説明

塗布装置、レーザ加工装置および塗布制御装置

【課題】溶剤を被加工物に対して効率良く迅速に塗布することが可能な塗布装置を得ること。
【解決手段】塗布装置1において、外部装置によって被加工物の表面上で第1の加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割するとともに分割に用いた各加工ブロックの領域を示す加工ブロック情報を抽出する領域設定部12と、外部装置によって加工領域内で第2の加工が行われる加工位置を示す加工位置情報および加工ブロック情報に基づいて、加工領域を含む所定領域の分割に用いた各加工ブロックの中から加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出する塗布位置設定部13と、塗布対象ブロック抽出部が抽出した塗布対象のブロックに塗布剤を塗布する塗布部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布剤を被加工物の表面上に塗布する塗布装置、レーザ加工装置および塗布制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光(レーザビーム)を被加工物に照射して被加工物の加工を行うレーザ加工方法においては、効率良く精確な形状に被加工物を加工することが望まれる。例えば、レーザ光を照射して被加工物の加工を開始する際(ピアシング時)にピアシング穴の周辺にスパッタが発生し、その量が多い場合は被加工物の切断の妨げとなったり加工後の見栄えを悪くする原因となる。また、レーザ光の反射率が高い被加工物は、レーザ光の反射によってピアシングの確実性が妨げられ、安定した加工を困難にする原因となる。
【0003】
このため、レーザ加工前の被加工物に対して種々の溶剤を吹き付けてレーザ加工を行い、精確な形状に被加工物を加工するレーザ加工方法が提案されている。このようなレーザ加工においては、例えばピアシング穴の周辺に発生するスパッタを軽減させるための溶剤や、ピアシング部(高反射材)におけるレーザ光の反射や透過を軽減させるための溶剤(反射防止剤、吸収剤)が、被加工物に吹き付け又は塗布される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のレーザ加工方法では、例えばステンレスが被加工物である場合のレーザ加工において、スパッタ防止剤と称される精製水とグリコール類その他の成分で構成された水溶性の液体をレーザ光の照射部分に吹き付けて加工を行うことで被加工物へのスパッタの付着を防止している。
【0005】
また、特許文献2に記載のパルスレーザによるレーザ加工では、材料表面に界面活性剤を吹き付けることによって、レーザ加工によって生じる加工カスを簡単に除去する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−230413号公報
【特許文献2】特開平7−185875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記前者および後者の従来技術では、溶剤を被加工物に対して効率良く迅速に塗布することができないといった問題があった。すなわち、溶剤を被加工物表面の全面に塗布する場合、溶剤の消費量が多くなるといった問題があった。また、各ピアシングを行なう際に溶剤を塗布する動作を加えてピアシング毎に溶剤を塗布させる場合、ピアシング位置が密集した部分では塗布範囲に対して塗布処理が過剰になる。このため、ピアシング毎に溶剤を塗布させる場合、溶剤の消費量が多くなるとともに加工処理の時間が長くなるといった問題があった。また、加工ヘッド等に溶剤の塗布用ノズル等を備えさせ、ピアシング毎に溶剤を塗布させる場合であっても、塗布範囲に対して塗布処理が過剰になるため溶剤の消費量を低減させることは困難である。