説明

基板搬送用ハンドおよびそれを備えた基板搬送装置

【課題】フレームに対する加工を増やすことなく、フレームに対するフォークの本数や位置を変更することができる基板搬送用ハンドを提供すること
【解決手段】基板116を載置するフォーク112と、フォーク112の基端を固定するフレーム111と、を備え、フォーク112が、フレームに対してスライド可能に固定されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶や半導体ウェハなどの基板を搬送するための基板搬送用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板やウェハ基板といったワークに対して所定の処理をおこない、液晶や半導体を製造する装置には、基板を目的の位置に搬送する基板搬送装置が用いられている。基板搬送装置は、基板搬送ロボットとも呼ばれている(例えば、特許文献1など)。基板搬送装置には基板を載置して搬送するための基板搬送用ハンドが取り付けられている。
基板搬送用ハンドは、例えば図6が示しているように、基板を載せるための何本かのフォークと、それらの基端をまとめて支持するフレームとから概ね構成されている。図6は、従来のフォークの固定の構成を示す図であり、(a)は基板搬送用ハンドの平面図、(b)は(a)の局部の拡大断面図である。117はフレームであり、118はフォークである。基板116はフォーク118上に置かれて搬送される。フォーク118の一端は、フレーム117に対してボルト120によって締結されている。
一方、基板搬送用ハンドに載置される基板のサイズは様々であり、また、基板搬送用ハンドがアクセスする基板の収容装置(カセット)など、基板が搬送される搬送位置の形態にも様々な形状がある。このため現状は、基板のサイズや搬送位置の個々の仕様に合わせて、基板搬送用ハンドのフォークの本数、形状、位置を変更しなければならなくなっている。
この課題を解決するために、従来の基板搬送用ハンドは、フレームに対してフォークを固定するためのネジ穴など固定手段の加工を、カセットや搬送位置の仕様ごとに施すことによってフォークが適切な本数や位置になるようにしている。また、フォークの本数や位置を変更するために、予めフレームに固定手段の加工を多数施しているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−173444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフォーク取り付け構成では、フレームに対するフォークの取り付け本数や位置を簡単に変更できない。例えば、フレームの完成後にフォークの本数や位置が変更になった場合には、フレームに追加工をするか、再製作をして交換しなければならない。つまり、フレームに対する固定手段の加工を増やさないと、様々な仕様に対応できないという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、フレームに対する加工を増やすことなく、フレームに対するフォークの本数や位置を変更することができる基板搬送用ハンドを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1に記載の発明は、基板を載置して搬送するための基板搬送用ハンドであって、前記基板を載置するフォークと、前記フォークの基端を固定するフレームと、を備え、前記フォークが、前記フレームに対してスライド可能に固定される、基板搬送用ハンドとするものである。
請求項2に記載の発明は、前記フォークが、前記フレームに対して脱着可能であって、前記フレームに対する前記フォークの本数を変更可能である、基板搬送用ハンドとするものである。
請求項3に記載の発明は、前記フレームに形成された開口溝と、前記開口にネジ部が挿通可能なボルトと、前記ボルトのネジ部と係合するナットプレートと、を備え、前記ボルトが前記フレームとの間に前記フォークを挟み、前記ボルトのネジ部が前記開口溝を通って前記ナットプレートに係合する、基板搬送用ハンドとするものである。
請求項4に記載の発明は、前記フレームが、前記フレーム内に形成されたフレーム空間と、前記フレーム空間内に形成され前記ナットプレートを内包して前記ナットプレートがスライド可能なスライド空間と、を備え、前記フレーム空間と前記スライド空間とが仕切られて形成された、基板搬送用ハンドとするものである。
請求項5に記載の発明は、前記フレームが、引き抜き加工で形成された一体形成の部材であって、前記フレームの両端に、前記フレーム空間と前記スライド空間とを塞ぐカバーが設けられた、基板搬送用ハンドとするものである。
請求項6に記載の発明は、上記基板搬送用ハンドを備えた、基板搬送装置とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、フレームに固定されたフォークの位置や本数を変更することができるので、フレームに対する加工を増やしたり、基板搬送用ハンド自体を交換したりする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の基板搬送用ハンドを備えた基板搬送装置の一例
