説明

塗布装置、液体の充填方法及び有機層の製造方法

【課題】EL材料液等の液体を供給管に充填させる時間を短縮できるようにするとともに、供給管内に充填される液体に気泡が発生しないようにする。
【解決手段】塗布装置100が、液体タンク108と、液体を吐出するノズルヘッド106と、タンク108からノズルヘッド106にまで配管された供給管107と、タンク108内の液体120を供給管107に送り出す供給器116と、供給管107又はノズルヘッド106に設けられた切替部110と、切替部110に接続されたバキュームポンプ113と、を備える。切替部110が、供給管107をバキュームポンプ113に連通させた状態と、供給管107をバキュームポンプ113から遮断した状態とに選択的に切り替わるよう設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、液体の充填方法及び有機層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EL(Electro Luminescence)パネルに用いられるEL素子の製造プロセスでは、塗布装置のノズルから液体状のEL材料液を基板に向けて連続的に吐出しつつ、ノズルと基板を相対的に移動させて、基板上に所定の形状のキャリア輸送層を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
EL材料液はタンクに貯留されており、タンクからノズルを有するノズルヘッドにかけて供給管が配管されており、ポンプ等によってタンク内のEL材料液がノズルヘッドに供給される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗布装置を用いてEL材料液を塗布する前に、塗布装置を初期セッティングしなければならない。具体的には、当初は供給管内が空であるから、ポンプ等によってタンクからEL材料液を供給管に送り出し、供給管内及びノズルヘッド内にEL材料液を充填させる必要がある。
しかし、供給管内全体にEL材料液を充填させるのに時間を要していた。
また、供給管内にEL材料液を充填させる際に、充填された液体内に気泡が発生することがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、EL材料液等の液体を供給管に充填させる時間を短縮できるようにするとともに、供給管内に充填される液体に気泡が発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明によれば、塗布装置が、液体が貯留された液体貯留部と、前記液体を吐出するノズルを有する吐出部と、前記液体貯留部から前記吐出部にまで配管された供給管と、前記供給管又は前記吐出部に設けられた切替部と、前記切替部に接続され、前記供給管内を減圧するための減圧装置と、を備え、前記切替部が、前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態と、に選択的に切り替わるよう設けられていることとした。
【0007】
好ましくは、前記供給管のうち前記切替部の近傍に液体が充填されていると、前記切替部が前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態になることとした。
好ましくは、前記塗布装置が、前記液体貯留部内の前記液体を前記供給管に送り出す供給器を備え、前記切替部が前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態で、前記供給器及び前記減圧装置が作動することとした。
好ましくは、前記塗布装置が、前前記供給器、前記減圧装置及び前記切替部を制御する制御部を更に備え、前記制御部が、前記切替部を、前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態にするとともに、前記供給器及び前記減圧装置を作動させることとした。
好ましくは、前記塗布装置が、前記切替部の近傍において前記供給管内に液体が存することを検出する検出器を更に備え、前記制御部が、前記検出器によって液体を検出したら、前記切替部を、前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態に切り替えることとした。
好ましくは、前記切替部が、前記液体貯留部から前記吐出部にかけて複数設けられていることとした。
【0008】
本発明に係る液体の充填方法において、液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、前記液体貯留部から液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分で前記供給管内の減圧を行うこととした。
【0009】
本発明に係る液体の充填方法において、液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分の複数の箇所で前記供給管内の減圧を行い、前記液体貯留部から前記供給管に送り出された液体が前記供給管内を前記吐出部側へ充填されていくに従って、前記減圧をしている箇所の前記減圧の停止を前記液体貯留部寄りから順次行うこととした。
【0010】
本発明に係る有機層の製造方法において、有機材料を含む液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、供給器によって前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分で前記供給管内の減圧を行い、前記液体貯留部から前記減圧をしている部分まで前記液体を充填したら、前記減圧を停止し、前記吐出部内まで前記液体を充填したら前記供給器を停止せずに、前記吐出部を基板に対して相対的に前記基板上で移動させつつ、前記吐出部から連続的に吐出された前記液体を前記基板に塗布することとした。
【0011】
本発明に係る有機層の製造方法において、有機材料を含む液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、供給器によって前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分の複数の箇所で前記供給管内の減圧を行い、前記液体貯留部から前記供給管に送り出された液体が前記供給管内を前記吐出部側へ充填されていくに従って、前記減圧をしている箇所の真空引き又は減圧の停止を前記液体貯留部寄りから順次行い、前記吐出部内まで前記液体を充填したら、前記供給器を停止せずに、前記吐出部を基板に対して相対的に前記基板上で移動させつつ、前記吐出部から連続的に吐出された前記液体を前記基板に塗布することとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、短時間で供給管内に液体を充填することができるとともに、供給管内に充填される液体に気泡が発生することを抑えることができる。また液体の充填前に供給管内から水分を除去することが可能で、液体への水分の混入を防ぐことがでる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】塗布装置を概略的に示す図面である。
【図2】ノズルヘッドの縦断面図である。
【図3】供給管と排気管の接続部を概略的に示す断面図である。
【図4】供給管と排気管の接続部を概略的に示す断面図である。
【図5】供給管と排気管の接続部を概略的に示す断面図である。
【図6】供給管と排気管の接続部を概略的に示す断面図である。
【図7】供給管と排気管の接続部を概略的に示す断面図である。
【図8】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図9】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図10】ノズルヘッドにバキュームポンプを接続した状態を示す図面である。
【図11】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図12】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図13】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図14】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図15】制御部の処理の流れを示したフローチャートである。
【図16】変形例の塗布装置を概略的に示す図面である。
【図17】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図18】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図19】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図20】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図21】図20のXXI−XXI線に沿った面の矢視断面図である。
【図22】ELパネルのバンク間に露出する画素電極を示す断面図である。
【図23】ELパネルを表示部に用いた携帯電話機の正面図である。
【図24】ELパネルを表示部に用いたデジタルカメラの斜視図である。
