説明

塗布方法、バー塗布装置、それらを用いた平版印刷版材料の製造方法

【課題】ワイヤーバーやワイヤレスバー等のバーを用いる塗布方法において、目詰まりを防止し、これにより塗布故障を未然に防ぎ安定した長尺塗布を可能とする塗布方法、及び塗布装置を提供する。更に、それらを用いた平版印刷版材料の製造方法を提供する。
【解決手段】バー塗布装置を用いた塗布方法において、該塗布装置に超音波振動を加えつつ塗布を行なうことを特徴とする塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、バー塗布装置、及びそれらを用いた平版印刷版材料の製造方法に関する。詳しくは、ワイヤーバー等のバー塗布装置を用いて固体粒子分散液等を支持体上に塗布する塗布方法、塗布装置及びそれらを用いた平版印刷版材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体に各種の塗布層を設ける装置として多くの方式による装置が知られている。例えばディップ塗布、ローラ塗布、ファウンテン塗布、その他エアーナイフ、ブレード塗布、バー塗布、スライドホッパー等である。
【0003】
上記塗布装置を使用した塗布方法の中で、連続的に搬送される帯状支持体へ塗布するのに適した方法として、バー塗布装置を使用したバー塗布方法が知られている。バー塗布方法は、近年、薄膜・高速塗布用として多用されるようになってきたものの一つである。
【0004】
バー塗布方法とは、第一段階としてロール塗布装置等により帯状支持体に適当に過剰量の塗布液を塗布し、過剰の塗布液(1次膜)はバー塗布装置(バーは静止、又は回転)によりバーを押し当てて掻き落すことにより、所望の膜厚(2次膜)を得る方法である。このバー塗布方法においては、掻き落し後の最終膜厚はバーに形成されている溝の、バー軸方向と直交する断裁面形状のみで決定されるので精度がよい。
【0005】
バー塗布装置と組み合わせ、過剰な塗布液を塗布する装置としては上記の各塗布装置を使用することができるが、一般的にはディップ塗布装置、ロール塗布装置、ファウンテン塗布装置、コンマ塗布装置が用いられている。なお、特開平6−170312号公報に記載されている如き過剰塗布を行うための装置とバー塗布装置とが一体化した塗布装置も用いることができる。
【0006】
従来のワイヤーバーやワイヤレスバー等を用いるバー塗布装置では、ファウンテンやバットで塗布液を支持体に接触させた後、ワイヤーバー等で掻き取りながら塗設している。しかし、塗布液中にマット剤や顔料を含んでいる場合には、長尺塗布時にバーのワイヤーや凹凸部分に目詰まりが起こり、これが原因となって塗布膜厚異常や、塗布ムラ、塗布スジと呼ばれる、所謂塗布故障が発生していた。
【0007】
即ち、支持体に付いた塗布液を、正方向又は逆方向に回転しているバーで液を掻き落とし必要膜厚を得る方法において、固体粒子を含有する液を塗布する際に掻き取り時のバーの凹凸部分に粒子が目詰まりし、これが引き金となり経時で塗布故障の発生する問題が生じていた。
【0008】
この対策として特許文献1に開示されているように回転するワイヤーバーのワイヤーに付いた塗布液を全面しごいてきれいにするためのブラシを該回転バーに接触させる考案がある。特許文献2では改善策としてブレードを用いているが、また、特許文献3には、塗布時にインライン超音波分散機で塗布液自体に超音波を与え、塗布液中の粒子を再分散させて塗布性を改善する方法が示されている。
【0009】
しかし特許文献1の考案は、ワイヤーバーに対する事前のブラシによる液掻き取り操作が不完全であり、ブラシをワイヤーバー表面に接触させても余剰塗布物中の粒子状のものが掻き取りきれず目詰まりを起こし、塗布膜厚の均一性が不十分になる。又ブラシを特に摺動させる記載もみられず長時間の使用に疑問がある。
【0010】
特許文献2は、含有する粒子の粒径によっては効果が発揮されないことがある。また特許文献3は、この手段を用いても長尺塗布を行なった場合は程度の差こそあれ、いずれワイヤーが目詰まりしてしまう可能性がある。
【特許文献1】実開昭62−50767号公報
【特許文献2】特開平11−47677号公報
【特許文献3】特開2005−254474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤーバーやワイヤレスバー等のバーを用いる塗布方法において、目詰まりを防止し、これにより塗布故障を未然に防ぎ安定した長尺塗布を可能とする塗布方法、及び塗布装置を提供することである。更に、それらを用いた平版印刷版材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
【0013】
1.バー塗布装置を用いた塗布方法において、該塗布装置に超音波振動を加えつつ塗布を行なうことを特徴とする塗布方法。
【0014】
2.液体に固体粒子を分散させた分散液を塗布するときに、バー塗布装置に超音波振動を与えることを特徴とする前記1に記載の塗布方法。
【0015】
3.塗布時に加える超音波振動の周波数が、塗布速度に比例して増加することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【0016】