【図2】本発明の基板搬送用ハンドの概略構成を示す平面図
【図3】図2におけるフォークの固定部を示す拡大平面図
【図4】図3の断面図
【図5】図4におけるフレームのみの側面図
【図6】従来の基板搬送用ハンドのフォークの固定構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の基板搬送用ハンドを備えた基板搬送装置の一例を示す概略斜視図である。図1において、基板116を載置するのが基板搬送用ハンド110である。本実施形態における基板搬送装置121は、基板搬送用ハンド110を水平方向に進退させる伸縮機構124を有している。伸縮機構124は、複数のアームが連結された水平多関節式のアーム構成になっている。本実施形態では、伸縮機構124が2基設けてあり、それぞれの伸縮機構124の先端に基板搬送用ハンド110がそれぞれ設けてある。理解しやすくするため、図1では一方の伸縮機構124およびそれに設けられた基板搬送用ハンド110についてはその一部しか図示していない。基板搬送用ハンド110は伸縮機構124によって水平方向に進退する。旋回機構123は伸縮機構124全体を鉛直軸回りに旋回させる。リンク式による昇降機構122は、伸縮機構124より上部の機構を上下に昇降させる。これらの各機構の動作は、図示しないモータによって実現される。各機構を動作させるモータは、コントローラ125によって制御される。コントローラ125には、基板搬送装置121の各モータにどのような動作をさせるかの教示データが格納されている。また、図示していないが、昇降機構122を支持するベースを所望の一方向に走行させるための走行機構も必要に応じて設置されることがある。なお、以上で説明した基板搬送装置121の形態は、あくまで一実施形態である。以上のような構成により、基板搬送装置121は、基板搬送用ハンド110に基板116を載置し、予め教示された位置に対して基板搬送用ハンド110をアクセスさせることで所望の位置まで基板116を搬送する。
【0010】
図2は本発明の基板搬送用ハンドの概略構成を示す平面図であって、図1における基板搬送用ハンド110のみを示す平面図である。基板搬送用ハンド110は、概ね、フレーム111とフォーク112とから構成される。フレーム111は、上記で説明した伸縮機構124の先端で回転可能に支持される。フレーム111には、基板116を載置するフォーク112の基端が固定される。フォーク112は、本実施形態の場合、フレーム111に対して2本固定されている。本実施形態の場合、フォーク112は、基板116を吸着機構126によって保持する。図示しないが、フォーク112は内部が中空形状となっており、フォーク112の内部に吸着機構126のためのチューブなどが配設されることがある。また、図示しないが、基板116がフォーク112に載置されたか否かを判別するセンサもフォーク112に設置されることがあり、このセンサの配線もフォーク112の内部に配設されることがある。
【0011】
図3および図4は、図2におけるフォーク112の基端の固定部を示す拡大図である。図3が固定部の平面図、図4が図3の断面図を示している。また、図5はフレーム111のみの側面図を示している。これらの図が示すように、フレーム111は内部が空洞となるように形成されている。便宜上、フレーム111の内部の空洞をフレーム空間128と呼ぶ。フレーム空間128内には、上述した吸着機構126のためのチューブがフォーク112を通って配設される。また、上述したセンサの配線も同様に配設される。フレーム111の内部を空洞形状とすると、このようにチューブ類の配設および軽量化の観点から好ましい。また、図5が示すフレーム111の側面図のように、フレーム111は引き抜き加工で形成された一体形成の部材にすると、剛性およびコストの観点から好ましい。フレーム111には、その長手方向に沿って、開口溝127が形成されている。開口溝127は2本形成されている。図5のような一体形成でフレーム111が製作された場合、開口溝127はフレーム111の長手方向の両端に貫通するように形成されている。フレーム111内のフレーム空間128内には、ナットプレート113が収容されている。フォーク112には、ボルト114が挿入される穴が形成されている。ナットプレート113にはボルト114のネジ部と係合するネジ溝が形成されている。
さらに、本実施形態の場合、フレーム空間128内において、ナットプレート113を内包してナットプレート113がスライド可能なスライド空間129が形成されている。フレーム空間128とスライド空間129とは仕切られて形成されている。スライド空間129は、ナットプレート113がフレーム111の長手方向に滑るように移動可能な程度の空間であって、ナットプレート113が回転しない程度の空間となっている。また、図示しないが、フレーム111の長手方向の両端に、フレーム空間128とスライド空間129とを塞ぐカバーが脱着可能に設けられている。
