説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】ディスク基板を回転させる駆動装置を有効に利用して構造の簡易化を達成し、ディスク基板の反りを防止しつつ硬化促進を図ること。
【解決手段】硬化前のディスク基板Dを回転させて反りを低減しつつ硬化させる基板処理装置10であり、ディスク基板Dの中央部を支持する支持手段11と、この支持手段11に回転力を付与する駆動手段13と、当該駆動手段13の出力軸23に連結された複数の回転羽根27と、空気の通路を確保する導風手段17とを含む。ディスク基板Dを回転させることで反りが防止されるとともに、回転羽根27が回転することで、導風手段17に引き込まれる空気でディスク基板Dの硬化促進が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置及び基板処理方法に係り、更に詳しくは、コンパクトディスク、DVD等のディスク基板を成形する際に、当該ディスク基板の反り変形等を低減させることのできる基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク等のディスク基板は射出成形により成形される。射出成形は、加熱溶融された樹脂を金型キャビティ内に充填して得られるものであることから、金型から取り出した直後においては、未硬化状態にあり、その後の処理に際して硬化するまでの間に反り等の変形が生じ易い。
【0003】
特許文献1には、ディスク基板の反りを防止する基板処理装置が開示されている。同装置は、ディスク基板の中央部を支持するディスク受け台と、このディスク受け台を回転させる回転駆動装置と、ディスク受け台の下面側から気体を噴出させる気体吹き付け手段とを備えて構成されている。この基板処理装置は、回転駆動装置の駆動によって生じるディスク基板の遠心力と、気体吹き付け手段から吹き付けられる冷却空気によって、反りを防止しながら硬化が促進されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3593660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された基板処理装置にあっては、回転駆動装置と気体吹き付け手段とがそれぞれが独立した構成となっているため、回転駆動装置と気体吹き付け手段との2系統の駆動装置が必要となり、装置の大型化や、エネルギーを無駄に消費する、という不都合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ディスク基板を回転させる駆動装置を有効に利用して構造の簡易化を達成するとともに、ディスク基板の反りを防止しつつ、当該ディスクの硬化促進を図ることのできる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、硬化前のディスク基板を平面内で回転させることで、当該ディスク基板の反りを低減しつつ硬化させる基板処理装置であって、前記ディスク基板の中央部を支持する支持手段と、前記支持手段に回転力を付与する駆動手段と、前記駆動手段の出力軸に連結されるとともに当該出力軸の回転によって前記ディスク基板の面に空気を引き当てる気流発生手段とを備える、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記空気の通路を確保する筒状の導風手段を更に含むことが好ましい。
【0009】
また、前記導風手段は、空気の入り口に外側に反り返るファンネル部が設けられる構成を採るとよい。
【0010】
更に、前記導風手段は、両端が閉塞される筒状ケースと、当該筒状ケースの一部に設けられた排気穴と、筒状ケース内に空気を引き込む吸気穴とにより構成することもできる。
【0011】
また、前記気流発生手段は回転羽根により構成され、当該回転羽根は前記支持手段と一体に回転する、という構成を採っている。
【0012】
更に、本発明は、硬化前のディスク基板の中央部を支持する支持手段と、当該支持手段に回転力を付与する駆動手段とを備えた基板処理装置を用いて前記ディスク基板の反りを低減しつつ硬化させる基板処理方法であって、前記駆動手段の出力軸に連結されて気流を形成する気流発生手段を設け、前記出力軸の回転で、前記ディスク基板と前記気流発生手段とを同時に回転させることで、前記ディスク基板に空気を引き当てて当該ディスク基板を冷却しつつ硬化させる、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスク基板を回転させる駆動手段の出力軸に気流発生手段が連結されているため、ディスク基板に遠心力を付与して当該ディスク基板の反りを防止若しくは低減すると同時に、ディスク基板に向かって引き込まれる空気の流れでディスク基板が冷却されて硬化促進される。よって、従来では回転駆動装置と気体吹き付け手段との2系統必要だった駆動装置を1系統で賄うことができるため、装置が大型化するといった不都合を解消することができる上、ディスク基板の回転のみに使われていたエネルギーをディスク基板の冷却にも使用することができ、エネルギーを無駄に消費するといった不都合をも解消することができる。
