説明

報知音出力方法

【課題】ユーザに対して、違和感のない警告音で所望の警告状態を通知する。
【解決手段】警報装置のCPUは、フラッシャー信号入力部に入力されるフラッシャー信号を監視し、フラッシャー信号がローレベルからハイレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第1の周波数faである1.6kHzのパルス信号を所定期間出力する。さらに、CPUは、フラッシャー信号がハイレベルからローレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第2の周波数fbである2.4kHzのパルス信号を所定期間出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知音出力方法に係り、所定の照明手段の表示に連動して吹鳴する報知音出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用計器では、ドライバーへ車両異常等の警告のために、LED(Light Emitting Diode)などの照明手段(または表示手段)を点灯させ、さらに警告音を吹鳴させることが従来よりなされてきた。一般的な警告音の吹鳴手法としては、LEDの点灯立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに同期して、フラッシャー信号が所定のCPUに入力され、そのCPUから一定周波数及び一定パルス幅の信号を一定時間ブザー装置に対して出力し、ブザーが吹鳴する。
【0003】
ところで、ドライバーなどのユーザに対して上記ブザー音を効果的に認識させるために、様々な技術が提案されている。例えば、対象車両制御の警報情報ごとにその情報のドライバーに認知させたい時間を整理した警報認知期待時間を基に、複合音の吹鳴パターンを割り当てる技術がある(例えば、特許文献1参照)。この複合音は、平均率音階に対応する基本周波数の近傍周波数で構成されている。
【0004】
また、接近警告装置の技術として、車両が他の車両や歩行者などの他者と接近する際に起こりうる衝突回避動作(例えば急制動)等において、前記他者に対して驚かすことなく早期に接近している旨を知らせる技術がある(例えば、特許文献2参照)。この技術では、緊急度に応じて異なる警告音が発生される。
【0005】
さらに、車両用ではないが、食器洗い機において、その様々な機能に応じてブザーの鳴動数やブザーの周波数が変更されたりする技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−209871号公報
【特許文献2】特開2005−75182号公報
【特許文献3】特開2003−70713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した一般的な警告音の吹鳴手法にあっては、ブザー音が一定周波数であるため、音質として同じ音を繰り返すだけであった。そのため、ブザー音は、フラッシャーリレー作動音のように、ドライバーにとって一般的な生活において聞き慣れない音であり、違和感が生じることもあった。
【0007】
また、特許文献1に開示の技術では、緊急度に応じて異なる警告音が発生するようになっているが、やはり違和感に対する考慮がなされているわけではなく別の技術が求められていた。さらに、特許文献2に開示の技術では、他の車両や歩行者などの他者に対して驚かすことなく認識させる技術であって、ドライバーの違和感の解消といった観点では依然として改善の余地があった。さらに、特許文献3に開示の技術にあっても、同様であった。また、特許文献1〜3のいずれに開示の技術にあっても、LEDを点灯させつつ警告音を出力するという観点で提案されるものではなかった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決することができ、所定の警告状態を通知するときにユーザが感じる違和感を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、報知音出力方法に関する。この方法は、所定の照明手段を点滅させるフラッシャー信号のオンレベル及びオフレベルを取得する工程と、前記フラッシャー信号がオフレベルからオンレベルに変わったときに、第1の特性の音声信号を出力する工程と、前記フラッシャー信号がオンレベルからオフレベルに変わったときに、前記第1の特性の音声信号とは異なる第2の特性の音声信号を出力する工程と、を備える。
また、前記第1の特性の音声信号と前記第2の特性の音声信号は、異なる周波数のパルスにより、所定の音声出力装置に対して出力されてもよい。
また、前記第1の特性の音声信号と前記第2の特性の音声信号の少なくとも一方の音声信号は、少なくとも複数の異なる周波数のパルスにより構成されて、所定の音声出力装置に対して出力されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の警告状態を通知するときに、ユーザが感じる違和感を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。車両に設けられた方向指示灯のターンシグナルやハザードシグナルなどのLEDを点滅することによって、他車や歩行者に対して様々な合図を送ることができる装置が備えられている。ここで、LEDは、点滅を制御するためのフラッシャー信号に同期して点滅する。そして本実施形態では、フラッシャー信号のオン・エッジ(立ち上がり)とオフ・エッジ(立ち下がり)に同期させて、警告音を出力する。さらに、オン・エッジとオフ・エッジのそれぞれに同期して異なる特性の音(ブザー)を出力する。以下、詳細に説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る警報装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。図示のように、警報装置10は、スピーカ40と、スピーカ40へのブザー音の出力制御を行うCPU20とを備えている。
【0013】
