説明

塗布ヘッド用のブロック、塗布ヘッド、塗布装置および塗布ヘッド用のブロックの製造方法

【課題】寸法精度の高いスリットを有する塗布ヘッド用のブロックを提供する。
【解決手段】ブロック50は、第2ブロック60と固定され、塗布液を吐出する開口41を有した塗布ヘッド40を形成するようになる。ブロックは、本体55と、本体上に形成されためっき層57と、を有する。めっき層57は、第2ブロックと接触する合わせ面53を形成する。本体は、めっき層によって被覆された支持面52と、第2ブロックから離間して配置され、記開口に通じる塗布液の流路としてのスリット42を前記第2ブロックとの間に形成する流路面53と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を吐出する開口を有した塗布ヘッドに係り、塗布ヘッドからの塗布液の吐出精度を向上させることができる塗布ヘッドに関する。また、本発明は、この塗布ヘッドを構成する塗工ヘッド用のブロックに関する。さらに、本発明は、この塗布ヘッドを有した塗布装置に関する。さらに、本発明は、この塗布ヘッドを構成する塗布ヘッド用ブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布ヘッド(ダイヘッド、ダイ、ノズルとも呼ばれる)から基材上に塗布液(塗工液)を塗布する塗布技術、例えばカーテンコートやダイコートが、種々の技術分野において、広く利用に供されている。特許文献1および特許文献2に開示されているように、典型的な塗布ヘッドは、線状に延びる吐出開口を有している。このような塗布ヘッドは、吐出開口の長手方向に直交する方向に塗布ヘッドと基材とを相対移動させながら、吐出開口から塗布液を吐出することによって、塗布液を基材上に塗布する。この結果、吐出開口の長手方向に沿った長さと同等の幅を有した塗膜を基材上に形成することができる。
【0003】
特許文献1および特許文献2に示すように、従来、多くの塗布ヘッドは、ボルト等の締結具を介し、二つのブロックを互いに固定することによって、構成されている。そして、二つのブロック間には、端部において吐出開口を構成するようになるスリットが、形成されている。塗布ヘッドの内部に供給された塗布液は、このスリット内を吐出開口の側へ移動し、塗布ヘッドの吐出開口から吐出される。
【0004】
特許文献1に開示された塗布ヘッドにおいては、一方のブロックに、他方のブロックに当接する第1面と、この第1面に対して段差を介して設けられた2面と、が形成されており、一方のブロックの第1面が他方のブロックと当接すると、一方のブロックの第2面と他方のブロックとの間にスリットが形成されるようになる。また、特許文献2に開示された塗布ヘッドにおいては、二つのブロックの間の一部分にシムと呼ばれるスペーサが設けられ、シムが設けられていない領域にスリットが形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−275652号公報
【特許文献2】特開2004−283779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スリットの幅は、塗布液の流量、さらには、基材上に塗工される塗膜の膜厚を決定付ける主たる要因となり得る。したがって、塗膜の厚みを安定して均一化させる観点からは、スリットの寸法精度を向上させることが重要となる。一例として、基材上に塗布されてなる塗膜が光学部材、より詳細には、表示装置用の光学シートとして用いられる場合には、塗膜の厚みばらつきが生じると、光学シートの各領域での光学作用の程度がばらつき、もはや表示装置の光学シートとして十分に機能することがなくなる。したがって、このような光学部材を形成する場合には、スリットの寸法精度を向上させること、とりわけスリットの幅を均一化させることが極めて重要となる。
【0007】
ところで、塗布ヘッドをなす各ブロックは、一般的に、金属材料に切削加工を施すことによって作製され、さらに仕上げ加工として、他のブロックに当接するようになる面およびスリットを形成するようになる面に研削加工および砥粒加工(一例として、ラップ加工)が施される。
【0008】
特許文献1に開示された一方のブロックには、他方のブロックとの当接面をなす第1面および他方のブロックとの間でスリットを形成するようになる第2面とが段差を介して形成されている。したがって、第1面および第2面の一方の面がまず加工され、その後、先に加工された一方の面を基準として、他方の面が加工される。このような方法では、いくらラップ加工を行ったとしても、一方の面を基準とした当該ブロックの位置決めが正確でないと、第1面と第2面との間の段差の大きさや、第1面と第2面との平行度等にずれが生じてしまう。結果として、塗布ヘッドの長手方向に沿って又は塗布液の流れる方向に沿ってスリット幅がばらつき、或いは、スリットの幅が全体的に予定した値からずれてしまう。この場合、塗膜の膜厚がばらつく、あるいは、塗膜の膜厚が予定した値からずれてしまうことになる。
【0009】
とりわけ昨今においては、一回の塗布で広範囲に薄い塗膜を形成することが強く要望されているため、塗布ヘッドの長手方向に沿ったスリットの長さが長くなり且つスリットの幅が狭くなる傾向が進んでいる。この傾向により、スリットの寸法精度を高く維持すること、結果として、膜厚のばらつきを抑制しながら所望の膜厚の塗膜を形成することが難しくなっている。
【0010】
