基板実装用コネクタ
【課題】基板表面への実装の際に、ハウジングの反りや捩れによりコンタクトの基板接続部の半田不良が発生しないようにした基板実装用コネクタを提供すること。
【解決手段】接点部及び接続部を有するコンタクト7と、コンタクト7が複数本内部に併設収容されるコネクタハウジング2と、コンタクト7の接点部を外部導体に押圧接触させる押圧部材9とを備える基板実装用コネクタ1において、コネクタハウジング2は、底板部2aと天井板部2fとの隙間内にコンタクト7が複数本それぞれの係止部7a1が所定の間隔をあけてコネクタハウジング2に設けた係止軸21に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が係止軸21を中心に揺動自在に装着され、接続部7c1がコネクタハウジング2の底板部2aの背面から外方へ出没自在に収容される。
【解決手段】接点部及び接続部を有するコンタクト7と、コンタクト7が複数本内部に併設収容されるコネクタハウジング2と、コンタクト7の接点部を外部導体に押圧接触させる押圧部材9とを備える基板実装用コネクタ1において、コネクタハウジング2は、底板部2aと天井板部2fとの隙間内にコンタクト7が複数本それぞれの係止部7a1が所定の間隔をあけてコネクタハウジング2に設けた係止軸21に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が係止軸21を中心に揺動自在に装着され、接続部7c1がコネクタハウジング2の底板部2aの背面から外方へ出没自在に収容される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板などの基板表面に実装する基板実装用コネクタに係り、さらに詳しくはコネクタハウジングに反りや捩れがあってもこのハウジングに装着された複数本のコンタクトを基板表面の電極に確実に接触させて良好な電気的接続ができる、いわゆるコプラナリティフリー(coplanarity free)の基板実装用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板実装用の電気コネクタには、様々なタイプのものが開発・製品化されている。これらの電気コネクタのうち、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;以下、FPCという)やフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable;以下、FFCという)などの柔軟性及び可撓性を有するフラットなフレキシブル基板を着脱自在に接続してプリント回路基板などの回路基板に実装できるようにしたものがある。なお、以下、これらのFPC及びFFCなどを総称してFPCともいうことがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1にはフレキシブル基板用コネクタが開示されている。図10を参照して、この特許文献1のフレキシブル基板用コネクタ(以下、FPC用コネクタという)を説明する。なお、図10は、この特許文献1に記載されたFPC用コネクタの縦断面図であって、図10(A)は第1コンタクト近傍における縦断面図、図10(B)は第2コンタクト近傍における縦断面図である。
【0004】
FPC用コネクタ5cnは、図10に示すように、FPC(図示せず)が挿入される凹部54が形成された略直方体形状のハウジング50と、このハウジング50の凹部54を開閉可能に覆う略矩形板状のカバーハウジング53とを備えている。ハウジング50は、内部に交互に並設配置される複数枚の第1コンタクト51及び第2コンタクト52を備えている。第1コンタクト51は、図10(A)に示すように、先端側が互いに向かい合って延びる第1アーム51a及び第2アーム51bと、第1アーム51a及び第2アーム51bの基端側同士を連結する水平脚51cとを有している。第1コンタクト51は、凹部54の反対側からハウジング50に圧入されている。第1アーム51aの先端部には、凹部54の底面から突出してFPCと弾性接触する第1接点51sが設けられている。第2アーム51bの先端部は、カバーハウジング53のカム軸53cを付勢している。
【0005】
また、第2コンタクト52は、図10(B)に示すように、先端が互いに向かい合って延びる第1アーム52a及び第2アーム52bと、第1アーム52a及び第2アーム52bの基端同士を連結する水平脚52cとを有している。第2コンタクト52は、凹部54の開口側からハウジング50に圧入されている。第1アーム52aの中間部には、凹部54の底面から突出してFPCと弾性接触する第2接点52sが設けられている。第2アーム52bの先端部は、カバーハウジング53の開閉軸53sを付勢している。
【0006】
第1コンタクト51は、その水平脚51cの先端側に形成されるリード部51dの板厚面がプリント基板P上のランドにハンダ接合され、また、第2コンタクト52は、その第1アーム52aの先端側に形成されるリード部52dの板厚面がプリント基板P上のランドにハンダ接合されている。このFPC用コネクタ5cnによれば、カバーハウジングの変形を防止或いは抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−95479号公報(段落〔0044〕〜〔0049〕、図1、図2)
【特許文献2】特開2002−329536号公報(段落〔0010〕〜〔0012〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種のFPC用コネクタ5cnは、ハウジング50の両翼が上向きに反り湾曲し、或いはハウジング50の両翼が下向きに反り湾曲することがある(図11(A)、(B)参照)。また、ハウジング50の片翼が反り部分的に湾曲し、さらに反りの他に捩れが発生することがある。
【0009】
これらの反りや捩れの原因は、その一つがハウジングを成型加工した時の残留応力に起因している。一般にハウジングはプラスチックモールド品であり部位毎の熱歪にバラツキが生じ、このバラツキが原因となっている。また、その他の原因は、複数枚の板状コンタクトをハウジングに圧入したときの歪に起因している。例えば、複数枚の板状コンタクトは、板厚にバラツキがあり、一方、板状コンタクトが圧入される溝側にもバラツキがあって、これらのバラツキが累積してハウジングが湾曲することがある。
【0010】
このような反りや捩れが生じたFPC用コネクタ5cnは、複数のリード部51dのハンダ接合面が平坦でなく、長期に亘るハンダ接合強度に信頼性を確保できないものとなる。実際の現場では、複数のリード部51dにおけるハンダ接合面の高低差が最大でも0.1mm程度であり、この程度の高低差はプリント基板上のランドのハンダ膜を厚くすることにより吸収できる。しかしながら、近年、プリント回路基板上のハンダ膜は薄膜化の傾向にあることから、複数のリード部のハンダ接合面が平坦でないFPC用コネクタ5cnに対して、リード部51dのハンダ接合強度に悪影響を与えない対策が求められている。
【0011】
したがって、この種のFPC用コネクタは、ハウジングの反りや捩れに起因するリード部のハンダ接合面における不整列がプリント基板上での実装不良を招く恐れがある。この課題に対して、これまではハウジングの成型形状や成型樹脂のグレード及び成型条件を吟味することにより対策が打たれて来ている。しかしながら、これらの対策は製品性能の一部を犠牲にすることにもなり試行錯誤の要素が強い側面もあった。そこで、この課題を解決できるように改良したコネクタが、例えば上記特許文献2で提案されている。このコネクタは、コンタクトに新たに保持アームを設け、この保持アームの先端部をハウジングに揺動自在に保持したものとなっている。このコネクタによれば、ハウジングの反りや捩れによる製作誤差が吸収されて複数のリード部のハンダ接合部が平坦に整列されるので、リード部のハンダ接合強度への影響が軽減される。しかしながら、このコネクタは、保持アームの先端を揺動の中心としハウジングを揺動可能にしているので、保持アームのスペース確保が必須となり、その結果、コネクタが背高及び大型になる。また、コンタクト及びハウジングの構造も複雑になるので、その作製が面倒になるなどの課題が内在している。
【0012】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、基板表面へ実装の際に、ハウジングの反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が発生しないようにした基板実装用コネクタを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記の目的に加え、平衡度、すなわちコプラナリティフリーにして、生産不良率を大幅に改善した基板実装用コネクタを提供することにある。
【0014】
本発明の他のまた目的は、上記の目的に加え、背低化を図った基板実装用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の基板実装用コネクタは、外部導体と電気接続される接点部及び回路基板上の電極と電気接続される接続部とを有する良導電性のコンタクトと、前記コンタクトが複数本内部に併設収容される電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着されて前記コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる電気絶縁性の押圧部材とを備えて、回路基板表面に載置固定される基板実装用コネクタにおいて、
前記コンタクトは、前記接続部から離れた箇所に前記コネクタハウジングに設けた係止軸に係止される係止部が設けられ、前記コネクタハウジングは、その背面が前記回路基板の載置面と接触される所定肉厚の底板部及び該底板部の表面と所定の隙間をあけて対向した所定肉厚の天井板部を有し、前記隙間は該隙間の一方端を前記外部導体が挿入される挿入口として且つ該挿入口近傍の前記天井板部に前記係止軸が設けられて、
