基板洗浄方法、位相シフトマスクの製造方法および半導体装置の製造方法
【課題】洗浄能力向上と被洗浄基板の腐食や削れの防止を同時に実現する。
【解決手段】本発明の例に関わる基板洗浄方法は、パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、プラズマ処理を施した後に被洗浄基板の洗浄を行う工程とを備える。
【解決手段】本発明の例に関わる基板洗浄方法は、パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、プラズマ処理を施した後に被洗浄基板の洗浄を行う工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄方法に関し、例えば、位相シフトマスクに使用される。
【背景技術】
【0002】
半導体の分野では、フォトリソグラフィにより微細パターンを形成するが、このときのフォトマスクとして主に位相シフトマスクが使用される。
【0003】
位相シフトマスクは、例えば、位相シフト膜と遮光膜からなるブランクス基板にマスクパターンを形成することにより作製される。また、位相シフトマスクには、汚染防止のためのペリクル膜(保護膜)が貼り付けられる。
【0004】
ここで、位相シフトマスクの表面にダストが存在すると、シリコンウェハにパターンを転写する度にそれがパターン欠陥を招き、半導体装置の製造歩留りを低下させるため、ペリクル膜を貼り付ける前に位相シフトマスクの洗浄(ダストレス)が実行される。
【0005】
位相シフト膜の洗浄に関しては、優れた洗浄能力を発揮するものとして、例えば、酸性薬液による洗浄と、塩基性薬液による洗浄と、高温純水による洗浄とを組み合わせた洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、このような基板洗浄方法では、位相シフトマスクのダストレスという目的は達成できるが、同時に、位相シフトマスクの位相シフト膜に腐食や削れなどによる膜厚の減少を発生させる。
【0007】
このような位相シフト膜の膜厚の変化は、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化の原因となるため、位相シフト膜の位相差及び透過率が理想値からずれ、マスクパターンを高解像度でシリコンウェハに転写できなくなり、半導体装置の製造歩留りを低下させる。
【特許文献1】特開2002−9035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現する基板洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関わる基板洗浄方法は、パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、前記パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、前記プラズマ処理を施した後に前記被洗浄基板の洗浄を行う工程とを備える。
【0010】
本発明に関わる位相シフトマスクの製造方法は、ブランクス基板に位相シフト膜からなるマスクパターンを形成する工程と、前記位相シフト膜の表面に対してプラズマ処理を施す工程と、前記プラズマ処理を施した後に前記マスクパターンを有する前記ブランクス基板の洗浄を行う工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0013】
1. 概要
本発明に関わる基板洗浄方法は、図1に示すように、パターン面を有する被洗浄基板を作製した後に、被洗浄基板のパターン面に対してプラズマ処理を施し、この後、被洗浄基板の洗浄を行うことを特徴とする。
【0014】
被洗浄基板のパターン面は、プラズマ処理が施されることにより組成の変化などの改質が生じ、洗浄薬液による腐食や削れなどに対して強くなる。
【0015】
その結果、被洗浄基板の特性を変化させることなく、被洗浄基板のダストレスを実現できる。
【0016】
2. 実施の形態
本発明は、洗浄により特性が変化する可能性がある被洗浄基板全般に適用可能であるが、以下では、本発明の例を位相シフトマスクに適用した場合について説明する。
【0017】
(1) プラズマ処理装置及びプラズマ処理条件
はじめに、本実施の形態に用いるプラズマ処理装置及びプラズマ処理条件について説明を行う。
【0018】
図2は、本実施の形態に用いるプラズマ処理装置の構成を示す。
【0019】
本装置は、一定の圧力制御が可能な真空容器21と、真空容器21にガスを導入するガス導入口22と、真空容器21内のガスを排気する排気ポート23と、誘電体透過窓24と、マイクロ波を真空容器21内に供給するマイクロ波供給器25と、導波管28とから構成される。
【0020】
被洗浄基板26は、真空容器21内の基板ホルダー上に配置される。本実施の形態において、被洗浄基板26は位相シフトマスクである。
【0021】
プラズマ27は、所望のマイクロ波電力でマイクロ波を発生させ、真空容器21内のガスを励起することによって発生させられる。
【0022】
続いて、本実施の形態におけるプラズマ処理条件について説明を行う。
【0023】
本実施の形態においては、位相シフト膜は、酸窒化モリブデンシリサイド膜(MoSiOxNy)が用いられ、酸素ガスによるプラズマ処理が行われる。
【0024】
そのため、酸窒化モリブデンシリサイド膜の表面は酸化され、膜の表面の組成はシリコンと窒素の結合よりもシリコンと酸素の結合が支配的になる。
【0025】
その結果、酸窒化モリブデンシリサイド膜の表面が、組成の変化により改質され、洗浄薬液による腐食や削れなどが生じ難くなる。
【0026】
以下に、酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性のプラズマ処理による変化について述べる。
【0027】
酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性は、所望の値になるように膜厚や膜の組成によって成膜時に制御される。
【0028】
酸素ガスは真空容器21内に100sccm導入され、真空容器21内の圧力が15Paになるように排気ポート23により調整される。
【0029】
