説明

基板処理システム、基板供給順序決定方法、プログラム、記録媒体

【課題】並列に配置された基板搬送系Cf、Cbそれぞれが搬送する基板Sへの処理を、各基板搬送系Cf、Cbに設けられたヘッドユニット51f、51bにより行うにあたって、ヘッドユニット51f、51bの退避動作の発生を抑制し、スループットの向上を図る。
【解決手段】基板搬送系Cf、Cbのうち一方へは幅の広い品種の基板Sから供給するとともに他方へは幅の狭い品種の基板Sから供給すると、基板搬送系Cf、Cbへの基板の搬送順序を決定する。そのため、基板搬送系Cf、Cbのうち、一方の基板搬送系へ幅広の基板Sが供給されるときには、他方の基板搬送系へは幅狭の基板Sが供給されることとなる。その結果、基板搬送系Cf、Cbの両方に同時に幅広の基板Sが供給されて、基板搬送系Cf、Cbに搬送されてきた各基板Sの間隔ΔSが狭くなるといった状況の発生を抑制し、スループットの向上を図ることが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、並列に配置された複数の搬送部それぞれが搬送する基板への処理を、各搬送部に対して設けられた機能部により行う基板処理技術に関し、特に複数の基板を各搬送部へ供給する際の順序を決定するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の部品実装機は、基板を搬送する2つのレーンを並列に配置するとともに、基板に部品を実装する2つの装着ヘッドを備えている。このような部品実装機では、2つのレーンと2つの装着ヘッドを対応付けて、各装着ヘッドがそれぞれに対応するレーンにより搬送されてきた基板へ部品を実装することができる。さらに、複数のレーンぞれぞれに対して複数の品種の基板を順次供給し、各レーンが搬送する複数品種の基板に実装ヘッドが部品実装を行うことで、多品種の基板を生産することができる。
【0003】
ただし、品種が異なると基板の幅も異なる場合があるため、多品種の基板生産に対応するにあたっては、基板の幅に応じてレーンの幅を調整できることが好適となる。そこで、例えば、特許文献2に記載の技術の適用が考えられる。つまり、特許文献2では、少なくとも一方が可動に構成された2本のコンベアで1つのレーンが構成され、可動コンベアを適宜移動させることで、レーンの幅が調整可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−239257号公報
【特許文献2】特開2011−114044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記レーンのような搬送部の幅を可変にした場合、搬送対象の基板の幅が増大すると、搬送部の幅も増大する。そのため、互いに並列に配置された各搬送部の両方に対して、同時に幅広の基板が搬送されてくると、これら搬送部の間隔が狭くなって、各搬送部により搬送される基板の間隔も狭くなる場合がある。このような場合、2つの機能部が互いに近接する基板に対して処理を行うことになるため、状況によっては、これらの機能部が相互に干渉するおそれがある。
【0006】
このような機能部の相互干渉を回避するにあたっては、一方の機能部が基板への処理に伴って他方の機能部側に近接している間は、他方の機能部を一方の機能部が遠ざかるまで退避させることが有効である。しかしながら、このような機能部の退避動作は、スループットの低下の要因となる。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、並列に配置された複数の搬送部それぞれが搬送する基板への処理を、各搬送部に設けられた機能部により行うにあたって、機能部の退避動作の発生を抑制し、スループットの向上を図る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる基板処理システムは、上記目的を達成するために、それぞれに供給されたY軸方向に幅を有する基板をY軸方向に直交するX軸方向に順次搬送する、互いに並列に配置された第1および第2搬送部と、第1処理位置に第1搬送部が搬送してきた基板に対して処理を行う第1機能部と、Y軸方向で第1処理位置に隣接する第2処理位置に第2搬送部が搬送してきた基板に対して処理を行う第2機能部とを有する基板処理機構と、第1および第2搬送部への基板の搬送順序を決定する決定部とを備え、第1および第2搬送部がY軸方向に有する幅は、それぞれが搬送する基板の幅に応じて調整可能であるとともに、第1あるいは第2搬送部の幅が増大することで、第1および第2処理位置それぞれにある基板の間隔は減少し、基板処理機構では、第1および第2機能部のそれぞれは、相互の干渉を回避するために第1機能部