説明

塗膜形成用組成物、該組成物から得られるパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法および該製造物の用途

【課題】金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを導電成分として用いた透明導電膜を、製造工程を少なく製造し、製造コストおよび環境負荷を抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明の塗膜形成用組成物は、第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分としてアミドを有する化合物、第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物、第4成分として溶媒、および第5成分として光重合開始剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成用組成物に関する。より詳しくは、パターニング可能な透明導電膜を形成することができる塗膜形成用組成物、該組成物から得られるパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法、および該基板を用いたデバイス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)、太陽電池(PV)およびタッチパネル(TP)の透明電極、帯電防止(ESD)フィルムならびに電磁波遮蔽(EMI)フィルム等の種々の分野で使用されており、(1)低い表面抵抗、(2)高い光線透過率、(3)高い信頼性が要求される。
【0003】
例えば、LCDの透明電極に対しては、表面抵抗が10Ω/□から300Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で85%以上である。さらに好ましい範囲は、表面抵抗が20Ω/□から100Ω/□、透過率が90%以上である。OLEDの透明電極に対しては、表面抵抗が10Ω/□から100Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で80%以上である。さらに好ましい範囲は、表面抵抗が10Ω/□から50Ω/□、透過率が85%以上である。PVの透明電極に対しては、表面抵抗が5Ω/□から100Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で70%以上である。さらに好ましい範囲は、表面抵抗が5Ω/□から20Ω/□、透過率が70%以上である。TPの電極に対しては、表面抵抗が100Ω/□から1000Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で85%以上である。さらに好ましくは、表面抵抗が150Ω/□から500Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で90%以上である。ESDフィルムに対しては、表面抵抗が500Ω/□から10000Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で90%以上である。さらに好ましくは、表面抵抗が1000Ω/□から5000Ω/□の範囲内にあり、透過率が可視光域で95%以上である。
これらの透明電極に用いられる透明導電膜には、従来、ITO(酸化インジウム錫)が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、昨今、ITOに用いられるインジウムはレアメタルであるため、供給不安と価格高騰の問題を抱えている。また、ITOの製膜には、高真空を必要とするスパッタ法が用いられているため、製造装置が大規模となり、製造時間とコストが大きい。更に、ITOは曲げ等の物理的な応力によってクラックが発生し壊れ易いため、フレキシブル性を付与した基板に対して適用することは困難である。そのため、これらの問題点を解消したITO代替材料の探索が活発に進められている。
【0005】
そこで、「ITO代替材料」の中でも、スパッタリングが不要である塗布成膜可能な材料として、例えば、(i)ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)(たとえば特許文献1参照)等の高分子系導電材料ならびに(ii)金属ナノワイヤを含有する導電性材料(たとえば特許文献2および非特許文献1参照)および(iii)カーボンナノチューブを含有する導電性材料(たとえば特許文献3参照)等のナノ構造の導電性成分を含有する導電性材料が報告されている。
【0006】
これらの中でも(ii)の金属ナノワイヤを含有した導電性材料は、低表面抵抗かつ高
光線透過率を示すことが報告されており(たとえば特許文献2および非特許文献1参照)、更に、フレキシブル性も有しているため、「ITO代替材料」に最適である。
【0007】
ここで、透明導電膜は、透明電極として使用するために用途に応じたパターニングを必要とする。ITOのパターニングには、レジスト材料を用いたフォトリソグラフィー法が一般的に用いられている。
金属ナノワイヤを含有した導電性材料にパターニングを形成する方法としては、非特許文献1には以下の工程が記載されている。
(1)金属ナノワイヤを含有する導電性インクを基板に塗布する工程。
(2)焼成を行い、透明導電層を形成する工程。
(3)感光性を有するレジストを前記透明導電層上に形成する工程
(4)微細パターンに相当する適当な遮光マスクを通じてレジストに光エネルギーを付与する工程。
(5)得られたレジストの潜像を、適当な現像用溶液による溶出によって現像する工程。
(6)適当なエッチング方法を用いて露出した被パターニング膜を除去する工程。
(7)残存したレジストを適当な方法を用いて除去する工程。
実際には、上記工程に加え、さらに、各工程の前後に、適当な基板表面処理、洗浄および乾燥工程等が必要となると考えられる。
【0008】
また、特許文献2には以下の工程が記載されている。
(1)水に分散した銀ナノワイヤを含有する導電性インクを基板に塗布する工程。
(2)焼成を行い、銀ナノワイヤ網層を形成する工程。
(3)プレポリマーを含有する光硬化型のマトリクス材を前記銀ナノワイヤ網層上に形成する工程。
(4)微細パターンに相当する適当な遮光マスクを通じてマトリクス材に光エネルギーを付与する工程。
(5)非硬化領域を溶媒(エタノール)で洗浄することによって除去する工程。または、粘着テープや粘着性ロールを用いて非硬化領域を物理的に除去する工程。
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1および特許文献2いずれの方法においても、金属ナノワイヤを含む層の上にさらにパターニングのための感光性を有する層を形成する工程が必要であった。また、現像およびエッチング後、上記感光性を有する層の除去工程が必要である場合もあった。
【0010】
