説明

基板搬送ロボット

【課題】大重量の基板を高い信頼性で搬送できる基板搬送ロボットを提供する。
【解決手段】本ロボットは、それぞれが基板を保持する第1及び第2基板保持部11,12を有し、さらに、第1及び第2基板保持部11,12が装着された第1及び第2アーム機構13,14を備える。第1アーム機構13は、主旋回軸を含む平面に関して互いに対称に配置された一対の第1アーム19を有し、第1アーム19のそれぞれが、その中間部にて内向きに折曲可能に構成されている。第2アーム機構14は、主旋回軸を含む平面に関して互いに対称に配置された一対の第2アーム20を有し、第2アーム10のそれぞれが、その中間部にて外向きに折曲可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ガラス基板等の基板を搬送するための基板搬送ロボットに係り、特に真空環境下での使用に適した基板搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エッチング装置や化学蒸着装置(CVD装置)のような基板処理装置に対して、処理すべき基板を搬入し、処理済みの基板を搬出するために、各種の基板搬送ロボットが用いられている。
【0003】
そして、基板搬送時における基板の化学反応や汚損を確実に防止するために、基板搬送ロボット自体を真空室に設置して、基板の搬送を真空環境下で行うようにすることもある。搬送空間を真空環境にすることにより、酸素、窒素、二酸化炭素等が存在しない状況となり、これにより搬送時の基板の化学反応や汚損を確実に防止できる。
【0004】
真空室に設置される基板搬送ロボットは、真空環境に対して悪影響(例えば、エアー漏れ、ケミカルコンタミネーションの発生等)を与えてはならない。このため、真空環境での使用に適した部品でロボットを構成し、また、エアー漏れを防ぐために磁性流体シール等を使用している。
【0005】
近年、液晶ガラス基板は益々大型化・重量化しており、これに応じて基板搬送ロボットも大型化しているが、これに関連して色々な問題が生じている。特に、大型のロボットを真空環境下で使用することに伴う問題がある。
【0006】
例えば、従来のロボットの中には、1枚の基板を1本のアームで支える構造を備えたものがあるが、このようなロボットにおいては基板搬送時に左右方向への揺れが発生しやすい。特に、基板の重量化に伴って左右の揺れが発生しやすくなっているので、ロボットの運転信頼性を十分に確保することが益々難しくなってきている。
【0007】
また、真空用の部品は、大気環境で使用する通常の部品に比べて、そのサイズの大型化に伴って値段が格段に上昇する。従来の基板搬送ロボットにおいては、ロボットの大型化に伴ってその構成部品も同じように大型化してしまい、これによって真空用部品のコストが大幅に増大してしまう。
【0008】
また、従来の基板搬送ロボットの中には、真空中で駆動できるリニアガイドやその他の機構を多用することで、真空環境での使用を可能としているものがある。この種のロボットにおいては、リニアガイド等の駆動スピードを上げるために稼働期間中にわたって潤滑剤を適切に維持する必要があるが、真空下では潤滑剤が枯渇しやすく、運転の信頼性を確保することが難しい。
【0009】
また、従来の基板搬送ロボットの中には、1本のロボット主軸(Z軸)の周りに金属製(ステンレス製)のベローズを配置して、このベローズによってロボット主軸周りを大気から隔離する形式のものがある。
【0010】
しかしながら、金属製のベローズは極めて高価であり、しかもその収縮動作(金属の弾性変形)に伴って破損しやすい。ロボットの大型化にともってZ軸ストロークが長くなると、ベローズも長大化し、更なるコスト上昇と破損可能性の増大がもたらされる。
【0011】
また、1本の主軸(Z軸)を備えた基板搬送ロボットにおいては、故障の修理や点検の際には、ロボット本体を上方に引き上げる必要があり、ロボットの大型化に伴って建屋の高さを高くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−129418号公報
【特許文献2】特開平11−188669号公報
【特許文献3】特開2006−224297号公報
【特許文献4】特開2001−358196号公報
