説明

塗布具

【課題】液体をノズルから吐出/吐出停止するときの、当該ノズルに対するガスの供給/供給停止を容易かつ確実に行うことができる塗布具を提供すること。
【解決手段】塗布具1は、液体が充填された第1のシリンジ2および第2のシリンジ3をそれぞれ装填して用いられるものである。この塗布具1は、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3を並べて固定する塗布具本体7と、ガスを供給する気体供給手段に接続され、該気体供給手段からのガスが通過するガス流路と、ガス流路を通過したガスと、第1のシリンジ2の口部を通過した液体と、第2のシリンジ3の口部を通過した液体とを吐出するノズル4と、第1のシリンジ2の押し子26と第2のシリンジ3の押し子26とを先端方向へ押圧操作する操作部8と、操作部8に設けられ、ガス流路を遮断/開放する開閉手段9とを備え、開閉手段9は、操作部8による押圧操作に連動して、ガス流路を開放するよう作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2種以上の液体を混合して患部等に噴射し、癒着防止材や生体組織接着材などを形成する方法が知られており、そのための塗布具が開発されている。
【0003】
このような塗布具は、混合すると凝固する成分同士、例えばトロンビンを含有する溶液とフィブリノーゲンを含有する溶液を互いに分別した状態で、患部付近まで送り、患部で混合しながら塗布するという構成によるものである。
【0004】
従来の塗布具としては、異なる種類の液体をそれぞれ含有する2つのシリンジの各口部にそれぞれ接続されたノズル(スプレーヘッド)の先端から各液体が噴出し、混合される構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の塗布具は、2液体を確実に混合するために、各液体を無菌ガスとともに噴出して、各液体の噴出状態が霧状となるよう構成されている。無菌ガスは、チューブを介してノズルに接続され、無菌ガスが充填されたボンベから供給される。また、ボンベには、通常、ノズルに対するガスの供給/供給停止を制御する開閉自在なバルブ(コック)が設置されている。特許文献1に記載の塗布具では、当該塗布具を使用するときにバルブを予め開状態とする。
【0005】
しかしながら、バルブを予め開状態とすると、液体の噴出/噴出停止に関わらず、無菌ガスが供給され続けてノズルから不本意に噴出されるという問題があった。このため、患部に無菌ガスのみが当たり続けたり、無菌ガスが浪費されたりする等の不都合があった。また、誤ってバルブを閉状態として塗布具を使用した場合、各液体が霧化されずに噴出されて2液体の混合が不十分な状態で、患部に塗布されるという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−57979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液体をノズルから吐出/吐出停止するときの、当該ノズルに対するガスの供給/供給停止を容易かつ確実に行うことができる塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 先端部に突出形成された口部を有するシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に挿入されたガスケットと、該ガスケットを前記シリンジ外筒の長手方向に沿って移動操作する押し子とを備え、前記シリンジ外筒と前記ガスケットとで形成された空間に液体が充填された第1のシリンジおよび第2のシリンジをそれぞれ装填して用いられる塗布具であって、
前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジを並べて固定する塗布具本体と、
気体を供給する気体供給手段に接続され、該気体供給手段からの気体が通過するガス流路と、
前記ガス流路を通過した気体と、前記第1のシリンジの前記口部を通過した液体と、前記第2のシリンジの前記口部を通過した液体とを吐出するノズルと、
前記第1のシリンジの前記押し子と前記第2のシリンジの前記押し子とを先端方向へ押圧操作する操作部と、
前記操作部に設けられ、前記ガス流路を遮断/開放する開閉手段とを備え、
前記開閉手段は、前記操作部による押圧操作に連動して、前記ガス流路を開放するよう作動することを特徴とする塗布具。
【0009】
(2) 前記開閉手段は、前記ガス流路の途中に設置され、開閉自在な弁機構で構成されている上記(1)に記載の塗布具。
【0010】
(3) 前記弁機構は、前記ガス流路の上流側に接続され、管状をなす第1の接続部と、前記ガス流路の下流側に接続され、管状をなし、前記第1の接続部に対して軸線同士が一致する第1の姿勢と、軸線が前記操作部の操作方向に傾倒する第2の姿勢とに変位可能な第2の接続部と、該第2の接続部が前記第1の姿勢では閉じており、前記第2の接続部が前記第2の姿勢では開く弁部とを有する上記(2)に記載の塗布具。
【0011】
(4) 前記弁部は、弾性材料で構成され、前記第1の接続部の内周部と前記第2の接続部の外周部とを気密に連結するシール部材と、前記第2の接続部の前記ガス流路の上流側に当該第2の接続部の外径より拡径して設けられたフランジ部と、前記フランジ部を前記シール部材側に付勢する付勢部とを有し、フランジ部は、前記第2の接続部が前記第1の姿勢のとき前記付勢部に付勢されて前記シール部材に気密に密着し、前記第2の接続部が前記第2の姿勢のとき前記付勢部の付勢力に抗して変位して、前記シール部材との間に間隙が生じるよう構成されている上記(3)に記載の塗布具。
【0012】
(5) 前記ノズルからは、前記ガス流路を通過した気体が、前記第1のシリンジの前記口部を通過した液体と前記第2のシリンジの前記口部を通過した液体の2液体のうちの先に出る方の液体とほぼ同時にまたはそれより先立って吐出されるよう構成されている上記(4)に記載の塗布具。
【0013】
