説明

塗布液の塗布装置

【課題】矩形状のフラットなガラス板や樹脂パネル等の板状体の上面に、必要最小限の塗布量で塗布液を塗布して塗布ムラもなく、ガラス板の裏面側に塗布液の裏回りも発生させずに塗布する。
【解決手段】ガラス板の搬送方向と直交する幅方向に一定ピッチで塗布液供給用の複数のノズルを並設し、該各ノズル夫々に塗布液タンクより塗布液の供給停止を自在とする電磁弁を介して夫々チューブでノズルと接続し、前記ノズルの各先端部には塗布液を吐出する針状のニードル部をガラス板面に対して垂直方向に配設し、該ニードル部からの塗布液の吐出によってガラス板の先端から後端間の上面に形成される塗布直後の帯状塗布面の幅をaとすると、該帯状塗布面同士が略a/4〜a/30となる間隔で平行となるように塗布後、ガラス板の搬送状態でレベリングさせ、各帯状塗布面の面積を互いに隙間の無くなるまで広げて、ガラス面上の膜厚を均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板や樹脂パネル等の板状体の表面に塗布液の裏回りを発生させないで、最小限の塗布液によって塗布液を均一に塗布する装置に関し、特に、冷凍ショーケース等の防曇用、防霜用等に用いられる膜を均一に成膜するのに有用な塗布液の塗布装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板や樹脂パネル等の板状体に塗布液等の塗布液を塗布する場合、刷毛により塗布液を塗布する方法、ノズルによってスプレー塗布する方法、またスリット形のノズルによってシャワー塗布するカーテンフローコート法や、板状体を回転させて塗布液を塗り広げるスピンコート法、あるいは回転ゴムロールに付着した塗布液を板状体に転写させて塗布する方法等のさまざまな方法や装置が知られている。
【0003】
ノズルによってスプレー塗布する方法として、例えば特開2007−175663号公報には、基材の被膜形成面に被膜を形成する被膜形成方法において、前記基材の被膜形成面が鉛直面に対して所定の角度となるように前記基材を保持する保持ステップと、前記被膜形成面に複数のノズルから塗布液を射出する射出ステップと、前記塗布液を射出しながら前記複数のノズルを前記被膜形成面に対して相対移動させるべく前記複数のノズル及び前記基材の少なくとも1つを移動させる移動ステップとを備えることを特徴とする被膜形成方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
あるいはまた、スリット形のノズルによってシャワー塗布する方法としては、例えば特開2006−175421号公報に、一対の平行なレール間の中央に基板載置ステージが配置され、平面視において前記レールと直交する基板載置ステージの幅方向中心線を基準として、左右対象に第1及び第2の門型移動機構が前記レール間に独立して走行可能に架け渡され、これら第1及び第2の門型移動機構にスリットノズルが昇降可能に保持されていることを特徴とする塗布装置が開示されている(特許文献2)。
【0005】
あるいはまた、板状体を回転させて塗布液を塗り広げるスピンコート法としては、例えば特開平09−164364号公報に、被処理物W表面の中央に被膜形成用の塗布液を滴下し、被処理物W表面に塗布液を均一に拡げる。この時、被処理物Wの外端部下面には被膜形成用の塗布液の一部が廻り込んでいるがそのまま減圧乾燥装置3に搬送してある程度まで乾燥せしめる。次いで搬送装置6によって被処理物を洗浄用スピンナー4のチャック42上に移載し、チャック42で吸着した状態で被処理物Wを高速回転せしめるとともに下面にノズル43から洗浄液を噴出し、下面に廻り込んで、ある程度固まった塗布液を洗い落とすことを特徴とする被膜形成方法が開示されている(特許文献3)。
【0006】
あるいはまた、ノズルから吐出する塗工液を基板等に塗布するノズルコート法としては、例えば特開平09−092134号公報には、被塗工物の平面状の塗布面に対して離間した状態で、ノズル先端から塗工液を吐出しつつ、前記塗布面に対してこれと平行に、該ノズルを相対的に移動させて、塗布 面に塗工液をライン状に塗布し、次の塗布ラインの幅方向の一部が先の塗布ラインに幅方向に重なるように順次繰り返して塗布することにより塗工面を形成することを特徴とするノズル塗布方法が開示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2007−175663号公報