【特許文献5】特開2001−217298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、大重量の基板を高い信頼性で搬送できる基板搬送ロボットを提供することを目的とする。特に、真空下においても高い信頼性を確保でき、しかも、製造コストや補修コストを低減できる基板搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による基板搬送ロボットは、基板を保持するための基板保持部と、前記基板保持部が装着され、主旋回軸周りに回転可能なアーム機構と、を備え、前記基板保持部は、それぞれが基板を保持する第1基板保持部及び第2基板保持部を含み、前記アーム機構は、前記第1基板保持部が装着された第1アーム機構及び前記第2基板保持部が装着された第2アーム機構を含み、前記第1アーム機構は、前記主旋回軸を含む平面に関して互いに対称に配置された一対の第1アームを有し、前記第1アームのそれぞれが、その中間部にて内向きに折曲可能に構成されており、前記第2アーム機構は、前記主旋回軸を含む前記平面に関して互いに対称に配置された一対の第2アームを有し、前記第2アームのそれぞれが、その中間部にて外向きに折曲可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記一対の第1アームの各基端部が、前記一対の第2アームの各基端部よりも内側に配置されている。
【0016】
好ましくは、前記一対の第1アームの各基端部及び前記一対の第2アームの各基端部が、同一直線上に配置されている。
【0017】
好ましくは、前記第1アーム機構及び前記第2アーム機構が、互いに共通の部品によって構成されている。
【0018】
好ましくは、前記第1基板保持部及び前記第2基板保持部は、互いに干渉することなく前後方向の位置を入れ替えることができるように上下方向にずらして配置されている。
【0019】
好ましくは、前記アーム機構を昇降駆動するための昇降駆動機構をさらに有する。
【0020】
好ましくは、前記アーム機構の昇降動作に伴って上下方向に伸縮可能な中空リンク機構をさらに有し、前記アーム機構に接続されるケーブル類が前記中空リンク機構の内部に収納されている。
【0021】
好ましくは、前記昇降駆動機構は、パラレルリンク機構によって構成されている。
【0022】
好ましくは、前記パラレルリンク機構は、同一の構造を備えた複数のリンクユニットから構成されている。
【0023】
好ましくは、前記複数のリンクユニットは、基板搬送のために必要となる台数よりも多い台数が設置されている。
【0024】
好ましくは、真空下での使用を可能にするために所要箇所に真空シールが設けられている。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明による基板搬送ロボットは、基板を保持するための基板保持部と、前記基板保持部が装着されたアーム機構と、前記アーム機構を昇降駆動するためのパラレルリンク機構と、を備え、前記パラレルリンク機構は、同一の構造を備えた複数のリンクユニットから構成されている、ことを特徴とする。
【0026】
好ましくは、前記複数のリンクユニットは、基板搬送のために必要となる台数よりも多い台数が設置されている。
【0027】
好ましくは、真空下での使用を可能にするために所要箇所に真空シールが設けられている。
【発明の効果】
【0028】
本発明による基板搬送ロボットによれば、大重量の基板を高い信頼性で搬送することができる。特に、真空下においても高い信頼性を確保でき、しかも、ロボットの製造コストや補修コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による基板搬送ロボットの斜視図であり、昇降駆動機構が収縮した状態を示した図。
【図2】図1に示した基板搬送ロボットにおいて、昇降駆動機構が伸張した状態を示した斜視図。
【図3】図1に示した基板搬送ロボットにおいて、第1ハンドが前方に位置し、第2ハンドが後方に位置した状態を示した平面図。
【図4】図1に示した基板搬送ロボットにおいて、第2ハンドが前方に位置し、第1ハンドが後方に位置した状態を示した平面図。
【図5】図4に示した基板搬送ロボットの側面図であり、昇降駆動機構が収縮した状態を示した図。
【図6】図1に示した基板搬送ロボットの昇降駆動機構を示した平面図。
【図7】図6に示した昇降駆動機構を昇降台と共に示した平面図。
【図8】図8(a)は、図6に示した昇降駆動機構を昇降台と共に示した側面図であって、昇降駆動機構が伸張した状態を示した図。図8(b)は、図8(a)に示した昇降駆動機構の中空リンク機構の部分を示した正面図。
