説明

塗布ノズル、塗布ノズルユニットおよび塗布ノズルの洗浄方法

【課題】洗浄溶剤の種類、被洗浄物の材質、超音波強度などの条件を変更することなく、超音波洗浄によっても、寿命が変化しにくい塗布ノズルを提供すること。
【解決手段】誘起部を設けたノズルを超音波洗浄することで、超音波エロージョンが誘起部で発生するようになり、吐出口や位置決めマークに超音波エロージョンが発生することによる塗布ノズルの性能劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ノズル、塗布ノズルユニットおよび塗布ノズルの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用大型テレビにおいては、その表示方式がブラウン管からプラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの平面ディスプレイ(FPD)に急速に代わりつつある。
プラズマディスプレイは、前面板と背面板との間に設けられた放電空間内でプラズマ放電を生じさせ、この放電空間内に封入されたガスから発生する紫外線を、R(赤)、G(緑)、B(青)各色ごとの放電空間内に設けた蛍光体に当てることで発光させカラー表示を行うものである。一方、液晶ディスプレイは、光源(バックライト)から出た光が偏光膜、配向膜および液晶層を通過し、R、G、Bのカラーフィルターを通り画像を映し出している。
いずれの場合においても、主要部材である背面板やカラーフィルターはガラス基板上に格子状もしくはストライプ状の溝などの微細パターンをもっており、その溝に蛍光体ペーストや各種発色塗液をパターン塗布することで形成される。このパターン塗布には一般にスクリーン印刷法やフォトリソ法などが用いられているが、近年はインクジェット法など塗布ノズルを使ったパターン塗布も、ペーストの使用効率が高いことや安価な塗布が容易であることなどから注目されている。
例えばプラズマディスプレイでは、各画素は隔壁で仕切られており、隔壁の形状は、一般にはおよそ幅20〜120μm、高さ50〜250μmのストライプ状や格子状のものなどがある。そして、蛍光体は、蛍光体粉末、有機バインダーおよび有機溶媒を主成分とする蛍光体ペーストとして、所定の隔壁間に塗布され、蛍光体層を形成する。
【0003】
図2(a)に、この様なパターン塗布に使用される塗布ノズルの一例を示す。この図の記号1bで示された部材は、PDP製造で用いられる蛍光体ペーストをパターン塗布するための塗布ノズル1bである。塗布ノズル1bは高粘度な塗液である蛍光体ペーストを画素のサイズに相当する微細な溝内に向けて吐出するため、画素のサイズ程度の微細な吐出口2(貫通口)が通常数十〜数百形成され、高精彩カラー画面に対応する場合は吐出口2の数が1000個を超えるものもある。このように、この塗布ノズルには、吐出口2が微細かつ精密に形成されているのと同時に、複数形成された吐出口2相互の距離が精密に整えられている。塗布ノズルの形状は特に限定されないが、高い加工精度を得るために、複数の吐出口2が同一平面上に形成されている板状の部材であることが多い。
また、図4(a)は、図2と同様の塗布ノズルに位置決めマーク21を設けたPDP製造で用いられる蛍光体ペーストをパターン塗布するための前記塗布ノズル1dの一例を示したものである。この位置決めマーク21は吐出口2と区別された形状・大きさで形成され、多くの場合、この位置決めマーク21は、吐出口2のある表面を基準とした凹み部または突起部である。
また、この位置決めマーク21は、パターン塗布をその目的どおり精密に行うため被塗布部材(基板)と塗布ノズルの位置を合わせ、パターン塗布を開始・終了するための位置を検出・制御するために利用するのみならず、連続または断続的にセンサーにその位置を監視させて、上記パターン塗布の進行中も検出・制御に利用することが可能であり、パターン塗布がその塗布目的にあわせて順調な経過をたどるために、この位置決めマーク21の縁部(エッジ)が明瞭に識別できることが要求されている。
【0004】
これら塗布ノズル1b、1dは、その使用中に、吐出口2およびその内表面に蛍光体ペーストや凝集した蛍光体粒子や異物が詰まるほか、パターン塗布後に乾燥した蛍光体ペーストが、吐出口2付近に汚れとして付着し、連続使用が困難になるので、再使用の前に塗布ノズル外表面だけでなく吐出口2の内表面もよく洗浄しておく必要がある。
上記のような精密洗浄に用いられる超音波洗浄方法の一例について図5に示す。図5は説明のために装置の一部を切り欠いて内側を見やすくしたものである。
超音波洗浄機10は、被洗浄物である塗布ノズル1と超音波振動子11をともに上記洗浄のための超音波照射の液体媒体を兼ねた洗浄液17に浸漬するための洗浄槽12と、超音波振動子11を駆動する超音波発振器13からなる。塗布ノズル1は、洗浄液17に接しながら、超音波振動子11の振動面の上方に、振動面と吐出口2の開口部が互いに向かい合うように塗布ノズル固定台15によって固定される。塗布ノズル1の固定位置は、超音波が照射される位置であればどこでも良いが、複数の吐出口2が並んで形成された面と超音波振動子11の振動面が、平行かつその距離が超音波の波長の(2n+1)/2倍(n:整数)となるように固定されることが多い。洗浄液17は、洗浄する塗液や洗浄品位によって、水や有機溶剤や各種洗浄液が用いられ、この洗浄の間、この洗浄液17と被洗浄物である塗布ノズル1との接液部では、超音波が照射されることによる洗浄作用が得られる。