そのため、透明導電膜を得るために、多くの工程を必要とすることになり、製造コストが大きいという問題および各工程から出される廃液の問題ならびに個々の工程が最適化されていないことによる工程前後での電気特性および光学特性の変化が集積されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4077675号公報
【特許文献2】特表2009−505358号公報
【特許文献3】特開2003―100147号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Shin−Hsiang Lai,Chun−Yao Ou,“SID 08 DIGEST”,2008、P1200−1202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを導電成分として用いた透明導電膜を、製造工程を少なく製造し、製造コストおよび環境負荷を抑制することを目的とする。また、良好にパターニングされ、導電性および光透過性を兼ね備えた塗膜を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、透明導電膜形成のための組成物の成分を検討することにより、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが良好に分散された感光性の組成物が得られ、該組成物は、パターニング可能で導電性および感光性が良好な塗膜を形成可能であることを見出した。その結果、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含む層と、感光性成分を含む層を独立に設ける必要はなく、代わりに該組成物からなる層を形成すれば、パターニング可能な導電性膜となり、製造における工程数を減らすことが可能となった。
【0015】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[22]である。
[1]第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分としてアミドを有する化合物、第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物、第4成分として溶媒、および第5成分として光重合開始剤を含有する塗膜形成用組成物。
【0016】
[2]第2成分が一般式(B−1)〜(B−8)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重量平均分子量1万以上500万以下の重合体である[1]に記載の塗膜形成用組成物。
【化1】

式(B−1)〜(B−8)中、R1は、独立に水素、ヒドロキシル、または基中の−CH2−が−O−で置き換えられていてもよい炭素数1から10のアルキルもしくはアルケニルであって、互いに同一でも異なっていてもよい。Xはオキシメチレン、オキシエチレン、アミノメチレンまたはアミノエチレンである。mは1から10の整数である。
【0017】
[3]第2成分が重量平均分子量10万以上100万以下の重合体である[2]に記載の塗膜形成用組成物。
[4]第4成分が1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【0018】
[5]第3成分が(メタ)アクリロイルを2個以上6個以下有する化合物である[1]〜[4]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
[6]第1成分の短軸の長さの平均が5nm以上100nm以下であり、かつ長軸の長さの平均が2μm以上50μm以下であり、さらにアスペクト比が100以上である[1]〜[5]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【0019】
[7]塗膜形成用組成物総重量に対して、第1成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第2成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第3成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第4成分が96.7重量%以上99.69重量%以下の量で、第5成分が0.01重量%以上0.3重量%以下の量で含まれる[1]〜[6]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
[8]25℃における粘度が0.2mPa・s以上10mPa・s以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【0020】
[9]第2成分がポリ(N−ビニルピロリドン)である[2]〜[8]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
[10]第4成分が1−メトキシ−2−プロパノールである[4]〜[9]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【0021】
[11]第1成分が銀のナノワイヤである[1]〜[10]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
[12]感光性および導電性を有する塗膜の形成に用いられる[1]〜[11]のいずれかに記載の塗膜形成用組成物
【0022】

[13](工程1)基板に[1]〜[12]のいずれかに記載の組成物を塗布した後、溶媒を除去して、基板上に塗膜を形成する工程、
(工程2)工程1で得られた塗膜に、パターン情報を有するフォトマスクを通して光エネルギーを照射する工程、および
(工程3)工程2を経た塗膜を、現像液によって現像する工程
を含むパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法。
【0023】
[14]現像液が、水またはアルカリ性水溶液である[13]に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法。
【0024】
[15][13]または[14]に記載の製造方法で製造されたパターニングされた透明導電膜を有する基板。
[16]導電領域の膜厚が5nm以上100nm以下であって、導電領域の表面抵抗が10Ω/□以上200Ω/□以下の範囲にあり、かつ導電領域の全光線透過率が90%以上である[15]に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板。
【0025】
[17][15]または[16]に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板を用いたデバイス素子。
[18]液晶表示素子である[17]に記載のデバイス素子。
[19]有機エレクトロルミネッセンス素子である[17]に記載のデバイス素子。
【0026】
[20]タッチパネル素子である[17]に記載のデバイス素子。
[21]太陽電池素子である[17]に記載のデバイス素子。
