説明

基板キャリヤ

【課題】基板の縁を均一にかつ厚過ぎないように覆うことができる基板キャリヤを提供することにある。
【解決手段】本発明は、少なくとも一部が、基板の熱膨張係数より大きい熱膨張係数をもつ材料からなる基板キャリヤに関する。特にスパッタリング加工中に、基板の縁のコーティングが不均一になることを防止しまたは少なくとも低減させるため、基板キャリヤにはウェブの中央部が固定されている。このウェブは、該ウェブが固定される基板キャリヤの領域の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前提部に記載のキャリヤに関する。
【背景技術】
【0002】
基板は、しばしば、スパッタリングユニット内でいわゆるターゲットを通過して案内され、このターゲットの表面から粒子がスパッタリングされ、その後基板上に蒸着される。基板としては、例えば、インラインスパッタユニットを通って搬送されるガラスプレートが使用できる。これらのガラスプレートは、搬送装置に連結されたフレーム内にセットされる。
【0003】
真空処理ユニット内に基板を搬送し、真空処理ユニットを通す装置として、例えば、1つのトラックおよび1つの支持ベアリングと関連させた2つのホイールセットを備えた嵩張った足部品を有する装置が知られている(下記特許文献1参照)。処理すべき基板は、この装置内で、矩形の基板ホルダにより保持される。
【0004】
また、円形基板プレートを装着するための環状基板ホルダも知られており、この基板ホルダは、更に、等間隔に配置された4つの保持アームにより保持される(下記特許文献2参照)。
【0005】
フレーム内に保持される基板の熱膨張係数とフレームの熱膨張係数とが異なる場合には、基板の縁の片面が、非常に大きい度合いで、不均一に覆われてしまうことがある。ウェーハの場合、これは、「エッジエクスクルージョン(edge exclusion)」、すなわちコーティングされない周辺ウェーハ領域と呼ばれている。
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許DE 41 39 549 A1号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許DE 102 11 827 C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、基板の縁を均一にかつ厚過ぎないように覆うことができる基板キャリヤを提供するという問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴により解決される。
【0009】
従って本発明は、キャリヤの少なくとも一部が、基板の熱膨張係数より大きい熱膨張係数をもつ材料で形成された基板キャリヤに関する。特にスパッタリング加工中に基板の縁が不均一にコーティングされることを防止し、または少なくとも低減させるため、キャリヤにはウェブの中央部が連結される。このウェブは、キャリヤが固定される領域の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により達成される長所は、特に、大きい度合いで膨張する軽量でコスト有効性に優れたアルミニウムと、小さい度合いで膨張する材料からなるセンタリング手段とを組合せることにより、「エッジエクスカーション」が低減されることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面には本発明の実施形態の一例が示されており、これを以下に更に詳細に説明する。
【0012】
図1a〜図1cは、慣用の基板キャリヤ1のウェブ3、4上に面基板2を支持する原理を示すものである。解決すべき一群の問題は、これらの図面を参照して説明できる。基板2はガラスであり、一方、基板キャリヤ1はアルミニウムで形成されている。
【0013】
図1aは、約20℃(0℃=273.15゜Kであるので、20℃=293.15゜K)の状態を示すものである。参照番号44は、コーティングすべき基板2の側面を示す。図1aに示した基板2の位置では、ウェブ3、4により覆われる領域a、bはスパッタリング時にコーティングされない。両領域a、bは同サイズである。
【0014】
しかしながら、スパッタリングは、これより220゜Kだけ高い温度(約513.15゜K)で行われ、この温度でのガラスおよびアルミニウムの膨張量は異なる。図1bおよび図1cは、この異なる膨張量の効果を示している。互いに連結された(連結部は示されていない)アルミニウムのウェブ3、4は、基板2の方向よりも側方に向かってかなり大きく移動する。この場合には2つの異なる状態が生じ、その1つが図1bに、他が図1cに示されている。
【0015】
実際に見られるように、基板2の端領域45、46の一方は、常に、他方よりも確実にウェブ3、4上に載置される。図1bでは、端領域46が突出部42から離れて移動しているのに対し、他端領域45はその元の位置を維持している。
【0016】
このため、基板2は、端領域46がほぼ完全にコーティングされるのに対し、端領域45はコーティングされずに維持される。
【0017】
図1cは、端領域46がその元の位置に維持されているのに対し、端領域45はウェブ4に対して移動しているところを示す。
【0018】
従って、図1bでは端領域45に「エッジエクスカーション」が生じるのに対し、図1cでは端領域46にエッジエクスカーションが生じる。
【0019】
基板が1950mmの幅をもつガラスプレートで、かつ温度差ΔTが、例えばΔT=220゜Kであるときは、ガラスの熱膨張は1.6mm、およびアルミニウムの熱膨張は10.2mmとなる。従って、セグメントl(エル)は8.6mmとなる。
【0020】
図2には、基板2を備えた本発明による基板キャリヤ1が示されている。この場合も基板2はガラスプレートである。基板キャリヤ1は、本質的に、2つの垂直ウェブ3、4および2つの水平プレート5、6を備えたフレームにより形成されている。垂直ウェブ3、4は、例えばチタンのウェブである。しかしながら、垂直ウェブは、他の材料で作ることもできる。水平プレート5、6は好ましくはアルミニウムからなり、かつボルトまたはリベット7、8、9、10および11〜16により、それぞれ垂直ウェブ3、4の端部に連結されている。基板2の下にぴったり接触してチタンからなる比較的薄いウェブ17が延びており、該ウェブ17の各端部には、上方を向いたフィンガ18、19が設けられている。このウェブ17は、この中央部が、ボルト20等でアルミニウムプレート6に連結されている。ウェブ17の下のアルミニウムプレート6には、チタンウェブ17を案内するための溝(図示せず)が設けられている。
