説明

塗工用ロッド、及び塗布液を塗布する方法

【課題】 耐摩耗性に優れ、傷のつかない塗工用ロッド、及び塗布液を塗布する方法を提供する。
【解決手段】
連続走行するウェブに塗布液を転移塗布、又は連続走行するウェブに過剰に供給された塗布液を除去するための塗工用ロッド12であって、外周面に周方向の凹部25Aと周方向の凸部25Bが軸方向に交互に形成された実質的に円柱状の母材20と、母材20の最表面にアモルファスCrメッキ26が施され、アモルファスCrメッキ26はメッキ形成後に熱処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工用ロッド、及び塗布液の塗布方法に関して、薄い金属板、紙、フィルムなどのシート状または帯状の支持体(以下、ウェブという)に各種の液状物質(塗布液)を塗布したり、塗布後に液状物質を平滑化したりするのに使用される塗工用ロッド、及び塗布液を塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄い金属板、紙、プラスチックフィルム等のウェブに各種の塗布液を塗布する塗布装置としては、ロールコータ、エアーナイフコータ、ダイを用いたコータ、及びロッドコータ等の各種の装置が知られている。
【0003】
これらの塗布装置の中でロッドコータは、簡易な塗布装置であり、各種の塗布液を各種のウェブに塗布することができるので、広く利用されている。ロッドコータは、ウェブに塗布された塗布液の過剰分を塗工用ロッド(バーともいう)で掻き落とすタイプのものと、ウェブへの塗布と塗布液量の調整の両方を1つの塗工用ロッドで行うタイプのものとがある。いずれのタイプのロッドコータにおいても、塗工用ロッドの表面の周方向には多数の溝が形成されている。この溝の深さ及び幅を調整することにより、ウェブに塗布する塗布液量や掻き落とす塗布液量が調整される。塗工用ロッドのロッド周面に溝を形成する方法としては、ロッド自体の表面に切削加工、転造加工、レーザー加工等により凹部(溝)と凸部を交互に形成する方法が知られている。
【0004】
このような外周面に凹凸部を有する塗工用ロッドを使用した場合、その凸部が磨耗してしまうと、凹部(溝)の深さが浅くなってしまう。そのため、塗布液量の調整精度が悪くなり、塗布精度が低下する。特許文献1は、この問題を解決するため、塗工用ロッドの表面を、硬質Crメッキ、アモルファスCrメッキすることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4460257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬質Crメッキ、アモルファスCrメッキされた塗工用ロッドで、例えば、陽極酸化アルミニウム皮膜を有するウェブに高速塗布すると、表面の硬度不足により耐久性が不十分となり凸部が短期間に磨耗してしまう問題がある。また、工程内の異物により、塗工用ロッドの表面が傷ついてしまい使用できなくなる問題がある。
【0007】
また、塗布液の溶剤の極性が高くなると耐久性が低くなることから、どのような極性の塗布液を使用した場合でも、優れた耐久性を発揮できる塗工用ロッドが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、耐摩耗性に優れ、傷のつかない塗工用ロッド、及び塗布液を塗布する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、連続走行するウェブに塗布液を転移塗布、又は連続走行するウェブに過剰に供給された塗布液を除去するための塗工用ロッドであって、外周面に周方向の凹部と周方向の凸部が軸方向に交互に形成された実質的に円柱状の母材と、前記母材の最表面にアモルファスCrメッキが施され、前記アモルファスCrメッキはメッキ形成後に熱処理されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、アモルファスCrメッキ形成後に熱処理を施したので、アモルファスCrメッキの硬度を高くすることができる。塗工用ロッドの表面硬度を高くすることで、その表面は耐摩耗性に優れ、傷が付きにくくなる。例えば、アモルファスCrメッキの硬度は1200(Hv)以上である。
【0011】
好ましくは、前記熱処理は熱処理温度が200℃〜600℃の範囲である。600℃を超えると母材が熱により変形し、真直度が悪化する。塗工用ロッドの回転周期の塗布ムラが発生してしまう場合がある。また、200℃より低いと硬度を上げるための熱処理時間が長くなり、塗工用ロッドの生産性が低下してしまう場合がある。より好ましくは、前記熱処理の熱処理温度は200℃〜400℃である。
【0012】
好ましくは、前記アモルファスCrメッキは2μm〜10μmの膜厚を有する。より好ましくは、前記アモルファスCrメッキは1μm〜5μmの膜厚を有する。
【0013】
好ましくは、前記凸部は長さ10μm以上の平坦部を備える。これにより、ウェブに対する面圧を小さくすることができる。
【0014】
本発明の別の一態様によると、塗布液を塗布する方法は、ウェブを連続的に送り出す工程と、何れかの前記塗工用ロッドを備えるロッドコータにより、極性溶剤を少なくとも含有する塗布液を前記ウェブに供給する工程と、を有する。
【0015】
本態様によれば、どのような極性の塗布液を使用した場合でも、優れた耐久性を発揮できる。
【0016】
好ましくは、前記極性溶剤が水、アルコール、ケトン、またはエステル化合物の少なくともいずれかである。
【0017】
好ましくは、前記アルコールがヒドロキシ基一つあたりの炭素原子数が6以下のアルコールである。
【0018】
好ましくは、前記ケトンがカルボニル基一つあたりの炭素原子数(カルボニル基の炭素は含まない)が5以下のケトンである。
【0019】
好ましくは、前記エステル化合物がカルボキシル基一つあたりの炭素原子数(カルボキシル基の炭素は含まない)が6以下のエステル化合物である。
【0020】
極性溶剤の極性が小さいアルコール、ケトン、エステル化合物を含む塗布液を塗布する場合、耐摩耗性の効果が大きい。
【0021】
好ましくは、前記極性溶剤が全塗布溶剤の50質量%以上存在する。
【0022】
好ましくは、前記ウェブが陽極酸化アルミニウム皮膜を有するものである。ウェブが陽極酸化アルミニウム皮膜を有する場合、硬度の高い塗工用ロッドを好適に利用できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗工用ロッドによれば、耐摩耗性、耐キズ性を向上することができる。本発明の塗布液を塗布する方法によれば、高い耐摩耗性、耐キズ性を維持しながら極性溶媒を含む塗布液をウェブに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】塗工用ロッドを備えるロッドコータを示す概略図。
【図2】塗工用ロッドを示す斜視図。
