説明

基板ホルダー及び基板搬送装置

【課題】基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを抑制できる基板ホルダー及びこれを用いた基板搬送装置を提供する。
【解決手段】基板ホルダー1は、被処理基板S1の被処理面側の外周部に当接する当接部112と、被処理基板の被処理面を露出させる開口部113とを有し、被処理基板の被処理面を開口から露出させた状態で当接部で前記被処理基板を支持する支持部材11を備え、当接部には、少なくとも前記被処理基板に対向する位置に、衝撃吸収性の高い緩衝材12が設けられている。基板搬送装置はこれを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板ホルダー及び基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を支持する基板ホルダーは、被処理基板のセット時における衝撃や、セット後の搬送時における振動による衝撃で、基板受け部と被処理基板との接触する箇所において被処理基板に傷や割れが発生しやすく、これを抑制することが求められていた。特に、被処理基板を鉛直方向にたてた状態で保持するいわゆる縦型の基板ホルダーでは、このような問題は顕著であった。そこで、従来、縦型の基板ホルダーにおいては、被処理基板の下端の端面に接してこの端面で被処理基板を支える複数の基板受け部を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この基板受け部は、被処理基板側から下側に力を受けて変形し、かつ変形することにより上向きに力が働く弾性部を備えている。この弾性部を備えていることで、被処理基板のセット時における衝撃や、セット後の搬送時における振動による衝撃で、基板受け部と被処理基板との接触する箇所において被処理基板に傷や割れが発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−262539号公報(請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、被処理基板の成膜面が枠部に接触することにより、被処理基板の傷や割れが発生するという問題が発生するという問題がある。なお、このような問題は、基板を床面に対して垂直に保持する基板ホルダーだけでなく、基板を水平に保持する基板ホルダーであっても、基板のセット時や搬送時に同様に発生する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを防止できる基板ホルダー及びこれを用いた基板搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基板ホルダーは、被処理基板の被処理面側の外周部に当接する当接部と、該被処理基板の被処理面を露出させる開口とを有し、前記被処理基板の前記被処理面を開口から露出させた状態で前記当接部で前記被処理基板を支持する支持部材を備え、前記当接部には、少なくとも前記被処理基板に対向する位置に、衝撃吸収性の高い緩衝材が設けられていることを特徴とする。本発明では、被処理基板の被処理面側の外周部に当接する当接部に緩衝材が設けられていることで、基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを抑制できる。
【0007】
前記基板ホルダーの当接部には、突起部が形成され、かつ、前記緩衝材には、該突起部に対応して開口部が設けられ、前記突起部に該開口部を嵌合して前記緩衝材が当接部に設置されると共に、該開口部から露出した前記突起部を覆うと共に前記緩衝材の開口部の周縁を押圧し、かつ、前記被処理基板の端部を保持する保持部材を有し、該保持部材が衝撃吸収性の高い弾性部材からなることが好ましい。このように設けることで、基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを抑制できると共に、緩衝材の位置合わせをより簡易に、かつ確実に行うことができる。
【0008】
前記保持部材が、基板の端部に亘って離間して複数設けられていることが好ましい。離間して複数設けることで、部品材料を減少させることができると共に、部品から発生するガス量を抑えることが可能である。
【0009】