この洗浄作用は、超音波発振器13を用いて超音波振動子11を振動させると、超音波振動子11の振動面から超音波が照射され、超音波照射の液体媒体を兼ねる洗浄液17を介して塗布ノズル1に伝わるというもので、塗布ノズル1の接液部においてキャビテーションを発生させる。このキャビテーションが、発生・消滅する際に生じる衝撃力により、洗浄液17と塗布ノズル1とが接する表面(接液部)の汚れが掻き落とされ、微細な吐出口の内表面の汚れであっても落とすことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし一方で、キャビテーションによって、洗浄液17と塗布ノズル1とが接する表面(接液部)に超音波エロージョン(壊食)が発生するという問題がある。これは、キャビテーションの衝撃力により、塗布ノズル部材の接液部が摩耗する現象であり、超音波洗浄で問題になる現象である。特に、吐出口が並べられて多数形成された塗布ノズルにおいては、図2(b)のように吐出口2、さらに詳しくは、この列の終端部の吐出口2aに超音波エロージョンが集中しやすい。このように吐出口2の縁が削られると、この削れが蓄積することによって洗浄の前には可能であった正確なパターン塗布が、この洗浄を繰り返すうちに次第に困難となりついには塗布不能となり、この塗布ノズルが廃棄する必要が生じるという事態が起こっていた。
また、図4(b)のように位置決めマーク21においても超音波エロージョンが発生し、その縁が削られ形状が変化するので、センサーによる位置決めマークの認識が困難になり、吐出口2と同様の事態が繰り返し起こっていた。
このため、超音波洗浄の直後に塗布ノズルには予測できないメンテナンスの必要が生じたり、超音波洗浄がきっかけとなって塗布ノズルの余寿命が当初の予定より急激に短くなるという問題があった。
この超音波エロージョンを抑制する方法としては、キャビテーションを弱めるため超音波の出力を下げたり、逆に超音波の周波数を上げたりする方法がよく知られている。しかし、これらの方法によると、キャビテーションの衝撃力が弱まり洗浄力が落ちる弊害により、吐出口2の内表面などを中心に洗浄不良が発生するという問題がある。また、塗布ノズルの材質をより硬度の高い材料にするなど超音波エロージョンが起こりにくい材質に変更することが考えられるが、超音波エロージョンが発生しにくい堅い材料は多数の吐出口2(微細な貫通口)を加工することが困難であるだけでなく、コストも大幅にアップするため、塗布ノズルの素材として導入することが難しい場合が多い。
また、特許文献1のように洗浄溶剤をアルカリ性水系洗浄液にするとともにワーク表面を不動態化し超音波エロージョンを抑制する方法があるが、蛍光体ペーストなどのパターン塗布に用いられる塗液は、一般にバインダ成分として水に不溶解な成分を含むことがあり、その場合は有機溶剤系の溶剤で洗浄を行う必要があるので水系洗浄液の適用が難しい。さらに、蛍光体ペーストは非常に硬い微粒子を高濃度で含むため、塗布工程途中あるいは洗浄途中にあたかも研磨粒子のように塗布ノズル表面に作用し表面の不動態層やコーティング層を剥離あるいは摩滅させてしまうので適用困難である。
また、振動子、洗浄槽といったワーク以外に発生する超音波エロージョンを抑制する方法としては特許文献2のように超音波発振面に薄肉の金属板を吸着させ、その金属板の表面に超音波エロージョンを発生させることで振動子本体の寿命を延ばすという方法があるが、この方策によると一方で洗浄性が減じることから必要な洗浄力を得ることができない。
また、特許文献3のように隣り合う振動子の位相をずらして超音波エロージョンを低減する方法があるが、キャビテーション自体の作用が弱まり、必要な洗浄力を得ることができない。
【特許文献1】特開2002−12990号公報
【特許文献2】特開平6−91240号公報
【特許文献3】特開平11−277010号公報 本発明の目的は、従来技術では適切に解決できなかった超音波エロージョンの被害に、超音波出力を緩和するなどの回避策を講じることなく対応できる塗布ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
ペーストを吐出するための吐出口が複数個形成されている塗布ノズルであって、少なくとも一つの吐出口の近傍に、該塗布ノズルを超音波洗浄する際に発生する超音波エロージョンを誘起する超音波エロージョンの誘起部を有することを特徴とする塗布ノズルを、提供する。
このようにすると、接液部の全体に散らばったり、時には接液部の局所に集中するなどして発生する超音波エロージョンの発生部位を、誘起部として選択する部位にしぼり込むことができるようになり、塗布ノズルを超音波洗浄すると、その前後で、この塗布ノズルのペースト塗布性能が劣化しているという事態を防ぐことができる。
さらに、本発明は、前記誘起部が、当該塗布ノズル表面に設けられた凹み部および/または突起部であることを特徴とする塗布ノズルを提供する。
さらに、本発明は、前記吐出口の1個に対して、複数の前記誘起部が形成されていることを特徴とする塗布ノズルを提供する。