【図3】塗工用ロッドの部分断面図。
【図4】塗工用ロッドに対する耐久性と溶剤の極性の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0026】
図1は塗工用ロッドを備えるロッドコータを示す。ロッドコータ10は、塗工用ロッド12、塗工用ロッド12を回転自在に支持するロッド支持ブロック13、ロッド支持ブロック13に近接する堰部材16を備える。ロッド支持ブロック13と堰部材16とで形成された塗布液供給路17に塗布液15が供給される。走行するウェブ11に接触した状態で、ウェブ11の幅方向に塗工用ロッド12が配置される。ロッドコータ10において、1つの塗工用ロッド12が、ウェブ11への塗布液の供給と塗布液量の調整の両方を行なう。塗工用ロッド12は、ウェブ走行方向と同方向に回転させても、或いは静止状態にしても、逆方向に回転させてもよい。
【0027】
図2は、塗工用ロッドの概略構成図である。図2に示すように、塗工用ロッド12は円柱状の母材20から構成される。母材20はSUS等の材料で構成される。母材20の周面の周方向に、母材20の略全長に渡って溝(凹部25A)が形成される。
【0028】
図3は、塗工用ロッドを軸方向で切断した部分断面図である。塗工用ロッド12は、円柱状に形成された母材20で構成される。母材20の外周面には多数の溝が形成される。これにより、母材20の表面に周方向の凹部25A(溝)と周方向の凸部25Bとが母材20の軸方向に交互に形成される。母材20の表面に形成された凸部25Bの上面25Cは平坦面に形成される。母材20の表面に凹部25Aを形成する方法として、切削加工、転造加工、レーザー加工等を利用することができる。これらの加工時に平坦面を形成することが好ましい。
【0029】
耐摩耗性及び耐キズ性を向上するために、母材20の表面に表面硬化処理が施される。表面硬化処理は、一般的に硬度が高く、摩擦係数が低いものがよいとされてきた。しかし、使用環境下によっては、別の指標が必要となる。特に、極性を有する有機溶剤を使用する場合、導電性の表面硬化処理により耐摩耗性が向上するた。そたのめ、金属系かつ高硬度な表面硬化処理が必要となる。これを両立するために、アモルファスCrメッキ後に熱処理を施すことを見出した。
【0030】
図3に示すように、母材20の外周面に、アモルファスCrメッキ26が施される。アモルファスCrメッキ26は、クロム酸、硫酸に加え、ギ酸をはじめとする有機酸を添加し、電解処理をすることにより母材20の外周面、凹部25A、凸部25B上に形成される。
【0031】
母材20の表面にアモルファスCrメッキ26を形成した後、アモルファスCrメッキ26に熱処理が施される。熱処理をアモルファスCrメッキ26に施すことにより、アモルファスCrメッキ26の硬度が、熱処理前に比べて約2倍高くなる。例えば、アモルファスCrメッキの硬度が、熱処理により800〜1100(Hv)から1500〜1900(Hv)まで高くなる。
【0032】
アモルファスCrメッキ26に施される熱処理は、好ましくは、熱処理温度が200〜600℃である。600℃を超えると母材20が熱により変形し、真直度が悪化するからである。真直度が悪化すると、塗工用ロッド12の回転周期の塗布ムラが発生してしまう場合がある。一方、200℃より低いと硬度を上げるための熱処理時間が長くなり、塗工用ロッド12の生産性が低下してしまう場合がある。したがって、より好ましくは、熱処理温度は200〜400℃である。なお、熱処理時間は、熱処理温度に応じて異なる。例えば、200℃の場合、40時間程度であり、600℃の場合、1時間程度である。
【0033】
凸部25Bの上面25Cの平坦面の長さ(d)は、好ましくは、10μm以上である、平坦面の長さ(d)を10μm以上とすることにより、塗工用ロッド12とウェブの接触面の面圧を低減することができる。面圧を低減することで、塗工用ロッド12の表面の耐摩耗性を向上することができる。
【0034】
上面25Cの平坦面の長さ(d)を10μm以上確保することにより、従来のワイヤを巻いたロッドよりも耐摩耗性を向上できる。平坦面の長さ(d)を10μm以上確保するために、転造加工により凹凸の形成することが好ましい。
【0035】
アモルファスCrメッキ26は2μm〜10μmの膜厚(t)を有することが好ましい。さらには1μm〜5μmの膜厚がより好ましい。アモルファスCrメッキ26の膜厚が薄いと、磨耗を防止するための十分な厚さが確保できなくなる。さらに、母材20の表面形状がアモルファスCrメッキ26に反映される。そのため、アモルファスCrメッキ26表面の滑らかさを確保できなくなる。一方、膜厚が厚い場合、アモルファスCrメッキ26の脆性が発現しやすくなる。これにより、母材20の表面にアモルファスCrメッキ26を形成する際に微小なクラックが発生する場合がある。また、塗工用ロッド12の使用時において、塗工用ロッド12の表面に大きな剪断応力や垂直応力が加わった時にクラックや剥離が生じ易くなる。
【0036】
なお、溝(凹部25A)の深さL、幅W、ピッチpの大きさにより塗布液量が調節される。
【0037】
図3は、母材20の外周面にアモルファスCrメッキ26が形成された塗工用ロッド12を開示する。ただし、これに限定されない。母材20の最表面にアモルファスCrメッキ26が施されていれば良く、母材20とアモルファスCrメッキ26との間に中間層、例えば、窒化膜、Ni膜等を形成することができる。
【0038】
ウェブに塗布される塗布液として、例えば、極性溶剤を含有する感光性樹脂塗布液が使用される。極性溶剤として、溶剤が水、アルコール、ケトン、またはエステル化合物の少なくともいずれかが使用される。好ましくは、極性溶剤が塗布液中の全塗布溶剤の50質量%以上存在する。
【0039】
アルコールとして、好ましくは、ヒドロキシ基ひとつあたりの炭素原子数が1〜6のアルコール、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールをあげることができる。
【0040】
ケトンとして、好ましくは、カルボニル基ひとつあたりの炭素原子数(カルボニル基の炭素は含まない)が1〜5のケトン、具体的にはアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノンをあげることができる。
【0041】
エステル化合物として、好ましくは、カルボキシル基ひとつあたりの炭素原子数(カルボキシル基の炭素は含まない)が2〜6のエステル化合物、具体的には酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸アミル、γ-ブチロラクトンをあげることができる。
【0042】
