説明

基板を搬送するためのエンドエフェクタおよびロボット

基板搬送ロボットのエンドエフェクタが、繊維強化プラスチック(FRP)から製造された上プレートと、繊維強化プラスチック(FRP)から製造された下プレートと、上プレートと下プレートとの間に配置され、アルミニウム、ステンレス鋼およびハニカム形繊維強化プラスチック(FRP)からなる群から選択された中間部材とを備える。さらに、基板搬送ロボットが上記のエンドエフェクタを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年、4月5日に出願された米国仮特許出願第60/921,946号明細書(その内容をその全体において参照することによって本明細書に援用する)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、液晶ディスプレイにおいて使用されるガラス基板などの様々なタイプの基板を搬送するロボットの構成部材であるエンドエフェクタに関する。また、本発明は、前記エンドエフェクタを含むロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイの製造において使用されるガラスのサイズは近年、液晶ディスプレイのサイズの増加に伴って大きくなっている。基板を保持するエンドエフェクタを提供する基板搬送ロボットがガラス基板を搬送する時に使用されるが、これらのロボットはまた、大きくなる傾向がある。半導体ウエハおよび液晶基板を搬送するロボットにおいて使用される搬送部材は、米国特許第6,893,712号明細書に開示されており、エンドエフェクタおよび基板搬送ロボットに関する技術の例である。
【0004】
米国特許第6,893,712号明細書には、第8世代基板と称される大きいサイズのガラス基板の保持にこの技術を適用する場合の、複数の炭素繊維強化プラスチックを組み合わせるエンドエフェクタが開示されているが、特にエンドエフェクタの曲げの問題がある。
【0005】
大きいサイズの基板を保持することができるエンドエフェクタを使用することが望ましい場合がある。また、大きいサイズの基板、特に、液晶ディスプレイ用の大きいサイズのガラスを搬送するためにかかるエンドエフェクタを、基板搬送ロボットに具備させることが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、薄く、曲げ抵抗性であり、軽量かつ第8世代基板と称される大きいサイズのガラス基板を保持するために十分に使用できるエンドエフェクタ、および前記エンドエフェクタを備えた基板搬送ロボットを提供することである。さらに、本発明の目的は、長いエンドエフェクタを容易に製造するための手段を提供することである。
【0007】
本発明は、繊維強化プラスチック(FRP)から製造された上プレートと、下FRPプレートと、上プレートと下プレートとの間に配置され、アルミニウム、ステンレス鋼およびハニカム形FRPからなる群から選択された材料を含む中間部材とを含む、基板搬送ロボットのエンドエフェクタである。繊維は好ましくは炭素繊維、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である。
【0008】
さらに、本発明は、前述のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボットに関する。
【0009】
本発明のエンドエフェクタは、上プレート、下プレートおよびその間に配置された中間部材からなる。このタイプのエンドエフェクタは、炭素繊維強化材料だけからなるエンドエフェクタよりも単純な構造を有する。さらに、それは製造コストを低減することも可能にする。例えば、円筒エンドエフェクタの製造プロセスは複雑である場合がある。製造は、第8世代基板等と共に使用するためのエンドエフェクタを製造する場合に特に難しい。この点に関して、本発明のエンドエフェクタは、プレート状部材を単に積層することによって製造することができ、それによって製造プロセスを非常に簡単にすることができる。場合に応じて、上プレート、下プレートおよび中間部材を液晶パネル製造プラントに搬送し、プラント内で組み立ててエンドエフェクタを便利に製造することができる。
【0010】
さらに、本発明のエンドエフェクタは、繊維強化プラスチックと、アルミニウム、ステンレス鋼またはハニカム形繊維強化プラスチックから製造された中間部材とを含む上および下プレートからなる複合材である。このようにして異なった特性を有する中間部材を使用する場合、振動減衰特性は、炭素繊維複合材料だけからなるエンドエフェクタと比べて強化されうる。したがって、エンドエフェクタを曲げる際にガラス基板間の接触を効果的に防ぐことができる。この特性は、第8世代基板のために使用されたエンドエフェクタなどの長いエンドエフェクタにおいて特に有用である。
【0011】
さらに、本発明のエンドエフェクタは、上および下プレートのために炭素繊維複合材料または強化繊維を使用する。従って、軽量かつ薄いエンドエフェクタを提供することができる。
