基板の欠陥検査方法及びプログラム
【課題】基板のマクロ欠陥を検査するにあたり,欠陥の有無の判定を容易にし,判定に至るまでの処理時間を短縮する。
【解決手段】CCDカメラ11によって撮像されたウエハWの画像データは,差分演算部21に出力されて,正常ウエハとの差分画像が演算される。この差分画像に基づき,合成演算部22において,ウエハWの中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して合成した合成画像が演算される。合成画像は,ゼルニケ演算部23においてゼルニケ多項式によって数値化され,そのうちの同心円成分が判定部24に出力され,予め設定したしきい値と比較されて,ウエハWの欠陥の有無が判断される。
【解決手段】CCDカメラ11によって撮像されたウエハWの画像データは,差分演算部21に出力されて,正常ウエハとの差分画像が演算される。この差分画像に基づき,合成演算部22において,ウエハWの中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して合成した合成画像が演算される。合成画像は,ゼルニケ演算部23においてゼルニケ多項式によって数値化され,そのうちの同心円成分が判定部24に出力され,予め設定したしきい値と比較されて,ウエハWの欠陥の有無が判断される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板の欠陥検査方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトグラフィー工程では,ウエハなどの基板表面にレジスト膜を形成するレジスト塗布処理,基板表面にパターンを照射して露光する露光処理,露光後の基板に対して現像を行う現像処理等が行われる。そして,一連の所定のフォトグラフィー工程を終了した基板は,検査装置によって,基板表面に所定のレジスト膜が形成されているか否か,あるいは適切な露光処理が行われているかどうかについて,いわゆるマクロ欠陥検査が行われている。
【0003】
前記したマクロ欠陥検査は,基板を載置している載置台が,同一平面上をX−Y方向に移動し,基板の上方に固定して設けられているCCDカメラなどの撮像手段によって基板上を走査して基板表面を撮像することによって行われる(特許文献1)。そして撮像によって得られた画像を画像処理して,欠陥の有無を検出するようにしている。より具体的に説明すると,正常な基板とデフォーカスや塗布ムラ等のマクロ欠陥のある基板とでは,撮像した画像において,輝度や明暗差が生じ,これが画像データ上では画素値の差となって現れる。従来は,このことを利用して,検査対象となった基板の画像から,正常な基板の画像を引いた絶対値の差分画像を求め,その差分画像を単純に2値化して数値化し,当該数値が予め設定したしきい値を超えているかどうかによって,基板の正常,異常,すなわち欠陥があるかどうかを判断している(特許文献2,特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−168010号公報
【特許文献2】特開平6−18436号公報
【特許文献3】特開2004−85503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上述した方法では,たとえば差分画像が2値化されても,その絶対値が小さいため,正常,異常の判定を行う基準としてのしきい値を設定することが難しく,誤判定するおそれがある。また基板を撮像するにあたっては,検査対象となる基板を所定の撮像位置に,X方向,Y方向,θ方向のいずれにおいても正確に載置する必要があり,そのための例えばノッチアライナーなどを使用したアライメント作業が別途必要となり,その結果,その分余計に検査時間がかかっていた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり,画像を用いた基板の欠陥検査方法において,正常,異常を判定するしきい値の設定を容易にして判定精度を向上させることを第1の目的としている。また基板のθ方向のアライメントを不要として検査時間の短縮を図ることを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため,本発明は,基板の欠陥を検査する方法であって,正常な基板の画像と検査対象の画像との差分画像を求める工程と,前記差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する工程と,前記合成によって得られた画像をゼルニケ多項式を用いて数値化する工程と,前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定する工程とを有することを特徴としている。
【0008】
前記した差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,これらの画像を合成すると,合成後の画像には同心円模様が現れる。そしてこの合成画像をゼルニケ多項式に変換して数値化すると,ゼルニケ項の同心円成分のゼルニケ係数の値が増幅して出てくる。逆に同心円成分以外のゼルニケ項の値は殆ど0に近い値となる。したがって,差分画像において欠陥と思しき箇所が,結果的に増幅された値で示され,他の正常部分との差が顕著になる。したがって,これらの値の間にしきい値を設定することで,欠陥の有無が容易に判定できる。またしきい値の設定自体も容易である。また差分画像を回転合成した画像に基づいて判定しているので,ウエハのθ方向の位置合わせは不要であり,したがってノッチアライナーによるアライメント処理を行う必要がなく,その分検査に要する時間が短縮される。
【0009】