【図9】図1に示した基板搬送ロボットの設置例を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態による基板搬送ロボットについて図面を参照しながら説明する。
【0031】
本実施形態による基板搬送ロボット10は、液晶ガラス基板のような大型かつ大重量の基板(ワーク)1の搬送に適したロボットであり、特に真空環境下での使用に適したものである。
【0032】
図1及び図2に示したようにこの基板搬送ロボット10は、その主要な構成として、エンドエフェクタとして基板1を保持するためのハンド(基板保持部)11,12が装着されたアーム機構13,14と、このアーム機構13,14を昇降駆動するための昇降駆動機構15と、を備えている。昇降駆動機構15は、円盤状のベース部材16の上に設置されている。また、この基板搬送ロボット10は、垂直方向の主旋回軸17周りに回転可能に構成されている。
【0033】
ハンド11,12は、それぞれが基板を保持する第1ハンド11及び第2ハンド12から成り、アーム機構13,14は、第1ハンドが装着された第1アーム機構13及び第2ハンドが装着された第2アーム機構14から成る。
【0034】
図3及び図4に示したように、第1アーム機構13は、主旋回軸17を含む垂直平面18に関して対称に配置された左右一対の第1アーム19を有する。同様に第2アーム機構14も、同じ垂直対称面18に関して対称に配置された左右一対の第2アーム20を有する。
【0035】
第1アーム機構13の左右一対の第1アーム19の各基端部19A及び第2アーム機構14の左右一対の第2アーム20の各基端部20Aは、アーム支持部材21に対して、主旋回軸17に平行な各回転軸周りに回転可能に装着されている。
【0036】
そして、第1アーム機構13の左右の第1アーム19のそれぞれは、その中間部にて水平方向内向き(上記垂直対称面18に近づく方向)に折曲可能に構成されている。一方、第2アーム機構14の左右の第2アーム20のそれぞれは、その中間部にて水平方向外向き(上記垂直対称面18から遠ざかる方向)に折曲可能に構成されている。即ち、第1アーム機構13の第1アーム19と第2アーム機構14の第2アーム20とでは、アームの折れ曲がり方向が逆になっている。
【0037】
アーム支持部材21は、主旋回軸17を中心として左右両側にて水平方向に延在しており、この細長のアーム支持部材21に対して、左右一対の第1アーム19の各基端部19Aが、左右一対の第2アーム20の各基端部20Aの内側に位置するようにして装着されている。第1アーム19の基端部19A及び第2アーム20の基端部20Aが、同一直線上に配置されている。
【0038】
図2に示したようにアーム支持部材21は中空構造より成り、4本の第1及び第2アーム19,20のそれぞれを独立に駆動するための4つのアーム駆動モータ22が、アーム支持部材21の内部に配置されている。このように本実施形態においては、左右のアーム19(又は20)のそれぞれに対して専用の駆動モータが設けられている(デュアルサーボ方式)。
【0039】
第1アーム19は、各アーム駆動モータ22に連結された基端側アーム部分23と、この基端側アーム部分23の先端部に回転可能に連結された先端側アーム部分24とから成る。
【0040】
同様に、第2アーム20は、各アーム駆動モータ22に連結された基端側アーム部分25と、この基端側アーム部分25の先端部に回転可能に連結された先端側アーム部分26とから成る。
【0041】
基端側アーム部分23,25は、アーム駆動モータ22によって回転駆動される。一方、先端側アーム部分24,26は、タイミングベルトによって基端側アーム部分23,25に対して回転駆動される。
【0042】
本実施形態においては、左右のアーム19(又は20)の基端部19A(又は20A)が、同軸ではなく離間して配置されており、しかも、左右のアーム19(又は20)は垂直対称面18に関して対称の構造なので、左右方向の揺れに対しては左右のモーメントがキャンセルされる。
【0043】
本実施形態による基板搬送ロボットにおいては、第1ハンド11及び第2ハンド12がその前後方向の位置を入れ替えることができるように構成されている。ここで、前後位置の入れ替えに際して第1ハンド11と第2ハンド12とが互いに干渉することがないように、両ハンド11,12が上下方向にずらして配置されている。