図3及び図4は、位相シフトマスクの位相シフト膜を本装置によりプラズマ処理した場合のマイクロ波電力に対する位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量を示している。
【0030】
ここでは、位相シフト膜としては、酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いる。
【0031】
まず、位相シフト膜の位相差の変化量についてみると、図3に示すように、マイクロ波電力が1kWよりも小さい場合、マイクロ波電力が小さくなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の位相差の理想値からの変化量(deg)が大きくなる。
【0032】
同様に、位相シフト膜の透過率の変化量についてみると、図4に示すように、マイクロ波電力が1kWよりも小さい場合、マイクロ波電力が小さくなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の透過率の理想値からの変化量(%)が大きくなる。
【0033】
このように、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量が大きくなるのは、マイクロ波電力が1kWよりも小さくなると、プラズマ処理による位相シフト膜の表面の改質が不十分になるためと考えられる。
【0034】
そこで、プラズマ処理条件の一つであるマイクロ波電力に関しては、1kW以上に設定する。これにより、位相シフト膜の位相差及び透過率がほぼ理想値の位相シフトマスクを作製できる。
【0035】
図5及び図6は、位相シフトマスクの位相シフト膜を本装置によりプラズマ処理した場合のプラズマ処理時間に対する位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量を示している。
【0036】
ここでも、位相シフト膜としては、酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いる。
【0037】
まず、位相シフト膜の位相差の変化量についてみると、図5に示すように、プラズマ処理時間が200秒よりも短い場合、プラズマ処理時間が短くなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の位相差の理想値からの変化量(deg)が大きくなる。
【0038】
同様に、位相シフト膜の透過率の変化量についてみると、図6に示すように、プラズマ処理時間が200秒よりも短い場合、プラズマ処理時間が短くなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の透過率の理想値からの変化量(%)が大きくなる。
【0039】
このように、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量が大きくなるのは、プラズマ処理時間が200秒よりも短くなると、プラズマ処理による位相シフト膜の表面の改質が不十分になるためと考えられる。
【0040】
そこで、プラズマ処理条件の一つであるプラズマ処理時間に関しては、200秒以上に設定する。これにより、位相シフト膜の位相差及び透過率がほぼ理想値の位相シフトマスクを作製できる。
【0041】
上記の結果より、本実施の形態において、位相シフト膜としての酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性の変化を抑制し、表面の改質を十分に行うためには、プラズマ処理は、マイクロ波電力1kW以上、プラズマ処理時間200秒以上の条件で行うことが望ましい。
【0042】
なお、本実施の形態において、位相シフト膜に酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いたが、その代わりに、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物、或いは、他の位相シフト材料からなる位相シフト膜を用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態においては、マイクロ波プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理について述べたが、被洗浄基板のパターン面の組成の変化による改質を十分に行うことが可能であれば、他のプラズマ発生装置及びプラズマ処理条件でも実施が可能である。
【0044】
(2) 位相シフトマスクの製造工程
次に、本実施の形態における位相シフトマスクの製造工程について説明する。
【0045】
図7は、本実施の形態において作製する位相シフトマスクの平面図を示し、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0046】
本実施の形態で作製される位相シフトマスクは、透明石英基板71上に形成される位相シフト膜72と遮光膜73で構成される。
【0047】
また、位相シフトマスク表面に汚染物質が付着するのを防ぐために、金属フレーム74とペリクル膜75が位相シフトマスクに取り付けられる。
【0048】
ペリクル膜75は、位相シフトマスクの表面から数mm離れている。
【0049】
図9は、本発明を位相シフトマスクの製造工程に適用した場合のフロー図を示す。
【0050】
位相シフトマスクは、ブランクス基板に所望のマスクパターンを形成することによって作製される(ステップST1〜ST10)。
【0051】
位相シフトマスクは、所望のマスクパターンが形成されているか検査工程により検査される(ステップST11〜ST12)。
【0052】
所望のマスクパターンが得られた位相シフトマスクに対しては、プラズマ処理が施された後に洗浄工程により洗浄される(ステップ13〜ST14)。
【0053】
最後に、位相シフトマスク表面の汚染を防止するためにペリクル貼付け工程が行われる(ステップST15)。
【0054】
以下に、図9に基づく位相シフトマスクの製造工程について説明する。
【0055】
まず、ブランクス基板を形成する。ブランクス基板は、図10に示すような構造を有する。ブランクス基板は、図10に示すように、スパッタ法、真空蒸着法などの方法を用いて、透明石英基板71上に位相シフト膜72を形成した後、続けて、位相シフト膜72上に遮光膜73を形成することにより作製される。
