説明

基板回転装置及び真空処理装置並びに成膜方法

【課題】基板を回転させる機構のコスト低減に寄与する基板回転装置を提供する。
【解決手段】センタ孔を有する基板9を回転させてキャリアに支持された基板9の支持位置を変化させる基板回転装置は、駆動源に連結され、進退動、上下動及び左右動が可能なシャフトと、シャフトの端部側に固定され、センタ孔内側の縁部分を載せて基板9を鉛直姿勢で支持するための、上方に開放された支持溝が形成されたピック32とを有してなり、ピック32の回転中心とピック32との距離は、シャフトの上下動に伴い変化させることでピックの回転前後でキャリアに対する基板の位置の変化を抑え、基板9のワイパー動作を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成膜方法及び基板回転装置並びに真空処理装置に係り、特に絶縁材製の基板に下地層膜、磁性層膜および保護層膜を順次設けてなる磁気記録媒体の製造に好適な成膜方法及び基板回転装置並びに真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体は、例えば、基板上にNiPからなる下地層膜と、この下地層膜の上にスパッタリングにより設けられたCr下地層および、CrやCo合金からなる磁性層膜とを有して構成されている。さらに、この磁性層膜の上にはカーボンスパッタ膜等による保護層膜が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
磁気記録媒体の製造においては、ロードチャンバとアンロードチャンバの間に複数連設された成膜処理室に、成膜を行う基板を順次搬送することにより下地層や磁性膜層など各層の成膜処理が行われている。基板の搬送には、基板をキャリアに保持して各成膜処理室の間を搬送できる搬送機構が用いられている(例えば、特許文献2参照)。キャリアは、搬送機構部が形成されたスライダの上部に基板を保持する基板ホルダを取り付けて構成されている。そして、基板は基板ホルダに取り付けられた板ばね状の基板支持爪により把持される。
【0004】
ここで、ガラスなどの絶縁材料からなる基板を用いた磁気記録媒体の製造では、下地層膜の形成にもスパッタリング法が用いられる。すなわち、基板を真空処理室内に導入して、DCマグネトロンスパッタにより下地層としての金属膜(例えばNiP、Cr等)を成膜した後、磁性層膜並びに保護層膜の成膜が順次行われる。磁性層膜の成膜は基板にバイアスを印加した状態で行なわれる。このとき、バイアスは基板ホルダの基板支持爪を介して基板に印加される。
【0005】
しかし、基板は、基板ホルダに設けられた基板支持爪などのばね性を有する保持部材によって支持されているため、保持部材の影となる部分には導電性が良好な下地層が成膜されず、下地層と基板支持爪が電気的に非接触状態になることがあった。この場合、バイアスを印加する際に基板と基板ホルダ(基板支持爪)間の電気抵抗が高く、かつ不安定なために所望の薄膜が形成できないという問題が生じる。
【0006】
そこで上記の問題を解決するために、下地層の成膜後、基板ホルダに保持された基板を回転させて、下地層が成膜された部分に支持部材が接するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
特許文献3の技術は、基板ホルダの基板支持爪を一時的に屈曲させて、基板ホルダへの基板の保持を解除している間に、基板のセンタ孔に支持杆(ピック)を挿入して基板を支持し、支持杆を所定角度回転させた後に基板支持爪を戻す操作を行うものである。このような操作を下地層の成膜後に行うことによって、基板支持爪と下地層と導通を確保して基板へのバイアス印加を確実とし、所望の膜質を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0008】
また、特許文献3の機構は、例えば、基板を運ぶキャリアには基板ホルダが2つあり、それぞれの基板を回転させるため、それぞれの基板に対する機構は各々独立した軸を有し、その軸は伸縮、上下、回転する機構を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−26827号公報
【特許文献2】特開平03−125322号公報
【特許文献3】特開平07−243037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、磁気記録媒体の製造工程において、基板加熱機構、チャンバベーク、スパッタリングによって、基板、基板ホルダ、スライダは温められ、基板ホルダとスライダが熱膨張する。この熱膨張の影響で、同じスライダに載っている2つの基板ホルダ間のピッチ(ピックピッチ)が広がり、基板ハンドリング部の各部の隙間が変化し、さらに、キャリアごとの基板支持爪のばらつきや、キャリアの停止精度のばらつきも加わり、場合によっては基板のハンドリングミス(基板落下)が発生するおそれがあった。