一方、特許文献2に開示された塗布ヘッドにおいては、各ブロックのシムに当接する面とスリットを形成する面とが同一平面上に位置するように構成され得る。したがって、各ブロックのシムに当接する面とスリットを形成する面とを同時に仕上げることにより、一方の面を基準とした当該ブロックの位置決め精度に関連したスリット幅の変動を回避することができる。しかしながら、シムの両面に仕上げ加工を施す必要があり、シムの厚みが薄い場合、シムの厚み精度を維持しながらシムの平行度を十分に確保することは、非常に難しくなる。このため、高い寸法精度のスリットを作製すること、結果として、膜厚のばらつきを抑制しながら所望の膜厚の塗膜を形成することが難しくなっている。また、そもそも、厚さの精度を十分に確保しながら作製され得るシムの厚みには限界がある。例えば、特許文献2に開示された塗布ヘッドにおいて、スリット幅を数μmとすることは現実的には不可能である。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、寸法精度の高いスリットを有する塗布ヘッド、この塗布ヘッドを有する塗布装置、この塗布ヘッド用のブロック、並びに、この塗布ヘッド用のブロックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックは、
第2ブロックと固定され、塗布液を吐出する開口を有した塗布ヘッドを形成するようになる塗布ヘッド用のブロックであって、
本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、
前記めっき層は、前記第2ブロックと接触する合わせ面を形成し、
前記本体は、前記めっき層によって被覆された支持面と、前記第2ブロックから離間して配置され、前記開口に通じる塗布液の流路を前記第2ブロックとの間に形成する流路面と、を含む、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックにおいて、前記本体の前記支持面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置していてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックにおいて、前記支持面の少なくとも一部分は、前記流路面に対し前記開口とは反対の側に位置し、前記塗布ヘッドの長手方向に前記流路面と平行に延びていてもよい。
【0015】
さらに、本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックにおいて、前記支持面の前記少なくとも前記一部分と、前記流路面と、の間に、前記塗布ヘッドの長手方向に延びる凹部が形成されていてもよい。
【0016】
さらに、本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックにおいて、前記支持面の一部分は、前記塗布ヘッドの長手方向における前記流路面の両外方にも、設けられていてもよい。
【0017】
さらに、本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックにおいて、前記支持面の一部分は、前記塗布ヘッドの長手方向に、前記流路面と交互に並べて設けられていてもよい。
【0018】
本発明の一態様による塗工ヘッドは、
上述したいずれかの本発明の一態様による塗工ヘッド用のブロックと、前記ブロックと固定される前記第2ブロックと、を備える、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様による塗工ヘッドにおいて、前記第2ブロックは、前記ブロックの前記めっき層によって形成された前記合わせ面と接触する合わせ面と、前記ブロックの前記流路面に対向する流路面と、を含み、前記第2ブロックの前記合わせ面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置してもよい。
【0020】
あるいは、本発明の一態様による塗工ヘッドにおいて、前記第2ブロックは、本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、前記第2ブロックの前記めっき層は、前記ブロックと接触する合わせ面を形成し、前記第2ブロックの前記本体は、前記第2ブロックの前記めっき層によって被覆された支持面と、前記ブロックから離間して配置され、前記開口に通じる塗布液の前記流路を前記ブロックとの間に形成する流路面と、を含んでもよい。このような本発明の一態様による塗工ヘッドにおいて、前記第2ブロックの前記本体の前記支持面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置していてもよい、
本発明の一態様による塗布装置は、上述したいずれかの本発明の一態様による塗布ヘッドを備える、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様による塗布ヘッド用のブロックの製造方法は、
第2ブロックと固定されることによって、塗布液を吐出する開口を有した塗布ヘッドを形成するようになる塗布ヘッド用のブロックであり、本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、前記めっき層は、前記第2ブロックと接触する合わせ面を形成し、前記本体は、前記めっき層によって被覆された支持面と、前記支持面と同一の仮想平面上に位置する流路面と、を含む、塗布ヘッド用のブロックの製造方法であって、
前記本体を作製する工程と、
めっき加工によって、前記流路面上にマスクを設けた状態で、前記支持面上に前記めっき層を形成する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様による塗布ヘッド用のブロックの製造方法の前記本体を作製する工程において、研削加工および砥粒加工の少なくとも一方を、前記本体の前記支持面および前記流路面の両方に、同時に行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、基材に塗布液を塗布して基材上に塗膜を形成する塗布装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1の塗布装置の塗布ヘッドを示す斜視図である。