尚、ウェブとしては、帯状のものでもシート状のものでも良く、アルミニウム等の薄板金属、(更に陽極酸化アルミニウム皮膜を有するもの)、紙、プラスチックフィルム、レジンコーティング紙、合成紙等を使用できる。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6─ナイロン、6─ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン─2,6─ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルトーストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテト等が使用される。また、レジンコーティング紙に用いるレジンとしては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、これらには限定されない。ウェブの厚みも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取り扱い、汎用性の点で有利である。
【0043】
ロッドコータ10を用いた塗布方法を説明する。連続走行するウェブ11と塗工用ロッド12の接触部に塗布液15の液溜り18が形成される。回転する塗工用ロッド12により液溜り18の塗布液15がウェブ11に計量塗布される。
【0044】
塗工用ロッドは、一般的に、3〜70mmの外径を有する。ウェブは、10〜1000m/分の範囲の搬送速度で搬送される。使用される塗布液は、一般的に、0.5mPa・s〜100mPa・sの粘度を有する。
【0045】
以下に、本発明の実施の形態において好ましく使用又は適用できる塗布液に関して説明する。
【0046】
本発明の塗工用は、例えば平版印刷版の画像記録層の塗布液を塗布する際に、使用される。一般に、平版印刷版の画像形成層中には、極性の高い感光材料及びバインダーポリマーが使用されているため、塗布溶剤としてはメタノール、エタノール、1-メトキシー2−プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が好ましく使用される。
【0047】
特に、印刷機上で現像可能な画像記録層の場合には、画像記録層の湿し水浸透性を高め、機上現像する必要があり、通常のアルカリ現像液で現像する画像記録層よりも、より極性の高い素材が使用されるため、塗布溶剤も極性の高いものを使用する必要がある。
【0048】
機上現像可能な画像記録層の構成成分について詳細に説明する。
【0049】
機上現像方法とは、平版印刷版を画像露光する工程と、露光後の平版印刷版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する印刷工程とを有し、該印刷工程の途上において平版印刷版の未露光部分が除去されることを特徴とする。画像様の露光は平版印刷版を印刷機に装着した後、印刷機上で行ってもよいし、プレートセッターなどで別途行ってもよい。後者の場合は、露光済み平版印刷版は現像処理工程を経ないでそのまま印刷機に装着される。その後、該印刷機を用い、油性インキと水性成分とを供給してそのまま印刷することにより、印刷途上の初期の段階で機上現像処理、すなわち、未露光領域の画像記録層が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出され非画像部が形成される。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が用いられる。
【0050】
画像記録層が含有する機上現像可能な代表的な画像形成態様としては、(1)(A)増感色素、(B)ラジカル重合開始剤、及び、(C)ラジカル重合性化合物を含有して、重合反応を利用して画像部を硬化させる態様と、例えば、(1)ラジカル重合型の画像記録層に(D)疎水化前駆体を含有させてもよく、特に増感色素として赤外線吸収染料を用いる場合に効果的である。
【0051】
以下に、画像記録層に含有できる各成分について、順次説明する。
【0052】
(A)増感色素
本発明の画像記録層に用いられる増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、後述する重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0053】
350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、等を挙げることができる。
【0054】
360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(I)で表される色素である。
【0055】
【化1】

(一般式(I)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基又はヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又はN−(R3)をあらわす。R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR1及びR2とR3はそれぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。)
一般式(I)について更に詳しく説明する。R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
【0056】
次に、一般式(I)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環基又はヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環の具体例としては、一般式(I)中のR1、R2及びR3で記載したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
このような増感色素の具体例としては特開2007−58170号公報の〔0047〕〜〔0053〕に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0058】
更に、下記一般式(II)〜(III)で示される増感色素も用いることができる。
【0059】
【化2】

式(II)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0060】
式(III)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
【0061】
また、特開2007−171406、特開2007−206216、特開2007−206217、特開2007−225701、特開2007−225702、特開2007−316582、特開2007−328243の各公報に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0062】