(6) 前記シール部材と前記フランジ部との間に前記間隙を生じさせる力は、前記第1のシリンジの前記押し子と前記第2のシリンジの前記押し子とを先端方向に移動させる力より大きくなるように設定されている上記(5)に記載の塗布具。
【0014】
(7) 前記付勢部の付勢力を調整する付勢力調整手段をさらに備える上記(6)に記載の塗布具。
【0015】
(8) 前記操作部は、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの前記押し子の基端部同士を連結する連結部と、使用者によって押圧される押圧部とを有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の塗布具。
【0016】
(9) 前記塗布具本体は、指を掛ける指掛け部を有しており、該指掛け部に片方の手の親指を除く複数の指を掛けた状態で、前記押圧部には、前記片方の手の親指が掛けられる上記(8)に記載の塗布具。
【0017】
(10) 前記塗布具本体は、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの口部がそれぞれ係合する第1の係合部と、該第1の係合部より基端側に設けられ、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの基端部がそれぞれ第2の係合部とを有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の塗布具。
【0018】
(11) 前記ノズルは、前記第1のシリンジの液体が吐出される第1の吐出口と、前記第1のシリンジから流出した液体を前記第1の吐出口へ送る第1の流路と、前記第2のシリンジの液体が吐出される第2の吐出口と、前記第2のシリンジから流出した液体を前記第2の吐出口へ送る第2の流路と、前記第1の吐出口および前記第2の吐出口の外周部にそれぞれほぼ同心的に設けられ、前記気体供給手段からの気体が吐出される気体吐出口と、前記気体供給手段から供給された気体を前記気体吐出口へ送る第3の流路とを有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の塗布具。
【0019】
(12) 前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジには、それぞれ、液組成が異なる液体が充填される上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の塗布具。
【0020】
(13) 前記液組成が異なる2液体は、それらを混合することにより生体組織の癒着防止材となるものである上記(12)に記載の塗布具。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガス流路を遮断/開放する開閉手段が操作部に設けられているため、液体をノズルから吐出/吐出停止するときの、当該ノズルに対するガスの供給/供給停止を容易かつ確実に行うことができる、すなわち、塗布具の操作性に優れる。
【0022】
また、ノズルからは、気体が、第1のシリンジの液体と第2のシリンジの液体の2液体のうちの先に出る方の液体とほぼ同時にまたはそれより先立って吐出されるよう構成されている場合には、先に出る液体のみが患部に噴出され塗布されるのを防止することができる。また、先立って噴出された気体により、2液体がそれぞれ確実に霧状となって噴出され、よって、これらの液体同士が確実に混合する。このように、液体の安全な塗布を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の塗布具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1および図2は、それぞれ、本発明の塗布具の第1実施形態を示す斜視図、図3および図4は、それぞれ、図1に示す塗布具における開閉手段のA−A線断面図(図3はガス流路が遮断された状態を示し、図4はガス流路が開放された状態を示す)、図5は、図1に示す塗布具におけるノズルの先端部の縦断面図(塗布状態の経時的変化を示す図)、図7は、図1に示す塗布具に装填される第1のシリンジ(第2のシリンジも同様)の部分縦断面図である。なお、説明の都合上、図1、図2および図5中の左側を「先端」、右側を「後端(基端)」といい、図7中の下側を「先端」、上側を「後端」という。また、図1〜図4中、上側を「上」といい、下側を「下」という。
【0024】
図1および図2に示すように、本発明の塗布具1は、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3をそれぞれ装填して用いられるものである。
【0025】
まず、塗布具1の構成について説明する前に、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3の構成について説明する。第1のシリンジ2と第2のシリンジ3とは、ほぼ同様の構成であるため、代表的に第1のシリンジ2について説明する。
【0026】
図7に示すように、本実施形態における第1のシリンジ2は、外筒(シリンジ外筒)21と、外筒21内で摺動し得るガスケット24と、ガスケット24を外筒21の長手方向(軸方向)に沿って移動操作する押し子(プランジャロッド)26とを備えている。ガスケット24は、押し子26の先端に連結されている。
【0027】
外筒21は、有底筒状の部材で構成され、先端側底部の中央部には、外筒21の胴部に対し縮径した縮径部(口部)22が一体的に突出形成されている。
【0028】
外筒21の後端外周には、フランジ23が一体的に形成されている。
また、外筒21の外周面には、液量を示す目盛りが付されている。
【0029】
外筒21の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であり、かつ水蒸気透過性が低い点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂が好ましい。なお、外筒21の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0030】