このようにすると、接液部のうち特に保護すべき吐出口の近傍に複数のエロージョン誘起部を形成することで、特定の吐出口を超音波エロージョンから保護できるようになるにとどまらず、誘起部が単数の場合に比べ、超音波エロージョンが複数の誘起部の一つ一つに分散されて負担されるようになる。
さらに、本発明は、前記吐出口が1の列をなし、その終端部に位置する吐出口と列をなして前記誘起部が形成されていることを特徴とする塗布ノズルを提供する。この場合において、複数の誘起部が終端部に位置する吐出口と列をなすように配置することが好ましい。
このようにすると、終端部を有するように並べられて形成された複数の吐出口のうち、終端部の吐出口に超音波エロージョンの被害が集中するという、塗布ノズルを超音波洗浄するうえでよく経験される現象を回避することができ、終端部付近の吐出口を積極的に保護できる。
なお、ここで「1の列をなす」とは、吐出口相互の並ぶ位置の連なり方が何らかの規則で表現可能な吐出口の一連の並び方のことをさし、吐出口の並ぶ位置が、吐出口相互の距離が等しいピッチに、かつ連なり方が直線状に並ぶもののほか、たとえば、吐出口相互の距離が不等ピッチに並ぶ連なりの場合や、複数の吐出口が蛇行しながら並ぶ連なりの場合、千鳥に並ぶ連なりの場合などをあげることができる。
さらに、本発明は、ペーストを吐出するための吐出口が複数個形成されている塗布ノズルであって、該塗布ノズルに位置決めマークが形成されており、該位置決めマークの近傍に該塗布ノズルを超音波洗浄する際に発生する超音波エロージョンを誘起する超音波エロージョンの誘起部を有することを特徴とする塗布ノズルを提供する。
このようにすると、当該ノズルの接液部には依然として超音波エロージョンが発生するにもかかわらず、本発明の誘起部の作用によって、塗布ノズルとして重要な部位である位置決めマークの縁部などの損傷を僅少とすることができる。
さらに、本発明は、前記吐出口の位置する平面における前記 誘起部の断面形状に内接する円の直径が、25μm以上500μm以下であることを特徴とする塗布ノズルを、提供する。
さらに、本発明は、前記吐出口の位置する平面における前記誘起部の断面形状に内接する円の直径が、50μm以上500μm以下であることを特徴とする塗布ノズルを、提供する。
さらに、本発明は、前記誘起部の深さ、もしくは高さのいずれか一方が、前記 吐出口の位置する表面を基準として25μm以上であることを特徴とする塗布ノズルを、提供する。
さらに、本発明は、前記終端部に位置する吐出口と該吐出口近傍に位置する誘起部の距離が100μm以上5000μm以下であることを特徴とする塗布ノズルを、提供する。
このようにすることは、塗布ノズルに前記した誘起部を形成する際に、特に有効な実施形態である。
なお、塗布ノズルを製作する際、塗布ノズルの表面に残存する地傷(以後、「残存傷」と称する)が存在する場合があるが、一般に高精度な仕上げを行った場合、残存傷の深さや高さは吐出口のある面を基準に25μm未満となることを確認している。そして、この程度の大きさの残存傷には、超音波エロージョンが集中する現象は従来から確認することがなかったことから、これら残存傷は本発明で提案する誘起部の役目は果たさない。
さらに、本発明は、前記誘起部が塗布ノズルに着脱できる着脱部材で構成されることを特徴とする塗布ノズルを提供する。
このようにすると、本発明記載の誘起部が形成されていない塗布ノズルであったとしても、別途、前記誘起部が形成されたフォイルなどを準備し、塗布ノズルを洗浄する際には、吐出口や位置決めマークの前記近傍に貼り付けるなど着脱操作することで、本発明の塗布ノズルが容易に構成できる。
さらに、本発明は、粘度が1Pa・s以上のペーストを塗布する塗布ノズルであることを特徴とする塗布ノズルを提供する。
高粘度な塗液を塗布する塗布ノズルの場合は、高粘度な塗液が塗布ノズルに粘着し易く汚れやすいが、本発明によって当該ノズルを超音波洗浄すれば、超音波エロージョンが塗布ノズルの性能を劣化させる心配が僅少になるから、当該塗布ノズルが超音波洗浄されることによって、塗布性能が劣化しているという事態が起こりにくくなる。
また、前記ペーストがプラズマディスプレイ製造用の蛍光体ペーストである場合には、高精彩カラー表示を実現した画像装置における画素サイズほどの大きさの吐出口が複数形成された塗布ノズルを、高い清浄品位に超音波洗浄する際に、塗布ノズルに照射する超音波出力を洗浄に適した領域から緩和する必要がなく、必要な清浄品位を達成する超音波洗浄が繰り返し行えるようになる。
なお、ペーストの粘度は、一般に1Pa・sz〜1000Pa・sであり、、本発明の塗布ノズルは粘度が10Pa・s〜100Pa・sのペーストの塗布に、特に好適に用いることができる。
さらに、本発明は、本発明が提案する塗布ノズルに、超音波を照射しながら洗浄をおこなうことを特徴とする塗布ノズルの洗浄方法を提供する。