【0056】
位相シフト膜72は、例えば、酸窒化モリブデンシリサイド膜から構成される。位相シフト膜72の位相差特性及び透過率特性は、その膜厚、組成などを調整することにより所定の値に設定される。遮光膜73は、例えば、クロム膜、酸化クロム膜などから構成される。
【0057】
次に、レジストを図10のブランクス基板の遮光膜73上に塗布した後、このレジストを、例えば、電子ビーム露光により描画し、アルカリ現像液により現像すると、図11に示すようなレジストパターン76が形成される。
【0058】
このとき、ネガ型のレジストを用いた場合は、現像により露光部分が残る結果としてレジストパターン76が形成され、一方、ポジ型レジストを用いた場合は、現像により露光部分が除去される結果としてレジストパターン76が形成される。
【0059】
次に、図12に示すように、例えば、誘導結合プラズマ発生型ドライエッチング装置により、レジストパターン76をマスクにして遮光膜73及び位相シフト膜72を順次エッチングすると、レジストパターン76が位相シフト膜72及び遮光膜73に転写される。
【0060】
この後、図12のレジストパターン76を除去すると、図13に示すような構造が得られる。
【0061】
次に、図14に示すように、透明石英基板71上の全面にレジスト77を塗布する。続いて、レーザを用いてレジスト77を描画し、アルカリ現像液により現像すると、図15に示すように、ブランクス基板の縁部を覆うレジストパターン77が形成される。
【0062】
そして、図16に示すように、レジストパターン77をマスクにして、例えば、RIEにより遮光膜73を選択的にエッチングすると、遮光膜73は、ブランクス基板の縁部にのみ残る。
【0063】
このように、ブランクス基板の縁部にのみ遮光膜73を残すのは、露光装置を用いて実際に位相シフトマスクのパターンを半導体装置に転写する際に、位相シフトマスクの縁部から光が漏れ、解像度が低下するという現象を回避するためである。
【0064】
この後、図16に示すレジストパターン77を除去すると、図17に示すような位相シフトマスクが作製される。
【0065】
このような工程により形成された位相シフトマスクは、寸法検査工程及びパターン形状欠陥検査工程により、所望のマスクパターンが得られている良品であるかどうか検査される。
【0066】
(3) プラズマ処理工程
良品であると判定された位相シフトマスクは、図2に示すプラズマ処理装置により、プラズマ処理が行われる。
【0067】
まず、酸素ガスが真空容器21内に100sccm導入され、真空容器21内の圧力が15Paになるように排気ポート23により調整される。
【0068】
次に、マイクロ波電力1.5kWにより周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波を、導波管28を経由して真空容器21内の酸素ガスに作用させ、酸素原子を励起し、プラズマを発生させる。
【0069】
プラズマにより励起された酸素原子は、ラジカルとして位相シフトマスクの位相シフト膜に到達し、位相シフト膜の表面を改質(酸化)するプラズマ処理が行われる。このプラズマ処理は、200秒間継続される。
【0070】
ここで、位相シフトマスクとして、酸窒化モリブデンシリサイド膜(MoSiOxNy)を用いた場合には、プラズマ処理により、位相シフト膜の表面は、シリコンと窒素の結合よりもシリコンと酸素の結合のほうが支配的となり、腐食や削れなどに強い性質を持つようになる。
【0071】
(4) 洗浄工程
プラズマ処理の後に、位相シフトマスクの洗浄工程が行われる。
【0072】
まず、マスク表面に存在するレジストなどの有機物の分解、金属不純物の除去のため、酸性薬液による洗浄が行われ、その後、酸性薬液の除去のため純水洗浄が行われる。
【0073】
次に、不純物の除去のため、塩基性薬液による洗浄が行われる。
【0074】
続いて、塩基性薬液の除去のために高温純水(加熱した純水)による洗浄が行われる。この後、例えば、回転乾燥などの方法により位相シフトマスクの乾燥が行われる。
【0075】
なお、汚染物質を効果的に除去するために、洗浄槽に超音波を加えて洗浄を行ってもよい。
【0076】
(5) ペリクル貼付け工程
最後に、図18に示すように、位相シフトマスク表面の汚染防止のために、金属フレーム74が位相シフトマスクに取り付けられ、ペリクル膜75が金属フレーム74に取り付けられる。
【0077】
ペリクル膜75は、例えば、透明フィルム状の有機膜から構成され、位相シフトマスクの表面から数mm離れている。
【0078】
3. 実験結果
以下に、プラズマ処理を行わない従来の基板処理方法とプラズマ処理を行う本発明に関わる基板処理方法を位相シフトマスクについて実施し、その効果を比較する。
【0079】
図19は、洗浄を複数回行ったときの酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性の変化量を示す図である。
【0080】
従来の基板処理方法により得られた特性曲線192では、5回の洗浄で約16deg変化する。
【0081】
それに対して、本発明の例による基板処理方法により得られた特性曲線191では、5回の洗浄で約1.5degの変化に抑制できる。
【0082】
図20は、洗浄を複数回行ったときの酸窒化モリブデンシリサイド膜の透過率特性の変化量を示す図である。
【0083】
従来の基板処理方法により得られた特性曲線202では、5回の洗浄で約1.4%変化する。
【0084】
それに対して、本発明の例による基板処理方法により得られた特性曲線201では、5回の洗浄で約0.1%の変化に抑制できる。
【0085】
従って、プラズマ処理の後に位相シフトマスクの洗浄を行うことで、基板洗浄により発生する酸窒化モリブデンシリサイド膜の腐食や削れなどが発生し難くなり、位相差特性及び透過率特性が劣化するのを飛躍的に抑制できる。
【0086】
また、酸窒化モリブデンシリサイド膜の基板洗浄による腐食や削れなどを軽減できるので、位相シフトマスク表面の汚染物質を除去するために十分な洗浄を行うことができる。
【0087】
4. 適用例
本発明により作製したフォトマスクを半導体装置の製造方法に適用した場合について説明する。
【0088】
図21は、シリコンウェハにパターンを形成するための露光装置の概略を示している。