【図25】ELパネルを表示部に用いたデジタルカメラの斜視図である。
【図26】ELパネルを表示部に用いたパーソナルコンピュータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
〔1〕塗布装置の構成
図1は、塗布装置100を示した図面である。この塗布装置100は、発光パネルである有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの有機層(例えば、正孔注入層、発光層、電子注入層等)、有機トランジスタの有機層、液晶ディスプレイのカラーフィルタの有機発色層(例えば、有機材料を含むRGBの発色層、有機材料を含むブラックマトリックスおよび隔壁材料等)、各種電子デバイスの有機導電層(例えば、有機材料を含む導電性配線)その他の有機層、あるいは溶液中に金属微粒子等の無機材料を分散、または溶解させた材料を含む機能層を形成するために用いられるものである。
【0016】
ワークテーブル101は、移動装置102上に搭載されており、移動装置102に対して水平面に沿って一直線状にスライド可能に設けられている。このワークテーブル101上には、基板121が載置される。ワークテーブル101の移動方向を副走査方向という。
【0017】
移動装置102は、ワークテーブル101及びそれに載置された基板121を一直線状に移動させるものである。例えば、移動装置102は、ワークテーブル101を案内するレールと、レールに沿ってワークテーブル101を駆動する駆動機構とを有する。この移動装置102は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102を間欠的に駆動し、移動装置102がワークテーブル101及び基板121を間欠的に移動させる。つまり、移動装置102は、制御部119の制御によって、ワークテーブル101及び基板121の移動及びその移動の停止を繰り返すように動作する。
【0018】
ワークテーブル101の上方には、案内部としてのレール103が設けられている。このレール103は、上から見て、ワークテーブル101の移動方向に対して直交するよう設けられている。レール103は、機枠104に取り付けられて、機枠104に支持されている。
【0019】
レール103には、ノズル移動機構としてのキャリッジ105が搭載されている。このキャリッジ105は、レール103に沿って案内される。キャリッジ105は、レール103に沿って移動可能に設けられている。以下、キャリッジ105の移動方向を主走査方向という。
また、キャリッジ105には、モータ等の駆動源が内蔵されており、キャリッジ105はその駆動源によってレール103に沿って移動する。キャリッジ105は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102の間欠的な停止に合わせてキャリッジ105を駆動し、キャリッジ105が移動装置102の停止中に主走査方向に移動する。
【0020】
キャリッジ105にはノズルヘッド(吐出部)106が搭載されている。このノズルヘッド106は、その先端が下に向くようにしてキャリッジ105に搭載されている。図2は、ノズルヘッド106の断面図である。図2に示すように、このノズルヘッド106においては、略円筒状のノズルヘッド本体部161の上端に設けられた注入口162に供給管107が接続されている。ノズルヘッド本体部161の下端に底面165が設けられ、底面165の中央に開口166が形成されている。中空163内の下部にノズルプレート167が配設され、開口166がノズルプレート167によって閉塞されている。ノズルプレート167の中央には、微小なノズル孔(ノズル)168が形成されている。ノズル孔168の径は、10〜20μmである。このノズル孔168から液体120が吐出される。ノズルヘッド本体部161の中空163内にフィルタ164が配設されている。ノズルヘッド本体部161の中空163が、フィルタ164によって注入口162側の領域とノズル孔168側の領域とに仕切られている。
【0021】
図1に示すように、供給管107がノズルヘッド106から液体タンク108にかけて配管されており、供給管107の一端がノズルヘッド106に接続され、供給管107の他端が液体タンク108に接続されている。供給管107としては、液体タンク108内に貯留された液体120に対して耐性のある材料からなるチューブを用いる。具体的には、供給管107は、シリコーン樹脂からなるチューブである。供給管107の内径は1〜7mmである。供給管107の内径は、液体タンク108からノズルヘッド106にかけて一様であってもよいし、不均一であってもよい。例えば、供給管107の内径は、液体タンク108寄りの部分で大きく、ノズルヘッド106寄りの部分で小さい。
【0022】
液体貯留部としての液体タンク108内には、液体120が貯留されている。液体120は、例えば、有機材料を含むものである。液体120は、塗布装置100の用途に応じて適宜選択される。
【0023】
液体タンク108には、供給器116が設けられている。この供給器116は、液体タンク108内の液体120を供給管107に送り出すものである。より好ましくは、供給器116は、送り出す液体120の圧力を一定に保った状態で液体120を供給管107に圧送するものである。供給器116はポンプであり、具体的には、ピストン式圧送ポンプ又はガス式圧送ポンプである。ピストン式圧送ポンプとは、シリンジ状の液体タンク108内に可動式ピストンが収容され、可動式ピストンがモータ、エアシリンダ又はソレノイド等の駆動源によって押し込まれることで、液体タンク108内の液体120を供給管107に押し出すものである。ガス式圧送ポンプとは、密閉された液体タンク108内にガス(主に不活性ガス(例えば、窒素ガス))を送り込んで液体タンク108内の液面を加圧して、液体タンク108内の液体120を供給管107に押し出すものである。勿論、ピストン式圧送ポンプ、ガス式圧送ポンプ以外の種類のポンプを供給器116に用いてもよい。
【0024】
この供給器116は、制御部119によって制御される。制御部119がキャリッジ105の移動に合わせて供給器116を駆動し、供給器116がキャリッジ105の移動中に供給動作をする。
【0025】
供給管107の中途部には、マスフローコントローラ109が設けられている。マスフローコントローラ109は、供給管107を流れる液体120の流量を計測したり、供給管107を流れる液体120の流量を制御したりする。マスフローコントローラ109によって計測された流量は、制御部119に出力される。
また、制御部119は、マスフローコントローラ109による流量を設定する(以下、設定された流量を設定流量という。)。マスフローコントローラ109が、供給管107を流れる液体120の流量をその設定流量に維持するよう定流量制御をする。
【0026】
また、排気管114の一端が、切替部としてのバルブ110を介して供給管107の中途部に接続されている。排気管114の他端が、捕捉器112のインレットに接続されている。捕捉器112のアウトレットが排気管115の一端に接続され、排気管115の他端がバキュームポンプ(減圧装置)113に接続されている。
【0027】
バルブ110は、排気管114と供給管107の接続部を開閉するものである。バルブ110が開いた状態では、排気管114が供給管107に連通した状態となり、供給管107が排気管114,115及び捕捉器112を介してバキュームポンプ113に連通した状態になる。バルブ110が閉じた状態では、供給管107がバキュームポンプ113及び排気管114から遮断された状態となる。バルブ110は、機械弁あってもよいし、手動弁であってもよい。
バルブ110が機械弁の場合、例えば、バルブ110が通常時に閉じたノーマリークローズ型の弁であり、排気管114内が負圧になると、バルブ110が開く。
【0028】
図3は、供給管107と排気管114の接続部の一例を示した図面である。図3に示すように、バルブ110が閉じた状態では、バルブ110の弁体110fが排気管114の端部の開口を閉塞している。弁体110fによって排気管114の端部開口が閉塞されている場合、供給管107内における弁体110fの表面110gが供給管107の内面107aと面一となっており、弁体110fの表面110gと供給管107の内面107aの間に段差が形成されていない。バルブ110が開く場合には、弁体110fが回転したり、スライドしたりすることによって、弁体110fが排気管114の端部開口を開放する。
【0029】
供給管107と排気管114の接続部を図4のようにしてもよい。供給管107の内面107aに錐面107bが形成されている。錐面107bは、供給管107の内側から見て、凹んだ状態に設けられた面である。錐面107bが供給管107の内面に対して傾斜している。錐面107bと供給管107の内面107aの成す外角が90°以上である。排気管114の端部開口が錐面107bの頭頂部側開口に接続されている。バルブ110が閉じた状態では、バルブ110の弁体110fが排気管114の端部の開口を閉塞している。弁体110fによって排気管114の端部開口が閉塞されている場合、供給管107内における弁体110fの表面110gが錐面107bと排気管114の境界部に揃っている。バルブ110が開く場合には、弁体110fが回転したり、スライドしたりすることによって、弁体110fが排気管114の端部開口を開放する。
【0030】