と第2機能部の同時進入が禁止された排他領域に、第1および第2機能部のうち一方が進入している間は他方が排他領域から退避し、決定部は、供給する基板の品種を第1および第2搬送部それぞれについて取得し、第1および第2搬送部のうち一方へは幅の広い品種の基板から供給するとともに他方へは幅の狭い品種の前記基板から供給すると、第1および第2搬送部への基板の搬送順序を決定することを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる基板供給順序決定方法は、それぞれに供給されたY軸方向に幅を有する基板をY軸方向に直交するX軸方向に順次搬送する、互いに並列に配置された第1および第2搬送部と、第1処理位置に第1搬送部が搬送してきた基板に対して処理を行う第1機能部と、Y軸方向で第1処理位置に隣接する第2処理位置に第2搬送部が搬送してきた基板に対して処理を行う第2機能部とを有する基板処理機構とを備え、第1および第2搬送部がY軸方向に有する幅は、それぞれが搬送する基板の幅に応じて調整可能であるとともに、第1あるいは第2搬送部の幅が増大することで、第1および第2処理位置それぞれにある基板の間隔は減少し、基板処理機構では、第1および第2機能部のそれぞれは、相互の干渉を回避するために第1機能部と第2機能部の同時進入が禁止された排他領域に、第1および第2機能部のうち一方が進入している間は他方が排他領域から退避する基板処理システムに対して、第1および第2搬送部への基板の搬送順序を決定する基板供給順序決定方法であって、上記目的を達成するために、供給する基板の品種を第1および第2搬送部それぞれについて取得する工程と、第1および第2搬送部に供給する基板品種を取得し、第1および第2搬送部のうち一方へは幅の広い品種の基板から供給するとともに他方へは幅の狭い品種の基板から供給すると、第1および第2搬送部への基板の搬送順序を決定する工程とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明にかかるプログラムは、上記目的を達成するために、上記基板供給順序決定方法が備える各工程をコンピューターに実行させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明にかかる記録媒体は、上記目的を達成するために、上記プログラムを記録したことを特徴としている。
【0012】
このように、本発明(基板処理システム、基板供給順序決定方法、プログラム、記録媒体)が適用される基板処理システムでは、X軸方向に順次基板を搬送する第1および第2搬送部が互いに並列に配置されている。そして、第1処理位置に第1搬送部が搬送してきた基板に対しては第1機能部が処理を実行する一方、第2処理位置に第2搬送部が搬送してきた基板に対しては第2機能部が処理を実行する。ここで、第1処理位置と第2処理位置は、X軸方向に直交するY軸方向において隣接している。そして、第1および第2搬送部が前記Y軸方向に有する幅は、それぞれが搬送する基板の幅に応じて調整可能である。そのため、第1あるいは第2搬送部の幅が増大することで、第1および第2処理位置にある2枚の基板の間隔が減少するようになっている。
【0013】
このような構成では、互いに並列に配置された第1および第2搬送部の両方に対して、同時に幅広の基板が搬送されてくると、これら搬送部の間隔が狭くなるとともに、各搬送部によって第1および第2処理位置に搬送されてきた各基板の間隔も狭くなる場合がある。このような場合、2つの機能部が互いに近接する基板に対して処理を行うことになるため、状況によっては、これらの機能部が相互に干渉するおそれがある。そこで、第1および第2機能部のそれぞれは、相互の干渉を回避するために第1機能部と第2機能部の同時進入が禁止された排他領域に、第1および第2機能部のうち一方が進入している間は他方が排他領域から退避するように構成されている。ただし、このような機能部の退避動作は、スループットの低下の要因となる。
【0014】
これに対して、この発明では、第1および第2搬送部に供給する基板品種を取得し、第1および第2搬送部のうち一方へは幅の広い品種の基板から供給するとともに他方へは幅の狭い品種の前記基板から供給すると、第1および第2搬送部への基板の搬送順序を決定する。そのため、第1および第2搬送部のうち、一方の搬送部へ幅広の基板が供給されるときには、他方の搬送部へは幅狭の基板が供給されることとなる。その結果、第1および第2搬送部の両方に同時に幅広の基板が供給されて、第1および第2処理位置に搬送されてきた各基板の間隔が狭くなるといった状況の発生を抑制し、スループットの向上を図ることが可能となっている。
【0015】