このようにすると、塗布ノズルを洗浄する際、塗布ノズルにあらかじめ本発明による誘起部を形成しておくことで、超音波エロージョンが発生したとしても、塗布ノズルの吐出口や、位置決めマークの縁部が破損することがごく僅少となるから、塗布ノズルのメンテナンスを必要としなくなるばかりか、本来の寿命の早期に塗布ノズルが損傷することがなくなるから、本来の寿命まで、この塗布ノズルの使用を継続できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来超音波エロージョンが進行すると使用不能となり寿命の短かった、PDP蛍光体ペーストのパターン塗布などに用いられる塗布ノズルに、本発明が提案する超音波エロージョンの誘起部を設けることで、特定の吐出口や位置決めマークで集中的に発生していた超音波エロージョンを塗布ノズルの機能に支障をきたさない部位に選択的に発生させることが可能で、超音波出力の低減や洗浄溶剤の変更といった洗浄条件の変更の要がなく、かつその洗浄品位を下げる要がなく、かつワークの材質を変更せずに超音波洗浄の前後でパターン塗布結果の品位の維持が容易な塗布ノズルを提供できる。ひいては、寿命が安定した塗布ノズルを得ることで、画像表示装置などの最終製品の製造コストが削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の実施形態をPDP蛍光体塗布ノズルに適用した場合を例にとって、図を参照しながら説明する。
なお、説明に先立って本説明の中で用いる用語について説明すると、これ以降この説明の中で、「蛍光体の塗布」とは、カラー表示を実現するためのR(赤)、G(緑)、B(青)各色の蛍光体を塗布するディスプレイなどの製造工程をいう。
なお、この工程は、高精彩なカラー表示への期待の高まりとともに、ますます精密な塗布が求められる傾向にあり、R(赤)、G(緑)、B(青)色の蛍光体どうしの間隔が低精彩カラーでは600μmから高精彩カラーでは100μmを大きく下回るものが取引されるにいたっている。このうちR(赤)、G(緑)、B(青)色の蛍光体どうしの間隔すなわち、前述の精彩さが大画面で600μmから小画面で300μm程度のものが、いわゆるSD(スタンダード・デェフィニション)に適用できる。
【0009】
また、この精彩さが、大画面で500μmから小画面で200μm程度のものが、いわゆるHD(ハイ・デェフィニション)に適用される。同様に、この精彩さが大画面で400μmから小画面で100μm程度のもののが、いわゆるFHD(フル・ハイ・デェフィニション)とされ、さらにより高精彩にはこの範囲が大画面でも300μmを下回り、小画面では50μmに達するものがSHD(スーパー・ハイ・デェフィニション)に適用される。そして、こういった「精彩さ」でのパターン塗布の実現のために、R(赤)、G(緑)、B(青)色の蛍光体が塗布される塗布面(基盤)と、塗布ノズルの塗布位置を合わせるために、上記の位置決めマークが設けられる事が多い。
【0010】
よって、この位置決めマークの縁部にたいする超音波エロージョンによる形状変化(被害)は、できることなら皆無といえる程度に低減させることが望まれる。
【0011】
また、これ以降この説明の中で、「超音波洗浄」、「精密洗浄」あるいは単に「洗浄」とは、蛍光体ペーストなどの高精彩なパターン塗布の実現のために用いられる塗布ノズルを洗浄する際、洗浄液(超音波照射の媒体)を介してこの塗布ノズルに、超音波を照射しながらすすめる洗浄をいう。このような洗浄においては、高い塗布精度が求められるためペーストや異物などによる吐出口の詰まりを完全に除去することが求められる一方、短い時間で洗浄を行う必要があるため、超音波の出力を低くして塗布ノズルを保護することは適切ではない。
また、「超音波エロージョン」、「超音波エロージョン模様」、または「壊食」とは、単に「エロージョン」と一般に呼称される現象と概ね同義語である。ただし、これ以降この説明の中では、塗布ノズルを超音波洗浄するにともない、塗布ノズルの接液部に作用するキャビテーションの崩壊時に起こる微小噴流、衝撃波とこれらの重ね合わせによる衝撃圧力(機械作用)が発端となり、その発見が難しいほど微細な破壊と局所的なひずみエネルギの集積を生じ、この局所的な疲労破壊とともに防食皮膜の破壊による腐食とをその一部に伴いつつダメージとして累積し、ついには塗布ノズルの製作当初から表面に残存してきた素材傷の大きさを超える形状変化として現れるようになったものをいい、最終的に壊食痕と呼ばれる状態で発見されるようになるものをいう。
さらに、この塗布ノズルの精密洗浄を繰り返すにあたって、壊食痕の発見頻度が、加速度的に増加し、蓄積していく現象を含む概念である。
【0012】
しかし、本説明では、一般に超音波エロージョンといえる状態であっても、接液部に単にダメージが潜伏するだけのものや、形状変化こそともなうが高性能な顕微鏡などによって確認できるだけで、塗布ノズルのペースト吐出性能を、超音波洗浄によらない経時変化と同じ程度に鈍らせるに過ぎない場合は、本説明でいう超音波エロージョンには含まない。
また、これ以降この説明の中で、超音波エロージョンの誘起部とは、塗布ノズルの接液部(洗浄する際に洗浄液に接する部分)に設けられ、超音波エロージョンを優先的に発生させる機能を有するものである。 発明者らは、鋭意検討の結果、このような誘起部を設け、ダメージを許容できる塗布ノズルの部位に超音波エロージョンを選択的に発生させることによって、吐出口や位置決めマークなど、塗布ノズルの保護すべき部位における超音波エロージョンの発生を抑制することができることを見出した。
さて、図1(a)は、本発明の実施形態からなる塗布ノズルの一例を示すものである。塗布ノズル1aには、吐出口2が1の列をなすように複数個形成されている。
【0013】