このような外筒21内には、弾性材料で構成されたガスケット24が収納されて(挿入されて)いる。ガスケット24の外周部には、複数(2つ)のリング状の突部が全周にわたって形成されており、これらの突部が外筒21の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【0031】
また、ガスケット24には、その後端面に開放する中空部25が形成されている。この中空部25は、後述する押し子26のヘッド部28が螺入(嵌入)される。中空部25の内面には、雌ネジが形成されている。
【0032】
ガスケット24の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0033】
押し子26は、横断面が十文字状をなす棒状の本体部27を有している。
本体部27の先端側には、ガスケット24の中空部25内に挿入され、ガスケット24と連結されるヘッド部(連結部)28が形成されている。ヘッド部28の外周には、中空部25の内面の雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されている。この雄ネジを雌ネジと螺合することにより、ガスケット24と押し子26とが連結される。なお、ガスケット24と押し子26は、螺合による連結に限らず、例えば凹凸嵌合等により連結された構成、接着、融着等により固着された構成、一体成形された構成であってもよい。
【0034】
また、本体部27の後端側には、円盤状のフランジ29が形成されている。
また、押し子26の構成材料としては、前述した外筒21の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0035】
第1のシリンジ2は、塗布具1に装填される以前に、外筒21とガスケット24とで囲まれた空間(貯液空間)20に、後述する第1の液体L1が充填される。
【0036】
第2のシリンジ3も、第1のシリンジ2と同様に、外筒21と、外筒21内で摺動し得るガスケット24と、ガスケット24を移動操作する押し子26とで構成され、空間20に第2の液体L2が充填される。各部の構成は同様であるため、その説明は省略する。
【0037】
第1のシリンジ2に充填される第1の液体L1と、第2のシリンジ3に充填される第2の液体L2とは、それらの組成(成分)が異なるものである。
【0038】
本発明においては、第1の液体L1と第2の液体L2とは、塗布具1の用途、使用目的、症例等に応じて適宜選定される。例えば、生体組織接着材の投与に使用する場合、第1の液体L1および第2の液体L2のうちの一方は、トロンビンを含有する液体(溶液等)、他方はフィブリノーゲンを含有する液体(溶液等)とすることができる。
【0039】
また、癒着防止材の投与に使用する場合、第1の液体L1および第2の液体L2のうちの一方は、スクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリンを含有する液体(溶液等)、他方は、リン酸水素二ナトリウムを含有する液体(溶液等)とすることができる。
【0040】
このような組み合わせの第1の液体L1および第2の液体L2は、それらを混合すると、ゲル化(固化)する。ゲル化することにより、例えば、第1の液体L1と第2の液体L2とが混合したもの(以下、「混合物」という)が、塗布された生体組織(目的部位)に確実に留まることができる。また、混合物が目的部位に確実に留まるため、当該目的部位において、生体組織接着材や癒着防止材としての機能を確実に発揮することができる。
【0041】
なお、第1の液体L1および第2の液体L2の種類および組み合わせは、上述したものに限定されないことは、言うまでもない。
【0042】
第1の液体L1が充填された第1のシリンジ2と、第2の液体L2が充填された第2のシリンジ3とが装填される塗布具1は、塗布具本体7と、ノズル4と、操作部8、開閉手段(弁機構)9と、ボンベ(気体供給手段)300に接続されたチューブ10を有している(図1参照)。
【0043】
塗布具1を構成する各部について説明する前に、ボンベ300について説明する。
ボンベ300は、その内部空間に高圧の(圧縮された)無菌ガスG(以下、単に「ガスG」と言う)が充填されており、当該ガスGを塗布具1(ノズル4)に供給することができる。このボンベ300には、塗布具1に対するガスGの供給/供給停止を制御する開閉自在なバルブ(コック)301が設置されている。塗布具1を使用するときには、バルブ301を開状態にする。
【0044】
図1および図2に示すように、塗布具本体7は、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3を並べて(並列に)固定するものである。この塗布具本体7は、基部71と、基部71の先端に設けられた前板(第1の係合部)72と、基部71の後端に設けられた後板(第2の係合部)73と、基部71の後板73付近に設けられた指掛け部751および752とを有している。
【0045】
基部71は、その上部に、横断面がほぼ半円弧状をなす凹部711および712が並列に設けられている。凹部711には、第1のシリンジ2の外筒21が収納され、凹部712には、第2のシリンジ3の外筒21が収納される。
【0046】
基部71の先端には、前板72が設けられている。この前板72には、凹部711および712のそれぞれに対応する位置に、溝721および722が形成されている。第1のシリンジ2および第2のシリンジ3を装填するとき、溝721には、第1のシリンジ2の縮径部22が挿入され、溝722には、第2のシリンジ3の縮径部22が挿入される。
【0047】
基部71の後端には、後板73が設けられている。この後板73には、凹部711および712のそれぞれに対応する位置に、凹部731および732が形成されている。第1のシリンジ2および第2のシリンジ3を装填するとき、凹部731には、第1のシリンジ2のフランジ23(基端部)が係合し(挿入され)、凹部732には、第2のシリンジ3のフランジ23(基端部)が係合する。