前記コネクタハウジングは、前記隙間内に前記コンタクトが複数本それぞれの係止部に所定の間隔をあけて前記係止軸に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が前記係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、前記接続部が前記コネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コンタクトは、前記係止部を先端部に設けた所定長さの支持アームと前記接点部を設けた所定長さの弾性を有する接触アームとを長手方向に所定の隙間をあけて対向配置されて、該両アームの一端部を前記外部導体の差込部とし、他端部を連結部で結合して、前記連結部に前記接続部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記底板部に所定間隔をあけて前記コンタクトを遊嵌挿通させるスリットが複数本併設されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記底板部のスリットに対応する前記天井板部の箇所の一部に前記コンタクトの係止部を挿通するスリットが設けられて、前記スリット内に前記係止軸が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記押圧部材は、前記コネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーからなり、前記蓋カバーの舌状片は、前記コネクタハウジング内で前記コンタクトに接触して該コンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる大きさを有していることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記押圧部材は、前記外部導体に前記コンタクトの接点部を押圧接触させる蓋カバーからなり、前記蓋カバーは、ハウジングの挿通口の近傍に回転軸で回転自在に軸支されて、前記係止軸に前記コンタクトの係止部が係止されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記外部導体は、フレキシブル基板からなり、前記コンタクトは、良導電性の板状体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、複数本のコンタクトは、コネクタハウジング内にコンタクトのそれぞれの係止部が所定の間隔をあけてコネクタハウジングの係止軸に回動自在に係止されて、それぞれの後方部が係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、コンタクトの接続部がコネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されている。この構成により、プリント回路基板などの基板表面への実装の際に、コネクタハウジングの反りや捩れがあっても表面実装の不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良を無くすることができる。より具体的には、複数本のコンタクトを収容したコネクタハウジングに反りや捩れがあって、それぞれのコンタクトの基板接続部が不整列になっても、これらの不整列は基板表面への実装の際に、自動的に矯正されて所定の平衡度を保って確実に回路基板上の電極と電気接続させることができる。また、この基板実装用コネクタは、コンタクトの平衡度が自動的に保持され、すなわち、コプラナリティフリー(coplanarity free)になるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらにコネクタの背低化も可能になる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、コンタクトは、係止軸に係止される箇所と接続部との距離を離すことが可能となるので、接続部部分の揺動幅が大きくなり、平衡度の幅が拡大されて、基板面上の電極との電気接続が良好になる。また、係止部と接点部とを接近させることができるので、接点部の高さが安定に維持される。さらに、このコンタクトは、従来技術のように保持アームを必要としないので、構造が簡単になるとともに、このコンタクトを収容するコネクタハウジングの高さを低減でき、その結果、コネクタを背低化できる。
【0024】
また、請求項3の発明によれば、コネクタハウジングは、底板部にコンタクトを遊嵌挿通させるスリットを複数本併設するだけで、コプラナリティフリーを簡単に実現できる。また、複数本のコンタクトは、1本ずつ専用のスリットに遊嵌挿通されるので、コンタクトの位置決め固定が正確になるとともに、コネクタハウジングに安定した状態で収容できる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、コンタクトは、天井板部のスリット内の係止軸に係止するので、コンタクトの位置決め固定がより正確になるとともに、コネクタハウジングに安定した状態で収容できる。
【0026】
また、請求項5の発明によれば、押圧部材を簡単なコネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーで構成できる。また、この蓋カバーにより、コネクタハウジング内でコンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を外部導体に押圧接触させることができる。
【0027】
また、請求項6の発明によれば、蓋カバーの回転軸を利用して、コンタクトの係止部を係止させるので、コンタクトの係止部を係止させるための係止軸などが不要になり、構成が簡単になる。
【0028】
また、請求項7の発明によれば、フレキシブル基板を接続でき、また、コンタクトを簡単に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタの概観斜視図である。
【図2】図2は図1の基板実装用コネクタのコネクタハウジングを示し、図2Aは斜視図、図2Bは背面図、図2Cは下面図である。
【図3】図3は図1の基板実装用コネクタを構成する部品を示し、図3Aはコンタクトの斜視図、図3Bは固定部材の斜視図、図3Cは押圧部材の斜視図である。
【図4】図4はハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、コネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【図5】図5は図4のフローに対応した断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを構成するハウジングの断面図である。
【図7】図7は図6のコネクタハウジングに装着される部品を示し、図7Aはコンタクトの側面図、図7Bは固定部材の側面図である。
【図8】図8はハウジングへのコンタクトなどの部品組込みのフロー図である。
【図9】図9はコネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【図10】図10は従来技術のFPC用コネクタの縦断面図である。
【図11】図11は図10のFPC用コネクタの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための基板実装用コネクタを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0031】
[実施形態1]
図1〜図3を参照して、本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタを説明する。なお、図1は本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタの斜視図、図2は図1の基板実装用コネクタのコネクタハウジングを示し、図2Aは斜視図、図2Bは背面図、図2Cは下面図、図3は図1の基板実装用コネクタを構成する部品を示し、図3Aはコンタクトの斜視図、図3Bは固定部材の斜視図、図3Cは押圧部材の斜視図である。
【0032】
本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタ(以下、コネクタという)1は、図1に示すように、図示を省略したフレキシブル基板の導体と接触して電気接続される接点部及びこの接点部から後方へ延設された後端部にあって回路基板上の電極と半田接続される接続部(リード部ともいう)とを有する良導電性の複数本のコンタクト7と、前方にフレキシブル基板の先端部が挿入される挿入口を有し内部に複数本のコンタクトが併設配置される空間を有する電気絶縁性のコネクタハウジング(以下、ハウジングという)2と、このハウジング2に固定されて該ハウジング2を回路基板の表面に取付ける固定部材8(図4参照)と、ハウジング2に装着されてフレキシブル基板との結合時にコンタクト7の接点部をフレキシブル基板の導体に押圧接続する電気絶縁性の押圧部材9とを備えている。フレキシブル基板は、図示を省略したがフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;以下、FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFlexible Flat Cable;以下、FFC)などの柔軟性及び可撓性を備え所定の肉厚及び幅長を有するフラットな基板であり、また、回路基板は表面に所定の回路が配線されたプリント回路基板などとなっている。以下、これらの個々の部品を詳述する。
【0033】
ハウジング2は、図2に示すように、所定の面積を有する矩形状の底板部2aと、この底板部2aの外周囲から低い所定高さ立設した前後及び左右側壁部2b〜2eと、これらの前後及び左右側壁部の頂部にあってこれらを繋ぎ底板部2aと対向する矩形状の天井板部2fとを有し、内部に空間を有する扁平状の直方体ブロックからなり、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている。底板部2aは、中央部の所定長さが前壁2bより前方へ若干突出している。この突出部により、フレキシブル基板の載置面積が大きくなり該基板が安定状態で支持される。このハウジング2の略中央部には、前壁2bから後壁2cに向かって所定深さの空間3(図5(a)参照)が形成されている。また、天井板部2fには、左右側壁部2d、2eから中央部へ接近した箇所に、前壁2bから後壁2cへ向かって所定深さの一対の凹状溝4a、4bが形成されている。
【0034】
空間3は、直方体ブロックの略中央部にあって、この中央部の底板部2a、天井部2f及び後壁2cで囲まれ、前壁2bが開口して内部に所定大きさの空間を有したものとなっている。開口3aは、フレキシブル基板などが挿入される挿入口となっている。また、この空間3は複数本のコンタクト7が所定の等間隔(ピッチ)で併設配置される大きさの隙間を有している。この隙間は、底板部2aと天井板部2fとの間に形成されている。この空間を構成する底板部2a及び後壁2cには、底板部2aの前方の一部を残し、この部分から後方及び後壁2cに向かって等ピッチの複数本のスリット2a1、2c1が形成されている。これらのスリット2a1、2c1は、底板部2a及び後壁2cを貫通しており、その幅長はコンタクト7がスムーズに挿通、すなわち、コンタクト7がその自重で落下できる大きさ、すなわち、遊嵌挿通できる大きさになっている。この大きさにより、ハウジング2にコンタクト7を装着する際に、ハウジング2に無理な力を与えることが無くなり、ハウジング2の歪などの発生を防止できる。また、これらのスリット2a1、2c1にコンタクト7が挿通されることによって、コンタクト同士が接触することなく電気的に絶縁されると共に位置決めされる。
【0035】
天井板部2fには、前壁2bから後壁2c方向に向かって、その途中に底板部2aのスリット2a1に対応する箇所に複数本のスリット2f1が形成されている。これらのスリット2f1は、天井板部2fから空間3内へ貫通しており、その幅長はコンタクト7がスムーズに挿通できる大きさになっている。なお、これらのスリット2f1も底板部2aのスリット2a1と同じ大きさになっている。また、これらのスリット内には、長手方向と直交させて所定太さの係止突起21(図5(a)参照)が設けられている。これらの係止突起21には、コンタクト7の係止部7a1が引掛けられる。なお、この係止突起21は、所定太さの丸棒の支軸でもよい。また、この係止突起21は、特許請求の範囲で係止軸と表現されている。
【0036】