【0012】
さらに、本発明の基板搬送ロボットは、前述のエンドエフェクタの薄さ、曲げの抑制および重量の低減の作用のそれぞれにより、液晶ディスプレイ製造プロセスにおいてガラス基板を搬送するために使用できるのが好ましい。本発明の基板搬送ロボットは、上に記載された非常に高い曲げ抑制作用のために、第8世代基板と称される大きいサイズのガラス基板を保持するために特に好ましい。しかしながら、本発明は第8世代基板に限定されず、当然のことながらガラス基板の他のサイズおよびガラス基板以外の基板にも適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の一例としてのエンドエフェクタ12の斜視図である。
【図1B】本発明の一例としてのエンドエフェクタ12の俯瞰図である。
【図1C】本発明の一例としてのエンドエフェクタ12の側面図である。
【図2A】中間部材が中空直角プリズムである本発明のエンドエフェクタの一例の側面図である。
【図2B】中間部材が中空直角プリズムである本発明のエンドエフェクタの一例の正面図である。
【図3A】中間部材がU形部材である本発明のエンドエフェクタの一例の俯瞰図である。
【図3B】中間部材がU形部材である本発明のエンドエフェクタの一例の側面図である。
【図3C】中間部材がU形部材である本発明のエンドエフェクタの一例の背面図である。
【図4A】中間部材がハニカム形アラミド繊維から製造される本発明のエンドエフェクタの一例の俯瞰図である。
【図4B】中間部材がハニカム形アラミド繊維から製造される本発明のエンドエフェクタの一例の側面図である。
【図4C】中間部材がハニカム形アラミド繊維から製造される本発明のエンドエフェクタの一例の正面図である。
【図5】本発明のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット30の一例の略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、図面を参照して本発明のエンドエフェクタおよび基板搬送ロボットの詳細な説明を行う。
【0015】
図1は、本発明の一例としてのエンドエフェクタ12を示す。図1Aは斜視図であり、図1Bは俯瞰図であり、図1Cは側面図である。この例において、エンドエフェクタ12は、繊維強化プラスチック(本明細書においては時々単にFRPと称される)から製造された上プレート14、FRPから製造された下プレート16、アルミニウム、ステンレス鋼およびハニカム形FRPからなる群から選択された上プレート14と下プレート16との間に配置された中間部材18から成り、全体にわたり中空構造を有する。さらに、図1の例は中空構造の例であるが、本出願のエンドエフェクタはこの形状に限定されず、中実構造を使用することもできる。
【0016】
上プレート14および下プレート16の材料として役立つFRPの組成物に特定の制限条件はなく、FRPとして公知の広範囲の材料を適用することができる。また、2つ以上のタイプのこれらの材料も、組み合わせて使用してもよい。炭素繊維、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維が、プラスチックに混入された強化繊維のために使用されるのが好ましい。これらの材料は市販されており、ベースとして市販の材料を使用してプレートの形状に成形されてもよい。市販の材料の例には、Kevlar(登録商標)およびZylon(登録商標)などがある。より軽量で、曲げ抵抗に寄与する特性を改良するそれらの繊維が使用されるのが好ましい。例えば、30体積%以上において490〜950GPaの引張弾性率を有する高弾性炭素繊維の形の炭素繊維を含有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使用される。これらの繊維の体積比をCFRPの全体積の30%以上にすることによって、十分な剛性が得られ、高い振動減衰特性を有する部材が得られる。前述の体積比は好ましくは40%以上である。
【0017】
使用された強化繊維の全てが高弾性炭素繊維であってもよいが、一部の繊維は、490GPa未満の引張弾性率を有する炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化シリコン繊維または他の公知の強化繊維などの他の強化繊維から製造されてもよい。例えば、高弾性炭素繊維の体積比は90%以下であってもよいが、他の強化繊維、特に、490GPa未満の引張弾性率を有する炭素繊維を繊維の残部のためにそれと共に組み合わせて使用することができる。
【0018】
さらに、アルミニウム、ステンレス鋼およびハニカム形FRPからなる群から選択された材料が上プレート14と下プレート16との間に配置された中間部材18のために使用される。アルミニウムおよびステンレス鋼は高強度を有し、耐腐蝕性である。
【0019】