回転させて合成画像を作成するにあたり,回転角度は,10度以下が好ましい。これによって,より同心円として認識しやすい合成画像が得られる。また画像がカラー画像の場合には,前記ゼルニケ多項式によって変換した後のゼルニケ値のうち,R,G,Bのうちの少なくともいずれかの1の同心円成分の値に基づいて基板の欠陥の有無を判定するようにしてもよい。
【0010】
以上のような検査方法は,コンピュータに実行させるためのプログラムとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,画像を用いて基板の欠陥検査を行うにあたり,正常,異常を判定するしきい値の設定が容易であり,その結果判定精度を従来よりも向上させることができる。またθ方向の基板のアライメントが不要であるため,検査時間を従来よりも短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,実施の形態にかかる検査方法を実施するために用いた検査装置1の概要を示しており,この検査装置1は,いわゆるマクロ欠陥を検査する装置として構成されている。この検査装置1のケーシング2内には,検査対象である基板,例えばウエハWを吸着して保持するステージ3が設けられている。ステージ3は,回転部4によって,θ回転可能であり,任意の角度に回転,停止させることができる。ステージ3を支持する基台5は,ステージ3を回転させる回転駆動部,例えばサーボモータ等が収納されている。
【0013】
基台5は,この基台5全体がX方向(図1中の左右方向)に伸びるレール6上に移動自在に設けられており,図示しない駆動機構によって,この基台5はX方向に移動可能である。またレール6自体は,X方向と直交するY方向に伸びるレール7上に移動自在に設けられており,図示しない駆動機構によって,Y方向にも移動可能である。したがってステージ3は,水平方向において回転自在であると共に,X方向,Y方向に移動自在である。
【0014】
ステージ3上方には,ウエハWの表面を撮像するための撮像装置,例えばCCDカメラ11が設けられている。このCCDカメラ11は,ステージ3上のウエハW表面に指向して設けられている。そして前記したステージ3のX方向,Y方向への移動によって,CCDカメラ11は,ウエハW上の所定の領域を1ショットずつ,例えば1デバイス領域ずつ撮影することができる。従って1ショット撮影後,ステージ3を適宜X方向,Y方向に移動させ,その都度CCDカメラ11によって撮像することで,ウエハW全面を撮像することが可能である。CCDカメラ11によって撮像された画像データは,検査装置1の外部に設けられている制御部12に出力される。
【0015】
制御部12は,送信された画像データと,予め記憶されている正常ウエハの画像データとの差分(絶対値)を計算し,それに基づいた差分画像のデータを出力する差分演算部21と,差分演算部21によって得られた差分画像を,ウエハWの中心を原点として回転し,これを合成してその合成画像を得る合成演算部22と,合成演算部22によって得られた合成画像をゼルニケ多項式によって数値化するゼルニケ演算部23と,ゼルニケ演算部23から出力されたデータと,予め設定したしきい値と比較することで,欠陥の有無を判断する判定部24とを有している。
【0016】
より詳述すると,合成演算部22では,差分演算部21からの差分画像を,ウエハWの中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する処理が行われる。画像は,例えば2000×2000ピクセル程度の解像度のデータで蓄積される。
【0017】
ゼルニケ演算部23では,合成演算部22で得られた合成画像を,ゼルニケ多項式に分解し,各ゼルニケ係数ごとに数値化する処理が行われる。
【0018】
ゼルニケ多項式は,光学分野でよく使われる半径が1の単位円上の複素関数であり(実用的には実数関数として使用されている),極座標の引数(r,θ)を有する。このゼルニケ多項式は,光学分野では主としてレンズの収差成分を解析するために使用されており,波面収差をゼルニケ多項式に分解することで,各々独立した波面,例えば山型,鞍型等の形状に基づく収差成分を知ることができる。そしてゼルニケ多項式を用いれば,前記収差を例えば白黒,あるいは光の三原色を使用した2次平面上のプロットによって,色の濃淡に基づいた画像によって表現することが可能であり,また逆に撮像した画像は,各収差成分に基づいたゼルニケ多項式に分解して表現することが可能である。
【0019】
本実施の形態においては,合成演算部22で得られた合成画像を下記のゼルニケ多項式に分解して解析する処理がなされる。
【0020】
Z1 1
Z2 r・cosθ
Z3 r・sinθ
Z4 2r2−1
Z5 r2・cos2θ
Z6 r2・sin2θ
Z7 (3r3−2r)・cosθ
Z8 (3r3−2r)・sinθ
Z9 6r4−6r2+1
Z10 r3・cos3θ
Z11 r3・sin3θ
Z12 (4r4−3r2)・cos2θ
Z13 (4r4−3r2)・sin2θ
Z14 (10r5−12r3+3r)・cosθ
Z15 (10r5−12r3+3r)・sinθ
Z16 20r6−30r4+12r2−1
上記したゼルニケ多項式の各ゼルニケ係数ごとに分解して得られる画像は,図2に示した通りであり,図2の左端の列の係数,すなわちゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16が,同心円成分を著している。
【0021】
そしてゼルニケ演算部23では,上記したゼルニケ多項式に分解して解析して,各係数ごとのゼルニケ値を算出し,その中で同心円成分であるゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値のみを抽出し,これを判定部24に出力する。