【0012】
以上のような構成によって、フォーク112の各々はその基端において、ボルト114がフレーム111との間にフォーク112を挟み、ボルト114のネジ部が開口溝127を通ってフレーム空間128あるいはスライド空間129内に収容されているナットプレート113と締結されることで、フォーク112をフレーム111に対して固定する。ここで、ボルト114とナットプレート113との締結を緩めると、ナットプレート113は、スライド空間129内でフレーム111の長手方向に沿って自在に摺動可能であるから、ボルト114およびフォーク112は、ナットプレート113とともに、フレーム111に対してスライド可能な構成となっている。つまり、ボルト114を緩めることでフォーク112は開口溝127に沿って自由に移動することができ、フォーク112をフレーム111に対して開口溝127の範囲内の自由な位置で再び固定することができる。また、ナットプレート113およびフォーク112の数を変更することにより、フォーク112の本数も変更することができる。
【0013】
以上のような構成よると、フレーム111に固定されたフォーク112の位置や本数を変更することができるので、フレーム111に対する加工を増やしたり、基板搬送用ハンド110自体を交換したりする必要がなくなる。
そして、本実施形態のように、フレーム空間128とスライド空間129とが仕切られて形成されていると、ナットプレート113はフレーム空間128においてスライド空間129から飛び出るようなことがなく、ボルト114と締結されやすくなる。また、フレーム空間128とスライド空間129とが仕切られて形成されていると、上述した吸着機構126のためのチューブやセンサの配線を、ナットプレート113とフレーム111との間に挟んでしまうようなことがなく、断線の予防に効果的である。また、スライド空間129が形成されていると、フレーム111を上下逆にしてもナットプレート113が開口溝127に対して大きくずれることが無く、フォーク112をフレーム111に対して上面や側面などいずれの面に固定する場合であっても固定しやすくなる。特に、基板搬送装置121が設置される半導体や液晶の製造工場内において、基板搬送装置121が搬送すべき基板116の大きさ(サイズ)が変更されたとしても、工場内でフォーク112の位置を変更して搬送することが容易になる。
【符号の説明】
【0014】
110 基板搬送用ハンド
111 フレーム
112 フォーク
113 ナットプレート
114 ボルト
115 フレーム溝部
116 基板

117 フレーム
118 フォーク
120 ボルト

121 基板搬送装置
122 昇降機構
123 旋回機構
124 伸縮機構
125 コントローラ
126 吸着機構
127 開口溝
128 フレーム空間
129 スライド空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置して搬送するための基板搬送用ハンドであって、
前記基板を載置するフォークと、
前記フォークの基端を固定するフレームと、を備え、
前記フォークが、前記フレームに対してスライド可能に固定される、基板搬送用ハンド。
【請求項2】
前記フォークが、前記フレームに対して脱着可能であって、前記フレームに対する前記フォークの本数を変更可能である、請求項1記載の基板搬送用ハンド。
【請求項3】
前記フレームに形成された開口溝と、
前記開口にネジ部が挿通可能なボルトと、
前記ボルトのネジ部と係合するナットプレートと、を備え、
前記ボルトが前記フレームとの間に前記フォークを挟み、前記ボルトのネジ部が前記開口溝を通って前記ナットプレートに係合する、請求項1記載の基板搬送用ハンド。
【請求項4】
前記フレームが、
前記フレーム内に形成されたフレーム空間と、
前記フレーム空間内に形成され前記ナットプレートを内包して前記ナットプレートがスライド可能なスライド空間と、を備え、
前記フレーム空間と前記スライド空間とが仕切られて形成された、請求項2記載の基板搬送用ハンド。
【請求項5】
前記フレームが、引き抜き加工で形成された一体形成の部材であって、前記フレームの両端に、前記フレーム空間と前記スライド空間とを塞ぐカバーが設けられた、請求項3記載の基板搬送用ハンド。
【請求項6】
請求項1乃至6のいずれかの基板搬送用ハンドを備えた、基板搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222839(P2011−222839A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91861(P2010−91861)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】