供給管107と排気管114の接続部を図5に示すようにしてもよい。図5に示す場合でも、図4に示す場合と同様に、供給管107の内面107aに錐面107bが形成されている。また、供給管107の内面であって排気管114の端部開口に対向する部分には、突起107cが設けられている。この突起107cが錐状に設けられており、突起107cの断面形状が三角形となっている。図6に示すように、突起107cが錘台状に設けられていて、その断面形状が台形となっていてもよい。また、図7に示すように、突起107cの錐面107dが錐面107bに対して平行に設けられていてもよい。
【0031】
図1に示すように、バキュームポンプ113は例えば真空ポンプ又は減圧ポンプであり、排気管115、捕捉器112、排気管114及びバルブ110を介して供給管107内の気体を吸引して、供給管107内の減圧を行うものである。
【0032】
捕捉器112は、例えば冷却トラップであり、バキュームポンプ113によって吸引される気体中に含まれる水等の不純物および液体120中に含まれる揮発成分を捕捉するものである。例えば、バキュームポンプ113による吸引によって、供給管107内の空気中に含まれる水分と、液体タンク108や供給管107内の液体120の揮発成分が気化した状態で捕捉器112に流れ込むと、その揮発成分は捕捉器112によって冷却される。そのため、その揮発成分が液化して、捕捉器112に捕捉される。これにより供給管107内の空気中に含まれる水分を除去することで、液体120への水分の混入を防ぐことができる。
【0033】
図1では、バルブ110が液体タンク108とマスフローコントローラ109の間に設けられている。
一方、図8に示すように、バルブ110がマスフローコントローラ109とノズルヘッド106の間に設けられていてもよい。また、バルブ110が供給管107に設けられる場合には、出来る限りノズルヘッド106寄りに設けられることが望ましい。
また、図9に示すように、バルブ110がノズルヘッド106に設けられていてもよい。
【0034】
なお、図1、図8、図9では、キャリッジ105に搭載されているノズルヘッド106の数が1つであったが、複数のノズルヘッド106がキャリッジ105に搭載されていてもよい。この場合、これらのノズルヘッド106は、副走査方向に沿って配列された状態でキャリッジ105に搭載されている。また、キャリッジ105に複数のノズルヘッド106が搭載されている場合、供給管107、液体タンク108、マスフローコントローラ109、バルブ110、捕捉器112、バキュームポンプ113及び排気管114,115は、それぞれのノズルヘッド106に対して設けられている。
【0035】
また、キャリッジ105が主走査方向に移動するものとしたが、主走査方向及び副走査方向に移動するものとしてもよい。また、ノズルヘッド106がその中心線を中心に回転するものとしてもよい。また、ワークテーブル101が移動装置102によって副走査方向に移動するものとしたが、移動装置102によって主走査方向及び副走査方向に移動するものとしてもよい。また、ワークテーブル101が移動装置102によってその中心回りに回転するものとしてもよい。つまり、移動装置102及びキャリッジ105の両方又は片方からなる移動部によって、ノズルヘッド106がワークテーブル101に対して相対的に移動させるものとすればよい。
【0036】
また、バルブ110が開閉バルブであったが、三方弁であってもよい。バルブ110が三方弁である場合、そのバルブ110は、液体タンク108の出口側をバキュームポンプ113側に連通させた状態と、液体タンク108の出口側をノズルヘッド106側に連通させた状態に選択的に切り替わるように構成されている。
【0037】
〔2〕塗布装置の動作及び塗布方法
以下、塗布装置100の動作及びこの塗布装置100を用いた塗布方法等について説明する。
【0038】
〔2−1〕塗布装置の初期動作、塗布装置のセッティング工程及び液体の充填工程
まず、液体タンク108内に液体120を充填する。液体タンク108が取り替え式の場合には、液体120が充填された液体タンク108を供給管107に組み付け、液体タンク108に供給器116を組み付ける。なお、この時点では、供給管107は空の状態であり、液体120が供給管107内に充填されていない。
【0039】
次に、キャリッジ105を所定の待機位置に移動させる。
ここで、図10に示すように、待機位置には密閉キャップ150が配設されている。キャリッジ105が待機位置に移動すると、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150で塞がれる。これにより、ノズルヘッド106のノズル孔168が冷却トラップ130を介してバキュームポンプ140に接続される。密閉キャップ150にはドレイン管151の端部が取り付けられている。密閉キャップ150でノズルヘッド106の下端を塞ぐことによって、ノズルヘッド106のノズル孔168がドレイン管151に通じる。そのドレイン管151の他端が冷却トラップ130に接続されている。冷却トラップ130とバキュームポンプ140がドレイン管152によって接続されている。冷却トラップ130は、外容器131、密閉容器132及び冷媒133を有する。密閉容器132が外容器131内に収容されている。冷媒133は、密閉容器132の外側であって、外容器131の内側に収容されている。ドレイン管151及びドレイン管152が密閉容器132の上面を貫通している。密閉容器132内において、ドレイン管152の端部がドレイン管151の端部よりも高い位置にある。
なお、図1、図8、図9に示された捕捉器112が冷却トラップである場合、その捕捉器112は図10に示された冷却トラップ130と同様に設けられている。
また、図1、図8、図9に示された捕捉器112を図10に示された冷却トラップ130と共用してもよい。また、図1、図8、図9に示されたバキュームポンプ113を図10に示されたバキュームポンプ140と共用してもよい。つまり、図10に示されたドレイン管151を冷却トラップ130に接続するのではなく、排気管114に接続してもよい。
【0040】
バキュームポンプ113及びバキュームポンプ140を作動させる。バキュームポンプ113が作動することで、排気管114及び排気管115内の減圧がバキュームポンプ113によって行われ、排気管114及び排気管115内が負圧になる。そのため、バルブ110がノーマリークローズ型の開閉弁である場合には、バルブ110が開く。そうすると、供給管107内の減圧がバキュームポンプ113によって行われる。
バルブ110が手動式の開閉弁である場合には、バルブ110を手動で開く。そうすると、供給管107内の減圧がバキュームポンプ113によって行われる。
バルブ110が三方弁である場合には、バルブ110を、液体タンク108の出口側をバキュームポンプ113側に連通させた状態にする。そうすると、供給管107内の減圧がバキュームポンプ113によって行われる。
【0041】
その後、供給器116が制御部119によって作動する。液体タンク108内の液体120が供給管107内に送り出される。これにより、液体120が液体タンク108側から次第に供給管107内に充填されていく。この際、供給管107内の減圧がバキュームポンプ113,140によって行われているので、液体120が速く充填されていく。また、供給管107内の減圧がされているから、供給管107内に充填された液体120に気泡が発生することを防止することができる。更に、供給管107内に充填された液体120内に発生した気泡をバキュームポンプ113側に吸引することができる。これにより、気泡の除去をすることができる。なお、液体120の一部がバキュームポンプ113による吸引によって排気管114側に流れてしまっても、その液体120が捕捉器112で捕捉されるから、バキュームポンプ113に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0042】
そして、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面がバルブ110にまで至ったことを目視で確認したら、バルブ110の操作をする。つまり、バルブ110が開閉弁である場合には、バルブ110を閉じる。一方、バルブ110が三方弁である場合には、バルブ110を、液体タンク108の出口側をノズルヘッド106側に連通させた状態にする。これにより、バルブ110を介した供給管107内の減圧が停止される。そのため、供給管107内に充填された液体120がバキュームポンプ113側へ流れることを防止することができる。
【0043】
その後も、供給器116の作動が継続し、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面がノズルヘッド106まで至ると、供給管107の全体に液体120が充填される。その後、液体120がノズルヘッド106の注入口162を通じてノズルヘッド本体部161の中空163内に供給され、更に、液体120がノズルヘッド本体部161の中空163内に充填されたら、制御部119によって供給器116が停止される。
そして、バキュームポンプ140を停止させるとともに密閉キャップ150をノズルヘッド106から外す。
なお、供給器116が制御部119によって停止されずに、後述する塗布工程に移行してもよい。
【0044】