【0022】
判定部24では,あらかじめ設定されている正常,異常を識別するためのしきい値と,前記ゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値とを比較し,しきい値を超えている係数が1つでもあれば,異常と判断し,その信号を外部に出力する。
【0023】
上記した制御部12は,例えばパソコン等のコンピュータによって構成され,差分演算部21,合成演算部22,ゼルニケ演算部23,判定部24の処理は,プログラム格納部13に格納されているプログラムによって実行される。プログラム格納部13は,例えばハードディスク,コンパクトディスク,マグネットオプティカルディスク,メモリーカードなどの記録媒体である。
【0024】
本実施の形態で使用する検査装置1は以上のような構成を有しており,次にこの検査装置1を使用した検査方法について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
まず検査対象であるウエハWが装置内のステージ3に保持されると,予め定められた所定の撮像順序にしたがって,CCDカメラ11が,ウエハWの表面を1ショットずつ撮像し,その画像データを制御部12の差分演算部21に出力する(ステップS1)。差分演算部21では既述したように,予め記憶されている正常ウエハの画像データと,CCDカメラ11によって得られた撮像画像との差分を計算する(ステップS2)。そして計算して得られた差分画像のデータ(絶対値)を合成演算部22に出力する。正常ウエハとデフォーカスや塗布ムラ等のマクロ欠陥のあるウエハとでは,その輝度や明暗差があるので,差分画像のデータを数値化,例えば2値化すれば,欠陥がある場合には相応する値が得られるが,そのままでは絶対値が小さいため,判定が困難な場合がある。
【0026】
しかしながら本実施の形態では,差分演算部21からの差分画像データをそのまま数値化するのではなく,続く合成演算部22において,差分演算部21からの差分画像を,ウエハWの中心を原点として10度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する処理を行っている(ステップS3)。その結果,同心円成分が増幅される。
【0027】
そしてゼルニケ演算部23では,合成画像を上記したゼルニケ多項式に分解して解析して,各係数ごとのゼルニケ値を算出してこれを数値化し(ステップS4),その中で増幅された同心円成分である,ゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値のみを抽出し(ステップS5),これを判定部24に出力する。そして判定部24では,ゼルニケ値の同心円成分の数値に基づいて,予め設定されたしきい値と比較し,当該数値がしきい値を超えている場合には異常,しきい値以下の場合には正常と判定する処理が行われる(ステップS6)。
【0028】
このように判定部24に出力された,正常,異常,すなわち欠陥の有無を判断するための数値であるゼルニケ値が,回転合成によって極めて大きいものとなっているので,判定部24において,正常,異常を区別するためのしきい値の設定が容易となり,その結果判定の精度は,従来の単純な2値化に基づいた判定よりも向上する。
【0029】
次に発明者らが実際に行った例について説明する。この例は,デフォーカスの欠陥を検査した例であり,図4に検査の対象としたウエハのCCDカメラ11による撮像画像を示し,図5に正常ウエハ(いわゆるゴールデンウエハ)の画像を示している。図4の撮像画像から図5の正常ウエハの画像の差分画像を求めると,図6に示したような画像が得られた。この図6の差分画像をそのまま2値化しても,その値が際立ったものとはならず,そのままでは正常(Pass)として判断してしまう。
【0030】
しかしながら本実施の形態によれば,図6の差分画像をウエハ中心を原点として,10度ずつ360度回転し,各々の画像を合成しているので,画素値に差があって欠陥とおぼしき領域は,合成後は同心円状に連なり,合成画像全体としては前記差は増幅されたものとなる。図7にそのときの合成画像を示した。そして図7の合成画像をゼルニケ多項式に変換し,各成分の係数Z1〜Z16までのゼルニケ値を計算した結果を図8の表に示す。なおゼルニケ値は画像がカラー画像であるため,図8においては,光の三原色であるR,G,Bごとにゼルニケ値を計算して表示した。
【0031】
図8の表からもわかるように,同心円成分であるZ1,Z4,Z9,Z16の値をみると,いずれも他の成分の係数の値よりも際立って大きくなっており,しかもその絶対値は,R,G,Bのいずれも0よりも十分に大きい値となっている。当然の事ながらゼルニケ値が0に近いほど,正常ウエハと差がない,つまり正常と判断できる。したがって,図8の表で見れば,Rについては,Z1,Z4,Z9,Z16におけるしきい値(絶対値)を,たとえば9と高く設定しても,正常,異常を判定できる。同様にGについては例えば8,Bについては例えば3というように設定しておく事により,ウエハの正常,異常を容易に判定でき,しかも判定の精度が向上するものである。
【0032】
次にレジストの塗布ムラについて検査した例について説明する。図9に検査の対象としたウエハのCCDカメラ11による撮像画像を示し,図10に正常ウエハ(いわゆるゴールデンウエハ)の画像を示している。図9の撮像画像から図10の正常ウエハの画像の差分画像を求めると,図11に示したような画像になった。この塗布ムラの例では,欠陥とおぼしき領域はウエハの周辺部に存在し,しかもいずれも径方向に現れた極めて細い線分の様を呈している。したがって,図11の差分画像をそのまま2値化してもその値は0に近く,そのままでは正常(Pass)として判断してしまう可能性が極めて高い。