また、導風手段を設けることで、冷却風としての空気の通路を確保して当該空気が確実にディスク基板に当たるようにすることができる。
更に、導風手段の空気の入り口側にファンネル部を設けた場合には、空気の吸気抵抗が減少し、当該空気の吸入効率を上げることができ、効果的に導風手段に空気を導入してディスク基板を冷却することができる。
また、前記筒状ケースに排気穴と吸気穴とを備えた導風手段では、略閉塞構造としても、筒状ケース内おける空気の温度上昇を回避でき、また、筒状ケースの内面形状を曲面形状等にすることで、旋回流若しくは渦流を生じさせて空気の流れを促進してディスク基板の硬化を一層促進することができる。
更に、気流発生手段を回転羽根により構成することで、ディスク基板の回転数と同一の回転数による空気引き込みを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る基板処理装置の正面図。
【図2】図1の平面図
【図3】基板処理装置の変形例を示す正面図。
【図4】他の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び図2において、基板処理装置10は、射出成形して得られた硬化前のディスク基板としてのコンパクトディスクD(以下、単に「ディスクD」という)を平面内で回転させて、当該ディスクDの反りを低減しつつ硬化させる装置として構成されている。この基板処理装置10は、ディスクDの中央部を支持する支持手段11と、この支持手段11に回転力を付与する駆動手段13と、駆動手段13の出力軸23に連結されるとともに当該出力軸23の回転によってディスクDの面に空気を引き当てる気流発生手段15と、ディスクDの面に向かう空気の通路を確保する筒状の導風手段17とを備えて構成されている。
【0017】
前記支持手段11は、ディスクDの中央部に設けられた穴D1内に位置し、図示しないばね等の付勢手段によって互いに離れる方向に移動することで、ディスクDを保持するチャック20と、このチャック20を移動可能に支持するとともに、ディスクDの中央領域を図1中下方から支持する支持体21とを含む。
【0018】
前記駆動手段13は、モータMからなり、このモータMの出力軸23に支持手段11が連結されている。この駆動手段13は、略十字形状のフレームFを介して導風手段17内の内部中央に保持される。
【0019】
前記気流発生手段15は、支持体21の外周に固定された回転羽根27により構成され、出力軸23の回転によってディスクDと一体回転可能に設けられている。この回転羽根27は、特に限定されるものではないが、本実施形態では3枚用いられており、出力軸23の周方向120度間隔を隔てて配置されているが、回転羽根27の数は限定されることはない。また、回転羽根27は、出力軸23を中心としたときの外周縁が、平面視でディスクDの外周縁よりも外側に位置する大きさに設けられているが、ディスクDの外周縁よりも内側に位置する大きさに設けてもよい。
【0020】
前記導風手段17は、上下に開口部30A、30Bを有する両端開放型の筒状部材30により構成されている。この筒状部材30は、回転羽根27が回転したときに、上部の開口部30Aから外部空気を内部に引き込むとともに、下部の開口部30Bから外部に空気を排出するようになっている。これにより、図1中矢印GAで示されるように、冷却風としての空気の通路を確保して当該空気が確実にディスク基板Dに当たるようになっており、当該ディスクDを冷却して硬化促進するようになっている。また、筒状部材30の上部の開口部30Aには、ファンネル部30Cが設けられている。これにより、空気の吸気抵抗が減少し、当該空気の吸入効率を上げることができ、効果的に導風手段に空気を導入してディスク基板Dを冷却することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る基板処理装置10でディスクDを処理する作用について説明する。
【0022】
射出成型機の金型を開放して取り出される硬化前のディスクDは、適宜な保持機構を有する図示しない搬送手段によって基板処理装置10の支持体21に受け渡され、当該ディスクDの穴D1内にチャック20が入り込んで支持体21に対して回転不能に保持される。この際、ディスク基板Dは硬化前の状態にあるため、図1中二点鎖線で示されるように、外周縁が自重により相対的に垂れ下がった状態となる。そして、駆動手段13のモータMを駆動して支持体21を介してディスクDを矢印R方向に所定の回転数(例えば4000rpm)で回転させることで、当該ディスクDに遠心力fが付与され、当該ディスクDが平面姿勢に維持される。
【0023】
ディスクDの回転と同時に、支持体21に固定された回転羽根27が一体的に回転することにより、筒状部材30の上部の開口部30Aから空気を引き込み、下部の開口部30Bから外部に放出する気流が発生する。これにより、筒状部材30内に引き込まれた空気がディスクDの上面に吹き当てられて冷却を行うこととなる。従って、ディスクDは遠心力で自重に伴う反りを防止されつつ硬化が促進されることとなる。
【0024】
従って、このような実施形態によれば、ディスクDを回転させる駆動手段13を利用して回転羽根27が同時に一体回転することでディスク冷却用の気流を発生させることができ、個別的に空気をディスクに吹き付ける従来装置に比べて構成が簡単になるとともに、無駄なエネルギーを消費することがない基板処理装置を提供することができる。