【0048】
このように、塗布具本体7では、前板72に各縮径部22が係合するとともに、後板73に各フランジ23が係合することにより、第1のシリンジ2と第2のシリンジ3とを確実に並列に固定することができる。
【0049】
基部71の後板73付近には、指掛け部751および752が設けられている。指掛け部751および752には、それぞれ、塗布具1を使用するときに使用者の指を掛けることができる。指掛け部751は、上方に突出した板片で構成され、指掛け部752は、下方に突出した板片で構成されている。また、各指掛け部751および752は、それぞれ、先端方向に臨む面が円弧状(湾曲凹状)をなすものである。
【0050】
塗布具本体7は、当該塗布具本体7を構成する各部が一体的に形成されたものであってもよいし、各部がそれぞれ別体で構成されこれらを接合したものであってもよい。
【0051】
塗布具本体7の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば射出成形により塗布具本体7を容易に製造することができる。
【0052】
塗布具本体7の後端側には、操作部8が塗布具本体7に対してその長手方向に移動可能に設置されている。この操作部8は、第1のシリンジ2の押し子26と第2のシリンジ3の押し子26とを先端方向(図1、図2および図4中の矢印C方向)へ押圧操作する部位である。操作部8は、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3の押し子26のフランジ29同士を連結する連結部81と、連結部81の後端側に位置する押圧部82と、連結部81から先端方向に向かって延在するレール部83とを有している。
【0053】
連結部81には、上方へ向かって開放する凹部811および812がそれぞれ設けられている。凹部811は、第1のシリンジ2の押し子26のフランジ29に対応した形状をなしており、当該フランジ29が係合する(図2参照)。また、凹部812は、第2のシリンジ3の押し子26のフランジ29に対応した形状をなしており、当該フランジ29が係合する(図2参照)。
【0054】
このような構成の連結部81により、第1のシリンジ2および第2のシリンジ3の押し子26のフランジ29同士を確実に連結、固定することができ、よって、これらの押し子26を一括して矢印C方向に移動させることができる。
【0055】
また、連結部81には、凹部811と凹部812との間に、筒状をなす筒状部813が設けられている。この筒状部813は、その軸線が図1中(図2も同様)上下方向と平行となるように設けられている。また、筒状部813には、開閉手段9のほとんどが収納されている。
【0056】
連結部81の筒状部813の外周部には、長尺状をなすレール部83が先端方向に向かって突出形成されている。このレール部83は、塗布具本体7の基部71に設けられ、長尺状をなす凹部711に挿入される。操作部8の矢印C方向への押圧操作によりレール部83が凹部711に案内されることとなり、よって、前記押圧操作を円滑に行うことができる。
【0057】
連結部81の筒状部813の後端側には、板状をなす押圧部82が筒状部813に対して塗布具本体7の長手方向に移動可能に設置されている。
【0058】
この押圧部82は、塗布具1を使用する、すなわち、混合物を患部等に塗布するとき、使用者によって押圧される部位である。塗布具1を使用するとき、例えば指掛け部751に人差し指を掛け、指掛け部752に中指を掛け、押圧部82に親指を掛けることができる。これにより、塗布具1を安定して確実に把持することができる。また、操作部8(押圧部82)の押圧操作を円滑かつ確実に行うことができ、よって、塗布具1の操作性が向上する。
【0059】
また、押圧部82は、後述する開閉手段の第2の接続部92に連結されている。
操作部8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、塗布具本体7についての説明で挙げたような材料を用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば射出成形により操作部8を容易に製造することができる。
【0060】
塗布具本体7の前板72には、ノズル4が設置されている。このノズル4は、チューブ10を通過したガスG(気体)と、第1のシリンジ2の縮径部22を通過した第1の液体L1と、第2のシリンジ3の縮径部22を通過した第2の液体L2とを吐出するものである(図5参照)。図1に示すように、ノズル4は、ノズル本体41と、ノズル本体41の先端側に位置するノズルヘッド42と、ノズル本体41とノズルヘッド42とを接続する接続部43とを有している。
【0061】
ノズル本体41は、例えば金属材料や樹脂材料で構成されたブロック状をなすものである。このノズル本体41には、第1のシリンジ2の縮径部22と、第2のシリンジ3の縮径部22と、チューブ10とが液密(気密)に嵌合して接続される。
【0062】
図5に示すように、ノズルヘッド42は、外形形状が円柱状をなすものである。このノズルヘッド42は、先端壁部424に、第1の液体L1が吐出される第1の吐出口421と、第2の液体L2が吐出される第2の吐出口422と、ガスGが吐出される一対の第3の吐出口(気体吐出口)423とを有している。第1の吐出口421と第2の吐出口422とは、互いに隣接して設けられている。また、本実施形態では、第1の吐出口421と第2の吐出口422との大きさは、互いに同等となっている。各第3の吐出口423は、第1の吐出口421および第2の吐出口422の外周部にそれぞれほぼ同心的に設けられている。
【0063】
ノズルヘッド42の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ノズル本体41の構成材料と同一のものを用いることができる。
【0064】