中間部材の材料として役立つ強化繊維に特定の制限条件はなく、強化繊維として公知の広範囲の材料を適用することができる。炭素繊維、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維が、プラスチックに混入された強化繊維のために使用されるのが好ましい。これらの材料は市販されており、ベースとして市販の材料を使用してプレートの形状に成形されてもよい。市販の材料の例には、Kevlar(登録商標)およびZylon(登録商標)などがある。より軽量で、曲げ抵抗に寄与する特性を改良するそれらの繊維が使用されるのが好ましい。例えば、30体積%以上において490〜950GPaの引張弾性率を有する高弾性炭素繊維の形の炭素繊維を含有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使用される。これらの繊維の体積比を30%以上にすることによって、十分な剛性が得られ、高い振動減衰特性を有する部材が得られる。前述の体積比は好ましくは40%以上である。
【0020】
以下は、本発明のエンドエフェクタの様々な態様、特に、中間部材を適切に変更した態様について説明する。
【0021】
図2Aは、本発明のエンドエフェクタの一態様の側面図であり、図2Bは、本発明のエンドエフェクタの一態様の(図2Aの側面から見た時の)正面図である。この例において、エンドエフェクタは、上プレート21、下プレート22、およびこれらのプレート21と22との間に配置された中空直角プリズム中間部材23によって構成される。この形態の中間部材の使用は、エンドエフェクタ全体が軽量で十分な強度および曲げ剛性を示すことを可能にする。
【0022】
図3Aは本発明のエンドエフェクタの一態様の俯瞰図であり、図3Bは本発明のエンドエフェクタの一態様の側面図であり、図3Cは本発明のエンドエフェクタの一態様の(図3Bの左側面から見た時の)背面図である。この例において、エンドエフェクタは、上プレート24、下プレート25、およびこれらのプレート24と25との間に配置されたU形中間部材26によって構成される。この形態の中間部材の使用は、中間部材の体積を小さくすることができるので、図2に示された例と比べてエンドエフェクタの重量を低減することを可能にする。さらに、後に説明される図5に示された基板ロボットにおけるように単一方向に延在するエンドエフェクタの場合、エンドエフェクタの端の曲げを低減する作用が大きい。
【0023】
図4Aは本発明のエンドエフェクタの一態様の俯瞰図であり、図4Bは本発明のエンドエフェクタの一態様の側面図であり、図4Cは本発明のエンドエフェクタの一態様の(図4Bの側面から見た時の)正面図である。この例において、エンドエフェクタは、上プレート27、下プレート28、およびこれらのプレート27と28との間に配置されたハニカム形アラミド繊維から製造された中間部材29によって構成される。このタイプの中間部材の使用は、エンドエフェクタの重量を非常に高いレベルで低減することを可能にする。アラミド繊維は普通の鋼線のほぼ5倍の強度を有し、軽量であり、すぐれた耐熱性および耐衝撃性を有するので、それらは中間部材29として使用するために特に有利である。
【0024】
図1に示されるように、エンドエフェクタ12の全体に中空構造を採用する場合、エンドエフェクタの固定端13がエンドエフェクタの長さ方向に垂直である断面の外周が、より高い振動減衰特性を得るために固定端13から自由端15の方に向かって小さくなる構造を有することが好ましい。ここで、「長さ方向」は、図1に示された中空エンドエフェクタ12の固定端13の断面重心(G1)と自由端15の断面重心(G2)とを結ぶライン11の方向を指す。
【0025】
図1において示されたエンドエフェクタ12において、固定端13の幅および高さをそれぞれH1およびT1、自由端15の幅および高さをそれぞれH2およびT2として規定する場合、エンドエフェクタ12は、自由端の方に向かって幅だけが狭くなるテーパー形状を有する(H1>H2、T1=T2)。しかしながら、本発明のエンドエフェクタは、この形状に限定されない。図1に示された形状を有するエンドエフェクタ12の他に、本発明のエンドエフェクタはまた、例えば、自由端の方に向かって厚さだけが小さくなるテーパー形状を採用することができる(H1=H2、T1>T2)。さらに、本発明のエンドエフェクタはまた、自由端の方に向かって幅および高さの両方が小さくなるテーパー形状を有することができる(図3Aおよび3Bに示されるように、H1>H2、T1>T2)。
【0026】
初期振動の間に振幅を低減するためにエンドエフェクタ12の外周が自由端15の方に向かって小さくなるとき、エンドエフェクタ12の自由端15の外周は好ましくは固定端13の外周の1/3以上、より好ましくは1/2以上である。他方、固定端および自由端について同じ外周を有するエンドエフェクタと比べて自由端15の外周をさらに少し低減することによって振動減衰特性に対する作用を示すために、自由端15の外周は好ましくは固定端13の外周の9/10以下、より好ましくは3/5以下である。したがって、自由端15の外周は好ましくは固定端15の外周の1/3〜9/10、より好ましくは、自由端15の外周は固定端15の外周の1/2〜3/5である。
