説明

基板上での金属炭化物由来ナノロッドの合成/成長方法、それによって得られる基板およびその用途

本発明は、基板上で金属M1の炭化物からナノロッドを合成する方法に関する。該発明の方法は、(a)基板上での、金属M1の酸化物のナノ結晶および金属M1とは異なる少なくとも1種の金属M2の酸化物のナノ結晶の層(M1金属酸化物ナノ結晶は、この層に分散している)を蒸着させるステップ、(b)金属M1およびM2の酸化物ナノ結晶を対応する金属に還元するステップ、および(c)金属M1のナノ結晶を選択的に成長させるステップよりなる。本発明は、また、基板上で前記材料のナノ結晶から金属M1の炭化物のナノロッドを成長させる方法、かくして得られた基板、およびそれらの用途、例えば化学的または生物学的機能性を含むミクロシステム、特にバイオセンサー、例えばフラットテレビまたはコンピュータスクリーンなどのための電子放射源の製造における用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の炭化金属ナノロッド、より詳しくは炭化クロムナノロッドを合成する方法、および上記ナノロッドを同じ金属のナノ結晶から基板上に成長させる方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、それによって得られた基板およびそれらの用途に関する。
【0003】
本発明による合成および成長方法は、炭化物に固有の堅くて頑丈な構造を有していることとは別に、それらの合成またはそれらの成長が行われる基板に対して、この基板の主平面と垂直に、堅固に付着しており、互いから物理的に分離している、すなわち、互いに接触はしていない。
【0004】
これらのナノロッドは、それ故、有機、化学または生物分子をグラフトすることによって官能化することが可能であり、その結果、化学的または生物学的機能を備えたミクロシステムの製作、より詳しくは、例えば医学研究および臨床生物学ならびに農業/食料品の分析、特に原料および最終製品の製造工程の管理および品質管理の分野、あるいは環境分野における有用なバイオセンサーの製作にとって最も際立った利点を有するものである。
【0005】
ナノロッドは、また、電子放射用の電界放出チップとして作用し、したがって、例えばテレビもしくはコンピュータの平面型画面を製作するための電子放射源構造の一部を形成するか、または例えば低波長分散の発光等、表面の光学的性質を改変するために使用することが可能である。
【0006】
それらは、また、有用なナノ流体装置の製造、例えばクロマトグラフィー技術における用途も見出すことができる。
【背景技術】
【0007】
近年、ナノチューブ、主としてカーボンナノチューブ、またはナノロッドを得る多数の方法が提案された。
【0008】
本記述の最後にある表Iは、基本的に3種類であるこれらの方法の代表例を示している。
【0009】
第1に、触媒結晶の粉末についてのナノチューブを製造することを狙いとするものが存在し、それはどんな基板にも付着していないナノチューブを形成することになる。
【0010】
例えば、文献[1](Flahaut他、J.Mater.Chem.、2000、10、249〜252頁)は、カーボンナノチューブを調製する方法について記載しており、それは、Mg0.9Co0.1O固溶体をH2とCH4の混合物により、1000℃に加熱した炉中で還元して、カーボンナノチューブからと、コバルトからと、酸化マグネシウムとから形成された複合粉を得、続いてこの粉を酸で処理してコバルト触媒を除去することからなる。
【0011】
同様に、文献[2](Zhu他、J.Mater.Chem.、2000、10、2570〜2577頁)は、二硫化タングステンナノチューブを調製する方法を開示しており、その中で、酸化タングステンナノロッドまたはナノニードルからなる粉末を、1100℃に加熱した炉中で硫化水素により還元し、続いてかくして形成されたナノチューブを、その粉末をアセトン浴中で超音波にかけることにより互いから分離している。
【0012】
第2に、垂直に立っているが互いに接触しているナノチューブから接着性の膜を基板上に生成させることを狙った方法が存在する。
【0013】
例えば、文献[3](Bower他、Appl.Phys.Lett.、2000、77(6)、830〜832頁)は、シリコン基板上にカーボンナノチューブの均一な膜を得る方法に関するものであり、その方法は、C2H2/NH3混合物中に存在するアセチレンを分解することによるMPECVD(マイクロ波プラズマ促進化学蒸着法)を用いるカーボンの蒸着を含む。そのシリコン基板は、厚さ約2nmのコバルトの層をプレコートしてあり、その層は、ナノチューブを成長させるための触媒シードとして作用することが意図されている。
【0014】
文献[4](Zhang他、Appl.Phys.A、2002、74、419〜422頁)の著者等もまた、カーボンナノチューブの均一な膜を、これはCVDおよびカーボンの前駆物質としてエチレンジアミンを使用することにより得ている。ここでもまた、触媒シードとして作用することが可能なニッケル膜を基板上に予め生成させる。
【0015】
第3の種類の方法は、垂直に立ってもいるし互いに分離してもいるナノ物体を基板上に得るためにリソグラフィー操作を採用するものをグループ化している。
【0016】
例えば、文献[5](Hadobas他、Nanotechnology、2000、11、161〜64頁)は、シリコンナノ構造のグリッドパターンをこの同じ材料からなる基板上に得る方法に関するものであり、その方法は、アルゴンレーザー、それに続く酸素プラズマエッチング、そして次に六フッ化硫黄プラズマエッチングを用いる光リソグラフィーによるパターン形成を含む。かくして得られたナノ構造は、試料によって高さが35から190nmあり、相互に300nm分離している。
【0017】
文献[6](Ren他、Appl.Phys.Lett.、1999、75(8)、1086〜1088頁)は、シリコン基板上にカーボンナノチューブを生成させる方法について記載しており、それは、この予めドープした基板上に、ニッケルグリッドパターンを、電子ビームリソグラフィー、続いて電子ビーム蒸着、そして次にアセチレン/アンモニア混合物を使用するPEHFCVD(プラズマ促進ホットフィラメント化学蒸着法)により生成させ、そのニッケルチップがナノチューブの成長のためのシードとして作用するものである。