以上に説明したように、バキュームポンプ113によって供給管107内の気体を吸引しつつ、液体タンク108内の液体120を供給器116によって供給管107に送り出しているから、供給管107やノズルヘッド106内に液体120を充填するのに要する時間を短縮化することができる。
また、供給管107内が減圧された状態又は真空となっているから、供給管107内に充填されていく液体120に気泡が発生することを防止することができる。
また、供給管107内に充填された液体120内に気泡が発生しても、その気泡はバキュームポンプ113側に吸引されるから、気泡の除去をすることができる。
【0045】
〔2−2〕塗布装置の塗布動作及び塗布工程
以上のようにセッティングされた塗布装置100の塗布動作及びその塗布動作に基づく有機層のパターニング方法について説明する。
まず、基板121をワークテーブル101の上に載置する。
次に、制御部119がキャリッジ105を動作させ、キャリッジ105が移動範囲の端に移動する。
次に、制御部119が、マスフローコントローラ109の設定流量を設定する。
次に、制御部119が、供給器116及びキャリッジ105を作動させる。なお、上記セッティング工程において、供給器116が停止されていなければ、供給器116が引き続き作動することになる。
キャリッジ105が作動すると、キャリッジ105が主走査方向に移動する。その際、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120がノズルヘッド106へと送り出され、供給管107を流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。そのため、キャリッジ105の移動中において、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、吐出された液体120が基板121上に線状に塗布され、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
ここで、供給管107内やノズルヘッド106内に液体120を充填する際において、液体120内に気泡が発生しないから、ノズル孔168から吐出される液体120が途切れることを防止することができる。特に、供給管107内やノズルヘッド106内に液体120を充填する工程において供給器116が停止されずに、この塗布工程に移行すれば、塗布工程において吐出される液体120の途切れを確実に防止することができる。
【0046】
キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、副走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。その後、移動装置102が停止する。
次に、制御部119が、キャリッジ105を作動させる。これにより、キャリッジ105が逆方向に移動する。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0047】
以後、制御部119が上記制御を繰り返す。そのため、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されながらキャリッジ105が移動範囲の端から端まで移動することが繰り返されるとともに、キャリッジ105が端に移動した際に移動装置102によってワークテーブル101及び基板121が所定距離だけ副走査方向に移動される。これにより、葛折り状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0048】
液体120が供給管107内を流れている際には、供給管107と排気管114の接続部が図3〜図7のように構成されているから、液体120の流れの乱れを抑えることができる(矢印参照)。そのため、液体120内にキャビテーションの発生を抑えることができる。よって、供給管107と排気管114の接続部において気泡が発生しにくい。そのため、ノズルヘッド106のノズル孔168から吐出される液体120が途切れることがない。そのため、液体120をノズル孔168から連続して吐出することができる。
【0049】
〔3〕塗布装置の変形例1
〔3−1〕構成
図11、図12及び図13は、図1に示された塗布装置100の一部構成を変更した変形例の図面である。
この塗布装置100Aにおいては、バルブ110が電磁駆動式のバルブである。バルブ110が電磁駆動式のバルブであるので、バルブ110がソレノイド、モータその他の駆動源を有する。その駆動源が図3、図4、図5、図6、図7に示された弁体110fを駆動し、それにより弁体110fが開閉動作する。バルブ110の動作が制御部119によって制御される。具体的には、制御部119はバルブ110の駆動源を制御する。
また、供給管107の中途部には、検出器111が設けられている。この検出器111は、バルブ110の近傍であってバルブ110よりも僅かに液体タンク108寄りに設けられている。この検出器111は、バルブ110の近傍において供給管107内に液体120が存するか否かを検出するものである。検出器111による検出結果は、制御部119に出力される。
また、バキュームポンプ113及びバキュームポンプ140の動作が制御部119によって制御される。
上述したことを除いて、塗布装置100Aは、図1に示された塗布装置100と同様に設けられている。
【0050】
図11では、バルブ110及び検出器111が液体タンク108とマスフローコントローラ109の間に設けられている。
一方、図12に示すように、バルブ110及び検出器111がマスフローコントローラ109とノズルヘッド106の間に設けられていてもよい。
また、図13に示すように、バルブ110及び検出器111がノズルヘッド106に設けられていてもよい。
【0051】
〔3−2〕塗布装置の初期動作、塗布装置のセッティング工程及び液体の充填工程
この塗布装置100Aの初期動作及び塗布装置100Aのセッティング工程について説明する。
まず、液体タンク108内に液体120を充填する。この時点では、供給管107は空の状態であり、液体120が供給管107内に充填されていない。
制御部119がキャリッジ105を制御し、キャリッジ105が所定の待機位置に移動する。そうすると、図10に示すように、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれ、ノズルヘッド106のノズル孔168が冷却トラップ130を介してバキュームポンプ140に接続される。
【0052】
その後、制御部119によってバキュームポンプ113,140及び供給器116が作動する。この際、バルブ110が開閉弁である場合、バルブ110が制御部119に制御されることによって、バルブ110が開く。一方、バルブ110が三方弁である場合、バルブ110が制御部119によって制御されることによって、バルブ110が液体タンク108の出口側をバキュームポンプ113側に連通させた状態になる。
【0053】
供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120が供給管107に送り出される。この際、供給管107内の減圧がバキュームポンプ113,140によって行われているので、液体120が速く充填されていく。供給管107内に充填された液体120に気泡が発生することを防止することができる。
【0054】
そして、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が検出器111にまで至ると、検出器111によって液体120が検出される。その時には、供給管107内のうち液体タンク108からバルブ110までの間に液体120が充填されている。
【0055】
検出器111によって液体120が検出されると、その旨の検出信号が制御部119に出力される。検出信号を入力した制御部119がバルブ110を制御する。つまり、バルブ110が開閉弁である場合には、制御部119がバルブ110を制御して、バルブ110が閉じる。一方、バルブ110が三方弁である場合には、制御部119がバルブ110を制御して、バルブ110が液体タンク108の出口側をノズルヘッド106側に連通させた状態になる。
その後も、供給器116の作動が継続し、液体120が供給管107及びノズルヘッド本体部161の中空163内に充填されたら、制御部119によって供給器116が停止される。なお、供給器116が停止されずに、そのまま液体120がノズルヘッド106に供給され、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されてもよい。
【0056】
なお、その後の塗布工程における塗布装置100Aの塗布動作は図1、図8、図9に示された塗布装置100の塗布動作と同様である。
【0057】
〔4〕塗布装置の変形例2
〔4−1〕構成
図14は、変形例における塗布装置100Bを示した図面である。
図14に示すように、複数のバルブ110a,110b及び検出器111a,111bが供給管107に設けられているとともに、バルブ110c及び検出器111cがノズルヘッド106に設けられている。バルブ110a及び検出器111aは、液体タンク108とマスフローコントローラ109の間に設けられている。バルブ110b及び検出器111bは、マスフローコントローラ109とノズルヘッド106の間に設けられている。
また、バルブ110c及び検出器111cがノズルヘッド106に設けられていている。バルブ110a,110b、110cは電磁弁である。これらバルブ110a,110b,110cは制御部119によって制御される。