前記保持部材が、前記突起部を覆うと共に前記緩衝材の開口部の周縁を押圧する角柱状部を有し、該角柱状部が前記角柱状部の中心を通る固定部材により当接部に固定されることが好ましい。このように構成されることで該固定部材を中心として角柱状部を回転させれば、保持部材が接触によりすり減ることに起因した搬送時等の基板のがたつきを抑制でき、より被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを抑制できる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態としては、前記保持部材が、前記被処理基板の上端部を支持する上端側保持部材であるか、前記被処理基板の下端部を支持する下端側保持部材であることが挙げられる。
【0011】
本発明の基板搬送装置は、前記いずれかに記載の基板ホルダーを備えたことを特徴とする。いずれかに記載の基板ホルダーを備えていることで、基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の基板ホルダー及び基板搬送装置によれば、基板のセット時や搬送時の衝撃により被処理基板の被処理面に傷や割れが発生するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1にかかる基板ホルダーの(a)斜視図及び(b)A-A’線における断面図である
【図2】実施形態2にかかる基板ホルダーの斜視図である
【図3】図2のB−B’線における断面図である。
【図4】図2のA−A’線における断面図である。
【図5】実施形態3にかかる基板ホルダーの斜視図である。
【図6】図5のA−A’線における断面図である。
【図7】実施形態1にかかる基板ホルダーを用いた基板搬送装置の模式図及び要部拡大断面図である。
【図8】(a)実施形態1にかかる基板ホルダーを用いたさらに別の基板搬送装置の模式図、(b)(a)のX−X線における断面図である。
【図9】実施形態1にかかる基板ホルダーを用いた別の基板搬送装置の設置状態を示した一部拡大図である。
【図10】図9の(a)A−A線における断面図(b)B−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明の基板ホルダーにかかる実施形態について、図1を用いて説明する。基板ホルダー1は、例えばSUS等から構成される略長方形の枠状の支持部材11を備える。支持部材11は、四方を囲う側壁部111を備える。また、支持部材11は、被処理基板S1の被処理面側の外周部に当接する当接部112と、被処理面を露出するように形成された開口部113とを備える。当接部112は、側壁部111の一方面側に、側壁部111に対して垂直となるように設けられたフランジ部である。これらの側壁部111と当接部112とにより、図1(b)に示すように被処理基板S1を収容する収容部114が画成されている。収容部114は、被処理基板S1を収容するものであり、収容部114に収容された被処理基板S1は、開口部113からその被処理面が露出する。収容部114は、被処理基板S1を収容しやすいように、被処理基板S1よりもやや大きく構成されている。
【0015】
この基板ホルダー1は、後述する基板搬送装置により、略垂直となるようにやや傾けて保持される。これにより、基板ホルダー1の収容部114に収容された被処理基板S1は安定して基板ホルダー1に保持される。
【0016】
この被処理基板S1を収容部114に収容する時、また、被処理基板S1を収容部114に収容して基板ホルダー1を搬送する時に、被処理基板S1の被処理面の外周が当接部112に接触することにより、当接部112と接触する被処理基板S1の被処理面に割れや欠けが発生しやすいので、これを抑制する必要がある。
【0017】
そこで、本実施形態においては、当接部112に緩衝材12を設けて、被処理基板S1の衝撃を吸収し被処理基板S1の搬送時や被処理基板S1の設置時に生じやすい当接部112と接触する被処理面の割れや欠けを抑制している。緩衝材12は、テープ状であり、4枚の緩衝材12から当接部112の各辺を覆うように設けられている。即ち、基板ホルダー1は、4枚の緩衝材12により、開口部113の周縁部を覆うように構成されている。緩衝材12は、耐熱性(200〜280℃)が高く、また、衝撃吸収性が高い材料からなる。このような緩衝材12としては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられ、本実施形態ではポリイミドからなるカプトン(登録商標)テープを用いている。緩衝材12は、本実施形態では、図示しない耐熱性の高い粘着剤で当接部112に固定されている。
【0018】
(実施形態2)