【0044】
具体的には、第1ハンド11が、左右の第1アーム19の先端部19B間に架け渡された第1ハンド基部27を有し、第2ハンド12が、左右の第2アーム20の先端部20B間に架け渡された第2ハンド基部28を有する。
【0045】
そして、図1及び図2から分かるように、第2ハンド基部28は、その下を第1ハンド11及び第1ハンド基部27が通過できるように凹状の垂直断面を有している。図5に示したように、第2ハンド12は、第1ハンド11よりも高い位置において第2ハンド基部28に装着されている。
【0046】
ここで、本実施形態においては、左右の第1アーム19が内側に屈曲し、左右の第2アーム20が外側に屈曲するように構成されている(図3及び図4参照)。これにより、左右の第1アーム19の各基端部19A及び左右の第2アーム20の各基端部20Aを、主旋回軸17を通って左右に延びる同一直線上で且つ同一高さ位置に配置した場合でも、第1アーム19と第2アーム20とが旋回時に干渉することを防止できる。
【0047】
また、図3及び図4から分かるように、第1及び第2ハンド11,12の前後移動の際の第1及び第2アーム19,20の旋回範囲(特に第2アーム20の旋回範囲29)は、基板1を保持しているハンド11,12を後退させた状態で主旋回軸17周りに回転させた際の基板1の旋回範囲30の中に収まっている。
【0048】
本実施形態による基板搬送ロボット10においては、第1アーム機構13及び第2アーム機構14が、共通の部品によって互いに同一の構造にて構成されている。
【0049】
次に、第1及び第2アーム機構13,14を昇降駆動するための昇降駆動機構15について説明する。
【0050】
図6乃至図8に示したように昇降駆動機構15は、ベース部材16上に設置されたパラレルリンク機構で構成されており、このパラレルリンク機構は、互いに共通の部品によって構成された同一構造の6つのリンクユニット31を含んでいる。このように本実施形態においては、昇降駆動機構15が複数の共通ユニットによってモジュール化されている。図6及び図7に示したように、6つのリンクユニット31は、主旋回軸17周りに等角度間隔で配置されている。
【0051】
図2及び図8に示したように、昇降駆動機構15の昇降駆動モータ32は、ベース部材16上に設けられたボックス部材33の内部に配置されており、ボックス部材33の内部は大気環境である。6つのリンクユニット31のそれぞれに昇降駆動モータ32が設けられており、これらの昇降駆動モータ32を独立に制御することにより、アーム機構13,14を水平面に対して傾けるチルト制御を行うことができる。これは特に、液晶ガラス基板1のような重量物によってハンド11,12が傾いてしまったときの補正制御として有効である。
【0052】
各リンクユニット31は、その基端部が昇降駆動モータ32に連結された基端側リンク部分34と、この基端側リンク部分34の先端部に回転可能に連結された先端側リンク部分35とから成る。基端側リンク部分34は昇降駆動モータ32によって回転駆動され、この基端側リンク部分34の回転動作に応じて先端側リンク部分35が追従して移動する。
【0053】
各リンクユニット31の先端側リンク部分35の先端部35Aは、ユニバーサル機構(自在継ぎ手)を介して昇降台36に接続されている。この昇降台36によってアーム機構13,14が支持されており、昇降台36と一体にアーム機構13,14が昇降するように構成されている。
【0054】
上述したように本実施形態においては、6つのリンクユニット31によって昇降駆動機構15が構成されているが、基板搬送動作を行うために必要となるリンクユニット31の台数(基板1の重量等で決まる)は、実際には6台よりも少ない。即ち本実施形態においては、本来必要な台数よりも多くのリンクユニット31を設置することにより、昇降駆動機構15に冗長性を持たせている。
【0055】
図2及び図8に良く示されているように、本実施形態による基板搬送ロボット10は、昇降駆動機構15の昇降動作に連動して上下方向に伸縮可能な中空リンク機構37をさらに備えている。図6に示したように、この中空リンク機構37は、ロボット中央(主旋回軸17に対応する位置)に配置されている。
【0056】
この中空リンク機構37は、その基端部がベース部材16に枢着された基端側リンク部分38と、この基端側リンク部分38の先端部にその基端部が枢着された先端側リンク部分39とから構成されている。
【0057】
