説明

基板を電磁妨害から遮蔽するための方法

基板を電磁妨害から遮蔽する方法であって、電磁妨害(EMI)遮蔽組成物を基板に供給するステップを含む方法が提供される。EMI遮蔽組成物は、反応性の有機化合物と、伝導性の充てん材とを含んでおり、この伝導性の充てん材は、有機化合物の硬化の際に、金属の連続的な三次元網を(連続的または半連続的な)ポリマー豊富領域の中に位置させてなる不均質な構造へと自己組織化することができる。得られた組成物は、非常に高い熱伝導率および導電率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年6月12日に出願された「ELECTROMAGNETIC SHIELDING MATERIALS」という名称の米国特許仮出願第61/186,492号および2009年6月12日に出願された「CURABLE CONDUCTIVE MATERIAL FOR LIGHTNING STRIKE PROTECTION」という名称の米国特許仮出願第61/186,415号からの米国特許法第119条(e)に規定の優先権を主張し、これらの米国特許仮出願の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、導電ポリマーコーティングに関する。さらに詳しくは、本発明は、電磁妨害遮蔽コーティングとして使用される導電性の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
電磁妨害(EMI)は、電子通信において直面される一般的な問題である。外部からの放射が、電子部品に望ましくない電流を生じさせ、正常な動作を乱すことが周知である。この問題は、外部からの周波数が飛行制御を乱し、乗客の安全を損なう可能性があるため、航空電子工学の用途において特に心配される。外部からの放射は、例えば無線通信、送電、電子デバイス、雷、静電気、および兵器からの核電磁パルス(EMP)など、多数の発生源から生じる可能性がある。そのような影響に対する保護を促進するために、電子デバイスおよび部品を、とりわけ筐体、コーティング、ガスケット、接着剤、シーラント、ワイヤスリーブ、金属メッシュ、またはフィルタなどによって完全に遮蔽することが、一般的である。これらの技術的解決策のすべてに共通の特質は、遮蔽材料が、導電性であると同時に、低い電気インピーダンスを有する点にある。一般に、遮蔽の水準は、材料の導電率に比例する。
【0004】
この理由で、アルミニウムおよび鋼などの金属が、EMI筐体を製作するために一般的に使用されている。特に航空宇宙および運輸の観点から、そのような筐体の1つの弱点は、金属の使用に伴う重量の不利益である。軽量な遮蔽材料の必要性が、製造者に対し、熱可塑性材料または複合材料の箱を生成するように促している。そのようなシステムにおいて、遮蔽は、いくつかのやり方で達成され、すなわちポリマーに金属箔またはワイヤを埋め込むことによって達成され、薄い金属コーティングを付着させ、あるいはめっきすることによって達成され、さらにはメタリック塗料によって達成されている。残念ながら、これらの技法の各々は、とりわけ限定的な遮蔽の有効性、大規模な製造可能性の問題、腐食の問題、および限定されるポリマー基材の選択肢などといった弱点を抱えている。これらのポリマー複合材料の多くは、銀、ニッケル、または銅などといった高価な金属で構成されるため、材料のコストも問題となりうる。
【0005】
さらなるEMI遮蔽は、重量の削減または光学的な透明性の必要性ゆえに、金属ワイヤスクリーンまたはメッシュを使用することができる。金属ワイヤスクリーンは、持ち前の高い導電性(効果的なEMI遮蔽のために必須である)ゆえに使用される。しかしながら、EMIスクリーンも、GHzの周波数における限定的な遮蔽の有効性、繊細なスクリーンの取り扱い、筐体へのスクリーンの組み込みおよび接地、ならびに現場における破損した筐体の補修などといった限界を抱えている。
【0006】
さらに、多数の既存のEMI遮蔽材料は、航空機の外被などの用途において望まれる接地への明確な経路を提供していない。絶縁樹脂母材に埋め込まれたエキスパンドメタル箔(EMF)などのEMI遮蔽材料は、一般に直交導電率を有していない。EMF材料を有するパネルを電気的に接続するために、製造者は、樹脂母材を削り、両方のEMFを露出させなければならない。次いで、隣接する導電ストラップをパネルをまたいで貼り付けなければならず、盛り上がった傷跡の欠陥を生じないように注意を払わなければならない。
【0007】
高性能の遮蔽の用途では、幅広い周波数の範囲にわたって60dBを超える遮蔽の水準が必要とされる。航空宇宙および軍事の用途においてしばしば必要とされるきわめて高い遮蔽の水準は、90dbを超える水準を必要とする。従来技術の材料は、多くの場合、これらの厳しい要件を満たしつつ、軽量、安価、かつ適用および補修が容易であるものとすることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の材料および方法において知られたこれらのニーズおよび限界が、本発明の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態においては、本出願と所有者が同じであり、参照により全体が本明細書に援用される2008年3月26日に出願された米国特許出願第12/055,789号(米国特許出願公開第2010/0001237号として公開)に記載の材料が、硬化の際にその場で形成される伝導性の母材として使用され、EMI遮蔽をもたらすために基板に適用される。
【0010】
既存のEMI遮蔽材料における種々の問題に対処するための努力において、本発明の実施形態は、反応性の有機化合物と、導電性の充てん材とを含むEMI組成物であって、導電性の充てん材が、有機化合物の硬化の際に、導電率および随意による熱伝導率がバルクの金属の導電率および熱伝導率に対して数桁の範囲内にある金属の連続的な三次元網を(連続的または半連続的な)ポリマー豊富領域の中に位置させてなる不均質な構造へと自己組織化することができるEMI遮蔽組成物を使用する。現在の従来技術の組成物は、丈夫なEMI遮蔽の用途に必要とされることが多い軽量、施用性、および付着などといった特性を高い伝導性と組み合わせて有することを、多くの場合に欠いている。きわめて高い導電性の水準を達成するために必要な充てん材の量が、本発明の実施形態によってのみ、成功する材料に必要な密度、流動性、および接着性を保ちながら得ることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、基板を電磁妨害から遮蔽する方法であって、基板を用意するステップと、基板に電磁妨害(EMI)遮蔽組成物を供給するステップとを含んでおり、前記電磁妨害遮蔽組成物が、硬化のプロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる充てん用の硬化性材料を含んでいる方法が提供される。本発明の他の実施形態においては、前記硬化性材料が、硬化性の有機化合物と充てん材とを含んでおり、これらの充てん材および有機化合物が、有機化合物の硬化の際に、充てん材の伝導性の経路への自己組織化を生じさせる相互作用を呈する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、前記硬化性の組成物が、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、脂肪酸で被覆された伝導性の充てん材とを含んでいる。本発明の好ましい実施形態においては、エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含んでおり、エポキシ硬化剤が、無水フタル酸とジエチレントリアミンとの間の反応に基づく無水ポリアミン付加化合物を含んでいる。
【0013】
本発明の一実施形態においては、前記組成物が、所定の線太さおよび所定の開口サイズを備える所定のパターンで基板に適用され、好ましい実施形態においては、基板に適用された組成物が光学的に透明である。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態においては、前記組成物が、約1MHz〜約40GHzの間で少なくとも20dBの遮蔽効果を有しており、より好ましくは、前記組成物が、約1MHz〜約40GHzの間で少なくとも約80dBの遮蔽効果をもたらす。