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、溶剤を被加工物に対して効率良く迅速に塗布することが可能な塗布装置、レーザ加工装置および塗布制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、塗布剤を被加工物の表面上の所定の塗布位置に塗布する塗布装置において、外部装置によって前記被加工物の表面上で第1の加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割するとともに分割に用いた前記各加工ブロックの領域を示す加工ブロック情報を抽出する分割領域抽出部と、前記外部装置によって前記加工領域内で第2の加工が行われる加工位置を示す加工位置情報および前記加工ブロック情報に基づいて、前記加工領域を含む所定領域の分割に用いた前記各加工ブロックの中から前記加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出する塗布対象ブロック抽出部と、前記塗布対象ブロック抽出部が抽出した塗布対象のブロックに前記塗布剤を塗布する塗布部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、各加工ブロックの中から外部装置によって第2の加工が行われる加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出し、塗布対象のブロックに塗布剤を塗布するので、塗布剤の消費量を低減できるとともに塗布剤の塗布回数を低減することができ、被加工物への塗布を効率良く迅速に行うことが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる塗布装置、レーザ加工装置および塗布制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる塗布装置の実施の形態1の構成を示す図である。塗布装置1は、レーザ加工装置などの外部装置が被加工物(ワーク)のレーザ加工を行う前に、被加工物のピアシング部に所定の溶剤(塗布剤)などを吹き付ける装置である。塗布装置1は、加工位置入力部11、領域設定部(分割領域抽出部)12、塗布位置設定部(塗布対象ブロック抽出部)13、塗布指令部14、塗布部15、制御部19を備えている。
【0013】
加工位置入力部11は、被加工物のレーザ加工位置(ピアシング部の位置を示す加工位置情報や切断などの加工領域を示す加工領域情報)を入力する入力手段である。加工位置入力部11へは、被加工物のピアシング部の座標値や、被加工物の加工領域(座標値)などが入力される。
【0014】
領域設定部12は、被加工物上の座表面を所定の領域(以下、分割ブロックという)毎に分割する。領域設定部12は、一度の塗布処理で溶剤塗布の可能な領域(以下、塗布エリアという)に応じた領域を分割ブロックの単位として、被加工物上の座表面を分割する。領域設定部12は、各分割ブロックに一度ずつ溶剤の塗布処理を行なった場合に、被加工物の全エリアに溶剤が塗布できるよう、塗布エリアの広さに応じた広さの分割ブロック(例えば正方形などの四角形)によって被加工物上の座表面を分割する。例えば、塗布エリア(吹き付けエリア)が塗布の中心位置から半径5cmである場合に、領域設定部12は7cm四方のブロックを分割ブロックに設定して被加工物上の座表面を分割する。なお、ここでの分割ブロックが特許請求の範囲に記載の加工ブロックに対応する。
【0015】
塗布位置設定部13は、領域設定部12が設定した分割ブロック毎に、何れの分割ブロックに塗布処理を行なうかを決定する。塗布位置設定部13は、領域設定部12が設定した分割ブロック毎に、分割ブロック内にレーザ加工位置(加工位置入力部11に入力されたピアシング部の座標値)が存在するか否かを判断し、この判断結果に基づいて塗布処理を行なう分割ブロックを決定する。
【0016】
塗布指令部14は、塗布位置算出部13が塗布処理を行なうと決定した塗布位置(分割ブロック)に対して、溶剤の塗布を行なうよう塗布部15に指示情報を送信する。塗布部15は、塗布指令部14からの指示情報に基づいて、所定の分割ブロック(後述する塗布対象ブロック)に溶剤の塗布を行なう。塗布部15は、例えば被加工物に溶剤を吹き付けることによって塗布処理(被加工物への溶剤の付着処理)を行なう。塗布部15が塗布する溶剤は、例えばピアシング穴の周辺に発生するスパッタを軽減させるための界面活性剤(溶液)、ピアシング穴の周辺に飛散するスパッタを材料表面に固着させないためのスパッタ付着防止剤(例えば水溶性のオイル)、ピアシング部のレーザ反射を低減させるための反射防止剤などの何れであってもよい。制御部19は、加工位置入力部11、領域設定部12、塗布位置設定部13、塗布指令部14、塗布部15を制御する。
