説明

場所打ち杭設置方法

【課題】所定の強度の杭を効率よく形成できると共に、充分な支持力を確保できるようにする。
【解決手段】複数の場所打ち杭Pを間隔をあけて設置する各予定箇所2毎に、それら予定箇所2の周囲に、予め、地盤改良を実施し、その後、各予定箇所2に場所打ち杭Pを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置によって地盤掘削した穴内に、筒状に組んだ鉄筋カゴを落とし込み、後からコンクリートを流し込んで一体の杭を形成する場所打ち杭設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の場所打ち杭設置方法によって形成される場所打ち杭は、杭の先端支持力のみならず、周面摩擦力をも支持力として期待することができるもので、杭の先端支持力の増加を目的としたものには拡底杭等(図6(a)参照)があった。一方、周面摩擦力の増加を目的としたものには、杭Pの外周面に節20を形成したものがあった(図6(b)参照)。
前者の場所打ち杭を形成するには、図6(a)に示すように、掘削装置によって杭穴3を形成する際に、他の部分より大径に掘削した拡径部1を杭穴3の下端部に形成することで実施される(以後、単に従来第1方法という)。
後者の場所打ち杭を形成するには、図6(b)に示すように、前記鉄筋カゴ4に、予め、所定深度で杭外周側にグラウト材Gを注入できるようにグラウトパイプ21とグラウトノズル22を組み込んでおき、杭穴3に前記鉄筋カゴ4を落とし込んでコンクリート5を充填した後に、前記グラウトノズル22からグラウト材Gを注入し、杭Pの外周面にグラウト材Gによる節20を形成する(例えば、特許文献1参照)ことで実施される(以後、単に従来第2方法という)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255107号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭設置対象となる地盤には、砂質土や粘性土や砂れき等、さまざまな土質が存在すると共に、掘削時に孔壁の安定が保ち難い内部摩擦角の小さな土質も存在している。
特に、前述の拡径部においては、掘削孔壁が下向きに傾斜しているから崩落が発生し易い。
上述した前記従来第1方法によれば、内部摩擦角の小さな土による土層部分や、拡径部での地盤安定が図り難い。従って、対象地盤への負荷を抑えるように時間を掛けて掘削する必要があり、掘削効率が低くなり易い問題点がある。
特に、拡径部を掘削する際には、崩落防止のために掘削孔壁の傾きを小さくする必要があり、拡径部の直径をむやみに大きくできないから、拡径部の平面積を充分に確保できず、杭の支持力の増加を図り難い問題点がある。
一方、前記従来第2方法によれば、前記従来第1方法の場合と同様に、内部摩擦角の小さな土が層をなしている部分での地盤安定が図り難く、掘削効率が低くなり易い問題点がある。
また、予め、鉄筋カゴにグラウトパイプやグラウトノズル等の埋設物を組み込んでおく必要があり、これら埋設物は、コンクリートの断面欠損となって強度低下の原因になり易い。更には、杭周囲の地盤へのグラウト材の注入は、杭本体のコンクリートが充分な強度を発現する前に実施すると、かえってコンクリートに悪影響を及ぼし、強度低下の原因になり易い問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、所定の強度の杭を効率よく形成できると共に、充分な支持力が確保できる場所打ち杭設置方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、複数の場所打ち杭を間隔をあけて設置する各予定箇所毎に、それら予定箇所の周囲に、予め、地盤改良を実施し、その後、前記各予定箇所に前記場所打ち杭を設置するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、場所打ち杭を設置する予定箇所の周囲に地盤改良を実施した後、場所打ち杭を設置するから、掘削範囲の外周部分の地盤(内部摩擦角の小さな土層をも含む)は、予め、地盤改良によって崩れにくい状態に改良されている。
従って、杭穴を掘削する際に、必要以上の時間を掛けずに実施でき、効率よく杭設置作業を実施することができる。
また、場所打ち杭の中にコンクリートの断面欠損が生じないから、所定の杭強度を確保することができる。
更には、地盤改良された改良土と杭との一体性が得られるから、杭の支持力を向上させることができる。
以上の結果、所定の強度の杭を効率よく形成できると共に、充分な支持力が確保できるようになる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記場所打ち杭は、その長手方向での一部に拡径部を備えており、前記地盤改良は、少なくとも、前記拡径部に対応した深度に実施するところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、拡径部に対応した地盤を地盤改良するから、崩れにくい状態に改良されており、掘削孔壁の傾きを大きくした掘削を実施しても、地盤の崩落の無い状態に掘削できる。
従って、拡径部の直径を大きくして、拡径部の平面積を充分に確保することで杭の支持力の増加を図ることができる。
尚、拡径部に関しては、場所打ち杭の下端部に設ける所謂「拡底杭」に限らず、上下中間部に拡径部を設ける場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】場所打ち杭の設置状況を示す正面図
【図2】地盤改良の施工状況を示す説明図
【図3】場所打ち杭の設置状況を示す正面図