【0015】
本発明のさらなる態様においては、基板にEMI遮蔽組成物を供給するステップが、少なくとも1つの不連続な伝導性の経路を含んでいるEMI遮蔽系の損傷した部位を特定するステップと、EMI遮蔽組成物を前記損傷した部位に配置するステップと、前記配置した組成物を硬化させ、前記損傷した部位の前記少なくとも1つの不連続な伝導性の経路を完成させる少なくとも1つの自己組織化による伝導性の経路を設けるステップとを含んでいる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態においては、前記EMI保護系が、伝導性の金属薄板、金属箔、金属メッシュ、カーボン−金属繊維混合織物、金属化カーボン、および充てん用導電ポリマーのうちの少なくとも1つを含んでいる。本発明のまたさらなる実施形態においては、前記EMI遮蔽系が、硬化プロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる充てん用の硬化性材料を含んでいる。
【0017】
本発明のまたさらなる態様は、EMI遮蔽材料の非破壊検査のための方法であって、EMI遮蔽をもたらすことができる導電性の組成物を供給するステップと、前記組成物の電気的特性を測定するステップと、前記測定された組成物の電気的特性を、該組成物のすでに劣化した試料の導電率と照らし合わせ、前記組成物の劣化の程度を判断するステップとを含んでいる方法を提供する。本発明の好ましい実施形態においては、前記組成物が、硬化プロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる硬化性材料を含んでいる。本発明の別の実施形態においては、前記電気的特性が、電気抵抗を含む。
【0018】
形成される不均質な構造ゆえに、EMI遮蔽組成物が、ポリマー母材の全体に均一に位置した粒子から構成される一様な構造を有する伝統的な組成物の粒子濃度を大幅に下回る粒子濃度で、全体に及ぶ伝導性の粒子の網を生じさせることができる。さらに、硬化の際に形成される不均質な構造が、粒子の焼結を可能にし、粒子間の接触抵抗を取り除き、熱および電気の伝導性の劇的な改善をもたらす。さらに、焼結された金属の連続的な経路が、熱または電界が強烈である用途において直面される可能性があるかなりの量の熱および電流を運ぶことを可能にする。より少ない充てん材の導入量と関連の連続的な経路の自己組織化との組み合わせによって、より軽量であり、処理がより容易であり、基板に対する濡れおよび付着を改善するために利用できるより多くの樹脂を有するEMI材料が可能となる。
【0019】
その等方性の性質ゆえに、この組成物は、直交するすべての方向に伝導性であり、複合構造のz方向の導電率および熱伝導率を大きく改善する役に立つ。次いで、この改善が、界面における抵抗の大幅な削減を可能にし、遮蔽および電子部品の性能向上にきわめて重要な接地および熱の伝達を改善する。
【0020】
さらに、高度に伝導性かつ等方性の性質ゆえに、電磁妨害に対する保護、ならびに静電荷の蓄積の除去、氷を溶かすための熱の経路(例えば、除氷材料)、および雷撃に対する保護の目的(ただし、これらに限られない)のための多機能材料として使用することができる。さらに、形成される構造が、自然な開口として働いて特定の波長について遮蔽の向上をもたらす三次元メッシュによく似た構成を生得的に有する。
【0021】
本発明の別の実施形態においては、反応して共有結合を形成できるという有機成分の能力ゆえに、反応性または非反応性(例えば、熱可塑性またはすでに反応済みの熱硬化性)の基板との同時の硬化あるいはそのような基板上での硬化が、容易に可能である。
【0022】
さらには、未硬化(A段階またはB段階であり、C段階ではない)の組成物が、所望の取り扱い性を有しており、種々の適用の形態に容易に適合させることができる。そのような形態として、これらに限られるわけではないが、施用可能な接着剤、印刷可能インク、その場で形成されるガスケット、スプレーコーティング、接着フィルム、あるいは繊維プリプレグまたは単向性テープなどの繊維補強複合材料に使用され、あるいはそのような繊維補強複合材料とともに使用される樹脂が挙げられる。さらには、組成物が、硬化後にEMI筐体そのものを形成することができる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化組成物を、1つ以上の層が伝導性の自己組織化組成物で構成されるように、2つ以上の層からなる積層構造を製造するために使用することができる。
【0024】
さらには、本発明の実施形態においては、未硬化の組成物が、独特な混成構造を生み出して、EMI保護と重量との魅力的な組み合わせをもたらすために、既存のEMI材料と組み合わせて使用される。例として、これらに限られるわけではないが、中実な金属箔ならびに金属スクリーンまたはメッシュを埋め込むためのB段階のフィルムとして使用される自己組織化材料が挙げられる。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、自己組織化組成物が、EMI材料の異なる部分の組み立てに関し、あるいはEMI材料の補修の際に、境界面を電気的に橋絡させることができる。本発明のさらなる実施形態においては、材料を、未硬化のスプレーコーティング、未硬化の(C段階でない)フィルム接着剤、あるいは随意により伝導性の充てん材が充てんされる補助の接着剤または樹脂を使用して貼り付けられる可撓な硬化済みフィルムとして適用することができる。本発明のさらなる実施形態においては、補修または接着すべき既存または隣接する基板は、自己組織化する不均質材料と同じ組成であってよく、あるいは金属箔またはスクリーン(ただし、これらに限られない)に基づくEMI系など、既存のEMI系に基づくことができる。
【0026】
さらには、高度に導電性かつ等方性の性質ゆえに、本明細書において説明される材料は、定量的な非破壊検査の役に立つ。本発明のさらなる実施形態においては、硬化した組成物の導電率を、これらに限られるわけではないが、被保護部品の製造時の欠陥の評価、EMI材料の損傷の程度の評価、または現場における材料の性能の劣化の評価の目的のために測定することができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明の材料、構造、およびプロセスが、例えば核兵器からの電磁パルス(EMP)に対する保護をさらにもたらす。
【0028】
本発明の別の実施形態においては、自己組織化材料が、部品を接続するための接着剤およびEMI遮蔽の両方として機能する。本発明の実施形態においては、自己組織化材料が、材料の接着性によって金属部品を非金属部品に接続するために使用される。同じ材料を、EMI遮蔽をもたらすために非金属部品へと被覆することができ、伝導性の経路が、被覆された非金属の部品と金属部品との間に材料を介してもたらされる。
【0029】
本発明の他の実施形態においては、硬化した自己組織化材料が、複合材料の航空機の外被または他の基板に沿って、接地への明確な経路を設ける。雷撃に対する保護およびEMI遮蔽性の改善に加えて、この接地への経路は、製造者にとって、航空機の導電性の外被層を接地面へと結ぶために使用しつつ、接地ワイヤおよび接地作業の量の削減を可能にする。硬化のプロセスを通じて、自己組織化材料は、任意の隣接する金属フレームまたは他の導電フィルムへの電気的接続をもたらす。この電気的接続の形成の容易さは、自己組織化接着フィルムの直交する導電性および硬化のプロセスの際の流動性による。
【0030】
本発明のさらなる態様においては、少ない充てん材の量で例外的に高い導電率および電磁遮蔽効果を有する高度に伝導性な自己組織化接着剤または複合材料が、電磁妨害(EMI)遮蔽/フィルタを生成すべく、相互接続された既知の厚さおよび開口サイズの軌跡からなる特定のパターンで基板に適用される。
【0031】