【0021】
基板2が、ウェブ17およびフィンガ18、19を用いることなく(すなわち、アルミニウムプレート5、6と接触することによってのみこれらの上に載置されて)、加熱されたスパッタリングチャンバを通って搬送されるものとすれば、アルミニウムプレート5、6は、ガラスからなる基板2より大きい度合いで膨張する。従ってウェブ3、4は、図1a〜図1cに示すように互いに離れる方向に移動する。このことは、基板2が、もはやこれらのウェブ3、4によって限界を定められることがないことを意味する。基板2は、この左側縁部がウェブ3上に載置され(図1c参照)、並びにその右側縁部がウェブ4上に載置される(図1b)。いずれの場合にも基板2がウェブ3、4に対して中央に配置されることはなく、このため、基板2の縁が不均一にコーティングされてしまう。
【0022】
そうではなくて、基板2がチタンウェブ17の両フィンガ18、19間に配置される場合には、基板2は中央に留められる。なぜならば、チタンウェブ17の中央部がアルミニウムプレート6の中央部に連結されているからである。チタンウェブ17は、ボルト20に対して左右に対称的に移動する。
【0023】
チタンの熱膨張係数はアルミニウムの熱膨張係数よりかなり小さいので、基板2はフィンガ18、19に対して極く僅かに変位するに過ぎない。従って、基板2は垂直ウェブ3、4に対して中央に留められる。
【0024】
このことが図3a〜図3cの原理に再び示されている。
【0025】
図3aは約20℃での状態を示すものである。チタンウェブ17のフィンガ18、19は、一方では突出部42、43に当接し、かつ他方では基板2の端部40、41に当接する。
【0026】
例えば220゜Kだけ上昇した温度では、図3bに示す状態、または図3cに示す状態が生じる。
【0027】
温度上昇によるチタンの膨張量はアルミニウムの膨張量よりかなり小さいので、チタンウェブのそれぞれフィンガ19または18に対する基板2のそれぞれの間隙cまたはdは極く僅かである。従って、基板2のコーティングは、図1bおよび図1cの場合のコーティングに比べてかなり均一である。220゜Kの温度差では、チタンウェブ17は、仮定幅で3.5mmだけ膨張するに過ぎない。これによる距離cおよびdは1.9mmに過ぎない。チタンの代わりに、小さい熱膨張係数をもつ他の材料、例えばセラミックを使用できる(任意であるが、セラミックはガラス繊維で補強できる)。
【0028】
図4には、図3aの形状を通るB−B断面が示されている。ここには、チタンウェブ17のフィンガ18、19が再び明瞭に示されている。フレーム3、4、50は、これらの全部が同じ材料、例えばアルミニウムからなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】異なる熱膨張量で基板を支持する従来技術の基板キャリヤの基本例の一態様を示す概略図である。
【図1b】異なる熱膨張量で基板を支持する従来技術の基板キャリヤの基本例の一態様を示す概略図である。
【図1c】異なる熱膨張量で基板を支持する従来技術の基板キャリヤの基本例の一態様を示す概略図である。
【図2】比較的小さい熱膨張係数をもつ材料、例えばチタンからなるウェブを備えた本発明によるフレーム状基板キャリヤを示す図面である。
【図3a】本発明の作動機能を説明するための概略図である。
【図3b】本発明の作動機能を説明するための概略図である。
【図3c】本発明の作動機能を説明するための概略図である。
【図4】図3aのB−B線を通る断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基板キャリヤ
2 基板
3、4 垂直ウェブ(フレーム)
5、6 水平プレート(フレーム)
17 ウェブ
18、19 フィンガ
20 ボルト
42、43 突出部
50 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が、基板の熱膨張係数より大きい熱膨張係数をもつ材料からなる基板キャリヤにおいて、基板キャリヤ(1)の特定領域にはウェブ(17)の中央部が固定されており、ウェブ(17)の熱膨張係数は、該ウェブが固定されている基板キャリヤの領域の熱膨張係数より小さいことを特徴とする基板キャリヤ。
【請求項2】
前記ウェブ(17)の両端部には突出部(18、19)が設けられており、該突出部(18、19)の間には基板(2)の一端が配置されることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項3】
フレームの形態で実施されることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項4】
少なくとも一部(5、6)がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項5】
2つの垂直ウェブ(3、4)および2つの水平プレート(5、6)を有し、水平プレート(5、6)がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項6】
前記2つの垂直ウェブ(3、4)がチタンからなることを特徴とする請求項5に記載の基板キャリヤ。
【請求項7】
前記基板(2)はガラスプレートであることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項8】
基板キャリヤに固定されたウェブ(17)はチタンからなることを特徴とする請求項1に記載の基板キャリヤ。
【請求項9】
前記水平プレート(5、6)は基板キャリヤ(1)の垂直ウェブ(3、4)の両端部に連結されており、ウェブ(17)の中央部が下方の水平プレート(6)に連結されていることを特徴とする請求項5に記載の基板キャリヤ。
【請求項10】
前記ウェブ(17)が配置される水平プレート(6)は、ウェブ(17)のための水平ガイドを有していることを特徴とする請求項1に記載のフレーム状基板キャリヤ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−88408(P2007−88408A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15759(P2006−15759)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(502208722)アプライド マテリアルズ ゲーエムベーハー アンド コンパニー カーゲー (28)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】