4.前記1〜3のいずれか一項に記載の塗布方法により塗布することができる超音波振動を発生させる装置を有することを特徴とするバー塗布装置。
【0017】
5.支持体上に、少なくとも、親水層と画像形成層を有する平版印刷版材料の製造方法において、該親水層を形成する親水層塗布液を連続的に搬送される帯状の該支持体上に、前記1〜3に記載の塗布方法により塗布することを特徴とする平版印刷版材料の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成により、ワイヤーバーやワイヤーレスバー等のバーを用いる塗布方法において、目詰まりを防止し、これにより塗布故障を未然に防ぎ安定した長尺塗布を可能とする塗布方法、及び塗布装置を提供することができる。更に、それらを用いた平版印刷版材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の塗布方法は、バー塗布装置を用いた塗布方法において、該バー塗布装置に超音
波振動を加えつつ塗布を行なうことを特徴とする。より具体的には、本発明の塗布方法は、液体に固体粒子を分散させた分散液を塗布するときに、バー塗布装置に超音波振動を与えることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明について詳細な説明をする。
【0021】
(塗布装置)
本発明の塗布方法は、種々の塗布装置に適応可能であるが、本発明に係る塗布装置の一例の全体の側面模式図を図1に示す。また、図2、3に本発明に係るバー塗布装置の正面図を示す。
【0022】
図1において、塗布液供給タンク1内の塗布液9が送液ポンプ2により塗布液バット3に供給される。該バット3にバックローラー1に巻かれて搬送され、塗布液9に浸漬された支持体4は、塗布液がワイヤーバー8により掻き取られ、所定の膜厚が得られるようになっている。塗布液9が塗布された支持体4は、その後乾燥ゾーンに入り乾燥される。ワイヤーバー8は支持体4に対して順方向又は逆方向に回転させることが出来る。
【0023】
図2は従来のコーター部を正面から見たものである。
【0024】
図3は本発明の構成であり、ワイヤーバーの端部に超音波振動子を設置している。
【0025】
(超音波振動)
本発明はワイヤーバー、ワイヤレスバー等のバー塗布装置を超音波の領域で振動させることを特徴とする。当該振動の周波数としては、超音波の領域であれば特に制限は無いが、20kHzから100kHzが好ましく、30kHzから80kHzがより好ましい。
【0026】
なお、本発明においては、塗布時に加える超音波振動の周波数が、塗布速度に比例して増加することをが、本発明に係る効果発現の点で好ましい。
【0027】
(超音波振動子)
本発明ではバーを振動させる方法として、超音波振動子を用いることが好ましい。電歪型、磁歪型など、どのようなタイプの振動子でも使用することができるが、簡単な構造で信頼性があり、発振周波数や出力のコントロールのし易さから、電歪型のランジュバン型超音波振動子が好ましく用いられる。更に振動の種類として、軸振動、捻り振動、たわみ振動等があるが、バー塗布装置に対する効果の点から軸振動方式が好ましい。
【0028】
超音波振動子を塗布装置に取り付ける位置としては、ワイヤーバー等にロス無くエネルギーを伝達できることが必須条件である。場所としては、バー支持台、バーを保持しているチャック部分、チャック軸部分、バー端部等があるが、バー端部に直接接触させることが好ましい。直接接触させることにより、エネルギーを減退させることなくバーに伝えることが出来る。
【0029】
(バー部材)
本発明に係るバーとは、ワイヤーを巻いたバーやワイヤーを巻いていないバー(ワイヤーレスバー)等特に制限なく用いられ、材質も鉄やステンレス等制限なく用いられる。
また、必要に応じて表面にメッキ処理を施しても良い。表面メッキ処理としては、本発明の範囲を満たせば特に制限なく用いても良く例えばニッケル、コバルト、ハードクロム、チタン、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)等挙げられる。メッキ処理は単独でも良く、または、ニッケルメッキ処理したものに更にハードクロムメッキ処理するなど複数行っても良い。
【0030】
本発明の塗布方法は、種々の技術分野で使用することが出来るが、具体例として、印刷版材料を作製する工程において使用する場合について説明する。即ち、支持体上に、少なくとも、親水層と画像形成層を有する平版印刷版材料の製造方法において、該親水層を形成する親水層塗布液を連続的に搬送される帯状の該支持体上に、本発明の塗布方法により塗布する場合について説明する。
【0031】
(支持体)
本発明に用いられる支持体としては、特に大きな制限無く、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、更にこれら材料を適宜貼り合わせた複合基材、アルミニウム等も用いることが出来る。
【0032】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アセテート、ナイロン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0033】