中空リンク機構37自体は駆動源を備えておらず、ベース部材16の昇降動作に伴って伸縮するものである。中空リンク機構37は、昇降駆動機構15の一部を構成するものではなく、基板重量やロボット重量を支えるための構造部材としては機能していない。
【0058】
図2に示したように、アーム機構13,14の駆動モータ22等に接続されるケーブル類が、ベース部材16の内部から中空リンク機構37の内部を通ってアーム支持部材21の内部まで引き回されている。
【0059】
なお、一変形例としては、昇降駆動機構15を構成する6つのリンクユニット31のうちの1つを、この中空リンク機構として兼用させることもできる。
【0060】
図9は、本実施形態による基板搬送ロボット10の設置例を示したものである。基板搬送ロボット10が、複数の基板処理装置2及びロードロック室3によって囲まれた真空室4の中央に配置されている。
【0061】
真空環境下での使用を可能にするために、本実施形態による基板搬送ロボット10においては、所要箇所に磁性流体シールが設けられている。
【0062】
真空室4の中央に配置された基板搬送ロボット10のアーム機構13,14及び昇降駆動機構15を伸縮・昇降・回転動作させることによって、ハンド11,12で保持した基板1を、基板処理装置2及びロードロック室3に対して搬入し、搬出する。
【0063】
上述した実施形態の変形例として、左右アーム19,20の駆動系については、本実施形態のように左右独立に駆動モータ22を設けて同期制御しても良いし、同回転角で逆回転になるように機構的に拘束するようにしても良い。
【0064】
また、本実施形態のように左右独立に駆動系(駆動モータ22)を設ける場合には、さらに左右の駆動系を非同期制御することで、基板1の向きを制御できるようにしても良い。
【0065】
また、ハンド11,12の取り付け方については、第1ハンド11と第2ハンド12とを互いに前後方向逆向きに付けても良いし、或いは、第1アーム機構13及び第2アーム機構14のそれぞれに前後方向にハンドを取り付けても良い(ロボット全体として4つのハンドを備えた構成)。
【0066】
また、第1ハンド11と第2ハンド12とでハンドの種類を変えることも可能であり、これによって例えば種類の異なる基板に対応できるようにしたり、或いは高温用/常温用でハンドを使い分けるようにしても良い。
【0067】
また、本実施形態においては昇降駆動機構15を構成するパラレルリンク機構が、その折り畳み時にリンクが半径方向外側(主旋回軸17から遠ざかる方向)に向けてせり出すように構成されているが、逆に半径方向内側(主旋回軸17に近づく方向)に入り込むようにしても良いし、或いはリンクが接線方向にせり出すようにしても良い。
【0068】
本実施形態による基板搬送ロボットによれば、以下に述べるような各種の優れた効果が得られる。
【0069】
本実施形態においては、左右の第1アーム19が内側に屈曲し、左右の第2アーム20が外側に屈曲するよう構成することにより、左右の第1アーム19の各基端部19A及び左右の第2アーム20の各基端部20Aを、主旋回軸17を通って左右に延びる同一直線上で且つ同一高さ位置に配置した場合でも、第1アーム19と第2アーム20とが旋回時に干渉することがなく、アーム動作の自由度を拡大させることができる。
【0070】
また本実施形態においては、左右のアーム19(又は20)の基端部19A(又は20A)が、同軸ではなく離間して配置されており、しかも、左右のアーム19(又は20)は垂直対称面18に関して対称の構造なので、左右方向の揺れに対しては左右のモーメントがキャンセルされる。
【0071】
従って、比較的小さな部品でアーム19,20が構成されているにもかかわらず、左右の揺れに対して強い構造となっており、特に大型の液晶ガラス基板1のような重量物の搬送に適している。
【0072】
また、真空下で使用する部品はそのサイズアップに伴ってコストが格段に上昇するが、本実施形態では比較的小さな部品によってアーム19,20を構成することができるので、基板の重量化への対応に際して製造コストの上昇を低く抑えることができる。
【0073】
また、第1アーム機構13及び第2アーム機構14が、共通の部品によって互いに同一の構造にて構成されているので、部品コストを低減できると共に、故障部品の交換も容易となる。
【0074】