【0017】
つぎに、実施の形態1にかかる塗布装置の動作手順を説明する。図2は、実施の形態1にかかる塗布装置の動作手順を示すフローチャートである。まず、塗布装置1の加工位置入力部11へ、被加工物に対するピアシング部の位置(座標値)と、被加工物の加工領域(座標値による範囲)をレーザ加工の加工位置として入力する。加工位置入力部11へ入力するレーザ加工位置は、ピアシング部の座標を含んでいる(ステップS110)。
【0018】
図3は、被加工物の加工形状の一例を示す図である。図3の被加工物10において、黒い丸で示した部分がピアシング部であり、直線または曲線で示した部分がレーザ加工による切断経路である。例えば、加工位置N1では、黒い丸で示した部分にピアシングが行なわれる。そして、ピアシング部P1から延びる直線(線分)上をレーザ加工(切断)した後、この線分と接続している円上をレーザ加工し、被加工物10に円状の穴を空ける。ここでのピアシング部が、塗布装置1による溶剤の塗布処理の対象となる。なお、ここでの被加工物10は、原版に対して加工処理(ピアシング、切断)が行なわれる部分(領域)を示している。また、ここでのレーザ加工によるピアシングおよびレーザ加工による切断が特許請求の範囲に記載の第1の加工に対応し、ここでのレーザ加工によるピアシングが特許請求の範囲に記載の第2の加工に対応する。
【0019】
塗布装置1の加工位置入力部11へ、被加工物10に対する加工位置(座標値)が入力されると、領域設定部12は、被加工物10上の座表面を所定の分割ブロック毎で区切る。このとき、領域設定部12は塗布エリアの広さに応じた分割ブロックによって被加工物10上の座表面を分割する(ステップS120)。領域設定部12は、被加工物10上の座標値によって各分割ブロックの領域を設定しておく。
【0020】
図4は、分割ブロックによる被加工物の区切りを説明するための図である。被加工物10は、塗布エリアの広さに応じた広さの分割ブロックによって分割される。例えば、分割ブロックを分割ブロックA1の広さに設定した場合、被加工物10をこの分割ブロックA1の広さによって分割(等分)する。このとき、被加工物10上のピアシング部は、考慮する必要はない。
【0021】
塗布装置1の塗布位置設定部13は、被加工物10上の各分割ブロックに対し、分割ブロックがピアシング部を含んでいるか否かを判断する。塗布位置設定部13は、領域設定部12が設定した各分割ブロックの座標範囲に、ピアシング部の座標が含まれているか否かに基づいて、各分割ブロックがピアシング部を含んでいるか否かを判断する。
【0022】
塗布位置設定部13は、ピアシング部を含む分割ブロックを、塗布対象のブロック(以下、塗布対象ブロックという)に設定し(塗布位置の設定)、ピアシング部を含まない分割ブロックを、塗布しないブロックに設定する(ステップS130)。
【0023】
図5は、塗布対象ブロックの配置の一例を示す図である。塗布位置設定部13は、ピアシング部(例えばピアシング部P1)を含む分割ブロックを塗布対象ブロックX1に設定し、ピアシング部を含まない分割ブロックを塗布しない分割ブロックY1に設定する。ここでは、塗布対象ブロックX1を黒い太枠で示すとともに、太枠の内部にバツ印をつけている。
【0024】
図6は、被加工物上の塗布位置を説明するための図である。同図に示すように、塗布部15が溶剤を塗布する位置は、塗布対象ブロックX1の各中心部である。これにより、塗布部15はピアシング部を含むブロックである塗布対象ブロックX1に対して溶剤を塗布することが可能となり、全てのピアシング部に少なくとも1回の溶剤を塗布することが可能になる。さらに、塗布部15はピアシング部を含まないブロック(塗布対象でない分割ブロック)に対して溶剤の塗布を回避することが可能となり、不要な溶剤の塗布を削減することが可能となる。
【0025】
ここで、この実施の形態1にかかる塗布装置1による塗布位置と、従来用いられていた塗布位置の差異を明確にするため、従来用いられていた塗布位置について説明する。従来用いられていた塗布位置の設定としては、ピアシング部毎に塗布位置を設定する方法と、全ての加工エリアを塗布対象にして塗布位置を設定する方法がある。
【0026】