(固体粒子分散液)
本発明に係る固体粒子とは、粒径をもつフィラー、マット剤、分散物、溶媒に溶けないバインダー(未溶解物、重合物)を意味する。固体粒子の構成材料等を具体的に挙げると、下記のものがある。
【0034】
固体粒子は、形状が球状であっても、針状であっても、不定形であってもよく、固体粒子の例としてまずフィラーを挙げることができる。
【0035】
例えば、カーボンブラック、グラファイト、TiO2、BaSO4、ZnS、MgCO3、CaCO3、ZnO、CaO、WS2、MoS2、MgO、SnO2、Al23、α−Fe23、α−FeOOH、SiC、CeO2、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイアモンド、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、トリボリ、ケイソウ土、ドロマイト等の無機フィラーやポリエチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等の有機フィラーを挙げることができる。
【0036】
フィラーは離型剤を兼ねても良い。粒子物としてコア−シェル構造を有するマット剤も挙げることができる。
【0037】
コア−シェル構造を有する粒子とは、コア粒子表面にシェルとなる部分の粒子を固着させてなる粒子もある。この場合、コア粒子、シェルとなる部分の粒子は無機粒子でも有機粒子でもよい。コア粒子にシェルとなる粒子を何層にも固着(被覆)させても良い。
コア粒子の平均粒径は0.1〜15μmが好ましく、より好ましくは平均粒径1〜10μmである。
【0038】
表面凹凸粒子において、小粒子の平均粒径はコア粒子の平均粒径の1/3以下が好ましく、より好ましくは1/10以下である。表面凹凸粒子の平均粒径は15μmを越えないことが好ましく、また0.1μm以上であることが好ましい。コア粒子の表面に固着する小粒子の被覆度は、本発明の効果が現れる範囲で任意に選ぶことができる。
【0039】
また、大粒子の表面に小粒子を固着させ表面が凹凸の粒子でもよい。例えば、東レリサーチセンター(株)編「微粒子ポリマーの新展開」に記載のヘテロ凝集法を利用する方法、コア粒子表面からの重合反応による方法、粉体工学会編「粒子設計工学」に記載のハイブリダイザーを用いる乾式凝集攪拌法、等を用いて容易に製造することができる。また、ある種のコア−シェル粒子はコア粒子の表面に小粒子を析出させることにより製造することができる。
粒子組成として金属原子含有粒子でもよい。金属原子含有粒子とは鉄、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタン、銀、アルミニウム、金、白金等の金属またはその酸化物等の化合物を総称している。
【0040】
(親水性層)
本発明で述べている親水性層とは、印刷時に水とインクの乳化した溶液が来た際、水をより多く取り込むことの出来る層と定義する。
親水性層に含有される粒子物については前記した。
【0041】
利用可能な親水性結着剤としては例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルメチルエーテル、又は天然結合剤、例えばゼラチン、多糖類、例えばデキストラン、プルラン、セルロース、アラビアゴム、アルギニン酸が挙げられる。又親水性結着剤は、フェノール性ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を有する水に不溶性、アルカリ溶解性又は膨潤性樹脂であってもよい。又種々の界面活性剤、コロイダルシリカなども利用できる。
【0042】
本発明では、支持体と親水性層の間にはその他の層を形成してもよい。例えば、親水性層の接着性を改善する下引き層や、長波長の緩やかな粗さを付与するうねり形成層、親水性層が受ける応力を緩和するクッション層などである。また、これらいずれかの層が光熱変換素材を含有していてもよい。
【0043】
(画像形成層)
本発明に係る平版印刷版材料の画像形成層は、熱により融着可能な熱溶融性粒子及び熱により親油性を発現する物質の内から選択して含有することができる。
【0044】
熱により融着可能な熱溶融性粒子としては、ワックス類、アクリル系樹脂、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、合成ゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などの水に分散されたラテックスやエマルジョンから得られるものが挙げられる。これらの内その融点が70〜180℃のものが好ましく、表面エネルギーの親水性成分が100μN/cm2以下であることが好ましい。
【0045】
融点がこの温度より低い場合には、保存時における性能劣化が起きやすく、この温度より高い場合には画像の強度が得られず耐刷性が劣化し易い。又表面エネルギーがこの範囲であると画像部のインキ着肉性が良好になる。このような点で熱溶融性物質としてはワックス類、アクリル系樹脂、合成ゴム類が特に好ましい。