また、導風手段17を構成する筒状部材30の内部に冷却風としての空気の通路を確保することができるので、空気をディスクDの上面に確実に当てることができる。
【0025】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0026】
例えば、前記実施形態では導風手段17の筒状部材30は上下開放型としたが、これに限定されるものではない。例えば、図3に示されるように、下部側がベース40で閉塞される一方、上部側に蓋体41が着脱自在に設けられて両端が閉塞される筒状ケース43と、当該筒状ケース43の下部外周に形成された排気穴45と、筒状ケース43内に空気を引き込む吸気穴46とにより閉塞型に近い構成することもできる。この場合、ベース40や蓋体41は、断面視略m字形状となるドーム型とされることで、回転羽根が回転したときに、筒状ケース43内で旋回流を形成しやすくなる。また、筒状ケース43内の空気が排気穴45から外部に排気される一方、外気が吸気穴46から導入されてディスクDの上面に吹き当てられるようになっている。
【0027】
また、前記実施形態では、コンパクトディスクDを処理対象としたが、DVD等、種々のディスク基板を処理対象とすることができる。この場合において、ディスクの直径に応じて回転数を変化させる等の手段を講じて反り防止を図れば足りる。
【0028】
更に、本発明の基板処理装置は、ディスク基板にスピンコートを施す基板処理装置とすることもできる。この場合、処理対象物を硬化後のディスク基板とし、当該ディスク基板を平面内で回転させることでコート剤の遠心(延伸)を行うと共に、気流発生手段によって当該コート剤の硬化を促進させることができる。
【0029】
また、気流発生手段は回転羽根27以外に、コンプレッサ等を採用することができる。この場合、ディスク基板を回転させる駆動手段の出力によって、コンプレッサ等を駆動させてディスク基板に空気を吹き付けるようにすればよい。
【0030】
更に、図1の筒状部材の開口部30Aや、図3の筒状ケース43の吸気穴46にエアフィルターを設け、空気中に含まれる塵埃等を除去させる機能を付加することができる。
【0031】
また、図1に示されるディスク処理装置10は、天地反転タイプとすることもできる。
【0032】
更に、図4に模式的に示されるように、ギヤ、プーリ、スプロケット等を適宜に組み合わせて構成可能な出力方向変換手段DCと、シャフト、ベルト、チェイン等の出力伝達手段OTとを適宜に組み合わせ、モータMの出力軸23の回転力を回転羽根27に伝達するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 基板処理装置
11 支持手段
13 駆動手段
15 気流発生手段
17 導風手段
23 出力軸
27 回転羽根
30C ファンネル部
43 筒状ケース
45 排気穴
46 吸気穴
D コンパクトディスク(ディスク基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化前のディスク基板を平面内で回転させることで、当該ディスク基板の反りを低減しつつ硬化させる基板処理装置であって、
前記ディスク基板の中央部を支持する支持手段と、
前記支持手段に回転力を付与する駆動手段と、
前記駆動手段の出力軸に連結されるとともに当該出力軸の回転によって前記ディスク基板の面に空気を引き当てる気流発生手段とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記空気の通路を確保する筒状の導風手段を更に含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記導風手段は、空気の入り口に外側に反り返るファンネル部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記導風手段は、両端が閉塞される筒状ケースと、当該筒状ケースの一部に設けられた排気穴と、筒状ケース内に空気を引き込む吸気穴とにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
硬化前のディスク基板の中央部を支持する支持手段と、当該支持手段に回転力を付与する駆動手段とを備えた基板処理装置を用いて前記ディスク基板の反りを低減しつつ硬化させる基板処理方法であって、
前記駆動手段の出力軸に連結されて気流を形成する気流発生手段を設け、
前記出力軸の回転で、前記ディスク基板と前記気流発生手段とを同時に回転させることで、前記ディスク基板に空気を引き当てて当該ディスク基板を冷却しつつ硬化させることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−54237(P2011−54237A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202298(P2009−202298)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】