【図3】図3は、図2の塗布ヘッドを、当該塗布ヘッドの長手方向に直交する方向に沿った断面において、示す断面図である。
【図4】図4は、図2の塗布ヘッドの第1ブロックを示す斜視図である。
【図5】図5は、図2の塗布ヘッドの第2ブロックを示す斜視図である。
【図6】図6は、図4に対応する図であって、第1ブロックの一変形例を説明するための図である。
【図7】図7は、図4に対応する図であって、第1ブロックの他の変形例を説明するための図である。
【図8】図8は、図3に対応する図であって、塗布ヘッドの一変形例を説明するための図である。
【図9】図9は、比較例1に係る塗布ヘッドを説明するための図であって、比較例1に係る塗布ヘッドの第1ブロックおよび第2ブロックを示す側面図である。
【図10】図10は、比較例2に係る塗布ヘッドを説明するための図であって、比較例2に係る塗布ヘッドの第1ブロックおよび第2ブロックを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
図1乃至図5は本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は塗布装置を説明するための模式図であり、図2は塗布ヘッドを示す斜視図であり、図3は塗布ヘッドの断面図であり、図4は塗布ヘッドの第1ブロックを示す斜視図であり、図5は塗布ヘッドの第2ブロックを示す斜視図である。
【0026】
図1および図3に示すように、長手方向を有したウェブ状の基材1上に塗布液(塗工液)7を塗布(塗工)する塗布装置10は、ウェブ状の基材1を搬送する搬送手段30と、搬送手段30によって搬送されるウェブ状の基材1の搬送経路沿いに配置された塗布ヘッド40と、搬送手段30によって搬送されるウェブ状の基材1の搬送経路に沿って塗布ヘッド40の下流側に配置された乾燥装置15と、を有している。このような塗布装置10では、ロールトゥロール方式で、ウェブ状の基材1上に塗布ヘッド40から塗布液7が塗布され、基材1上に塗膜5が形成される。その後、乾燥装置15によって、基材1上の塗膜5が、乾燥されて固化するようになる。
【0027】
このうち、搬送手段30は、ウェブ状の基材1を繰り出す供給ロール31と、塗膜5を形成されたウェブ状の基材1を巻き取る回収ロール32と、供給ロール31から回収ロール32まで搬送されるウェブの状基材1(塗膜5付きのウェブ状の基材1)を案内する多数の案内ロール33と、を有している。多数の案内ロール33は、ウェブ状の基材1に接触してウェブ状の基材1を誘導し、ウェブ状の基材1の搬送経路を画成する。搬送手段20によって搬送される基材1は、例えば樹脂製フィルム、一具体例として、厚さが50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)やTAC(トリアセチルセルロース)からなるフィルムとすることができる。
【0028】
また、乾燥装置15は、基材1上に塗布された塗布液7からなる塗膜5を乾燥させて、例えば、塗布液7中の溶媒を乾燥気化させて、塗膜5を固化(硬化)させる装置である。図示する例において、乾燥装置15は、塗布液7からなる塗膜5が形成されたウェブ状の基材1が通過する風洞16と、風洞16内に送風する送風機17と、を有している。ただし、乾燥装置15の構成は、塗布液の種類に応じて適宜設計され、例えば、電離放射線硬化型樹脂が塗布液として塗布される場合、乾燥装置は、当該塗布液に対応した電離放射線を塗膜5に照射する照射器を含むようにしてもよい。
【0029】
次に、基材1の搬送経路沿いに配置された塗布ヘッド40について説明する。図1〜図3に示すように、塗布ヘッド40は、ウェブ状基材1に対面する位置に配置された吐出開口41を有しており、この吐出開口41からウェブ状基材1に向けて塗布液7を吐出することができるように構成されている。このような吐出ヘッド40は、ダイヘッド、ダイまたはノズルとも呼ばれる。
【0030】
図3に示すように、吐出開口41は、吐出ヘッド40の基材1に対面するリップ面44に形成されている。吐出ヘッド40内には、吐出開口41へ向けて延びるスリット42と、スリット42に接続したマニホールド43と、が形成されている。また、吐出ヘッド40は、塗布液供給路45を介して、塗布液源48に接続されている。塗布液供給路45は、吐出ヘッド40内のマニホールド43に連通しており、マニホールド43へ塗布液7を供給する。塗布液源48に貯留され塗布液源48から吐出ヘッド40へ送り込まれる塗布液7の一例として、アクリル系樹脂等の樹脂材料を、水またはメチルエチルケトン等の有機溶剤からなる溶媒によって、希釈してなるものが、選択され得る。
【0031】
図2に示すように、リップ面44および吐出開口41は、長手方向を有し、線状(本実施の形態では直線状)に延びている。このような吐出開口41に通じるスリット42は、吐出開口41の長手方向に延びる互いに平行な二つの平面53,63間に画成された細長い隙間としてとして形成されている。また、マニホールド43も、吐出開口41の長手方向に延びる空間として形成されている。
【0032】