【0089】
フォトマスク211は、透明石英基板上に形成された位相シフト膜と遮光膜により構成される位相シフトマスクである。透明石英基板は、例えば、152mm(6インチ)角の大きさとし、マスクパターンは、例えば、約100mm(4インチ)角の大きさとする。
【0090】
フォトマスク211に形成されたマスクパターンは、例えば、ArFエキシマレーザを光源として、レンズ212を介して、レジストが塗布されたシリコンウェハ(被転写基板)213に、約4分の1の大きさで縮小投影される。
【0091】
本発明により作製したフォトマスク211を用いてシリコンウェハにパターンを形成する場合、フォトマスク211の位相差特性及び透過率特性が劣化しないことから高解像度のパターンを形成できる。また、十分な洗浄によりフォトマスク211に汚染物質が残ることもないため、半導体装置の歩留りを向上できる。
【0092】
4. その他
本発明によれば、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現できる。
【0093】
本発明は、位相シフトマスク、液晶ディスプレイなどに適用可能である。
【0094】
本発明では、被洗浄基板のパターン面を構成する材料に特に限定されることはないが、本発明を位相シフトマスクに適用する場合には、パターン面は位相シフト膜から構成され、位相シフト膜は、主として、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物から構成される。
【0095】
また、プラズマ処理する際の真空容器内のガスの圧力は、10Pa〜120Paの範囲内の値に設定することが好ましい。
【0096】
プラズマ処理時のプラズマに関しては、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素を含むグループの中から選択される少なくとも1つの原子の励起により発生させることが好ましい。
【0097】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態による基板処理方法を示すフロー図。
【図2】本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置を示す図。
【図3】マイクロ波電力に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図4】マイクロ波電力に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図5】プラズマ処理時間に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図6】プラズマ処理時間に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図7】本実施の形態により作製するフォトマスクの平面図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図。
【図9】本実施の形態によるフォトマスクの製造工程を示すフロー図。
【図10】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図11】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図12】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図13】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図14】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図15】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図16】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図17】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図18】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図19】洗浄回数に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図20】洗浄回数に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図21】本実施の形態により作製したフォトマスクの適用例を示す概略図。
【符号の説明】
【0099】
21:真空容器、22:ガス導入口、23:排気ポート、24:誘電体透過窓、25:マイクロ波供給器、26:被洗浄基板、27:プラズマ、28:導波管、71:透明石英基板、72:位相シフト膜、73:遮光膜、74:金属フレーム、75:ペリクル膜、76,77:レジスト、191,201:本発明の例による特性曲線、192,202:従来技術による特性曲線、211:フォトマスク、212:レンズ、213:シリコンウェハ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄方法に関し、例えば、位相シフトマスクに使用される。
【背景技術】
【0002】
半導体の分野では、フォトリソグラフィにより微細パターンを形成するが、このときのフォトマスクとして主に位相シフトマスクが使用される。
【0003】
位相シフトマスクは、例えば、位相シフト膜と遮光膜からなるブランクス基板にマスクパターンを形成することにより作製される。また、位相シフトマスクには、汚染防止のためのペリクル膜(保護膜)が貼り付けられる。
【0004】
ここで、位相シフトマスクの表面にダストが存在すると、シリコンウェハにパターンを転写する度にそれがパターン欠陥を招き、半導体装置の製造歩留りを低下させるため、ペリクル膜を貼り付ける前に位相シフトマスクの洗浄(ダストレス)が実行される。
【0005】
位相シフト膜の洗浄に関しては、優れた洗浄能力を発揮するものとして、例えば、酸性薬液による洗浄と、塩基性薬液による洗浄と、高温純水による洗浄とを組み合わせた洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、このような基板洗浄方法では、位相シフトマスクのダストレスという目的は達成できるが、同時に、位相シフトマスクの位相シフト膜に腐食や削れなどによる膜厚の減少を発生させる。
