説明

基板位置調整方法、基板搬送システム、および太陽電池セルの製造方法

【課題】基板材料の傷付きを抑制可能とし、基板材料の位置合わせを簡易かつ高速に実施可能とする基板位置調整方法、基板搬送システム、および太陽電池セルの製造方法を得ること。
【解決手段】基板材料11を搬送するための搬送手段から、基板材料11の位置調整のための支持手段である支持棒13上へ、基板材料を置き換える第1置き換え工程と、支持手段から、基板材料11のうち支持手段の側の面へ流体を供給し、流体の圧力により、支持手段から基板材料11を浮上させる流体供給工程と、浮上している状態の基板材料11の、水平方向における位置を調整する位置調整工程と、流体の供給を停止し、位置調整工程を経た基板材料11を支持手段へ降下させ載置する降下工程と、基板材料11を、支持手段から搬送手段へ置き換える第2置き換え工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの製造工程における基板材料の位置調整のための基板位置調整方法、および、その方法による基板位置の調整を行う基板搬送システムに関する。また、本発明は、その基板位置調整方法を含む太陽電池セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの生産において、太陽電池セルの基板材料の搬送に、ビーム(鋼材棒)が用いられることがある。基板材料とは、単結晶または多結晶太陽電池モジュールの製造工程において、加工開始時のシリコンウェハから太陽電池セルに至るまでの、各段階におけるシリコンウェハ加工品を指す。例えば、基板収納キャリアに基板材料を収納する直前や、電極を印刷するためのステージに基板材料を載置する直前等には、ビーム上に載せられている基板材料の位置決めを行う箇所が設けられている。
【0003】
従来、基板材料の位置決めには、基板材料を支持する支持棒や支持台の上に基板材料を載せた状態で、基板材料を水平方向へ移動させる手法が採用されている。水平方向への基板材料の移動には、例えば、基板材料の端部側面に当接させた位置合わせピンを使用する。位置合わせピンは、基板材料の位置決め後に、基板材料から離される。
【0004】
支持棒の上に載せられた状態の基板材料を水平方向へ移動させると、基板材料のうち支持棒と接する側の表面には、支持棒との擦れによる傷が付く場合がある。基板材料の表面にゴミが付着していると、基板材料の載置を繰り返すうちに、支持棒のうち基板材料との接触部分には基板材料から転写されたゴミが強固に固着することがある。このようなゴミとしては、例えば、シリコンウェハの表面保護膜に使用する窒化シリコン部材の破片、シリコンウェハ自体の破片などがある。支持棒上にゴミが固着していると、基板材料における傷はさらに顕著となる。
【0005】
基板材料に傷が付くことにより、例えばp型シリコンウェハの表面に形成されたn型拡散層が削られると、p型シリコンウェハの一部が露出することとなる。p型シリコンウェハの露出部分に電極が形成された場合、太陽電池セルの表裏で極性の異なる電極同士の短絡を引き起こし、発電効率を大幅に低下させることになる。
【0006】
基板材料に傷が付くことへの対策としては、支持棒や支持台の表面を滑り易い材質とすることや、回転可能なボールローラ等を設けるという措置が採られている。しかし、支持棒等の表面へのゴミの固着は依然として起こることとなるため、傷を効果的に低減させることが困難となっている。
【0007】
また、従来、気体を制御することにより、支持棒や支持台の表面に基板材料を接触させずに保持する方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−129587号公報
【特許文献2】特開2006−13107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および2に提案されている方法はいずれも、位置合わせのための専用の装置が必要であるため、一般的な基板搬送システムの構成に大幅な変更が施されることになる。また、いずれの方法も、位置合わせ工程には十分な時間を要することが、基板材料を高速搬送する過程への導入においては問題となる。このように、従来の技術によると、基板材料の傷付きを抑制させること、基板材料の位置合わせを簡易かつ高速に実施することが困難であることが課題となっている。