【0046】
本発明に利用可能なワックス類としてはカルナウバワックス、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、ホホバ油、ラノリン、オゾケライト、パラフィンワックス、モンタンワックス類、キャンデリラワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、高級脂肪酸等が挙げられる。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
【0047】
熱により融着可能な熱溶融性粒子を含有する画像形成層には、レーザー露光時の粒子の融着性を阻害しない範囲で画像形成層の皮膜性を付与する為に親水性結着剤を含有させてもよい。
【0048】
利用可能な親水性結着剤としては例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルメチルエーテル、又は天然結合剤、例えばゼラチン、多糖類、例えばデキストラン、プルラン、セルロース、アラビアゴム、アルギニン酸が挙げられる。又親水性結着剤は、フェノール性ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を有する水に不溶性、アルカリ溶解性又は膨潤性樹脂であってもよい。又種々の界面活性剤、コロイダルシリカなども利用できる。
【0049】
熱により親油性を発現する物質としては融点が70〜180℃の熱溶融性物質が利用でき、ワックス類ではカルナウバワックス、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、ホホバ油、ラノリン、オゾケライト、パラフィンワックス、モンタンワックス類、キャンデリラワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、高級脂肪酸等が、アクリル系樹脂では、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、スチレンなどの一種もしくは2種以上を共重合したものが、又合成ゴム類ではポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、メタアクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、イソブチレン/イソプレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/イソプレン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体等が挙げられる。又その他に、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等が利用できる。これらの親油化剤は水分散体の形で利用することが塗工のし易さの面で好ましい。又、別の形態のものとして、熱破壊可能な親水性被覆材に覆われている熱架橋剤、熱により解離する保護基により官能基がブロックされた熱架橋剤が挙げられる。
【0050】
これら熱架橋剤は特開平7−1849号、同7−1850号、同9−311443号、同10−6468号、同10−1141168号の各公報にマイクロカプセル化された親油性成分として記載されている。
【0051】
画像形成層を形成するための塗料に用いられる有機溶剤としては上記の組成物及び一般式で表される金属イオン錯体色素を溶解又は分散出来るものであれば特に制限は無く、例えばアルコール類(エタノール、プロパノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、芳香族類(トルエン、キシレン、クロルベンゼン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、ジクロルベンゼン等)、アミド系溶剤(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)等を用いることができる。又、着色剤層成分の混練分散には二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等を用いることができる。
【0052】
画像形成層の形成は、例えばエクストルージョン方式の押し出しコータにより塗布乾燥して行うことができ、高解像度の画像を得るため感光層表面の硬さを上げるために、該表面をカレンダー処理してもよい。
【0053】
〔平版印刷版材料の作製〕
本発明に係る平版印刷版材料は、基本的には、上述した支持体上に親水層と画像形成層を設けることで作製することができる。
【0054】
〔印刷方法及び画像露光〕
本発明に係る平版印刷版材料に画像形成する露光光源としては、当該平版印刷版材料が感応することのできる光源であれば特に制限なく用いることができる。その中で高解像度を得るためにはエネルギー印加面積が絞り込める電磁波、特に波長が1nm〜1mmの紫外線、可視光線、赤外線が好ましく、このような光エネルギーを印加し得る光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、石英水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を挙げることができる。この際加えられるエネルギーは画像形成材料の種類により、露光距離、時間、強度を調整することにより適時選択して用いることができる。
