隔を置いて位置するように前記第1の基板の接合面に前記第1のアライメントマークを少なくとも1組形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項において、前記第2マーク形成工程は、前記第2の基板に振動板部を形成する前に前記第2のアライメントマークを前記第1の基板との接合面に形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれか一項において、前記第2マーク形成工程は、前記第2の基板に振動板部を形成する前に前記第2のアライメントマークを前記第1の基板との接合面に対する反対面に形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(7)(1)〜(4)のいずれか一項において、前記第2マーク形成工程は、前記第2の基板に振動板部を形成する前に前記第2のアライメントマークを前記第1の基板との接合面及び反対面に形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(8)(1)〜(7)のいずれか一項において、前記第1の基板及び前記第2の基板はウェハ状であって、複数の前記ノズルに対応する複数の前記静電アクチュエータを1単位とする複数の前記電極部及び複数の前記振動板部を形成する区画された複数の形成領域をウェハ状のそれぞれの基板内に有し、前記第1のアライメントマーク及び前記第2のアライメントマークは、前記複数の形成領域以外のウェハ領域に形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(9)(1)〜(7)のいずれか一項において、前記第1の基板及び前記第2の基板はウェハ状であって、複数の前記ノズルに対応する複数の前記静電アクチュエータを1単位とする複数の前記電極部及び複数の前記振動板部を形成する区画された複数の形成領域をウェハ状のそれぞれの基板内に有し、前記第1マーク形成工程及び前記第2マーク形成工程は、前記第1のアライメントマーク及び前記第2のアライメントマークを前記形成領域毎に少なくとも1組形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(10)(8)または(9)において、前記第1マーク形成工程は、ウェハ状の前記第1の基板の中心に対して略点対称な位置に前記第1のアライメントマークを少なくとも1組形成し、前記第2マーク形成工程は、前記第1の基板に形成された前記第1のアライメントマークに対し相対的に同一座標となるように前記第2の基板に前記第2のアライメントマークを少なくとも1組形成する液滴吐出ヘッドの製造方法。
(11)(1)〜(5)、(7)〜(10)のいずれか一項において、前記接合工程は、前記電極部が形成されたガラス基板である前記第1の基板と前記振動板部が形成される前の単結晶シリコン基板である前記第2の基板とを所定の接合位置に位置合わせするアライメント工程を有し、前記アライメント工程は、前記第1の基板と前記第2の基板との接合面で相対する前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークとを、前記第1の基板の接合面に対して反対面側から可視光で撮像し画像として逐時記憶しながら位置合わせする液滴吐出ヘッドの製造方法。
(12)(1)〜(5)、(7)〜(10)のいずれか一項において、前記接合工程は、前記電極部が形成されたガラス基板である前記第1の基板と前記振動板部が形成される前の単結晶シリコン基板である前記第2の基板とを所定の接合位置に位置合わせするアライメント工程を有し、前記アライメント工程は、まず前記第1の基板に形成された前記第1のアライメントマークを赤外光で撮像して画像として記憶し、次に前記第1の基板の接合面の上方に配置された前記第2の基板の接合面に対して反対面に形成された前記第2のアライメントマークを前記赤外光で撮像して画像として逐時記憶して、先に記憶された前記第1のアライメントマークの前記画像と前記第2のアライメントマークの前記画像とを重ねるように前記第1の基板と前記第2の基板とを平面方向に相対移動させることによって位置合わせする液滴吐出ヘッドの製造方法。
(13)(1)〜(4)、(6)〜(10)のいずれか一項において、前記接合工程は、前記電極部が形成されたガラス基板である前記第1の基板と前記振動板部が形成される前の単結晶シリコン基板である前記第2の基板とを所定の接合位置に位置合わせするアライメント工程を有し、前記アライメント工程は、まず前記第1の基板に形成された前記第1のアライメントマークを可視光で撮像して画像として記憶し、次に前記第1の基板の接合面の上方に配置された前記第2の基板の接合面に対して反対面に形成された前記第2のアライメントマークを前記可視光で撮像して画像として逐時記憶して、先に記憶された前記第1のアライメントマークの前記画像と前記第2のアライメントマークの画像を重ねるように前記第1の基板と前記第2の基板とを平面方向に相対移動させることによって位置合わせする液滴吐出ヘッドの製造方法。
(14)(1)〜(13)のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を用いて製造された液滴吐出ヘッド。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態の液滴吐出ヘッドの構造を示す概略分解斜視図。
【図2】図1の各基板が積層された液滴吐出ヘッドの概略断面図。
【図3】図1の第1の基板の概略平面図。
【図4】インクジェットヘッドの製造工程を示すフローチャート。
【図5.1】(a)〜(f)は、図4のフローチャートに対応した各基板の加工状態を示す概略断面図。
【図5.2】(g)〜(k)は、図4のフローチャートに対応した各基板の加工状態を示す概略断面図。
【図5.3】(l)〜(p)は、図4のフローチャートに対応した各基板の加工状態を示す概略断面図。
【図6】(a)〜(g)は、アライメントマークの形成方法を示す概略図。
【図7】(a)〜(c)は、ガラス基板とシリコン基板のアライメント方法の一例を示す概略断面図、(d),(e)は、アライメント方法の他の一例を示す概略断面図。
【図8】(a)〜(c)は、赤外光を用いたアライメント方法を示す概略断面図。
【図9】インクジェットプリンタの構造を示す概略図。
【符号の説明】
【0096】
1…第1の基板としてのガラス基板、2…第2の基板としてのシリコン基板、3…第3の基板としてのノズル基板、4…振動板部、5…吐出室、8…電極部、10…液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド、12…ノズル、15…第1のアライメントマークとしての凹部、16,17…第2のアライメントマークとしての凹部、19…電気機械変換素子、20…静電アクチュエータ、50…可視光カメラ、51…IR(赤外)カメラ、60…ウェハ、61…形成領域、62…ウェハ状の基板に略点対称な位置で形成されたアライメントマーク、400…液滴吐出装置としてのインクジェットプリンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の接合方法であって、