図1に示すように、接続部43は、長尺状をなすものであり、ノズル本体41の先端とノズルヘッド42の基端とを接続している。この接続部43は、硬質材料で構成されているものでも、軟質材料、弾性材料等で構成され、可撓性を有するものでもよい。接続部43の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種の軟質または硬質樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または銅系合金等の各種金属材料、各種ガラス、アルミナ、シリカ等の各種セラミックスが挙げられる。
【0065】
また、ノズル4には、ノズル本体41、接続部43およびノズルヘッド42を貫通する第1の流路44と、第2の流路45と、第3の流路46とが、接続部43の軸線(長手方向)に沿って形成されている。第1の流路44は、第1の吐出口421に連通しており、当該第1の吐出口421に第1のシリンジ2の縮径部22を通過した第1の液体L1を送ることができる。第2の流路45は、第2の吐出口422に連通しており、当該第2の吐出口422に第2のシリンジ2の縮径部22を通過した第2の液体L2を送ることができる。第3の流路46は、各第3の吐出口423に連通しており、当該各第3の吐出口423にボンベ300から供給されてチューブ10を通過したガスGを送ることができる。
【0066】
このような構成のノズル4では、各第3の吐出口423からガスGが高速に吐出する。この高速に吐出したガスGに、第1の吐出口421から吐出した第1の液体L1と、第2の吐出口422から吐出した第2の液体L2とが巻き込まれる(混合する)。このとき、第1の液体L1および第2の液体L2は、それぞれ、霧状となって噴出する。これにより、第1の液体L1と第2の液体L2とが確実に混合され、患部に塗布される。
【0067】
また、ノズル4には、チューブ10が接続されている。このチューブ10は、ボンベ300から供給されたガスGが通過するガス流路として機能するものである。また、チューブ10は、開閉手段9を介して上流側(ボンベ300側)に位置する第1のチューブ101と、下流側(ノズル4側)に位置する第2のチューブ102とで構成されている。
【0068】
チューブ10(第1のチューブ101および第2のチューブ102)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられ、これらの中でも、特にポリブタジエンを用いるのが好ましい。チューブ10の構成材料にポリブタジエンを用いた場合、適度な可撓性、耐薬品性、および薬品の吸着防止性に優れる。
【0069】
さて、前述したように、操作部8の筒状部813には、開閉手段9が設置されている。開閉手段9は、ボンベ300からノズル4に至るガスGの流れを遮断/開放するものである。この開閉手段9を介して、当該開閉手段9の作動により、第1のチューブ101と第2のチューブ102とが遮断(図3参照)/連通(図4参照)する。
【0070】
図3および図4に示すように、開閉手段9は、第1のチューブ101に接続された第1の接続部91と、第2のチューブ102に接続された第2の接続部92と、第1の接続部91内に収納され、開閉自在な弁部93とを有している。
【0071】
第1の接続部91は、管状をなすものである。この第1の接続部91の内腔部には、下流側に位置し、弁部93が収納される収納部912が設けられている。また、第1の接続部91の内腔部には、収納部93の上流側の内径より縮径した縮径部913が設けられており、当該縮径部913と収納部912との境界に内径が急峻に変化した段差部911が形成されている。
【0072】
第2の接続部92は、管状をなすものである。前述したように、第2の接続部92は、操作部8の押圧部82に連結されている。第2の接続部92は、下端部921が弁部93のシール部材94に支持されており、当該シール部材94を介して第1の接続部91の下流側に設置されている。この第2の接続部92は、第1の接続部91に対して、軸線同士が一致する第1の姿勢(図3に示す状態)と、下端部921を支点として軸線が押圧部82(操作部8)の矢印C方向(操作方向)に傾倒する第2の姿勢(図4に示す状態)とに変位可能に設置されている。
【0073】
弁部93は、弾性材料で構成されたシール部材94と、シール部材94より上流側に位置するフランジ部95と、フランジ部95をシール部材94側に付勢する付勢部96とを有している。
【0074】
シール部材94は、その形状がリンク状をなすものである。このシール部材94は、その内周部941が第2の接続部92の下端部921の外周部922に密着している。また、シール部材94の外周部942は、第1の接続部91の収納部912の内周部914に密着している。このようなシール部94により、当該シール部材94を介して、第1の接続部91と第2の接続部92とが気密に連結される。
【0075】
フランジ部95は、その外径が第2の接続部92の外径より拡径したものである。このフランジ部95は、第2の接続部92の下端面に、間隙97を介して、対抗配置されている。
【0076】
付勢部96は、本実施形態では圧縮コイルバネで構成されたものであり、それが圧縮された状態で、上端部961がフランジ部95に当接し、下端部962が第1の接続部91の段差部911に当接している。これにより、フランジ部95を確実にシール部材94側に付勢することができる。
【0077】
このような構成の弁部93では、フランジ部95は、第2の接続部92が第1の姿勢のとき、すなわち、第2の接続部92に外力が付与されていないとき、付勢部96に付勢されてシール部材94に気密に密着する(図3参照)。これにより、弁部93は閉状態となる。
【0078】
また、操作部8の押圧部82による矢印C方向へ押圧力が第2の接続部92に作用すると、当該第2の接続部92は、第1の姿勢から第2の姿勢へ変位する。このとき、フランジ部95は、付勢部96の付勢力に抗して変位することなり、これにより、フランジ部95の周縁部951の一部(または全部)がシール部材94から離間して、当該シール部材94との間に間隙98が生じる(図4参照)。これにより、ガスGは間隙98を介して第1の接続部91から第2の接続部92に流れ込む、すなわち、弁部93は開状態となる。