【0033】
しかしながら本実施の形態によれば,図11の差分画像をウエハ中心を原点として,10度ずつ360度回転し,各々の画像を合成するので,合成された後の画像においては,図12に示したように,前記細い線分は,当該線分が存在しているウエハの周辺部において,円周方向に連なった様を呈する。図12の合成画像をゼルニケ多項式に変換し,各成分の係数Z1〜Z16までのゼルニケ値を計算した結果を図13の表に示す。なおゼルニケ値は画像がカラー画像であるため,光の三原色であるR,G,Bごとに計算して表示してある。
【0034】
図13の表からもわかるように,同心円成分であるZ1,Z4,Z9,Z16の値をみると,いずれも他の係数の値よりも際立って大きくなっており,しかもその絶対値は,R,G,Bのいずれも0よりも十分に大きい値となっている。したがって,図13の表で見れば,Rについては,Z1,Z4,Z9,Z16におけるしきい値(絶対値)を,たとえば12と高く設定しても,正常,異常を判定できる。同様にGについては例えば12,Bについては例えば10というように設定しておく事により,ウエハの正常,異常を容易に判定でき,しかも判定の精度が向上するものである。
【0035】
前記した例でわかるように,差分画像がカラー画像である場合には,その合成画像をゼルニケ多項式に変換して,同心円成分のゼルニケ値によって,正常,異常を判断する際,R,G,Bのいずれか1についてしきい値を設定してもよく,またR,G,Bの各々にしきい値を設定し,全てのR,G,Bにおいてしきい値を超えているときには,異常と判断するようにして,さらに精度を向上させることができる。また同心円成分についても,Z1,Z4,Z9,Z16のいずれかについて設定したり,全てに設定して,いずれかの同心円成分が所定のしきい値を超えた場合に異常,それ以外は正常と判断するようにしたり,全ての同心円成分が所定のしきい値を超えている場合にのみ異常というように判定するようにしてもよい。さらにまた使用するゼルニケ多項式についても,前記した例では,各成分の係数Z1〜Z16まで有するゼルニケ多項式を用いたが,これに限らず,例えばZ1〜Z9までのゼルニケ多項式やZ1〜Z45まで有するゼルニケ多項式を用いてもよい。要は成分係数に同心円成分を有するゼルニケ多項式を使用すればよい。
【0036】
また撮影画像と正常画像との差分画像は,カラー画像のみならず,モノクロ画像の場合でも,前記したような合成画像をゼルニケ多項式に変換し,その同心円成分のゼルニケ値に基づいてしきい値を設定して,正常,異常の判断をするようにしてもよい。
【0037】
なお前記した例では,ゼルニケ多項式を用いて数値化した値から,直ちに検査対象であるウエハの正常,異常を判断するようにしていたが,その後さらに例えばマハラノビスの距離等の多変量解析に付して判定することにより,より一層の精度の向上を図ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は,画像を用いて基板の欠陥検査を行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる検査方法を実施する際に用いた検査装置の構成を示す説明図である。
【図2】ゼルニケ多項式を用いて画像を成分分解した後の各成分ごとの画像を示す説明図である。
【図3】本実施の形態の検査方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】CCDカメラを用いて検査対象のウエハを撮像して得た画像を示す説明図である。
【図5】正常ウエハの画像を示す説明図である。
【図6】図4の検査対象のウエハの画像と図5の正常ウエハの画像との差分画像を示す説明図である。
【図7】図6の差分画像を回転合成して得られた合成画像である。
【図8】図7の画像をゼルニケ多項式を用いて得たゼルニケ値を各成分ごとに表示した表である。
【図9】CCDカメラを用いて検査対象のウエハを撮像して得た画像を示す説明図である。
【図10】正常ウエハの画像を示す説明図である。
【図11】図9の検査対象のウエハの画像と図10の正常ウエハの画像との差分画像を示す説明図である。
【図12】図11の差分画像を回転合成して得られた合成画像である。
【図13】図12の画像をゼルニケ多項式を用いて得たゼルニケ値を各成分ごとに表示した表である。
【符号の説明】
【0040】
1 検査装置
3 ステージ
11 CCDカメラ
12 制御部
13 プログラム格納部
21 差分演算部
22 合成演算部
23 ゼルニケ演算部
24 判定部
W ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板の欠陥検査方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトグラフィー工程では,ウエハなどの基板表面にレジスト膜を形成するレジスト塗布処理,基板表面にパターンを照射して露光する露光処理,露光後の基板に対して現像を行う現像処理等が行われる。そして,一連の所定のフォトグラフィー工程を終了した基板は,検査装置によって,基板表面に所定のレジスト膜が形成されているか否か,あるいは適切な露光処理が行われているかどうかについて,いわゆるマクロ欠陥検査が行われている。
【0003】