また、決定部が決定した組み合わせを表示する表示部をさらに備えるように構成しても良い。このような表示部を備えることで、作業者は決定された組み合わせを確認して、段取り作業を適切に実行することができる。
【0016】
なお、基板処理機構の数は1つに限られない。したがって、複数の基板処理機構が第1および第2搬送部に沿って配置されるように構成しても良い。
【0017】
また、基板に処理を行う第1および第2機能部の具体的な構成としては、種々のものが考えらる。そこで、例えば、第1および第2機能部のそれぞれは、基板への処理として基板に部品を実装する実装ヘッドを有するように構成しても良い。この際、第1および第2機能部のそれぞれは、基板への処理として基板を撮像するカメラを有するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0018】
機能部の退避動作の発生を抑制し、スループットの向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用可能な基板処理システムの電気的構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明を適用可能な基板処理システムの機械的構成を模式的に示す平面図である。
【図3】実装機の概略構成を模式的に示す平面図である。
【図4】ヘッドユニットの退避動作を説明するために、実装機の構成を部分的に示した平面図である。
【図5】基板供給順序の決定フローを示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートで参照される情報を表として示す図である。
【図7】ホストコンピューターが決定した基板搬送順序の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明を適用可能な基板処理システムの電気的構成を模式的に示すブロック図である。図2は、本発明を適用可能な基板処理システムの機械的構成を模式的に示す平面図である。図2および後述する図面では、鉛直方向をZ軸とするXYZ直交座標軸が適宜示される。また、以下では、各座標軸の矢印方向を正方向と適宜称するとともに、各座標軸の矢印と逆方向を負方向と適宜称する。
【0021】
この基板処理システム1は、基板搬送方向であるX軸方向(図2)に直列に並ぶ印刷機100、2台の実装機200およびリフロー炉300を、ホストコンピューター400(図1)により統括的に制御する概略構成を備える。ホストコンピューター400は、演算処理を司るCPU(Central Processing Unit)401の他、各種情報を記憶するメモリー402を備える。また、ホストコンピューター400は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の記録媒体410にアクセスして、この記録媒体410からプログラム420を読み出すドライバー(図示省略)を備える。そして、ホストコンピューター400は、こうして読み出したプログラム420に従って、各基板処理装置100、200、300の各制御部110、210、310に適宜指令を出す。これに対して、各制御部110、210、310は、この指令に従って、対応する基板処理装置100、200、300の各部の動作を制御して、所定の処理を実行する。また、ホストコンピューター400は、作業者に対して情報を適宜表示するディスプレイ430の他、キーボードやマウス等の入力機器440を具備している。
【0022】
図2に示すように、基板処理システム1は、各基板処理装置100、200、300に対して基板Sを順次搬送する2つの基板搬送系Cb、Cfを並列に配置した構成を具備している。詳述すると、基板処理装置100、200、300それぞれは、一対のコンベア2から成るレーン4f、4bを2本並列に配置したデュアルレーン構造を備えている。これら2本のレーン4f、4bそれぞれは、X軸負方向の装置外部から受け取った基板SをX軸正方向に搬送して装置内の処理位置にまで移動させた後、当該処理位置で処理を受けた基板SをX軸正方向に搬送して装置外部へと搬出する。また、基板処理装置100、200、300間での基板Sの受け渡しを行うために、基板処理装置100、200、300間にも、2本のレーン4f、4bが並列配置されている。これら2本のレーン4f、4bそれぞれは、X軸正方向の上流側装置のレーン4f、4bから受け取った基板を、X軸正方向の下流側装置のレーン4f、4bへ受け渡すものである。こうして、X軸方向に直線状に並ぶ複数のレーン4fにより基板搬送系Cfが構成されるとともに、X軸方向に直線状に並ぶ複数のレーン4bにより基板搬送系Cbが構成されている。
【0023】