【0055】
本発明に係る印刷方法に使用するレーザー光源としては一般によく知られているルビーレーザー、YAGレーザー、ガラスレーザーなどの固体レーザー;He−Neレーザー、Arイオンレーザー、Krイオンレーザー、CO2レーザー、COレーザー、He−Cdレーザー、N2レーザー、エキシマーレーザーなどの気体レーザー;InGaPレーザー、AlGaAsレーザー、GaAsPレーザー、InGaAsレーザー、InAsPレーザー、CdSnP2レーザー、GaSbレーザーなどの半導体レーザー;化学レーザー、色素レーザー等を挙げることができ、これらの中でも効率的にアブレートを起こさせるためには、波長が600〜1200nmのレーザーが光エネルギーを熱エネルギーに変換できることから、感度の面で好ましい。
【0056】
なお、本発明に係る印刷方法は、従来公知の種々の方法を用いることが出来る。例えば、画像情報に基づいてレーザー露光した後、現像処理を施さずに印刷する方法も採ることが出来る。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、以下、文中の「部」は「質量部」を表す。
【0058】
(支持体の作製)
(ポリエチレンテレフタレート(PET)支持体)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0059】
これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。ついでテンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後4.8kg/mで巻き取った。このようにして厚さ190μmの二軸延伸PETフィルムを得た。この二軸延伸PETフィルムのガラス転移温度(Tg)は79℃であった。得られたPETフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。また、得られた支持体の厚み分布は3%であった。
【0060】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また反対側の面に下記下引き塗布液cを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後にコロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。塗布後の下引き面Bの25℃、25%RHでの表面電気抵抗は108Ωであった。
【0061】
各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0062】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) (固形分基準)6.3%
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.6%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1%
水 92.0%
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05%
硬膜剤H−1 0.02%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02%
防黴剤F−1 0.01%
水 98.9%
【0063】
【化1】

【0064】
《下引き塗布液c》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス (固形分基準)0.4%
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1%
水 91.9%
《下引き塗布液d》
成分d−1/成分d−2/成分d−3=66/31/1の導電性組成物
6.4%
硬膜剤H−2 0.7%
アニオン系界面活性剤S−1 0.07%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.03%
水 93.4%
成分d−1:
スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−2:
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−3:
スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0065】
【化2】

【0066】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0067】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低