CPU20の制御電源電圧入力部21には、バッテリ51の電源電圧を所定の定電圧に変換する定電圧電源31が接続され、定電圧電源31から定電圧の電力が供給される。CPU20のイグニション信号入力部22には、イグニション信号52がインタフェイス32を介して入力される。なお、スピーカ40は例えば圧電ブザー装置であり、接続されているイグニション信号52がハイレベル、つまりオンレベルのときに動作する。したがって、イグニション信号52において、ローレベルはオフレベルとなる。さらに、フラッシャー信号53が抵抗62を介してLED61に供給される。また、フラッシャー信号53は、インタフェイス33を介してCPU20のフラッシャー信号入力部23に入力される。
【0014】
また、CPU20は、所定の基準クロックを生成する発振子24を備えている。さらに、CPU20は、フラッシャー信号53の信号のレベルの変化、より具体的には、ハイレベル及びローレベルに変化するタイミングに同期して、発振子24が生成する基準クロックをもとに所望の周波数のパルスをインタフェイス34を介してスピーカ40に出力する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る警報装置10におけるフラッシャー信号53、LED61の点滅及びブザーの吹鳴に関する動作状態を示したタイミングチャートである。CPU20は、フラッシャー信号入力部23に入力されるフラッシャー信号53を監視し、フラッシャー信号53がローレベルからハイレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第1の周波数faである1.6kHzのパルス信号を所定期間出力する。さらに、CPU20は、フラッシャー信号53がハイレベルからローレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第2の周波数fbである2.4kHzのパルス信号を所定期間出力する。ここで、フラッシャー信号53は、オンレベル及びローレベルがそれぞれ300msで1周期が600msである。そして、第1の周波数fa又は第2の周波数fbのパルス出力期間は、それぞれ300ms未満に設定される。
【0016】
より詳細なCPU20の動作について、図3のフローチャートをもとに説明する。
まず、CPU20は、フラッシャー信号入力部23の入力レベルを監視して、警報入力の有無、つまり、イグニション信号52がローレベルからハイレベルへの切り替わりである立ち上がりエッジを検出する(S10)。立ち上がりエッジが検出されるまで継続される(S10のN)。
【0017】
立ち上がりエッジが検出されると(S10のY)、CPU20は、第1の周波数faである1.6kHzのパルスを出力する(S11)。また、このとき、フラッシャー信号53はオンレベルであり、LED61が点灯する(S12)。LED61の点灯開始後、CPU20は、所定期間だけ音声出力のための第1の周波数fa(1.6kHz)によるパルス出力を継続する(S13のN)。所定期間が経過すると(S13のY)、CPU20は、第1の周波数fa(1.6kHz)のパルス出力を停止する(S14)。
【0018】
S14の処理のときフラッシャー信号53はオンレベルになっており、CPU20はつづいて、フラッシャー信号53がローレベルになること、つまり立ち下がりのエッジを検出する処理を継続する(S15のN)。CPU20がフラッシャー信号53の立ち下がりを検出すると(S15のY)、CPU20は、スピーカ40に対して第2の周波数fb(2.4kHz)のパルス信号の出力を開始する(S16)。同時に、フラッシャー信号53がローレベルになったことに伴い、LED61は消灯する(S17)。LED61の消灯後、CPU20は、所定期間だけ音声出力のための第2の周波数fb(2.4kHz)によるパルス出力を継続する(S18のN)。所定期間が経過すると(S18のY)、CPU20は、第2の周波数fb(2.4kHz)のパルス出力を停止し(S19)、終了する。そして、このフローチャートで示したS10〜S19の処理が、イグニション信号52がオンレベルのとき繰り返し実行される。
【0019】
以上、本実施形態によると、ブザーの吹鳴を単一の周波数で行うのでなく、2種類の周波数をフラッシャー信号53のオンオフに同期させるので、運転手に対して聞き取りやすく、また耳障りな印象を与えない。したがって違和感のない音としてブザーを吹鳴させることができる。とくに、LED61の点灯及び消滅にあわせて、それぞれ異なる音を出力するので、一定のリズム感をドライバに感じさせることができる。
【0020】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態と同様にフラッシャー信号53のオン・エッジ及びオフ・エッジを検出したときに、それぞれ異なる音を出力する。第1の実施形態と異なる点は、オン・エッジ及びオフ・エッジの検出したときに出力する音が、それぞれにおいて複数の周波数で構成される。なお、本実施形態の警報装置10は、第1の実施形態の同じ構成の警報装置10で実現でき各構成の説明は省略するとともに、動作について図4及び図5にもとづき説明する。
【0021】
図4は、本実施形態に係る警報装置10におけるフラッシャー信号53、LED61の点滅及びブザーの吹鳴に関する動作状態を示したタイミングチャートである。CPU20は、フラッシャー信号入力部23に入力されるフラッシャー信号53を監視し、フラッシャー信号53がローレベルからハイレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第1〜第3の周波数f1〜f3のパルス信号を2パルスずつ順次出力する。さらに、CPU20は、フラッシャー信号53がハイレベルからローレベルに切り替わるエッジを検出したときに、第4〜6の周波数f4〜f6のパルス信号を順次2パルスずつ出力する。ここで、フラッシャー信号53は、第1の実施形態と同様に、オンレベル及びローレベルがそれぞれ300msで1周期が600msである。
【0022】
より詳細なCPU20の動作について、図5のフローチャートをもとに説明する。