前記したマクロ欠陥検査は,基板を載置している載置台が,同一平面上をX−Y方向に移動し,基板の上方に固定して設けられているCCDカメラなどの撮像手段によって基板上を走査して基板表面を撮像することによって行われる(特許文献1)。そして撮像によって得られた画像を画像処理して,欠陥の有無を検出するようにしている。より具体的に説明すると,正常な基板とデフォーカスや塗布ムラ等のマクロ欠陥のある基板とでは,撮像した画像において,輝度や明暗差が生じ,これが画像データ上では画素値の差となって現れる。従来は,このことを利用して,検査対象となった基板の画像から,正常な基板の画像を引いた絶対値の差分画像を求め,その差分画像を単純に2値化して数値化し,当該数値が予め設定したしきい値を超えているかどうかによって,基板の正常,異常,すなわち欠陥があるかどうかを判断している(特許文献2,特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−168010号公報
【特許文献2】特開平6−18436号公報
【特許文献3】特開2004−85503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上述した方法では,たとえば差分画像が2値化されても,その絶対値が小さいため,正常,異常の判定を行う基準としてのしきい値を設定することが難しく,誤判定するおそれがある。また基板を撮像するにあたっては,検査対象となる基板を所定の撮像位置に,X方向,Y方向,θ方向のいずれにおいても正確に載置する必要があり,そのための例えばノッチアライナーなどを使用したアライメント作業が別途必要となり,その結果,その分余計に検査時間がかかっていた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり,画像を用いた基板の欠陥検査方法において,正常,異常を判定するしきい値の設定を容易にして判定精度を向上させることを第1の目的としている。また基板のθ方向のアライメントを不要として検査時間の短縮を図ることを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため,本発明は,基板の欠陥を検査する方法であって,正常な基板の画像と検査対象の画像との差分画像を求める工程と,前記差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する工程と,前記合成によって得られた画像をゼルニケ多項式を用いて数値化する工程と,前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定する工程とを有することを特徴としている。
【0008】
前記した差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,これらの画像を合成すると,合成後の画像には同心円模様が現れる。そしてこの合成画像をゼルニケ多項式に変換して数値化すると,ゼルニケ項の同心円成分のゼルニケ係数の値が増幅して出てくる。逆に同心円成分以外のゼルニケ項の値は殆ど0に近い値となる。したがって,差分画像において欠陥と思しき箇所が,結果的に増幅された値で示され,他の正常部分との差が顕著になる。したがって,これらの値の間にしきい値を設定することで,欠陥の有無が容易に判定できる。またしきい値の設定自体も容易である。また差分画像を回転合成した画像に基づいて判定しているので,ウエハのθ方向の位置合わせは不要であり,したがってノッチアライナーによるアライメント処理を行う必要がなく,その分検査に要する時間が短縮される。
【0009】
回転させて合成画像を作成するにあたり,回転角度は,10度以下が好ましい。これによって,より同心円として認識しやすい合成画像が得られる。また画像がカラー画像の場合には,前記ゼルニケ多項式によって変換した後のゼルニケ値のうち,R,G,Bのうちの少なくともいずれかの1の同心円成分の値に基づいて基板の欠陥の有無を判定するようにしてもよい。
【0010】
以上のような検査方法は,コンピュータに実行させるためのプログラムとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,画像を用いて基板の欠陥検査を行うにあたり,正常,異常を判定するしきい値の設定が容易であり,その結果判定精度を従来よりも向上させることができる。またθ方向の基板のアライメントが不要であるため,検査時間を従来よりも短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,実施の形態にかかる検査方法を実施するために用いた検査装置1の概要を示しており,この検査装置1は,いわゆるマクロ欠陥を検査する装置として構成されている。この検査装置1のケーシング2内には,検査対象である基板,例えばウエハWを吸着して保持するステージ3が設けられている。ステージ3は,回転部4によって,θ回転可能であり,任意の角度に回転,停止させることができる。ステージ3を支持する基台5は,ステージ3を回転させる回転駆動部,例えばサーボモータ等が収納されている。
【0013】
基台5は,この基台5全体がX方向(図1中の左右方向)に伸びるレール6上に移動自在に設けられており,図示しない駆動機構によって,この基台5はX方向に移動可能である。またレール6自体は,X方向と直交するY方向に伸びるレール7上に移動自在に設けられており,図示しない駆動機構によって,Y方向にも移動可能である。したがってステージ3は,水平方向において回転自在であると共に,X方向,Y方向に移動自在である。
【0014】
ステージ3上方には,ウエハWの表面を撮像するための撮像装置,例えばCCDカメラ11が設けられている。このCCDカメラ11は,ステージ3上のウエハW表面に指向して設けられている。そして前記したステージ3のX方向,Y方向への移動によって,CCDカメラ11は,ウエハW上の所定の領域を1ショットずつ,例えば1デバイス領域ずつ撮影することができる。従って1ショット撮影後,ステージ3を適宜X方向,Y方向に移動させ,その都度CCDカメラ11によって撮像することで,ウエハW全面を撮像することが可能である。CCDカメラ11によって撮像された画像データは,検査装置1の外部に設けられている制御部12に出力される。