この検出器111a,111b,111cは、それぞれのバルブ110a,110b,110cの近傍において供給管107内に液体120が存するか否かを検出するものである。
【0058】
これらバルブ110a,110b,110cが排気管114aを介して捕捉器112に接続されている。以上に説明したことを除いて、図14に示された塗布装置100Bは、図1に示された塗布装置100と同様に設けられている。
【0059】
〔4−2〕塗布装置の初期動作、塗布装置のセッティング工程及び液体の充填工程
この塗布装置100Bの初期動作及び塗布装置100Bのセッティング工程について図15を参照して説明する。図15は、制御部119のシーケンス制御の流れを示したフローチャートである。
【0060】
まず、液体タンク108内に液体120を充填する。この時点では、供給管107は空の状態であり、液体120が供給管107内に充填されていない。
【0061】
そして、制御部119がキャリッジ105を制御し、キャリッジ105が所定の待機位置に移動する(ステップS1)。そうすると、図10に示すように、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれ、ノズルヘッド106のノズル孔168が冷却トラップ130を介してバキュームポンプ140に接続される。
【0062】
次に、塗布装置100を起動する。次に、制御部119がバルブ110a,110b,110cを制御し、バルブ110a,110b,110cが開く(ステップS2)。
その後、制御部119によってバキュームポンプ113,140及び供給器116が作動する(ステップS3)。
【0063】
供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120が供給管107に送り出される。これにより、供給管107内には、液体120が液体タンク108側から次第に充填されていく。この際、バキュームポンプ113が作動しているので、供給管107内の減圧がバルブ110a,110b,110cを介して行われているので、液体120が速く充填されていく。そして、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が検出器111aにまで至ると、検出器111aによって液体120が検出される(ステップS4:Yes)。その時には、供給管107内のうち液体タンク108からバルブ110aまでの間に液体120が充填されている。
【0064】
検出器111aによって液体120が検出されると、その旨の検出信号が制御部119に出力される。制御部119は、検出器111aから検出信号を入力したら、バルブ110aを閉じる(ステップS5)。これにより、バルブ110aを介した供給管107内の減圧が停止される。
【0065】
その後も、供給器116及びバキュームポンプ113の動作が継続する。そして、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が検出器111bにまで至ると、検出器111bによって液体120が検出される(ステップS6:Yes)。検出器111bによって液体120が検出されると、その旨の検出信号が制御部119に出力される。制御部119は、検出器111bから検出信号を入力したら、バルブ110bを閉じる(ステップS7)。これにより、バルブ110bを介した供給管107内の減圧が停止される。
【0066】
その後も、供給器116及びバキュームポンプ113の動作が継続する。そして、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が検出器111cにまで至ると、検出器111cによって液体120が検出される(ステップS8:Yes)。検出器111cによって液体120が検出されると、その旨の検出信号が制御部119に出力される。制御部119は、検出器111cから検出信号を入力したら、バルブ110cを閉じる(ステップS9)。これにより、バルブ110cを介した供給管107内の減圧が停止される。
【0067】
その後も、供給器116の作動が継続する。そして、液体120がノズルヘッド106の中空163内に充填されたら、制御部119によって供給器116が停止される。なお、供給器116が停止されずに、そのまま液体120がノズルヘッド106に供給され、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されてもよい。
【0068】
上述では、制御部119のシーケンス制御によって、バルブ110a,110b,110c、バキュームポンプ113及び供給器116が自動的に動作している。それに対し、作業者がバルブ110a,110b,110c、バキュームポンプ113,140及び供給器116を手動で動作させてもよい。また、図16に示すように、検出器111a,111b、111cが設けられていなくてもよい。以下、手動で塗布装置100Bのセッティングを行う場合について具体的に説明する。
【0069】
キャリッジ105を所定の待機位置に移動させる。図10に示すように、ノズルヘッド106のノズル孔168を冷却トラップ130を介してバキュームポンプ140に接続する。
次に、液体タンク108内に液体120を充填する。次に、バルブ110a,110b,110cを手動で開く。
次に、バキュームポンプ113,140及び供給器116を作動させる。これにより、液体タンク108内の液体120が供給管107に送り出されるとともに、供給管107内の液体がバキュームポンプ113によって引かれる。これにより、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面がバルブ110aの直前にまで至ったことを目視で確認したら、バルブ110aを閉じる。
その後、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面がバルブ110bの直前にまで至ったことを目視で確認したら、バルブ110bを閉じる。
その後、供給管107内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面がバルブ110cの直前にまで至ったことを目視で確認したら、バルブ110cを閉じる。
その後も、供給器116を作動しつづけ、液体120がノズルヘッド106の中空163内に充填されたら、供給器116を停止する。
【0070】
なお、その後の塗布工程における塗布装置100Bの塗布動作は図1、図8、図9に示された塗布装置100の塗布動作と同様である。
【0071】
以上のように、液体120が供給管107に充填されていくに従って、バルブ110a,110b,110cが順次閉じていくから、ノズルヘッド106内に液体120が供給される直前まで、供給管107内を減圧状態又は真空にすることができる。
【0072】
〔5〕塗布装置を用いて製造される有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの構成
図1、図8〜図9、図11〜図14、図16に示された塗布装置100,100A,100Bを用いて製造されるELパネル1について、図17〜図21を用いて説明する。
【0073】
図17は、発光パネルであるELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図である。図18は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。図19は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。図20は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図21は、図20のXXI−XXI線に沿った面の矢視断面図である。
【0074】
図17、図18に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2及び複数の信号線3が設けられている。これら走査線2は、行方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。これら信号線3が、列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。走査線2と信号線3が、平面視して走査線2と略直交している。また、ELパネル1には、複数の電圧供給線4が設けラテいる。電圧供給線4は、平面視して、走査線2に対して平行に設けられている。電圧供給線4は、隣り合う走査線2の間において走査線2に沿って設けられている。画素Pは、一組の走査線2及び電圧供給線4並びに隣り合う二本の信号線3によって囲われる範囲に相当する。画素Pがマトリクス状に配列されている。ここでは、R(赤)を発光する複数の画素Pが信号線3に沿って配列されている。G(緑)を発光する複数の画素Pも信号線3に沿って配列されている。B(青)を発光する複数の画素Pも信号線3に沿って配列されている。走査線2に沿う方向の複数の画素Pの列は、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pの順の配列となっている。
【0075】