ただし、スリット42や吐出開口41と比較して、マニホールド43は十分に大きな幅(厚み、或いは、長手方向に直交する方向における寸法)と内部容積を有している。したがって、塗布液供給路45を介して吐出ヘッド40内に供給された塗布液7は、マニホールド43からすぐさまスリット42に流れ込むよりも、マニホールド43内をマニホールド43の長手方向(吐出開口41の長手方向と平行な方向)に流れやすくなっている。理想的には、マニホールド43内が塗布液7によって満たされることによって、マニホールド43内の圧力が上昇した後に、当該高圧力によってマニホールド43からスリット42へ塗布液7が流れ込むようになる。このようにして、塗布液供給路45を介して塗布ヘッド40内に供給された塗布液7は、吐出開口41の長手方向の全領域に供給されるようになる。
【0033】
以上のような塗布装置10においては、塗膜5を形成されるべきウェブ状の基材1が、搬送手段30の供給ロール31から回収ロール32まで、案内ロール33によって案内されながら搬送される。そして、供給ロール21から繰り出された基材1は、塗布ヘッド40に対面する位置を通過する際に、塗布ヘッド40から塗布液7を塗布される。この際、図3から理解され得るように、ウェブ状の基材1の幅方向(基材1の長手方向に直交する方向)の所定の範囲に亘って塗布液7が基材1上に塗布されていく。
【0034】
上述したように、塗布液供給路45から塗布ヘッド40のマニホールド43に供給された塗布液7は、塗布ヘッド40のスリット42を流路として、マニホールド43から吐出開口41まで流れる。したがって、図3に示すようにスリット42の幅(スリップギャップ)w、すなわち、塗布ヘッド40の長手方向に直交する方向に沿ったスリットの寸法(厚み)wが、所定の寸法に高精度に形成されていないと、スリット42を通過する塗布液7の流量が変化してしまい、所望の膜厚の塗膜5を基材1上に形成することができない。また、例えばスリット42をなす二つの対向面53,63の平行度が十分でない等、塗布ヘッド40(吐出開口41)の長手方向に沿って、スリット42の幅wがばらついている場合には、塗膜5の膜厚が、塗布ヘッド40(吐出開口41)の長手方向に対応する方向に沿って、すなわち、塗膜5の幅方向に沿って、ばらついてしまう。
【0035】
一例として、基材1上に塗布されてなる塗膜5が光学部材、より詳細には、表示装置用の光学シートとして用いられる場合、塗膜5の厚みにばらつきが生じると、光学シートの各領域での光学作用の程度がばらつき、もはや表示装置の光学シートとして十分に機能しなくなる。したがって、このような光学部材を形成する場合には、塗布ヘッド40のスリットの寸法精度を十分に確保することが極めて重要となる。
【0036】
そして、本実施の形態における塗布ヘッド40は、以下に説明するような、具体的な構成を有し、その結果、スリット42の寸法精度を向上させるようになっている。
【0037】
図3〜図5に示すように、本実施の形態における塗布ヘッド40は、第1ブロック50と、この第1ブロック50と接触した状態で固定される第2ブロック60と、を有している。図3に示す例において、第1ブロック50および第2ブロック60は、締結手段、具体的には締結用のボルト47を介して、互いに固定されている。そして、第1ブロック50および第2ブロック60は、一部分において離間し、この離間した領域によって、塗布液7の流路をなすスリット42が、形成されている。
【0038】
また、図2に示すように、本実施の形態においては、第1ブロック50および第2ブロック60の間には、塗布ヘッド40の長手方向に沿った各ブロック50,6の全長に亘って、スリット42が形成されている。そして、第1ブロック50および第2ブロック60には、その長手方向に沿った両外方から、端部ブロック49a,49bが固定されている。この一対の端部ブロック49a,49bによって、スリット42の長手方向に沿った外縁が画定されている。端部ブロック49a,49bは、例えば図示しないボルト等の締結手段を介して、第1ブロック50および第2ブロック60に固定されている。
【0039】
以下、第1ブロック50および第2ブロック60について、順に、さらに詳細に説明する。
【0040】
図3および図4に示すように、第1ブロック50は、本体55と、本体55上に形成されためっき層57と、を有している。めっき層57は、本体55の第2ブロック60に対面する面上に形成されており、第1ブロック50と第2ブロック60とが固定された際に第2ブロック60と接触する合わせ面51を形成するようになる。本体55の第2ブロック60に対向する側の面は、めっき層57によって被覆された支持面52と、第1ブロック50が第2ブロック60に固定された際に、第2ブロック60から離間して配置されるようになる流路面53と、を含んでいる。流路面53は、吐出開口41に通じる塗布液7の流路としてのスリット42を、第2ブロック60との間に形成するようになる。そして、本体55に形成された支持面52および流路面53は、同一の仮想平面内に位置している。
【0041】
本実施の形態においては、図4から理解できるように、めっき層57が設けられた支持面52は、流路面53の吐出開口41側とは反対の側に位置し、塗布ヘッド40の長手方向に沿って、流路面53と平行に延びている。また、本体55の第2ブロック60に対向する側の面には、支持面52と流路面53との間の位置に、マニホールド43を画成する凹部54が、形成されている。凹部54も、塗布ヘッド40の長手方向に沿って、支持面52および流路面53と平行に延びている。
【0042】
このような第1ブロック50は、以下のようにして製造され得る。
【0043】
まず、切削加工によって、塗布液7との相性が良い材料、例えば鋼から、本体55を削り出す。次に、本体55の支持面52および流路面53のそれぞれに、表面仕上げ加工として、研削加工および砥粒加工としてのラップ加工(ラップ仕上げ)を行う。なお、研削加工とは、砥粒を、例えば結合剤で、固めてなる工具(砥石とも呼ばれる)を用いた加工方法であり、遊離した砥粒または保持片(砥石片)に固定された砥粒を用いた加工である砥粒加工とは区別される(例えば、「機械加工学」中島利勝、鳴瀧則彦共著、コロナ社発行)。