【0011】
すなわち、基板の中心とピック中心とは左右方向(キャリアの搬送方向)で同一位置にならないため、基板回転をする際の、回転動作において、基板の外周円または、ピックのいずれかが揺動動作(ワイパー動作)をしてしまう。図8にピック132に支持された基板109が揺動動作(ワイパー動作)する様子を示した。この揺動動作によって基板ハンドリングの各部の隙間が変化し、あるキャリアの基板支持爪のばらつきや、キャリアの停止精度のばらつきも加わり、場合によっては基板ハンドリングミス(基板落下)が発生するおそれがあった。

【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁部材からなる基板に複数層による薄膜を順次形成して所望の特性が得られるとともに、基板を落下させることなく回転させ、基板搬送機構の安定稼動に寄与する成膜方法及び基板回転装置並びに真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る基板回転装置は、センタ孔を有する基板を回転させ、キャリアに支持された基板の支持位置を変化させる基板回転装置であって、基板を支持するピックと、基板に対して進退する方向、重力方向と反重力方向、基板の回転方向、及び重力方向を横切る方向、のいずれにもピックを駆動制御する駆動源とを有することを特徴とする。或いは、本発明に係る基板回転装置は、センタ孔を有する絶縁材製の基板を支持するキャリアが搬送され、基板の表面に複数層の薄膜を順次成膜する真空処理室に備えられ、複数層のうちでバイアススパッタリング法により成膜される薄膜層より基板側の導電層の成膜後、且つ、バイアススパッタリング法による磁性層の成膜前に、基板の導電層とキャリア側とを電気的に接触させるように基板の支持位置を変化させる基板回転装置であって、キャリアは、一端部側が基板と接し、他端部側が基板ホルダに設けられた弾性を有する基板支持爪を有し、基板回転装置は、基板の支持を解除する側に基板支持爪を屈曲させることができるアームと、センタ孔内側の縁部を載せて基板を支持する支持溝が形成されたピックと、基板に対して進退する方向、重力方向と反重力方向、基板の回転方向、及び基板の搬送方向、のいずれにもピックを駆動制御する駆動源とを有してなることを特徴とする。また、本発明に係る真空処理装置はこのような基板回転装置を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る薄膜形成方法は、上述の基板回転装置を用いた薄膜形成方法であって、ピックを前進させて、所定位置に停止させたキャリアに支持された基板の前記センタ孔に挿入する第1の工程と、ピックを反重力方向に移動させて、ピックの支持溝にセンタ孔の内側の縁部を接近させる第2の工程と、アームによって基板支持爪を屈曲させて、キャリアからの基板の支持を解除する第3の工程と、基板を支持したピックを回転する第4の工程と、アームによる基板支持爪の屈曲状態を解除する第5の工程と、シャフトを重力方向に移動させる第6の工程と、ピックを基板の搬送方向に移動させる第7の工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る成膜方法及び基板回転装置並びに真空処理装置を用いることにより、絶縁部材からなる基板へ複数層による所望の特性の薄膜を得ることができる。また、基板を落下させること無く回転させることができ、装置の動作を安定なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空処理装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る真空処理装置に用いるキャリアの概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板回転室の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板回転装置のピック部分の拡大説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板回転装置の動作説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板回転装置の動作説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板回転装置の動作説明図である。
【図8】基板のワイパー動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0018】