【0007】
このような位相シフト膜の膜厚の変化は、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化の原因となるため、位相シフト膜の位相差及び透過率が理想値からずれ、マスクパターンを高解像度でシリコンウェハに転写できなくなり、半導体装置の製造歩留りを低下させる。
【特許文献1】特開2002−9035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現する基板洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関わる基板洗浄方法は、パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、前記パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、前記プラズマ処理を施した後に前記被洗浄基板の洗浄を行う工程とを備える。
【0010】
本発明に関わる位相シフトマスクの製造方法は、ブランクス基板に位相シフト膜からなるマスクパターンを形成する工程と、前記位相シフト膜の表面に対してプラズマ処理を施す工程と、前記プラズマ処理を施した後に前記マスクパターンを有する前記ブランクス基板の洗浄を行う工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0013】
1. 概要
本発明に関わる基板洗浄方法は、図1に示すように、パターン面を有する被洗浄基板を作製した後に、被洗浄基板のパターン面に対してプラズマ処理を施し、この後、被洗浄基板の洗浄を行うことを特徴とする。
【0014】
被洗浄基板のパターン面は、プラズマ処理が施されることにより組成の変化などの改質が生じ、洗浄薬液による腐食や削れなどに対して強くなる。
【0015】
その結果、被洗浄基板の特性を変化させることなく、被洗浄基板のダストレスを実現できる。
【0016】
2. 実施の形態
本発明は、洗浄により特性が変化する可能性がある被洗浄基板全般に適用可能であるが、以下では、本発明の例を位相シフトマスクに適用した場合について説明する。
【0017】
(1) プラズマ処理装置及びプラズマ処理条件
はじめに、本実施の形態に用いるプラズマ処理装置及びプラズマ処理条件について説明を行う。
【0018】
図2は、本実施の形態に用いるプラズマ処理装置の構成を示す。
【0019】
本装置は、一定の圧力制御が可能な真空容器21と、真空容器21にガスを導入するガス導入口22と、真空容器21内のガスを排気する排気ポート23と、誘電体透過窓24と、マイクロ波を真空容器21内に供給するマイクロ波供給器25と、導波管28とから構成される。
【0020】
被洗浄基板26は、真空容器21内の基板ホルダー上に配置される。本実施の形態において、被洗浄基板26は位相シフトマスクである。
【0021】
プラズマ27は、所望のマイクロ波電力でマイクロ波を発生させ、真空容器21内のガスを励起することによって発生させられる。
【0022】
続いて、本実施の形態におけるプラズマ処理条件について説明を行う。
【0023】
本実施の形態においては、位相シフト膜は、酸窒化モリブデンシリサイド膜(MoSiOxNy)が用いられ、酸素ガスによるプラズマ処理が行われる。
【0024】
そのため、酸窒化モリブデンシリサイド膜の表面は酸化され、膜の表面の組成はシリコンと窒素の結合よりもシリコンと酸素の結合が支配的になる。
【0025】
その結果、酸窒化モリブデンシリサイド膜の表面が、組成の変化により改質され、洗浄薬液による腐食や削れなどが生じ難くなる。
【0026】
以下に、酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性のプラズマ処理による変化について述べる。
【0027】
酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性は、所望の値になるように膜厚や膜の組成によって成膜時に制御される。
【0028】
酸素ガスは真空容器21内に100sccm導入され、真空容器21内の圧力が15Paになるように排気ポート23により調整される。
【0029】
図3及び図4は、位相シフトマスクの位相シフト膜を本装置によりプラズマ処理した場合のマイクロ波電力に対する位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量を示している。
【0030】
ここでは、位相シフト膜としては、酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いる。
【0031】
まず、位相シフト膜の位相差の変化量についてみると、図3に示すように、マイクロ波電力が1kWよりも小さい場合、マイクロ波電力が小さくなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の位相差の理想値からの変化量(deg)が大きくなる。
【0032】
同様に、位相シフト膜の透過率の変化量についてみると、図4に示すように、マイクロ波電力が1kWよりも小さい場合、マイクロ波電力が小さくなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の透過率の理想値からの変化量(%)が大きくなる。
【0033】
このように、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量が大きくなるのは、マイクロ波電力が1kWよりも小さくなると、プラズマ処理による位相シフト膜の表面の改質が不十分になるためと考えられる。
【0034】
そこで、プラズマ処理条件の一つであるマイクロ波電力に関しては、1kW以上に設定する。これにより、位相シフト膜の位相差及び透過率がほぼ理想値の位相シフトマスクを作製できる。
【0035】
図5及び図6は、位相シフトマスクの位相シフト膜を本装置によりプラズマ処理した場合のプラズマ処理時間に対する位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量を示している。