【0044】
研削加工では、加工面となる本体55の支持面52および流路面53のそれぞれが、砥粒を含んだ工具(研削砥石等)と擦り付けられるようになる。また、ラップ加工では、加工面となる本体55の支持面52および流路面53のそれぞれと、工具(ラップ)が、砥粒の微粉であるラップ剤を介して、互いに向けて押圧された状態で、相対移動させられるようになる。そして、上述したように、本体55に形成された支持面52および流路面53は、同一の仮想平面内に位置している。したがって、支持面52および流路面53を同時に工具に向けて押しつけて、支持面52および流路面53の両方に対し、研削加工および砥粒加工の各々を同時に施すことができる。すなわち、支持面52および流路面53の一方を先に加工し、その後に他方を加工する場合には、支持面52および流路面53の他方を加工する際に、既に加工が終了した支持面52および流路面53の一方を基準として、被加工体である本体55を位置決めする必要がある。そして、この位置決めの精度が悪いと、支持面52と流路面53の平行度が悪化してしまう。したがって、本実施の形態のように、支持面52および流路面53を同時に加工する場合には、加工回数を半分にすることが可能となるだけでなく、加工精度も飛躍的に向上し、支持面52と流路面53との間の極めて優れた平行度を確保することができる。
【0045】
以上のようにして、本体55が作製された後、この本体55にめっき加工を施し、めっき層57を形成する。この際、本体55の支持面52以外の面は、めっき層57が形成されないように、マスクで被覆され、これにより、本体の表面のうちの支持面52上に、めっき層57が形成される。
【0046】
めっき加工によって形成されためっき層57の厚みは、切削加工後に研削加工および砥粒加工で得られる層(部位、プレート)の厚みと、少なくとも同程度の寸法精度を有するようになる。またとりわけ、加工対象となる部位の厚みが薄い場合、切削加工後に研削加工および砥粒加工を行う場合と比較して、めっき加工によれば、格段に優れた寸法精度が期待され得る。さらに、背景技術の欄で説明したように、切削加工後に研削加工および砥粒加工を行う作製方法では数μmの厚みのシムを十分な寸法精度で形成することができないのに対して、めっき加工によれば、例えば数μm程度の厚みのめっき層57が、厚みの平均値および厚みの均一性を高精度に制御しながら、作製され得る。
【0047】
なお、めっき加工としては、種々のめっき方法を採用することができる。ただし、被加工体である本体55は、一般的な塗布ヘッド40の形体に起因して、細長状であり、加工発熱によって変形しやすくなる。この点を考慮すると、発熱量の少ないめっき方法が好適である。一例として、無電解めっきは、加工が容易であり且つ加工発熱量が少ないといった点において非常に好ましい。また、めっきされる材料は、母材となる本体55の材料との密着性や塗布液との相性等を考慮して、適宜決定される。一例として、めっき層57が、ニッケルをめっきしてなるニッケルめっき層として構成されてもよい。
【0048】
以上のようなめっき工程の後に、本体55上からマスクを除去することにより、本体55と、本体55の支持面52上に形成されためっき層57と、からなる第1ブロック50が、得られる。
【0049】
次に、第2ブロック60についてさらに詳述する。図3および図5に示すように、本実施の形体における第2ブロック60は、第1ブロック50とは異なり、単一の本体のみから構成されている。第2ブロック60の第1ブロック50に対向する側の面は、第1ブロック50のめっき層57によって形成された合わせ面51と接触する第2合わせ面61と、第1ブロック50の流路面53に対向する第2流路面63と、を含んでいる。第2ブロック60の第2合わせ面61および第2流路面63は、同一の仮想平面内に位置している。図5に示すように、第2合わせ面61および第2流路面63は、塗布ヘッド40の長手方向に沿って、平行に延びている。
【0050】
なお、本実施の形態においては、図3および図5に示すように、第2ブロック60の第1ブロック50に対向する側の面が、全体として、同一の仮想平面内に位置している。したがって、第2ブロック60の第1ブロック50に対向する側の面のうち、第2合わせ面61および第2流路面63の間に位置し第1ブロック50の本体55の凹部54に対面する領域には、凹部が形成されていない。すなわち、図示する例において、塗布ヘッド40のマニホールド43は、第1ブロック50の本体55の凹部54と、第2ブロック60の平面と、の間に形成されている。
【0051】
このような第2ブロック60は、第1ブロック50の本体55と同様にして、作製され得る。すなわち、母材に対して、まず切削加工を施し、その後、表面仕上げ加工として、第2合わせ面61および第2流路面63に研削加工および砥粒加工としてのラップ加工(ラップ仕上げ)を行う。この際、第2合わせ面61および第2流路面63の両方に対して、研削加工およびラップ加工の各々が、同時に施される。とりわけ、本実施の形態においては、第2ブロック60の第1ブロック50に対向する側の面が、全体として、同一の仮想平面内に位置しているので、第2ブロック60の第1ブロック50に対向する側の面の全体に、研削加工およびラップ加工の各々を行っていくことができる。このようにして、第2ブロック60が作製され、得られた第2ブロック60において、第2合わせ面61および第2流路面63は同一の仮想平面内に位置するようになる。
【0052】