図7は、ピアシング部毎に設定された塗布位置を示す図である。図7では、ピアシング部毎に塗布位置を設定するとともに、各ピアシング部の中心位置が溶剤を塗布する位置の中心となるよう塗布位置を設定している。ここでは、被加工物10内に61個のピアシング部が存在するため、塗布位置も61箇所となっている。
【0027】
一方、図5および図6で説明したように、実施の形態1にかかる塗布装置1による塗布位置は27箇所であり、ピアシング部毎に塗布位置を設定する場合の塗布位置(61箇所)よりも塗布回数が少ない。
【0028】
図8は、全ての加工エリアを塗布対象とした場合の塗布位置を示す図である。図8では、被加工物10の全てのエリアに溶剤が塗布されるよう被加工物10の全エリアを対象として塗布位置Z1を設定している。ここでは、被加工物10内に60箇所の塗布位置を設定することによって、被加工物10の全エリアを塗布対象にしている。
【0029】
一方、図5および図6で説明したように、実施の形態1にかかる塗布装置1による塗布位置は27箇所であり、被加工物10の全エリアを塗布対象に設定する場合の塗布位置(60箇所)よりも塗布回数が少ない。
【0030】
塗布位置設定部13は、塗布位置を設定した後、各塗布位置の座標と、塗布を開始する際の起点(塗布ノズルなどのスタート位置)の座標Sを抽出する。図9は、各塗布位置の座標と塗布を開始する際の起点の座標を示す図である。ここでの塗布位置設定部13は、塗布対象ブロック(塗布位置Z1)の各中心部の座標C1を、塗布を行なう際の塗布位置として抽出している。
【0031】
塗布位置設定部13は、抽出した各塗布位置の座標C1と、塗布を開始する際の起点の座標Sに基づいて、最短経路で塗布を行えるよう溶剤を塗布する順番(塗布する際の塗布ノズルの移動経路(塗布経路))を設定する。
【0032】
図10は、塗布経路の一例を示す図である。同図において、黒色の丸印などが塗布位置D1(塗布位置の中心座標)を示し、点線で示された線分が塗布位置から塗布位置への経路(塗布ノズルの移動経路)を示している。ここでの塗布位置設定部13は、塗布ノズルの移動経路が最短経路となるよう、塗布ノズルを起点のSからスタートさせて、塗布位置D1、塗布位置D2、塗布位置D3の順番で移動し、最後に塗布位置Dn(nは自然数)(ここでのnは27)に移動するよう塗布経路を設定する。
【0033】
塗布指令部14は、塗布位置設定部13が塗布処理を行なうと決定したそれぞれの塗布対象ブロックX1に対して、塗布位置設定部13が設定した最短経路で溶剤の塗布を行なうよう塗布部15に指示情報(塗布指令)を送信する(ステップS140)。
【0034】
塗布部15は、塗布指令部14からの指示情報に基づいて、各塗布対象ブロックX1(塗布位置)に最短経路で溶剤の塗布を行なう(塗布処理)。このとき、塗布部15は、塗布対象ブロックX1の各中心部(塗布位置D1〜Dn)に溶剤を塗布する(ステップS150)。
【0035】
なお、レーザ加工装置が塗布装置(塗布手段)を備える構成としてもよい。図11は実施の形態1にかかる塗布装置を備えたレーザ加工装置の構成を示す図である。なお、図10の各構成要素のうち図1に示す塗布装置1と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。レーザ加工装置3は、被加工物10にレーザ加工を行う装置であり、塗布装置1、レーザ照射部31、制御部39を備えている。
【0036】
レーザ照射部31は、被加工物10にレーザ光を照射して被加工物10をレーザ加工する。レーザ照射部31は、CO2レーザや半導体レーザなどによって被加工物10をレーザ加工する。
【0037】
制御部39は、塗布装置1、レーザ照射部31を制御する。ここでの制御部39は、レーザ加工を行う前に、被加工物10のピアシング部に対して溶剤を塗するよう塗布装置1にを制御する。また、制御部39は、塗布装置1による溶剤の塗布後に、被加工物10の加工位置に対してレーザを照射するようレーザ照射部31を制御する。
【0038】
この場合の塗布装置1も図1〜6,9および10で説明したように、被加工物10を所定の分割ブロックに分割し、分割ブロック毎に塗布を行うか否か(分割ブロックにピアシング部が含まれるか否か)を判断し、ピアシング部を含む分割ブロック(塗布対象ブロック)に溶剤を塗布する。
【0039】