また、昇降駆動機構15が同一構造の複数のリンクユニット31から成るパラレルリンク機構で構成されてモジュール化されているので、リンクユニット31の設置数を適宜変更することによって、基板10の重量に応じた最適の設計仕様を容易に達成することができる。即ち、本実施形態による基板搬送ロボットは、ロボット仕様の拡張性において極めて優れている。
【0075】
また一般的に、真空下で使用される部品は、そのサイズアップによってコストが格段に上昇してしまう。この点に関連して本実施形態による基板搬送ロボットにおいては、昇降駆動機構(パラレルリンク機構)15を複数のリンクユニット31で構成するようにしたので、リンクユニット1台あたりで負担すべき荷重が小さくなる。このため、個々のリンクユニット31を小型化することが可能であり、真空用部品のコストを低く抑えることができる。
【0076】
しかも、リンクユニット31の設置台数を増やすことによって基板1の重量化に対応できるので、重量化対応に伴って使用部品がサイズアップすることがなく、製造コストの上昇を防止することができる。
【0077】
また、部品サイズが小さいため、必要となる磁性流体シールも小型のもので済み、信頼性の向上(ベーキング時のシール破損の可能性の低減)とコストの低減が図られる。
【0078】
このように本実施形態による基板搬送ロボット10においては、信頼性の向上とコストの低減という、一般的には相反する課題(要求)を同時に達成することができる。
【0079】
また、昇降駆動機構(パラレルリンク機構)15が、本来必要となる台数よりも多くのリンクユニット31によって構成されて冗長性を備えているので、例えば1台のリンクユニット31が故障した場合でも、残りのリンクユニット31によって運転を継続することが可能であり、生産ラインの停止による稼働率の低下を防止することができる。
【0080】
また、本実施形態による基板搬送ロボット10においては、駆動系(特にベアリング類)を大気側に配置することができるので、真空下で潤滑剤を使用する必要が無く、搬送速度の高速化にも支障なく対応することができる。真空環境下でリニアガイドやベアリングを使用しなければならなかった従来のロボットにおいては、搬送速度を高速化するためにはリニアガイド等の潤滑剤を真空下で使用する必要があり、潤滑剤が枯渇しやすいという問題があったが、本実施形態ではこの問題は起こらない。
【0081】
また本実施形態による基板搬送ロボットは、昇降駆動機構15においてリニア駆動系ではなく回転駆動系(パラレルリンク機構)を採用しているので、高速搬送に際してもリンクの移動速度はリニア駆動系に比べて低速で済む。
【0082】
このように本実施形態による基板搬送ロボット10は、従来のロボットに比べてトータルバランスが極めて優れていると言える。
【0083】
また、一般的に真空環境下で使用されるロボットにおいては、真空室内でロボットを加熱してその表面の付着物(水分等)を除去するベーキング処理が行われる。このため、ロボットを構成する機器(特に駆動系)の耐熱性が要求されるが、本実施形態においては駆動系を含む多くの機器が大気側に配置されているので、これらの機器の空冷が可能であり、耐熱性において極めて優れていると言える。
【0084】
また、アーム機構13,14に接続されるケーブル類を中空リンク機構37の内部に収納したので、従来のフレキシブルチューブやベローズ(真空下で使用するため、これらは金属製であり、破損しやすい)を使用する場合に比べて、ロングストロークに対する信頼性を容易に確保することができる。またフレキシブルチューブは容易に揺動するので何らかのサポート構造が必要となる場合が多いが、中空リンク機構37を採用する本実施形態においてはそのようなサポート構造は不要である。
【0085】
また、本実施形態においては、昇降駆動機構15をパラレルリンク機構で構成することにより、アーム機構13,14に対してチルト補正を行うことができる。このため、ロボットの剛性に対する要求(チルトの発生自体を防止するため)を緩和することが可能であり、ひいては製造コストを低減することができる。これは特に、真空用の高価な部品を使用する真空ロボットにおいて極めて有利である。
【符号の説明】
【0086】
1 基板(液晶ガラス基板)
10 基板搬送ロボット
11 第1ハンド(第1基板保持部)
12 第2ハンド(第2基板保持部)
13 第1アーム機構
14 第2アーム機構
15 昇降駆動機構(パラレルリンク機構)
16 ベース部材
17 主旋回軸
18 垂直平面(対称面)
19 第1アーム
19A 第1アームの基端部