ここに1の列とは、複数個の吐出口2の並び方が何らかの規則で表現できる吐出口の一連の並び方のことある。そして、吐出口2が形成されている面に、本発明の誘起部として機能するダミーの凹み部が設けてある。なお、以下の説明ではダミーの凹み部を誘起部4と呼ぶ。
従来の、誘起部を有さない塗布ノズルにおいては、超音波洗浄を行うと、図2(b)に示すように、端部に位置する吐出口2aの縁部などを中心に超音波エロージョンが発生していた。本発明の、誘起部を有する塗布ノズル1aを超音波洗浄したところ、図1(b)に示すように誘起部4から超音波エロージョン模様3Aが発生する様子を呈する。このときの超音波エロージョンが発生する様子を鋭意検討した結果、超音波エロージョン模様3Aが列の終端の吐出口2aに集中して発生するのではなく、発生する部位が誘起部4の存在によって移動し、誘起部4の周りに発生して蓄積される現象を繰り返し確認することができた。このことを用いて吐出口2自身が痛むことを防止できる本発明に至ったのである。誘起部4は、超音波エロージョンを誘起することができればかならずしも凹み部である必要はなく突起部であってもよいし、凹み部と突起部を組み合わせたものでも良い。ここで、複数形成された吐出口2の少なくとも一つの吐出口2の近傍に超音波エロージョンの誘起部を有していることが、本発明では重要である。この場合、近傍とは、吐出口2aと誘起部4の距離(それぞれの外縁間の最短距離)が100μm以上5000μm以下の範囲であることが好ましい。さらに、この距離が100μm以上3000μm以下の範囲であることが好ましい。また、特に好ましくは、この距離が300μm以上2000μm以下の範囲をいう。
この距離が100μm以下だと超音波エロージョン模様が吐出口2aにかかる場合が増え、この距離が3000μmを超えると、次第に超音波エロージョンを誘起する効果が減じる。
ここで、超音波の周波数範囲は5kHz以上100kHz以下、超音波強度が0.5W/cm以上であることが好ましい。この範囲を外れると超音波キャビテーションの強度が小さくなり、洗浄能力が十分でなくなるので好ましくない。
【0014】
なお、図1(b)には、超音波エロージョン模様3Aが吐出口2を傷めることなく発生している様子を示した。この例の超音波エロージョン模様3Aはわずかに湾曲して発生しているが、塗布ノズルの形状や超音波洗浄の条件などに応じて、誘起部4(凹み部あるいは突起部)は、超音波エロージョン模様3Aの発生傾向に合わせて設ければよい。
また、誘起部4はこの例では1個であるがこれに限るものではない。図1(C)に示すように複数の誘起部4a、4b、4cを設けることもできる。この場合、複数の誘起部4a、4b、4cの間隔は、100μm以上5000μm以下の範囲が好ましい。また、さらに好ましくは100μm以上3000μm以下の範囲である。 また、特に好ましくは、この間隔が300μm以上2000μm以下の範囲である。
この距離3000μmを超える場合、次第に超音波エロージョンを誘起する効果が減じる。
このようにすると複数の誘起部4a、4b、4cのそれぞれに超音波エロージョンが発生しつつ、特にこれら誘起部の列の一方の終端部に位置する誘起部4aに超音波エロージョンが集中し、超音波エロージョン模様3Bが発生する。また、誘起部4が1個だけ形成された場合に生じる超音波エロージョンの総量と類似の量の超音波エロージョンが、複数の誘起部4a、4b、4cにあたかも分担されたかのように発生することも繰り返し確認することができる。
また、図1(b)、図1(c)ともに誘起部4、4a、4b、4cの位置は、超音波エロージョン模様3A、3Bが吐出口にかからないように吐出口2がなす列の外側にあることが好ましい。
なお、図1の誘起部4、4a、4b、4c(凹み部および/または突起部)のそれぞれの大きさは、その前記吐出口の位置する平面における断面の内接円の直径で表したとき、25μm以上500μm以下であるのが好ましい。内接円の直径とは、誘起部の内外周の少なくとも2点が接した円の直径をいう。誘起部4、4a、4b、4cの内接円の直径が25μm未満、あるいは500μmを超える場合、超音波エロージョンが次第に発生しにくくなる。より好ましくはこの内接円の直径が50μm以上500μm以下である。さらに好ましくは、この内接円の直径が100μm以上300μm以下である。
また、図1(a)を例にとって説明すると、誘起部4(凹み部あるいは突起部)の深さ(あるいは高さ)は、吐出口2のある表面を基準として25μm以上であることが好ましい。この値が、25μm未満では、塗布ノズル1aの表面に残存する素材傷をもっては、超音波エロージョンの遷移や誘引が起こることを体験できないのと同様に、誘起部4に超音波エロージョンが発生しない。なお、誘起部4の深さ(あるいは高さ)は、50μm以上がより好ましいという結果を得ている。
【0015】
誘起部4の形成は、例えば、ドリルやリーマなどで切削しても良いし、ダイスやポンチなどを用いて鍛造的に転写しても良く、とくにこれらに限らず塗布ノズル1aの材質により各種の加工法を用いることができる。
【0016】
また、塗布ノズル1aの材質は、ステンレス鋼など防錆に優れた材料であるのが好ましい。これは、錆などの異物が、塗布ノズル1aの表面からパターン塗布の塗液であるペーストに混入すると微細な吐出口2の詰まりの原因となるため、錆びにくく、傷つきにくい材質が適しているからであるが、塗布ノズルとしての機能を損なわなければこれに限るものではなく、公知の各種材料が使用できる。