【特許文献2】特開2006−175421号公報
【特許文献3】特開平09−164364号公報
【特許文献4】特開平09−092134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1で示される発明は、ノズルによってスプレー塗布する方法であって、ガラス板の被膜形成面の上端辺を吊下げ状態に支持し、ガラス板の片側縦辺より対向する縦辺に向けて複数本のノズルを移動させ、塗布液を塗布するものであるため、塗布液はガラス板面に沿ってその下方に向けて垂れ下がり状態で塗布されるため、下方側のノズルによって塗布された塗布面上に、さらに上方側のノズルによって塗布された塗布液が塗り重ねられて膜厚を一定とすることができないという問題点があった。
【0008】
また、前記特許文献2で示されるものは、水平姿勢で搬送されるガラス基板の上方より、長尺状のスリット部を有するスリットノズル部より塗布液をシャワー塗布する方法であるため、搬送されるガラス基板のエッジ部分より下面側に塗布液が回り込み易く、あるいは、塗布液によっては空気中の水分を吸収しやすいものもあり、このような水分の吸収が品質上問題となるような塗布液を扱う場合においては、ガラス板面から落下した塗布液を回収して循環させる間に、空気中の水分を吸収し、塗布液の性能低下を招いたり、空気中のリント等も付着し易いという問題点があった。
【0009】
さらに、前記特許文献3で示された発明においては、板状体を回転させて塗布液を塗り広げるスピンコート法であるために、ガラス基板上に塗布する塗布液の数量以上の塗布液を供給し、余った塗布液を遠心力で落下させるものであるため、塗布液を回収し循環させることになると、水分の吸収が品質上問題となるような塗布液を扱う場合においては、前記特許文献2で示された発明と同様に、循環して使用時に空気中の水分を吸収して、塗布液の性能低下を招いてしまうという問題点が発生し、さらに、ガラス基板が矩形状である場合には、エッジ部分より下面側に塗布液の裏周りが発生し易くなるという問題点があった。
【0010】
さらに、前記特許文献4で示される発明においては、ノズルをX方向(ガラス板の搬送方向と直交する方向)に駆動して塗布ラインを形成し、次にY方向(ガラス板の搬送方向)に塗布ラインの幅よりも小さいピッチPだけ移動して次の塗布ラインを形成し、順次隣接する幅方向に一部重なるようにしてガラス基板の全面に強制的に順次塗布して塗工面を形成するものであるため、ガラス板の面積が大きくなると全面塗布に時間がかかり、また、コントロールが煩雑となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち簡易な構成にして矩形状のフラットなガラス板や樹脂パネル等の板状体の上面に、空気中の水分を吸収しやすい塗布液を循環使用させずに100%の塗布効率で、必要最小限の塗布量で塗布液を塗布して、ガラス板の裏面側に塗布液の裏回りも発生させず、均質な膜を塗布することを目的とする。
【0012】
すなわち、本発明は、搬送ロール上を水平姿勢で一定速度で搬送される矩形状のガラス板の上面に塗布液を塗布する装置において、
ガラス板の搬送方向と直交する幅方向に一定ピッチで塗布液供給用の複数のノズルを並設し、該各ノズル夫々に塗布液タンクより塗布液の供給停止を自在とする電磁弁を介して夫々チューブでノズルと接続し、前記ノズルの各先端部には塗布液を吐出する針状のニードル部をガラス板面に対して垂直方向に配設し、該ニードル部からの塗布液の吐出によってガラス板の先端から後端間の上面に形成される塗布直後の帯状塗布面の幅をaとすると、該帯状塗布面同士が略a/4〜a/30となる間隔で平行となるように塗布後、ガラス板の搬送状態でレベリングさせ、各帯状塗布面の面積を互いに隙間の無くなるまで広げて、ガラス面上の膜厚を均一にするレベリング手段と、からなることを特徴とする塗布液の塗布装置である。