【0079】
以上のような構成の開閉手段9では、操作部8による押圧操作に連動して、弁部93が確実に開/閉することができる。これにより、弁部93が閉状態のとき、ボンベ300からノズル4に至るガスGの流れを確実に遮断することができ、弁部93が開状態のとき、当該ガスGの流れを確実に開放することができる。
【0080】
なお、第1の接続部91、第2の接続部92、フランジ部95および付勢部96の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0081】
また、シール部材94の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料を用いることができる。
【0082】
次に、使用可能状態となった、すなわち、第1の液体L1が充填された第1のシリンジ2と、第2の液体L2が充填された第2のシリンジ3とが装填され、かつボンベ300に接続された状態の塗布具1の作動状態について説明する。
【0083】
第1のシリンジ2および第2のシリンジ3には、それぞれ、患部に塗布するのに必要な(十分な)程度の液量の第1の液体L1および第2の液体L2が充填されている。また、ボンベ300は、バルブ301が開状態となっており、塗布具1に対してガスGを供給可能となっている。
【0084】
また、塗布具1では、シール部材94にフランジ部95を押し付ける付勢部96の力(付勢力)に抗して、シール部材94とフランジ部95との間に間隙98を生じさせる力、すなわち、第2の接続部92を第1の姿勢から第2の姿勢へ傾倒させる矢印C方向への押圧力は、第1のシリンジ2の押し子26と第2のシリンジ3の押し子26とを先端方向に移動させる力より大きくなるように設定されている。このような設定を行う方法としては、例えば、付勢部96のバネ定数、各液体の粘度、各外筒21の内径等の諸条件を適宜設定することより可能となる。
【0085】
このような塗布具1に対して、まず、例えば塗布具本体7の指掛け部751に人差し指を掛け、指掛け部752に中指を掛け、操作部8の押圧部82に親指を掛ける。このとき、ノズル4からは、ガスG、第1の液体L1および第2の液体L2は、吐出されていない(図5(a)参照)。
【0086】
次に、この状態で、親指で押圧部82を押圧操作すると、まず、第2の接続部92が傾倒して、シール部材94とフランジ部95との間に間隙98が生じ、この間隙98を通過することによりガスGが流通する(図4参照)。これにより、ノズル4の各第3の吐出口423からはガスGが噴出される(図5(b)参照)。
【0087】
さらに、押圧部82を押圧すると、第2の接続部92の傾倒が限界となり、親指からの押圧力が押圧部82を介して連結部81に伝達される。これにより、連結部81が移動し始め、よって、第1のシリンジ2から第1の液体L1が押し出されるとともに、第2のシリンジ3からも第2の液体L2が押し出される。この押し出された第1の液体L1は、ノズル4の第1の流路44を通過して第1の吐出口421から噴出される(図5(c)参照)。また、第2の液体L2は、第1の液体L1とほぼ同様に、ノズル4の第2の流路45を通過して第2の吐出口422から噴出される(図5(c)参照)。
【0088】
噴出された第1の液体L1および第2の液体L2は、前述したようにガスGの作用により、それぞれ霧状になり、互いに混合して患部に塗布される。
【0089】
操作部8の押圧操作により、各押し子26が押しきられる、すなわち、各押し子26の移動が停止すると、第1の液体L1および第2の液体L2の噴出がそれぞれ停止する(図5(d)参照)。このとき、ガスGは、まだ噴出されている。
【0090】
その後、押圧部82を押圧していた親指を当該押圧部82から離すと、第2の接続部92に対する押圧力が解除されて、第2の接続部92が第1の姿勢に戻る。これにより、シール部材94とフランジ部95との間の間隙98がなくなる、すなわち、シール部材94とフランジ部95の周縁部951の全周とが互いに密着する(図3参照)。これにより、ガスGの各第3の吐出口423からの噴出が停止する(図5(e)参照)。
【0091】
このように、塗布具1では、第1の液体L1および第2の液体L2をノズル4から吐出/吐出停止するときの、ノズル4に対するガスGの供給/供給停止のタイミングを最適に設定することができる。換言すれば、塗布具1は、ノズル4からは、ガスGが、第1の液体L1および第2の液体L2より容易かつ確実に先立って吐出されるよう構成されている。
【0092】
これにより、第1の液体L1および第2の液体L2のみが患部に噴出され塗布されるのを防止することができる。また、先立って噴出されたガスGにより、第1の液体L1および第2の液体L2がそれぞれ確実に霧状となって噴出され、よって、これらの液体同士が確実に混合する。
【0093】
また、塗布具1では、ガスGは、第1の液体L1および第2の液体L2より遅れて噴出が停止するよう構成されている。これにより、各液体の噴出が停止することで当該各液体が各吐出口に残留した(付着した)場合、これらの残留した液体をガスGが吹き飛ばすことができる。よって、各吐出口付近において第1の液体と第2の液体とが反応することにより生じる不都合(例えば、凝固による各吐出口の目詰まり)を防止することができる。
【0094】
また、塗布具1は、ノズル4からは、ガスGが、第1の液体L1および第2の液体L2とほぼ同時に吐出されるよう構成されていてもよい。この場合は、ガスGが無駄に噴出すること、すなわち、ガスGの浪費を抑制することができる。また、ガスGのみが患部に噴出され続けるのを防止することができる。
【0095】
<第2実施形態>
図6は、本発明の塗布具(第2実施形態)における開閉手段の縦断面図である。
【0096】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0097】
本実施形態は、塗布具が付勢力調整手段をさらに有すること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0098】