続いて、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素(以降、「赤外線吸収剤」と称する場合がある)について詳述する。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0063】
赤外線吸収染料は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述のラジカル重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収染料は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料である。
【0064】
赤外線吸収染料としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0058]〜[0087]に記載されている化合物を用いることができる。
【0065】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0066】
【化3】

一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−N(R9)(R10)、−X2−L1又は以下に示す基を表す。
【0067】
ここで、R9及びR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子を表し、またR9とR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい。X2は酸素原子又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。以下に示す基において、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子
より選択される置換基を表す。
【0068】
【化4】

R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0069】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa−は必要ない。好ましいZa−は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0070】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載されたものを挙げることができる。
【0071】
また、これらの(A)赤外線吸収染料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報[0072]〜[0076]に記載の化合物が好ましい。
【0072】
本発明における画像記録層中の増感色素の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0073】
(B)ラジカル重合開始剤
本発明に用いられる(B)ラジカル重合開始剤としては、(C)ラジカル重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうるラジカル重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
【0074】
本発明におけるラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0075】
(a)有機ハロゲン化物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0022]〜[0023]に記載の化合物が好ましい。
【0076】
(b)カルボニル化合物としては、特開2008−195018号公報の段落番号[0024]に記載の化合物が好ましい。
【0077】
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0078】
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0025]に記載の化合物が好ましい。
【0079】
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0026]に記載の化合物が好ましい。
【0080】
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
【0081】
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0027]に記載の化合物が好ましい。
【0082】
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]に記載の化合物が好ましい。
【0083】
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2002−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0084】
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0028]〜[0030]に記載の化合物が好ましい。
【0085】
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、米国特許出願公開第2008/0311520号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号、特開2008−195018号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0086】
上記の中でもより好ましいものとして、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0087】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、更に好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0088】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナートが挙げられる。
【0089】
アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0090】
ラジカル重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0091】
(C)ラジカル重合性化合物
本発明に用いることができる(C)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマーを意味し、分子量が1000以下の重合可能な化合物である。
【0092】