図2〜図4に示す実施形態2にかかる基板ホルダー1Aは、図1に示す実施形態1にかかる基板ホルダー1(図1参照)で支持される被処理基板S1よりも大型の被処理基板S2を支持するためのものである。なお、実施形態2において実施形態1と同一の構成要素については同一の参照符号を付してある。本実施形態における基板ホルダー1Aは、実施形態1にかかる基板ホルダー1よりも大型の基板を保持すべく、当接部112には、それぞれ被処理基板S2の保持部材が設けられている。
【0019】
支持部材11の被処理基板S2の被処理面側の外周部に当接する当接部112には、緩衝材12Aが設けられている。緩衝材12Aは、実施形態1と同様の材料からなるものであり、それぞれシート状である。緩衝材12Aは、当接部112全体、即ち、開口部113の周囲を覆うように4枚設けられており、それぞれ、複数の位置決め開口121を有する。そして、本実施形態では、当接部112には、凸部115が離間して複数設けられており、この凸部115に緩衝材12Aに形成された位置決め開口121が嵌合して位置決めされている。この状態で、緩衝材12Aは、被処理基板S2の左右の端部を支持する押圧部材13、被処理基板S2の上端側を支持する上端側保持部材14、及び被処理基板S2の下端側を支持する下端側保持部材15により当接部112に固定されている。なお、押圧部材13、上端側保持部材14及び下端側保持部材15は、それぞれ請求項に記載する保持部材である。
【0020】
これらの上端側保持部材14及び下端側保持部材15、並びに押圧部材13は、それぞれ被処理基板S2に接触するものであるから、被処理基板S2の割れや欠けを抑制すべく、弾性部材からなることが好ましい。このような弾性部材としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、パーフルオロアルキルビニルエーテル等が挙げられ、本実施形態ではポリイミドからなるベスペル(登録商標)を用いている。
【0021】
押圧部材13について説明する。押圧部材13は、緩衝材12Aを押圧し保持すると共に、押圧部材13の周縁において、被処理基板S2の端面が接触するように構成されており、これにより被処理基板S2を接触保持することが可能である。押圧部材13は、基板ホルダー1Aの左右の当接部112に、当接部112の長手方向にそれぞれ離間して複数設けられている。この押圧部材13の設置位置は、基板ホルダー1Aの左右の当接部112に形成された凸部115に対応した位置となっている。また、押圧部材13は、被処理基板S2を収容部114に収容しやすいように、対向する押圧部材13間は、被処理基板S2間よりもやや広くなっており、被処理基板S2は常に両端が押圧部材13によって保持されているわけではない。
【0022】
押圧部材13は、押圧部本体131を備える。押圧部本体131は、略円柱状となっており、被処理基板S2を収容部114に収容しやすい。押圧部本体131には、一方面側(当接部112側)の中央部に押圧部凹部132が形成されている。押圧部凹部132は、凸部115に対応した形状となっている。この押圧部本体131の中央には、押圧部本体131を貫通する押圧部貫通孔133が形成されている。この押圧部貫通孔133は、凸部115の中央部に形成された凸部開口116に連通する。押圧部材13は、押圧部本体131の押圧部凹部132よりも外周側で、緩衝材12Aを押圧保持している。
【0023】
この押圧部材13を当接部112に固定する場合について説明する。まず、当接部112の凸部115に緩衝材12Aに形成された位置決め開口121を嵌合させ、当接部112に緩衝材12Aを設置する。そして、その後、凸部115に押圧部凹部132を嵌合させて押圧部材13を設置し、押圧部本体131の押圧部凹部132の周縁部で緩衝材12Aの位置決め開口121の縁部を押圧する。この押圧した状態で、ネジ134を押圧部貫通孔133及び凸部開口116に挿入固定して押圧部材13を当接部112に固定し、同時に押圧部本体131の押圧部凹部132よりも外周側で当接部112に緩衝材12Aを押圧保持し、緩衝材12Aを当接部112に固定する。
【0024】
このように本実施形態においては、緩衝材12Aを押圧部材13により当接部112に固定する場合に、位置決め開口121を凸部115に嵌合させて位置決めをしてから固定することで、簡易に緩衝材12Aにより当接部112の一辺の全面を覆うことができる。これにより、被処理基板S2が当接部112と接触することで割れや欠けが発生することを抑制できる。また、位置決め精度が低いと開口部113から緩衝材が露出してしまい、成膜時にこの緩衝材部分でチャージアップして異常放電が発生してしまうことがあるが、本実施形態では、位置決め開口121を凸部115に嵌合させ正確に位置決めして固定できるので、開口部113に緩衝材12Aが露出することがない。
【0025】