両側壁部の凹状溝4a、4bは、同じ形状となっている。これらの凹状溝4a、4bは、その溝幅が押圧部材9の係止腕部9b、9b'(図3C参照)が挿入される大きさに形成されている。各凹状溝の4a、4bは、一方の内壁面(側壁側)の前後方向に第1、第2の係止爪41、42が間に突起部40を介して形成されている。これらの凹状溝の4a、4bに、押圧部材9の一対の係止腕部9b、9b'が係止されて所定の位置で押圧部材9が位置決め固定される。押圧部材の一対の係止腕部9b、9b'の係止部9b1が第1の係止爪41に係止されると、該押圧部材9がハウジング2の挿入口3aを塞ぎコンタクト7の接点部7b1をフレキシブル基板の導体に押し付けた状態となり、また、第2の係止爪42に係止されると、該押圧部材9をハウジング2の前壁2bから若干離してフレキシブル基板が挿入できる準備状態となる(図4(a)参照)。
【0037】
左右側壁部2d、2eと凹状溝4a、4bとの間には、所定深さの逆向きの凹状溝6a、6bが形成されている。これらの凹状溝6a、6bは、底板部2aから天井板部2fへ向かって、且つ、前壁2bから後壁2cへ向かった所定深さの溝となっている。これらの凹状溝6a、6bにそれぞれ固定部材8が圧入して固定される。
【0038】
コンタクト7は、図3Aに示すように、先端に係止部7a1を設け所定長さの細片からなる支持アーム7aと、この支持アーム7aとの間に所定の隙間7gをあけて略平行に配置して先端に接点部7b1を設けた所定長さの弾性細片からなる接触アーム7bと、両アームの両他端を連結し後方へ延設した面積の大きい連結部7cとを有し、連結部7cに回路基板上の電極と半田接続される接続部7c1が設けられている。支持アーム7aの係止部7a1は、後述するハウジング2の係止突起21に引掛ける鉤状に形成されている。接触アーム7bの接点部7b1は、支持アーム7aの方向へ向けた突起からなり、この突起は支持アーム7aの先端より前方へ若干突出し、また、両アームの隙間7gはフレキシブル基板及び押圧部材9の一部を重ねて挿入できる大きさのギャップとなっている。連結部7cの接続部7c1は、この連結部7cを一部細くした首部を経て下方、すなわち接触アーム7b側へ延設されて底部が水平方向へ若干拡大したものとなっている。この接続部7c1の底部は、接触アーム7bから図3Aの状態で若干下方へ突出させるのが好ましい。この接続部7c1にはプリント回路基板の電極と半田接続される。このコンタクト7は、所定の肉厚を有する良導電性の板状体を打ち抜き加工することによって作製されている。このコンタクトは、従来技術(上記特許文献2)のように保持アームを必要としないので、小型化できてこれを収容するハウジングを小型・背低化するのが可能になる。
【0039】
固定部材8は、図4(a)に示すように、一対の固定部材を用意して、これらをハウジング2の左右側壁に装着して、コネクタ1をプリント回路基板の表面に固定する機能を有しており、補強金具或いは補強タブとも呼ばれている。図3Bは一方の固定部材を示している。なお、この図の固定部材は、上下を逆にしてあり、基板へは図3Bの状態から逆の状態にして固定される。この固定部材8は、プリント回路基板の表面に固定する底部固定部8aと、この底部固定部8aから直角に立設した側板部8bと、この側板部の一側辺から直角に所定長さ延設した差込突起部8cとを備え、所定の肉厚を有する金属板を打ち抜き折曲加工によって形成されている。差込突起部8cには、抜け止め突起81が形成されている。固定部材8は、底部固定部8aがプリント回路基板の表面に半田接続される。
【0040】
押圧部材9は、ハウジングの前壁2b面に装着されて挿入口3aを覆う蓋カバーからなり、この蓋カバーはコネクタが回路基板に実装される前にハウジング2からコンタクト7が脱落しないようにする働きと、実装された後にフレキシブル基板をコンタクト7の接点部に押圧して電気的接続を維持する働きとを有するものとなっている(以下押圧部材9を蓋カバー9ともいう)。この蓋カバー9は、図3Cに示すように、ハウジングの前壁面を覆う大きさの長方形状で所定の肉厚を有する蓋板部9aと、この蓋板部9aの背面にあって長手方向の両端から所定の間隔をあけて後方へ突出した一対の係止腕部9b、9b'と、これらの係止腕部9b、9b'の間にあって蓋板部9aの背面から所定長さ後方へ突出した舌状部(請求項では舌状片と表現されている)9cとを有し、蓋板部9aの底部(ハウジングの底板部と略同一面なる部分)に前方から背面、すなわち略中央部面にあって前壁から後壁に向かって、該下壁面を所定深さ凹ませた凹み溝91が形成されている。この凹み溝91は、フレキシブル基板を挿通する幅長及び深さを有し一対の係止腕部9b、9b'の間に設けられて、挿通穴となっている。一対の係止腕部9b、9b'は、同じ形状を有し、先端に係止部9b1が形成されている。この蓋カバー9は、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている。
【0041】
主に図4、図5を参照して、ハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、組立てたコネクタの基板への実装及び基板へ実装したコネクタへのフレキシブル基板の接続を説明する。なお、図4はハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、コネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図、図5は図4のフローに対応した断面図である。
【0042】
まず、ハウジング2に固定部材8を固定する(図4(a)参照)。次いで、ハウジング2の内部に複数本のコンタクト7を装着する。この装着は、それぞれのコンタクト7の先端部をハウジング底板部2aのそれぞれのスリット2a1に斜めに挿入して、支持アーム7aの係止部7a1を天井板部2fのスリット2f1内の係止突起21に引掛ける(図4(b)、図5(a)、(b))。この装着により、複数本のコンタクト7は、ハウジング2の底板部2aの背面から自重により下方へ垂れ下がった状態となる(図4(c)、図5(c))。
【0043】
そこで、蓋カバー9をハウジング2に装着して、複数本のコンタクト7をハウジング2内へ収納する。この収納は、ハウジング2の底板部2aの背面から垂れ下がった複数本のコンタクト7を背面側、すなわち上方へ持ち上げて、この持ち上げた状態で蓋カバー9の舌状部9cをハウジング2の挿入口3aへ差込む。この差込は、一方で、蓋カバー9の各係止腕9b、9b'をハウジングの各凹状溝4a、4bに挿入して、各係止部9b1を第1の係止爪41に係止させて、この状態を維持させる。この差し込みにより、舌状部(舌状片)9cの舌先が各コンタクト7の支持アーム7aに接触して、複数本のコンタクト7が持ち上げられた状態で保持される。これにより、複数本のコンタクト7がハウジング2の空間3内に所定の隙間をあけ、しかも各コンタクト7は、引掛けられた係止部7a1から後方にむかって天井板部2f面との間に所定の隙間G(図5(d))があいて併設配置される。この併設配置状態では、複数本のコンタクト7は、支持アーム7aの係止部7a1が係止突起21に引掛けられて、この係止部7a1から後方へ向かって揺動自在となり、最後端の接続部7c1にあっては底板部の背面へ出没自在な尾振り、すなわち、この接続部7c1が載置されるプリント回路基板P表面に対して上下動自在となる(図4(d)、(e)、図5(d))。
【0044】
コンタクト7は、係止突起21に引掛けられる係止部7a1と接続部7c1との距離が離れているので、この尾振り、すなわち回転が確実になる。また、係止突起21とコンタクト7の接点部7b1とが接近しているので、接点部の高さが安定になる。この尾振り現象は、コプラナリティフリー(coplanarity free)となる。したがって、このコネクタ1は、ハウジング2に捩れや歪みがあっても、それぞれのコンタクト7の接続部7c1が尾振り状態となっており、プリント回路基板に載置固定されたときに、各コンタクト7はこの尾振り現象を利用して回路基板の電極に確実に接触される。しかも、この尾振り現象は、ハウジングの底板部に所定大きさのスリットを形成するだけで簡単に起こさせることができる。そして、この状態でコネクタは客先へ納入される(図4(f)、図5(d))。
【0045】
このコネクタの使用メーカーでは、納入されたコネクタ1をプリント回路基板Pに実装し、実装したコネクタ1にフレキシブル基板FPCを接続する。プリント回路基板Pへの実装は、コネクタ1をプリント回路基板Pの表面に載置して、プリント回路基板Pの各電極に複数本のコンタクト7の接続部7c1を接触させる。このとき、前記したように、ハウジング2に捩れや歪みがあって、それぞれの接続部7c1が同一平面上に位置せず不揃い、すなわち不整列状態にあってもハウジング2をプリント回路基板Pに載置して押し付けることによって、各コンタクト7の接続部7c1がプリント回路基板P表面に対して上下動して、各接続部7c1が各電極に確実に接触される。これにより、コプラナリティフリーとなり、生産不良率を大幅に改善できる。この状態にして、それぞれの接続部7c1は各電極に半田接続される(図4(g)、図5(e))。
【0046】
フレキシブル基板FPCの接続は、蓋カバー9の抜差しによって行われる。プリント回路基板Pに実装されたコネクタ1にフレキシブル基板FPCを差込む前に、蓋カバー9をハウジング2から抜き一時後退させる(図4(h)、図5(f))。この一時後退は蓋カバー9を後方へ引き抜き、第1の係止爪41に係止されている各係止腕9b、9b'の各係止部9b1を第2の係止爪42に係止させて、この状態を維持させる。この蓋カバー9を後退させた状態で、この蓋カバー9の背面に接触・摺動させて、フレキシブル基板FPCの先端部をコンタクト7の隙間7gへ挿入する(図4(i)、図5(g))。次いで、蓋カバー9を再びハウジング2へ押し込む。この押し込みにより、フレキシブル基板FPCの導体がコンタクト7の接点部7b1へ強く押し付けて電気接続をするとともに、蓋カバー9の各係止部9b1が第1の係止爪41に係止される(図4(j)、図5(h))。
【0047】
この実施形態1のコネクタ1によれば、プリント回路基板表面への実装の際に、ハウジング2の反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が無くなる。また、コプラナリティフリーになるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらに、コネクタの背低化も可能になる。
【0048】
[実施形態2]
図6〜図9を参照して、本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを説明する。なお、図6は本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを構成するハウジングの断面図、図7は図6のコネクタハウジングに装着される部品を示し、図7Aはコンタクトの側面図、図7Bは固定部材の側面図、図8はハウジングへのコンタクトなどの部品組込みのフロー図、図9はコネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【0049】
実施形態2に係る基板実装用コネクタ(以下、コネクタという)1Aは実施形態1のコネクタ1と異なる構成の押圧部材を用い、この押圧部材によりハウジング及びコンタクトの一部を変更したものとなっている。以下、コネクタ1と共通する構成には、同じ符号を付して重複説明を省略し異なる構成を詳述する。
【0050】