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基板材料の傷付きを抑制可能とし、基板材料の位置合わせを簡易かつ高速に実施可能とする基板位置調整方法、基板搬送システム、および太陽電池セルの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、太陽電池セルの製造工程において、前記太陽電池セルの基板材料の位置を調整するための基板位置調整方法であって、前記基板材料を搬送するための搬送手段から、前記基板材料の位置調整のための支持手段上へ、前記基板材料を置き換える第1置き換え工程と、前記支持手段から、前記基板材料のうち前記支持手段の側の面へ流体を供給し、前記流体の圧力により、前記支持手段から前記基板材料を浮上させる流体供給工程と、浮上している状態の前記基板材料の、水平方向における位置を調整する位置調整工程と、前記流体の供給を停止し、前記位置調整工程を経た前記基板材料を前記支持手段へ降下させ載置する降下工程と、前記基板材料を、前記支持手段から前記搬送手段へ置き換える第2置き換え工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置調整工程では、流体の圧力により浮上している状態の基板材料の位置調整を実施することで、支持手段との擦れにより基板材料に傷が付くことを抑制させる。流体供給工程では支持手段から流体を供給するため、流体供給部を備える支持手段を従来の基板搬送システムに組み込むことで、簡便な実施を可能とする。また、専用の位置合わせ装置を使用せず、支持手段上にて位置調整を可能とすることで、基板材料の位置合わせを簡易かつ高速に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる基板位置調整方法に使用する基板搬送システムの上面模式図である。
【図2】図2は、図1に示す基板搬送システムの側面模式図である。
【図3】図3は、支持棒により基板材料が支持されている状態の基板搬送システムを示す上面模式図である。
【図4】図4は、図3に示す基板搬送システムの側面模式図である。
【図5−1】図5−1は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である(第1置き換え工程)。
【図5−2】図5−2は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である(流体供給工程)。
【図5−3】図5−3は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である(位置調整工程)。
【図5−4】図5−4は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である(降下工程)。
【図5−5】図5−5は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である(接触解除工程)。
【図6−1】図6−1は、基板材料と、その基板材料の周囲の位置合わせピンとを示す上面模式図である。
【図6−2】図6−2は、基板材料に位置合わせピンを接触させた状態を示す上面模式図である。
【図6−3】図6−3は、基板材料から位置合わせピンを離した状態を示す上面模式図である。
【図7】図7は、比較例にかかる従来の基板位置調整方法について説明する図である。
【図8−1】図8−1は、実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である(第1置き換え工程)。
【図8−2】図8−2は、実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である(流体供給工程)。
【図8−3】図8−3は、実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である(位置調整工程)。
【図8−4】図8−4は、実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である(降下工程)。
【図8−5】図8−5は、実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である(接触解除工程)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる基板位置調整方法、基板搬送システム、および太陽電池セルの製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