本発明の一実施形態においては、自己組織化接着剤が、例えばジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ソフトまたはオフセットリソグラフィ、マスクおよびスプレー、ならびにステンシル印刷などのいくつかの技法を使用してパターンに送り出される。本発明のさらなる実施形態においては、メッシュのパターンが、自己組織化伝導性接着剤の重なり合う軌跡を基板へ送り出すことによって生成される。材料を、同時硬化のフィルムとして、硬化した複合材料への最後の工程として、あるいは複合材料の製造時または補修時のつなぎ剤として、外側層へと適用することができる。パターンの形成は、光学的に透明な基板にEMI遮蔽をもたらすためにも有用である。この場合、通信周波数が反映されると考えられるが、依然として物品は、可視光に対して透過性であると考えられる。この実施形態の好ましい典型的な用途は、遮蔽窓、表示装置、タッチ式画面、モニタおよびLCD画面、および天蓋(例えば、航空機の風防)であると考えられる。そのようなパターンは、典型的には、所望の周波数の有効性に応じて、約1〜約3ミルの線太さおよび約2〜約15ミル以上の開口サイズを備える格子パターンを含む。
【0032】
さらなる実施形態においては、組成物を、電子部品を基板および/または部品レベルの遮蔽で遮蔽するために、等角コーティングの形態で使用することができる。さらには、導電性の組成物が、電気絶縁性の等角の第1の層の上に第2の層として適用されると考えられる。第1の層は、複合材料または従来技術の材料であってよい電気絶縁層で構成されなければならない。優秀なEMI遮蔽と組み合わせられた組成物の高い熱伝導率は、現在のコーティングが電子部品が生じる熱を適切に放散させるために必要な高い伝導性を欠いているため、2層の系としてきわめて有用であると考えられる。
【0033】
要約すると、本発明の実施形態は、高い電磁遮蔽能力を有する材料を生み出すために、形成されて得られるポリマー(ビスフェノールFと無水ポリアミン付加化合物硬化剤との反応によって生じるポリマーなど)と被覆された充てん材との間に生じる反応によって誘起された相の分離に起因して自己組織化する材料を使用する。遮蔽の水準が、試料の全体に銀を一様に分布させて有する複合材料と比べて、〜2〜10倍も高くなることが示されている。さらに、硬化した自己組織化組成物において達成されるこの水準が、少ない充てん材の量で得られている。
【0034】
このように、本発明のより重要な特徴を、以下の詳細な説明をよりよく理解することができ、かつ本発明の当技術分野への貢献をよりよく認識できるよう、かなり大まかに概説した。当然ながら、後述される本発明のさらなる特徴が存在し、それらは添付の特許請求の範囲の主題を形成する。この点に関し、本発明のいくつかの実施形態を詳しく説明する前に、本発明の応用が、以下の説明に記載され、あるいは図面に図示される細部および構成ならびに部品の配置に限られないことを、理解すべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、さまざまなやり方で実施および実行することが可能である。
【0035】
また、本明細書における表現および用語が、説明を目的としたものであり、それらの表現および用語を、決して本発明を限定するものとして解釈してはならないことを、理解すべきである。当業者であれば、本開示の根底にある考え方を理解でき、そのような考え方を、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、および系を指定するための基礎として利用できることを、理解できるであろう。特許請求の範囲を、そのような均等な構成を、本発明の技術的思想および技術的範囲から離れない限りにおいて、含むものとして解釈することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態による材料を含む種々の材料について、遮蔽効果のグラフである。
【図2】本発明の実施形態におけるコーティングについて、シート抵抗−遮蔽効果の散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の実施形態においては、電磁放射から基板を遮蔽するための方法であって、基板を用意するステップと、電磁放射遮蔽組成物を基板に設けるステップとを含んでおり、電磁放射遮蔽組成物が、硬化のプロセスにおいて導電経路を形成するように自己組織化できる充てん用の硬化性材料を含んでいる方法が提供される。導電性の充てん材が、ポリマー母材の硬化の際に導電経路へと自己組織化し、従来技術の材料の欠点の多くに対処する導電性のEMI遮蔽材料をもたらす。
【0038】
自己組織化および構造形成の機構は、材料成分の適切な選択および特定の処理条件の順守によって達成される。本発明の一実施形態においては、充てん材成分が、伝導性充てん材(熱、電気、または両方)を含んでおり、有機化合物が、モノマーおよび随意による硬化剤を含んでいる。有機材料の反応の際に充てん材の豊富な領域が形成されることで、充てん材−充てん材の粒子の直接的な接触を形成することができる。熱の存在において、粒子をさらに焼結させることができる。焼結により、以前の未焼結の充てん材粒子の間の接触抵抗が取り除かれ、複合材料の熱伝導率および/または導電率が大幅に向上する。
【0039】
完全には理解されておらず、かつこの理論に縛られるつもりもないが、自己組織化および領域形成ならびに焼結は、有機材料の硬化温度、硬化時間、および硬化の際に加えられる圧力の程度に影響されると考えられる。換言すると、領域形成および焼結は、速度論的に駆動されるプロセスである。またさらなる実施形態においては、試料の加熱の速度が、領域形成および焼結の程度に影響を及ぼすと考えられる。全体として、処理条件を、最小限の充てん材の量(多くの場合に、より低いコストにつながり、充てん材の量が多いと悪影響を被る他の特性を利用する機会につながる)において最良の特性の組み合わせを有する伝導性の接着を達成するように調節することができる。いくつかの場合、接着剤が高い焼結温度に耐えることができない用途に使用される場合には、より高い圧力または非伝統的な焼結技法を、格別に高い伝導性を達成するために使用することができる。
【0040】
充てん材成分および反応性の有機化合物は、混合時に一様な混合物を生じるように選択される。しかしながら、硬化時に、有機化合物から形成されて得られるポリマーは、組成物が充てん材の配合がバルクの充てん材の濃度よりも有意に高い充てん材の豊富な領域を有する不均質な化合物へと自己組織化できるよう、充てん材との反発相互作用を有すると考えられる。このようにして、化合物の全体としての(バルクの)充てん材の濃度が変わらない一方で、充てん材粒子および有機成分が、それぞれの高濃度の領域へとその場で自己組織化する。この現象が、初期の充てん材−充てん材の接触が存在してもきわめてわずかである混合物からその場で形成される相互接続された充てん材粒子の自己組織化による網目構造をもたらすことができる。
【0041】
充てん材成分と有機化合物との間の反発相互作用を生じさせるために、使用することができるいくつかの手法が存在する。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、これが、充てん材粒子を非極性のコーティングで被覆し、被覆済みの充てん材を比較的非極性の樹脂と極性の硬化剤とを含む反応性の有機化合物に混合することによって達成される。未硬化の状態において、樹脂、硬化剤、および充てん材は、比較的一様な混合物を形成し、被覆された充てん材および樹脂が互いになじみ、比較的一様な混合物を形成している。しかしながら、熱を加えることで、硬化剤が樹脂と反応して、極性部分を有するポリマーが形成され、結果として充てん材の非極性のコーティングとポリマーの極性部分との間に反発相互作用が生じる。この反発相互作用が、それぞれの濃度がポリマーおよび充てん材のそれぞれのバルク濃度よりも有意に高い、ポリマーが豊富な領域および充てん材が豊富な領域の自己組織化につながる。さらには、広範囲にわたる領域の形成により、充てん材粒子の大部分の間のかなりの粒子−粒子の接触を有する連続的な充てん材の豊富な領域を生成することができる。
【0042】
充てん材の存在下で有機化合物の硬化時に反発作用を生じさせることができる他の種類の相互作用は、これらに限られるわけでないが、静電相互作用、水素結合相互作用、双極子間相互作用、誘起双極子相互作用、疎水−親水相互作用、ファンデルワールス相互作用、および金属相互作用(有機金属化合物と金属充てん材など)で構成されてもよい。他の形態の反発相互作用は、有機化合物から形成されるポリマーの分子量の差など、エントロピ関連の作用から生じてもよい。さらに、反発相互作用は、電界などの外的刺激の結果として生じてもよい。
【0043】