【0018】
文献[7](Teo他、Appl.Phys.Lett.、2001、79(10)、1534〜1536頁)は、同一原理に基づく方法を提起しているが、その中でニッケルパターンを2つの連続したリソグラフィーのステップにより製造し、1つは、光リソグラフィーを、他方は電子ビームリソグラフィーを使用し、一方カーボンの蒸着は、アセチレン/アンモニア混合物からDCCVD(直流化学蒸着法)により得ている。
【0019】
文献[8](Fan他、Physica E、2000、8、179〜183頁)は、予め多孔性にしたシリコン基板上にカーボンナノチューブの束を得るための方法を提案しており、その方法は、この基板に、リソグラフィー、続いて電子ビーム蒸着により、均一な間隔の四角形の開口部を備えた鉄膜を蒸着し、次いでその基板を700℃に加熱した炉中のエチレンの流れに中に置くことによってカーボンナノチューブの束の成長をもたらすことからなる。
【0020】
文献[5]から[8]に記載されている方法は、著しく高価であり、実施できるのは限定された面積にわたるのみであるリソグラフィー操作を含んでいるために、これらの方法の使用は、大きな面積にわたるナノチューブまたはナノロッドの種類のナノ物体の製造は考えられない。その上、基板表面上のナノチューブの分散は、文献[6]の場合、非常に不規則であることが立証されており、その一方で、文献[8]の場合は、束になって結ばれているナノチューブの形成をもたらすために、後者の場合それすら存在しない。
【0021】
文献[9](Chhowalla他、J.Appl.Phys.、2001、90(10)、5308〜5317頁)には、また、シリコン基板上に垂直配向したカーボンナノチューブを成長させるために、この基板上にコバルトまたはニッケル系の触媒の薄膜をスパッタリングまたは熱的蒸発により蒸着し、次いでこの触媒膜を750℃まで加熱することによって焼結し、アセチレン/アンモニア混合物を使用するDCCVDによりカーボンを蒸着することも提案されている。
【0022】
この方法は、リソグラフィーを用いない利点を有するが、それは、しかしながら、均一なナノチューブの分布および後者の間に十分な間隔を有するものを得ることを可能ならしめない。
【0023】
最後に、文献[10](Li他、Appl.Phys.Lett.、1999、75(3)、367〜369頁)は、アルミナ層の溝の中に予め蒸着したコバルト上にアセチレンの熱分解によってカーボンナノチューブを成長させる方法を教示している。しかしながら、これらの溝の間隔は、容易に制御することができず、ここでもまた、得られたナノチューブは十分な間隔で離れていない。
【0024】
したがって、互いから分離している基板上に垂直に立ったナノ物体の製造を可能にする現時点の唯一の方法は、すべてが、高価であり、かつ小さな面積に限定されるリソグラフィー操作を含んでいる。
【特許文献1】仏国特許出願第98/00777号明細書
【非特許文献1】Flahaut他、J.Mater.Chem.、2000、10、249〜252頁
【非特許文献2】Zhu他、J.Mater.Chem.、2000、10、2570〜2577頁
【非特許文献3】Bower他、Appl.Phys.Lett.、2000、77(6)、830〜832頁
【非特許文献4】Zhang他、Appl.Phys.A、2002、74、419〜422頁
【非特許文献5】Hadobas他、Nanotechnology、2000、11、161〜64頁
【非特許文献6】Ren他、Appl.Phys.Lett.、1999、75(8)、1086〜1088頁
【非特許文献7】Teo他、Appl.Phys.Lett.、2001、79(10)、1534〜1536頁
【非特許文献8】Fan他、Physica E、2000、8、179〜183頁
【非特許文献9】Chhowalla他、J.Appl.Phys.、2001、90(10)、5308〜5317頁
【非特許文献10】Li他、Appl.Phys.Lett.、1999、75(3)、367〜369頁
【非特許文献11】DelaunayおよびTouchais、Rev.Sci.Instrum.、1998、69(6)、2320〜2324頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明者等は、それ故、基板上で、その主平面に垂直にその基板にしっかりと付着しているのみならず、相互に物理的に分離しており、それがリソグラフィー操作には一切よらないで達成され、その結果その方法を大きな面積にわたるナノロッドの生成に使用することができ、原価が工業規模で実施することが可能なものである金属炭化物ナノロッドを得る方法を提供することを目的に設定した。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的および他の目的は、基板上で金属炭化物のナノロッドを合成する方法および基板上で上記ナノロッドを同じ金属のナノ結晶から成長させる方法の両方を提案する本発明により達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の主題は、第1に、基板上で1種の金属M1の炭化物のナノロッドを合成する方法であって、それは以下の、
a)基板上に、金属M1の酸化物のナノ結晶および金属M1とは異なる少なくとも1種の金属M2の酸化物のナノ結晶で形成された層(M1金属酸化物ナノ結晶は、この層に分散している)の蒸着のステップ、
b)M1およびM2金属酸化物ナノ結晶の対応する金属ナノ結晶への還元のステップ、および
c)M1金属ナノ結晶の選択的成長のステップ
を含む。
【0028】
本発明によれば、ステップa)は、金属M1およびM2からなるターゲットからの、ECR(電子サイクロトロン共鳴)マイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマによる反応スパッタリングにより行うのが好ましい。