実施の形態1にかかる基板位置調整方法の説明の前に、太陽電池セルの製造方法を説明する。まず、基板材料とするp型シリコン基板を用意する。p型シリコン基板としては、民生用太陽電池向けとして多く使用されている単結晶または多結晶シリコン基板を使用する。p型シリコン基板は、マルチワイヤーソーを用いて単結晶または多結晶シリコンインゴットをスライスして得られる。スライス後のp型シリコン基板には、スライス時のダメージの除去のために、酸またはアルカリ溶液を用いたウェットエッチングを施す。ダメージ除去後におけるp型シリコン基板は、例えば、厚み180μm、寸法は156mm×156mmとする。
【0016】
次に、ダメージ除去後のp型シリコン基板を熱酸化炉へ投入し、オキシ塩化リン(POCl)蒸気の存在下で加熱する。これにより、p型シリコン基板の表面にリンを拡散させ、n層を形成する。リンの拡散における拡散温度は、例えば840度とする。p型シリコン基板に形成されたn層には、さらに、熱酸化により形成されたシリコン酸化膜が存在する。このシリコン酸化膜は、フッ酸溶液中で除去する(リンガラス除去)。
【0017】
次に、表面保護膜および反射防止膜として、p型シリコン基板のn層上に、SiN膜を形成する。SiN膜は、プラズマCVD法により形成する。SiN膜の膜厚および屈折率は、光反射を最も抑制可能となるように設定される。なお、SiN膜は、屈折率が異なる2以上の層を積層させたものとしても良い。
【0018】
SiN膜を形成してから、基板材料のうちの受光面に表面電極、受光面と反対側の裏面に裏面電極を形成する。表面電極および裏面電極の形成のために、基板材料を印刷機へ搬送する。基板材料を印刷機へ搬送する途中において、基板材料は、基板収納キャリアへ挿入される。本実施の形態にかかる基板位置調整方法は、例えば、基板収納キャリアへ挿入される直前の基板材料を対象とする位置調整に適用される。
【0019】
表面電極および裏面電極は、スクリーン印刷により形成する。印刷機は、スクリーン印刷により、アルミニウムが混入されたペーストを、基板材料の裏面全体に塗布する。また、印刷機は、銀が混入されたペーストを使用して、基板材料の受光面に、所望の電極形状のパターン(例えば櫛型)を印刷する。スクリーン印刷によって塗布されたペーストは、焼成処理によって電極となる。焼成処理は、大気雰囲気中にて例えば760度として実施する。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる基板位置調整方法に使用する基板搬送システムの上面模式図である。図2は、図1に示す基板搬送システムの側面模式図である。基板搬送システムは、太陽電池セルの製造工程において、太陽電池セルの基板材料11を搬送する。基板搬送システムは、支持棒13、ビーム(鋼材棒)14およびベルトコンベア15を備える。
【0021】
ベルトコンベア15は、ビーム14へ基板材料11を搬送する。ビーム14は、複数の基板材料11を載置可能とする角材である。ビーム14は、ベルトコンベア15からの基板材料11を基板収納キャリア16へ搬送する搬送手段として機能する。ビーム14は、基板材料11の進行方向Mおよびその逆方向と、鉛直上下方向とに可動とされている。
【0022】
支持棒13は、基板材料11の位置調整において基板材料11を支持する支持手段として機能する。支持棒13は、例えば、円形状の上端面を備える円柱形状をなしている。
【0023】
基板収納キャリア16は、例えば、上方が開放された箱状に構成されている。基板収納キャリア16は、複数の棚板に基板材料11を載置する。なお、図2では、基板収納キャリア16の外装のうち、紙面に平行な側板の図示を省略している。
【0024】
図1および図2は、基板材料11の一つが基板収納キャリア16へ収納されるときの状態を表している。基板材料11は、ベルトコンベア15からビーム14に移された後から、基板収納キャリア16へ収納されるまでの間に、水平方向についての位置調整がなされる。ビーム14は、例えば4枚の基板材料11を載せて、進行方向Mへ移動している。このとき、ビーム14は、各支持棒13の上端面よりも高い位置において、基板材料11を移動させている。進行方向Mについて最も前方に位置する基板材料11が基板収納キャリア16へ収納されると、ビーム14は、下方へ移動する。
【0025】
図3は、支持棒により基板材料が支持されている状態の基板搬送システムを示す上面模式図である。図4は、図3に示す基板搬送システムの側面模式図である。基板搬送システムは、基板材料11の一つを基板収納キャリア16へ収納してから、支持棒13の上端面より低い位置までビーム14を降下させる。
【0026】