張力熱処理を実施した。
【0068】
〔親水性層〕
上記ポリエチレンテレフタレートフィルム175μm、120cm幅の下引き面A側に下記塗布液を設けた。
【0069】
塗布液を乾燥膜3.2μmになるように従来のワイヤーバー塗布装置、及び本発明の構
成のワイヤーバー塗布装置を用い、それぞれ塗布を行った(塗布条件:ワイヤー番手#4、ワイヤーバー回転数30rpm、バー押し込み量10mm、塗布速度40m/min)。後者の塗布装置には、ワイヤーバーの端部に超音波振動子を設置した。なお、超音波振動の条件として、発振周波数を50kHz、振動振幅を60μmとした。
【0070】
《親水性層塗布液》
スノーテックス−XS(日産化学工業(株)製)平均粒径0.005μm
9.62部
スノーテックス−ZL(日産化学工業(株)製)平均粒径0.085μm
0.6部
シルトンJC−40(水澤化学工業(株)製)平均粒径4.0μm 2.22部
オプトビーズ(日産化学工業(株)製)被覆粒子平均粒径6.5μm 3.0部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学(株)製) 0.12部
ミネラルコロイドMO(ウイルバ−エリス(株)製) 0.22部
MF−4500ブラック(大日精化工業(株)製、光熱変換素材) 4.0部
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学(株)製) 0.06部
FZ−2161(日本ユニカー(株)製) 0.16部
純水 80部
〔評価〕
〈塗布欠陥防止性〉
未塗布部分(塗布液が部分的に抜けているところ)を塗布欠陥とし、塗布2、000m後のサンプルで1m2ずつ、10m2の面積で塗布欠陥数をカウントした。塗布欠陥は数が多いほどバーの目詰まりが多い。2,000m塗布後のサンプルで10m2あたり塗布欠陥が3個以下のものを合格とした。
【0071】
〈塗布筋防止性〉
バーが目詰まると塗布筋が発生する。塗布2、000m後のサンプルで1m2ずつ、10m2分の塗布筋(バーすじ)を測定し、下記ランクにて評価し、ランク2以上を合格とした。
3:全くなし
2:少しあり、実害ない領域
1:非常に多く発生、実害あり
〈バー再使用性〉
塗布後のバーを蒸留水でよく汚れを流した後に下記方法により洗浄し、ワイヤーの目詰まり度合い、再使用性を目視評価した。東京硝子器械(株)製、超音波洗浄器FU−926に水2L(リットル)を入れ、和光純薬工業(株)製、超音波洗浄剤コンタミノンUSを10ml添加し24h洗浄を行い、洗浄液の汚れ具合を評価した。ランク2までを合格とした。
【0072】
評価ランク
3:目詰まりなく、再使用全く問題なし
2:目詰まり少しあり、再使用全く問題なし
1:目詰まり多い、再使用不可
上記各種評価の結果をまとめて表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例においては、塗布欠陥防止及び塗布筋防止性に優れ、かつバー再使用性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る塗布装置の一例の全体の模式図
【図2】従来のバー塗布装置の正面図
【図3】本発明に係る超音波振動子を設置したバー塗布装置の正面図
【符号の説明】
【0076】
1 塗布液供給タンク
2 送液ポンプ
3 塗布液バット
4 支持体
5 搬送ローラ
6 バックローラ1
7 バックローラ2
8 ワイヤーバー
9 塗布液
10 チャック
11 バー支持体
12 超音波振動子
13 振動子台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー塗布装置を用いた塗布方法において、該塗布装置に超音波振動を加えつつ塗布を行なうことを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
液体に固体粒子を分散させた分散液を塗布するときに、バー塗布装置に超音波振動を与えることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
塗布時に加える超音波振動の周波数が、塗布速度に比例して増加することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗布方法により塗布することができる超音波振動を発生させる装置を有することを特徴とするバー塗布装置。
【請求項5】
支持体上に、少なくとも、親水層と画像形成層を有する平版印刷版材料の製造方法において、該親水層を形成する親水層塗布液を連続的に搬送される帯状の該支持体上に、請求項1〜3に記載の塗布方法により塗布することを特徴とする平版印刷版材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−313472(P2007−313472A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147827(P2006−147827)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】