【0017】
また、本発明を適用する塗布ノズルが30インチ以上の大型のPDP蛍光体塗布ノズルである場合が好適であり、さらに幅10〜200mm、厚さ0.01〜20mm、長さはガラス基板全面に1回で蛍光体ペーストを塗布できる長さ(42インチPDP用ガラス基板であれば約1m以上)、重量5kg以上であればより好適である。
また、この部材長手方向に直径50〜1000μmの吐出口をピッチ0.03〜5.0mmで1並びに500〜4000個形成した塗布ノズルが好ましいが、塗布ノズルの材質および外形寸法、吐出口の形状や配置などは、特にそれらに限定されるものではない。また、これらの吐出口を形成する面は曲面であっても良いが、塗布ノズルの加工の便から、この例では平面としている。
次に、本発明の別の実施形態について図3に示す。塗布ノズル1cには、位置決めマーク21が吐出口2の形成された面に設けられている。その位置決めマーク21と同じ面に誘起部4が2個位置決めマーク21の近傍に設けてある。ここで、位置決めマーク21と誘起部の距離(それぞれの外縁の最短距離)は、100μm以上5000μm以下の範囲が好ましい。さらに好ましくは100μm以上3000μm以下の範囲である。また、特に好ましくは、300μm以上2000μm以下の範囲である。この距離が100μm未満だと超音波エロージョン模様が位置決めマーク21にかかる場合が増え、この距離が3000μmを超えると、次第に超音波エロージョンを誘起する効果が減じる。なお、5000μmを超える場合、誘起部4から超音波エロージョンが次第に発生しにくくなる。誘起部を複数設ける場合の誘起部の間隔も、上記同様の範囲が好ましい。
図3(b)には、この塗布ノズル1cを図5に示す方法で超音波洗浄した場合に発生する超音波エロージョン模様3Cを示す。誘起部4aの近くに超音波エロージョン模様3Cが位置決めマーク21および吐出口2を傷めることなく発生している様子が分かる。この例の超音波エロージョン模様3は吐出口2に向かって発生しているが、塗布ノズル1cの形状や超音波洗浄の条件などで様々な方向があるので、誘起部4は超音波エロージョンの発生傾向に合わせて設ければよい。
【0018】
誘起部4はこの例では2個であるがこれに限るものではなく1個でもよいし、3個以上でもよい。
図3のように1つの位置決めマーク21について誘起部4が複数ある場合は、一般に最外部の誘起部4aに超音波エロージョンが集中する傾向があるので、複数の誘起部4を配し超音波エロージョンを位置決めマーク21から離れた場所へ誘引することができる。
なお、図3に示す誘起部4の形状も図1に示す誘起部4と同様に、吐出口の位置する平面における断面の内接円の直径が25μm以上500μm以下であるのが好ましい。内接円の直径が25μm未満、あるいは500μmを超える場合、超音波エロージョンが次第に発生しにくくなる。より好ましくはこの内接円の直径が50μm以上500μm以下である。さらに好ましくは、この内接円の直径が100μm以上300μm以下である。
また、図3を例にとって説明すると、誘起部4(凹み部あるいは突起部)の深さ(あるいは高さ)は、吐出口2のある表面を基準として25μm以上であることが好ましい。この値が、25μm未満では、塗布ノズル1aの表面に残存する素材傷をもっては、超音波エロージョンの遷移や誘引が起こることを体験できないのと同様に、誘起部4に超音波エロージョンが発生しない。なお、誘起部4の深さ(あるいは高さ)は、50μm以上がより好ましいという結果を得ている。
このとき、誘起部4と吐出口2からの距離が100μm未満の場合、誘起部4から発生した超音波エロージョン模様3Cが端の位置決めマーク21にかかってしまう場合があり、好ましくない。
また、位置決めマーク21は吐出口2と区別できる形状や大きさ(あるいは色、明るさなど)であれば良い。位置決めマークは部材自身の凹凸であっても良いし別部材を付加したものや印刷等により形成されたものでも良い。
ここで、超音波の周波数範囲は5kHz以上100kHz以下、超音波強度が0.5W/cm以上であることが好ましい。この範囲を外れると超音波キャビテーションの強度が小さくなり、洗浄能力が十分でなくなるので好ましくない。
本発明の塗布ノズルは、高粘度な塗液のパターン塗布を継続するために超音波洗浄が必要であって、その塗液の粘度が1Pa・s以上であるペーストをパターン塗布できる塗布ノズルとして好適に用いることができるが、粘度が1〜1000Pa・sの範囲である高粘度なペーストや、さらに粘度が10〜100Pa・sの範囲である高粘度なペーストをパターン塗布する塗布ノズルに用いると、超音波出力を敢えて緩和しないまま、この塗布ノズルの超音波洗浄を行ったとしても、この洗浄の前後で吐出口の縁などが削られることがなく正確なパターン塗布が継続できる点で、非常に好ましい。
なお、高粘度なペーストの代表的な例としては、例えばプラズマテレビ製造用の蛍光体ペーストを塗布する蛍光体ペースト塗布ノズルをあげることができる。このような塗布ノズルに本発明の塗布ノズルを用いると、超音波洗浄の前後で吐出口の縁などが削られることがなく、正確な塗布が継続できるので好ましい。