図6に示す塗布具1Aは、付勢部96の付勢力を調整する付勢力調整手段5をさらに備えている。この付勢力調整手段5としては、特に限定されないが、本実施形態では、リング状をなすリング部材(スペーサ)51で構成されている。
【0099】
リング部材51は、その外径が付勢部96の外径とほぼ同等のものである。このリング部材51は、第1の接続部91の収納部912に収納され、付勢部96の下端部962と段差部911との間に位置している。これにより、付勢部96を前記第1実施形態の付勢部96より圧縮することができ、よって、付勢力を調整する、すなわち、付勢力を増大させることができる。
【0100】
さて、第1のシリンジ2の押し子26と第2のシリンジ3の押し子26とを先端方向に移動させる力(以下、この力を「移動力」という)は、例えば第1の液体L1、第2の液体L2の粘度や、各外筒21の内径等によって変わる。
【0101】
例えば、第1のシリンジ2に充填される第1の液体L1として、その粘度が比較的大きいものである場合、第2の接続部92を第1の姿勢から第2の姿勢へ傾倒させる矢印C方向への押圧力より、移動力が大きくなることがある。このため、押圧部82を押圧しても、弁部93が開状態となってガスGのみが噴出し続け、各押し子26が押圧されるのが困難となり第1の液体L1および第2の液体L2が押し出されない(噴出しない)おそれがある。
【0102】
また、第1のシリンジ2に充填される第1の液体L1として、その粘度が比較的小さいものである場合、第2の接続部92を第1の姿勢から第2の姿勢へ傾倒させる矢印C方向への押圧力より、移動力が極端に小さくなることがある。このため、押圧部82を押圧しても、先に各押し子26が押圧されて第1の液体L1および第2の液体L2のみが噴出してしまい、弁部93の閉状態が維持されてガスGが噴出しないおそれがあった。
【0103】
しかしながら、塗布具1Aが付勢力調整手段5を有することにより、例えば前述したように第1の液体L1がその粘度が比較的大きいものである場合であっても、付勢部96の付勢力を増大させて第2の接続部92を第1の姿勢から第2の姿勢へ傾倒させる矢印C方向への押圧力を、移動力より大きくなるように確実に設定することができる。これにより、ノズル4からは、ガスGが第1の液体および第2の液体より先立って噴出される、すなわち、ノズル4の最適な噴出タイミングを設定することができる。例えば、ガスGが噴出してから0.2秒後に第1の液体L1および第2の液体L2を噴出させることができる。
【0104】
このように、塗布具1では、前述した移動力の変化による不都合を克服することができる。
【0105】
なお、リング部材51の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0106】
また、付勢力調整手段5としては、リング部材51に限定されず、例えば、以下に記載したものが挙げられる。
【0107】
第1の接続部91の収納部912を画成する部分を上流側に位置する第1部材と第1部材より下流側に位置する第2部材とで構成し、これらの部材同士が螺合により結合されている。これにより、第1部材と第2部材とが接近・離間可能となり、よって、フランジ部と段差部との距離を調整することができる。これにより、リング部材51と同等の効果を奏する。
【0108】
以上、本発明の塗布具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、塗布具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0109】
また、塗布具では、第1のシリンジの縮径部を通過した第1の液体と第2のシリンジの縮径部を通過した第2の液体とがほぼ同時にノズルから噴出されるよう構成されているが、これに限定されず、例えば、これらの2液体のうちの一方が他方よりも先に噴出するよう構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の塗布具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の塗布具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す塗布具における開閉手段のA−A線断面図(ガス流路が遮断された状態を示す図)である。
【図4】図1に示す塗布具における開閉手段のA−A線断面図(ガス流路が開放された状態を示す図)である。
【図5】図1に示す塗布具におけるノズルの先端部の縦断面図(塗布状態の経時的変化を示す図)である。
【図6】本発明の塗布具(第2実施形態)における開閉手段の縦断面図である。
【図7】図1に示す塗布具に装填される第1のシリンジ(第2のシリンジも同様)の部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1、1A 塗布具
2 第1のシリンジ
20 空間
21 外筒
22 縮径部(口部)
23 フランジ
24 ガスケット
25 中空部
26 押し子
27 本体部
28 ヘッド部
29 フランジ
3 第2のシリンジ
4 ノズル
41 ノズル本体
42 ノズルヘッド
421 第1の吐出口
422 第2の吐出口
423 第3の吐出口(気体吐出口)
424 先端壁部
43 接続部
44 第1の流路
45 第2の流路
46 第3の流路
5 付勢力調整手段
51 リング部材(スペーサ)
7 塗布具本体
71 基部
711、712 凹部
72 前板(第1の係合部)
721、722 溝
73 後板(第2の係合部)
731、732 凹部
751、752 指掛け部
8 操作部
81 連結部
811、812 凹部
813 筒状部
82 押圧部
83 レール部
9 開閉手段(弁機構)
91 第1の接続部
911 段差部
912 収納部
913 縮径部
914 内周部
92 第2の接続部
921 下端部
922 外周部
93 弁部
94 シール部材
941 内周部
942 外周部
95 フランジ部
951 周縁部
96 付勢部
961 上端部