また、ELパネル1には、隔壁であるバンク13が設けられている。バンク13は、信号線3に沿う方向に延在している。このバンク13によって挟まれた範囲に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、発光層8c)が設けられ、その範囲が画素Pの発光領域となる。つまり、このバンク13が、R(赤),G(緑),B(青)の各色毎に画素Pを仕切っている。なお、キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。
【0076】
図18、図19に示すように、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0077】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続されている。スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続されている。スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0078】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続されている。各電圧供給線4が、定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続されている。各信号線3が、データドライバに接続されている。これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0079】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図20、図21を用いて説明する。図20に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列されている。キャパシタ7が、スイッチトランジスタ5の近傍に配置されている。EL素子8が、駆動トランジスタ6の近傍に配置されている。また、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が、走査線2と電圧供給線4の間に配置されている。
【0080】
駆動トランジスタ6は、図21に示すように、ゲート電極6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
また、スイッチトランジスタ5は、以下に詳述する駆動トランジスタ6と同様の薄膜トランジスタであって、ゲート電極5a、半導体膜、チャネル保護膜、不純物半導体膜、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものであるので、その詳細については省略する。
図20、図21に示すように、ゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が基板10上の一面に成膜されている。その層間絶縁膜11の上には、層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は、層間絶縁膜11と基板10との間に形成されている。走査線2及び電圧供給線4は、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0081】
ゲート電極6aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極6aの上には、絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されている。ゲート電極6aが、その層間絶縁膜11によって被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート電極6aに対応する位置には、真性な半導体膜6bが形成されている。半導体膜6bは、層間絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなる。この半導体膜6bにチャネルが形成される。また、半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gは、それぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、ここでは不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜されている。チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが、層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0082】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されている。図21に示すように、キャパシタ7の一方の電極7aが基板10と層間絶縁膜11との間に形成されている。キャパシタ7の他方の電極7bが、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。これにより、キャパシタ7が構成されている。
【0083】
信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0084】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域に、コンタクトホール11aが形成されている。ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域に、コンタクトホール11bが形成されている。ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域に、コンタクトホール11cが形成されている。コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通する。コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通する。コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともに、スイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
駆動トランジスタ6のゲート電極6aが、キャパシタ7の電極7aに一体に連なっている。駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが、電圧供給線4に一体に連なっている。駆動トランジスタ6のソース電極6iが、キャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0085】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられている。画素電極8aは、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図20、図21に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。
層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。この層間絶縁膜12は、平面視して格子状に形成されている。
【0086】
バンク13は、図20、図21に示すように、信号線3に沿う方向に延在しているとともに、互いに平行に設けられている。そのため、これらバンク13は、縞状を成している。また、バンク13は、層間絶縁膜12を介してスイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6を覆う位置に形成されている。バンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に位置している。また、隣り合うバンク13の間には、画素電極8aの中央側が露出している。また、隣り合うバンク13の間にある複数の画素電極8aは、バンク13に沿って配列されている。
そして、バンク13は、後述する正孔注入層8bや発光層8cを湿式法により形成するに際して、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないようにする隔壁として機能する。
【0087】
EL素子8は、図20、図21に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0088】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなるキャリア輸送層である。正孔注入層8bは、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入する層である。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含む。発光層8cは、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなるキャリア輸送層である。発光層8cは、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンである。