【0013】
あるいは、本発明は、前記塗布液タンクからノズルのニードル部までを外気の水分から遮断し密閉系構造とし、一旦ニードルから吐出された塗布液を循環使用しない構造としたことを特徴とする上述の塗布液の塗布装置である。
【0014】
あるいはまた、本発明は、前記針状のニードル部の穴内径を0.5〜3.0mm、長さを5〜30mm、ニードル部の下端からガラス板の上面までの距離を5〜150mmとし、並設する各ニードル部間の間隔を5〜100mmとしたことを特徴とする上述の塗布液の塗布装置である。
【0015】
あるいはまた、本発明は、前記複数のニードル部をガラス板の幅方向にジグザグ状または千鳥足状に配置したことを特徴とする上述の塗布液の塗布装置である。
【0016】
あるいはまた、本発明は、前記各ノズルは幅方向に設けたレール上で幅方向の位置を調整可能とする位置調整手段を有したことを特徴とする上述の塗布液の塗布装置である。
【0017】
あるいはまた、本発明は、ガラス板の搬送方向の先端位置を位置検出手段によって検出し、ニードル部からの吐出により塗布された塗布直後の隣合う帯状塗布面間の間隔の略1/2の長さだけ、ガラス板の先端より内側位置より電磁弁を開として塗布開始し、後端より前記間隔と略同一長さだけ手前位置で電磁弁を閉として塗布を停止とするコントローラによって塗布液を塗布させることを特徴とする上述のいずれかに記載の塗布液の塗布装置である。
【0018】
あるいはまた、本発明は、前記レベリング手段として、搬送ロール上のガラス板に強制的に微振動を与える微振動付与手段を取り付け、該微振動付与手段として、機械的振動手段または超音波振動手段によって、帯状塗布面の面積の広がりを促進させるようにしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の塗布液の塗布装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、矩形状でフラットなガラス板や樹脂パネル等の板状体の上部面に、塗布液を、ガラス板の幅方向に一定ピッチで離隔した複数本のノズルによって等間隔で平行線状の帯状の塗布帯を設けるという簡易な構成によって塗布した複数本の帯状の塗布帯の塗布幅を、レベリングによって隣合う帯状の塗布帯間の隙間がなくなるまで広げて平坦化させることによって、ガラス面全体に塗布液を塗布ムラもなく均一に塗布することができる。
【0020】
また、ガラス板面上に一定ピッチで離隔した複数本のノズルによって等間隔な平行線条の帯状の塗布帯を設けるため、ディップコート法やカーテンフローコート法に比べて多量の塗布液を必要とせず、塗布液のロスもなく、塗着効率がほぼ100%と非常に高い。
【0021】
さらにまた、前記塗布液タンクからノズルのニードル部までを外気中の水分から遮断し密閉系構造とし、塗布した液をほぼ100%塗着できるために、カーテンフローコート法やスピンコート法のように塗布液を回収循環使用させる必要もなく、回収循環させた場合のように空気中の水分を塗布液が吸収することによる塗布液の変質もなく、塗布液を供給タンクからノズルまでの密封系の環境とすることができ、塗布液の品質を常時保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に示すように、塗布手段10は、ガラス板Gの搬送方向と直交する幅方向に一定ピッチで塗布液供給用の複数のノズル11が並設され、該各ノズル11、11、・・夫々に塗布液タンク15より塗布液の供給停止を自在とする電磁弁13を介して夫々チューブ14でノズル11、11、・・に接続されている。
【0023】
前記各ノズル11、11、・・の先端部には塗布液を吐出する針状のニードル部12が水平姿勢のガラス板G面に対して垂直方向に配設され、該ニードル部12からの塗布液の吐出によってガラス板Gの先端から後端間の上面に形成される帯状塗布面2、2、・・の各幅をaとすると、該帯状塗布面2、2、・・同士が略a/4〜a/30となる間隔で平行となるように塗布される。この時、ガラス板Gは水平に精度よく配設し、ニードル部12はガラス板G面に垂直となる方向に設ける。