【0015】
制御部12は,送信された画像データと,予め記憶されている正常ウエハの画像データとの差分(絶対値)を計算し,それに基づいた差分画像のデータを出力する差分演算部21と,差分演算部21によって得られた差分画像を,ウエハWの中心を原点として回転し,これを合成してその合成画像を得る合成演算部22と,合成演算部22によって得られた合成画像をゼルニケ多項式によって数値化するゼルニケ演算部23と,ゼルニケ演算部23から出力されたデータと,予め設定したしきい値と比較することで,欠陥の有無を判断する判定部24とを有している。
【0016】
より詳述すると,合成演算部22では,差分演算部21からの差分画像を,ウエハWの中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する処理が行われる。画像は,例えば2000×2000ピクセル程度の解像度のデータで蓄積される。
【0017】
ゼルニケ演算部23では,合成演算部22で得られた合成画像を,ゼルニケ多項式に分解し,各ゼルニケ係数ごとに数値化する処理が行われる。
【0018】
ゼルニケ多項式は,光学分野でよく使われる半径が1の単位円上の複素関数であり(実用的には実数関数として使用されている),極座標の引数(r,θ)を有する。このゼルニケ多項式は,光学分野では主としてレンズの収差成分を解析するために使用されており,波面収差をゼルニケ多項式に分解することで,各々独立した波面,例えば山型,鞍型等の形状に基づく収差成分を知ることができる。そしてゼルニケ多項式を用いれば,前記収差を例えば白黒,あるいは光の三原色を使用した2次平面上のプロットによって,色の濃淡に基づいた画像によって表現することが可能であり,また逆に撮像した画像は,各収差成分に基づいたゼルニケ多項式に分解して表現することが可能である。
【0019】
本実施の形態においては,合成演算部22で得られた合成画像を下記のゼルニケ多項式に分解して解析する処理がなされる。
【0020】
Z1 1
Z2 r・cosθ
Z3 r・sinθ
Z4 2r2−1
Z5 r2・cos2θ
Z6 r2・sin2θ
Z7 (3r3−2r)・cosθ
Z8 (3r3−2r)・sinθ
Z9 6r4−6r2+1
Z10 r3・cos3θ
Z11 r3・sin3θ
Z12 (4r4−3r2)・cos2θ
Z13 (4r4−3r2)・sin2θ
Z14 (10r5−12r3+3r)・cosθ
Z15 (10r5−12r3+3r)・sinθ
Z16 20r6−30r4+12r2−1
上記したゼルニケ多項式の各ゼルニケ係数ごとに分解して得られる画像は,図2に示した通りであり,図2の左端の列の係数,すなわちゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16が,同心円成分を著している。
【0021】
そしてゼルニケ演算部23では,上記したゼルニケ多項式に分解して解析して,各係数ごとのゼルニケ値を算出し,その中で同心円成分であるゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値のみを抽出し,これを判定部24に出力する。
【0022】
判定部24では,あらかじめ設定されている正常,異常を識別するためのしきい値と,前記ゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値とを比較し,しきい値を超えている係数が1つでもあれば,異常と判断し,その信号を外部に出力する。
【0023】
上記した制御部12は,例えばパソコン等のコンピュータによって構成され,差分演算部21,合成演算部22,ゼルニケ演算部23,判定部24の処理は,プログラム格納部13に格納されているプログラムによって実行される。プログラム格納部13は,例えばハードディスク,コンパクトディスク,マグネットオプティカルディスク,メモリーカードなどの記録媒体である。
【0024】
本実施の形態で使用する検査装置1は以上のような構成を有しており,次にこの検査装置1を使用した検査方法について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
まず検査対象であるウエハWが装置内のステージ3に保持されると,予め定められた所定の撮像順序にしたがって,CCDカメラ11が,ウエハWの表面を1ショットずつ撮像し,その画像データを制御部12の差分演算部21に出力する(ステップS1)。差分演算部21では既述したように,予め記憶されている正常ウエハの画像データと,CCDカメラ11によって得られた撮像画像との差分を計算する(ステップS2)。そして計算して得られた差分画像のデータ(絶対値)を合成演算部22に出力する。正常ウエハとデフォーカスや塗布ムラ等のマクロ欠陥のあるウエハとでは,その輝度や明暗差があるので,差分画像のデータを数値化,例えば2値化すれば,欠陥がある場合には相応する値が得られるが,そのままでは絶対値が小さいため,判定が困難な場合がある。
【0026】
しかしながら本実施の形態では,差分演算部21からの差分画像データをそのまま数値化するのではなく,続く合成演算部22において,差分演算部21からの差分画像を,ウエハWの中心を原点として10度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する処理を行っている(ステップS3)。その結果,同心円成分が増幅される。
【0027】