【0029】
基板上に金属または金属酸化物を蒸着する技術としてのECRマイクロ波プラズマ源により発生したガスのプラズマによる金属ターゲットからの反応スパッタリングは、今や良く知られている。この技術の原理および大きな面積の基板上で実施することを可能にする高い磁気閉じ込めを達成するための装置については、DelaunayおよびTouchaisにより、Rev.Sci.Instrum.、1998、69(6)、2320〜2324頁、[11]に記載されている。
【0030】
それ故、この技術は、マイクロ波電力(例えば2.45GHzの周波数における)を、1つまたは複数の導波管からなり、電子サイクロトロン共鳴(例えば、マイクロ波電力の周波数が2.45GHzのとき875ガウスにおける)の領域を含むプラズマチャンバーに投入し、それによって、プラズマチャンバーに導入される、一般に10-3ミリバールを下まわる低い圧力におけるガスの解離を引き起こすことよりなることが簡単に想起される。
【0031】
かくして発生したイオンおよび電子は、磁界の向きの線に沿って拡散し、マイナスにバイアスした金属ターゲットを攻撃する。このターゲットのスパッタリングにより、順次金属原子が発生し、それがターゲットに面して位置する基板上に堆積し、かくして金属または金属酸化物層がこの基板上に形成される。
【0032】
本発明による合成方法において、金属ターゲットのスパッタリングは、基板上に、少なくとも2つの異なる金属酸化物のナノ結晶から形成された層の蒸着をもたらさなければならない。厳密に言うと、この層は、一方では、いわば合成することが望まれている金属炭化物ナノロッドの組成の一部を形成することが意図されている金属である金属M1の酸化物から構成されているナノ結晶と、その役割が、M1金属酸化物ナノ結晶がこの層内に分散し、その結果、後者が相互に物理的に分離することを確保することであるM1とは異なる1つまたは複数の金属M2の酸化物から構成されているナノ結晶とを含まなければならない。
【0033】
これが、ステップa)の間に使用される金属ターゲットが、金属M1、および1種または複数の金属M2の両方からなる理由である。
【0034】
本発明によれば、金属ターゲットがスパッタされるときにそれによって発生する金属M1およびM2の原子束を調節し、それによってステップa)の後に基板を覆うナノ結晶の層中に存在するM1金属酸化物ナノ結晶の密度を、このターゲットの組成および/またはそのバイアスを変化させることによって制御することが可能である。
【0035】
例えば、特にその金属ターゲットは、金属M1およびM2の混合物からなることができ、その場合それは、その全体の面積にわたって1つの同一負のバイアス電圧を受ける。
【0036】
金属M1およびM2は、それ故、
- 前記金属M1およびM2のスパッタ速度が選択した条件下でほぼ同じであることが判明した場合は、ステップa)の後に、基板を被覆するナノ結晶の層中に見出されることを望む両者の原子比率に相当するか、
- または、金属M1およびM2のスパッタ速度が選択した操作条件下で同じではないことが判明した場合は、その速度差を考慮した
原子比率(すなわち、原子の数で表す)で、この混合物中に存在させる。
【0037】
変法として、その金属ターゲットは、互いに隣接しているかまたは互いに分離しているいくつかの帯域を含み、これら帯域の少なくとも1つがそのとき金属M1からなるのに対して、これら帯域のその他の1つまたは複数が、1種または複数の金属M2からなることができる。
【0038】
この場合、その金属ターゲットの様々な帯域により発生する金属M1およびM2の原子束は、
- 同一の負のバイアス電圧をこれらの帯域に加えることが可能な場合は、それら帯域のそれぞれの面積を変化させるか、
- その様々な帯域が同じ面積を有することが可能な場合は、それらにそれぞれ加える負のバイアス電圧を変化させるか、
- あるいは、双方のパラメーター、すなわち面積と負のバイアス電圧を変化させることによるかのいずれかにより、
得ることができる。
【0039】
状況がどうであれ、これらのパラメーターの選択は、金属M1およびM2が操作条件に応じて有するスパッタ速度のどんな差異も考慮に入れなければならない。
【0040】
ステップa)の間の、基板上に蒸着したM1またはM2金属酸化物ナノ結晶の対応する金属ナノ結晶への還元-または本発明による合成方法のステップb)-は、好ましくは、ECRマイクロ波プラズマ源により発生する水素プラズマにより行い、基板はそのとき加熱する。
【0041】
同様に、M1金属ナノ結晶の選択的成長-または本発明による合成方法のステップc)-は、好ましくはECRマイクロ波プラズマ源により発生する少なくとも1種の炭化水素のプラズマにより行い、基板は同様に加熱する。
【0042】
したがって、本発明による合成方法のすべてのステップは、1つの同じ装置、すなわちECRマイクロ波プラズマ源を用いて行うことが可能であり、これは本発明のさらなる利点である。
【0043】
このECRマイクロ波プラズマ源は、高度に活動的な電子の低圧プラズマの発生を可能にし、それによりプラズマチャンバー内のガスの非常に高度の解離を確保する文献[11]に記載されている種類の、高い磁気閉じ込めによるプラズマ源であることが好ましい。
【0044】
上記に関連して、金属M1は、好ましくは、ステップc)において、ガス状の有機分子またはラジカルと反応して、それらと共に金属炭化物を形成し、かくしてこの金属M1のナノ結晶に由来するこの炭化物で構成されたナノロッドの成長を引き起こすことが可能な金属から選択する。
【0045】
この種の金属は、特にクロムおよびモリブデンであり、本発明の脈絡の中ではクロムが好ましい。
【0046】
1種または複数の金属M2は、ガスの形態をしている炭素含有分子またはラジカルに対する親和性を有しており、それによってそれらがステップc)で金属-炭素結合によってこれらの分子またはラジカルを凝固させることを可能ならしめ、1つまたは複数のこれら金属M2のナノ結晶からの成長を阻止する保護黒鉛層を形成することを可能にする金属から選択する。
【0047】