充てん材の存在下で有機化合物が硬化する際に形成される領域は、バルク(平均)の充てん材濃度よりも高い充てん材の豊富な領域と、バルク(平均)の充てん材濃度よりも低い有機化合物の豊富な領域とをもたらす。平均の充てん材濃度よりも高い領域は、硬化した組成物の全体に広がる伝導性の充てん材材料の半連続的または連続的な経路を形成できる。これらの経路が、電子および/または熱フォノンが移動することができる低抵抗の経路を設ける。換言すると、経路またはチャネルが、大幅に向上した熱伝導率および/または導電率を可能にする。この伝導性の経路を、充てん材粒子の焼結によってさらに向上させることができる。そのような高い伝導性の経路は、幅広い周波数のスペクトルにわたって電磁放射をより良好に吸収するためのEMI遮蔽にとってきわめて有益である。
【0044】
焼結は、当技術分野において理解されるとおり、粒子が材料のバルク溶融温度よりも低い温度で融着する表面の溶融現象である。この挙動は、材料がより低いエネルギ状態へと弛緩しようとする傾向によってもたらされる。したがって、充てん材の種類、サイズ、および形状の選択が、充てん材粒子の焼結性に大きな影響を及ぼしうる。薄くて幅広く平坦な板など、特定の粒子は、大型の粒子を種々のミリングプロセスによってせん断することによって形成されることが多い。このプロセスは、大きな表面積を生じさせると同時に、大きな内部応力を付与する。特定の量の熱が粒子に加えられるとき、粒子は、溶けて融着する傾向を有することで、内部のひずみを緩和し、粒子の全体としての表面エネルギを減少させる。この理由で、本発明における使用にとって好ましい充てん材粒子は、或る程度の熱または導電性を備え、焼結が容易である充てん材粒子である。本発明のまたさらなる実施形態においては、好ましい充てん材が、焼結をさらに可能にするひずみを充てん材の構造へと加える冷間加工が加えられた金属粒子を含む。
【0045】
焼結温度は、充てん材として選択される材料および充てん材粒子の形状に応じてさまざまであろう。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、有機化合物の硬化と充てん材の焼結とを同時に生じるようにバランスをとることが、好都合である。この実施形態においては、硬化温度およびプロファイルが、有機化合物が充てん材に対して反発性になり、充てん材粒子が押し合わせられ、粒子−粒子の接触が形成された場合に個々の充てん材粒子が焼結されうるように、充てん材の焼結温度に一致するように選択される。これが、完全に硬化した組成物の全体にわたって見られる連続的な充てん材の構造に貢献すると考えられる。本発明の好ましい実施形態においては、焼結温度が、銀フレーク充てん材において、少なくとも約100℃、より好ましくは約150℃、さらにより好ましくは150℃超である。
【0046】
本発明の別の実施形態においては、低温での硬化が望ましい場合がある。例えば、硬化性の組成物を熱の影響を受けやすい基板にコーティング/塗布する場合、硬化剤および硬化機構を、50℃未満であり、あるいは室温(20〜25℃)を下回る温度で硬化および自己組織化した材料が得られるように調節することができる。例えば低温硬化環境において、硬化の段階においては焼結が生じない本発明の実施形態においては、粒子が、焼結されていない自己組織化による経路を最初に形成してもよい。次いで、焼結の工程を、後に追加することができる。この後に追加される焼結の工程は、硬化および自己組織化した材料の周囲加熱または電気誘導加熱による加熱を含むことができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態においては、自己組織化する組成物を、熱を加えることなく硬化させることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、組成物が、組成物への熱の印加によって硬化させられる。熱硬化は、一般に、高温の空気または放射熱が組成物の温度を高めるために使用される対流オーブンまたはオートクレーブなどの硬化オーブンにおいて達成される。本発明の別の実施形態においては、電磁界中での誘導硬化、マイクロ波硬化、赤外線硬化、電子ビーム硬化、紫外線硬化、および可視光による硬化など、他の硬化方法を使用することができる。さらには、硬化反応が、発熱硬化反応の使用によって自己加速であってよい。例えば、プラスチックなどの温度の影響を受けやすい基板を組成物で被覆する場合、非熱の硬化が望ましい場合がある。
【0048】
本発明の一実施形態においては、充てん材が、無機充てん材を含んでいる。利用可能な充てん材として、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、すず、アンチモン、白金、金、チタニウム、鉛、およびタングステンなどの純粋な金属、ならびに酸化アルミニウム、チッ化アルミニウム、チッ化ケイ素、チッ化ホウ素、炭化ケイ素、および酸化亜鉛などの金属酸化物およびセラミックが挙げられる。カーボン含有の充てん材を、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、および炭素繊維で構成することができる。適切な充てん材は、上述の充てん材の合金および組み合わせをさらに含む。さらなる充てん材は、溶融石英粉末、アルミナ、および酸化チタンなどの無機酸化物粉末、ならびにアルミニウム、チタニウム、ケイ素、およびタングステンの硝酸塩を含む。粒子材料として、数ナノメートル〜数十ミクロンの範囲の粒子寸法を有するものが挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態において、充てん材は、硬化後の組成物の総体積に基づき、約40体積パーセント以下で存在する。本発明の好ましい実施形態においては、充てん材が、硬化後の組成物の総体積に基づき、約30体積パーセント以下で存在する。本発明のより好ましい実施形態においては、充てん材が、硬化後の組成物の総体積に基づき、約15体積パーセント以下で存在する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態においては、充てん材は、導電性、熱伝導性、または両方である材料を含んでいる。金属および金属合金が、本発明のいくつかの実施形態において使用するために好ましいが、充てん材は、伝導性かつ焼結可能な非金属材料を含むことができる。本発明の別の実施形態においては、充てん材が、或る種類の充てん材(例えば、伝導性でない充てん材)が銀などの伝導性かつ焼結可能な材料で被覆されている複合粒子を含むことができる。このやり方で、使用される銀の総量を減らしつつ、充てん材粒子の焼結性および焼結後の材料の伝導性を保つことができる。
【0051】
本発明の実施形態においては、充てん材成分が、仕上がった材料に不均質な構造を与えるべく有機化合物と相互作用できなければならない。上述のように、本発明の好ましい実施形態においては、これが、極性の有機化合物と非極性の充てん材との相互作用によって達成される。金属などの好ましい充てん材材料において、充てん材は、所望の程度の極性を備える材料で被覆される。本発明の好ましい一実施形態においては、充てん材の被覆が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびパルミチン酸など、非極性の脂肪酸コーティングを含む。本発明のまたさらなる実施形態においては、充てん材の被覆が、アルカン、パラフィン、飽和または不飽和脂肪酸、アルケン、脂肪酸エステル、ろう質のコーティング、あるいはオリゴマーおよびコポリマーなどといったいくつかの非極性の材料のうちの少なくとも1つを含んでいる。本発明のさらなる実施形態においては、非極性のコーティングが、疎水性尾部を有する有機チタン酸塩、あるいは疎水性尾部または官能性シリコーンを含んでいるシランなどのケイ素主体のコーティングを含んでいる。
【0052】
本発明のさらなる実施形態においては、コーティング(または、界面活性剤、結合剤、表面改質剤、など)が、充てん材粒子を硬化性の組成物へと取り入れる前に充てん材粒子へと塗布される。コーティング方法の例は、これらに限られるわけではないが、水性アルコールからのコーティングの付着、水溶液からの付着、生の充てん材へのバルク付着(例えば、スプレー溶液および円錐ミキサを使用し、コーティングおよび充てん材をミルまたは摩砕機で混ぜ合わせる)、および蒸着である。またさらなる実施形態においては、コーティングが、有機成分(すなわち、樹脂および硬化剤)の間の反応に先立って充てん材を処理するように組成物へと加えられる。