ハウジング2Aは、図6に示すように、左右側壁2d、2e(図2A参照)を肉厚にして、この肉厚部に固定部材8Aを差込む差込溝(図示省略)が前壁2bから後壁2cに向かって形成されている。この差込溝は、後述する固定部材8Aの先端部が挿入される挿入孔22とこの挿入孔に連通し固定部材8Aの側板部8b'を差込む幅狭の凹状溝23となっている。これらの挿入孔22及び凹状溝23は図8(f)に示されている。
【0051】
また、ハウジング2Aは、前方に幅広の凹み穴3bが形成されている。この凹み穴3bは、左右側壁2d、2eを残し前壁2bから後壁2cの略中間位置までを切欠いた穴からなり、この凹み穴3b内に押圧部材9Aが開閉自在に装着される。ハウジング2Aは、その内部に空間3を有し、底板部2aは、実施形態1のハウジング2の底板部より若干短長になっており、この底板部2aに複数本のスリット2a1が等間隔に設けられている。これらのスリット2a1は、底板部2a及び後壁2cを貫通しており、その幅長はコンタクト7Aがスムーズに挿通、すなわち、コンタクト7Aの自重で落下できる大きさになっている。これらのスリット2a1にコンタクト7Aが挿通されることによって、コンタクト同士が接触することなく電気的に絶縁されると共に位置決めされる。同様に後壁2cにも、底板部2aに複数本のスリット2a1に連通したスリット2c1が設けられている。
【0052】
コンタクト7Aは、図7Aに示すように、先端に係止部7a2を設け所定長さの細片からなる支持アーム7aと、この支持アームとの間に所定の隙間7gをあけて略平行に配置して先端に接点部7b1を設けた所定長さの弾性細片からなる接触アーム7bと、両アームの両他端を連結し後方へ延設した比較的大面積の連結部7c'とを有し、連結部に回路基板上の電極と半田接続される接続部7c1が設けられている。支持アーム7aの係止部7a2は、後述する押圧部材9Aの支軸11に引掛ける鉤型となっている。この支軸11は、特許請求の範囲で係止軸と表現されている。
【0053】
固定部材8Aは、一対の固定部材からなり、これらは同じ形状となっている。この固定部材8Aは、図7Bに示すように、プリント回路基板の表面に固定する底部固定部8a'と、この底部固定部8a'から直角に立設した側板部8b'と、この側板部8b'の一側辺から直角に所定長さ延設した差込突起部8c'とを備え、所定の肉厚を有する金属板を打ち抜き折曲加工によって形成されている。この固定部材8Aは、底部固定部8a'がプリント回路基板の表面に半田接続される。
【0054】
押圧部材9Aは、図8(b)に示すように、ハウジング2Aの凹み穴3bを略覆う大きさの矩形状の回転可能な蓋カバーからなり、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている(以下、押圧部材9Aを蓋カバー9Aともいう)。なお、図8(b)の蓋カバー9Aは断面図となっているが、この蓋カバー9Aはこの図の前方及び後方へ所定長さ延びた板状体となっている。
【0055】
この蓋カバー9Aは、図8(b)の状態で、図の前後方向へ延びた下端辺10a、この下端辺の所定長さ延びた左右側辺と、これらの左右側辺端を繋ぐ上端辺10bとを有し、ハウジングの凹み穴3bを略覆う大きさの矩形状の板状体10で形成されている。なお、左右側辺は、図8(b)の前後方向の端辺となっている。この板状体10には、底板部2aの複数本のスリット2a1に対応して、下端辺10aから上端辺10bへ向かってその途中まで、複数本のスリット10a1が形成されている。下端辺10aの近傍には、左側辺から右側辺に向かって棒状体からなる支軸(回転軸)11が設けられ、この支軸11は左右側辺から外方へ若干突出していると共に、各スリット内10a1でこのスリットの長手方向と直交している。この支軸11は、ハウジング2Aの左右側壁間にあって、両端が左右側壁に装着される固定部材8Aで回転自在に固定される。この蓋カバー9Aは、コンタクト7Aがハウジング2A内へ挿入された後に、蓋カバー9Aをハウジングの凹み穴3bに挿入して支軸11にコンタクトの係止部7a2を引掛けて、この蓋カバー9Aを固定部材8Aで固定する。これにより、蓋カバー9Aは、ハウジング2Aの凹み穴3bの開口を回転自在に閉成ないし開成可能になる。
【0056】
図8、図9を参照して、ハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、組立てたコネクタの基板への実装及び基板へ実装したコネクタへのフレキシブル基板の接続を説明する。
【0057】
まず、ハウジング2Aの内部に複数本のコンタクト7Aを装着する。この装着は、まず、それぞれのコンタクト7Aの先端部をハウジング底板部2aのそれぞれのスリット2a1に斜めに挿入する(図8(a)、(b)参照)。次いで、蓋カバー9Aをハウジング2Aの凹み穴3b内へ挿入して、この蓋カバー9Aの支軸11に複数本のコンタクト7Aの係止部7a2を係止する(図8(c)、(d))。次いで、ハウジング2Aの両側壁に固定部材8Aを差込固定する((図8(e)〜(g))。これにより、蓋カバー9Aは、ハウジング2Aの凹み穴3bの開口を回転自在に閉成ないし開成可能になる。
【0058】
これにより、複数本のコンタクト7Aはハウジング2Aの空間3内に所定の隙間をあけ、しかも各コンタクト7は、支軸11に引掛けられた係止部7a2から後方にむかって天井板部2f面との間に所定の隙間G(図8(h))があいて併設配置される。この併設配置状態では、複数本のコンタクト7Aは、支持アーム7aの係止部7a2が蓋カバー9Aの支軸11に引掛けられて、この係止部7a2から後方へ向かって揺動自在となり、最後端の接続部7c1にあっては尾振り、すなわち、この接続部7c1が載置されるプリント回路基板P表面に対して上下動自在となる。したがって、このコネクタ1Aは、ハウジング2Aに捩れや歪みがあっても、それぞれのコンタクト7Aの接続部7c1が尾振り状態となっており、プリント回路基板に載置固定されたときに、各コンタクト7Aはこの尾振り現象を利用して回路基板の電極に確実に接触される。そして、この状態(図8(f)の状態)でコネクタは客先へ納入される。
【0059】
このコネクタの使用メーカーでは、納入されたコネクタ1Aをプリント回路基板Pに実装し、実装したコネクタ1にフレキシブル基板FPCを接続する。プリント回路基板Pへの実装は、コネクタ1Aをプリント回路基板Pの表面に載置して、回路基板の各電極に各コンタクト7Aの接続部7c1を接触させる。このとき、ハウジング2Aに捩れや歪みがあって、それぞれの接続部7c1が同一平面上に位置せず、不揃いの凹凸状態にあってもハウジング2Aをプリント回路基板Pに載置して押し付けることによって、各コンタクト7Aの接続部7c1がプリント回路基板P表面に対して上下動して、各接続部7c1が各電極に確実に接触される。これにより、平衡度、すなわちコプラナリティフリーになり、生産不良率を大幅に改善できる。この状態にして、それぞれの接続部7c1は各電極に半田接続される(図9(b))。フレキシブル基板FPCの接続は、まず、ハウジング2Aの凹み穴3bを塞いでいる蓋カバー9Aを反対方向、すなわち、凹み穴3bの開口を開成する方向へ支軸11を中心にして回転する(図9(c))。次いで、フレキシブル基板FPCをハウジング2Aの凹み穴3bに前壁2b側から挿入して、その先端部をコンタクト7Aの隙間7gの間に差し込む(図9(d))。その後、蓋カバー9Aを元の状態へ戻して凹み穴3bの開口を塞ぐと共に、フレキシブル基板FPCの導体にコンタクト7の接点部7b1へ強く押し付けて電気的接続をする(図9(e)、(f))。
【0060】
この実施形態2のコネクタ1Aによれば、プリント回路基板表面への実装の際に、ハウジングの反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が発生することがない。また、コプラナリティフリー(coplanarity free)になるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらにコネクタの背低化も可能になる。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 基板装着用コネクタ
2、2A コネクタハウジング
21 係止突起(係止軸)
3 空間
3a 差込口
3b 凹み穴
7、7A コンタクト
7a 支持アーム
7a1、7a2 係止部
7b 接触アーム
7b1 接点部
7c1 接続部
8、8A 固定部材
9 押圧部材(蓋カバー)
9A 押圧部材(蓋カバー)
11 支軸(係止軸)
FPC フレキシブル基板
P プリント回路基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板などの基板表面に実装する基板実装用コネクタに係り、さらに詳しくはコネクタハウジングに反りや捩れがあってもこのハウジングに装着された複数本のコンタクトを基板表面の電極に確実に接触させて良好な電気的接続ができる、いわゆるコプラナリティフリー(coplanarity free)の基板実装用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板実装用の電気コネクタには、様々なタイプのものが開発・製品化されている。これらの電気コネクタのうち、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;以下、FPCという)やフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable;以下、FFCという)などの柔軟性及び可撓性を有するフラットなフレキシブル基板を着脱自在に接続してプリント回路基板などの回路基板に実装できるようにしたものがある。なお、以下、これらのFPC及びFFCなどを総称してFPCともいうことがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1にはフレキシブル基板用コネクタが開示されている。図10を参照して、この特許文献1のフレキシブル基板用コネクタ(以下、FPC用コネクタという)を説明する。なお、図10は、この特許文献1に記載されたFPC用コネクタの縦断面図であって、図10(A)は第1コンタクト近傍における縦断面図、図10(B)は第2コンタクト近傍における縦断面図である。
【0004】
FPC用コネクタ5cnは、図10に示すように、FPC(図示せず)が挿入される凹部54が形成された略直方体形状のハウジング50と、このハウジング50の凹部54を開閉可能に覆う略矩形板状のカバーハウジング53とを備えている。ハウジング50は、内部に交互に並設配置される複数枚の第1コンタクト51及び第2コンタクト52を備えている。第1コンタクト51は、図10(A)に示すように、先端側が互いに向かい合って延びる第1アーム51a及び第2アーム51bと、第1アーム51a及び第2アーム51bの基端側同士を連結する水平脚51cとを有している。第1コンタクト51は、凹部54の反対側からハウジング50に圧入されている。第1アーム51aの先端部には、凹部54の底面から突出してFPCと弾性接触する第1接点51sが設けられている。第2アーム51bの先端部は、カバーハウジング53のカム軸53cを付勢している。
【0005】