19B 第1アームの先端部
20 第2アーム
20A 第2アームの基端部
20B 第2アームの先端部
21 アーム支持部材
22 アーム駆動モータ
23 第1アームの基端側アーム部分
24 第1アームの先端側アーム部分
25 第2アームの基端側アーム部分
26 第2アームの先端側アーム部分
27 第1ハンド基部
28 第2ハンド基部
29 第2アームの旋回範囲
30 基板の旋回範囲
31 リンクユニット
32 昇降駆動モータ
33 ボックス部材
34 リンクユニットの基端側リンク部分
35 リンクユニットの先端側リンク部分
36 昇降台
37 中空リンク機構
38 中空リンク機構の基端側リンク部分
39 中空リンク機構の先端側リンク部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するための基板保持部と、
前記基板保持部が装着され、主旋回軸周りに回転可能なアーム機構と、を備え、
前記基板保持部は、それぞれが基板を保持する第1基板保持部及び第2基板保持部を含み、
前記アーム機構は、前記第1基板保持部が装着された第1アーム機構及び前記第2基板保持部が装着された第2アーム機構を含み、
前記第1アーム機構は、前記主旋回軸を含む平面に関して互いに対称に配置された一対の第1アームを有し、前記第1アームのそれぞれが、その中間部にて内向きに折曲可能に構成されており、
前記第2アーム機構は、前記主旋回軸を含む前記平面に関して互いに対称に配置された一対の第2アームを有し、前記第2アームのそれぞれが、その中間部にて外向きに折曲可能に構成されている、基板搬送ロボット。
【請求項2】
前記一対の第1アームの各基端部が、前記一対の第2アームの各基端部よりも内側に配置されている、請求項1に記載の基板搬送ロボット。
【請求項3】
前記一対の第1アームの各基端部及び前記一対の第2アームの各基端部が、同一直線上に配置されている、請求項1又は2に記載の基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記第1アーム機構及び前記第2アーム機構が、互いに共通の部品によって構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項5】
前記第1基板保持部及び前記第2基板保持部は、互いに干渉することなく前後方向の位置を入れ替えることができるように上下方向にずらして配置されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項6】
前記アーム機構を昇降駆動するための昇降駆動機構をさらに有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項7】
前記アーム機構の昇降動作に伴って上下方向に伸縮可能な中空リンク機構をさらに有し、前記アーム機構に接続されるケーブル類が前記中空リンク機構の内部に収納されている、請求項6記載の基板搬送ロボット。
【請求項8】
前記昇降駆動機構は、パラレルリンク機構によって構成されている、請求項6又は7に記載の基板搬送ロボット。
【請求項9】
前記パラレルリンク機構は、同一の構造を備えた複数のリンクユニットから構成されている、請求項8記載の基板搬送ロボット。
【請求項10】
前記複数のリンクユニットは、基板搬送のために必要となる台数よりも多い台数が設置されている、請求項9記載の基板搬送ロボット。
【請求項11】
基板を保持するための基板保持部と、
前記基板保持部が装着されたアーム機構と、
前記アーム機構を昇降駆動するためのパラレルリンク機構と、
を備え、
前記パラレルリンク機構は、同一の構造を備えた複数のリンクユニットから構成されている、基板搬送ロボット。
【請求項12】
前記複数のリンクユニットは、基板搬送のために必要となる台数よりも多い台数が設置されている、請求項11に記載の基板搬送ロボット。
【請求項13】
真空下での使用を可能にするために所要箇所に真空シールが設けられている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83878(P2011−83878A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240362(P2009−240362)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】