上記金属は、有機化学で触媒として知られるものである。それらは、特に、鉄、ニッケルおよびコバルトであり、本発明の脈絡の中では鉄およびニッケルが好ましい。
【0048】
金属M1がクロムの場合、一方の1種または複数の金属M2は、鉄およびニッケルから選択し、そこでステップa)は、好ましくは、鉄およびクロム、または鉄、クロムおよびニッケルから成る、例えば、68%の鉄、18%のクロムおよび14%のニッケルから成るオーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼でできているターゲットの反応スパッタリングにより行う。
【0049】
このターゲットは、有利には、-200V以上、好ましくは-400Vと-200Vの間の負電圧によりバイアスをかけ、一方酸素プラズマは、プラズマによって発生する電子のエネルギーを最適化するために、一般的には10-3ミリバール以下、好ましくは10-4と10-3ミリバールの間の圧力に維持する。
【0050】
マイクロ波発振器により出される電磁波の周波数および電力、またはマイクロ波電力の投入点における磁界およびECR帯域中の磁界によって与えられる電流等その他の操作条件は、高閉じ込めECRマイクロ波プラズマ源で一般に使用されるものと類似しており、特に文献[11]でDelaunayおよびTouchaisにより記載されているものと類似している。
【0051】
したがって、約20分の時間ターゲットに反応するようにスパッタした後は、一般に厚さが約50nmの層が得られ、それは、酸化鉄ナノ結晶および場合により酸化ニッケルナノ結晶の間に散在する酸化クロムナノ結晶を含み、これらのナノ結晶はすべて、一般的には約100から500nmの直径を有している。
【0052】
好ましくは、ステップb)において、水素プラズマは、10-2ミリバール以下、有利には10-3と10-2ミリバールの間の圧力に維持し、一方基板は金属酸化物ナノ結晶を還元するために必要な速度に応じて300から600℃の範囲の温度に加熱する。
【0053】
これらの条件下で、酸化クロム、酸化鉄および場合によって酸化ニッケルのナノ結晶は、還元されて、5から20分の間に、クロム、鉄および場合によってはニッケルのナノ結晶になり、それは一般的に直径約5から100nmと測定される。
【0054】
さらに、ステップc)においては、炭化水素プラズマを、10-2ミリバール以下、好ましくは10-3と10-2ミリバールの間の圧力に維持し、そして炭化物ナノロッドの成長のために必要な活性化エネルギーを与えるために、基板を600℃以上、好ましくは600と800℃の間に加熱する。
【0055】
本発明によれば、ステップc)で使用する1種または複数の炭化水素は、例えば、メタン、エタン、プロパン、エチレンおよびアセチレン等のアルカン、アルケン、およびアルキン、およびそれらの混合物から選択する。
【0056】
エチレンを使用するのが好ましい。
【0057】
かくして、基板およびナノスケールの直径、すなわち一般的に約5から100nmの炭化クロムロッドで形成されている釘/板型の構造が得られ、これらのロッドは、この基板の表面にしっかりと付着しており、後者の主平面に対して垂直であり、そしてまた互いに物理的に分離している。
【0058】
これらのナノロッドの長さは、ステップc)の持続時間による。推測的に、本発明の脈略の中で、それらがより特別に意図されている上記の用途に従って、ナノロッドはある一定の垂直度を保持するために長さが1μmを超えないものを製造するのが好ましいが、また一方、相対的にもつれたナノロッドを与える構造を得るために、十分に長い時間それらの成長を続けることも可能である。
【0059】
基板は、その変形温度がステップc)の間にその基板が加熱されなければならない温度より高い多種多様の材料、例えば、シリコン、ホウケイ酸塩等のある種のガラス、石英または、さらに金属もしくはステンレス鋼等の合金から選択することができる。その基板は、また、固体であるかまたは穿孔されている、つまり、それは例えばグリッドの形をとることができる。
【0060】
ステップb)およびc)において、この基板は、例えば電気抵抗加熱エレメント等の加熱手段が与えられている基板ホルダーを用いて他のものとの間で加熱することができる。
【0061】
本発明の主題は、また、1種の金属M1の炭化物のナノロッドを成長させる方法であって、それは、M1とは異なる少なくとも1種の金属M2のナノ結晶の層内(前記層は、予め基板上に蒸着されている)に分散させた前記金属M1のナノ結晶に、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した少なくとも1種の炭化水素のプラズマの作用を受けさせることによる方法である。
【0062】
本発明によれば、この成長方法は、好ましくは、上記のものと同じ金属M1およびM2と、文献[11]に記載されている種類の、高い磁場閉じ込めによるECRマイクロ波プラズマ源と、そして上記の合成方法のステップc)の間に使用したものと同様の操作条件とを使用して行う。ECRマイクロ波プラズマ源は、文献[11]中にあるようなコイル(ソレノイド)、またはFR-A-98/00777[12]に記載されているような永久磁石のいずれかよりなる磁気構造を有することができる。
【0063】
本発明による基板上で金属炭化物ナノロッドを合成および成長させる方法は、多くの利点を有している。具体的には、既に述べた利点とは別に、それらは、また、金属炭化物ナノロッドを大きな面積、すなわち、実際のところ数dm2を超える基板上で、かつ生産工程に対応する原価で生成させることを可能にするという利点を提供する。
【0064】
本発明の主題は、また、基板の表面に、その主平面に垂直に、そして物理的に相互に分離して付着している金属炭化物ナノロッドを有している基板である。
【0065】
好ましくは、これらの金属炭化物ナノロッドは、直径が5から100nm、長さが100nmから1μmと計測される。
【0066】
また好ましくは、これらの金属炭化物ナノロッドは、炭化クロムのナノロッドである。
【0067】
