説明

塗布装置

【課題】布液の定量供給を確保し、また、スリットノズルの移動時に発生する振動を低減させた塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布方向を基準として前方の連結ビーム7の幅方向の中央部には、塗布液送液ポンプとして、非圧縮流体によりチューブの外周部に均一な圧力を加えて作動させるチューブフラムポンプ12を配置している。このチューブフラムポンプ12は連結ビーム7上面に取り付けた楔部材13に出口が上になり入口が下になるように斜めに固定されている。このように、斜めに配置することで、エアーの噛み込みを防止することができる。尚、出口と入口には液溜がない構造としておくことがボタ落ちなどを防ぐ上で好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板や半導体ウェーハ等の基板に対し、現像液、洗浄液、SOG溶液、レジスト液等を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶(LCD)、PDP(プラズマディスプレイ)、半導体素子等の製造プロセスにおいては、基板上に各種被膜を形成したり、洗浄液や現像液を塗布するために塗布装置が使用される。
【0003】
従来の塗布装置としては、例えば、特許文献1に開示されるように、基板の中心にノズルから塗布液を滴下し、次いで基板を回転せしめ遠心力で塗布液を基板上に均一に塗布する回転塗布タイプのもの、或いはスプレーによって基板上に均一に塗布するタイプが知られている。
このような、回転塗布タイプやスプレータイプにあっては、基板上に塗布される有効な塗布液の量が少なく無駄が多い。
一方、塗布液の無駄がない塗布装置としては特許文献2に開示されるロールコータがある。しかしながらロールコータにおいては、均一な塗布が困難という問題がある。
【0004】
そこで、塗布液の無駄を少なくし、しかも均一塗布が可能な装置として、特許文献3や4に開示されるような、スリットノズルと回転とを組み合わせた装置が使用されている。この装置は、スリットノズルによって基板表面にある程度の厚さで塗布液を塗布し、この後基板を回転せしめることで塗布液の厚さの均一化を図るというものである。
【0005】
また、液晶表示装置に組み込むガラス基板について述べれば、生産性を上げるに、大きなガラス基板に被膜を形成し、その後に各液晶パネルの大きさに合せて切断した方が有利である。
このような理由から最近では基板の大型化(1辺の長さが1mを超える矩形)が進んでいるが、基板寸法の大型化が進むと、基板を回転させることが困難になる。
即ち、1辺が1mを超える矩形状基板を数千回転/分の速度で回転させることは、装置の構造が極めて複雑になり、また基板の破損等の事態を考慮すると、大型基板を高速で回転せしめることには不利な点が多い。
【0006】
そこで従来のスリットノズルと回転とを組み合わせた装置から、基板を回転せしめる機構を省き、特許文献5〜7に記載されるように、スリットノズルのみ(非スピン法)に最近では移行しつつある。
【0007】
【特許文献1】特開平4−341367号公報
【特許文献2】特開昭63−246820号公報
【特許文献3】特開昭61−65435号公報
【特許文献4】特開昭63−156320号公報
【特許文献5】特開2001−904号公報
【特許文献6】特開2001−310152号公報
【特許文献7】特表2002−500099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スリットノズルを用いた非スピン法では、スリットノズルが基板の上方を移動しつつ塗布液を基板表面に供給することになるが、スリットノズルが移動する際に振動が発生する。この振動により基板表面に供給される塗布液の量に変動が生じ、これが原因で膜厚の不均一が発生する。
【0009】
そこで、塗布エレメント(スリットノズル)の振動に起因する膜厚の不均一を解消するために、リニアモータを用いて塗布エレメントを支持する部分をベースに対して非接触状態とする試みがなされている。
このように塗布エレメントを取り付ける部材をベースに対して非接触で移動可能とすることで、振動に起因する塗布ムラを解消することはできるが、これだけでは十分とは言えない。
【0010】
即ち、従来にあっては塗布エレメント(スリットノズル)へ塗布液を供給する送液ポンプはベース等の移動しない箇所に固定され、この送液ポンプと塗布エレメント間をフレキシブルチューブでつなげている。このため、塗布エレメントが移動すると、送液ポンプと塗布エレメント間のフレキブルチューブもそれにつれて変形し、配管内容積が変化し、塗布エレメントから吐出される塗布液量が微妙に変化する。そして、これが膜厚不均一の原因になる。
【0011】
最近になって、特許文献5および6に記載されるように、塗布エレメントの移動部材に送液ポンプを取り付け、塗布エレメントの移動に伴なって送液ポンプも移動する技術が開発されている。しかし、送液ポンプからスリットノズルまでの配管(チューブ)が長いため、チューブの伸縮等が原因となって塗布量の定量性の確保が困難となっている。