このように、基板処理システム1では、2つの基板搬送系Cf、Cbが並列に配置されて、Y軸方向に並んでいる。これら基板搬送系Cf、Cbのそれぞれに対しては、例えば特開2007−088023号公報等に記載の基板供給機が複数の基板Sを順次供給し、基板搬送系Cf、Cbそれぞれは順次供給される基板Sを搬送する。そして、基板搬送系Cf、Cbに沿って並ぶ印刷機100、2台の実装機200およびリフロー炉300それぞれが、各基板搬送系Cf、Cbにより順次搬送される基板Sに対して所定の処理を実行する。
【0024】
具体的には、印刷機100は、例えば特開2011−15122号公報に記載されているような構成を具備しており、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた基板Sに対して、半田ペーストを印刷するものである。また、実装機200は後述するように、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた印刷済みの基板Sに対して、部品を実装するものである。また、リフロー炉300は、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた部品実装済みの基板Sに対して、リフローを行うものである。
【0025】
続いて、実装機200の構成について詳述する。図3は、実装機の概略構成を模式的に示す平面図である。同図に示すように、実装機200では、4本のコンベア2が互いに平行な状態でY軸方向に並んでいる。そして、Y軸正方向側の2本のコンベア2がレーン4bを構成するとともに、Y軸負方向側の2本のコンベア2がレーン4fを構成する。これら4本のコンベア2のうち、両外側の2つのコンベア2は固定された固定コンベアである一方、真ん中の2つのコンベア2はY軸方向に移動自在に構成された可動コンベアである。したがって、可動コンベア2をY軸方向に適宜移動させることで、レーン4f、4bを構成する2本のコンベア2のY軸方向への間隔を調整することができる。つまり、レーン4f、4bのそれぞれは、基板SのY軸方向への幅Wsに応じて間隔が調整された2本のコンベア2によって、基板SのY軸方向の両端部を支持することができる。換言すれば、これら2本のコンベアからなるレーン4f、4bのそれぞれが有するY軸方向への幅W4は、基板SがY軸方向に有する幅Wsに応じて調整可能となっている。そして、これらレーン4f、4bそれぞれは、装置外部から受け取った基板Sを所定の処理位置Pf、Pbにまで搬送するとともに、当該処理位置Pf、Pbで後述のヘッドユニット5f、5bにより部品実装を受けた基板Sを装置外部へと搬出する。なお、図3に示すように、基板Sが部品実装を受ける各処理位置Pf、PbはY軸方向に互いに隣接しており、各処理位置Pf、Pbにある各基板WはY軸方向に間隔ΔSを空けて隣接する。
【0026】
これらレーン4f、4bのY軸方向の両側それぞれには、部品供給部6が2つずつ配置されている。各部品供給部6には、複数のテープフィーダー61が装着されている。テープフィーダー61のそれぞれでは、電子部品を一定ピッチで収納・保持したテープを巻き回したリール(図示省略)が取り付けられており、各テープフィーダー61による電子部品の供給が可能となっている。その結果、後述するヘッドユニット5f、5bによる電子部品のピックアップが可能となっている。
【0027】
実装機200では、2つのレーン4f、4bに対応して2つのヘッドユニット5f、5bが設けられている。各ヘッドユニット5f、5bは、図示を省略する移動機構によってXY平面内を移動自在であるとともに、X軸方向に並ぶ3本の実装ヘッド51を保持している。この実装ヘッド51は、部品を吸着する吸着ノズル(図示省略)をその下端に取り付けたものである。そして、ヘッドユニット5f、5bは、吸着ノズルによってテープフィーダー61から部品をピックアップすると、処理位置Pf、Pbにある基板Sの上方にまで移動して、当該部品を基板Sに実装する。具体的には、ヘッドユニット5fは、図3下側のテープフィーダー61からピックアップした部品をレーン4fが処理位置Pfに搬送してきた基板Sに実装するとともに、ヘッドユニット5bは、図3下側のテープフィーダー61からピックアップした部品をレーン4bが処理位置Pbに搬送してきた基板Sに実装する。
【0028】