【0024】
図2に示したように、前記塗布手段10によってガラス板Gの上面上に、複数本の帯状塗布面2が平行に形成されると、前記レベリング手段によって、ガラス板Gの搬送中にガラス板G面上の各帯状塗布面2、2、・・の塗布液をレベリングさせて塗布面積を広げて、各帯状塗布面2、2、・・の面積を互いに隙間が無くなるまで引き伸ばして、ガラス板G面上の塗布液の膜厚が均一となるようにする。
【0025】
加圧タンク16内にいれた前記塗布液タンク15からノズル11のニードル部12までを極力外気の水分から遮断した密閉系構造とし、一旦ニードル部12から吐出された塗布液については、循環使用しない構造とした。さらに、加圧タンク16に接続した配管17を通して加圧タンク16内に送り込むエアーとしては、乾燥したクリーンな空気とした。
【0026】
前記ノズル11については、ステンレス製(SUS304)とし、針状のニードル部12の穴内径を0.5〜3.0mm、ニードル部12の長さを5〜30mm、ニードル部12の下端からガラス板Gの上面までの距離を5〜150mmとして、並設する各ニードル部12、12、・・間の間隔を5〜100mmとするのが好ましい。
【0027】
前記針状のニードル部12の穴内径を0.5〜3.0mmの範囲とするのが良いとしたのは、ガラス板Gの面上に塗布する塗布量、および帯状塗布面の幅をコントロールし易くなるためであり、余り細くすると目詰まりの恐れや塗布圧力の上昇による塗布液の飛散の恐れがあり、余り太くすると吐出量のコントロールが困難となったり、塗布液の粘度によっては、給液停止時の液止まりが悪くなり、ニードル部内の塗布液の残量が意図しない位置で落下する恐れがあるためである。
【0028】
また、ニードル部12の長さを5〜30mmの範囲とするのが好ましいとしたのは、5mm未満と短くすると、ニードル部を垂直方向に設定するのが困難である。このため、長さをやや長くするのが好都合であるが、30mmを0超えて長くしすぎるとニードル部が折れ曲がったり、ニードル部の周辺装置を大型化とする必要があるため、取扱いが困難となる恐れがあるためである。
【0029】
ニードル部12の下端からガラス板Gの上面までの距離を5〜150mmとしたのは、5mm未満だとガラス板の板厚を変更時に、ニードル部がガラス板に接触したりする恐れがあり、このためニードル部の高さを調整しなければならず、一方、150mm超だと、ガラス板に塗布液を塗布した際に塗布液が飛び散る原因となり易いためである。
【0030】
並設する各ニードル部12、12、・・間の間隔を5〜100mmとするのが好ましいとしたのは、取り扱う塗布液の粘度や塗布液をガラス板に給液した後、塗布液が蒸発する速度を勘案したためであり、さらに各ニードル部から吐出され形成される塗布直後の帯状塗布面の幅をa(5〜100mm)としたときに、隣合う帯状塗布面間の何も塗布されていない部分は塗布面をレベリングすることによって狭まり、帯状塗布面は面全体に塗れ広がって、ガラス板Gの面全体を均一の厚みとすることができるためである。
【0031】
尚、ガラス板は水平に配設することが重要であり、水平にすることで、均一な膜を形成することができる。また、各ニードル部も、ガラス面に垂直方向となるように設ける必要がある。これは、該ニードル部が傾いているとガラス板面上に塗布液を均一に塗布することが難しくなり、結果として液切れや膜ムラ発生の恐れがあるためである。
【0032】
図1、図2に示すように、複数のニードル部を一列に配置したが、図3に示したように、幅方向に設けたレールを2本設け、該2本のレールに複数のニードル部をガラス板の幅方向にジグザグ状または千鳥足状に交互となるように配置しても良い。
【0033】
帯状塗布液の間隔を電磁弁の幅よりも狭い間隔とした場合、図1、図2に示すように、電磁弁を1本のレール上に一列に並べることができないため、電磁弁を図3のようにガラス板の幅方向にジグザグ状または千鳥足状に配置すれば、電磁弁に取り付けられるノズルのニードル部間の幅方向の間隔を狭めることができる。
【0034】