強度、堅牢性、真直度および縦横比(長さ/直径比)に関してこれらナノロッドが有する卓越した性質により、それを備えた基板は、非常に多くの用途で使用することができる。
【0068】
特に、それらは、前記ナノロッドが、例えば抗体、抗原または酵素等のタンパク質、あるいはヌクレオチド断片(DNAまたはRNA)等の有機分子をグラフトすることによって官能化された後に、化学的または生物学的機能性を備えたミクロシステム、より詳しくはバイオセンサーの構造の一部を形成するのに適している。上記グラフトを実施する方法はそれ自体知られている。
【0069】
本発明による基板は、また、例えば、テレビもしくはコンピュータの平面型画面の製作用の電子放射源の構造の一部を形成するか、または例えば低波長分散の発光等、表面の光学的性質を改変するために使用することが可能である。
【0070】
それらは、また、有用なナノ流体装置の製造、例えばクロマトグラフィー技術における用途も見出すことができる。
【0071】
上記の事柄は別として、本発明は、また、本発明による合成方法を行う実施例およびこの方法によって得られる金属炭化物ナノロッドの例について言及する以下の残りの記述から明らかとなるその他の事柄をも含む。
【0072】
以後の記述は、本発明を説明するためであって限定するためではなく、添付の図面を参照しながら行う。
[実施例]
【0073】
最初に図1、2および3について言及すれば、これらは、本発明による合成方法のステップa)で使用することができる金属ターゲットの実施形態の3つの例を、このステップa)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、金属ターゲットの反応スパッタリングによって行う場合に、基板上に約90%の酸化鉄ナノ結晶および約10%の酸化クロムナノ結晶を含む層を蒸着するものを対象として概略的に示している。
【0074】
これらの例は、ターゲットによりそのスパッタリングの間に発生する鉄およびクロム原子束を、このターゲットの組成および/またはそのバイアスを変化させることによって調節し、それによってステップa)の後で基板を覆っているナノ結晶の層中の炭化クロムナノ結晶の密度を調節することに対する本発明による合成方法により与えられる可能性を説明することを意図している。
【0075】
図1に示されている金属ターゲットは、プレート10の形をしており、基板11に向かい合って後者とほぼ平行に配置されている。このプレートは、それに1つの同じ負バイアス電圧、例えば-400Vを、その全面積にわたって加えるための電圧源12に接続されている。
【0076】
鉄とクロムのスパッタ速度は、同じ操作条件下では実質的に同一であるため、ターゲット10は、鉄とクロムがそれぞれ90%と10%の原子比率の混合物、例えばステンレス鋼からなっている。
【0077】
図2に示す金属ターゲットは、基板11に向かい合う同じ面に位置する3つのプレートの形、それぞれ10a、10bおよび10cをしているが、それらは互いにわずかに分離している。これらのプレートは、同じ負バイアス電圧、例えば-100Vをそれらに加えるための電圧源12と接続している。
【0078】
プレート10aおよび10cが鉄製であるのに対して、プレート10bはクロム製である。
【0079】
それらのスパッタリングで、基板に約90%の酸化鉄ナノ結晶および約10%の酸化クロムナノ結晶を含む層の蒸着をもたらすために、プレート10aと10cの面積の和は、プレート10cのそれの9倍にほぼ等しい。
【0080】
図3に示す金属ターゲットもまた、基板11と向き合う同じ面に位置する3つのプレートの形、それぞれ10a、10bおよび10cをしており、互いにわずかに分離している。前のように、プレート10aおよび10cは鉄製であるのに対し、プレート10bはクロム製である。
【0081】
しかしながら、この金属ターゲットは、一方においてプレート10aおよび10bの面積の和が、プレート10bの面積と等しいこと、および、他方で、プレート10aおよび10cとプレート10bは、それぞれ2つの異なる電圧源13および14に接続しているという事実により、図2に示したものとは区別される。
【0082】
これは、なぜなら、この場合ターゲットにより発生する鉄およびクロム原子束を、プレート10aおよび10cに対してプレート10bに対するものより高い負バイアス電圧、例えば-100Vに対して-1000Vを加えることによって調節するためである。
【0083】
ここで図4について言及すると、これは、本発明による合成方法のステップa)を、文献[11]に記載されている種類の高い磁気閉じ込めのECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、例えば、68%の鉄、18%のクロムおよび14%のニッケルで構成されているオーステナイト系ステンレス鋼でできているターゲット10の反応スパッタリングによって行う場合に、このステップの間に起こる反応を概略的に示している。
【0084】
このプラズマ源の構成要素中、ステンレス鋼ターゲット10、それに接続している電圧源12、鉄、クロムおよびニッケルの酸化物ナノ結晶を蒸着しようとする基板11、それぞれ16aおよび16bの2つの磁場の外部力線、およびこの磁場を発生するそれぞれ20a、20b、20cおよび20dの4つのコイルが、図4に故意に示されている。
【0085】
図4中に見られるように、プラズマチャンバー内に、例えば数10-4ミリバールといった低圧で存在する酸素は、このチャンバーに投入されるマイクロ波の電力の効果のせいで解離し、電子(e-)およびイオン(O2+、O+)を発生してターゲット10をスパッタする。
【0086】
このスパッタリングは、順々に、鉄、クロムおよびニッケルの原子束を発生し、それが基板11に酸素(O-)原子と共に堆積し、酸化鉄(Fe2O3)、酸化ニッケル(NiO)および酸化クロム(Cr2O3)から形成された層21の形成を引き起こし、その層中に酸化クロムナノ結晶(図4中黒ベタの丸により象徴的に示してある)が分散している。
【0087】
図5は、図4のものと類似した略図であるが、これは、本発明による合成方法のステップc)を高い磁気閉じ込めでのECRマイクロ波プラズマ源により発生したエチレンプラズマにより行う場合に、このステップの間に起こる反応を示している。