【0053】
本発明の別の実施形態においては、充てん材/コーティングおよびポリマーの極性が逆にされ、充てん材/コーティングが極性部分を含み、有機化合物が非極性のポリマーを含む。同様に、自己組織化を駆動するために極性以外の反発作用が使用される本発明の実施形態においては、充てん材および有機成分の有効な特性が、入れ換えられてよい。
【0054】
本発明の好ましい実施形態においては、有機化合物が、エポキシ樹脂および硬化剤を含む。この実施形態においては、有機化合物が、全組成の約60〜約100体積パーセントを構成する。この実施形態において、有機化合物は、およそ70〜85重量パーセントのビスフェノールFなどのビスフェノール化合物のジグリシジルエーテル、および15〜30重量パーセントの無水フタル酸とジエチレントリアミンとの反応に基づく無水ポリアミン付加化合物などの硬化剤を含む。
【0055】
本発明のさらなる実施形態においては、適切な有機化合物が、以下の種類のシロキサン、フェノール、ノボラック、アクリレート(または、アクリル)、ウレタン、尿素、イミド、ビニルエステル、ポリエステル、マレイミド樹脂、シアン酸エステル、ポリイミド、ポリ尿素、シアノアクリレート、ベンゾオキサジン、不飽和ジエンポリマー、およびこれらの組み合わせのモノマー、反応性オリゴマー、または反応性ポリマーを含む。硬化の化学反応は、有機化合物に使用されるポリマーまたは樹脂に依存すると考えられる。例えば、シロキサン母材が、付加反応の硬化性母材、縮合反応の硬化性母材、過酸化物反応の硬化性母材、またはこれらの組み合わせを含むことができる。硬化剤の選択は、充てん材粒子の伝導経路への所望の自己組織化をもたらすための、本明細書において説明されるとおりの充てん材成分および処理条件の選択に依存する。
【0056】
別の実施形態においては、組成物が、その等方性の性質ゆえに、直交するすべての方向において伝導性であることで、複合構造のz方向の導電性および熱伝導性が大きく改善される。結果として、この改善が、複合の積層体に存在する非伝導性の樹脂層に関する容量効果および熱の蓄積を大いに軽減することを可能にする。さらに、材料が、複合材料の基材の層内または層間の隣接する炭素繊維を橋絡させることによって、熱および電子の移動を促進することができる。本発明のまたさらなる実施形態においては、自己組織化した材料のきわめて伝導性かつ等方性の性質が、さらに詳しく後述されるとおりの定量的な非破壊検査に役立つ。
【0057】
未硬化(A段階またはB段階であり、C段階ではない)の自己組織化組成物は、所望の取り扱い性を有しており、種々の適用の形態に容易に適合させることができる。本発明の一実施形態においては、自己組織化組成物が、有機化合物の硬化の際に反応性または非反応性の基板に結合することができる流動性の接着剤(例えば、液体またはペースト)を含んでいる。すなわち、自己組織化組成物が、特定の適用技法を向上させ、基板へのより強い機械的接続を可能にする接着性を備えており、結果として基板と接着剤の内部の導電網との間の電気的接続を向上させる。結果として、隣接する2つの面を結合させつつ、さらにEMI遮蔽をもたらすことができる接着剤がもたらされる。そのような1つの例は、その場で形成されるガスケットまたは等角のコーティングである。
【0058】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化組成物が、硬化性の有機成分が「A面」に存在し、硬化剤が「B面」に存在し、混合時に硬化反応が開始される2つの部分からなる系として提供される。充てん材および任意の他の随意による成分が、A面、B面、または両方に位置することができる。
【0059】
他の実施形態においては、組成物が、複合材料の用途に一般的に使用されるB段階のフィルム接着剤の形態である。さらに、フィルム接着剤は、取り扱い性を高めるために、不織のベールなどの随意による担体布地を有する。さらに別の実施形態においては、ベールが、組成物のEMI遮蔽能力をさらに高めるために導電性であってよい。
【0060】
本発明の別の実施形態においては、組成物を、組成物に溶媒を加えることによって基板にスプレーとして適用することができる。本発明の好ましい実施形態においては、溶媒が、有機化合物を(完全に、または部分的に)溶かすために適しつつ、複合構造のための一般的な処理条件のもとで蒸発させることができる構造を備えている。エポキシ樹脂が使用される本発明の好ましい実施形態においては、溶媒が、これらに限られるわけではないが、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、ジメトキシエタン、トリクロロエチレン、グリコールエーテル、およびこれらの混合物を含む。さらに、溶媒の選択は、使用される硬化剤によっても決定付けられる。好ましい一実施形態においては、エポキシ樹脂について溶媒として働き、無水ポリアミン付加化合物について非溶媒として働くアセトンなどの化学物質を選択することが望ましい。本発明の好ましい一実施形態においては、溶媒が、非溶媒成分の0.25〜1.5重量部を構成する。
【0061】
本発明の他の実施形態においては、組成物が、被覆または引き抜き成形された繊維、複合材料プリプレグ、テープ、などを製造するために、繊維による補強(例えば、繊維、繊維トウ、織られた繊維または布地、など)と組み合わせて使用される。換言すると、組成物が、伝統的なプリプレグおよび関連の材料を形成するために使用される伝統的な樹脂成分として働く。さらなる実施形態においては、本明細書において説明される自己組織化材料が、柔軟性に富み、樹脂トランスファ成形、樹脂フィルムインフュージョン、および真空補助樹脂トランスファ成形などの浸潤法を含む多数の公知の製造技法を促進する。
【0062】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化組成物を、或る層が伝導性の自己組織化組成物および下層を含むように、2つ以上の層からなる積層構造を製造するために使用することができる。
【0063】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化組成物を、これらに限られるわけではないが反応射出成形、圧縮成形、樹脂トランスファ成形などの技法を使用して、筐体構造そのものを形成するために使用することができる。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態においては、未硬化の組成物が、独特な混成構造を生み出して、EMI遮蔽保護と重量との魅力的な組み合わせをもたらすために、既存のEMI遮蔽系と組み合わせて使用される。使用される自己組織化材料の例として、これらに限られるわけではないが、中実な金属箔、金属スクリーンまたはメッシュ、エキスパンドメタル箔(EMF)、金属化繊維、金属化繊維織物、金属化不織布(例えば、ベール)、または金属−炭素繊維混合織物を埋め込むためのB段階のフィルムが挙げられる。
【0065】
本発明の実施形態の方法および材料を、さまざまな基板、部品、機械、車両、および装置へとさまざまな手段(コーティング、接着剤、ガスケット、形成された筐体、ガスケット、コネクタ、など)によってEMI遮蔽をもたらすために使用することができる。好ましい実施形態においては、本発明の方法および材料が、電子機器の筐体、部屋の囲い、自動車の構造体、または航空宇宙の構造体へとEMI遮蔽コーティングをもたらす。
【0066】
別の実施形態においては、本発明の自己組織化材料を、炭素繊維補強ポリマー(CFRP)材料のポリマー樹脂成分として使用でき、あるいは炭素繊維補強ポリマー(CFRP)材料のポリマー樹脂成分とともに使用することができる。これらのCFRPまたは複合材料は、樹脂に埋め込まれた織り繊維、樹脂内の単向性の繊維またはテープ、あるいは樹脂で含浸された引き抜き繊維など、いくつかの異なる形態をとることができる。繊維補強を、多数の異なる種類の繊維(例えば、ガラス、炭素、ホウ素、アラミド、炭化ケイ素、などで作られた繊維)および多数の繊維の配置(単向性のトウまたは織布などの繊維の配置)で構成することができる。
【0067】