そしてゼルニケ演算部23では,合成画像を上記したゼルニケ多項式に分解して解析して,各係数ごとのゼルニケ値を算出してこれを数値化し(ステップS4),その中で増幅された同心円成分である,ゼルニケ係数がZ1,Z4,Z9,Z16の値のみを抽出し(ステップS5),これを判定部24に出力する。そして判定部24では,ゼルニケ値の同心円成分の数値に基づいて,予め設定されたしきい値と比較し,当該数値がしきい値を超えている場合には異常,しきい値以下の場合には正常と判定する処理が行われる(ステップS6)。
【0028】
このように判定部24に出力された,正常,異常,すなわち欠陥の有無を判断するための数値であるゼルニケ値が,回転合成によって極めて大きいものとなっているので,判定部24において,正常,異常を区別するためのしきい値の設定が容易となり,その結果判定の精度は,従来の単純な2値化に基づいた判定よりも向上する。
【0029】
次に発明者らが実際に行った例について説明する。この例は,デフォーカスの欠陥を検査した例であり,図4に検査の対象としたウエハのCCDカメラ11による撮像画像を示し,図5に正常ウエハ(いわゆるゴールデンウエハ)の画像を示している。図4の撮像画像から図5の正常ウエハの画像の差分画像を求めると,図6に示したような画像が得られた。この図6の差分画像をそのまま2値化しても,その値が際立ったものとはならず,そのままでは正常(Pass)として判断してしまう。
【0030】
しかしながら本実施の形態によれば,図6の差分画像をウエハ中心を原点として,10度ずつ360度回転し,各々の画像を合成しているので,画素値に差があって欠陥とおぼしき領域は,合成後は同心円状に連なり,合成画像全体としては前記差は増幅されたものとなる。図7にそのときの合成画像を示した。そして図7の合成画像をゼルニケ多項式に変換し,各成分の係数Z1〜Z16までのゼルニケ値を計算した結果を図8の表に示す。なおゼルニケ値は画像がカラー画像であるため,図8においては,光の三原色であるR,G,Bごとにゼルニケ値を計算して表示した。
【0031】
図8の表からもわかるように,同心円成分であるZ1,Z4,Z9,Z16の値をみると,いずれも他の成分の係数の値よりも際立って大きくなっており,しかもその絶対値は,R,G,Bのいずれも0よりも十分に大きい値となっている。当然の事ながらゼルニケ値が0に近いほど,正常ウエハと差がない,つまり正常と判断できる。したがって,図8の表で見れば,Rについては,Z1,Z4,Z9,Z16におけるしきい値(絶対値)を,たとえば9と高く設定しても,正常,異常を判定できる。同様にGについては例えば8,Bについては例えば3というように設定しておく事により,ウエハの正常,異常を容易に判定でき,しかも判定の精度が向上するものである。
【0032】
次にレジストの塗布ムラについて検査した例について説明する。図9に検査の対象としたウエハのCCDカメラ11による撮像画像を示し,図10に正常ウエハ(いわゆるゴールデンウエハ)の画像を示している。図9の撮像画像から図10の正常ウエハの画像の差分画像を求めると,図11に示したような画像になった。この塗布ムラの例では,欠陥とおぼしき領域はウエハの周辺部に存在し,しかもいずれも径方向に現れた極めて細い線分の様を呈している。したがって,図11の差分画像をそのまま2値化してもその値は0に近く,そのままでは正常(Pass)として判断してしまう可能性が極めて高い。
【0033】
しかしながら本実施の形態によれば,図11の差分画像をウエハ中心を原点として,10度ずつ360度回転し,各々の画像を合成するので,合成された後の画像においては,図12に示したように,前記細い線分は,当該線分が存在しているウエハの周辺部において,円周方向に連なった様を呈する。図12の合成画像をゼルニケ多項式に変換し,各成分の係数Z1〜Z16までのゼルニケ値を計算した結果を図13の表に示す。なおゼルニケ値は画像がカラー画像であるため,光の三原色であるR,G,Bごとに計算して表示してある。
【0034】
図13の表からもわかるように,同心円成分であるZ1,Z4,Z9,Z16の値をみると,いずれも他の係数の値よりも際立って大きくなっており,しかもその絶対値は,R,G,Bのいずれも0よりも十分に大きい値となっている。したがって,図13の表で見れば,Rについては,Z1,Z4,Z9,Z16におけるしきい値(絶対値)を,たとえば12と高く設定しても,正常,異常を判定できる。同様にGについては例えば12,Bについては例えば10というように設定しておく事により,ウエハの正常,異常を容易に判定でき,しかも判定の精度が向上するものである。
【0035】
前記した例でわかるように,差分画像がカラー画像である場合には,その合成画像をゼルニケ多項式に変換して,同心円成分のゼルニケ値によって,正常,異常を判断する際,R,G,Bのいずれか1についてしきい値を設定してもよく,またR,G,Bの各々にしきい値を設定し,全てのR,G,Bにおいてしきい値を超えているときには,異常と判断するようにして,さらに精度を向上させることができる。また同心円成分についても,Z1,Z4,Z9,Z16のいずれかについて設定したり,全てに設定して,いずれかの同心円成分が所定のしきい値を超えた場合に異常,それ以外は正常と判断するようにしたり,全ての同心円成分が所定のしきい値を超えている場合にのみ異常というように判定するようにしてもよい。さらにまた使用するゼルニケ多項式についても,前記した例では,各成分の係数Z1〜Z16まで有するゼルニケ多項式を用いたが,これに限らず,例えばZ1〜Z9までのゼルニケ多項式やZ1〜Z45まで有するゼルニケ多項式を用いてもよい。要は成分係数に同心円成分を有するゼルニケ多項式を使用すればよい。
【0036】
また撮影画像と正常画像との差分画像は,カラー画像のみならず,モノクロ画像の場合でも,前記したような合成画像をゼルニケ多項式に変換し,その同心円成分のゼルニケ値に基づいてしきい値を設定して,正常,異常の判断をするようにしてもよい。