【0089】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されている。対向電極8dは、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8dは、全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの化合物膜とともにバンク13を被覆している。
【0090】
また、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間においてバンク13に沿う方向に帯状に設けられているとともに、バンク13に沿う方向に連続して設けられている。そのため、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に沿う方向には、画素Pごとに区切られていない。つまり、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間において配列された複数の画素電極8aに共通して設けられている。一方、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に直交する方向には、バンク13によって区切られている。
そして、層間絶縁膜12の開口部12a内におけるバンク13の側壁13a間において、キャリア輸送層としての正孔注入層8b及び発光層8cが、画素電極8a上に積層されている(図21参照)。つまり、画素電極8aと対向電極8dの間に電圧が印加されたら、正孔注入層8b及び発光層8cは画素電極8aに重なる部分においてキャリア輸送層として機能し、その部分において発光層8cにおいて発光する。
具体的には、層間絶縁膜12の上に設けられたバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に形成されている。
そして、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第1のキャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた正孔注入層8b上に、発光層8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第2のキャリア輸送層である発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている(図21参照)。
【0091】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射するようにする。
【0092】
図17に示すELパネル1において、基板10の一方の面の中央側で、並設されたバンク13に挟まれて複数の画素Pが升目状に並んでいる領域が、第一領域としての発光領域R1であり、その発光領域R1の周囲を囲う領域が、第二領域としての非発光領域R2である。
【0093】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加される。そうすると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなる。そのため、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0094】
〔6〕塗布装置を用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0095】
〔6−1〕塗布装置を使用する前の工程
まず、基板10上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させる。そして、そのゲートメタル層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によりパターニングする。これによって、そのゲートメタル層から信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aを形成する。
次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子(例えば、走査線2の端部)上において開口するコンタクトホール(図示せず)を層間絶縁膜11に形成する。
次いで、半導体膜6b(5b)となるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜6d(5d)となる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積する。その後、その絶縁層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によってパターニングする。これにより、その絶縁膜からチャネル保護膜6d(5d)を形成する。
その後、不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)となる不純物層を堆積した後、フォトリソグラフィー及びエッチング等によって不純物層及び半導体層を連続してパターニングする。これにより、その不純物層から不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)を形成するとともに、その半導体層から半導体膜6b(5b)を形成する。
そして、フォトリソグラフィー及びエッチングによってコンタクトホール11a〜11cを形成する。次いで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されてもよい。
スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース・ドレインメタル層を堆積し、そのソース・ドレインメタル層をパターニングする。これにより、そのソース・ドレインメタル層から走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。こうしてスイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6が形成される。その後、ITO膜を堆積した後、そのITO膜をパターニングすることによって、そのITO膜から画素電極8aを形成する。
【0096】
そして、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜する。その後、その絶縁膜をフォトリソグラフィー及びエッチングでパターニングする。これにより、その絶縁膜に複数の開口部12aを形成して、層間絶縁膜12を形成する。開口部12aの形成位置は各画素電極8aの中央部上とし、各開口部12a内において、画素電極8aの中央部を露出される。また、これら開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子(例えば、信号線3の端部)及び電圧供給線4の外部接続端子(例えば、電圧供給線4の端部)上において開口する複数のコンタクトホールを形成する。
【0097】
次いで、ポリイミド等の感光性樹脂を堆積後にその感光性樹脂を露光して、互いに平行な縞状のバンク13を形成する。この際、バンク13の側壁13aが画素電極8a上に位置するように、バンク13を形成する。なお、このバンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を露出している。
【0098】
以上の工程により、図22に示すように、各画素電極8aは層間絶縁膜12のそれぞれの開口部12a内において露出する。また、縞状のバンク13間の凹部内において複数の画素電極8aが露出しているとともに、これら画素電極8aがバンク13に沿って配列される。
【0099】
〔6−2〕塗布工程
上記〔2−1〕、〔3−2〕、〔4−2〕で説明したように、塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bを4台分セッティングする。この際、1台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bの液体タンク108内の液体120には、正孔注入層8bの材料を用いる。2台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bの液体タンク108内の液体120には、赤の発光層8cの材料を用いる。3台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bの液体タンク108内の液体120には、緑の発光層8cの材料を用いる。4台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bの液体タンク108内の液体120には、青の発光層8cの材料を用いる。
【0100】
次に、以上の工程により得られた基板10を1台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bのワークテーブル101上に載置する。この際、バンク13が主走査方向に沿うようにして、基板10をワークテーブル101上に載置する。
【0101】
次に、制御部119の制御によって、キャリッジ105が移動範囲の端に移動する。次に、マスフローコントローラ109の設定流量が制御部119によって設定される。次に、供給器116及びキャリッジ105が制御部119によって作動され、キャリッジ105が主走査方向に移動するとともに、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、吐出された液体120が、隣り合うバンク13の間に塗布される。これにより、帯状の正孔注入層8bがその隣り合うバンク13の間に形成され、その隣り合うバンク13の間に配列された画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われる。