【0027】
さらに、外周が自由端の方に向かって小さくなる態様は、図1に示されるように外周が固定端13から自由端15の方に向かって均一に減少する態様に限定されない。例えば、外周が固定端13付近の部分で変化せず、次にその部分から外に自由端15の方に向かって序々に小さくなる態様を使用してもよく、または外周が中間部分まで長さ方向に減少し、次にその区分の後に自由端15の方に向かって一定のままである態様を使用してもよい。様々な他のかかる態様を使用することができる。
【0028】
さらに、図面に示されないが、本発明のエンドエフェクタは、固定端および自由端の幅および高さが同じ寸法である形状、すなわちH1=H2、T1=T2であってもよく、その結果、エンドエフェクタの断面は均一であり、固定端から自由端まで変化しない。
【0029】
図1に示されるようにエンドエフェクタ12の自由端は開いたままであってもよく、またはゴムもしくは他の弾性部材から製造されたキャップを開口部の端に挿入してもよい。
【0030】
さらに、図1において示されたエンドエフェクタ12の長さは、エンドエフェクタが基板を支持することができ、後で説明される基板ロボットに基板が収納される時に中心部分の曲げが抑制されるような長さであるのがよい。従って、この長さは、収納される基板のサイズによって適切に決定されてもよい。本発明において、本発明によって示された作用は、エンドエフェクタ12の長さが長くなるとますます顕著になる。特に、本発明は、エンドエフェクタの長さが500mm以上、好ましくは1000mm以上、より好ましくは2300mm以上である場合に非常に有用である。エンドエフェクタ12の幅に特定の制限条件はなく、使用された材料を組み合わせる方法に応じて、収納された基板の中心部分の曲げを抑制するために必要とされた強度および曲げ剛性を維持することができる最小幅は確保されなければならない。さらに、基板が収納されるピッチの範囲内の幅との関係に基づいて、必要とされる最小強度および曲げ剛性を確保することができるように高さもまた適切に設定することができる。典型的に、本発明のエンドエフェクタの高さは5〜60mmである。軽量かつ強度エンドエフェクタが本発明において提供される。典型的にエンドエフェクタの重量は、1〜4kgであるがそれらに限定されない。
【0031】
エンドエフェクタは、ほとんど可撓性を示さないのが好ましい。具体的には、1kgの重量が自由端上に置かれるとき、曲げの撓みは好ましくは20mm未満、より好ましくは10mm未満である。
【0032】
図1に示されるように、上に示された構成に似た構成を有するエンドエフェクタ12は、例えば、上プレート14、下プレート16およびその間に配置された中間部材18から構成される。エンドエフェクタは、このタイプの構成を使用することによって容易に製造することができる。さらに、前記エンドエフェクタ12の上プレート14および下プレート16は、高い振動減衰特性を有するFRPから製造され、アルミニウム、ステンレス鋼またはハニカム形FRPが中間部材のために選択され、曲げの抑制作用の強化を可能にする。さらに、本発明のエンドエフェクタは軽量であることを確実にする。中間部材が中空である場合、さらにより軽量かつ曲げ(歪み)を低減したエンドエフェクタを提供することができる。
【0033】
以下は図1に示されるように、特に、テーパーを付けられた、中空エンドエフェクタを製造するための方法の例に焦点を合わせて本発明のエンドエフェクタの製造方法について説明する。他の形状を有するエンドエフェクタもまた、下に記載された方法を適切に変えることによって製造することができるという事実は、当業者によって容易に理解されよう。
【0034】
最初に、予備工程として、炭素繊維複合材料を上および下プレートのために準備し、アルミニウム構造物を中間部材のために準備する。
【0035】
上および下プレートの成形
上および下プレートのために使用された炭素繊維複合材料は、以下に記載された方法で成形される。最初に、母材樹脂を炭素繊維シートに含浸して未硬化予備含浸(プレプレグ)シートを成形する。このプレプレグシートは、例えば、好ましくは、30体積%以上において490〜950GPaの引張弾性率を有する高弾性炭素繊維を使用する。さらに、ガラス繊維または他の繊維もまた、それらが上および下プレートの支持性能を損なわない場合、炭素繊維複合材料に添加されてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、およびビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を母材樹脂のために使用することができる。この場合、ゴム加硫などの高温および高湿度環境に耐えることができる樹脂が好ましい。さらに、耐衝撃性および靭性を与えるために、ゴムまたは樹脂から製造された微細粒子を熱硬化性樹脂に添加した熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂に溶解された熱硬化性樹脂もまた、熱硬化性樹脂のために使用されてもよい。