第1の基板の少なくとも1面に第1のアライメントマークを形成する第1マーク形成工程と、
シリコン基板である第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークを形成する第2マーク形成工程と、
前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークと位置合わせして、前記第1の基板と前記第2の基板との位置調整をするアライメント工程と、
位置調整された前記第1の基板と前記第2の基板とを接合する接合工程とを備えることを特徴とする基板の接合方法。
【請求項2】
前記第1の基板はガラス基板であって、前記第1の基板と前記第2の基板とを陽極接合することを特徴とする請求項1に記載の基板の接合方法。
【請求項3】
前記第2マーク形成工程では、前記第2の基板に平行四辺形または台形状の前記第2のアライメントマークを異方性エッチングによって形成することを特徴とする請求項1または2に記載の基板の接合方法。
【請求項4】
前記第1マーク形成工程では、前記第1の基板の中心に対して略点対称な位置に前記第1のアライメントマークを形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板の接合方法。
【請求項5】
前記アライメント工程では、前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークとをそれぞれ撮像して一方のアライメントマークを画像として記憶し、記憶された前記第1のアライメントマークの画像と前記第2のアライメントマークの画像とを重ねるように前記第1の基板と前記第2の基板とを相対移動させることによって位置合わせすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板の接合方法。
【請求項6】
前記アライメント工程は、前記第1のアライメントマークと前記第2のアライメントマークとを、前記第1の基板の接合面に対して反対面側から観測しながら位置合わせすることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の基板の接合方法。
【請求項7】
少なくとも、アクチュエータを構成する第1の基板と、少なくとも1面に液体が充填される吐出室となる流路を有する第2の基板と、前記吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、前記アクチュエータにより前記吐出室に充填された前記液体を加圧して前記ノズルから前記液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板の接合方法を用いて前記第1の基板と前記第2の基板とを接合することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
電極部を有する第1の基板と、吐出室の一面を構成する振動板部を有する第2の基板と、前記吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、前記振動板部と、前記振動板部に所定の間隔を置いて対向配置された前記電極部とからなる電気機械変換素子を有するアクチュエータにより前記振動板部を変位させて、液体を収容した前記吐出室の容積を変化させることにより前記ノズルから前記液体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板の接合方法を用いて前記第1の基板と前記第2の基板とを接合することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】
電極部を有する第1の基板と、吐出室の一面を構成する振動板部を有する第2の基板と、前記吐出室に連通するノズルを有する第3の基板とによって構成され、前記振動板部と、前記振動板部に所定の間隔を置いて対向配置された前記電極部とからなる電気機械変換素子を有するアクチュエータにより前記振動板部を変位させて、液体を収容した吐出室の容積を変化させることにより前記ノズルから前記液体を吐出する液滴吐出ヘッドであって、
前記第1の基板の少なくとも1面には、第1のアライメントマークが形成されており、シリコン基板である前記第2の基板の少なくとも1面に第2のアライメントマークが形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1のアライメントマークは、前記第2の基板と接合する前記第1の基板の接合面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1のアライメントマークは、前記第1の基板の中心に対して略点対称な位置で前記第2の基板との接合面に形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第2のアライメントマークは、前記第1の基板と接合する前記第2の基板の接合面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項13】
前記第2のアライメントマークは、前記第1の基板と接合する前記第2の基板の接合面に対する反対面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第2のアライメントマークは、前記第1の基板と接合する前記第2の基板の接合面及び反対面に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第2のアライメントマークは、平行四辺形または台形状となるように前記第2の基板に異方性エッチングによって形成されていることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項16】
前記第1のアライメントマークは、前記電極部の形成領域外に形成され、
前記第2のアライメントマークは、前記振動板部の形成領域外に形成されていることを特徴とする請求項9ないし15のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項17】
請求項9ないし16のいずれか一項に記載された液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5.1】
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【図5.2】
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【図5.3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−27155(P2006−27155A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211098(P2004−211098)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】