また、第2コンタクト52は、図10(B)に示すように、先端が互いに向かい合って延びる第1アーム52a及び第2アーム52bと、第1アーム52a及び第2アーム52bの基端同士を連結する水平脚52cとを有している。第2コンタクト52は、凹部54の開口側からハウジング50に圧入されている。第1アーム52aの中間部には、凹部54の底面から突出してFPCと弾性接触する第2接点52sが設けられている。第2アーム52bの先端部は、カバーハウジング53の開閉軸53sを付勢している。
【0006】
第1コンタクト51は、その水平脚51cの先端側に形成されるリード部51dの板厚面がプリント基板P上のランドにハンダ接合され、また、第2コンタクト52は、その第1アーム52aの先端側に形成されるリード部52dの板厚面がプリント基板P上のランドにハンダ接合されている。このFPC用コネクタ5cnによれば、カバーハウジングの変形を防止或いは抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−95479号公報(段落〔0044〕〜〔0049〕、図1、図2)
【特許文献2】特開2002−329536号公報(段落〔0010〕〜〔0012〕、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種のFPC用コネクタ5cnは、ハウジング50の両翼が上向きに反り湾曲し、或いはハウジング50の両翼が下向きに反り湾曲することがある(図11(A)、(B)参照)。また、ハウジング50の片翼が反り部分的に湾曲し、さらに反りの他に捩れが発生することがある。
【0009】
これらの反りや捩れの原因は、その一つがハウジングを成型加工した時の残留応力に起因している。一般にハウジングはプラスチックモールド品であり部位毎の熱歪にバラツキが生じ、このバラツキが原因となっている。また、その他の原因は、複数枚の板状コンタクトをハウジングに圧入したときの歪に起因している。例えば、複数枚の板状コンタクトは、板厚にバラツキがあり、一方、板状コンタクトが圧入される溝側にもバラツキがあって、これらのバラツキが累積してハウジングが湾曲することがある。
【0010】
このような反りや捩れが生じたFPC用コネクタ5cnは、複数のリード部51dのハンダ接合面が平坦でなく、長期に亘るハンダ接合強度に信頼性を確保できないものとなる。実際の現場では、複数のリード部51dにおけるハンダ接合面の高低差が最大でも0.1mm程度であり、この程度の高低差はプリント基板上のランドのハンダ膜を厚くすることにより吸収できる。しかしながら、近年、プリント回路基板上のハンダ膜は薄膜化の傾向にあることから、複数のリード部のハンダ接合面が平坦でないFPC用コネクタ5cnに対して、リード部51dのハンダ接合強度に悪影響を与えない対策が求められている。
【0011】
したがって、この種のFPC用コネクタは、ハウジングの反りや捩れに起因するリード部のハンダ接合面における不整列がプリント基板上での実装不良を招く恐れがある。この課題に対して、これまではハウジングの成型形状や成型樹脂のグレード及び成型条件を吟味することにより対策が打たれて来ている。しかしながら、これらの対策は製品性能の一部を犠牲にすることにもなり試行錯誤の要素が強い側面もあった。そこで、この課題を解決できるように改良したコネクタが、例えば上記特許文献2で提案されている。このコネクタは、コンタクトに新たに保持アームを設け、この保持アームの先端部をハウジングに揺動自在に保持したものとなっている。このコネクタによれば、ハウジングの反りや捩れによる製作誤差が吸収されて複数のリード部のハンダ接合部が平坦に整列されるので、リード部のハンダ接合強度への影響が軽減される。しかしながら、このコネクタは、保持アームの先端を揺動の中心としハウジングを揺動可能にしているので、保持アームのスペース確保が必須となり、その結果、コネクタが背高及び大型になる。また、コンタクト及びハウジングの構造も複雑になるので、その作製が面倒になるなどの課題が内在している。
【0012】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、基板表面へ実装の際に、ハウジングの反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が発生しないようにした基板実装用コネクタを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記の目的に加え、平衡度、すなわちコプラナリティフリーにして、生産不良率を大幅に改善した基板実装用コネクタを提供することにある。
【0014】
本発明の他のまた目的は、上記の目的に加え、背低化を図った基板実装用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の基板実装用コネクタは、外部導体と電気接続される接点部及び回路基板上の電極と電気接続される接続部とを有する良導電性のコンタクトと、前記コンタクトが複数本内部に併設収容される電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着されて前記コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる電気絶縁性の押圧部材とを備えて、回路基板表面に載置固定される基板実装用コネクタにおいて、
前記コンタクトは、前記接続部から離れた箇所に前記コネクタハウジングに設けた係止軸に係止される係止部が設けられ、前記コネクタハウジングは、その背面が前記回路基板の載置面と接触される所定肉厚の底板部及び該底板部の表面と所定の隙間をあけて対向した所定肉厚の天井板部を有し、前記隙間は該隙間の一方端を前記外部導体が挿入される挿入口として且つ該挿入口近傍の前記天井板部に前記係止軸が設けられて、
前記コネクタハウジングは、前記隙間内に前記コンタクトが複数本それぞれの係止部に所定の間隔をあけて前記係止軸に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が前記係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、前記接続部が前記コネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コンタクトは、前記係止部を先端部に設けた所定長さの支持アームと前記接点部を設けた所定長さの弾性を有する接触アームとを長手方向に所定の隙間をあけて対向配置されて、該両アームの一端部を前記外部導体の差込部とし、他端部を連結部で結合して、前記連結部に前記接続部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記底板部に所定間隔をあけて前記コンタクトを遊嵌挿通させるスリットが複数本併設されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記底板部のスリットに対応する前記天井板部の箇所の一部に前記コンタクトの係止部を挿通するスリットが設けられて、前記スリット内に前記係止軸が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記押圧部材は、前記コネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーからなり、前記蓋カバーの舌状片は、前記コネクタハウジング内で前記コンタクトに接触して該コンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる大きさを有していることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記押圧部材は、前記外部導体に前記コンタクトの接点部を押圧接触させる蓋カバーからなり、前記蓋カバーは、ハウジングの挿通口の近傍に回転軸で回転自在に軸支されて、前記係止軸に前記コンタクトの係止部が係止されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の基板実装用コネクタにおいて、前記外部導体は、フレキシブル基板からなり、前記コンタクトは、良導電性の板状体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、複数本のコンタクトは、コネクタハウジング内にコンタクトのそれぞれの係止部が所定の間隔をあけてコネクタハウジングの係止軸に回動自在に係止されて、それぞれの後方部が係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、コンタクトの接続部がコネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されている。この構成により、プリント回路基板などの基板表面への実装の際に、コネクタハウジングの反りや捩れがあっても表面実装の不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良を無くすることができる。より具体的には、複数本のコンタクトを収容したコネクタハウジングに反りや捩れがあって、それぞれのコンタクトの基板接続部が不整列になっても、これらの不整列は基板表面への実装の際に、自動的に矯正されて所定の平衡度を保って確実に回路基板上の電極と電気接続させることができる。また、この基板実装用コネクタは、コンタクトの平衡度が自動的に保持され、すなわち、コプラナリティフリー(coplanarity free)になるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらにコネクタの背低化も可能になる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、コンタクトは、係止軸に係止される箇所と接続部との距離を離すことが可能となるので、接続部部分の揺動幅が大きくなり、平衡度の幅が拡大されて、基板面上の電極との電気接続が良好になる。また、係止部と接点部とを接近させることができるので、接点部の高さが安定に維持される。さらに、このコンタクトは、従来技術のように保持アームを必要としないので、構造が簡単になるとともに、このコンタクトを収容するコネクタハウジングの高さを低減でき、その結果、コネクタを背低化できる。
【0024】
また、請求項3の発明によれば、コネクタハウジングは、底板部にコンタクトを遊嵌挿通させるスリットを複数本併設するだけで、コプラナリティフリーを簡単に実現できる。また、複数本のコンタクトは、1本ずつ専用のスリットに遊嵌挿通されるので、コンタクトの位置決め固定が正確になるとともに、コネクタハウジングに安定した状態で収容できる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、コンタクトは、天井板部のスリット内の係止軸に係止するので、コンタクトの位置決め固定がより正確になるとともに、コネクタハウジングに安定した状態で収容できる。
【0026】
また、請求項5の発明によれば、押圧部材を簡単なコネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーで構成できる。また、この蓋カバーにより、コネクタハウジング内でコンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を外部導体に押圧接触させることができる。
【0027】
また、請求項6の発明によれば、蓋カバーの回転軸を利用して、コンタクトの係止部を係止させるので、コンタクトの係止部を係止させるための係止軸などが不要になり、構成が簡単になる。