本発明の別の実施形態においては、反応して共有結合を形成できるという有機成分の能力ゆえに、反応性または非反応性(例えば、熱可塑性またはすでに反応済みの熱硬化性)の基板との同時の硬化あるいはそのような基板上での硬化が、容易に可能である。さらに、樹脂の化学的性質を適切に選択することで、ハウジングの塗装に使用されるプライマおよび上塗り層など、電子機器の筐体の外側部分に典型的に見られる1つ以上の層を置き換えることができる可能性がある。
【0068】
さらに、高度に伝導性である等方性の性質ゆえに、EMIに対する遮蔽および静電気の放散による静電荷の蓄積の除去、氷を溶かすための熱の経路(例えば、除氷材料)、ならびに落雷または他の電流に対する保護の目的のための多機能材料として使用することができる。さらには、組成物の多機能性が、金属構造(例えば、EMF)を複合構造への一体化に先立って接着フィルムに組み合わせなければならないという問題を克服する。さらに、形成される構造が、自然な開口として働いて特定の波長について遮蔽の向上をもたらす三次元メッシュによく似た構成を生得的に有する。
【0069】
すでに述べたように、EMI遮蔽−繊維プリプレグ基板の製造を、オートクレーブでの硬化、オートクレーブ以外での硬化、または圧縮成形などといった典型的な複合材料の処理の技法の際に、材料の同時硬化によって達成することができる。あるいは、自己組織化接着剤を、下方の複合材料基板の硬化後に適用して硬化させることができる。さらには、自己組織化接着剤を、熱可塑性基板へと硬化させることができる。さらなる実施形態においては、複合材料の処理および硬化において一般的に遭遇される高い圧力の水準が、複合材料の自己組織化に続いて生じる充てん材粒子の焼結をさらに助けることができる。
【0070】
本発明の他の実施形態においては、自己組織化材料を、接続部、ボルト、固定具、リベット、などの接着および/または封止のためのEMI接着剤として使用することができる。材料が、機械的な一体性をもたらすと同時に、接続部の内部または周囲に連続的な電気の経路を設けるために接続部をまたぐ電気的な連続性をもたらすことができる。
【0071】
本発明の別の実施形態においては、自己組織化材料が、EMI遮蔽をもたらすための基板にパターンとして適用される。パターン化は、光学的に透明な基板にEMI遮蔽をもたらすため、およびEMI遮蔽の全体としての重量を減らすために、きわめて有用である。この場合、通信周波数が反映されると考えられるが、依然として物品は、可視光に対して透過性であると考えられる。この実施形態の好ましい典型的な用途は、遮蔽窓、表示装置、タッチ式画面、モニタおよびLCD画面、および天蓋(例えば、航空機の風防)であると考えられる。光学的に透明な基板の例は、ガラス、ポリカーボネート、およびポリメチルメタクリレートである。
【0072】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明の自己組織化材料が、損傷したEMI遮蔽材料の補修に使用される。この補修方法は、金属薄板、金属箔、金属メッシュ、および他の同様の従来技術の系につきまとう補修の困難を克服する。本発明の材料の独特の自己組織化伝導性構造ゆえに、自己組織化材料が補修箇所に適用されたときにその場で相互接続を形成するため、金属−金属の接触面を整列させる必要がない。補修の手順において本発明の組成物を使用するための特有の手段として、未硬化の材料を補修すべき部分へと噴霧または塗布することが挙げられ、あるいはB段階またはC段階のシートをあらかじめ形成し、このシートを損傷した領域へと適用することが挙げられる。さらに、以前に硬化させた自己組織化材料が、第2の補修の硬化に耐え、新たに形成される補修のコーティングに良好に接着することができる。損傷した領域へと自己組織化材料を噴霧して硬化させることによって筐体を補修できる能力は、後付けの金属薄板構造とは対照的に、大きな価値を提供すると考えられる。
【0073】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化EMI遮蔽材料を、伝導性の金属薄板、金属箔、金属メッシュ、カーボン−金属繊維混合織物、金属化カーボン、または充てん材入りの伝導性ポリマーなどの従来技術のEMI遮蔽系の補修に使用することができる。本発明の実施形態の独特の自己組織化材料は、損傷した領域への容易な適用、ならびに従来技術の系と本発明の自己組織化補修材料との間に連続的な伝導性の経路を形成するための既存の伝導経路への「自動的」な整列を可能にする。
【0074】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化伝導性材料が、EMI遮蔽を複合構造へと適用するための自動化された製造設備の使用を可能にする。例として、これらに限られるわけではないが、自己組織化材料を自動スプレー設備を使用してスプレーの形態で、スプレーされた材料が雄の金型構造に位置する未硬化の繊維補強ポリマー外被、離型剤で前処理された雌の金型構造の表面、または単一の炭素繊維フィラメントへと塗布されるように、塗布することが挙げられる。さらに、自己組織化材料を、自動繊維またはテープ配置設備など(例えば、自動トウ配置装置および自動テープ層装置)を使用して、多数の単向性のフィラメント(例えば、トウまたはテープ)との組み合わせにおいて適用することができる。隣接するフィラメントの硬化後に連続的な導電経路が形成されるという能力は、従来技術の材料につきまとう上述の製造および重量の問題を克服する。
【0075】
本発明のさらなる実施形態においては、自己組織化伝導性材料が、表面に適用された材料の非破壊検査(NDI)を可能にする。NDI技法は、航空宇宙の複合構造およびEMI遮蔽室などの大きなサンプルの製造において重要である。NDI法は、きわめて重要な構造体を最上の品質基準で製造することを可能にしつつ、製造の時間およびコストの大幅な節約を可能にする。本発明の材料は、EMI遮蔽について、遮蔽の寿命の全体にわたって、簡単かつ定量的な非破壊検査技法を可能にする。
【0076】
本発明の一実施形態においては、硬化した自己組織化材料が、3つの寸法のすべて(幅、長さ、および厚さ)において導電性である。したがって、オーム計へと接続された4点プローブなどの標準的な装置を使用して、コーティングの表面において電気抵抗の測定を容易に行うことができる。次いで、電気抵抗の値を、電磁妨害の遮蔽の水準に関する性能に相関付けることができる。表面抵抗は、材料の体積導電率およびコーティングの厚さに依存する。
【0077】
本発明を、特定の実施形態に関して説明したが、これらの実施形態が本発明の原理の例示にすぎないことを、理解すべきである。本発明の組成物、装置、および方法を、他のやり方および実施形態で構成および実現できることを、当業者であれば理解できるであろう。したがって、他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の技術的範囲に包含されるため、本明細書における説明を、本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0078】
実施例において説明される自己組織化EMI遮蔽組成物は、ジグリシジルエーテルビスフェノールF(DGEBF)樹脂、ジエチレントリアミンおよび無水フタル酸との反応に基づくアミン付加物硬化剤、ならびに銀フレークで構成される。2つの異なる種類の銀フレークを使用した。具体的には、フレーク「A」が、約1m/gの表面積、538℃で約0.4%の空気中での重量損失、およびステアリン酸コーティングを有していた。フレーク「B」が、約1.5m/gの表面積、538℃で約1%の空気中での重量損失、および長鎖脂肪酸コーティングを有していた。
【0079】
試料を、2つの方法によって遮蔽の有効性について試験した。方法Iは、MIL−STD−285の修正版であり、平面波での2.6〜18GHzの周波数の間の試験に用いた。試験対象の試料を、G11エポキシ基板上の本発明のコーティング(厚さ1〜2ミル)または本発明の中実ディスク(厚さ40ミル)で構成した。試験の方法Iのためのすべての試料を、約2インチ×3インチのサイズに製作した。試料を、対象のEM周波数が可能な指定の導波路へと挿入した。導波路を、信号発生器とスペクトル分析器との間に接続した。
【0080】