【0036】
ここでも、位相シフト膜としては、酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いる。
【0037】
まず、位相シフト膜の位相差の変化量についてみると、図5に示すように、プラズマ処理時間が200秒よりも短い場合、プラズマ処理時間が短くなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の位相差の理想値からの変化量(deg)が大きくなる。
【0038】
同様に、位相シフト膜の透過率の変化量についてみると、図6に示すように、プラズマ処理時間が200秒よりも短い場合、プラズマ処理時間が短くなるに従い、その後の洗浄工程を経ると位相シフト膜の透過率の理想値からの変化量(%)が大きくなる。
【0039】
このように、位相シフト膜の位相差及び透過率の変化量が大きくなるのは、プラズマ処理時間が200秒よりも短くなると、プラズマ処理による位相シフト膜の表面の改質が不十分になるためと考えられる。
【0040】
そこで、プラズマ処理条件の一つであるプラズマ処理時間に関しては、200秒以上に設定する。これにより、位相シフト膜の位相差及び透過率がほぼ理想値の位相シフトマスクを作製できる。
【0041】
上記の結果より、本実施の形態において、位相シフト膜としての酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性及び透過率特性の変化を抑制し、表面の改質を十分に行うためには、プラズマ処理は、マイクロ波電力1kW以上、プラズマ処理時間200秒以上の条件で行うことが望ましい。
【0042】
なお、本実施の形態において、位相シフト膜に酸窒化モリブデンシリサイド膜を用いたが、その代わりに、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物、或いは、他の位相シフト材料からなる位相シフト膜を用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態においては、マイクロ波プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理について述べたが、被洗浄基板のパターン面の組成の変化による改質を十分に行うことが可能であれば、他のプラズマ発生装置及びプラズマ処理条件でも実施が可能である。
【0044】
(2) 位相シフトマスクの製造工程
次に、本実施の形態における位相シフトマスクの製造工程について説明する。
【0045】
図7は、本実施の形態において作製する位相シフトマスクの平面図を示し、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0046】
本実施の形態で作製される位相シフトマスクは、透明石英基板71上に形成される位相シフト膜72と遮光膜73で構成される。
【0047】
また、位相シフトマスク表面に汚染物質が付着するのを防ぐために、金属フレーム74とペリクル膜75が位相シフトマスクに取り付けられる。
【0048】
ペリクル膜75は、位相シフトマスクの表面から数mm離れている。
【0049】
図9は、本発明を位相シフトマスクの製造工程に適用した場合のフロー図を示す。
【0050】
位相シフトマスクは、ブランクス基板に所望のマスクパターンを形成することによって作製される(ステップST1〜ST10)。
【0051】
位相シフトマスクは、所望のマスクパターンが形成されているか検査工程により検査される(ステップST11〜ST12)。
【0052】
所望のマスクパターンが得られた位相シフトマスクに対しては、プラズマ処理が施された後に洗浄工程により洗浄される(ステップ13〜ST14)。
【0053】
最後に、位相シフトマスク表面の汚染を防止するためにペリクル貼付け工程が行われる(ステップST15)。
【0054】
以下に、図9に基づく位相シフトマスクの製造工程について説明する。
【0055】
まず、ブランクス基板を形成する。ブランクス基板は、図10に示すような構造を有する。ブランクス基板は、図10に示すように、スパッタ法、真空蒸着法などの方法を用いて、透明石英基板71上に位相シフト膜72を形成した後、続けて、位相シフト膜72上に遮光膜73を形成することにより作製される。
【0056】
位相シフト膜72は、例えば、酸窒化モリブデンシリサイド膜から構成される。位相シフト膜72の位相差特性及び透過率特性は、その膜厚、組成などを調整することにより所定の値に設定される。遮光膜73は、例えば、クロム膜、酸化クロム膜などから構成される。
【0057】
次に、レジストを図10のブランクス基板の遮光膜73上に塗布した後、このレジストを、例えば、電子ビーム露光により描画し、アルカリ現像液により現像すると、図11に示すようなレジストパターン76が形成される。
【0058】
このとき、ネガ型のレジストを用いた場合は、現像により露光部分が残る結果としてレジストパターン76が形成され、一方、ポジ型レジストを用いた場合は、現像により露光部分が除去される結果としてレジストパターン76が形成される。
【0059】
次に、図12に示すように、例えば、誘導結合プラズマ発生型ドライエッチング装置により、レジストパターン76をマスクにして遮光膜73及び位相シフト膜72を順次エッチングすると、レジストパターン76が位相シフト膜72及び遮光膜73に転写される。
【0060】
この後、図12のレジストパターン76を除去すると、図13に示すような構造が得られる。
【0061】
次に、図14に示すように、透明石英基板71上の全面にレジスト77を塗布する。続いて、レーザを用いてレジスト77を描画し、アルカリ現像液により現像すると、図15に示すように、ブランクス基板の縁部を覆うレジストパターン77が形成される。
【0062】
そして、図16に示すように、レジストパターン77をマスクにして、例えば、RIEにより遮光膜73を選択的にエッチングすると、遮光膜73は、ブランクス基板の縁部にのみ残る。
【0063】
このように、ブランクス基板の縁部にのみ遮光膜73を残すのは、露光装置を用いて実際に位相シフトマスクのパターンを半導体装置に転写する際に、位相シフトマスクの縁部から光が漏れ、解像度が低下するという現象を回避するためである。