例えば、本発明に係る基板回転装置は、スパッタリング成膜装置の他にもドライエッチングのような装置においても基板側にバイアスを印加する真空処理工程を有する場合に好適に適用可能なものであるが、本実施形態においてはインライン型のスパッタリング成膜装置(真空処理装置S)に適用した例について説明する。
【0019】
図1乃至5は本発明の一実施形態について説明した図であり、図1は真空処理装置の概略図、図2はキャリアの概略図、図3は基板回転室の概略図、図4は基板回転装置のピック部分の拡大説明図、図5は基板回転装置の動作説明図である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0020】
図1に示す真空処理装置Sは、インライン型のスパッタリング成膜装置であり、ロードチャンバLC、アンロードチャンバUL、成膜室S10や基板回転室S20その他の処理室などとして機能する複数のチャンバS10が四角形状にゲートバルブGVを介して連結されている。また、各成膜室S10を貫通して設けられた基板搬送路Rに沿ってキャリア10を搬送可能な基板搬送装置TRが備えられている。
【0021】
基板搬送装置TRは基板9を垂直姿勢で保持する、いわゆる縦型搬送装置である。基板9は、ロードチャンバLC内のカセットに一旦装填された後、移載ロボットによってキャリア10(基板ホルダ12)に移載される。基板9は、基板ホルダ12に搭載された状態で基板搬送路Rに沿って搬送され、各チャンバで所定の処理が施される。
【0022】
図2にキャリアの該略図を示す。スライダ14の上側に基板ホルダ12が取り付けられて構成されており、スライダ14部分には基板搬送路Rに備えられる磁気ネジや電磁石装置と磁気カップリングを形成できる永久磁石が固着されている。基板ホルダ12には、基板9を支持するための基板支持爪(基板支持部材)20が設けられている。基板支持爪20は弾性を有する部材であり屈曲形状の板ばねから構成されている。また、基板支持爪20は金属製の部材であり、基板ホルダ12と導通した状態で設けられている。なお、基板ホルダ12に取り付けられた3つの基板支持爪20のうち、下側の一つを下爪20aとする。
【0023】
本実施形態における基板9としては、磁気ディスクや光ディスクなどの記憶メディアに用いられ、円盤状部材が好適に用いられるが、キャリア10に取り付けられた基板ホルダ12を交換することにより、種々の形状のガラス基板若しくは樹脂基板などを用いることができる。
【0024】
成膜室S10は、真空処理装置Sを構成する処理室の一つであり、垂直姿勢で基板ホルダ12に保持された基板9に対して成膜処理を行うことができるように構成されている。この成膜室S10内にはスパッタ源としてのターゲットを搭載可能なカソードと、基板9を搬送する基板搬送路Rが少なくとも設けられ、真空ポンプで内部を排気できるように構成されている。
【0025】
カソードは、基板搬送装置TRに保持された基板9に成膜するために、成膜室S10内の側壁に取り付けられている。そのため、カソードに任意のターゲットを装着することにより、基板9の成膜面に平行にターゲットを配置することができる。また、本実施形態に係るスパッタリング装置Sにおいては、基板搬送装置TRに保持された基板9の両面に同時に成膜処理を行うため基板搬送路Rを挟んだ両側にそれぞれ複数のカソードが配設されている。
【0026】
成膜室S11の間には基板回転室S20が設けられている。基板回転室S20は、下地層の成膜後、下地層が成膜された部分に基板支持爪(基板支持部材)20が接するように、基板ホルダ12に保持されている基板9を回転させる機構(基板回転装置)が設けられたチャンバである。基板回転室S20には、前工程が行われる成膜室S10から基板9を搬送できるように基板搬送装置TR(基板搬送路R)が設けられている。
【0027】
本実施形態においては、前工程が行われる成膜室S10は下地層を成膜するチャンバである。下地層としては、例えば、NiP層、CoFe合金層などが形成される。なお、基板回転室S20の基板搬送路Rの下流側には、他の下地層や磁性層膜を成膜するチャンバ(成膜室S11)が連結されている。
【0028】
図3に基板回転室の断面概略図を示す。基板回転室S20は、基板9を搭載したキャリア10を搬送する基板搬送路R(不図示)と、キャリア10に搭載された基板9を回転させる基板回転装置30とを備えている。基板回転装置30は、基板回転室S20の外側の壁面に取り付けられており、先端にピック32が取り付けられたシャフト34、シャフト34を介してピック32を動作させる3つのモーターM1、モーターM1の回転を制御する制御装置(不図示)とを主要構成要素として備えている。なお、基板回転装置30は基板ホルダ12毎に1つ備えられている。