次に、上端側保持部材14について説明する。被処理基板S2の上端側を支持する上端側保持部材14は、基板ホルダー1Aの上側の当接部112に離間して複数(本実施形態では5つ)設けられている。上端側保持部材14は、円柱状部141と、円柱状部141の一端側に延設された円形状のフランジ部142とを有する。上端側保持部材14には、円柱状部141及びフランジ部142を貫通する第1貫通孔143が形成されると共に、円柱状部141の他端側には凹部144が形成されている。円柱状部141の凹部144は、この凸部115に嵌合し、第1貫通孔143は凸部115の凸部開口116に連通する。そして、この第1貫通孔143及び凸部開口116にネジ145が挿入固定され、各上端側保持部材14が当接部112に固定されると同時に円柱状部141の凹部144よりも外周側で緩衝材12Aが保持され固定される。
【0026】
このように構成された上端側保持部材14では、円柱状部141の周縁に被処理基板S2が接触保持される。また、フランジ部142を設けることで、被処理基板S2が搬送時などに例えば座屈により倒れそうになったとしてもこのフランジ部142により制止することが可能である。
【0027】
この各上端側保持部材14を当接部112に固定する場合も、押圧部材13を当接部112に固定する場合と同様である。緩衝材12Aの位置決め開口121を凸部115に嵌合させて緩衝材12Aを当接部112に設置する。そして、この状態で各上端側保持部材14をネジ145により当接部112に固定すると同時に円柱状部141の凹部144よりも外周側で緩衝材12Aが固定される。このように固定することで、上側の当接部112にも、緩衝材12Aを簡易に位置合わせして固定することができる。
【0028】
被処理基板S2の下端側を支持する下端側保持部材15は、基板ホルダー1の下側の当接部112の長手方向に沿って設けられ、その上面で被処理基板S2を支持する支持部材本体151と、支持部材本体151の上面縁部に延設された返し部152とからなる。支持部材本体151の当接部112側の面には、支持部材凹部153が形成されている。支持部材本体151は、この支持部材凹部153に貫通するように第2貫通孔154が形成されている。また、下側の当接部112には、当接部112の長手方向にそって凸部115が形成されており、この凸部115と支持部材凹部153とが嵌合する。第2貫通孔154は凸部115の凸部開口116に連通する。そして、この第2貫通孔154及び凸部開口116にネジ155が挿入固定され、下端側保持部材15が当接部112に固定されると同時に支持部材本体151の支持部材凹部153が形成されていない領域で緩衝材12Aが保持され固定される。
【0029】
このように構成された下端側保持部材15では、支持部材本体151上に被処理基板S2が設置されて保持される。また、返し部152を設けることで、被処理基板S2が搬送時などに移動して支持部材本体151から落ちることを防止することが可能である。
【0030】
この場合にも、下端側保持部材15を当接部112に固定する際に、緩衝材12Aの位置決め開口121を凸部115に嵌合させて緩衝材12Aを当接部112に設置し、この状態で下端側保持部材15をネジ155により当接部112に固定する。このように固定することで、下側の当接部112にも、緩衝材12Aを簡易に位置合わせして固定させることができる。
【0031】
このように、本実施形態においては、緩衝材12Aの位置合わせを行うと共に、この位置合わせ時に必要な凸部を大型の被処理基板S2を保持するための保持部材により覆うことで、被処理基板S2が当接部112に接触する際の被処理基板S2の割れや欠けを抑制している。即ち、特に、大型の基板においては被処理基板の座屈が問題となるが、保持部材を設けることで被処理基板の座屈を抑制しながら、緩衝材12Aの固定を行っている。
【0032】
(実施形態3)
図5、図6に示す実施形態3にかかる基板ホルダー1Bは、実施形態2にかかる基板ホルダー1A(図2参照)とは、下端側保持部材15Aの形状が異なる。なお、実施形態3において実施形態1、2と同一の構成要素については同一の参照符号を付してある。
【0033】
本実施形態における下端側保持部材15Aは、下側の当接部112の長手方向に沿って、それぞれ離間して設けられている。即ち、図2〜図4に示す実施形態2においては、下端側保持部材15は、下側の当接部112の全面に亘って連続的に設けられていたが、本実施形態においては、下端側保持部材15Aは、下側の当接部112の全面に亘って断続的に設けられている。下端側保持部材15Aは、それぞれ、角柱状部156と、角柱状部156の一端側に延設された矩形状のフランジ部157とを備える。