また、特許文献7には、スリットノズルと一体的に送液ポンプを設置する発明が記載されているが、これでは、スリットノズル交換時に送液ポンプも取外さなくてはならない。このため作業精度を上げる必要が生じ、作業負担が増加し塗布再開までの時間がかかる。
【0012】
上述した点に鑑み、本発明は、布液の定量供給を確保し、また、スリットノズルの移動時に発生する振動を低減させた塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る塗布装置は、一対の平行なレール間に基板載置ステージが配置され、この基板載置ステージを跨ぐようにスリットノズルを備えた門型移動機構がレール間に走行可能に架け渡され、門型移動機構は一対の平行なレールのそれぞれに係合する走行体と、これら走行体間を連結する連結ビームとを備え、連結ビームの略中央部に塗布液送液ポンプが取り付けられた構成とした。
【0014】
本発明に係る塗布装置によれば、連結ビームの略中央部に塗布液送液ポンプが取り付けられた構成としたので、例えば、塗布中に送液ポンプと塗布エレメントとの距離が常に一定に保たれる。しかもその距離が短いため、送液ポンプと塗布エレメントをつなぐフレキシブルチューブの配管内容積が変動しない。これにより、塗布エレメントに備えられたスリットノズルからの吐出量も一定となり、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
また、連結ビームの略中央部に送液ポンプが取り付けられているため、左右門柱のバランスの調整が容易である。これにより、移動時に発生する振動やピッチングを低減することができる。
【0015】
塗布液送液ポンプとしては、非圧縮流体によりチューブの外周部に均一な圧力を加えて作動させるチューブフラムポンプであることが好ましい。また、前記塗布液送液ポンプから前記塗布エレメントまでの配管は、チューブの伸縮の影響を避けるため最長で1mまでであることが好ましい。
【0016】
また、塗布液送液ポンプとしては、重心を低く保って移動部材の振動を減少させるため、前記昇降フレーム中央部近辺の側面に横斜め方向に取り付けられることが好ましい。
この際、横斜め方向に取り付けるとチューブフラム内の出入り口付近の接合部に液溜りが発生しやすいので、これを解消する構造とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布装置によれば、例えば、塗布エレメントに備えられたスリットノズルからの吐出量を一定にすることができ、均一な厚さの塗膜を得ることが可能になる。
また、左右門柱のバランスの調整が容易であり、移動時に発生する振動やピッチングを低減することが可能になる。
従って、高性能且つ信頼性の向上した塗布装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る塗布装置の一部を拡大した一実施の形態を示す平面図である。また、図2は図1のA方向矢視図、図3は図1のB方向矢視図、図4はスリットノズルの取り付け状態を説明した拡大側面図である。
【0019】
本実施の形態に係る塗布装置は、図1〜図3に示すように、ベースフレーム1を介して支持されている。
ベースフレーム1上には一対のレール2,2が水平方向に且つ平行に設けられ、これら一対のレール2には門型移動機構3が係合し、ベースフレーム1上にはガラス基板W等を載置する基板載置ステージ4が設けられている。
【0020】
門型移動機構3はレール2を抱持する形状の走行体としてのガントリーフレーム5を有しており、このガントリーフレーム5の内側面にはレール2との間に隙間を形成するエアパッド6が備えられている。
【0021】
左右のガントリーフレーム5,5は2本の連結ビーム7,7にて連結一体化され、平面視で枠状をなしている。このように枠状をなすことで走行中の歪を少なくできる。
なお、連結ビーム7,7については1本のみの構成とすることもできる。
【0022】
また、左右のガントリーフレーム5はそれぞれ図示しないリニアモータの可動部(コア部)に連結されている。そして、左右のリニアモータを同期して駆動することで、門型移動機構3はレール2に沿って振動なく移動する。
ここで、連結ビーム7,7はガントリーフレーム5の上面に取り付けられているが、この位置は走行時に連結ビーム7,7が基板(基板載置ステージ4)に緩衝しない範囲で最も低い位置である。
このように連結ビーム7,7の高さを低くすることで、走行時のピッチングを抑制することができる。
【0023】
また、左右のガントリーフレーム5の上面にはシリンダユニットなどで構成されるノズル昇降機構8が固設され、左右のノズル昇降機構8,8間にノズルベースプレート9が水平且つ昇降自在に架設され、このノズルベースプレート9にスリットノズル10が取り付けられている。
而して、昇降機構8,8を駆動することでノズルベースプレート9とスリットノズル10は一体的に昇降動する。
【0024】
ノズルベースプレート9の一部にはスリットノズル10の下端と基板Wとの間隔を測定するレーザセンサ11が取り付けられている。
【0025】