【0102】
キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、キャリッジ105が制御部119によって停止される。そして、制御部119が移動装置102を制御し、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって副走査方向に1画素分だけ移動され、その後、移動装置102が制御部119によって停止される。
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させる。これにより、キャリッジ105が逆方向に移動するとともに、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。これにより、帯状の正孔注入層8bが形成される。
そして、キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、キャリッジ105、マスフローコントローラ109及び供給器116が停止する。
【0103】
以後、以上の動作が繰り返されることによって、帯状の正孔注入層8bが順次形成され、全ての画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われる。
【0104】
そして、正孔注入層8bの乾燥後、基板10を2台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bのワークテーブル101上に載置する。そして、2台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bが同様に動作することによって、帯状の赤の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0105】
次に、基板10を3台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bのワークテーブル101上に載置する。そして、3台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bが同様に動作することによって、帯状の緑の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0106】
次に、基板10を4台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bのワークテーブル101上に載置する。そして、4台目の塗布装置100、塗布装置100A又は塗布装置100Bが同様に動作することによって、帯状の青の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0107】
以上のようにして、全ての正孔注入層8b上に発光層8cが形成される。同様にしてモノカラーパネルの塗布も行えるが、発光層塗布時の副走査方向の移動距離は1画素となり、2台目の塗布装置110のみが発光層塗布用途して必要となる。
【0108】
〔6−3〕塗布装置を使用した後の工程
続いて、対向電極8dを成膜し、対向電極8dによって発光層8c及びバンク13を被覆する。
以上により、ELパネル1が完成する。
【0109】
〔7〕ELパネルの用途
発光パネルの塗布装置100によって、以上のように形成されて製造されたELパネル1は、各種電子機器の表示パネルとして用いられる。
例えば、図23に示す携帯電話機200の表示パネル1aにELパネル1を適用することができる。また、図24、図25に示すデジタルカメラ300の表示パネル1bにELパネル1を適用することができる。また、図26に示すパーソナルコンピュータ400の表示パネル1cにELパネル1を適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
100,100A,100B 塗布装置
106 ノズルヘッド(吐出部)
107 供給管
108 液体タンク(液体貯留部)
110、110a、110b、110c バルブ(切替部)
111、111a、111b、111c 検出器
113 バキュームポンプ(減圧装置)
116 供給器
119 制御部
120 液体
121 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留された液体貯留部と、
前記液体を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記液体貯留部から前記吐出部にまで配管された供給管と、
前記供給管又は前記吐出部に設けられた切替部と、
前記切替部に接続され、前記供給管内を減圧するための減圧装置と、を備え、
前記切替部が、前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態と、に選択的に切り替わるよう設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記供給管のうち前記切替部の近傍に液体が充填されていると、前記切替部が前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態になることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記液体貯留部内の前記液体を前記供給管に送り出す供給器を備え、
前記切替部が前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態で、前記供給器及び前記減圧装置が作動することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記供給器、前記減圧装置及び前記切替部を制御する制御部を更に備え、
前記制御部が、前記切替部を、前記供給管を前記減圧装置に連通させた状態にするとともに、前記供給器及び前記減圧装置を作動させることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記切替部の近傍において前記供給管内に液体が存することを検出する検出器を更に備え、
前記制御部が、前記検出器によって液体を検出したら、前記切替部を、前記供給管を前記減圧装置から遮断した状態に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記切替部が、前記液体貯留部から前記吐出部にかけて複数設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、前記液体貯留部から液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分で前記供給管内の減圧を行うことを特徴とする液体の充填方法。
【請求項8】
液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分の複数の箇所で前記供給管内の減圧を行い、
前記液体貯留部から前記供給管に送り出された液体が前記供給管内を前記吐出部側へ充填されていくに従って、前記減圧をしている箇所の前記減圧の停止を前記液体貯留部寄りから順次行うことを特徴とする液体の充填方法。
【請求項9】
有機材料を含む液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、供給器によって前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分で前記供給管内の減圧を行い、
前記液体貯留部から前記減圧をしている部分まで前記液体を充填したら、前記減圧を停止し、
前記吐出部内まで前記液体を充填したら前記供給器を停止せずに、前記吐出部を基板に対して相対的に前記基板上で移動させつつ、前記吐出部から連続的に吐出された前記液体を前記基板に塗布することを特徴とする有機層の製造方法。
【請求項10】
有機材料を含む液体が貯留された液体貯留部から前記液体を吐出するノズルを有する吐出部にまで配管された供給管に対して、供給器によって前記液体貯留部から前記液体を送り出しつつ、前記液体貯留部よりも前記吐出部寄りの部分の複数の箇所で前記供給管内の減圧を行い、
前記液体貯留部から前記供給管に送り出された液体が前記供給管内を前記吐出部側へ充填されていくに従って、前記減圧をしている箇所の真空引き又は減圧の停止を前記液体貯留部寄りから順次行い、
前記吐出部内まで前記液体を充填したら、前記供給器を停止せずに、前記吐出部を基板に対して相対的に前記基板上で移動させつつ、前記吐出部から連続的に吐出された前記液体を前記基板に塗布することを特徴とする有機層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−25190(P2011−25190A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175363(P2009−175363)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】