なお、実施の形態1では、塗布対象ブロック毎に1つの塗布位置を設定することとしたが、塗布対象となった2つ以上の塗布対象ブロックをまとめて1つの塗布位置に設定してもよい。
【0040】
例えば、隣り合う2つの塗布対象ブロックにおいて、両方の塗布対象ブロックがそれぞれ1つずつのピアシング部を含んでいる場合、2つのピアシング部の距離を算出する。そして、2つのピアシング部の距離が塗布エリアの直径よりも短い場合、この2つのピアシング部の塗布処理を1度の塗布処理で行なう。この場合の塗布位置は、例えば2つのピアシング部の中間位置(座標)に設定する。なお、この場合において塗布対象ブロックは必ずしも隣り合う必要はなく、各塗布対象ブロックが離れていても2つのピアシング部が塗布エリアの直径よりも短い距離であれば2つのピアシング部を一度の塗布で処理することができる。
【0041】
また、3つ以上の塗布対象ブロックが連なって配置されている場合(かぎ型の配置、T字型の配置、十字型の配置など)において、それぞれの塗布対象ブロックが1つずつのピアシング部を含んでいる場合、各ピアシング部を頂点とした多角形を抽出する。そして、抽出した多角形を1つの塗布エリアでカバーできる場合、多角形を構成する3つ以上のピアシング部の塗布処理を1度の塗布処理で行なう。この場合の塗布位置は、例えば3つ以上のピアシング部の重心(座標)に設定する。なお、この場合において塗布対象ブロックは必ずしも連なって配置されている必要はない。すなわち、各塗布対象ブロックが離れていても各ピアシング部を頂点とした多角形を1つの塗布エリアでカバーできる場合、多角形を構成する3つ以上のピアシング部の塗布処理を1度の塗布で処理することができる。
【0042】
なお、実施の形態1においては、被加工物10のエリアを四角形の分割ブロック(塗布対象ブロック)で区切ることとしたが、三角形や六角形の分割ブロックによって被加工物10のエリアを区切ってもよい。
【0043】
また、実施の形態1では、ピアシングを行なう際に、塗布装置1が溶剤の塗布を行うこととしたが、被加工物10への焼きいれ処理に対して塗布装置1が溶剤の塗布(表面処理)を行ってもよい。
【0044】
なお、実施の形態1では、塗布装置1,2が塗布部15を備える構成としたが、塗布装置1,2と塗布部15を独立した構成としてもよい。この場合、塗布装置1,2の塗布指令部14が、塗布部15へ溶剤の塗布処理を制御するための制御情報を送信し、塗布部15が実際の塗布を行なう塗布装置として動作する。すなわち、この場合の塗布装置1,2は、塗布部15を制御する塗布制御装置として動作する。
【0045】
また、実施の形態1では、ピアシング部の位置を示す加工位置情報や切断などの加工領域を示す加工領域情報に基づいて、被加工物上の座表面を分割ブロックで分割する場合について説明したが、加工領域情報以外の情報を用いて被加工物10の加工領域を分割してもよい。
【0046】
例えば、加工テーブル上の被加工物10の位置を検出し、レーザ加工装置3の加工機座標に基づいて被加工物10をブロック毎に分割してもよい。この場合、加工機座標によって割り付けたブロック範囲の吹き付け位置と、加工軌跡によるピアシング位置から塗布位置を選択する。この場合の加工テーブル上の被加工物10の位置検出は、例えばスタイラピン等による接触式検知方法、静電式倣いによる静電容量の変化を利用した非接触式検知方法等による材料端面検知方法によって行なう。また、ピアシング部の位置を示す加工位置情報と、被加工物10全体の領域情報に基づいて、被加工物10全体の座表面を分割ブロックで分割してもよい。
【0047】
このように、実施の形態1によれば、レーザ加工において被加工物10の表面へ溶剤塗布を行う際に、適切な溶剤塗布の領域(測定対象ブロック)を選択しているので、溶剤の消費量を低減できるとともに溶剤の塗布処理の時間(回数)を短縮することが可能となる。したがって、ピアシング部への塗布を効率良く迅速に行うことができる。
【0048】
また、被加工物10を所定の分割ブロックに分割し、分割ブロックにピアシング部が含まれるか否かに基づいて分割ブロックに塗布を行うか否かを判断しているので、分割ブロックを塗布対象ブロックとするか否かの判断を容易に行なうことが可能となる。したがって、ピアシング部への塗布を迅速に行うことが可能となる。
【0049】
実施の形態2.