【0088】
図5では、ステップa)の間は不要のため図4にはない2つのエレメント、すなわち、ターゲット10のための取り外し可能なシールド22、および加熱手段、例えば電気抵抗加熱エレメントを備えた基板ホルダー23が示されている。
【0089】
続く中で、基板11を覆っているナノ結晶の層21は、鉄、クロムおよびニッケルのナノ結晶から形成されており、それは、図4で示したようにして得られた鉄、クロムおよびニッケルの酸化物ナノ結晶の還元に起因するものと考えられる。
【0090】
プラズマチャンバー内に存在し、例えば数10-3ミリバールの低圧であるエチレンは、このチャンバーに投入されるマイクロ波電力の効果のせいで解離し、電子(e-)および反応性の炭素化学種(CxHy+およびCxHy-、ただし、xは1または2、およびyは0から4である)を発生する。
【0091】
これらの反応性化学種は、一方では、基板11の表面のクロムナノ結晶中に存在するクロムと反応してそれと共に炭化クロムを形成し、かくしてこれらのナノ結晶から、炭化クロムナノロッドの成長(図5中に黒ベタの長方形により象徴的に示してある)をもたらし、他方では、鉄およびニッケルのナノ結晶により固定され、鉄およびニッケルのナノ結晶からの成長を阻止する保護黒鉛層形成を引き起こす。
【0092】
以下の実施例は、本発明による方法を実施する方式を説明することを意図している。
【0093】
(実施例1)
シリコン上の炭化クロムナノロッドの合成
炭化クロムナノロッドを、シリコン基板上で、3つのステップa)、b)およびc)に対して、文献[11]に記載されているものと類似の高い磁気閉じ込めでのECRマイクロ波プラズマ源を使用して合成した。
【0094】
操作条件は以下の通りとした:
- ステップa):酸素プラズマによる金属ターゲットのスパッタリング
・ 使用ターゲット:68%のFe、18%のCrおよび14%のNiからなるオーステナイト系ステンレス鋼
・ ターゲットバイアス:-400V
・ 酸素圧:2×10-4ミリバール
・ スパッタリング時間:20分
・ 蒸着済みナノ結晶層の厚さ:≒50nm
- ステップb):水素プラズマによる還元
・ 水素圧:1.5×10-3ミリバール
・ 基板温度:500℃
・ 還元時間:10〜20分
- ステップc):エチレンプラズマによる成長
・ マイクロ波電力:2.45GHzに対して50〜150ワット
・ エチレン圧:10-3〜3×10-3ミリバール
・ 基板温度:640℃
・ 成長時間:10〜30分
【0095】
図6は、これらの操作条件下で得られた電子衝撃によるエチレンC2H4の解離に対するマススペクトルを示す。このスペクトルは、エチレンが原子およびイオン、すなわちH+、H2+、C+、C2+、CH+、CH2+等に強く解離することを示しており、これらは、この解離の断片である。
【0096】
さらに、図7から9は、それぞれ30000×、80000×および200000×の倍率におけるSEM顕微鏡写真であり、それらは、最初の顕微鏡写真で、基板上での炭化クロムの成長の開始を、そして他の2つの顕微鏡写真の場合は、ステップc)の終わりに得られる炭化クロムナノロッドを示している。
【0097】
図8および9の中で見られるように、これらのナノロッド(図8に示すナノロッドに対しては、O≒37nm、L≒190nm、図9に示すナノロッドに対してはO≒50nm、L≒250nm)は、基板にその主平面に対して垂直に付着しており、まっすぐで、さらに、この場合は約800nmの間隔で物理的に相互に分離している(図8)。
【0098】
(実施例2)
ステンレス鋼グリッド上での炭化クロムナノロッドの合成
炭化クロムナノロッドを、ステンレス鋼グリッドからなる基板上で、3つのステップa)、b)およびc)に対して、文献[11]に記載されているものと類似の高い磁気閉じ込めでのECRマイクロ波プラズマ源を同様に使用して合成した。
【0099】
操作条件は以下の通りとした:
- ステップa):酸素プラズマによる金属ターゲットのスパッタリング
・ 使用ターゲット:68%のFe、18%のCrおよび14%のNiからなるオーステナイト系ステンレス鋼
・ ターゲットバイアス:-400V
・ 酸素圧:2×10-4ミリバール
・ スパッタリング時間:20分
・ 蒸着済みナノ結晶層の厚さ:≒50nm
- ステップb):水素プラズマによる還元
・ 水素圧:3×10-3ミリバール
・ 基板温度:550℃
・ 還元時間:10分
- ステップc):エチレンプラズマによる成長
・ マイクロ波電力:2.45GHzに対して50ワット
・ エチレン圧:3×10-3ミリバール
・ 基板温度:620℃
・ 成長時間:16分
【0100】
かくして、300000×の倍率におけるTEM顕微鏡写真に相当する図10で見られる炭化クロムナノロッドが得られた。
【0101】
ここで再び、約10nmの直径および約100nmを少し超える長さが計測されるこれらのナノロッドは、基板に、その主平面に対して垂直に固着しており、まっすぐで、同様に、この場合は約100nmを少し超える間隔で分離して、相互に物理的に分離している。
【0102】
図11は、これらのナノロッド中に存在する、鉄、炭素、クロムおよび酸素原子に対するエネルギー損失分光により得られたスペクトル(スペクトルS1、S2、S3およびS4)および透過電子顕微鏡画像(画像I1、I2、I3およびI4)を示しており、スペクトルS1と画像I1が鉄に対応し、スペクトルS2と画像I2が炭素に対応し、スペクトルS3と画像I3がクロムに対応し、そしてスペクトルS4と画像I4が酸素に対応している。
【0103】
これらのスペクトルおよび画像により、本発明により合成されたナノロッドが、確かに主として炭化クロムからなり、鉄および酸素の両方が残余の形でのみ存在していることが確認される。
【0104】
【表1】

【0105】
[参考文献]
[1] E. Flahaut, A. Peigney, Ch. Laurent and A. Rousset, J. Mater. Chem., 2000, 10, 249 - 252.