支持棒13は、図3に示すように、1枚の基板材料11が4本の支持棒13の上端面上に載置されるように設けられている。基板材料11の進行方向Mに対して垂直な方向に並べられている支持棒13同士は、ビーム14の幅より広い間隔を設けて配置されている。これにより、ビーム14は、進行方向Mに対して垂直な方向に並べられた支持棒13同士の間を上下に移動可能とされている。
【0027】
基板搬送システムは、支持棒13の上端面より低い位置までビーム14を降下させることで、ビーム14上から支持棒13上へ、各基板材料11の置き換えを同時に行う(第1置き換え工程)。また、基板搬送システムは、第1置き換え工程から、後述する第2置き換え工程までの間に、進行方向Mの逆方向へビーム14を戻す。
【0028】
図5−1から図5−5は、基板材料の位置調整の手順を説明する図である。ここで説明する基板材料11の位置調整は、基板材料11がいずれの支持棒13に載置されているときに実施しても良いものとする。図5−1は、第1置き換え工程を経て、支持棒13上に基板材料11が載置されている状態を示している。
【0029】
基板材料11が位置調整の際に載置される4本の支持棒13には、空気を供給する流体供給部17がそれぞれ設けられている。流体供給部17は、支持棒13の中心部分を貫かせて形成されている。流体供給部17は、基板材料11のうち支持棒13の上端面と対向する部分へ空気を噴出させる。基板搬送システムは、複数の位置合わせピン18を備える。位置合わせピン18は、基板材料11の端部側面に接触可能とされた接触部として機能する。
【0030】
図6−1は、基板材料と、その基板材料の周囲の位置合わせピンとを示す上面模式図である。本実施の形態では、位置調整の対象とする1枚の基板材料11に対して8個の位置合わせピン18を使用する。位置合わせピン18は、基板材料11の四隅の各近傍に2個ずつ配置されている。なお、図5−1から図5−5では、支持棒13および位置合わせピン18は1つずつを示している。図5−1から図5−5において、支持棒13は、断面として示している。
【0031】
次に、基板搬送システムは、支持棒13上に基板材料11が載置された状態において流体供給部17から基板材料11に向けて空気を噴出させる(流体供給工程)。流体供給部17からの空気の噴出により、基板材料11は、図5−2に示すように支持棒13から僅かに浮上する。また、基板搬送システムは、基板材料11を浮上させると同時に、位置合わせピン18を基板材料11へ向けて移動させる。
【0032】
流体供給部17から噴出される空気の圧力により、基板材料11は、支持棒13の上端面から上向きに反発する力が働く。基板材料11と支持棒13の上端面との間において、流体供給部17から水平方向に空気が拡散することで、基板材料11と支持棒13の上端面との間には負圧が生じる。基板材料11は、ベルヌーイ効果により、支持棒13から吹き飛ばさずに、支持棒13の上端面から僅かに浮上した位置で保持される。
【0033】
次に、図5−3に示すように、位置合わせピン18は、浮上している状態の基板材料11の端部側面に接触する。また、位置合わせピン18は、基板材料11の端部側面に接触した状態で水平方向に移動することで、基板材料11の位置を調整する(位置調整工程)。位置合わせピン18は、水平方向における基板材料11の位置を調整する位置調整手段として機能する。
【0034】
図6−2は、基板材料に位置合わせピンを接触させた状態を示す上面模式図である。図6−1に示す各位置合わせピン18をそれぞれ基板材料11に向けて移動させることで、基板材料11の角部をなす互いに垂直な2辺のそれぞれに位置合わせピン18が接触する状態となる。角部の近傍に配置されている2個の位置合わせピン18が1組となって、1つの角部を挟持する。
【0035】
基板位置調整システムは、8個の位置合わせピンによって基板材料11の四隅を保持する状態で、水平面内において各位置合わせピン18を適宜移動させる。基板材料11は、位置合わせピン18により、水平面内における位置、および水平面内での回転度合いが調整される。
【0036】
位置合わせピン18による基板材料11の位置調整を終えると、流体供給部17は、空気の噴出を停止させる。流体供給部17からの空気の噴出が無くなることで、基板材料11の中央部は、重力によって降下する(降下工程)。基板材料11の中央部が降下する間、位置合わせピン18は、位置を維持させる。基板材料11の端部側面は、例えば摩擦力により、位置合わせピン18に接触する状態を維持する。基板材料11は、図5−4に示すように、中央部が下がるように撓むことで、支持棒13に対向する部分が支持棒13に載置される。