【0037】
なお前記した例では,ゼルニケ多項式を用いて数値化した値から,直ちに検査対象であるウエハの正常,異常を判断するようにしていたが,その後さらに例えばマハラノビスの距離等の多変量解析に付して判定することにより,より一層の精度の向上を図ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は,画像を用いて基板の欠陥検査を行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる検査方法を実施する際に用いた検査装置の構成を示す説明図である。
【図2】ゼルニケ多項式を用いて画像を成分分解した後の各成分ごとの画像を示す説明図である。
【図3】本実施の形態の検査方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】CCDカメラを用いて検査対象のウエハを撮像して得た画像を示す説明図である。
【図5】正常ウエハの画像を示す説明図である。
【図6】図4の検査対象のウエハの画像と図5の正常ウエハの画像との差分画像を示す説明図である。
【図7】図6の差分画像を回転合成して得られた合成画像である。
【図8】図7の画像をゼルニケ多項式を用いて得たゼルニケ値を各成分ごとに表示した表である。
【図9】CCDカメラを用いて検査対象のウエハを撮像して得た画像を示す説明図である。
【図10】正常ウエハの画像を示す説明図である。
【図11】図9の検査対象のウエハの画像と図10の正常ウエハの画像との差分画像を示す説明図である。
【図12】図11の差分画像を回転合成して得られた合成画像である。
【図13】図12の画像をゼルニケ多項式を用いて得たゼルニケ値を各成分ごとに表示した表である。
【符号の説明】
【0040】
1 検査装置
3 ステージ
11 CCDカメラ
12 制御部
13 プログラム格納部
21 差分演算部
22 合成演算部
23 ゼルニケ演算部
24 判定部
W ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の欠陥を検査する方法であって,
正常な基板の画像と検査対象の画像との差分画像を求める工程と,
前記差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する工程と,
前記合成によって得られた画像をゼルニケ多項式を用いて数値化する工程と,
前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定する工程とを有することを特徴とする,基板の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記所定の角度は10度以下であることを特徴とする,請求項1に記載の基板の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記差分画像はカラー画像であり,前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,R,G,Bのうちの少なくともいずれかの1の同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定することを特徴とする,請求項1又は2に記載の基板の欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の基板の欠陥検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
基板の欠陥を検査する方法であって,
正常な基板の画像と検査対象の画像との差分画像を求める工程と,
前記差分画像を,基板の中心を原点として所定の角度ごとに360度回転して,回転前の差分画像と回転後の差分画像とを,合成後の画像の各ピクセル値が大きくなるように合成する工程と,
前記合成によって得られた画像をゼルニケ多項式を用いて数値化する工程と,
前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定する工程とを有することを特徴とする,基板の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記所定の角度は10度以下であることを特徴とする,請求項1に記載の基板の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記差分画像はカラー画像であり,前記ゼルニケ多項式によって数値化した後のゼルニケ値のうち,R,G,Bのうちの少なくともいずれかの1の同心円成分のゼルニケ値に基づいて基板の欠陥の有無を判定することを特徴とする,請求項1又は2に記載の基板の欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の基板の欠陥検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図13】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図8】
【図13】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−212219(P2007−212219A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30841(P2006−30841)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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