【0034】
角柱状部156の他方面側、即ちフランジ部157とは逆側には、支持部材凹部153Aが形成されている。角柱状部156には、この支持部材凹部153Aに貫通するように第2貫通孔154Aが形成されている。また、下側の当接部112には、その当接部の長手方向にそって凸部115が形成されており、この凸部115と支持部材凹部153Aとが嵌合するように下端側保持部材15Aは構成されている。第2貫通孔154Aは凸部115の凸部開口116に連通する。そして、この第2貫通孔154A及び凸部開口116にネジ155が挿入固定され、下端側保持部材15Aが基板ホルダー1の下側の当接部112に固定されると同時に角柱状部156の支持部材凹部153Aが形成されていない領域で緩衝材12Aが保持され固定される。
【0035】
このような下端側保持部材15Aを設置する場合も、凸部115により緩衝材12Aの位置決めを行い、かつ下端側保持部材15Aにより緩衝材12Aを当接部112に固定することができる。
【0036】
ところで、この下端側保持部材15Aでは、角柱状部156上に被処理基板S3が載置されるが、被処理基板S3により角柱状部156の上面側が削られてしまい、これにより被処理基板S3のがたつきが大きくなることがある。がたつきが大きくなると、基板搬送時における衝撃が大きくなり、これにより被処理基板S3の割れや欠けが発生しやすくなってしまう。このような場合、本実施形態では、角柱状部156を回転させて、角柱状部156の未だ使用していない面を上面にして再度固定することで、平らな面に被処理基板S3を載置することができ、被処理基板S3のがたつきを防止することができる。これにより、より被処理基板S3と当接部112との接触時の振動を抑制でき、より被処理基板S3の割れや欠けを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では、実施形態2に比べて下端側保持部材15Aを離間して設けているために、連続的に下端側保持部材を設ける場合に比べて部材から放出されるガスの量が少ないため、好ましい。なお、この下端側保持部材15Aのように保持部材を離間して設けると搬送時に被処理基板S3に振動が生じやすいが、本実施形態においては緩衝材12Aを設けると共に下端側保持部材15Aも衝撃吸収性の高い材料で形成していることから、被処理基板S3の割れや欠けを抑制できる。
【0038】
(基板搬送装置)
かかる基板ホルダー1を用いた基板搬送装置Iについて説明する。図7に示すように、基板搬送装置Iは、被処理基板S1を枠状の基板ホルダー1によって略垂直に保持しながら、基板ホルダー1の開口部113から露出した被処理基板S1の成膜面に対して処理を行う縦型搬送式の基板搬送装置である。かかる基板搬送装置は、スパッタリング法により成膜を行う成膜室を含む複数の処理室からなるインライン式成膜装置に用いられる。
【0039】
基板ホルダー1の支持部材11の底面には、その長手方向に沿って円柱状の棒状部材21が設けられている。支持部材11は、棒状部材21の円周方向に回動自在となるように構成されている。
【0040】
また、成膜装置の床面には、ローラー22が所定の間隔を空けて固定部材23を介して並設されている。このローラー22上に棒状部材21が載置され、ローラー22の回転に伴って棒状部材21が移動されるように構成されている。具体的には、ローラー22は、断面視において棒状部材21が係合するように中央部が凹となった曲面状となっている。ローラー22の回転軸24は、固定部材23に回転自在に設置されると共に、この回転軸24の一端が図示しない駆動制御装置に接続されており、この駆動制御装置により回転軸24が回転される。この回転によりローラー22上に設置された支持部材11が棒状部材21を介して回転方向に移動することができる。なお、本実施形態では、これらの複数のローラー22が並設されてホルダー搬送路が構成されている。
【0041】
また、基板ホルダー1の支持部材11の天井部には、ホルダーマグネット25が装着されている。また、成膜装置の天井面には、シャッター搬送路に対向する位置からやや外側に外れてこの各ホルダーマグネット25に対向するように複数のマグネット26が並設されている。このホルダーマグネット25とマグネット26との間の吸引力により基板ホルダー1は床面に対して略垂直に保持された状態で移動される。
【0042】
このような基板搬送装置Iにおいては、基板ホルダー1に支持された被処理基板S1の被処理面における割れや欠けが抑制され、これにより歩留まりを向上させることが可能である。
【0043】
また、基板搬送装置の別の実施形態について図8〜図10を用いて説明する。