【0028】
また、請求項7の発明によれば、フレキシブル基板を接続でき、また、コンタクトを簡単に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタの概観斜視図である。
【図2】図2は図1の基板実装用コネクタのコネクタハウジングを示し、図2Aは斜視図、図2Bは背面図、図2Cは下面図である。
【図3】図3は図1の基板実装用コネクタを構成する部品を示し、図3Aはコンタクトの斜視図、図3Bは固定部材の斜視図、図3Cは押圧部材の斜視図である。
【図4】図4はハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、コネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【図5】図5は図4のフローに対応した断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを構成するハウジングの断面図である。
【図7】図7は図6のコネクタハウジングに装着される部品を示し、図7Aはコンタクトの側面図、図7Bは固定部材の側面図である。
【図8】図8はハウジングへのコンタクトなどの部品組込みのフロー図である。
【図9】図9はコネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【図10】図10は従来技術のFPC用コネクタの縦断面図である。
【図11】図11は図10のFPC用コネクタの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための基板実装用コネクタを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0031】
[実施形態1]
図1〜図3を参照して、本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタを説明する。なお、図1は本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタの斜視図、図2は図1の基板実装用コネクタのコネクタハウジングを示し、図2Aは斜視図、図2Bは背面図、図2Cは下面図、図3は図1の基板実装用コネクタを構成する部品を示し、図3Aはコンタクトの斜視図、図3Bは固定部材の斜視図、図3Cは押圧部材の斜視図である。
【0032】
本発明の実施形態1に係る基板実装用コネクタ(以下、コネクタという)1は、図1に示すように、図示を省略したフレキシブル基板の導体と接触して電気接続される接点部及びこの接点部から後方へ延設された後端部にあって回路基板上の電極と半田接続される接続部(リード部ともいう)とを有する良導電性の複数本のコンタクト7と、前方にフレキシブル基板の先端部が挿入される挿入口を有し内部に複数本のコンタクトが併設配置される空間を有する電気絶縁性のコネクタハウジング(以下、ハウジングという)2と、このハウジング2に固定されて該ハウジング2を回路基板の表面に取付ける固定部材8(図4参照)と、ハウジング2に装着されてフレキシブル基板との結合時にコンタクト7の接点部をフレキシブル基板の導体に押圧接続する電気絶縁性の押圧部材9とを備えている。フレキシブル基板は、図示を省略したがフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit;以下、FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFlexible Flat Cable;以下、FFC)などの柔軟性及び可撓性を備え所定の肉厚及び幅長を有するフラットな基板であり、また、回路基板は表面に所定の回路が配線されたプリント回路基板などとなっている。以下、これらの個々の部品を詳述する。
【0033】
ハウジング2は、図2に示すように、所定の面積を有する矩形状の底板部2aと、この底板部2aの外周囲から低い所定高さ立設した前後及び左右側壁部2b〜2eと、これらの前後及び左右側壁部の頂部にあってこれらを繋ぎ底板部2aと対向する矩形状の天井板部2fとを有し、内部に空間を有する扁平状の直方体ブロックからなり、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている。底板部2aは、中央部の所定長さが前壁2bより前方へ若干突出している。この突出部により、フレキシブル基板の載置面積が大きくなり該基板が安定状態で支持される。このハウジング2の略中央部には、前壁2bから後壁2cに向かって所定深さの空間3(図5(a)参照)が形成されている。また、天井板部2fには、左右側壁部2d、2eから中央部へ接近した箇所に、前壁2bから後壁2cへ向かって所定深さの一対の凹状溝4a、4bが形成されている。
【0034】
空間3は、直方体ブロックの略中央部にあって、この中央部の底板部2a、天井部2f及び後壁2cで囲まれ、前壁2bが開口して内部に所定大きさの空間を有したものとなっている。開口3aは、フレキシブル基板などが挿入される挿入口となっている。また、この空間3は複数本のコンタクト7が所定の等間隔(ピッチ)で併設配置される大きさの隙間を有している。この隙間は、底板部2aと天井板部2fとの間に形成されている。この空間を構成する底板部2a及び後壁2cには、底板部2aの前方の一部を残し、この部分から後方及び後壁2cに向かって等ピッチの複数本のスリット2a1、2c1が形成されている。これらのスリット2a1、2c1は、底板部2a及び後壁2cを貫通しており、その幅長はコンタクト7がスムーズに挿通、すなわち、コンタクト7がその自重で落下できる大きさ、すなわち、遊嵌挿通できる大きさになっている。この大きさにより、ハウジング2にコンタクト7を装着する際に、ハウジング2に無理な力を与えることが無くなり、ハウジング2の歪などの発生を防止できる。また、これらのスリット2a1、2c1にコンタクト7が挿通されることによって、コンタクト同士が接触することなく電気的に絶縁されると共に位置決めされる。
【0035】
天井板部2fには、前壁2bから後壁2c方向に向かって、その途中に底板部2aのスリット2a1に対応する箇所に複数本のスリット2f1が形成されている。これらのスリット2f1は、天井板部2fから空間3内へ貫通しており、その幅長はコンタクト7がスムーズに挿通できる大きさになっている。なお、これらのスリット2f1も底板部2aのスリット2a1と同じ大きさになっている。また、これらのスリット内には、長手方向と直交させて所定太さの係止突起21(図5(a)参照)が設けられている。これらの係止突起21には、コンタクト7の係止部7a1が引掛けられる。なお、この係止突起21は、所定太さの丸棒の支軸でもよい。また、この係止突起21は、特許請求の範囲で係止軸と表現されている。
【0036】
両側壁部の凹状溝4a、4bは、同じ形状となっている。これらの凹状溝4a、4bは、その溝幅が押圧部材9の係止腕部9b、9b'(図3C参照)が挿入される大きさに形成されている。各凹状溝の4a、4bは、一方の内壁面(側壁側)の前後方向に第1、第2の係止爪41、42が間に突起部40を介して形成されている。これらの凹状溝の4a、4bに、押圧部材9の一対の係止腕部9b、9b'が係止されて所定の位置で押圧部材9が位置決め固定される。押圧部材の一対の係止腕部9b、9b'の係止部9b1が第1の係止爪41に係止されると、該押圧部材9がハウジング2の挿入口3aを塞ぎコンタクト7の接点部7b1をフレキシブル基板の導体に押し付けた状態となり、また、第2の係止爪42に係止されると、該押圧部材9をハウジング2の前壁2bから若干離してフレキシブル基板が挿入できる準備状態となる(図4(a)参照)。
【0037】
左右側壁部2d、2eと凹状溝4a、4bとの間には、所定深さの逆向きの凹状溝6a、6bが形成されている。これらの凹状溝6a、6bは、底板部2aから天井板部2fへ向かって、且つ、前壁2bから後壁2cへ向かった所定深さの溝となっている。これらの凹状溝6a、6bにそれぞれ固定部材8が圧入して固定される。
【0038】
コンタクト7は、図3Aに示すように、先端に係止部7a1を設け所定長さの細片からなる支持アーム7aと、この支持アーム7aとの間に所定の隙間7gをあけて略平行に配置して先端に接点部7b1を設けた所定長さの弾性細片からなる接触アーム7bと、両アームの両他端を連結し後方へ延設した面積の大きい連結部7cとを有し、連結部7cに回路基板上の電極と半田接続される接続部7c1が設けられている。支持アーム7aの係止部7a1は、後述するハウジング2の係止突起21に引掛ける鉤状に形成されている。接触アーム7bの接点部7b1は、支持アーム7aの方向へ向けた突起からなり、この突起は支持アーム7aの先端より前方へ若干突出し、また、両アームの隙間7gはフレキシブル基板及び押圧部材9の一部を重ねて挿入できる大きさのギャップとなっている。連結部7cの接続部7c1は、この連結部7cを一部細くした首部を経て下方、すなわち接触アーム7b側へ延設されて底部が水平方向へ若干拡大したものとなっている。この接続部7c1の底部は、接触アーム7bから図3Aの状態で若干下方へ突出させるのが好ましい。この接続部7c1にはプリント回路基板の電極と半田接続される。このコンタクト7は、所定の肉厚を有する良導電性の板状体を打ち抜き加工することによって作製されている。このコンタクトは、従来技術(上記特許文献2)のように保持アームを必要としないので、小型化できてこれを収容するハウジングを小型・背低化するのが可能になる。
【0039】
固定部材8は、図4(a)に示すように、一対の固定部材を用意して、これらをハウジング2の左右側壁に装着して、コネクタ1をプリント回路基板の表面に固定する機能を有しており、補強金具或いは補強タブとも呼ばれている。図3Bは一方の固定部材を示している。なお、この図の固定部材は、上下を逆にしてあり、基板へは図3Bの状態から逆の状態にして固定される。この固定部材8は、プリント回路基板の表面に固定する底部固定部8aと、この底部固定部8aから直角に立設した側板部8bと、この側板部の一側辺から直角に所定長さ延設した差込突起部8cとを備え、所定の肉厚を有する金属板を打ち抜き折曲加工によって形成されている。差込突起部8cには、抜け止め突起81が形成されている。固定部材8は、底部固定部8aがプリント回路基板の表面に半田接続される。
【0040】
押圧部材9は、ハウジングの前壁2b面に装着されて挿入口3aを覆う蓋カバーからなり、この蓋カバーはコネクタが回路基板に実装される前にハウジング2からコンタクト7が脱落しないようにする働きと、実装された後にフレキシブル基板をコンタクト7の接点部に押圧して電気的接続を維持する働きとを有するものとなっている(以下押圧部材9を蓋カバー9ともいう)。この蓋カバー9は、図3Cに示すように、ハウジングの前壁面を覆う大きさの長方形状で所定の肉厚を有する蓋板部9aと、この蓋板部9aの背面にあって長手方向の両端から所定の間隔をあけて後方へ突出した一対の係止腕部9b、9b'と、これらの係止腕部9b、9b'の間にあって蓋板部9aの背面から所定長さ後方へ突出した舌状部(請求項では舌状片と表現されている)9cとを有し、蓋板部9aの底部(ハウジングの底板部と略同一面なる部分)に前方から背面、すなわち略中央部面にあって前壁から後壁に向かって、該下壁面を所定深さ凹ませた凹み溝91が形成されている。この凹み溝91は、フレキシブル基板を挿通する幅長及び深さを有し一対の係止腕部9b、9b'の間に設けられて、挿通穴となっている。一対の係止腕部9b、9b'は、同じ形状を有し、先端に係止部9b1が形成されている。この蓋カバー9は、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている。