具体例としては、特開2008−105018号公報の段落番号[0089]〜[0098]に記載の化合物が挙げられる。なかでも好ましいものとして、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)とのエステルが挙げられる。別の好ましいラジカル重合性化合物としては特開2005−329708号公報に記載のイソシアヌル酸構造を有する重合性化合物が挙げられる。
【0093】
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0094】
本発明において、(C)ラジカル重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは15〜75質量%の範囲で使用される。
【0095】
(D)疎水化前駆体
本発明では、特に機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を用いることができる。本発明における疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくとも一つの粒子が好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0096】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
【0097】
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0098】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0099】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0100】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0101】
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載の如く、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0102】
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中及び/又は表面に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができ、特に、(C)ラジカル重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0103】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
【0104】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0105】
疎水化前駆体の含有量としては、画像記録層全固形分の5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0106】
(E)その他の成分
画像記録層には、必要に応じて、さらに他の成分を含有することができる。
【0107】
(1)バインダーポリマー
本発明の画像記録層には、画像記録層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0108】
なかでも本発明に好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0109】
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリール基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
【0110】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0111】
また、本発明のバインダーポリマーは、さらに親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に現像性、特に機上現像する場合に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
【0112】
親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。
【0113】
また、本発明のバインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
【0114】
以下に本発明に用いられるバインダーポリマーの具体例(1)〜(11)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
【化5】

【0116】
【化6】

なお、本発明におけるバインダーポリマーは質量平均モル質量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、1万〜30万であるのがさらに好ましい。
【0117】
本発明では必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを用いることができる。また、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することもできる。
【0118】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。
【0119】
(2)低分子親水性化合物
本発明における画像記録層は、耐刷性を低下させることなく、現像性、特に機上現像する場合に機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
【0120】
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0121】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0122】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0123】
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。
【0124】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0125】
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0126】
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
【0127】
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0128】