また、ヘッドユニット5f、5bそれぞれには、カメラ52が取り付けられている。このカメラ52は、基板S上のバッドマークMbやフィデューシャルマークMfを撮像するためのものである。つまり、基板Sが処理位置Pf、Pbに搬送されてくると、ヘッドユニット5f、5bのそれぞれは部品実装に先立って、部品実装対象となる基板Sの上方へ移動して、当該基板Sの各マークMb、Mfの上方にカメラ52を位置させる。そして、この状態で、カメラ52が各マークMb、Mfを撮像する。なお、各マークMb、Mfの撮像結果は、実装機200が備える制御部210(図1)によって処理される。具体的には、この制御部210は、バッドマークMbの撮像結果に基づいて基板Sの良否を判定して、当該基板への部品実装を実行するか否かを判断するとともに、フィデューシャルマークMfの撮像結果に基づいてヘッドユニット5f、5bと基板Sとの相対位置関係を割り出し、部品実装時におけるヘッドユニット5f、5bの位置を制御する。
【0029】
ちなみに、上述の部品実装処理やマーク撮像処理に際しては、各基板Sはそれぞれの処理位置Pf、Pbに、図示を省略する固定手段によって固定されている。つまり、処理位置Pf、Pbに搬送されてきた各基板Sは、固定手段によって位置固定された状態で、部品実装処理やマーク撮像処理を受ける。そして、これらの処理が完了すると、基板Sは位置固定が解かれて、処理位置Pf、Pbから装置外部に向けて搬送される。
【0030】
このように、この実装機200では、X軸方向に順次基板Sを搬送するレーン4f、4b(基板搬送系Cf、Cb)が互いに並列に配置されている。そして、Y軸方向に隣接する各処理位置Pf、Pbにレーン4f、4bが搬送してきた基板Sに対して、各ヘッドユニット5f、5bが部品を実装する。この際、レーン4f、4bがY軸方向に有する幅W4は、それぞれが搬送する基板WがY軸方向に有する幅Wsに応じて調整可能である。そのため、レーン4f、4bの幅が増大することで、各処理位置Pf、Pbにある2枚の基板Sの間隔ΔSは減少するようになっている。
【0031】
このような構成では、レーン4f、4bの両方に対して、同時に幅広の基板Sが搬送されてくると、レーン4f、4bの幅W4が広くなる一方、これに伴って各処理位置Pf、Pbに搬送されてきた各基板Sの間隔ΔSが狭くなる場合がある。このような場合、2つのヘッドユニット5f、5bが互いに近接する基板Sに対して、マークMb、Mfの撮像や部品実装等の一連の処理を並行して行うため、状況によっては、これらのヘッドユニット5f、5bが相互に干渉するおそれがある。そこで、この実施形態では、相互干渉を回避するためにヘッドユニット5f、5bの同時進入が禁止された排他領域が適宜設けられる。そして、ヘッドユニット5f、5bのうち一方が排他領域に進入している間は、他方が排他領域から退避するように構成されている。この退避動作について、図4を用いて詳述する。
【0032】
図4は、ヘッドユニットの退避動作を説明するために、実装機の構成を部分的に示した平面図である。図4では、レーン4f、4bの処理位置Pf、Pbの両方に幅広の基板Sが位置しており、これら両基板Sの間隔ΔSは狭くなっている。このような場合、実装機200では、Y軸方向に基板Sが互いに対向する範囲もしくはその近傍に対して排他領域Reが設定される。この排他領域Reの具体的な設定方法は種々の変形が可能であるが、例えば、Y軸方向において両基板Sの間の領域を含むようにして排他領域Reを設定したり、ヘッドユニット4f、4bが一連の処理に伴って移動する軌跡をヘッドユニット4f、4b毎に求めて、これらの軌跡が重複する範囲を含むように排他領域Reを設定したりすれば良い。そして、ヘッドユニット4f、4bは、こうして設定された排他領域Reへの同時進入が禁止される。したがって、ヘッドユニット4f、4bのうち一方が排他領域Reに進入している間は他方が排他領域Reから退避する。こうして、ヘッドユニット4f、4bの相互干渉が回避されている。
【0033】
このように、この実施形態では、ヘッドユニット4f、4bを排他領域Reから適宜退避させることで、ヘッドユニット4f、4bの相互干渉を回避している。ただし、このようなヘッドユニット4f、4bの退避動作は、スループットの低下の要因となる。そこで、この実施形態では、次に説明するように、基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを供給する順序を適切化することで、ヘッドユニット4f、4bの退避動作の発生を抑制して、スループットの向上を図っている。
【0034】
図5は、基板供給順序の決定フローを示すフローチャートである。また、図6は、図5のフローチャートで参照される情報を表として示す図である。図5に示すフローチャートは記録媒体410にプログラム420として記録されており、ホストコンピューター400が記録媒体410からプログラム420を読み出して図5に示すフローチャートを実行する。以下では、7品種A〜G(図6)の基板Sを基板処理システム1で生産する場合を例示して説明する。
【0035】