つぎに、図12および図13を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、塗布装置2が、実施の形態1で説明した塗布装置1と同様の塗布動作をおこなうためのプログラム(特許請求の範囲に記載の塗布制御プログラム)を予め記憶しておき、このプログラムに基づいて溶剤の塗布処理を行なう。
【0050】
図12は実施の形態2に係る塗布装置の構成を示す図である。図12の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1の塗布装置1と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。塗布装置2は、プログラム記憶部21、塗布指令部24、塗布部15、制御部29を備えている。
【0051】
プログラム記憶部21は、被加工物のピアシング部に所定の溶剤などを吹き付けるための加工制御プログラム(塗布装置2が実施の形態1で説明した塗布装置1と同様の塗布動作をおこなうためのプログラム)を記憶する。この加工制御プログラムには、実施の形態1で説明した塗布位置設定部13が設定する塗布位置(座標)、塗布経路などを含んでおり、塗布指令部24はこの加工制御プログラムに基づいて、塗布部15へ塗布指令(指示情報)を送信する。
【0052】
加工制御プログラムは、被加工物10のレーザ加工位置(ピアシングの座標位置、加工領域)、被加工物10の分割ブロック(座標)、塗布エリア(領域)を用いて作成されたプログラムである。具体的には、被加工物10の加工エリアを塗布エリアの広さに応じて所定の分割ブロックで分割し、この分割ブロック内にピアシング部が含まれていればこの分割ブロックを塗布対象ブロックに設定する。そして設定した塗布対象ブロック(座標)と塗布ノズルの起点(座標)に基づいて、塗布経路を設定する。制御部29は、プログラム記憶部21、塗布指令部24、塗布部15を制御する。
【0053】
つぎに、実施の形態2にかかる塗布装置2の動作手順を説明する。図13は、実施の形態2にかかる塗布装置の動作手順を示すフローチャートである。塗布指令部24は、プログラム記憶部21から加工制御プログラムを読み出し(ステップS210)、加工制御プログラムに基づいて、所定の位置で溶剤の塗布を行なうよう塗布部15に指示情報を送信する。具体的には、塗布指令部24は加工制御プログラムに基づいた塗布経路で、塗布ノズルを移動させ、所定の加工位置(塗布対象ブロック毎の中心位置)で被加工物10上に溶剤を塗布するよう、塗布部15に指示情報(塗布指令)を送信する(ステップS220)。塗布部15は、塗布指令部24からの指示情報に基づいて、塗布ノズルを移動させ、所定の加工位置で被加工物10上に溶剤を塗布する(ステップS230)。
【0054】
このように、実施の形態2によれば、塗布装置2が予め加工制御プログラム(塗布装置2が実施の形態1で説明した塗布装置1と同様の塗布動作をおこなうためのプログラム)を記憶しているので、簡易な構成で溶剤の消費量を低減して塗布処理を実行できるとともに、溶剤の塗布処理の時間を短縮することが可能となる。したがって、簡易な構成でピアシング部への塗布を効率的かつ迅速に行うことができる。
【0055】
また、被加工物10を所定の分割ブロックに分割し、分割ブロックにピアシング部が含まれるか否かに基づいて分割ブロックに塗布を行うか否かを判断して加工制御プログラムを作成しているので、簡易な構成の加工制御プログラムを容易に作成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかる塗布装置、レーザ加工装置および塗布制御装置は、被加工物への塗布剤の塗布に適している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明にかかる塗布装置の実施の形態1の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかる塗布装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】被加工物の加工形状の一例を示す図である。
【図4】分割ブロックによる被加工物の区切りを説明するための図である。
【図5】塗布対象ブロックの配置の一例を示す図である。
【図6】被加工物上の塗布位置を説明するための図である。
【図7】ピアシング部毎に設定された塗布位置を示す図である。
【図8】全ての加工エリアを塗布対象とした場合の塗布位置を示す図である。
【図9】各塗布位置の座標と塗布を開始する際の起点の座標を示す図である。
【図10】塗布経路の一例を示す図である。
【図11】実施の形態1にかかる塗布装置を備えたレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図12】実施の形態2に係る塗布装置の構成を示す図である。
【図13】実施の形態2にかかる塗布装置の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1,2 塗布装置
3 レーザ加工装置
10 被加工物
11 加工位置入力部
12 領域設定部
13 塗布位置設定部
14,24 塗布指令部
15 塗布部
19,29,39 制御部
21 プログラム記憶部
31 レーザ照射部
A1 分割ブロック
D1〜Dn,Z1 塗布位置
N1 加工位置