962 下端部
97、98 間隙
10 チューブ
101 第1のチューブ
102 第2のチューブ
300 ボンベ(気体供給手段)
301 バルブ
L1 第1の液体
L2 第2の液体
G ガス(無菌ガス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に突出形成された口部を有するシリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に挿入されたガスケットと、該ガスケットを前記シリンジ外筒の長手方向に沿って移動操作する押し子とを備え、前記シリンジ外筒と前記ガスケットとで形成された空間に液体が充填された第1のシリンジおよび第2のシリンジをそれぞれ装填して用いられる塗布具であって、
前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジを並べて固定する塗布具本体と、
気体を供給する気体供給手段に接続され、該気体供給手段からの気体が通過するガス流路と、
前記ガス流路を通過した気体と、前記第1のシリンジの前記口部を通過した液体と、前記第2のシリンジの前記口部を通過した液体とを吐出するノズルと、
前記第1のシリンジの前記押し子と前記第2のシリンジの前記押し子とを先端方向へ押圧操作する操作部と、
前記操作部に設けられ、前記ガス流路を遮断/開放する開閉手段とを備え、
前記開閉手段は、前記操作部による押圧操作に連動して、前記ガス流路を開放するよう作動することを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記開閉手段は、前記ガス流路の途中に設置され、開閉自在な弁機構で構成されている請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記弁機構は、前記ガス流路の上流側に接続され、管状をなす第1の接続部と、前記ガス流路の下流側に接続され、管状をなし、前記第1の接続部に対して軸線同士が一致する第1の姿勢と、軸線が前記操作部の操作方向に傾倒する第2の姿勢とに変位可能な第2の接続部と、該第2の接続部が前記第1の姿勢では閉じており、前記第2の接続部が前記第2の姿勢では開く弁部とを有する請求項2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記弁部は、弾性材料で構成され、前記第1の接続部の内周部と前記第2の接続部の外周部とを気密に連結するシール部材と、前記第2の接続部の前記ガス流路の上流側に当該第2の接続部の外径より拡径して設けられたフランジ部と、前記フランジ部を前記シール部材側に付勢する付勢部とを有し、フランジ部は、前記第2の接続部が前記第1の姿勢のとき前記付勢部に付勢されて前記シール部材に気密に密着し、前記第2の接続部が前記第2の姿勢のとき前記付勢部の付勢力に抗して変位して、前記シール部材との間に間隙が生じるよう構成されている請求項3に記載の塗布具。
【請求項5】
前記ノズルからは、前記ガス流路を通過した気体が、前記第1のシリンジの前記口部を通過した液体と前記第2のシリンジの前記口部を通過した液体の2液体のうちの先に出る方の液体とほぼ同時にまたはそれより先立って吐出されるよう構成されている請求項4に記載の塗布具。
【請求項6】
前記シール部材と前記フランジ部との間に前記間隙を生じさせる力は、前記第1のシリンジの前記押し子と前記第2のシリンジの前記押し子とを先端方向に移動させる力より大きくなるように設定されている請求項5に記載の塗布具。
【請求項7】
前記付勢部の付勢力を調整する付勢力調整手段をさらに備える請求項6に記載の塗布具。
【請求項8】
前記操作部は、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの前記押し子の基端部同士を連結する連結部と、使用者によって押圧される押圧部とを有する請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布具。
【請求項9】
前記塗布具本体は、指を掛ける指掛け部を有しており、該指掛け部に片方の手の親指を除く複数の指を掛けた状態で、前記押圧部には、前記片方の手の親指が掛けられる請求項8に記載の塗布具。
【請求項10】
前記塗布具本体は、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの口部がそれぞれ係合する第1の係合部と、該第1の係合部より基端側に設けられ、前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジの基端部がそれぞれ第2の係合部とを有する請求項1ないし9のいずれかに記載の塗布具。
【請求項11】
前記ノズルは、前記第1のシリンジの液体が吐出される第1の吐出口と、前記第1のシリンジから流出した液体を前記第1の吐出口へ送る第1の流路と、前記第2のシリンジの液体が吐出される第2の吐出口と、前記第2のシリンジから流出した液体を前記第2の吐出口へ送る第2の流路と、前記第1の吐出口および前記第2の吐出口の外周部にそれぞれほぼ同心的に設けられ、前記気体供給手段からの気体が吐出される気体吐出口と、前記気体供給手段から供給された気体を前記気体吐出口へ送る第3の流路とを有する請求項1ないし10のいずれかに記載の塗布具。
【請求項12】
前記第1のシリンジおよび前記第2のシリンジには、それぞれ、液組成が異なる液体が充填される請求項1ないし11のいずれかに記載の塗布具。
【請求項13】
前記液組成が異なる2液体は、それらを混合することにより生体組織の癒着防止材となるものである請求項12に記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−244436(P2007−244436A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68315(P2006−68315)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】