基板供給順序決定フローが開始されると、ステップS10で、各基板処理装置100、200、300の制約に関する情報が取得される。この情報は、各基板処理装置100、200、300が処理可能な基板Sの品種を示す情報であり、基板処理装置100、200、300の制御部110、210、310に記憶されている。そこで、ホストコンピューター400は、この情報を各制御部110、210、310から取得する。また、ステップS11では、このように取得された情報に基づいて、処理を実行可能な基板搬送系Cf、Cbを基板品種A〜G毎に判断する。その結果、図6の表に示す例では、品種Dの基板Sは、基板搬送系Cfでの生産が不可であり、基板搬送系Cbでのみ生産が可能であると判断される。また、その他の品種の基板Sは、基板搬送系Cf、Cbのいずれでも生産可能と判断されている。
【0036】
続くステップS12では、基板品種A〜G毎の生産枚数、各基板品種A〜G毎のサイクルタイム、および段取り時間に関する情報が取得される。これらの情報は、作業者によって入力機器440を介してホストコンピューター400に予め入力されてメモリー402に記憶されており、ステップS12において、ホストコンピューター400がメモリー402からこれらの情報を読み出す。ちなみに、サイクルタイムとは、1枚の基板Sを基板処理システム1によって生産するのに要する予想時間である。図6の表に示す例では、基板品種A〜Gの基板Sを、基板搬送系Cf、Cbそれぞれで生産した場合のサイクルタイムが記載されている。また、段取り時間とは、基板品種の変更に伴って必要となる、印刷機100のマスクの交換や、実装機200の部品供給部6の部品交換に要する予想時間である。図6の表に示す例では、段取り時間は一律900[秒]に設定されている。この際、複数の基板品種に対応する部品を予め部品供給部6にセットしておけば、基板品種が変わる度に部品供給部6に部品をセットし直す必要が無くなり、実装機200の部品供給部6の部品交換に要する時間を短縮あるいは省略することができる。
【0037】
次のステップS13では、ホストコンピューター400は、トータル予想生産時間が各基板搬送系Cf、Cbで平準化するように、各基板搬送系Cf、Cbで生産する基板品種を割り当てる。ここで、トータル予想生産時間は、各基板搬送系Cf、Cbがそれぞれに割り当てられた基板品種の基板Sを全て生産し終えるのに要する時間である。図6の表に示す例を用いて、ステップS13での動作を具体的に説明すると次のとおりである。
【0038】
つまり、基板Sのサイクルタイムに当該基板Sの生産枚数を乗じた値が基板品種A〜G毎に基板搬送系Cf、Cbそれぞれについて求められて、基板品種毎の予想生産時間としてメモリー402に記憶される。そして、このメモリー402に記憶された値に基づいて、基板搬送系Cf、Cbそれぞれについて、割り当てられた各基板品種の予想生産時間の合計と段取り時間の合計とを合算したトータル予想生産時間が算出される。詳しくは、基板搬送系Cf、Cbそれぞれに割り当てる基板品種を変えながら、基板搬送系Cf、Cbそれぞれでのトータル予想生産時間が算出されて、基板搬送系Cf、Cbの間でトータル予想生産時間の差が最小となる基板品種の割り当てが求められる。
【0039】
こうして、ステップS13で、基板搬送系Cf、Cbそれぞれへの基板品種の割り当てが決まると、この割り当てられた品種の基板Sを基板搬送系Cf、Cbそれぞれへ供給する順番を決定するために、ステップS14〜S19が実行される。以下では、ステップS13において、基板搬送系Cfに基板品種B、C、E、Gが割り当てられるとともに、基板搬送系Cbに基板品種A、D、Fが割り当てられたとして、説明を行う。
【0040】
ステップS14では、各品種A〜Gの基板Sの幅Wsが取得される。この情報は、作業者によって入力機器440を介してホストコンピューター400に予め入力されてメモリー402に記憶されており、ステップS14において、ホストコンピューター400がメモリー402からこの情報を読み出す。そして、ステップS15において、ホストコンピューターは、幅の広い品種の基板Sから順番に基板搬送系Cfに供給し、幅の狭い品種の基板Sから順番に基板搬送系Cbに供給すると、基板搬送系Cf、Cbへの基板搬送順序を決定する(図7)。
【0041】
ここで、図7は、ホストコンピューターが決定した基板搬送順序の一例を示す図であり、基板搬送系Cfに割り当てられた各品種の基板幅Wsの大小関係が、E>B>C>Gであり、基板搬送系Cbに割り当てられた各品種の基板幅Wsの大小関係が、A<D<Cであった場合に相当する。また、図7では、基板品種の切換時に行われる段取り作業も加味して示されている。
【0042】