【0041】
主に図4、図5を参照して、ハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、組立てたコネクタの基板への実装及び基板へ実装したコネクタへのフレキシブル基板の接続を説明する。なお、図4はハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、コネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図、図5は図4のフローに対応した断面図である。
【0042】
まず、ハウジング2に固定部材8を固定する(図4(a)参照)。次いで、ハウジング2の内部に複数本のコンタクト7を装着する。この装着は、それぞれのコンタクト7の先端部をハウジング底板部2aのそれぞれのスリット2a1に斜めに挿入して、支持アーム7aの係止部7a1を天井板部2fのスリット2f1内の係止突起21に引掛ける(図4(b)、図5(a)、(b))。この装着により、複数本のコンタクト7は、ハウジング2の底板部2aの背面から自重により下方へ垂れ下がった状態となる(図4(c)、図5(c))。
【0043】
そこで、蓋カバー9をハウジング2に装着して、複数本のコンタクト7をハウジング2内へ収納する。この収納は、ハウジング2の底板部2aの背面から垂れ下がった複数本のコンタクト7を背面側、すなわち上方へ持ち上げて、この持ち上げた状態で蓋カバー9の舌状部9cをハウジング2の挿入口3aへ差込む。この差込は、一方で、蓋カバー9の各係止腕9b、9b'をハウジングの各凹状溝4a、4bに挿入して、各係止部9b1を第1の係止爪41に係止させて、この状態を維持させる。この差し込みにより、舌状部(舌状片)9cの舌先が各コンタクト7の支持アーム7aに接触して、複数本のコンタクト7が持ち上げられた状態で保持される。これにより、複数本のコンタクト7がハウジング2の空間3内に所定の隙間をあけ、しかも各コンタクト7は、引掛けられた係止部7a1から後方にむかって天井板部2f面との間に所定の隙間G(図5(d))があいて併設配置される。この併設配置状態では、複数本のコンタクト7は、支持アーム7aの係止部7a1が係止突起21に引掛けられて、この係止部7a1から後方へ向かって揺動自在となり、最後端の接続部7c1にあっては底板部の背面へ出没自在な尾振り、すなわち、この接続部7c1が載置されるプリント回路基板P表面に対して上下動自在となる(図4(d)、(e)、図5(d))。
【0044】
コンタクト7は、係止突起21に引掛けられる係止部7a1と接続部7c1との距離が離れているので、この尾振り、すなわち回転が確実になる。また、係止突起21とコンタクト7の接点部7b1とが接近しているので、接点部の高さが安定になる。この尾振り現象は、コプラナリティフリー(coplanarity free)となる。したがって、このコネクタ1は、ハウジング2に捩れや歪みがあっても、それぞれのコンタクト7の接続部7c1が尾振り状態となっており、プリント回路基板に載置固定されたときに、各コンタクト7はこの尾振り現象を利用して回路基板の電極に確実に接触される。しかも、この尾振り現象は、ハウジングの底板部に所定大きさのスリットを形成するだけで簡単に起こさせることができる。そして、この状態でコネクタは客先へ納入される(図4(f)、図5(d))。
【0045】
このコネクタの使用メーカーでは、納入されたコネクタ1をプリント回路基板Pに実装し、実装したコネクタ1にフレキシブル基板FPCを接続する。プリント回路基板Pへの実装は、コネクタ1をプリント回路基板Pの表面に載置して、プリント回路基板Pの各電極に複数本のコンタクト7の接続部7c1を接触させる。このとき、前記したように、ハウジング2に捩れや歪みがあって、それぞれの接続部7c1が同一平面上に位置せず不揃い、すなわち不整列状態にあってもハウジング2をプリント回路基板Pに載置して押し付けることによって、各コンタクト7の接続部7c1がプリント回路基板P表面に対して上下動して、各接続部7c1が各電極に確実に接触される。これにより、コプラナリティフリーとなり、生産不良率を大幅に改善できる。この状態にして、それぞれの接続部7c1は各電極に半田接続される(図4(g)、図5(e))。
【0046】
フレキシブル基板FPCの接続は、蓋カバー9の抜差しによって行われる。プリント回路基板Pに実装されたコネクタ1にフレキシブル基板FPCを差込む前に、蓋カバー9をハウジング2から抜き一時後退させる(図4(h)、図5(f))。この一時後退は蓋カバー9を後方へ引き抜き、第1の係止爪41に係止されている各係止腕9b、9b'の各係止部9b1を第2の係止爪42に係止させて、この状態を維持させる。この蓋カバー9を後退させた状態で、この蓋カバー9の背面に接触・摺動させて、フレキシブル基板FPCの先端部をコンタクト7の隙間7gへ挿入する(図4(i)、図5(g))。次いで、蓋カバー9を再びハウジング2へ押し込む。この押し込みにより、フレキシブル基板FPCの導体がコンタクト7の接点部7b1へ強く押し付けて電気接続をするとともに、蓋カバー9の各係止部9b1が第1の係止爪41に係止される(図4(j)、図5(h))。
【0047】
この実施形態1のコネクタ1によれば、プリント回路基板表面への実装の際に、ハウジング2の反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が無くなる。また、コプラナリティフリーになるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらに、コネクタの背低化も可能になる。
【0048】
[実施形態2]
図6〜図9を参照して、本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを説明する。なお、図6は本発明の実施形態2に係る基板実装用コネクタを構成するハウジングの断面図、図7は図6のコネクタハウジングに装着される部品を示し、図7Aはコンタクトの側面図、図7Bは固定部材の側面図、図8はハウジングへのコンタクトなどの部品組込みのフロー図、図9はコネクタの基板への実装及びコネクタへのフレキシブル基板の接続のフロー図である。
【0049】
実施形態2に係る基板実装用コネクタ(以下、コネクタという)1Aは実施形態1のコネクタ1と異なる構成の押圧部材を用い、この押圧部材によりハウジング及びコンタクトの一部を変更したものとなっている。以下、コネクタ1と共通する構成には、同じ符号を付して重複説明を省略し異なる構成を詳述する。
【0050】
ハウジング2Aは、図6に示すように、左右側壁2d、2e(図2A参照)を肉厚にして、この肉厚部に固定部材8Aを差込む差込溝(図示省略)が前壁2bから後壁2cに向かって形成されている。この差込溝は、後述する固定部材8Aの先端部が挿入される挿入孔22とこの挿入孔に連通し固定部材8Aの側板部8b'を差込む幅狭の凹状溝23となっている。これらの挿入孔22及び凹状溝23は図8(f)に示されている。
【0051】
また、ハウジング2Aは、前方に幅広の凹み穴3bが形成されている。この凹み穴3bは、左右側壁2d、2eを残し前壁2bから後壁2cの略中間位置までを切欠いた穴からなり、この凹み穴3b内に押圧部材9Aが開閉自在に装着される。ハウジング2Aは、その内部に空間3を有し、底板部2aは、実施形態1のハウジング2の底板部より若干短長になっており、この底板部2aに複数本のスリット2a1が等間隔に設けられている。これらのスリット2a1は、底板部2a及び後壁2cを貫通しており、その幅長はコンタクト7Aがスムーズに挿通、すなわち、コンタクト7Aの自重で落下できる大きさになっている。これらのスリット2a1にコンタクト7Aが挿通されることによって、コンタクト同士が接触することなく電気的に絶縁されると共に位置決めされる。同様に後壁2cにも、底板部2aに複数本のスリット2a1に連通したスリット2c1が設けられている。
【0052】
コンタクト7Aは、図7Aに示すように、先端に係止部7a2を設け所定長さの細片からなる支持アーム7aと、この支持アームとの間に所定の隙間7gをあけて略平行に配置して先端に接点部7b1を設けた所定長さの弾性細片からなる接触アーム7bと、両アームの両他端を連結し後方へ延設した比較的大面積の連結部7c'とを有し、連結部に回路基板上の電極と半田接続される接続部7c1が設けられている。支持アーム7aの係止部7a2は、後述する押圧部材9Aの支軸11に引掛ける鉤型となっている。この支軸11は、特許請求の範囲で係止軸と表現されている。
【0053】
固定部材8Aは、一対の固定部材からなり、これらは同じ形状となっている。この固定部材8Aは、図7Bに示すように、プリント回路基板の表面に固定する底部固定部8a'と、この底部固定部8a'から直角に立設した側板部8b'と、この側板部8b'の一側辺から直角に所定長さ延設した差込突起部8c'とを備え、所定の肉厚を有する金属板を打ち抜き折曲加工によって形成されている。この固定部材8Aは、底部固定部8a'がプリント回路基板の表面に半田接続される。
【0054】
押圧部材9Aは、図8(b)に示すように、ハウジング2Aの凹み穴3bを略覆う大きさの矩形状の回転可能な蓋カバーからなり、電気絶縁性の合成樹脂成型体で形成されている(以下、押圧部材9Aを蓋カバー9Aともいう)。なお、図8(b)の蓋カバー9Aは断面図となっているが、この蓋カバー9Aはこの図の前方及び後方へ所定長さ延びた板状体となっている。
【0055】
この蓋カバー9Aは、図8(b)の状態で、図の前後方向へ延びた下端辺10a、この下端辺の所定長さ延びた左右側辺と、これらの左右側辺端を繋ぐ上端辺10bとを有し、ハウジングの凹み穴3bを略覆う大きさの矩形状の板状体10で形成されている。なお、左右側辺は、図8(b)の前後方向の端辺となっている。この板状体10には、底板部2aの複数本のスリット2a1に対応して、下端辺10aから上端辺10bへ向かってその途中まで、複数本のスリット10a1が形成されている。下端辺10aの近傍には、左側辺から右側辺に向かって棒状体からなる支軸(回転軸)11が設けられ、この支軸11は左右側辺から外方へ若干突出していると共に、各スリット内10a1でこのスリットの長手方向と直交している。この支軸11は、ハウジング2Aの左右側壁間にあって、両端が左右側壁に装着される固定部材8Aで回転自在に固定される。この蓋カバー9Aは、コンタクト7Aがハウジング2A内へ挿入された後に、蓋カバー9Aをハウジングの凹み穴3bに挿入して支軸11にコンタクトの係止部7a2を引掛けて、この蓋カバー9Aを固定部材8Aで固定する。これにより、蓋カバー9Aは、ハウジング2Aの凹み穴3bの開口を回転自在に閉成ないし開成可能になる。
【0056】
図8、図9を参照して、ハウジングへのコンタクトなどの部品組込み、組立てたコネクタの基板への実装及び基板へ実装したコネクタへのフレキシブル基板の接続を説明する。
【0057】