【0064】
この後、図16に示すレジストパターン77を除去すると、図17に示すような位相シフトマスクが作製される。
【0065】
このような工程により形成された位相シフトマスクは、寸法検査工程及びパターン形状欠陥検査工程により、所望のマスクパターンが得られている良品であるかどうか検査される。
【0066】
(3) プラズマ処理工程
良品であると判定された位相シフトマスクは、図2に示すプラズマ処理装置により、プラズマ処理が行われる。
【0067】
まず、酸素ガスが真空容器21内に100sccm導入され、真空容器21内の圧力が15Paになるように排気ポート23により調整される。
【0068】
次に、マイクロ波電力1.5kWにより周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波を、導波管28を経由して真空容器21内の酸素ガスに作用させ、酸素原子を励起し、プラズマを発生させる。
【0069】
プラズマにより励起された酸素原子は、ラジカルとして位相シフトマスクの位相シフト膜に到達し、位相シフト膜の表面を改質(酸化)するプラズマ処理が行われる。このプラズマ処理は、200秒間継続される。
【0070】
ここで、位相シフトマスクとして、酸窒化モリブデンシリサイド膜(MoSiOxNy)を用いた場合には、プラズマ処理により、位相シフト膜の表面は、シリコンと窒素の結合よりもシリコンと酸素の結合のほうが支配的となり、腐食や削れなどに強い性質を持つようになる。
【0071】
(4) 洗浄工程
プラズマ処理の後に、位相シフトマスクの洗浄工程が行われる。
【0072】
まず、マスク表面に存在するレジストなどの有機物の分解、金属不純物の除去のため、酸性薬液による洗浄が行われ、その後、酸性薬液の除去のため純水洗浄が行われる。
【0073】
次に、不純物の除去のため、塩基性薬液による洗浄が行われる。
【0074】
続いて、塩基性薬液の除去のために高温純水(加熱した純水)による洗浄が行われる。この後、例えば、回転乾燥などの方法により位相シフトマスクの乾燥が行われる。
【0075】
なお、汚染物質を効果的に除去するために、洗浄槽に超音波を加えて洗浄を行ってもよい。
【0076】
(5) ペリクル貼付け工程
最後に、図18に示すように、位相シフトマスク表面の汚染防止のために、金属フレーム74が位相シフトマスクに取り付けられ、ペリクル膜75が金属フレーム74に取り付けられる。
【0077】
ペリクル膜75は、例えば、透明フィルム状の有機膜から構成され、位相シフトマスクの表面から数mm離れている。
【0078】
3. 実験結果
以下に、プラズマ処理を行わない従来の基板処理方法とプラズマ処理を行う本発明に関わる基板処理方法を位相シフトマスクについて実施し、その効果を比較する。
【0079】
図19は、洗浄を複数回行ったときの酸窒化モリブデンシリサイド膜の位相差特性の変化量を示す図である。
【0080】
従来の基板処理方法により得られた特性曲線192では、5回の洗浄で約16deg変化する。
【0081】
それに対して、本発明の例による基板処理方法により得られた特性曲線191では、5回の洗浄で約1.5degの変化に抑制できる。
【0082】
図20は、洗浄を複数回行ったときの酸窒化モリブデンシリサイド膜の透過率特性の変化量を示す図である。
【0083】
従来の基板処理方法により得られた特性曲線202では、5回の洗浄で約1.4%変化する。
【0084】
それに対して、本発明の例による基板処理方法により得られた特性曲線201では、5回の洗浄で約0.1%の変化に抑制できる。
【0085】
従って、プラズマ処理の後に位相シフトマスクの洗浄を行うことで、基板洗浄により発生する酸窒化モリブデンシリサイド膜の腐食や削れなどが発生し難くなり、位相差特性及び透過率特性が劣化するのを飛躍的に抑制できる。
【0086】
また、酸窒化モリブデンシリサイド膜の基板洗浄による腐食や削れなどを軽減できるので、位相シフトマスク表面の汚染物質を除去するために十分な洗浄を行うことができる。
【0087】
4. 適用例
本発明により作製したフォトマスクを半導体装置の製造方法に適用した場合について説明する。
【0088】
図21は、シリコンウェハにパターンを形成するための露光装置の概略を示している。
【0089】
フォトマスク211は、透明石英基板上に形成された位相シフト膜と遮光膜により構成される位相シフトマスクである。透明石英基板は、例えば、152mm(6インチ)角の大きさとし、マスクパターンは、例えば、約100mm(4インチ)角の大きさとする。
【0090】
フォトマスク211に形成されたマスクパターンは、例えば、ArFエキシマレーザを光源として、レンズ212を介して、レジストが塗布されたシリコンウェハ(被転写基板)213に、約4分の1の大きさで縮小投影される。
【0091】
本発明により作製したフォトマスク211を用いてシリコンウェハにパターンを形成する場合、フォトマスク211の位相差特性及び透過率特性が劣化しないことから高解像度のパターンを形成できる。また、十分な洗浄によりフォトマスク211に汚染物質が残ることもないため、半導体装置の歩留りを向上できる。
【0092】
4. その他
本発明によれば、洗浄能力の向上と被洗浄基板の腐食や削れなどの防止とを同時に実現できる。
【0093】
本発明は、位相シフトマスク、液晶ディスプレイなどに適用可能である。
【0094】
本発明では、被洗浄基板のパターン面を構成する材料に特に限定されることはないが、本発明を位相シフトマスクに適用する場合には、パターン面は位相シフト膜から構成され、位相シフト膜は、主として、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物から構成される。
【0095】
また、プラズマ処理する際の真空容器内のガスの圧力は、10Pa〜120Paの範囲内の値に設定することが好ましい。
【0096】
プラズマ処理時のプラズマに関しては、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素を含むグループの中から選択される少なくとも1つの原子の励起により発生させることが好ましい。
【0097】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態による基板処理方法を示すフロー図。