洗浄液は、洗浄する塗液や塗布ノズルの材質によって、各種公知のものが利用できる。特に蛍光体粉末、有機溶媒、有機バインダ(樹脂成分)を主成分とする蛍光体ペーストの場合、該有機溶媒や該樹脂成分を溶解することのできる洗浄溶媒(通常は有機溶媒)を用いるのが良い。この様な有機溶媒として、アセトン、エタノール、ダイアセトンアルコール、イソプロピルアルコール、MEK、フッ素系溶剤、各種非危険物溶剤(例えば、商品名エリーズ:旭化成)など各種溶剤から適宜選択することができる。さらに、この様な洗浄を、数段に渡って行うとさらに洗浄効果が高まる。数段とは、例えば、1次洗浄としてダイアセトンアルコール洗浄、2次洗浄としてアセトン洗浄、仕上げ洗浄として純水洗浄などを行うことができ、いずれの場合にも超音波を照射して洗浄性を高めると良い。
【実施例】
【0019】
実施例1
図6に示す塗布ノズル1fを用いた。塗布ノズル1fは、直径φ110μm、数百箇所で一直線上に1mmピッチで吐出口2があけられた、幅100mm、長さ1m、厚さ10mmのステンレス鋼であって、その吐出口2が1の列をなして並べられ、その終端部に位置する吐出口2aから1mmの距離に大きさφ200μm深さ50μmの誘起部4が列をなして設けられている。この時、誘起部4は断面に円形を有するピット(凹状部)であり、この誘起部4の内接円の直径は凹み部の直径と同じ200μmである。
【0020】
さらに、位置決めマーク21の近傍、すなわち距離1mmの位置にピッチ1mmで大きさφ250μm深さ50μmの誘起部4を連続して3個、吐出口2の並びと直角方向に位置決めマークの外側に設けた。
この塗布ノズル1fを図5の超音波洗浄装置の洗浄槽12に投入し、超音波強度が1.0W/cmで周波数25kHzの超音波をダイアセトンアルコールが入った洗浄槽12で1時間照射した後洗浄液を入れ替えて、純水が入った洗浄槽12で1時間照射する洗浄を実施した。洗浄後、塗布ノズル1fの表面をマイクロスコープで観察すると、洗浄前には全く見られなかった超音波エロージョンが最も外側の誘起部4aから発生し、終端の吐出口2aや位置決めマーク21での超音波エロージョンは確認できなかった。この塗布用ノズル部材1fを図8のようにマニホールド76と締結し、塗布ノズルユニット71を組み立てる。次にこの塗布ノズルユニット71をノズルホルダー75に搭載し、PDP蛍光体ペースト74を塗布ノズルユニット71内に充填し、42インチの基板81に塗布機70を用いて塗布を行うと、超音波エロージョン模様3が発生しているにかかわらず、吐出口2および位置決めマーク21はその影響を受けることなく、基板に設けられたストライプ状の溝に洗浄前と全く同様に、ストライプ状の溝へのペースト塗布が可能であった。
比較例1
図7に示す塗布ノズル1gを用いた。塗布ノズル1gは、実施例1で用いた塗布ノズル1fと同様の塗布ノズルであるが、本発明で提案する誘起部が設けられていないものである。実施例1と同条件で超音波を照射すると、終端部付近の吐出口2aと位置決めマーク21より、この超音波洗浄前には全く見当たらなかった超音波エロージョン模様3が発生し、吐出口2a、位置決めマーク21のエッジ部が壊食により侵食されて、超音波洗浄によって当該塗布ノズルが使用不能となった。
実施例2
図9に示す塗布ノズル1hを用いた。塗布ノズル1hは、実施例1で用いた塗布ノズル1fと同様の吐出口2が複数形成された塗布ノズルである。この塗布ノズル1hは、塗布ノズル1fと同様、直径φ110μm、1mmピッチで数百箇所並んだ1つの並びが3度繰り返され1の列をなすように吐出口2があけられ、幅100mm、長さ1m、厚さ10mmのステンレス鋼でできている。
塗布ノズル1hは、図9に示すように各並びを構成するそれぞれの吐出口の並びと同じ並びで、かつ3つの並びの終端の吐出口2aから1mmの距離に大きさφ200μm深さ50μmの誘起部4が設けられている。図9のように吐出口2が構成された塗布ノズル1hを超音波洗浄する場合にも実施例1と同様に、吐出口2および位置決めマーク21は、誘起部4の存在によって超音波エロージョンの悪影響を除くことができる。なお、この図の例では、吐出口2からなる一連の吐出口2の並び方が、3度繰り返されて配置されたものを示したが、同様に一連の吐出口2の並び方がS字配置、千鳥配置などになっている場合も、その吐出口2の1連の並び方が何らかの規則で表現できる配置である場合や、1つの規則で表現できる並び方の単純な繰り返しである場合は、本発明の誘起部が形成できる。
【0021】
なお、図9に示した例では、吐出口2の3つの並び方は、吐出口2相互がなすピッチ(距離)の3分の1づつ吐出口2の並びが延びる方向にシフトさせられている。このような吐出口2の並び方にも本発明の誘起部4を形成して洗浄できることは、吐出口2の3つの並びによって、R、G、B各色の蛍光体ペーストなど種類の異なる塗液を取り扱わなければならない場合などに、非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の塗布ノズルの一例の拡大図である。
【図2】従来の塗布ノズルの一例の拡大図である。
【図3】本発明の塗布ノズルの他の例の拡大図である。
【図4】従来の塗布ノズルの他の例の拡大図である。
【図5】超音波洗浄装置を示す模式図である。
【図6】実施例1で用いた塗布ノズル1fを示した概略図である。