【0037】
次に、基板搬送システムは、図5−5に示すように、各位置合わせピン18を基板材料11から離す(接触解除工程)。図6−3は、基板材料から位置合わせピンを離した状態を示す上面模式図である。基板材料11は、支持棒13に載置されるまで、端部側面への位置合わせピン18の接触が維持されることで、位置合わせピン18による位置決めがなされてからの位置ずれが抑制される。
【0038】
このような位置決めの手法は、撓みを生じ易い基板材料11、例えば、比較的薄く構成されている基板材料11に適している。なお、降下工程では、基板材料11の端部側面が位置合わせピン18に接触する状態を維持する場合に限られず、基板材料11の全体を支持棒13の高さまで降下させることとしても良い。基板材料11の端部側面は、空気の噴出が無くなることで位置合わせピン18による保持は解除され、位置合わせピン18の表面を擦りながら降下する。この場合も、基板材料11は、位置合わせピン18の存在により、位置ずれが抑制される。
【0039】
基板搬送システムは、基板材料11から離れる方向へ各位置合わせピン18を移動させ、各位置合わせピン18と基板材料11との接触を解除する。また、基板搬送システムは、各位置合わせピン18を移動させてから、支持棒13の上端面よりも高い位置までビーム14を上昇させる。各基板材料11は、支持棒13からビーム14へ置き換えられる(第2置き換え工程)。基板搬送システムは、ビーム14を進行方向Mへ移動させ、位置調整工程による位置決めがなされた基板材料11を基板収納キャリア16へ挿入する。基板搬送システムは、以上の手順を繰り返す。
【0040】
図7は、比較例にかかる従来の基板位置調整方法について説明する図である。この比較例では、支持棒31の上に基板材料11を載せた状態で、基板材料11を水平方向へ移動させる。この場合、基板材料11のうち支持棒31と接する側の表面には、支持棒31との擦れによる傷32が付く場合がある。
【0041】
本実施の形態にかかる基板位置調整方法では、流体供給部17からの空気の圧力により基板材料11を浮上させて、基板材料11を水平方向へ移動させる。基板材料11は、支持棒13から浮上させて位置調整がなされることで、支持棒13の擦れにより傷が付くことが抑制される。
【0042】
本実施の形態にかかる基板位置調整方法は、支持棒13から空気を噴出させるため、流体供給部17を備える支持手段を従来の基板搬送システムに組み込むことで、簡便な実施を可能とする。また、本実施の形態にかかる基板位置調整方法は、専用の位置合わせ装置を使用せず、支持棒13上での位置調整を可能とすることで、搬送中における基板材料11の簡易かつ高速な位置合わせを可能とする。この基板位置調整方法を太陽電池セルの製造方法に適用することで、基板材料11の簡易かつ高速な位置調整により高い作業効率を実現可能とする。これにより、基板材料11の傷付きの抑制による太陽電池セルの歩留まり向上や出力特性向上を、低い生産コストにて実現することができる。
【0043】
本実施の形態にかかる基板位置調整方法は、基板収納キャリア16へ挿入される直前の基板材料11の位置決めに限られず、太陽電池セルの製造工程において基板材料11を搬送するいずれの場面にも適用可能であるものとする。本実施の形態にかかる基板位置調整方法は、例えば、電極を印刷するためのステージに基板材料11を載置する直前に適用しても良い。基板材料11は、太陽電池セルの製造工程において、加工開始時のシリコンウェハから太陽電池セルに至るまでの、いずれの段階におけるシリコンウェハ加工品であっても良いものとする。
【0044】
支持棒13は、上端面にて基板材料11を支持可能であれば良く、本実施の形態で説明する円柱形状以外の形状であっても良い。1枚の基板材料11の載置には4本の支持棒13を使用する場合に限られず、1枚の基板材料11の載置に使用する支持棒13はいくつであっても良いものとする。支持手段は、棒状の支持棒13である場合に限られず、支持台等、基板材料11を支持可能ないずれの構造物であっても良いものとする。
【0045】
接触部である位置合わせピン18の配置の態様は、本実施の形態で示す場合に限られず適宜変更可能であるものとする。例えば、1枚の基板材料11の位置決めに使用する位置合わせピン18の数や配置は、適宜変更可能であるものとする。接触部は、位置合わせピン18以外の、基板材料11の端部側面に接触可能ないずれの構造物であっても良いものとする。
【0046】
実施の形態2.