【0044】
基板ホルダー1の下端面には、ラック部材41が設けられている。ラック部材41は、図8(b)に示すようにその下端面の中央部に凹部42が設けられており、この凹部42内に支持部材42aを介してラック43が支持されている。
【0045】
他方で、図9及び図10に示すように、基板ホルダー1が搬入される成膜装置には、ラック43と嵌合するピニオン51が設けられている。ピニオン51は、ピニオン51に設けられたピニオン回転軸52が一対のピニオン支持部材53により回転可能に支持されることで、成膜装置の床面上に支持されている。なお、このピニオン回転軸52は、傾斜するように(図10(a)中、ピニオン回転軸52は、左端部が右端部よりも高くなるように設定されている。)、ピニオン支持部材53の異なる高さ位置に設けられている。ピニオン回転軸52は、成膜装置外部に設けられた図示しないモーターに接続されており、このモーターにより回転駆動されるように構成されている。即ち、基板ホルダー1が成膜装置に搬入されてラック43とピニオン51とが係合すると、この状態でピニオン51が回転駆動することにより基板ホルダー1は搬送される。
【0046】
ここで、ピニオン51は、図示しないが成膜装置内において所定の距離離間して複数設けられている。所定の距離とは、本実施形態では、基板ホルダー1の短手方向(横方向)の長さであり、基板ホルダー1は、常に一つのピニオン51により搬送されるように構成されている。
【0047】
また、成膜装置には、搬送ローラー54が、基板ホルダー1の幅方向に対して複数離間するように設けられている。図10(b)に示すように、搬送ローラー54は、基板ホルダー1の厚み方向に対して、一つの搬送ローラー回転軸55に二つ設けられている。即ち、一対の搬送ローラー54は、一つの搬送ローラー回転軸55にそれぞれ設けられ、この一対の搬送ローラー54は、基板ホルダー1の幅方向に離間して複数設けられている。各搬送ローラー回転軸55は、搬送ローラー支持部材56に回転可能に支持されている。また、この場合の搬送ローラー回転軸55も傾斜するように(即ち、図10(b)中搬送ローラー回転軸55は、左端部が右端部よりも高くなるように設定されている。)、搬送ローラー支持部材56の異なる高さ位置に設けられている。このように、本実施形態では、ピニオン支持部材53や搬送ローラー支持部材56が底部に対して傾斜して設けられている。このため、基板ホルダー1は角度θで傾斜した状態を維持したまま成膜および搬送が可能である。
【0048】
この一対の搬送ローラー54は基板ホルダー1が成膜装置に搬入され設置された場合に、そのローラー面が基板ホルダー1のラック部材41の底面に接触し、基板ホルダー1の搬送時にラック部材41を支持して基板ホルダー1を支持する。この搬送ローラー54を備えることで、基板ホルダー1がピニオン51により搬送される場合に、ピニオン51に基板ホルダーの荷重が全てかかることがなく、これによりピニオン51がラック43との間にバックラッシュ(バックラッシ)を保持することができるので、回転自在となる。即ち、この搬送ローラー54がない場合には、ピニオン51に基板ホルダー1の荷重が全てかかってしまい、ピニオンのバックラッシュがなくなってピニオンが回転することができなくなり、基板ホルダー1を搬送することができない。
【0049】
さらにまた、成膜装置には、ガイドローラー57が複数離間して設けられている。ガイドローラー57は、その一端にガイドローラー回転軸58に接続され、ガイドローラー回転軸58は、支持台59により回転可能であるように支持されている。ガイドローラー57は、ローラー面が基板ホルダー1のラック部材41の側面に接触し、搬送時における基板ホルダー1のがたつきを抑制する。
【0050】
このように、本実施形態においては、ラック43と回転駆動されるピニオン51とにより基板ホルダー1が傾斜した状態で搬送される。この場合に、搬送ローラー54により基板ホルダー1の荷重が支持されることにより、ピニオン51が回転する。従って、保持部材により基板ホルダー1に支持された被処理基板S1の被処理面における割れや欠けが防止された状態で搬送することができる。さらに、このように基板ホルダー1の荷重が支持されることで、ピニオン51にバックラッシュを生じさせることができ、ピニオン51が回転しやすいことにより、よりスムーズに搬送することができるので、より歩留まりを向上させることが可能である。また、ガイドローラー57により、基板をより安定して搬送することが可能である。さらにまた、基板ホルダー1が傾斜した状態で搬送されることで、被処理基板上にダストやパーティクルが付着することを防止できる。
【0051】