P1 ピアシング部
X1 塗布対象ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤を被加工物の表面上の所定の塗布位置に塗布する塗布装置において、
外部装置によって前記被加工物の表面上で第1の加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割するとともに分割に用いた前記各加工ブロックの領域を示す加工ブロック情報を抽出する分割領域抽出部と、
前記外部装置によって前記加工領域内で第2の加工が行われる加工位置を示す加工位置情報および前記加工ブロック情報に基づいて、前記加工領域を含む所定領域の分割に用いた前記各加工ブロックの中から前記加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出する塗布対象ブロック抽出部と、
前記塗布対象ブロック抽出部が抽出した塗布対象のブロックに前記塗布剤を塗布する塗布部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
塗布剤を被加工物の表面上の所定の塗布位置に塗布する塗布装置において、
前記塗布剤の塗布処理を制御する塗布制御プログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する塗布制御プログラムに基づいて、所定の塗布位置に前記塗布剤を塗布する塗布部と、
を備え、
前記塗布制御プログラムは、
外部装置によって前記被加工物の表面上で第1の加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割した際の当該各加工ブロックのうち、前記外部装置によって前記加工領域内で第2の加工が行われる加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとしたプログラムであり、
前記塗布部は、前記塗布対象のブロックに前記塗布剤を塗布することを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
前記第1の加工および前記第2の加工は、レーザ加工であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記第1の加工は、前記被加工物の切断および前記被加工物のピアシングであり、
前記第2の加工は、前記被加工物のピアシングであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記加工ブロックの所定領域は、前記塗布部が1回の塗布処理で塗布剤を塗布する領域の広さに応じた広さであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗布装置。
【請求項6】
被加工物にレーザ加工を行うとともに、塗布剤を前記被加工物の表面上の所定の塗布位置に塗布する塗布手段を有するレーザ加工装置において、
前記塗布手段は、
前記被加工物の表面上でレーザ加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割するとともに分割に用いた前記各加工ブロックの領域を示す加工ブロック情報を抽出する分割領域抽出部と、
前記加工領域内で所定の加工が行われる加工位置を示す加工位置情報および前記加工ブロック情報に基づいて、前記加工領域を含む所定領域の分割に用いた前記各加工ブロックの中から前記加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出する塗布対象ブロック抽出部と、
前記塗布対象ブロック抽出部が抽出した塗布対象のブロックに前記塗布剤を塗布する塗布部と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工位置情報は、前記加工領域内で前記被加工物のピアシングが行なわれる加工位置を示す情報であることを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
塗布剤を被加工物の表面上の所定の塗布位置に塗布する塗布装置の塗布処理を制御する塗布制御装置において、
外部装置によって前記被加工物の表面上で第1の加工が行われる加工領域を含む所定領域を所定の加工ブロックで分割するとともに分割に用いた前記各加工ブロックの領域を示す加工ブロック情報を抽出する分割領域抽出部と、
前記外部装置によって前記加工領域内で第2の加工が行われる加工位置を示す加工位置情報および前記加工ブロック情報に基づいて、前記加工領域を含む所定領域の分割に用いた前記各加工ブロックの中から前記加工位置を含む加工ブロックを塗布対象のブロックとして抽出する塗布対象ブロック抽出部と、
前記前記加工ブロック抽出部が抽出した塗布対象のブロックに前記塗布剤を塗布するよう前記塗布装置を制御する塗布指令部と、
を備えることを特徴とする塗布制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−283344(P2007−283344A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112487(P2006−112487)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】