なお、上述したように、図示する例において、第1ブロック50および第2ブロック60は、ボルト47によって、互いに固定されている。この構成を実現する一例として、第1ブロック50および第2ブロック60の一方(図示する例では、第1ブロック50)に、ボルト47に適合するねじ孔59が形成され、他方(図示する例では、第2ブロック60)に、ボルト47が貫通する貫通孔69が形成される。
【0053】
このような構成からなる第1ブロック50および第2ブロック60を、第1ブロック50の合わせ面51および第2ブロック60の第2合わせ面61が接触するようにして、固定することにより、塗布ヘッド40が得られる。めっき層57は所望の厚みに精度良く形成され、且つ、めっき層57の厚みは高精度に均一化されている。また、第1ブロック50については、めっき層57を支持する支持面52と、第2ブロック60との間で塗布液7の流路をなすスリット42を画定する流路面53と、の間で極めて優れた平行度が確保されている。同様に、第2ブロック60については、めっき層57と接触する第2合わせ面61と、第1ブロック50との間で塗布液7の流路をなすスリット42を画定する第2流路面63と、の間で極めて優れた平行度が確保されている。これらのことから、第1ブロック50と第2ブロック60とを組み合わせてなる塗布ヘッド40においては、第1ブロック50の流路面53と第2ブロック50の第2流路面63との間の隙間w、すなわち、スリット42の幅(スリットギャップ)wは、めっき層57の厚みと同様であって、所定の寸法に精度良く形成されている。また、スリット42の幅(スリットギャップ)wは、スリット42の各領域において、高精度に均一化されている。
【0054】
以上の本実施の形態によれば、塗布ヘッド40は、互いに対して固定された第1ブロック50および第2ブロック60を含んでおり、第1ブロック50は、本体55と、本体55上に形成されためっき層57と、を有している。めっき層57は、第2ブロック60と接触する合わせ面51を形成し、本体55は、めっき層57によって被覆された支持面52と、第2ブロック60から離間して配置され、開口41に通じる塗布液7の流路(スリット42)を第2ブロック60との間に画成する流路面53と、を含んでいる。このような塗布ヘッド40は、めっき層57の厚みによって、第1ブロック50の流路面53と第2ブロック60の流路面63との間に画成される流路の太さ(スリットギャップ)wが画定されるように、構成され得る。具体的には、第1ブロック50について、支持面52および流路面53が同一の仮想平面上に位置するように本体55を作製し、且つ、第2ブロック60について、第1ブロック50のめっき層57に当接する第2合わせ面61および第1ブロック50の流路面53に対向する第2流路面63が同一の仮想平面上に位置するように作製することができる。めっき層57は、めっき加工中の簡易な制御によって、その厚みが均一且つ極めて高精度となるように、作製され得る。加えて、第1ブロック50の本体55の支持面52および流路面53の両方を同時に、同様に、第2ブロック60の第2合わせ面61および第2流路面63の両方を同時に、研削加工および砥粒加工していくことができる。このような方法によれば、第1ブロック50の本体55の支持面52および流路面53が自動的に同一の仮想平面上に位置するようになり、同様に、第2ブロック60の第2合わせ面61および第2流路面63が自動的に同一の仮想平面上に位置するようになる。これらのことから、第1ブロック50と第2ブロック60との間に画成され塗布ヘッド40の開口41へ至る流路の厚み(スリットギャップ)wを、塗布ヘッド40の長手方向(塗布ヘッドの幅方向)および塗布液7の流れる方向の両方向に、高精度に均一化させることができる。したがって、塗布ヘッド40の長手方向(塗布ヘッド40の幅方向)に沿った各位置において、塗布ヘッド40の開口41から所定量の塗布液を均一に吐出することが可能となる。これにより、塗布液7を塗布することによって形成された塗膜5の膜厚を、塗布ヘッド40の長手方向(塗布ヘッド40の幅方向)に対応する方向に沿って、所望の厚みで均一化させることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、薄いシムを用いて塗布ヘッドのスリットを形成する場合と比較し、めっき層57が本体55に固定されているので、塗布ヘッド40の組み立てが極めて容易であり、また、薄くて折れやすいシムの取り扱いを不要とすることができる点において、コスト的にも非常に有利となる。
【0056】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0057】
上述した実施の形態において、第1ブロック50の本体55の支持面52が、全体として、流路面53に対し開口41とは反対側に位置し、塗布ヘッド40の長手方向(塗布ヘッド40の幅方向)に流路面53と平行に延びている例を示した。すなわち、上述した例においては、めっき層57が、塗布ヘッド40の長手方向に細長状に延びる単一の部分として構成されていた。しかしながら、この例に限られることはなく、このような変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
例えば、図6に示すように、本体55の支持面52の一部分52aが、塗布ヘッド40の長手方向に沿った流路面53の両外方に、設けられていてもよい。この例によれば、めっき層57の一部分57aが、塗布ヘッド50の長手方向に沿ったスリット42の両外方に、設けられるようになる。そして、このめっき層57の一部分57aが、塗布ヘッド40のスリット42および吐出開口41の、塗布ヘッド40の長手方向(塗布へヘッド40の幅方向)における外縁を画定するようになる。したがって、この変形例においては、第1ブロック50および第2ブロック60を互いに固定することにより塗布ヘッド40を構成することができ、上述した端部ブロック49a,49bを不要とすることができる。