そして、ステップS16では、ステップS15で決定された基板供給順序がホストコンピューター400のディスプレイ430に表示される。したがって、作業者は、ディスプレイ430の表示結果に基づいて、決定された基板供給順序で基板Sが搬送されるように適切に段取りを行うことができる。
【0043】
以上に説明したように、この実施形態では、基板搬送系Cf、Cbに供給する基板品種を取得(ステップS13)し、基板搬送系Cf、Cbのうち一方へは幅の広い品種の基板Sから供給するとともに他方へは幅の狭い品種の基板Sから供給すると、基板搬送系Cf、Cbへの基板の搬送順序を決定する(ステップS15)。そのため、基板搬送系Cf、Cbのうち、一方の基板搬送系へ幅広の基板Sが供給されるときには、他方の基板搬送系へは幅狭の基板Sが供給されることとなる。その結果、基板搬送系Cf、Cbの両方に同時に幅広の基板Sが供給されて、基板搬送系Cf、Cbに搬送されてきた各基板Sの間隔ΔSが狭くなるといった状況の発生を抑制し、スループットの向上を図ることが可能となっている。
【0044】
また、この実施形態では、ホストコンピューター400が決定した組み合わせを表示するディスプレイ430をさらに備えている。このようなディスプレイ430を備えることで、作業者は決定された組み合わせを確認して、段取り作業を適切に実行することができる。
【0045】
その他
上述したとおり、この実施形態では、基板処理システム1が本発明の「基板処理システム」に相当し、実装機200が本発明の「基板処理装置」に相当し、プログラム420が本発明の「プログラム」に相当し、記録媒体410が本発明の「記録媒体」に相当している。また、基板搬送系Cf、Cb(レーン4f、4b)が本発明の「第1および第2搬送部」に相当し、ヘッドユニット5f、5bが本発明の「第1および第2機能部」に相当し、ヘッドユニット5f、5bから本発明の「基板処理機構」が構成され、ホストコンピューター400が本発明の「決定部」に相当し、ディスプレイ430が本発明の「表示部」に相当し、実装ヘッド51が本発明の「実装ヘッド」に相当し、カメラ52が本発明の「カメラ」に相当している。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、実装ヘッド51を装備したヘッドユニット5f、5bを備えた実装機200を本発明の「基板処理装置」として備えた基板処理システム1に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明の「基板処理装置」の具体的構成はこれに限られない。そこで、基板処理装置は、例えば、実装ヘッド51に代えて、接着剤等を基板に塗布するディスペンサーをヘッドユニット5f、5bに装備したものや、基板を検査するための検査カメラをヘッドユニット5f、5bに装備したものであっても良い。または、基板処理装置は、一方のヘッドユニット5fに実装ヘッド51を装備し、他方のヘッドユニット5bにディスペンサーあるいは検査カメラを装備するものであっても良い。
【0047】
また、基板処理システム1や実装機200等の具体的構成についても種々の変形が可能である。したがって、例を挙げれば、実装機200の個数や、実装機200を構成する部材の個数等も変更可能である。さらには、基板品種の数や、基板Sの形状やサイズ、基板SにおけるフィデューシャルマークMfやバッドマークMbの位置や個数ついても、種々の変形が採用可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、レーン4f、4bの幅W4を可変にするために、各レーン4f、4bが隣接する部分に配置されたコンベア2(Y軸方向に並ぶ4本のコンベア2のうち真ん中の2本のコンベア2)を可動に構成した。しかしながら、レーン4f、4bの幅W4を可変ための構成はこれに限られず、種々の変形が可能である。そこで、例えば、レーン4f、4bそれぞれのY軸正方向側(あるいはY軸負方向側)のコンベア2を可動に構成したり、あるいはレーン4f、4bを構成する4本のコンベア2を全て可動に構成したりしても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、基板搬送系Cf、Cbはいずれも同じ方向(X軸正方向)に向けて基板Sを搬送していた。しかしながら、例えば、基板搬送系Cf、Cbが互いに逆方向(一方がX軸正方向で、他方がX軸負方向)に基板Sを搬送する基板処理システム1に対しても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…基板処理システム
100…印刷機
200…実装機
300…リフロー炉
400…ホストコンピューター
430…ディスプレイ
410…記録媒体
420…プログラム
Cf…基板搬送系
Cb…基板搬送系
4f…レーン
4b…レーン
2…コンベア
5f…ヘッドユニット