前記各ノズル11、11、・・は、幅方向に設けたレール上にスライド移動自在なガイド(図示しない)を設け、該ガイドに電磁弁を取付固定してノズル11、11、・・を幅方向にスライド移動調整自在とした位置調整手段を有している。また各ノズル11、11、・・は、ガイド上に取り付けた取付部材に設けた上下方向の長穴によって、高さ方向の位置調整が可能とした。
【0035】
また、並設した複数のノズルの上流位置近傍に設けたガラス板Gの搬送方向の先端位置を検出可能なセンサー41等からなる位置検出手段40によって検出し、ニードル部12、12、・・からの塗布液の吐出によって塗布された塗布直後の隣合う帯状塗布面間の間隔の略1/2の長さだけ、ガラス板の先端より内側位置より電磁弁を開として塗布開始し、後端より前記間隔と略同一長さだけ手前位置で電磁弁を閉として塗布停止するようにした図示しないコントローラによって塗布液をガラス板面上に塗布させる。
【0036】
尚、塗布装置1の前記コントローラ(図示しない)は、前記センサー41によってガラス板Gの先端を検出後、予めガラス板Gの寸法毎にコントローラに設定記憶させたタイマーまたは搬送移動距離によって各電磁弁を開とするタイミングと、各電磁弁13、13、・・を閉とするタイミングをコントロールする。さらに、複数個所に並設した電磁弁13、13、・・のうち開閉を行う電磁弁13、13、・・を、ガラス板Gの幅毎に予め設定記憶させておく。
【0037】
搬送ロール51の搬送速度が一定の場合は、タイマーのコントロール等で対応可能であるが、搬送速度がキャンペーンによって若干異なる場合もあり得るため、ガラス板Gの搬送距離を図示しないロータリーエンコーダ等によって発生するパルスのカウントにより前端位置、後端位置を精度良く決定する。
【0038】
前記ガラス板Gの先端部の検出センサー41をノズル11、11、・・の位置の上流側に配置し、該センサー41がガラス板Gの後端を検出後、後端エッジよりa/4だけ手前(ガラス板の内側方向)位置で電磁弁13、13、・・を閉とすることもできる。
【0039】
図4〜図6に示したように、前記レベリング手段20としては、塗布以降の搬送ロール51の速度を低下させて、搬送中に搬送ロール51上のガラス板Gの上面に塗布された帯状塗布液面2が自重で徐々に広がって隣り合う帯状塗布液面2、2、・・同士が搬送ロール51の微振動で互いにピッタリ接合状態となり、ガラス板G面の前端側後端側の余白部にも塗布面が広がって、ガラス板G面全体に均一な厚みで塗布液面が形成するようにしても良い。
【0040】
前記レベリング手段20の別の実施の形態としては、搬送ロール51上で複数本の帯状塗布面2、2、・・が形成されたガラス板Gに、強制的に微振動を与える微振動装置(図示しない)を取り付け、例えば、超音波によって微振動を与えて帯状塗布面の塗布面積の広がりを促進させたり、搬送ロール自体に微振動装置を取り付けて、帯状塗布面の面積の広がりを促進させるようにしても良い。
【0041】
以上好適な実施例について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0042】
ガラス板Gは、フラットな板とするが、強化ガラス板、半強化ガラス板、未強化のフロート(通称、生板ともいう)等の単板、あるいは複数枚の強化ガラス相互、あるいは強化ガラスと生板ガラスを組み合わせてPVBやEVA等の中間膜または樹脂注入で接着した合わせガラス等でも良く、さらに、ガラス板Gに限らず樹脂板等の各種のパネル材にも応用できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係わる塗布液の塗布装置1を図面に基づき詳細に説明する。
[実施例1]
図1、図2に示すように、前工程で位置決めされたガラス板Gの幅に合わせて、ガラス板Gの幅方向に設けたレール31上に設けたスライド移動自在なガイド32に取り付けた取付部材(図示しない)によって、ノズル11、11、・・の取付位置を調整し、さらに複数の塗布ノズル11、11、・・のうち、どのノズル11、11、・・を使用するかをガラス板G毎に設定登録しておく。
【0044】