まず、ハウジング2Aの内部に複数本のコンタクト7Aを装着する。この装着は、まず、それぞれのコンタクト7Aの先端部をハウジング底板部2aのそれぞれのスリット2a1に斜めに挿入する(図8(a)、(b)参照)。次いで、蓋カバー9Aをハウジング2Aの凹み穴3b内へ挿入して、この蓋カバー9Aの支軸11に複数本のコンタクト7Aの係止部7a2を係止する(図8(c)、(d))。次いで、ハウジング2Aの両側壁に固定部材8Aを差込固定する((図8(e)〜(g))。これにより、蓋カバー9Aは、ハウジング2Aの凹み穴3bの開口を回転自在に閉成ないし開成可能になる。
【0058】
これにより、複数本のコンタクト7Aはハウジング2Aの空間3内に所定の隙間をあけ、しかも各コンタクト7は、支軸11に引掛けられた係止部7a2から後方にむかって天井板部2f面との間に所定の隙間G(図8(h))があいて併設配置される。この併設配置状態では、複数本のコンタクト7Aは、支持アーム7aの係止部7a2が蓋カバー9Aの支軸11に引掛けられて、この係止部7a2から後方へ向かって揺動自在となり、最後端の接続部7c1にあっては尾振り、すなわち、この接続部7c1が載置されるプリント回路基板P表面に対して上下動自在となる。したがって、このコネクタ1Aは、ハウジング2Aに捩れや歪みがあっても、それぞれのコンタクト7Aの接続部7c1が尾振り状態となっており、プリント回路基板に載置固定されたときに、各コンタクト7Aはこの尾振り現象を利用して回路基板の電極に確実に接触される。そして、この状態(図8(f)の状態)でコネクタは客先へ納入される。
【0059】
このコネクタの使用メーカーでは、納入されたコネクタ1Aをプリント回路基板Pに実装し、実装したコネクタ1にフレキシブル基板FPCを接続する。プリント回路基板Pへの実装は、コネクタ1Aをプリント回路基板Pの表面に載置して、回路基板の各電極に各コンタクト7Aの接続部7c1を接触させる。このとき、ハウジング2Aに捩れや歪みがあって、それぞれの接続部7c1が同一平面上に位置せず、不揃いの凹凸状態にあってもハウジング2Aをプリント回路基板Pに載置して押し付けることによって、各コンタクト7Aの接続部7c1がプリント回路基板P表面に対して上下動して、各接続部7c1が各電極に確実に接触される。これにより、平衡度、すなわちコプラナリティフリーになり、生産不良率を大幅に改善できる。この状態にして、それぞれの接続部7c1は各電極に半田接続される(図9(b))。フレキシブル基板FPCの接続は、まず、ハウジング2Aの凹み穴3bを塞いでいる蓋カバー9Aを反対方向、すなわち、凹み穴3bの開口を開成する方向へ支軸11を中心にして回転する(図9(c))。次いで、フレキシブル基板FPCをハウジング2Aの凹み穴3bに前壁2b側から挿入して、その先端部をコンタクト7Aの隙間7gの間に差し込む(図9(d))。その後、蓋カバー9Aを元の状態へ戻して凹み穴3bの開口を塞ぐと共に、フレキシブル基板FPCの導体にコンタクト7の接点部7b1へ強く押し付けて電気的接続をする(図9(e)、(f))。
【0060】
この実施形態2のコネクタ1Aによれば、プリント回路基板表面への実装の際に、ハウジングの反りや捩れにより表面実装不良、すなわち、コンタクトの基板接続部の半田不良が発生することがない。また、コプラナリティフリー(coplanarity free)になるので、生産不良率を大幅に改善できる。さらにコネクタの背低化も可能になる。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 基板装着用コネクタ
2、2A コネクタハウジング
21 係止突起(係止軸)
3 空間
3a 差込口
3b 凹み穴
7、7A コンタクト
7a 支持アーム
7a1、7a2 係止部
7b 接触アーム
7b1 接点部
7c1 接続部
8、8A 固定部材
9 押圧部材(蓋カバー)
9A 押圧部材(蓋カバー)
11 支軸(係止軸)
FPC フレキシブル基板
P プリント回路基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部導体と電気接続される接点部及び回路基板上の電極と電気接続される接続部とを有する良導電性のコンタクトと、前記コンタクトが複数本内部に併設収容される電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着されて前記コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる電気絶縁性の押圧部材とを備えて、回路基板表面に載置固定される基板実装用コネクタにおいて、
前記コンタクトは、前記接続部から離れた箇所に前記コネクタハウジングに設けた係止軸に係止される係止部が設けられ、前記コネクタハウジングは、その背面が前記回路基板の載置面と接触される所定肉厚の底板部及び該底板部の表面と所定の隙間をあけて対向した所定肉厚の天井板部を有し、前記隙間は該隙間の一方端を前記外部導体が挿入される挿入口として且つ該挿入口近傍の前記天井板部に前記係止軸が設けられて、
前記コネクタハウジングは、前記隙間内に前記コンタクトが複数本それぞれの係止部に所定の間隔をあけて前記係止軸に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が前記係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、前記接続部が前記コネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されていることを特徴とする基板実装用コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトは、前記係止部を先端部に設けた所定長さの支持アームと前記接点部を設けた所定長さの弾性を有する接触アームとを長手方向に所定の隙間をあけて対向配置されて、該両アームの一端部を前記外部導体の差込部とし、他端部を連結部で結合して、前記連結部に前記接続部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、前記底板部に所定間隔をあけて前記コンタクトを遊嵌挿通させるスリットが複数本併設されていることを特徴とする請求項1に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングは、前記底板部のスリットに対応する前記天井板部の箇所の一部に前記コンタクトの係止部を挿通するスリットが設けられて、前記スリット内に前記係止軸が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記コネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーからなり、前記蓋カバーの舌状片は、前記コネクタハウジング内で前記コンタクトに接触して該コンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる大きさを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記外部導体に前記コンタクトの接点部を押圧接触させる蓋カバーからなり、前記蓋カバーは、ハウジングの挿通口の近傍に回転軸で回転自在に軸支されて、
前記係止軸に前記コンタクトの係止部が係止されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項7】
前記外部導体は、フレキシブル基板からなり、前記コンタクトは、良導電性の板状体で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項1】
外部導体と電気接続される接点部及び回路基板上の電極と電気接続される接続部とを有する良導電性のコンタクトと、前記コンタクトが複数本内部に併設収容される電気絶縁性のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着されて前記コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる電気絶縁性の押圧部材とを備えて、回路基板表面に載置固定される基板実装用コネクタにおいて、
前記コンタクトは、前記接続部から離れた箇所に前記コネクタハウジングに設けた係止軸に係止される係止部が設けられ、前記コネクタハウジングは、その背面が前記回路基板の載置面と接触される所定肉厚の底板部及び該底板部の表面と所定の隙間をあけて対向した所定肉厚の天井板部を有し、前記隙間は該隙間の一方端を前記外部導体が挿入される挿入口として且つ該挿入口近傍の前記天井板部に前記係止軸が設けられて、
前記コネクタハウジングは、前記隙間内に前記コンタクトが複数本それぞれの係止部に所定の間隔をあけて前記係止軸に回動自在に係止されてそれぞれの後方部が前記係止軸を中心に揺動自在に装着されるとともに、前記接続部が前記コネクタハウジングの底板部の背面から外方へ出没自在に収容されていることを特徴とする基板実装用コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトは、前記係止部を先端部に設けた所定長さの支持アームと前記接点部を設けた所定長さの弾性を有する接触アームとを長手方向に所定の隙間をあけて対向配置されて、該両アームの一端部を前記外部導体の差込部とし、他端部を連結部で結合して、前記連結部に前記接続部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、前記底板部に所定間隔をあけて前記コンタクトを遊嵌挿通させるスリットが複数本併設されていることを特徴とする請求項1に記載の基板実装用コネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングは、前記底板部のスリットに対応する前記天井板部の箇所の一部に前記コンタクトの係止部を挿通するスリットが設けられて、前記スリット内に前記係止軸が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記コネクタハウジングの挿入口内への抜差し自在な舌状片を有する蓋カバーからなり、前記蓋カバーの舌状片は、前記コネクタハウジング内で前記コンタクトに接触して該コンタクトを所定位置に保持すると共に、コンタクトの接点部を前記外部導体に押圧接触させる大きさを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記外部導体に前記コンタクトの接点部を押圧接触させる蓋カバーからなり、前記蓋カバーは、ハウジングの挿通口の近傍に回転軸で回転自在に軸支されて、
前記係止軸に前記コンタクトの係止部が係止されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【請求項7】
前記外部導体は、フレキシブル基板からなり、前記コンタクトは、良導電性の板状体で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板実装用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−134561(P2011−134561A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292621(P2009−292621)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
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