【0059】
また、図7に示すように、本体55の支持面52の一部分52bが、塗布ヘッド40の長手方向に沿って、流路面53と交互に並べて設けられていてよい。この例によれば、めっき層57の一部分57aが、第1ブロック50のマニホールド43をなす領域(凹部54)よりも、吐出開口41に近接する位置にも配置されるようになる。この結果、塗布ヘッド40の長手方向に沿った所定の領域のみから塗布液7が吐出されるようになる。すなわち、上述した実施の形態での第1ブロックの製造方法のめっき加工工程におけるマスクの形状を変化させるだけで、塗布液7を所定のパターンで塗布する塗布ヘッド40を作製することが可能となる。
【0060】
また、上述した実施の形態において、第1ブロック50のみがめっき層57を有し、第2ブロック60がめっき層を有していない例を示したが、これに限られない。図8に示すように、第1ブロック50だけでなく、第2ブロック60もめっき層67を有するようにしてもよい。この変形例においては、第2ブロック60は、第2本体65と、第2本体65上に形成された第2めっき層67と、を有するようになり、上述した実施の形態における第1ブロック50と同様に構成され得る。すなわち、第2めっき層67は、第1ブロック50の合わせ面51と接触する第2合わせ面61を形成するようになる。また、第2本体65は、第2めっき層67によって被覆された支持面61と、第1ブロック50から離間して配置され、吐出開口41に通じる塗布液7の流路(スリット42)を第1ブロック50との間に画成する第2流路面63と、を含むようになる。このような変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、このような変形例によれば、塗布ヘッド40のスリット42の幅wをより広い範囲において調節することが可能となる。
【0061】
さらに、上述した実施の形態において、ウェブ状の基材1に対して、塗布ヘッド40から塗布液7が塗布される例を示したが、これに限られず、枚葉状の基材に対する塗布液7の塗布に上述した塗布ヘッド40を適用することも可能である。このような変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
さらに、上述した実施の形態において、塗布ヘッド40のマニホールド43を形成するための凹部54が、第1ブロック50のみに形成されている例を示したが、これに限られない。例えば、塗布ヘッド40のマニホールド43を形成するための凹部が、第2ブロック60のみに形成されていてもよいし、第1ブロック50および第2ブロック60の両方に形成されていてもよい。このような変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0065】
<塗布ヘッドの作製>
スリットの幅(スリットギャップ)を10μmとすることを目標として、三種類の塗布ヘッドを作製することを試みた。
【0066】
実施例1に係る塗布ヘッドは、上述の実施の形態における塗布ヘッド(図1〜図6参照)と同様の構成を有するものとした。すなわち、塗布ヘッドの第1ブロックは、本体と、本体上に形成された厚さ略10μmのめっき層とを有するようにした。
【0067】
一方、比較例1に係る塗布ヘッドは、背景技術の欄で特許文献1(特開2003−275652号公報)を参照しながら説明した従来の塗布ヘッドと同様の構成を有するものとした。すなわち、比較例1に係る塗布ヘッドは、図9に示すように、第1ブロックB1が、単一の材料からなり、合わせ面b1が流路面b2よりも略10μmだけ第2ブロックB2の側の突出しているようにした。比較例1に係る塗布ヘッドの第2ブロックは、実施例1に係る塗布ヘッドの第2ブロックと同一に構成した。
【0068】
比較例2に係る塗布ヘッドは、背景技術の欄で特許文献2(特開2004−283779号公報)を参照しながら説明した従来の塗布ヘッドと同様の構成を有するものとした。すなわち、比較例2に係る塗布ヘッドは、図10に示すように、第1ブロックC1と第2ブロックC2との間にシムC3が設けられる構成とした。しかしながら、厚さが10μmのシムC3を金属材料から十分な精度で作製することができなかった。
【0069】
<塗布ヘッドの評価>
実施例1に係る塗布ヘッドおよび比較例1に係る塗布ヘッドをそれぞれ用い、以下のようにして、基材上に塗膜を形成した。
【0070】
ウェブ状の基材として、膜厚80μmのセルローストリアセテート(商品名:富士タック、富士写真フィルム(株)製)を使用し、この基材上に、塗布液を塗布した。塗布液は、紫外線硬化性ハードコート組成物(商品名:デソライトZ−7526,72重量%、JSR(株)製)80gを、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンを2:3で混合してなる混合溶媒に、溶解した液とした。基材上に塗布された塗布液からなる塗膜を、115℃で5分間乾燥させ、さらに、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射することにより、前記紫外線硬化性ハードコート組成物を硬化させた。このようにして、基材の表面に厚さ15μmのハードコート層(塗膜)を形成した。
【0071】
なお、基材の幅(塗布ヘッドとの相対移動方向に直交する方向に沿った寸法)を1490mmとし、塗膜の幅(基材と塗布ヘッドとの相対移動方向に直交する方向に沿った基材上での塗膜の寸法)を1400mmとなるようにした。塗膜の幅方向に沿って略等間隔に離間した30箇所の測定箇所において、塗膜の膜厚を測定し、吐出偏差を算出した。なお、吐出偏差は、次の式のように、30箇所での測定値のうちの最大値と最小値との差の値の、30箇所での測定値の平均値に対する割合とした。