(3)感脂化剤
本発明の画像記録層には、着肉性を向上させるために、画像記録層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、オーバーコート層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0129】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0130】
上記含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩類、及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
【0131】
上記アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。
【0132】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
【0133】
<還元比粘度の測定方法>
30質量%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れ落ちる時間を測定し、計算式(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出した。
【0134】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5)
上記感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15.0質量%、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0135】
(4)その他
さらにその他の成分として、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、及び共増感剤もしくは連鎖移動剤などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]、特開2006−091479号公報の段落番号[0023]〜[0027]、米国特許公開2008/0311520号明細書[0060]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
【0136】
〔帯状支持体〕
本発明に用いられる帯状支持体として、寸度的に安定なアルミニウム又はその合金(例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルとの合金)を用いることができる。通常は、アルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会発行)に記載の従来公知の素材、例えば、JIS A l050材、JIS A ll00材、JIS A 3103材、JIS A 3004材、JIS A 3005材又は引っ張り強度を増す目的でこれらに0.1質量%以上のマグネシウムを添加した合金が用いられる。ラジカル重合性化合物を含有する機上現像型刷版の場合、Fe0.08〜0.45質量%、Si0.05〜0.20質量%、Al−Fe系金属間化合物の含有量が0.05質量%以下のアルミニウム合金を用いることが好ましい。
【0137】
帯状支持体12がアルミニウム板の場合、表面処理部において、その表面を目的に応じて各種処理を施すのが通例である。一般的な処理方法としてはアルミニウム板を先ず脱脂又は電解研磨処理とデスマット処理によりアルミ表面の清浄化を行う。その後に機械的粗面化処理又は/及び電気化学的粗面化処理を施しアルミニウム板の表面に微細な凹凸を付与する。なお、このときに更に化学的エッチング処理とデスマット処理を加える場合もある。その後、アルミニウム板表面の耐摩耗を高めるために陽極酸化処理が施され、その後アルミニウム表面は必要に応じて親水化処理及び/又は封孔処理が行われる。
【0138】
本発明の平版印刷版に用いられる支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0139】
〔バックコート層及び下塗り層〕
帯状支持体の裏面には、重ねた場合の感光性組成物層の傷付きを防ぐための有機高分子化合物からなる被覆層(例えば特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平5−45885号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層)が必要に応じて設けられる。
【0140】
また、必要に応じて帯状支持体の表面に下塗り層塗布液を塗布・乾燥して下塗り層を形成することができる。
【0141】
下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ。
【0142】
下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO3H2、−OPO3H2、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−COCH2COCH3などの吸着性基を有するモノマーと、親水性のスルホ基を有するモノマーと、更にメタクリル基、アリール基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体である高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、高分子樹脂の極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーがさらに共重合されていてもよい。
【0143】
下塗り層用高分子樹脂中の不飽和二重結合の含有量は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0144】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
【0145】
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mであるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0146】
バックコート層、及び下塗りを塗布する方法として、コーティングロッドを用いる方法や、エクストルージョン型コーターを用いる方法、あるいはスライドビードコーターを用いる方法等を用いることができる。
【0147】
また、塗布されたバックコート層、下塗りを乾燥する方法として、乾燥機内にパスローラを配置し、支持体をラップさせて搬送しながら熱風を吹き付けて乾燥する方法、支持体の上下面からノズルによりエアーを供給し支持体を浮上させながら乾燥する方法、帯状物の上下に配設した加熱板からの放射熱により乾燥する方法、あるいはロール内部に熱媒体を導通し加熱しそのロールと支持体の接触による熱伝導により乾燥する方法等を用いることができる。