5b…ヘッドユニット
51…実装ヘッド
52…カメラ
S…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに供給されたY軸方向に幅を有する基板を前記Y軸方向に直交するX軸方向に順次搬送する、互いに並列に配置された第1および第2搬送部と、
第1処理位置に前記第1搬送部が搬送してきた前記基板に対して処理を行う第1機能部と、前記Y軸方向で前記第1処理位置に隣接する第2処理位置に前記第2搬送部が搬送してきた前記基板に対して処理を行う第2機能部とを有する基板処理機構と、
前記第1および前記第2搬送部への前記基板の搬送順序を決定する決定部と
を備え、
前記第1および前記第2搬送部が前記Y軸方向に有する幅は、それぞれが搬送する前記基板の幅に応じて調整可能であるとともに、
前記第1あるいは第2搬送部の幅が増大することで、前記第1および前記第2処理位置それぞれにある前記基板の間隔は減少し、
前記基板処理機構では、前記第1および前記第2機能部のそれぞれは、相互の干渉を回避するために前記第1機能部と前記第2機能部の同時進入が禁止された排他領域に、前記第1および前記第2機能部のうち一方が進入している間は他方が前記排他領域から退避し、
前記決定部は、供給する前記基板の品種を前記第1および第2搬送部それぞれについて取得し、前記第1および第2搬送部のうち一方へは幅の広い品種の前記基板から供給するとともに他方へは幅の狭い品種の前記基板から供給すると、前記第1および前記第2搬送部への前記基板の搬送順序を決定することを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記決定部が決定した前記組み合わせを表示する表示部をさらに備えた請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
複数の前記基板処理機構が前記第1および第2搬送部に沿って配置された請求項1または2記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記第1および第2機能部のそれぞれは、前記基板への処理として前記基板に部品を実装する実装ヘッドを有する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記第1および前記第2機能部のそれぞれは、前記基板への処理として前記基板を撮像するカメラを有する請求項4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
それぞれに供給されたY軸方向に幅を有する基板を前記Y軸方向に直交するX軸方向に順次搬送する、互いに並列に配置された第1および第2搬送部と、第1処理位置に前記第1搬送部が搬送してきた前記基板に対して処理を行う第1機能部と、前記Y軸方向で前記第1処理位置に隣接する第2処理位置に前記第2搬送部が搬送してきた前記基板に対して処理を行う第2機能部とを有する基板処理機構とを備え、前記第1および前記第2搬送部が前記Y軸方向に有する幅は、それぞれが搬送する前記基板の幅に応じて調整可能であるとともに、前記第1あるいは第2搬送部の幅が増大することで、前記第1および前記第2処理位置それぞれにある前記基板の間隔は減少し、前記基板処理機構では、前記第1および前記第2機能部のそれぞれは、相互の干渉を回避するために前記第1機能部と前記第2機能部の同時進入が禁止された排他領域に、前記第1および前記第2機能部のうち一方が進入している間は他方が前記排他領域から退避する基板処理システムに対して、前記第1および前記第2搬送部への前記基板の搬送順序を決定する基板供給順序決定方法であって、
供給する前記基板の品種を前記第1および前記第2搬送部それぞれについて取得する工程と、
前記第1および前記第2搬送部に供給する基板品種を取得し、前記第1および第2搬送部のうち一方へは幅の広い品種の前記基板から供給するとともに他方へは幅の狭い品種の前記基板から供給すると、前記第1および前記第2搬送部への前記基板の搬送順序を決定する工程と
を備えたことを特徴とする基板供給順序決定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板供給順序決定方法が備える前記各工程をコンピューターに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84646(P2013−84646A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221567(P2011−221567)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】