(他の実施形態)
上述した各実施形態では、被処理基板S1〜S3の保持部材として基板の移動を抑制するものを示したが、これに限定されない。例えば、基板ホルダー1〜1Bには、クランプを設けてこれにより被処理基板S1〜S3の保持を行ってもよい。
【0052】
実施形態2及び3では、上端側保持部材14は円柱状部141を有するものを示したがこれに限定されず、実施形態3に示す下端側保持部材15Aのような角柱状部156を有するものを用いてもよい。また、上端側保持部材14も使用によりすり減って被処理基板S2のがたつきが発生するようであれば、円柱状部141を角柱状部にして構成し、すり減った場合には回転できるように構成してもよい。
【0053】
基板搬送装置としては、基板ホルダー1を備えたものを示したが、もちろん、基板ホルダー1A、1Bを備えたものであってもよい。基板ホルダー1A、1Bについても、それぞれホルダーマグネット25とマグネット26との間の吸引力により床面に対して略垂直に保持された状態で移動される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の基板ホルダー及び基板搬送装置によれば、被処理基板S1の被処理面における割れや欠けが抑制され、歩留まりを向上することができる。従って、半導体素子製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B 基板ホルダー
11 支持部材
12、12A 緩衝材
13 押圧部材
14 上端側保持部材
15、15A 下端側保持部材
21 棒状部材
22 ローラー
23 固定部材
24 回転軸
25 ホルダーマグネット
26 マグネット
111 側壁部
112 当接部
113 開口部
114 収容部
115 凸部
116 凸部開口
121 位置決め開口
131 押圧部本体
132 押圧部凹部
133 押圧部貫通孔
141 円柱状部
142 フランジ部
143 第1貫通孔
144 凹部
151 支持部材本体
152 返し部
153 支持部材凹部
154、154A 第2貫通孔
156 角柱状部
157 フランジ部
I 基板搬送装置
S1−S3 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の被処理面側の外周部に当接する当接部と、該被処理基板の被処理面を露出させる開口とを有し、前記被処理基板の前記被処理面を開口から露出させた状態で前記当接部で前記被処理基板を支持する支持部材を備え、
前記当接部には、少なくとも前記被処理基板に対向する位置に、衝撃吸収性の高い緩衝材が設けられていることを特徴とする基板ホルダー。
【請求項2】
前記基板ホルダーの当接部には、突起部が形成され、かつ、前記緩衝材には、該突起部に対応して開口部が設けられ、
前記突起部に該開口部を嵌合して前記緩衝材が当接部に設置されると共に、
該開口部から露出した前記突起部を覆うと共に前記緩衝材の開口部の周縁を押圧し、かつ、前記被処理基板の端部を保持する保持部材を有し、該保持部材が衝撃吸収性の高い弾性部材からなることを特徴とする請求項1記載の基板ホルダー。
【請求項3】
前記保持部材が、基板の端部に亘って離間して複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板ホルダー。
【請求項4】
前記保持部材が、前記突起部を覆うと共に前記緩衝材の開口部の周縁を押圧する角柱状部を有し、該角柱状部が前記角柱状部の中心を通る固定部材により当接部に固定されることを特徴とする請求項3記載の基板ホルダー。
【請求項5】
前記保持部材が、前記被処理基板の上端部を支持する上端側保持部材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の基板ホルダー。
【請求項6】
前記保持部材が、前記被処理基板の下端部を支持する下端側保持部材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の基板ホルダー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板ホルダーを備えたことを特徴とする基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89588(P2012−89588A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233107(P2010−233107)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】