方法IIは、MIL−DTL−83528の修正版であり、平面波での30MHz〜1GHzの周波数の間の試験に用いた。本発明のコーティング(厚さ1〜2ミル)を、24インチ×24インチ×0.0625インチの寸法の非伝導性のG11エポキシ基板に適用した。コーティングされた試料を、2つの密閉遮蔽室を分割する開口に配置した。信号発生設備を一方の部屋に配置する一方で、スペクトル分析設備を、第2の部屋に配置した。
【0081】
両方の試験方法において、透過した電界の大きさEを測定し、入射電界の大きさEと比較した。2つの値の比が、材料の遮蔽の有効性(SE)を定めるうえで役に立つ。
SE(dB)=20log(E/E
【0082】
試料の減衰の水準がノイズフロア程度である場合には、透過信号を増幅するために、前置増幅器を測定に挿入した。この増幅は、高遮蔽の材料において特に有用である。被覆なしのG11エポキシ基板も、被覆ありの基板とともに試験した。被覆なしの基板のSEは、5dB未満であり、最終的なデータから差し引かれている。
【0083】
実施例1
本発明のものではない従来からの導電粒子入りの接着剤を、比較の目的で作成および試験した。この材料は、12.7重量%のDGEBF、1.5重量%のジエチレントリアミン、および85.8重量%(40体積%)の上述の種類Aの銀フレークを含んでいた。これらの成分を、Hauschild社のDAC 150 FVミキサで一様になるまで混合した。この材料を、その場で形成されるガスケットまたは接着剤を模擬すべく厚さ40ミルのディスクに成形した。次いで、成形物を1時間にわたって160℃で硬化させた。得られた材料は、充てん材がポリマー母材の全体に均一に位置した典型的な一様な形態を呈した。シート抵抗(Ω/スクエア)は、Bridge Technology社のSRM 4点プローブヘッドを備えたKeithly社の580マルチメータで測定するには高すぎた。上述の方法Iによって試験した遮蔽の有効性(SE)は、2.6GHz〜18GHzの周波数において平均で18デシベルであった。
【0084】
実施例2
本発明の自己組織化接着剤を、以下の処方を使用して作成し、すなわち27.8重量%のDGEBF、10.7重量%のアミン付加物硬化剤、および61.5重量%(15体積%)の種類Aの銀フレークを使用して作成した。この材料を、実施例1の手順に従って成形し、硬化させ、試験した。シート抵抗を測定したところ、0.001Ω/スクエア未満であり、SEは、平均で105デシベルであった。実施例1と比べて、この実施例の自己組織化接着材料は、より低い導電粒子の濃度ではるかに優れたSEを示した。
【0085】
実施例3
本発明の自己組織化接着フィルムを、25.3重量%のDGEBF、9.7重量%のアミン付加物硬化剤、および65.0重量%(17体積%)の種類Aの銀フレークを使用して作成した。これらの成分を、Hauschild社のDAC 150 FVミキサで一様になるまで混合した。ドローダウンバーを使用し、この材料の厚さ1.5ミルのフィルムを、厚さ0.125インチのG11エポキシ基板からなる非導電性の基板に直接キャストした。次いで、被覆されたこの基板を、1時間にわたって160℃で硬化させた。硬化後のフィルムのシート抵抗は、0.05Ω/スクエアであった。方法Iによって試験したSEは、8GHz〜12GHzの周波数において平均で72デシベルであった。
【0086】
実施例4
本発明の導電性部分硬化フィルムを、実施例2に記載の処方を使用して作成した。厚さ3ミルのフィルムを、ドローダウンバーを使用して、Wrightlon 5200という剥離フィルムからなる非導電性の基板にキャストした。被覆されたこの基板を、8分間にわたって90℃で途中まで硬化させ、すなわちB段階とした。これにより、複合材料のレイアップの作業に必要な適度な水準の粘性および柔軟性を呈する材料が得られた。
【0087】
次いで、このB段階のフィルムを、入手したままの炭素繊維補強ポリマー(CFRP)の未硬化の3層(具体的には、カーボングラファイト織布へとあらかじめ含浸させたCycom 934樹脂を有するToray社のT300 3kの平織り)へと適用した。次いで、組み合わせられた4層の複合材料の試料を、剥離剤で被覆された平坦な工具表面へと−26インチHgで真空バッグ成形した。導電性のB段階フィルムを工具表面へと受ける一方で、剥離層およびブリーダクロス(bleeder cloth)層をCFRPの表面上に使用した。この4層の複合材料の試料を、真空バッグ成形しながら1時間にわたって177℃で硬化させた。
【0088】
硬化した試料について、方法Iによって試験したSEは、8GHzから12GHzまでの平均で114デシベルであった。硬化させたCFRPの三層の非導電性基板だけからなる別の試料は、8GHz〜12GHzについて平均で83デシベルであった。この方法Iの試験の上限は、115〜120デシベルになると推定される。
【0089】
実施例5
本発明のペーストのバッチを、36.0重量%のDGEBF、26.8重量%のアミン付加物硬化剤、および50.2重量%(10体積%)の種類Bの銀フレークという処方を使用して作成した。次いで、溶媒ブレンドを、50部の溶媒ブレンドに対して100重量部のペーストという比で、ペーストへと混合した。溶媒ブレンドは、50重量%のアセトン、18重量%のトルエン、16重量%のメチルエチルケトン、11重量%の酢酸エチル、および5重量%のリグロインで構成されている。1重量%未満の流動性調整剤を混合物へと加えた。
【0090】
得られた塗料混合物を、手作業で簡単に混ぜ合わせた後に、標準的な塗料シェイカで5分間の混合を行った。次いで、この塗料混合物を、1.4mmの先端サイズおよび30psiの空気圧のHVLP重力供給スプレーガンに装てんした。次いで、この塗料混合物を、非導電性のG11エポキシ基板にスプレーした。次いで、被覆された基板を、1時間にわたって160℃で硬化させた。
【0091】
得られた硬化後の導電性コーティングは、厚さが1.5ミルであり、4点プローブによる測定で0.11Ω/スクエアというシート抵抗をもたらした。SEを、30MHzから1GHzまで方法Iによって試験し、2.6GHzから12GHzまで方法IIによって試験した。
【0092】
任意の開口または基板の影響を示すために、コーティングしていない非導電性のG11エポキシ基板も、同じ周波数でSEについて試験した。さらに、試験の設定によって測定することができる最大のSEを割り出すために、厚さ0.05インチの中実なアルミニウム板も同様に試験した。図1が、スプレー塗装による導電性コーティング、コーティングのないG11基板、および中実なアルミニウム板について、SEを示している。予想されるとおり、非理想的な開口の影響が、コーティングのないG11エポキシ基板におけるSEの増加および他のすべての試料のSEの減少によって示されるとおり、240MHz未満の平面波周波数において見られることに留意されたい。
【0093】
実施例6
本発明のスプレー塗装材料を、溶媒のないペーストが10.3重量%のDGEBF、3.9重量%のアミン付加物硬化剤、および85.8重量%(40体積%)の種類Bの銀フレークを含む点を除き、実施例5で説明したとおりに処方し、適用し、試験した。得られた硬化後のコーティングは、厚さが1.5ミルであり、表面抵抗が0.015Ω/スクエアであった。このコーティングのSEが、図1に示されている。
【0094】
実施例7
本発明のスプレー塗装材料を、溶媒のないペーストの処方が実施例2の処方である点を除き、実施例5に記載のとおりに処方して適用した。この塗料混合物を、G11エポキシ基板、PET、ポリカーボネート、および熱可塑性ウレタンを含む種々の非導電性の基板にスプレーでコーティングした。試料を、表1に示した温度で1時間にわたって硬化させた。硬化した導電性コーティングは、すべての試料について厚さ1.5〜2.0ミルであった。コーティング−基板の接着を、3M(商標)#250テープでASTM D3359に従って測定した。シート抵抗を、4点プローブによって測定し、SEを、方法Iによって8GHz〜12GHzの周波数において測定した。最初の試験の後で、試料5AをASTM B−117の87時間の塩水噴霧に暴露し、その後に試料5ACとして再度試験した。すべての結果が、表1に示されている。
【0095】
表1

【0096】
実施例8
本発明の試料一式を、硬化後の自己組織化コーティングのシート抵抗とSEとの間の相関関係を割り出すために製造した。本発明のいくつかのスプレー塗料コーティングを、実施例5に一致したやり方で製造した。本発明のさらなる溶媒なしのフィルムコーティングを、実施例3に従って製造した。すべての試料を、厚さ0.125インチのG11エポキシ基板上に硬化させた。