【図4】別実施形態の場所打ち杭を示す正面図
【図5】別実施形態の場所打ち杭を示す正面図
【図6】従来例の場所打ち杭を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0012】
図1は、本発明の場所打ち杭設置方法によって設置された場所打ち杭Pを示している。
【0013】
場所打ち杭Pの複数は、横間隔をあけて設置してあり、場所打ち杭Pの上方に形成された建物Bの荷重を、これらの場所打ち杭Pで支持している。
場所打ち杭Pは、円柱形状に形成した鉄筋コンクリート造の杭であり、下端部と上下中間部とに拡径部1が設けられている。
二つの拡径部1の内、下端部の拡径部1Bは、杭の先端面積の拡大による先端支持力の増加に寄与している。
一方、上下中間部の拡径部1Aは、杭の周面摩擦力を含む周面支持力の増加に寄与している。
【0014】
また、上下中間部の拡径部1Aの周囲地盤には、予め、地盤改良によって地盤改良域Kが形成されている。
この地盤改良域Kによって、拡径部1Aの形成時(杭穴掘削時)においては、孔壁の維持を図ることができ、杭形成後においては、杭Pとの一体性の向上によって支持力増加が図れる。
【0015】
地盤改良工事は、当該実施形態においては、場所打ち杭Pを設置する予定箇所2の周りを、地上から例えばボーリングマシーンやオーガーマシーン等によって、図2に示すように、円柱状に掘削し、掘削範囲内にセメント系材料を供給して混練することによって、在来地盤より止水性や強度の高い改良体を形成するものである。そして、隣接するものどうしを密接状態に形成することで、前記予定箇所2の周りに筒状の地盤改良域Kを形成することができる。
【0016】
次に、当該場所打ち杭Pの設置方法について説明する。
[1]前記予定箇所2毎に、それら予定箇所2の周囲に、上述の地盤改良工事を予め実施して地盤改良域Kを形成する(図2参照)。尚、地盤改良深度は、場所打ち杭Pの全長にわたって実施しても良いが、当該実施形態においては、杭Pの拡径部1に対応した深度のみを地盤改良するものである。
[2]前記各予定箇所2に前記場所打ち杭Pを設置する。
具体的には、図には示さない掘削装置によって地上から所定の深度まで杭穴3を形成する。その際、前記拡径部1の深度においては、掘削装置の拡径機構を使用して、拡径穴を形成しておく(図3(a)参照)。杭穴3内に、鉄筋カゴ4を落とし込むと共にコンクリート5を充填して一体化する(図3(b)、図1参照)。
【0017】
当該実施形態による場所打ち杭設置方法によれば、場所打ち杭Pの予定箇所2周囲を、予め、地盤改良するので、杭穴3を掘削する際に、孔壁安定が図られており、所定通りの余掘り形状で拡径部1を掘削できる。また、必要以上の時間を掛けずに掘削でき、効率よく杭設置作業を実施することができる。
更には、地盤改良された地盤改良域Kの改良土と杭Pとの一体性が得られるから、杭の支持力を向上させることができる。
従って、所定の強度の杭を効率よく形成できると共に、充分な支持力が確保できるようになる。
また、地盤改良を地上から施工するから、その地盤改良に伴う掘削状況(例えば、固さや透水性等)によって、場所打ち杭Pの対象地盤状況を事前に認識することができる。従って、その事前情報をもとにして、場所打ち杭Pの形成計画の再調整を図ることもできる。
【0018】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0019】
〈1〉 前記場所打ち杭Pは、先の実施形態で説明したように、拡径部1として、上下の2ヵ所に設けたものに限らず、例えば、上下中間部のみに拡径部1を設けたものや、図4(a)、図5に示すように、下端部のみに拡径部1を設けたものであってもよい。また、上下中間部の複数箇所に拡径部1を設けたものであってもよい。
それらを含めて、拡径部1と総称する。
〈2〉 前記地盤改良域Kは、先の実施形態で説明したものに限るものではなく、例えば、円柱状の各地盤改良体を、杭Pの径方向に一重に配置することに限らず、二重以上の複数列にわたって配置して構成するものであってもよい。また、地盤改良の施工方法についても、適宜選択することが可能である。
地盤改良深度に関しては、拡径部1に対応する範囲のみを対象とすることに限らず、杭Pの施工全長にわたって実施するものであったり、拡径部1以外の上下中間部のみに実施するものであってもよい(図5参照)。
また、地盤改良域Kの形状に関しても、円筒形状に限らず、例えば、図4(b)に示すように、円錐台形状の外形であったり、図4(c)に示すように、上下反転の円錐台形状の外形であってもよい。
【0020】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
1 拡径部
2 予定箇所
P 場所打ち杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の場所打ち杭を間隔をあけて設置する各予定箇所毎に、それら予定箇所の周囲に、予め、地盤改良を実施し、その後、前記各予定箇所に前記場所打ち杭を設置する場所打ち杭設置方法。
【請求項2】
前記場所打ち杭は、その長手方向での一部に拡径部を備えており、前記地盤改良は、少なくとも、前記拡径部に対応した深度に実施する請求項1に記載の場所打ち杭設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−38379(P2011−38379A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189469(P2009−189469)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】