【0029】
また、基板回転室S20内には、基板下側を支持する基板支持爪(下爪)20aを押し下げるためのアーム36が設置されている。アーム36は、基板回転室S20内に設置された真空モーター(ステッピングモーター)M2に連結されており、真空モーターM2を回転させることでアーム36を動作させることができる。アーム36は、先端部がピン形状の部材で、キャリア10の停止状態でアーム36を動作させることによって、下爪20aを押し下げ、基板9の保持を開放することができる。
【0030】
シャフト34は、棒状の部材であり、基板回転室S20の外側にある端部側に接続された駆動源としての4つのモーターM1(M11,M12,M13,M14)によって基板9に近づく方向に対して進退動、回転動作、基板搬送装置TRによって基板の搬送する方向に左右動及び、重力方向に上下動することができる。すなわち、モーターM11,M12,M13,M14(不図示)は、それぞれ進退動、回転動、左右動,重力方向に上下動の各動作が対応している。モーターM14は図3の裏側に配置されるため図3中では図示されていない。
【0031】
基板回転室S20内に配置される側のシャフト34の先端にはピック32が取り付けられている。すなわち、基板の成膜面に対して垂直方向に伸縮動作(進退動)によって、停止状態のキャリア10に搭載された基板9のセンタ孔9aにピック32を挿入することができる。
【0032】
また、上下方向の動作(進退動)によって、センタ孔9aにピック32が挿入された状態の基板9を上下方向に移動させることができる。更に、センタ孔9aに対して基板を搬送する方向(左右方向)にピック32を移動(左右動)させることができる。駆動源としての4つのモーターM1によりピック32およびピック32が取り付いているシャフト34の動作が制御されている。
【0033】
本発明に係るピック32について、図4に基づいて説明する。図4(a)にピック32の斜視図を示す。ピック32は支持溝32aを有しており、図4(b)に示すように、基板9のセンタ孔9aの上側と接し、基板9を支持溝32aで支持することができる。支持溝32aの水平方向(搬送方向)の幅内に基板9の重心が位置するため、基板9をしっかり保持することができる。このとき、基板9の重心の水平方向が、支持溝32aの水平方向の中心位置と近いほど基板9のワイパー動作を抑制することができる。
【0034】
図5(a)〜図7(i)に基づいて、基板回転装置30の動作について説明する。キャリア10が基板回転室S20内にないときは、ピック32は基板搬送路R上より基板回転装置30側(側方の壁側)に引っ込んだ状態で待機している。キャリア10が搬送された後実施される基板9の回転動作は以下の通りである。なお、図5〜7中の破線は基板9の中心を示している。
【0035】
図5(a)は、基板回転室S20内の所定位置にキャリア10が停止され、且つ、基板回転前の状態を示している。すなわち、キャリア10が基板回転室S20内の所定位置に搬送、固定されると、ピック32を延ばして基板9のセンタ孔9a内に侵入させる(第1の工程)。次に、図5(b)のように基板9が基板ホルダ12に支持されている状態で、ピック32をセンタ孔9aの内側縁部に近接して位置させている(第2の工程)。このとき、ピックはセンタ孔9aの内側に接触した状態、若しくは極僅かな間隔を有して配置された状態である。
【0036】
図5(c)は、アーム36によって下爪20aが下方に曲げられて、基板ホルダ12からの基板9の保持が開放された状態である(第3の工程)。下爪20aはアーム36に引っ掛けられるようにして下方に押し下げられる。なお、図5(c)の状態では、ピック32はセンタ孔9aの内側に接触した状態であることが望ましいため、基板9が開放された位置で接触するようにピック32の上下方向の位置調整をしてもよい。
【0037】
図6(d)〜(e)は、ピック32を下方向に移動させ、基板9と基板支持爪20の間に空間を設けた後に、基板9の成膜面に対する法線と平行な仮想線をピック32の回転軸としてピック32を回転させる。回転はシャフト34に連結したモーターM1によって行われる(第4の工程)。
【0038】
図6(f)は、ピック32を上方向に移動させ、基板9を再び基板支持爪20に保持される様子を示している。このとき基板9の重心に対してピック32の支持幅の内側に設定すること、及び、回転中心を基板9の中心とすることで、基板回転前後の基板位置を変えることなく上側の2つの基板支持爪20に基板9を接触させる。
【0039】