図8−1から図8−5は、本発明の実施の形態2にかかる基板位置調整方法の手順を説明する図である。上記の実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0047】
位置合わせピンは、ローラ21と、ローラ21を回転可能に保持する軸22とを備える。ローラ21は、基板材料11の端部側面に接触可能とされた接触部として機能する。軸22は、鉛直上下方向についてローラ21を移動可能とする。本実施の形態の位置合わせピンは、例えば、実施の形態1の位置合わせピン18(図6−1等参照)と同様に配置されている。
【0048】
図8−1は、第1置き換え工程を経て、支持棒13上に基板材料11が載置されている状態を示している。支持棒13上に基板材料11が載置された状態において流体供給部17が空気を噴出する(流体供給工程)と、基板材料11は、図8−2に示すように支持棒13から僅かに浮上する。
【0049】
基板搬送システムは、基板材料11を浮上させると同時に、位置合わせピンを基板材料11へ向けて移動させる。さらに、位置合わせピンは、浮上による基板材料11の上昇高さと同じ分、ローラ21を上昇させる。
【0050】
次に、図8−3に示すように、ローラ21は、浮上している状態の基板材料11の端部側面に接触する。また、位置合わせピンは、基板材料11の端部側面にローラ21を接触させた状態で水平方向に移動することで、基板材料11の位置を調整する(位置調整工程)。ローラ21および軸22からなる位置合わせピンは、水平方向における基板材料11の位置を調整する位置調整手段として機能する。
【0051】
位置合わせピンによる基板材料11の位置調整を終えると、流体供給部17は、空気の噴出を停止させる。流体供給部17からの空気の噴出が無くなることで、基板材料11は、重力によって降下する(降下工程)。基板材料11は、降下することで、図8−4に示すように、支持棒13に載置される。位置合わせピンは、基板材料11とともにローラ21を降下させる。ローラ21は、基板材料11とともに降下することで、基板材料11の端部側面に接触する状態を維持する。
【0052】
基板材料11は、支持棒13に載置されるまで、端部側面への位置合わせピン18の接触が維持されることで、位置合わせピン18による位置決めがなされてからの位置ずれが抑制される。このような位置決めの手法は、撓みを生じにくい基板材料11、例えば、比較的厚く構成されている基板材料11に適している。次に、基板搬送システムは、図8−5に示すように、基板材料11から離れる方向へ各位置合わせピンを移動させ、ローラ21と基板材料11との接触を解除させる(接触解除工程)。この他、基板搬送システムは、実施の形態1と同様の手順を行う。
【0053】
本実施の形態にかかる基板位置調整方法も、実施の形態1と同様、基板材料11の傷付きの抑制と、搬送中における基板材料11の簡易かつ高速な位置合わせを可能とする。また、太陽電池セルの製造方法においては、基板材料11の簡易かつ高速な位置調整により高い作業効率を実現可能とする。これにより、基板材料11の傷付きの抑制による太陽電池セルの歩留まり向上や出力特性向上を、低い生産コストにて実現することができる。
【0054】
位置合わせピンの構成は、ローラ21および軸22を備えるものである場合に限られず、適宜変更可能であるものとする。接触部は、ローラ21以外に、基板材料11の端部側面に接触可能ないずれの構造物であっても良いものとする。また、基板搬送システムは、軸22に沿って接触部を移動可能な位置合わせピンを使用する他、例えば、位置合わせピン全体を鉛直上下方向へ移動可能としても良い。
【符号の説明】
【0055】
11 基板材料
13 支持棒
14 ビーム
15 ベルトコンベア
16 基板収納キャリア
17 流体供給部
18 位置合わせピン