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[9] M. Chhowalla, K. B. K. Teo, C. Ducati, N. L. Rupesinghe, G. A. J. Amaratunga, A. C. Ferrari, D. Roy, J. Robertson and W. I. Milne, J. Appy. Phys., 2001, 90(10), 5308 - 5317.
[10] J. Li, C. Papadopoulos, J. M. Xu and M. Moskovits, Appy. Phys. Lett., 1999, 75(3), 367 - 369.
[11] M. Delaunay and E. Touchais, Rev. Sci. Instrum., 1998, 69(6), 2320 - 2324.
[12] 仏国特許出願第98/00777号明細書
【0106】
図1から5において、同じ参照番号は同じエレメントを示す役目をしている。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明による合成方法のステップa)で使用することができる金属ターゲットの実施形態の一例を説明する図であって、このステップa)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、上記ターゲットの反応スパッタリングによって行う場合に、基板上に90%の酸化鉄ナノ結晶および10%の酸化クロムナノ結晶を含む層を蒸着するものを対象としている。
【図2】本発明による合成方法のステップa)で使用することができる金属ターゲットの実施形態の一例を説明する図であって、このステップa)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、上記ターゲットの反応スパッタリングによって行う場合に、基板上に90%の酸化鉄ナノ結晶および10%の酸化クロムナノ結晶を含む層を蒸着するものを対象としている。
【図3】本発明による合成方法のステップa)で使用することができる金属ターゲットの実施形態の一例を説明する図であって、このステップa)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、上記ターゲットの反応スパッタリングによって行う場合に、基板上に90%の酸化鉄ナノ結晶および10%の酸化クロムナノ結晶を含む層を蒸着するものを対象としている。
【図4】本発明による合成方法のステップa)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマにより、オーステナイト系ステンレス鋼でできているターゲットの反応スパッタリングによって行う場合に、このステップの間に起こる反応を説明する図である。
【図5】本発明による合成方法のステップc)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生したエチレンプラズマにより行う場合に、このステップの間に起こる反応を説明する図である。
【図6】本発明による合成方法のステップc)を、ECRマイクロ波プラズマ源により発生したエチレンプラズマにより行う場合に、このステップの間に得られる電子衝撃によるエチレンの解離のマススペクトルを示す図である。
【図7】本発明による合成方法の実施の間に観察される、シリコンウェハ上の炭化クロムナノロッドの成長の開始を示す、30000×の倍率におけるSEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真である。
【図8】本発明による合成方法によりシリコンウェハ上で合成された炭化クロムナノロッドの80000×の倍率におけるSEM顕微鏡写真である。
【図9】本発明による合成方法によりシリコンウェハ上で合成された炭化クロムナノロッドの200000×の倍率におけるSEM顕微鏡写真である。
【図10】本発明による合成方法によりステンレス鋼グリッド上で合成された炭化クロムナノロッドの300000×の倍率におけるTEM(透過型電子顕微鏡)顕微鏡写真である。
【図11】本発明による合成方法により合成された炭化クロム中に存在する、鉄、炭素、クロムおよび酸素原子に対するエネルギー損失分光により得られたスペクトル(スペクトルS1、S2、S3およびS4)およびTEM画像(画像I1、I2、I3およびI4)を示す図であり、スペクトルS1と画像I1が鉄に対応し、スペクトルS2と画像I2が炭素に対応し、スペクトルS3と画像I3がクロムに対応し、そしてスペクトルS4と画像I4が酸素に対応している。
【符号の説明】
【0108】
10 プレート
10a プレート
10b プレート
10c プレート
11 基板
12 電圧源
13 電圧源
14 電圧源
16a 磁場の外部力線
16b 磁場の外部力線
20a コイル
20b コイル
20c コイル
20d コイル
21 酸化鉄(Fe2O3)、酸化ニッケル(NiO)および酸化クロム(Cr2O3)から形成された層
22 取り外し可能なシールド
23 基板ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上で1種の金属M1の炭化物のナノロッドを合成する方法であって、以下のステップ、
a)基板上に、金属M1の酸化物のナノ結晶および金属M1とは異なる少なくとも1種の金属M2の酸化物のナノ結晶を含む層(M1金属酸化物ナノ結晶は、この層に分散している)の蒸着、
b)M1およびM2金属酸化物ナノ結晶の対応する金属ナノ結晶への還元、および
c)M1金属ナノ結晶の選択的成長
を含む方法。
【請求項2】
ステップa)を、金属M1およびM2からなるターゲットからの、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ源により発生した酸素プラズマによる反応スパッタリングにより行う請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記ターゲットが、金属M1およびM2の混合物で構成されている請求項2に記載の合成方法。
【請求項4】
前記ターゲットが、互いに隣接しているかまたは互いに分離しているいくつかの帯域を含み、これら帯域の少なくとも1つが金属M1からなるのに対して、1つまたは複数のその他のこれら帯域が、1種または複数の金属M2からなる請求項2に記載の合成方法。
【請求項5】