【図2】本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置を示す図。
【図3】マイクロ波電力に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図4】マイクロ波電力に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図5】プラズマ処理時間に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図6】プラズマ処理時間に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図7】本実施の形態により作製するフォトマスクの平面図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図。
【図9】本実施の形態によるフォトマスクの製造工程を示すフロー図。
【図10】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図11】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図12】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図13】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図14】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図15】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図16】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図17】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図18】本実施の形態による製造工程の一工程を示す断面図。
【図19】洗浄回数に対する位相差特性の変化量を示す図。
【図20】洗浄回数に対する透過率特性の変化量を示す図。
【図21】本実施の形態により作製したフォトマスクの適用例を示す概略図。
【符号の説明】
【0099】
21:真空容器、22:ガス導入口、23:排気ポート、24:誘電体透過窓、25:マイクロ波供給器、26:被洗浄基板、27:プラズマ、28:導波管、71:透明石英基板、72:位相シフト膜、73:遮光膜、74:金属フレーム、75:ペリクル膜、76,77:レジスト、191,201:本発明の例による特性曲線、192,202:従来技術による特性曲線、211:フォトマスク、212:レンズ、213:シリコンウェハ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、
前記パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、
前記プラズマ処理を施した後に前記被洗浄基板の洗浄を行う工程とを具備することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記被洗浄基板は、位相シフトマスクであり、前記パターン面は、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物から構成される位相シフト膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記被洗浄基板の洗浄は、酸性薬液による洗浄、塩基性薬液による洗浄及び純水による洗浄を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
ブランクス基板に位相シフト膜からなるマスクパターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜の表面に対してプラズマ処理を施す工程と、
前記プラズマ処理を施した後に前記マスクパターンを有する前記ブランクス基板の洗浄を行う工程とを具備することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用いて被転写基板にマスクパターンを縮小投影する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
パターン面を有する被洗浄基板を作製する工程と、
前記パターン面に対してプラズマ処理を施す工程と、
前記プラズマ処理を施した後に前記被洗浄基板の洗浄を行う工程とを具備することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記被洗浄基板は、位相シフトマスクであり、前記パターン面は、金属シリサイドの酸化物、窒化物又は酸窒化物から構成される位相シフト膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記被洗浄基板の洗浄は、酸性薬液による洗浄、塩基性薬液による洗浄及び純水による洗浄を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
ブランクス基板に位相シフト膜からなるマスクパターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜の表面に対してプラズマ処理を施す工程と、
前記プラズマ処理を施した後に前記マスクパターンを有する前記ブランクス基板の洗浄を行う工程とを具備することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用いて被転写基板にマスクパターンを縮小投影する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−78712(P2007−78712A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262641(P2005−262641)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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