図7(g)でアーム36を作動させて下爪20aを上方に戻して、基板ホルダ12の基板支持爪20,20,20aの3点で基板9を支持させ(第5の工程)る。図7(h)に示すように、シャフト34を下方に移動させて、ピック32の支持溝32aとセンタ孔9aの内側の縁部分とを上下方向に離間する(第6の工程)。最後に、図7(i)に示すように、ピック32と基板9のX方向(搬送方向)の隙間が均等になるような位置に移動(第7の工程)、ピック32と基板9の隙間を充分確保したうえで基板搬送路Rから退避させて基板回転動作を終了する。なお、第7の工程は第1の工程の前に行ってもよいことはもちろんである。
【0040】
本実施形態においては、基板9のセンタ孔9aの位置を予め設定してある。すなわち、キャリア10の熱膨張に伴う基板支持位置の変動によるセンタ孔9aの位置変化を予め設定し、この設定された座標(空間位置)を中心にピック32やシャフト34の動作させて上記の工程を実施している。しかしながら、基板9位置をCCDカメラなどの位置センサで監視しながら、上記の工程を行うものであってもよいことはもちろんである。
【0041】
本発明に係る成膜方法によれば、絶縁部材からなる基板へ複数層による所望の特性の薄膜を得ることができる。本発明に係る基板回転装置は、従来、前後(進退方向)・上下・回転の3軸制御のピック動作に加えて、左右方向の1軸制御を追加することで、ピック32の進退動作時における基板9との接触による基板落下や、スライダと基板ホルダの熱膨張によるピック32と基板ホルダの相対位置を維持することができ、基板落下もなく装置の信頼性をあげることができる。
【符号の説明】
【0042】
S 真空処理装置
LC ロードチャンバ
UL アンロードチャンバ
TR 基板搬送装置
R 基板搬送路
S10、S11 成膜室
S20 基板回転室
M1,M2 モーター
9 基板(ディスク)
9a センタ孔
10 キャリア
12 基板ホルダ
14 スライダ
20 基板支持爪
20a 下爪
30 基板回転装置
32 ピック(支持杆)
32a 支持溝
34 シャフト
36 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ孔を有する基板を回転させ、キャリアに支持された前記基板の支持位置を変化させる基板回転装置であって、
前記基板を支持するピックと、
前記基板に対して進退する方向、重力方向と反重力方向、基板の回転方向、及び重力方向を横切る方向、のいずれにも前記ピックを駆動制御する駆動源とを有することを特徴とする基板回転装置。
【請求項2】
センタ孔を有する絶縁材製の基板を支持するキャリアが搬送され、前記基板の表面に複数層の薄膜を順次成膜する真空処理室に備えられ、前記複数層のうちでバイアススパッタリング法により成膜される薄膜層より基板側の導電層の成膜後、且つ、バイアススパッタリング法による磁性層の成膜前に、前記基板の前記導電層と前記キャリア側とを電気的に接触させるように基板の支持位置を変化させる基板回転装置であって、
前記キャリアは、一端部側が前記基板と接し、他端部側が前記基板ホルダに設けられた弾性を有する基板支持爪を有し、
前記基板回転装置は、前記基板の支持を解除する側に前記基板支持爪を屈曲させることができるアームと、前記センタ孔内側の縁部を載せて前記基板を支持する支持溝が形成されたピックと、前記基板に対して進退する方向、重力方向と反重力方向、基板の回転方向、及び前記基板の搬送方向、のいずれにも前記ピックを駆動制御する駆動源とを有してなることを特徴とする基板回転装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板回転装置を備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板回転装置を用いた薄膜形成方法であって、
前記ピックを前進させて、所定位置に停止させた前記キャリアに支持された前記基板の前記センタ孔に挿入する第1の工程と、
前記ピックを反重力方向に移動させて、前記ピックの支持溝に前記センタ孔の内側の縁部を接近させる第2の工程と、
前記アームによって前記基板支持爪を屈曲させて、前記キャリアからの前記基板の支持を解除する第3の工程と、
前記基板を支持した前記ピックを回転する第4の工程と、
前記アームによる前記基板支持爪の屈曲状態を解除する第5の工程と、
前記シャフトを重力方向に移動させる第6の工程と、
前記ピックを前記基板の搬送方向に移動させる第7の工程を有することを特徴とする薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243257(P2011−243257A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115162(P2010−115162)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】