【0148】
いずれの方法においても、支持体に塗布液が塗布された帯状物を均一に乾燥するために、その加熱制御は、支持体や塗布液の種類、塗布量、溶剤の種類、走行速度等に応じて熱風あるいは熱媒体の流量、温度、流し方を適宜変えることにより行われる。また、2種類以上の乾燥方法を組み合わせて用いても良い。
【0149】
[実施例]
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。但し、これらに限定されるものではない。
【0150】
<評価1>
〔帯状支持体の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した。その後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。このアルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0151】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0152】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0153】
次に、このアルミニウム板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
【0154】
その後、非画像部の親水性を確保するため、このアルミニウム板に2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗して帯状支持体を得た。Siの付着量は10mg/mであった。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0155】
[下塗り層の塗布]
次に、上記の帯状支持体12上に、下記下塗り層用塗布液を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布したのち、熱風乾燥機により80℃で10秒間乾燥し、以下の実験に用いる下塗り層を有する帯状支持体12を作製した。
【0156】
<下塗り層用塗布液>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0157】
【化7】

[画像記録層の塗布・乾燥]
上記のようにして形成された下塗り層の上に、画像記録層用塗布機14によって下記組成の画像記録層用塗布液を塗布した後、画像記録層用乾燥機16で乾燥した。画像記録層の塗布量は乾燥後において1.0g/mになるようにした。
【0158】
画像記録層用塗布液は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0159】
<感光液(1)>
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.240g
・赤外線吸収染料(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・ラジカル重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・アンモニウム基含有ポリマー〔下記構造〕 0.035g
[還元比粘度44cSt/g/ml]
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・2−ブタノン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
上記の、バインダーポリマー(1)、ラジカル重合開始剤(1)、赤外線吸収染料(1)、低分子親水性化合物(1)、フッ素系界面活性剤(1)、及びアンモニウム基含有ポリマーの構造、並びにミクロゲル(1)の合成法は、以下に示す通りである。
【0160】
【化8】

−ミクロゲル(1)の合成−
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0161】
〔ロッドバー耐久性の評価〕
前記画像形成層の塗布に塗工用ロッドとして、アモルファスCrメッキの熱処理品と熱処理なし品を使用し、ラインスピード100m/分で塗布し、耐摩耗性を比較評価した。耐摩耗性は、10万m当りの塗布量減少率で比較した。
【0162】
【表1】

次いで、塗布液に含まれる主溶媒の種類を変えて、耐摩耗性、耐キズ性を評価した。
【0163】
<塗工用ロッドの形成>
φ10mmのSUS製母材の表面に転造加工に、周方向の凹部と周方向の凸部を形成した。
【0164】
<評価2>
上述の母材にアモルファスCrメッキ(1000Hv/1.3nΩ・cm)と、アモルファスCrメッキ後の熱処理(1600Hv/1.3nΩ・cm)の硬化処理を施した。
【0165】
ライン速度100m/minで走行するウェブに、主溶媒として水、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールを含む20cc/mの塗布液を、塗工用ロッドを用いて塗布した。塗布量の変化により耐摩耗性を評価した。また、強制的にアルミナ粒子を混入させて塗工用ロッド表面のキズの頻度を見て耐キズ性を評価した。表2は評価2の条件、及び評価結果を示す。
【0166】
【表2】

塗布液主溶媒について、分子量は水、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールの順で大きくなる。分子量に応じて、水、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールの順で溶剤の極性が小さくなる。
【0167】
表1から、条件2-1〜条件2-5の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が小さかった。一方、条件2-6〜条件2-10の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が大きかった。このことから、条件2-1〜条件2-5について、どのような極性の塗布液を使用した場合でも、優れた耐久性を発揮できることが理解できる。条件2-3〜条件2-5と条件2-8〜条件2-10と比較すると、極性が大きな溶剤を使用するときにはアモルファスCrメッキ後に熱処理を施した塗工用ロッドは耐摩耗性の効果をより発揮することが理解できる。
【0168】
耐キズ性について、条件2-1〜条件2-5が条件2-6〜条件2-10と比較してキズの数が少なかった。条件2-1〜条件2-5が耐キズ性の効果が高いことが理解できる。
【0169】
<評価3>
上述の母材に硬質Crメッキ(900Hv/1.3nΩ・cm)と、アモルファスCrメッキ後の熱処理(1600Hv/1.3nΩ・cm)の硬化処理を施した。