ステップb)を、基板を加熱して、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ源により発生する水素プラズマにより行う前記請求項のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項6】
ステップc)を、基板を加熱して、電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ源により発生する少なくとも1種の炭化水素のプラズマにより行う前記請求項のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項7】
金属M1を、ガス状の有機分子またはラジカルと反応して、それらと共に金属炭化物を形成することができる金属からなる群から選択する請求項1から6のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項8】
金属M1はクロムおよびモリブデンからなる群から選択され、好ましくはクロムである請求項7に記載の合成方法。
【請求項9】
前記1種または複数の金属M2を、有機化学において触媒として知られる金属からなる群から選択する請求項1から8のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項10】
前記1種または複数の金属M2を、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群、好ましくは鉄およびニッケルからなる群から選択する請求項9に記載の合成方法。
【請求項11】
前記ターゲットが、鉄およびクロム、または鉄、クロムおよびニッケルからなるステンレス鋼で構成されている請求項2から10のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項12】
前記ターゲットに、-200V以上、好ましくは-400Vと-200Vの間の負電圧によりバイアスをかける請求項10に記載の合成方法。
【請求項13】
前記酸素プラズマを、一般的には10-3ミリバール以下、好ましくは10-4と10-3ミリバールの間に維持する請求項10または11のいずれかに記載の合成方法。
【請求項14】
ステップb)において、水素プラズマを、10-2ミリバール以下、有利には10-3と10-2ミリバールの間の圧力に維持し、基板を300から600℃の範囲の温度に加熱する請求項5から13のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項15】
ステップc)において、炭化水素プラズマを、10-2ミリバール以下、好ましくは10-3と10-2ミリバールの間の圧力に維持しつつ、基板を600℃以上、好ましくは600と800℃の間に加熱する請求項6から14のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項16】
ステップc)において使用する1種または複数の炭化水素は、アルカン、アルケンおよびアルキンからなる群から選択され、好ましくはエチレンである請求項6から15のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項17】
基板を、シリコン、ホウケイ酸ガラス、石英、金属および合金からなる群から選択する請求項1から16のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項18】
1種の金属M1の炭化物のナノロッドを成長させる方法であって、M1とは異なる少なくとも1種の金属M2のナノ結晶の層内(前記層は、予め基板上に蒸着されている)に分散させた前記金属M1のナノ結晶に、ECRマイクロ波プラズマ源により発生した少なくとも1種の炭化水素のプラズマを作用させることによる方法。
【請求項19】
金属M1を、ガス状の有機分子またはラジカルと反応して、それらと共に金属炭化物を形成することができる金属からなる群から選択する請求項18に記載の成長方法。
【請求項20】
金属M1はクロムおよびモリブデンからなる群から選択され、好ましくはクロムである請求項19に記載の成長方法。
【請求項21】
前記1種または複数の金属M2を、有機化学において触媒として知られる金属からなる群から選択する請求項18から20のいずれか一項に記載の成長方法。
【請求項22】
前記1種または複数の金属M2を、鉄、ニッケルおよびコバルトからなる群から、好ましくは鉄およびニッケルからなる群から選択する請求項21に記載の成長方法。
【請求項23】
炭化水素プラズマを、10-2ミリバール以下、好ましくは10-3と10-2ミリバールの間の圧力に維持しつつ、基板を600℃以上、好ましくは600と800°の間に加熱する請求項18から22のいずれか一項に記載の成長方法。
【請求項24】
1種または複数の炭化水素は、アルカン、アルケンおよびアルキンからなる群から選択され、好ましくはエチレンである請求項18から23のいずれか一項に記載の成長方法。
【請求項25】
基板を、シリコン、ホウケイ酸ガラス、石英、金属および合金からなる群から選択する請求項18から24のいずれか一項に記載の成長方法。
【請求項26】
金属炭化物ナノロッドが、基板の表面に、その基板の主平面に対して垂直に、かつ相互に物理的に隔てて付着している前記基板。
【請求項27】
前記金属炭化物ナノロッドが、直径5から100nmであり、長さ100nmから1μmである請求項26に記載の基板。
【請求項28】
前記金属炭化物ナノロッドが、炭化クロムナノロッドである請求項26または27のいずれかに記載の基板。
【請求項29】
請求項26から28のいずれか一項に記載の基板の、化学的または生物学的機能性を備えるミクロシステムの製作、特にバイオセンサーの製作への適用。
【請求項30】
請求項26から28のいずれか一項に記載の基板の、特にテレビまたはコンピュータの平面型画面のための電子放射源の製作への適用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−508888(P2006−508888A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559844(P2004−559844)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/FR2003/050154
【国際公開番号】WO2004/055232
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】