そして、本実施の形態の塗布装置おいては特に、塗布方向を基準として前方の連結ビーム7の幅方向の中央部に、塗布液送液ポンプとして、非圧縮流体によりチューブの外周部に均一な圧力を加えて作動させるチューブフラムポンプ12が配置されている。
【0026】
このチューブフラムポンプ12は連結ビーム7上面に取り付けた楔部材13に固定されている。
本実施の形態では、この楔部材13が、図2及び図3に示すように、一方に傾斜した形状であるため(紙面垂直方向から見て)、チューブフラムポンプ12は斜めに配置されている。この場合、チューブフラムポンプ12は、出口側(アウト)が上方に、入口側(イン)が下方になるように固定されている。
このように、チューブフラムポンプ12が斜めに配置されることで、エアーの噛み込みを防止することができる。
なお、チューブフラムポンプ12において、出口側と入口側の構成は、液溜がない構造とすることがボタ落ちなどを防ぐ上で好ましい。
【0027】
また出口とスリットノズル10とはフレキシブルチューブ14にて連結され、入口と図示しないタンクとはフレキシブルチューブ15にて連結されている。
ここで、チューブフラムポンプ12はスリットノズル10と一体的に移動する連結ビーム7に取り付けられており、スリットノズル10の昇降動分だけフレキシブルチューブ14に余裕があればよい。
従って、本実施の形態の場合では、フレキシブルチューブ14の長さを1m以下と短くし、チューブの伸縮による塗布液供給量の微妙な増減を避けている。
【0028】
次に、チューブフラムポンプ12をガントリーフレーム5に取り付けた場合(A)と、連結ビーム7に取り付けた場合(B)について、門型移動機構3の振幅安定性の比較を行った結果を下記表1に示す。
【0029】
【表1】

〔表中、移動速度は、レール2に沿って門型移動機構3が移動する速度を、整定距離はガントリーの振幅が安定するまでの距離を示す。〕
【0030】
表1に示したとおり、チューブフラムポンプ12を連結ビーム7の中央部近辺に取り付けたBの場合は、ガントリーフレームに取り付けたAの場合に比較して20mm以上も早くガントリーが安定することが分かる。
【0031】
本実施の形態の塗布装置によれば、上述したように、連結ビームの中央部にチューブフラムポンプが取り付けられた構成としたので、塗布中に送液ポンプと塗布エレメントとの距離が常に一定に保たれる。しかもこの距離が短いため、送液ポンプと塗布エレメントをつなぐフレキシブルチューブの配管内容積が変動しない。 これにより、塗布エレメントに備えられたスリットノズルからの吐出量も一定となり、均一な塗膜厚を得ることができる。
また、連結ビームの中央部に送液ポンプが取り付けられているため、左右門柱のバランスの調整が容易であり、移動時に発生する振動やピッチングを低減することができる。
【0032】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の塗布装置の一部を拡大した一実施の形態を示す平面図
【図2】図1のA方向矢視図
【図3】図1のB方向矢視図
【図4】スリットノズルの取り付け状態を説明した拡大側面図
【符号の説明】
【0034】
1・・・ベース、2・・・レール、3・・・門型移動機構、4・・・基板載置ステージ、5・・・ガントリーフレーム、6・・・エアパッド、7・・・連結ビーム、8・・・ノズル昇降機構、9・・・ノズルベースプレート、10・・・スリットノズル、11・・・レーザセンサ、12・・・チューブフラムポンプ、13・・・楔部材、14、15・・・フレキシブルチューブ、W・・・被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平行なレール間に基板載置ステージが配置され、該基板載置ステージを跨ぐようにスリットノズルを備えた門型移動機構が前記レール間に走行可能に架け渡された塗布装置において、
前記門型移動機構は、前記一対の平行なレールのそれぞれに係合する走行体と、これら走行体間を連結する連結ビームとを備え、
前記連結ビームの略中央部に塗布液送液ポンプが取り付けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液送液ポンプがチューブフラムポンプであることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記チューブフラムポンプから前記スリットノズルまでの配管の長さが1m未満であることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−83237(P2007−83237A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325174(P2006−325174)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【分割の表示】特願2005−240590(P2005−240590)の分割
【原出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】