さらにまた、ガラス板Gの厚み等によってノズル11の高さ調整が必要となった場合には、ガイド32上に取り付けた取付部材(図示しない)の長穴によって、上下方向に高さ方向の位置調整を可能である。
【0045】
図1、図2に示したように、図示しない前工程のガラス板の位置決め装置にて位置決めされたガラス板Gに塗布液2を成膜するために、搬送手段50の搬送ロール51によってガラス板Gが搬送される。ガラス板Gがノズル11、11、・・近傍まで近づくと、ガラス板検出センサー41が作動する。
【0046】
ガラス板検出センサー41がガラス板の先端を検出して所定時間後、ガラス板Gがノズルの真下を通過し、ガラス板の先端より数mm上流側の位置に到達した時点より設定された箇所の複数個の電磁弁13の夫々が開いて、各ノズル11のニードル部12から塗布液が滴下開始される。
【0047】
ノズルによって吐出される塗布直後の帯状塗布面の幅aを24mm、ノズルが28mmの一定ピッチで並設される設定において、隣合う帯状塗布面同士の間隔は4mmとなるので、ガラス板の先端より前記間隔の1/2の長さに相当する2mmだけ上流位置(ガラス板の内側)で予め設定されている複数箇所の電磁弁のそれぞれを開として、各ノズルのニードル部から塗布液が滴下開始され、図5、図6に示すように、平行線状の帯状塗布帯2が形成される。
【0048】
次に、図2に示すように、ガラス板の幅方向に複数個のノズルが28mmの一定ピッチで並設され、各ノズルのニードル部から吐出された帯状塗布面の塗布直後の幅aは24mmであり、ガラス板がさらに搬送されて、後端部に接近すると、ガラス板の後端部から前記間隔の1/2の長さに相当する2mmだけ手前位置で各ノズル毎の電磁弁が閉となりニードル部からの塗布液の滴下が停止する。
【0049】
ガラス板Gの後端がノズル11の吐出位置の真下を通り過ぎた後は、レベリングゾーンに搬送される。レベリングゾーンではガラス板の搬送速度を落とし、24℃の環境下で2分程度経過させると、図6のようにガラス板全面に膜が広がり防曇膜が形成される。
【0050】
尚、ガラス板は水平を保つように配設し、各ニードル部も、ガラス面に垂直方向となるように設けた。
【0051】
各ノズルのニードル部の材質はステンレス製(SUS304)であり、その内径は1.4mm、吐出圧力は0.05MPaであり、フロー量は2.2g/sec、ガラス板の搬送速度は0.4m/secとした。
【0052】
このように、ガラス板Gの全上面に塗布液を散布するのではなく、間隔を設けた幾本かの平行な帯状塗布帯でガラス板Gの先端の内側から後端の内側まで散布するようにしたので、塗布液がガラス板Gのエッジ端面や下面に裏回りすることはなく、吐出した塗布液を100%使用できて、ガラス板面からあふれ落ちた塗布液を回収して再利用する必要もないので、塗布液を回収利用した時のような塗布液の空気中の水分の吸収の可能性もなくなり、水分の吸収による防曇膜の性能低下を引き起こすこともなく、均一な膜を形成することができた。
【0053】
[実施例2]
図3に示したように、塗布ノズルを支持するレール31を2本設け、前記複数のノズル11を2本のレール31、31上に交互に配置して、ガラス板Gの幅方向にジグザグ状または千鳥足状に配置した。この場合、各ノズル11、11、・・の塗布開始のタイミングは、各ノズル毎にセンサー41位置までの距離を補正して、ガラス板の先端部の所定の塗布位置から塗布液を塗布できるようにした。
【0054】
このようなノズル設置とすることによって、電磁弁の幅よりも狭い間隔でノズル間の間隔を配置することが可能になった。
【0055】
[実施例3]
前記レベリング手段として、搬送ロール上のガラス板に強制的に微振動を与える微振動付与手段として、図示しない超音波装置によってガラス板面上の帯状塗布帯に対して超音波を帯状塗布液に照射した。この場合に、超音波の照射停止後、数秒間の静止時間を設けた。これによって、帯状塗布面の面積の広がりを促進させることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の塗布装置の正面図。
【図2】本発明の塗布装置の平面図。