【図7】比較例1で用いた塗布ノズル1gを示した概略図である。
【図8】本発明の塗布ノズルを用いた塗布機を示した概略図である。
【図9】実施例2で用いた塗布ノズル1hを示した概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1、1a、1b、1c、1d、1f、1g、1h 塗布ノズル
2 吐出口
2a 終端部に位置する吐出口
3、3A、3B、3C 超音波エロージョン模様
4 4a、4b、4c 誘起部
10 超音波照射装置
11 超音波振動子
12 洗浄槽
13 超音波発振器
14 ケーブル
15 塗布ノズル固定台
16 コントローラ
17 洗浄液
21 位置決めマーク
70 塗布機
71 塗布ノズルユニット
74 PDP蛍光体ペースト
75 ノズルホルダー
76 マニホールド
78 塗布ノズル高さセンサー
81 ガラス基板
82 テーブル
83 軸受
84 フィードスクリュー
85 コネクタ
86 ACサーボモータ
87 テーブル位置センサー
91 供給ユニット吐出バルブ
92 供給ユニット吸引バルブ
94 ペーストタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストを吐出するための吐出口が複数個形成されている塗布ノズルであって、少なくとも一つの吐出口の近傍に、該塗布ノズルを超音波洗浄する際に発生する超音波エロージョンを誘起する超音波エロージョンの誘起部を有することを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
前記誘起部が、当該塗布ノズル表面に設けられた凹み部および/または突起部であることを特徴とする請求項1に記載の塗布ノズル。
【請求項3】
前記吐出口の1個に対して、複数の前記誘起部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布ノズル。
【請求項4】
前記吐出口が1の列をなし、その終端部に位置する吐出口と列をなして前記誘起部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の塗布ノズル。
【請求項5】
前記吐出口が1の列をなし、その終端部に位置する吐出口と列をなして複数の前記誘起部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の塗布ノズル。
【請求項6】
ペーストを吐出するための吐出口が複数個形成されている塗布ノズルであって、該塗布ノズルに位置決めマークが形成されており、該位置決めマークの近傍に該塗布ノズルを超音波洗浄する際に発生する超音波エロージョンを誘起する超音波エロージョンの誘起部を有することを特徴とする塗布ノズル。
【請求項7】
前記吐出口の位置する平面における前記誘起部の断面に内接する円の直径が、25μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗布ノズル。
【請求項8】
前記吐出口の位置する平面における前記誘起部の断面に内接する円の直径が、50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗布ノズル。
【請求項9】
前記誘起部の深さ、もしくは高さのいずれか一方が、前記吐出口の位置する表面を基準として25μm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗布ノズル。
【請求項10】
前記終端部に位置する吐出口と該吐出口近傍に位置する誘起部の距離が100μm以上5000μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の塗布ノズル。
【請求項11】
前記終端部に位置する吐出口と該吐出口近傍に位置する誘起部の距離および前記複数の誘起部の間隔がいずれも100μm以上5000μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の塗布ノズル。
【請求項12】
前記誘起部が塗布ノズルに着脱できる着脱部材で構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の塗布ノズル。
【請求項13】
粘度が1Pa・s以上のペーストを塗布する塗布ノズルであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の塗布ノズル。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の塗布ノズルを用いていることを特徴とする塗布ノズルユニット。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の塗布ノズルに、超音波を照射しながら洗浄を行うことを特徴とする塗布ノズルの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−253150(P2007−253150A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46696(P2007−46696)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】