【0037】
炭素繊維のタイプには490GPa未満の引張弾性率を有するPANベースの炭素繊維(ポリアクリロニトリル-PAN−繊維から得られた)および490〜950GPaの引張弾性率を有するピッチベースの炭素繊維(石油またはコールタールベースの前駆物質から得られた)などがあるが、これらを本発明において組み合わせて使用することができる。この場合、ピッチベースの繊維は高い弾性率の特性を有し、他方、PANベースの繊維は、高い引張強さの特性を有する。さらに、プレプレグシートの例には、強化繊維が同じ方向に配向される一方向シート、および平織(flat weaves)、綾織、朱子織および三軸織(triaxial weaves)などの交叉織シート(cross−wovensheets)などがある。一方向シートは、490〜950GPaの引張弾性率を有する高弾性炭素繊維プレプレグシートのために特に好ましい。
【0038】
異なったタイプの強化繊維を有するプレプレグシート、強化繊維:母材樹脂の異なった使用比を有するプレプレグシート、または強化繊維の異なった配向を有するプレプレグシートなど、様々なタイプのプレプレグシートを作製することができる。従って、使用されるプレプレグシートは好ましくは、最適な曲げ剛性を有するエンドエフェクタが成形されるように、保持されるガラス基板によって適切に選択される。
【0039】
プレプレグシートの外面は、必要に応じて交叉織プレプレグシートによる被覆されてもよい。交叉織プレプレグシートは、複数の方向に織られた強化繊維に上述の母材樹脂が含浸される未硬化シートを指す。織炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維または炭化シリコン繊維等が強化繊維のために使用されるのが好ましい。さらに、プレプレグシートに密着およびコートすることができるように可撓性の高接着シートが好ましい。鉄等で熱を加えながらプレプレグシートに密着させてコーティングを実施することができる。
【0040】
この交叉織プレプレグシートによるコーティングの結果として、カッティングおよびボーリングなどの後加工の間、毛羽立ちまたは糸のほぐれおよび同様な望ましくない結果が防止される。このように、交叉織プレプレグシートの使用によって加工性を改良するだけでなく、液晶ディスプレイ基板、プラズマディスプレイ基板、シリコンウエハまたは他の精密基板を損なう恐れがなくデブリの発生を抑える利点を提供する。
【0041】
次に、プレプレグシートを予め決められた寸法のプレプレグシート形材に成形する。このプレプレグシート形材の形状は、例えば、図1に示された上プレート14および下プレート16の形状である。プレプレグシート形材を成形するために用いられる方法は、カッティング、機械的加工またはレーザー加工による方法であってもよい。
【0042】
このようにして得られた未硬化プレプレグシート形材を減圧バッグ内に置き、次に、圧力を加える間に炉または同様な機器内で加熱して上および下プレートを得る。加熱条件はこの場合、室温から毎分2〜10℃の率で加熱、約10〜180分間約100〜190℃の温度に保持、次に加熱の中止および自然冷却によって室温に戻すことからなる。未硬化プレプレグ形材を減圧バッグ内に置く目的は、外部圧力(すなわち、大気圧)を未硬化部材にほぼ均一に加えることである。
【0043】
中間部材の成形
中間部材のために使用される材料は好ましくは、アルミニウム、ステンレス鋼またはハニカム形FRPの方法においてすぐれた耐腐蝕性を有する。ステンレス鋼によって実現されうるよりもエンドエフェクタのさらに大きな重量低減を実現するためにアルミニウムを使用するのが好ましい。さらに、重量のさらに大きな低減を望む場合、ハニカム形FRP(アラミド繊維を含有するハニカム形FRPなど)がアルミニウムの代わりに使用されるのが好ましい。
【0044】
これらの金属材料またはFRPを公知の成形方法を用いて規定された寸法の部材に成形して、中間部材を得る。例えば、図1に示されるようにそれらを中間部材18に成形してもよい。カッティング、機械的加工またはレーザー加工によって成形を実施してもよい。
【0045】
エンドエフェクタの成形
上に記載された方法で得られた上プレート、下プレートおよび中間部材を用いて公知の成形方法によってエンドエフェクタを成形する。エンドエフェクタは、例えば、これらの部材を接着することによって成形されうる。例えば、エポキシ接着剤の二液混合タイプを接着剤のために使用することができる。接着条件に特定の制限条件はないが、加工性を考慮して室温で硬化されうる接着剤を用いるのが好ましい。
【0046】