【図3】本発明の塗布装置の別の実施の形態の平面図。
【図4】本発明の塗布装置を説明するガラス板の側面図。
【図5】本発明の塗布装置を説明するガラス板の正面図。
【図6】本発明の塗布装置を説明するガラス板の平面図。
【符号の説明】
【0057】
G ガラス板
1 塗布装置
2 帯状塗布面(塗布液)
10 塗布手段
11 ノズル
12 ニ−ドル部
13 電磁弁
14 チューブ
15 塗布液タンク
16 加圧タンク
20 レベリング手段
30 位置調整手段
31 レール
32 ガイド
40 位置検出手段
41 センサー
50 搬送手段
51 搬送ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロール上を水平姿勢で一定速度で搬送される矩形状のガラス板の上面に塗布液を塗布する装置において、
ガラス板の搬送方向と直交する幅方向に一定ピッチで塗布液供給用の複数のノズルを並設し、該各ノズル夫々に塗布液タンクより塗布液の供給停止を自在とする電磁弁を介して夫々チューブでノズルと接続し、前記ノズルの各先端部には塗布液を吐出する針状のニードル部をガラス板面に対して垂直方向に配設し、
該ニードル部からの塗布液の吐出によってガラス板の先端から後端間の上面に形成される塗布直後の帯状塗布面の幅をaとすると、該帯状塗布面同士が略a/4〜a/30となる間隔で平行となるように塗布後、ガラス板の搬送状態でレベリングさせ、各帯状塗布面の面積を互いに隙間の無くなるまで広げて、ガラス面上の膜厚を均一にするレベリング手段と、からなることを特徴とする塗布液の塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液タンクからノズルのニードル部までを外気の水分から遮断し密閉系構造とし、一旦ニードルから吐出された塗布液を循環使用しない構造としたことを特徴とする請求項1に記載の塗布液の塗布装置。
【請求項3】
前記針状のニードル部の穴内径を0.5〜3.0mm、長さを5〜30mm、ニードル部の下端からガラス板の上面までの距離を5〜150mmとし、並設する各ニードル部間の間隔を5〜100mmとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布液の塗布装置。
【請求項4】
前記複数のニードル部をガラス板の幅方向にジグザグ状または千鳥足状に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布液の塗布装置。
【請求項5】
前記各ノズルは幅方向に設けたレール上で幅方向の位置を調整可能とする位置調整手段を有したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布液の塗布装置。
【請求項6】
ガラス板の搬送方向の先端位置を位置検出手段によって検出し、ニードル部からの吐出により塗布された塗布直後の隣合う帯状塗布面間の間隔の略1/2の長さだけ、ガラス板の先端より内側位置より電磁弁を開として塗布開始し、後端より前記間隔と略同一長さだけ手前位置で電磁弁を閉として塗布を停止するコントローラによって塗布液を塗布させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布液の塗布装置。
【請求項7】
前記レベリング手段として、搬送ロール上のガラス板に強制的に微振動を与える微振動付与手段を取り付け、該微振動付与手段として、機械的振動手段または超音波振動手段によって、帯状塗布面の面積の広がりを促進させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の塗布液の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247994(P2009−247994A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99303(P2008−99303)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】