まず、CPU20は、フラッシャー信号入力部23の入力レベルを監視して、警報入力の有無、つまり、イグニション信号52がローレベルからハイレベルへの切り替わりである立ち上がりエッジを検出する(S30)。立ち上がりエッジが検出されるまで継続される(S30のN)。
【0023】
立ち上がりエッジが検出されると(S30のY)、CPU20は、第1の周波数f1でのパルスを出力する(S31)。また、このとき、フラッシャー信号53はオンレベルであり、LED61が点灯する(S32)。つぎに、CPU20は、所定回数だけ第1の周波数f1のパルス出力を継続する(S33のN)。所定回数だけ第1の周波数f1のパルスが出力されると(S33のY)、CPU20は第2の周波数f2のパルスを出力し(S34)、さらに、所定回数だけ第2の周波数f2のパルス出力を継続し(S35のN)。所定回数だけ第2の周波数f2のパルスが出力されると(S35のY)、CPU20は第3の周波数f3のパルスを出力する(S36)。CPU20は所定回数だけ第3の周波数f3のパルス出力を継続し(S37のN)、所定回数だけ第3の周波数f3のパルスが出力されると(S37のY)、CPU20は第3の周波数f3のパルスを停止し、フラッシャー信号53の立ち下がりエッジの検出を行う(S38)。
【0024】
フラッシャー信号53がオンレベルの間継続して立ち下がりエッジの検出がなされ(S38のN)、立ち下がりエッジの検出がなされると(S38のY)、CPU20は、第4の周波数f4でのパルスを出力する(S39)。また、このとき、フラッシャー信号53はオフレベルであるので、LED61が消灯する(S40)。つぎに、CPU20は、所定回数だけ第4の周波数f4のパルス出力を継続する(S41のN)。所定回数だけ第4の周波数f4のパルスが出力されると(S41のY)、CPU20は第5の周波数f5のパルスを出力し(S42)、所定回数だけ第5の周波数f5のパルス出力を継続する(S43のN)。所定回数だけ第5の周波数f5のパルスが出力されると(S43のY)、CPU20は第6の周波数f6のパルスを出力する(S44)。CPU20は所定回数だけ第6の周波数f6のパルス出力を継続し(S45のN)、所定回数だけ第3の周波数f3のパルスが出力されると(S45のY)、CPU20は第3の周波数f3のパルスを停止し、終了する。そして、このフローチャートで示したS30〜S43の処理が、イグニション信号52がオンレベルのときに、繰り返し実行される。
【0025】
以上、本実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、本実施形態では、オン・エッジ又はオフ・エッジを検出した際のパルス出力回数は、各2回であったがこれに限る趣旨ではない。また、オン・エッジ検出時の出力パルス数とオフ・エッジ検出時の出力パルス数が異なっても良い。また、出力パルスの周波数の数は、上述のように各3種類に限る趣旨でなく、例えば、一方が1種類で他方が4種類であってもよい。また、オン・エッジ又はオフ・エッジを検出した際のパルス出力時間が異なってもよい。何れにせよ、フラッシャー信号53のオン・エッジ及びオフ・エッジを検出したときに、CPU20は、異なる特性の音声信号を、インタフェイス34を介してスピーカ40に出力する。このように、フラッシャー信号53のオン・エッジ及びオフ・エッジを検出したときの音をさまざまに組合せることができるので、よりリズム感のある報知音を実現できる。
【0026】
以上、本発明を実施形態を基に説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る、警報装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る、フラッシャー信号、LEDの点滅及びブザーの吹鳴に関する動作状態を示したタイミングチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る、警報装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る、フラッシャー信号、LEDの点滅及びブザーの吹鳴に関する動作状態を示したタイミングチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る、警報装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 警報装置
20 CPU
21 制御電源電圧入力部
22 イグニション信号入力部
23 フラッシャー信号入力部
24 発振子
31 定電圧電源
32〜34 インタフェイス
40 スピーカ
51 バッテリ
52 イグニション信号
53 フラッシャー信号
61 LED
62 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照明手段を点滅させるフラッシャー信号のオンレベル及びオフレベルを取得する工程と、
前記フラッシャー信号がオフレベルからオンレベルに変わったときに、第1の特性の音声信号を出力する工程と、
前記フラッシャー信号がオンレベルからオフレベルに変わったときに、前記第1の特性の音声信号とは異なる第2の特性の音声信号を出力する工程と、
を備えることを特徴とする報知音出力方法。
【請求項2】
前記第1の特性の音声信号と前記第2の特性の音声信号は、異なる周波数のパルスにより、所定の音声出力装置に対して出力されることを特徴とする請求項1に記載の報知音出力方法。
【請求項3】
前記第1の特性の音声信号と前記第2の特性の音声信号の少なくとも一方の音声信号は、少なくとも複数の異なる周波数のパルスにより構成されて、所定の音声出力装置に対して出力されることを特徴とする請求項1に記載の報知音出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−134626(P2010−134626A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308762(P2008−308762)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】