21 ローラ
22 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの製造工程において、前記太陽電池セルの基板材料の位置を調整するための基板位置調整方法であって、
前記基板材料を搬送するための搬送手段から、前記基板材料の位置調整のための支持手段上へ、前記基板材料を置き換える第1置き換え工程と、
前記支持手段から、前記基板材料のうち前記支持手段の側の面へ流体を供給し、前記流体の圧力により、前記支持手段から前記基板材料を浮上させる流体供給工程と、
浮上している状態の前記基板材料の、水平方向における位置を調整する位置調整工程と、
前記流体の供給を停止し、前記位置調整工程を経た前記基板材料を前記支持手段へ降下させ載置する降下工程と、
前記基板材料を、前記支持手段から前記搬送手段へ置き換える第2置き換え工程と、
を含むことを特徴とする基板位置調整方法。
【請求項2】
前記位置調整工程では、前記基板材料の端部側面に接触可能とされた接触部を使用して、前記水平方向における前記基板材料の位置を調整し、
前記降下工程では、前記位置調整工程における前記接触部の位置を維持させた状態で、前記支持手段上に前記基板材料を降下させることを特徴とする請求項1に記載の基板位置調整方法。
【請求項3】
前記位置調整工程では、前記基板材料の端部側面に接触可能とされた接触部を使用して、前記水平方向における前記基板材料の位置を調整し、
前記降下工程では、前記基板材料とともに前記接触部を降下させることを特徴とする請求項1に記載の基板位置調整方法。
【請求項4】
太陽電池セルの製造工程において、前記太陽電池セルの基板材料を搬送する基板搬送システムであって、
前記基板材料を搬送するための搬送手段と、
前記基板材料を支持可能に設けられ、前記基板材料の位置調整のために前記搬送手段から前記基板材料が置き換えられる支持手段と、
水平方向における前記基板材料の位置を調整する位置調整手段と、を有し、
前記支持手段は、前記基板材料のうち前記支持手段の側の面へ流体を供給する流体供給部を備え、
前記位置調整手段は、前記流体供給部から供給された前記流体の圧力により前記支持手段上から浮上している状態の前記基板材料の位置を調整することを特徴とする基板搬送システム。
【請求項5】
前記位置調整手段は、前記基板材料の端部側面に接触可能とされた接触部を備え、前記接触部を使用して、前記水平方向における前記基板材料の位置を調整し、
前記接触部は、前記基板材料の位置を調整してから前記流体供給部が前記流体の供給を停止させ、前記基板材料を前記支持手段へ降下させるまで、位置を維持することを特徴とする請求項4に記載の基板搬送システム。
【請求項6】
前記位置調整手段は、前記基板材料の端部側面に接触可能とされた接触部を備え、前記接触部を使用して、前記水平方向における前記基板材料の位置を調整し、
前記接触部は、前記基板材料の位置を調整してから前記流体供給部が前記流体の供給を停止させ、前記基板材料を前記支持手段へ降下させる際に、前記基板材料とともに降下することを特徴とする請求項4に記載の基板搬送システム。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一つに記載の基板位置調整方法により、太陽電池セルの基板材料の位置を調整する工程を含むことを特徴とする太陽電池セルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【公開番号】特開2013−21167(P2013−21167A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153894(P2011−153894)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】