【0170】
ライン速度100m/minで走行するウェブに、主溶媒としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ブタノン、ヘキサノン、オクタノンを含む20cc/mの塗布液を、塗工用ロッドを用いて塗布した。塗布量の変化により耐摩耗性を評価した。表3は評価3の条件、及び評価結果を示す。
【0171】
【表3】

塗布液主溶媒について、分子量はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ブタノン、ヘキサノン、オクタノンの順で大きくなる。分子量に応じて、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ブタノン、ヘキサノン、オクタノンの順で溶剤の極性が小さくなる。
【0172】
表3から、条件3-1〜条件3-6の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が小さかった。一方、条件3-7〜条件3-10の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が大きかった。このことから、条件3-1〜条件3-6について、どのような極性の塗布液を使用した場合でも、優れた耐久性を発揮できることが理解できる。条件3-3〜条件3-6と条件3-9〜条件3-12と比較すると、極性が大きな溶剤を使用するときにはアモルファスCrメッキ後に熱処理を施した塗工用ロッドは耐摩耗性の効果をより発揮することが理解できる。
【0173】
<評価4>
上述の母材に硬質Crメッキ(900Hv/1.3nΩ・cm)と、アモルファスCrメッキ後の熱処理(1600Hv/1.3nΩ・cm)の硬化処理を施した。
【0174】
ライン速度100m/minで走行するウェブに、主溶媒とし蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸オクチルを含む20cc/mの塗布液を、塗工用ロッドを用いて塗布した。塗布量の変化により耐摩耗性を評価した。表4は評価4の条件、及び評価結果を示す。
【0175】
【表4】

塗布液主溶媒について、分子量は蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸オクチルの順で大きくなる。分子量に応じて、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸オクチルの順で溶剤の極性が小さくなる。
【0176】
表3から、条件4-1〜条件4-5の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が小さかった。一方、条件4-6〜条件4-10の耐摩耗性について、主溶剤の種類による差が大きかった。このことから、条件4-1〜条件4-5について、どのような極性の塗布液を使用した場合でも、優れた耐久性を発揮できることが理解できる。条件4-3〜条件4-5と条件4-8〜条件4-10と比較すると、極性が大きな溶剤を使用するときにはアモルファスCrメッキ後に熱処理を施した塗工用ロッドは耐摩耗性の効果をより発揮することが理解できる。
【0177】
図4は、耐摩耗性と溶剤の極性の関係を示す概念図である。実線はアモルファスCrメッキ後に熱処理を施した塗工用ロッドを使用した本実施の形態の場合、破線は従来の硬質のコーティング膜、硬質Crメッキ、アモルファスとCrメッキを施した塗工用ロッドを使用した従来の形態の場合を示す。図4から、本実施の形態では、溶剤の極性が変わっても、安定した耐久性を有している。特に、溶剤の極性が高い場合、本実施の形態は、従来の形態に比して大きい耐久性を有する。
【符号の説明】
【0178】
12…塗工用ロッド、20…母材、26…アモルファスCrメッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行するウェブに塗布液を転移塗布、又は連続走行するウェブに過剰に供給された塗布液を除去するための塗工用ロッドであって、
外周面に周方向の凹部と周方向の凸部が軸方向に交互に形成された実質的に円柱状の母材と、
前記母材の最表面にアモルファスCrメッキが施され、前記アモルファスCrメッキはメッキ形成後に熱処理されていることを特徴とする塗工用ロッド。
【請求項2】
請求項1記載の塗工用ロッドであって、前記熱処理は熱処理温度が200〜600℃の範囲である塗工用ロッド。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗工用ロッドであって、前記アモルファスCrメッキは2μm〜10μmの膜厚を有する塗工用ロッド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか記載の塗工用ロッドであって、前記凸部は長さ10μm以上の平坦部を備える塗工用ロッド。
【請求項5】
ウェブを連続的に送り出す工程と、
請求項1〜4の何れか記載の塗工用ロッドを備えるロッドコータにより、極性溶剤を少なくとも含有する塗布液を前記ウェブに供給する工程と、
を有する塗布液を塗布する方法。
【請求項6】
請求項5記載の塗布液を塗布する方法であって、前記極性溶剤が水、アルコール、ケトン、またはエステル化合物の少なくともいずれかである塗布液を塗布する方法。
【請求項7】
請求項6記載の塗布液を塗布する方法であって、前記アルコールがヒドロキシ基一つあたりの炭素原子数が6以下のアルコールである塗布液を塗布する方法。
【請求項8】
請求項6記載の塗布液を塗布する方法であって、前記ケトンがカルボニル基一つあたりの炭素原子数(カルボニル基の炭素は含まない)が5以下のケトンである塗布液を塗布する方法。
【請求項9】
請求項6記載の塗布液を塗布する方法であって、前記エステル化合物がカルボキシル基一つあたりの炭素原子数(カルボキシル基の炭素は含まない)が6以下のエステル化合物である塗布液を塗布する方法。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか記載の塗布液を塗布する方法であって、前記極性溶剤が全塗布溶剤の50質量%以上存在する塗布液を塗布する方法。
【請求項11】
請求項5〜9の何れか記載の塗布液を塗布する方法であって、前記ウェブが陽極酸化アルミニウム皮膜を有するものである塗布液を塗布する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45532(P2012−45532A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192750(P2010−192750)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】