【0097】
いくつかの異なる組成物を、試料の製造において使用した。組成物を、さまざまな量(40〜86重量%の間)およびさまざまな種類(銀フレークA、銀フレークB、さらなる銀フレーク、および銀で被覆された銅フレーク、など)の導電性充てん材で構成した。銀で被覆された銅フレークは、約1m/gの表面積、538℃で約0.7重量%の空気中での重量損失を有していた。試料一式において、コーティングの厚さは、約1〜9ミルの間であり、硬化温度は、100〜160℃であった。
【0098】
コーティングのシート抵抗−SEの散布図が、図2に示されている。図示のSEは、方法Iによって試験された8〜12GHzの間の平均値である。このデータは、8〜12GHzの周波数におけるSEのおよその範囲を割り出すために、単純なシート抵抗の検査の測定を実行できることを示している。この単純な非破壊の試験の手順で最終的な性能を割り出すことは、大型の航空宇宙の構造体またはEMI遮蔽シェルタの製造および品質管理において、きわめて重要であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を電磁妨害から遮蔽する方法であって、
基板を用意するステップと、
基板に電磁妨害(EMI)遮蔽組成物を供給するステップと
を含み、
前記電磁妨害遮蔽組成物0が、硬化のプロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる充てん用の硬化性材料を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記硬化性材料が硬化性の有機化合物と充てん材とを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記充てん材および前記有機化合物が、該有機化合物の硬化の際に相互作用を呈し、該相互作用が、前記充てん材の伝導性の経路への自己組織化を生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が硬化することにより、該組成物を通る伝導性の経路が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性の組成物が、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、脂肪酸で被覆された伝導性充てん材とを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エポキシ硬化剤が、無水フタル酸とジエチレントリアミンとの間の反応に基づく無水ポリアミン付加化合物を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が導電性充てん材を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記充てん材が非極性のコーティングで被覆されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非極性のコーティングがステアリン酸を含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記充てん材の粒子を、自己組織化の硬化の後で焼結された伝導性の経路を形成するように焼結することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物を、所定の線太さおよび所定の開口サイズを備える所定のパターンで前記基板に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に適用された前記組成物が光学的に透明である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、約1MHz〜約40GHzの間で少なくとも20dBの遮蔽効果を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、約1MHz〜約40GHzの間で少なくとも約80dBの遮蔽効果をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、40体積パーセント未満の伝導性充てん材を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、15体積パーセント未満の伝導性充てん材を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、電磁パルスからのさらなる保護を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記基板が、電子装置を収容する筐体の少なくとも一部分を構成している、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記筐体がマイクロ電子回路を備えている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記筐体が車両を構成している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記自己組織化した材料が、少なくとも1つの電気装置のための接地への経路をさらに提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物がスプレーで適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、前記基板への適用に先立ってB段階のフィルムへと形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記基板にEMI遮蔽組成物を供給するステップが、
少なくとも1つの不連続な伝導性の経路を含んでいるEMI遮蔽系の損傷した部位を特定するステップと、
EMI遮蔽組成物を前記損傷した部位に配置するステップと、
前記配置した組成物を硬化させることにより、前記損傷した部位の前記少なくとも1つの不連続な伝導性の経路を完成させる少なくとも1つの自己組織化による伝導性の経路を設けるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記EMI保護系が、伝導性の金属薄板、金属箔、金属メッシュ、カーボン−金属繊維混合織物、金属化カーボン、または充てん用導電ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記EMI遮蔽系が、硬化プロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる充てん用の硬化性材料を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
EMI遮蔽材料の非破壊検査のための方法であって、
EMI遮蔽をもたらすことができる導電性の組成物を供給するステップと、
前記組成物の電気的特性を測定するステップと、
前記測定された組成物の電気的特性を、該組成物のすでに劣化した試料の導電率と照らし合わせることにより、前記組成物の劣化の程度を判断するステップと
を含む方法。
【請求項29】
前記組成物が、硬化プロセスにおいて伝導性の経路を形成するように自己組織化できる硬化性材料を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記電気的特性が電気抵抗を含む、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−530359(P2012−530359A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515172(P2012−515172)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/038264
【国際公開番号】WO2010/144770
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(505127617)ロード コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】