吐出偏差(%)=(Max膜厚−min膜厚)/平均膜厚×100
【0072】
比較例1に係る塗布ヘッドを用いて形成された塗膜の吐出偏差は12%となった。実施例1に係る塗布ヘッドを用いて形成された塗膜の吐出偏差は6%となった。つまり、実施例1に係る塗布ヘッドを用いて形成された塗膜の吐出偏差は、比較例1に係る塗布ヘッドを用いて形成された塗膜の吐出偏差の半分の値となった。
【符号の説明】
【0073】
1 基材
5 塗膜
7 塗布液
10 塗布装置
40 塗布ヘッド
41 吐出開口(開口)
42 スリット
43 マニホールド
50 第1ブロック(ブロック)
51 合わせ面
52,52a,52b 支持面
53 流路面
54 凹部
55 本体
57,57a,57b めっき層
60 第2ブロック(ブロック)
61 合わせ面(第2合わせ面)
62 支持面(第2支持面)
63 流路面(第2流路面)
65 本体(第2本体)
67 めっき層(第2めっき層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2ブロックと固定され、塗布液を吐出する開口を有した塗布ヘッドを形成するようになる塗布ヘッド用のブロックであって、
本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、
前記めっき層は、前記第2ブロックと接触する合わせ面を形成し、
前記本体は、前記めっき層によって被覆された支持面と、前記第2ブロックから離間して配置され、前記開口に通じる塗布液の流路を前記第2ブロックとの間に形成する流路面と、を含む、
ことを特徴とする塗布ヘッド用のブロック。
【請求項2】
前記本体の前記支持面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布ヘッド用のブロック。
【請求項3】
前記支持面の少なくとも一部分は、前記流路面に対し前記開口とは反対の側に位置し、前記塗布ヘッドの長手方向に前記流路面と平行に延びている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布ヘッド用のブロック。
【請求項4】
前記支持面の一部分は、前記塗布ヘッドの長手方向における前記流路面の両外方にも、設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗布ヘッド用のブロック。
【請求項5】
前記支持面の一部分は、前記塗布ヘッドの長手方向に、前記流路面と交互に並べて設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗布ヘッド用のブロック。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか一項に記載のブロックと、
前記ブロックと固定される前記第2ブロックと、を備える、
ことを特徴とする塗布ヘッド。
【請求項7】
前記第2ブロックは、前記ブロックの前記めっき層によって形成された前記合わせ面と接触する合わせ面と、前記ブロックの前記流路面に対向する流路面と、を含み、
前記第2ブロックの前記合わせ面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置する、
ことを特徴とする請求項6に記載の塗布ヘッド。
【請求項8】
前記第2ブロックは、本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、
前記第2ブロックの前記めっき層は、前記ブロックと接触する合わせ面を形成し、
前記第2ブロックの前記本体は、前記第2ブロックの前記めっき層によって被覆された支持面と、前記ブロックから離間して配置され、前記開口に通じる塗布液の前記流路を前記ブロックとの間に形成する流路面と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の塗布ヘッド。
【請求項9】
前記第2ブロックの前記本体の前記支持面および前記流路面は、同一の仮想平面上に位置している、
ことを特徴とする請求項8に記載の塗布ヘッド。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の塗布ヘッドを備える、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
第2ブロックと固定されることによって、塗布液を吐出する開口を有した塗布ヘッドを形成するようになる塗布ヘッド用のブロックであり、
本体と、前記本体上に形成されためっき層と、を備え、
前記めっき層は、前記第2ブロックと接触する合わせ面を形成し、
前記本体は、前記めっき層によって被覆された支持面と、前記支持面と同一の仮想平面上に位置する流路面と、を含む、塗布ヘッド用のブロックの製造方法において、
前記本体を作製する工程と、
めっき加工によって、前記流路面上にマスクを設けた状態で、前記支持面上に前記めっき層を形成する工程と、を含む、
ことを特徴とする塗布ヘッド用のブロックの製造方法。
【請求項12】
前記本体を作製する工程において、
研削加工および砥粒加工の少なくとも一方を、前記本体の前記支持面および前記流路面の両方に、同時に行う、
ことを特徴とする請求項11に記載の塗布ヘッド用のブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−67795(P2011−67795A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223147(P2009−223147)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】