このようにして得られたエンドエフェクタは、前に説明したように容易に製造することができる。さらに、エンドエフェクタは上プレート、下プレートおよびその他の部材を有する複合部材の形であるので、エンドエフェクタ全体が曲げを抑制する作用を有する。従って、エンドエフェクタの振動によって生じさせられる曲げが抑制され、それによってエンドエフェクタを曲げる際にガラス基板間の接触を効果的に防ぐことができる。さらに、エンドエフェクタのさらなる重量低減は、上述の材料および上および下プレートの中空構造を用いることによって実現することができる。
【0047】
さらに、成形円筒エンドエフェクタの場合のように、コアに対して予め決められた角度で非加硫シートの多数の層を巻き付けるなど、複雑な製造プロセスを経ることによって図1に示されたようなエンドエフェクタ12を成形することは必要ではない。従って、エンドエフェクタの製造効率を劇的に改良することができる。結果として、エンドエフェクタを容易かつ安価に製造することができる。
【0048】
以上、本発明のエンドエフェクタに関して説明したが、以下は、このタイプのエンドエフェクタを使用する基板搬送ロボットについて説明する。
【0049】
図5は、本発明のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット30の例の略斜視図である。基板搬送ロボット30は、エンドエフェクタ(フィンガー)31、リスト32およびアーム33からなる。エンドエフェクタ31の各々は、リスト32に取り付けられた固定端34および自由端35を有する。基板は、エンドエフェクタ31上に置かれることによって搬送される。
【0050】
本発明のエンドエフェクタは、薄さ、曲げの抑制および軽量の作用の各々を示す結果として液晶ディスプレイの製造プロセスにおいて用いられたガラス基板を搬送するために有用である。さらに、本発明のエンドエフェクタを容易に製造することができる。さらに、基板を取り扱う本発明のロボットは、第8世代基板と称される大きいサイズのガラス基板を搬送するために特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック(FRP)から製造された上プレートと、
繊維強化プラスチック(FRP)から製造された下プレートと、
前記上プレートと前記下プレートとの間に配置され、アルミニウム、ステンレス鋼およびハニカム形繊維強化プラスチック(FRP)からなる群から選択された材料を含む中間部材とを含む、基板搬送ロボットのエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記FRPの繊維が炭素繊維、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記FRPの前記繊維が490〜950GPAの引張弾性率を有する炭素繊維であり、前記繊維の体積が前記FRPの全体積の30%以上である、請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記繊維の前記体積が前記FRPの前記全体積の40%以上である、請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記エンドエフェクタが、前記基板搬送ロボットに取り付けられた固定端と、自由端と、前記エンドエフェクタの長さ方向に垂直である断面とを有し、前記エンドエフェクタが中空構造を有し、前記断面の外周が、前記固定端から前記自由端の方に向かって小さくなる、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記自由端の外周が前記固定端の外周の1/3〜9/10である、請求項5に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記自由端の前記外周が前記固定端の前記外周の1/2〜3/5である、請求項6に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
請求項1に記載のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット。
【請求項9】
請求項2に記載のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット。
【請求項10】
請求項3に記載のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット。
【請求項11】
請求項5に記載のエンドエフェクタを備えた基板搬送ロボット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524241(P2010−524241A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502254(P2010−502254)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/059102
【国際公開番号】WO2008/124421
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】