[22]第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分として光重合開始剤、および第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物を含有する塗膜形成用組成物。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが良好に分散された感光性の組成物が得られる。また透明導電膜の製造においては、該組成物を基板に塗布することにより、導電性および感光性を兼ね備えた膜を形成することができる。該膜は直接パターニングして、導電領域と非導電領域を形成することができる。よって、透明導電膜の製造における工程を削減でき、製造コストおよび廃液の排出量の抑制が可能となる。また、このようにして得られた透明導電膜の導電領域は、低い表面抵抗値と、良好な光線透過率等の光学特性とを併せ持つことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施例1で得られた透明導電膜の表面を写した写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られた透明導電膜の表面を写した写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られた透明導電膜の表面を写した写真である。
【図4】図4は、実施例4で得られた透明導電膜の表面を写した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、「透明導電膜」は、103Ω/□以下の表面抵抗を有し、かつ、80%以上の全光線透過率を有する膜を意味する。「パターニングされた透明導電膜」は、導電領域と非導電領域を有する透明導電膜を意味する。「バインダー」は、導電性膜中において金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブの導電性材料を分散させ、かつ担持させるために用いられる樹脂である。「重合体」は単一のモノマーからなるホモポリマー、または2種類以上のモノマーからなるコポリマーである。「感光性」は、光露光により硬化することが可能な樹脂の性質である。
【0030】
[1.塗膜形成用組成物]
本発明の塗膜形成用組成物は、第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分としてアミドを有する化合物、第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物、第4成分として溶媒、および第5成分として光重合開始剤を含有する。
【0031】
1−1.第1成分:金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ
本発明の塗膜形成用組成物は、第1成分として、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含む。第1成分は、本発明の組成物から得られる塗膜中でネットワークを形成して、塗膜に導電性を与える。
【0032】
「金属ナノワイヤ」および「金属ナノチューブ」とは、ナノメーターオーダーのサイズである金属であり、「金属ナノワイヤ」はワイヤ状、「金属ナノチューブ」はポーラスあるいはノンポーラスのチューブ状の形状を有する導電性材料である。性状は、柔軟であってもよく、剛直であってもよい。
【0033】
金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブは、いずれかを用いてもよく、両者を混合したものを用いてもよい。
金属の種類としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種およびこれら金属を組み合わせた合金等が挙げられる。低い表面抵抗かつ高い全光線透過率である塗膜を得るための観点からは、金、銀および銅のいずれかを少なくとも1種含むことが好ましい。これらの金属は、導電性が高いため、一定の表面抵抗を得る際に、面に占める金属の密度を減らすことができるため、高い透過率を実現できる。中でも、金または銀の少なくとも1種を含むことがより好ましい。最適な態様としては、銀のナノワイヤが挙げられる。
【0034】
塗膜形成用組成物中の第1成分の短軸の長さ、長軸の長さおよびアスペクト比は一定の分布を有することが好ましい。この分布は、本発明の組成物から得られる塗膜が、全光線透過率が高くかつ表面抵抗が低い塗膜となる観点から選択される。具体的には、第1成分の短軸の長さの平均は、1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましく、5nm以上100nm以下がさらに好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。また、第1成分の長軸の長さの平均は、1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、2μm以上50μm以下がさらに好ましく、5μm以上30μm以下が特に好ましい。第1成分は、短軸の長さの平均および長軸の長さの平均が上記範囲を満たすとともに、アスペクト比の平均が1より大きいことが好ましく、10以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、200以上であることが特に好ましい。ここで、アスペクト比は、第1成分の短軸の平均的な長さをb、長軸の平均的な長さをaと近似した場合、a/bで求められる値である。a及びbは、走査電子顕微鏡を用いて測定できる。本発明においては、走査型電子顕微鏡SU−70((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0035】
第1成分の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤは、ポリオール(Poly−ol)法を用いて、ポリビニルピロリドン存在下で硝酸銀を還元することによって合成することができる(Chem.Mater.,2002,14,4736)。金ナノワイヤも同様に、ポリビニルピロリドン存在下で塩化金酸水和物を還元することによって合成することができる(J.Am.Chem.Soc.,2007,129,1733)。銀ナノワイヤおよび金ナノワイヤの大規模な合成および精製の技術に関しては国際公開公報WO2008/073143パンフレットと国際公開公報WO2008/046058パンフレットに詳細な記述がある。ポーラス構造を有する金ナノチューブは、銀ナノワイヤを鋳型に塩化金酸溶液を還元することにより合成することができる。ここで、鋳型に用いた銀ナノワイヤは塩化金酸との酸化還元反応により溶液中に溶け出し、結果としてポーラス構造を有する金ナノチューブができる。(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,3892−3901)。
【0036】
1−2.第2成分:アミドを有する化合物
本発明の塗膜形成用組成物は、第2成分としてアミドを有する化合物を含有する。第2成分は、本発明の組成物を成膜するとともに、得られた膜を基板と接合する。またバインダーの役割を果たす。第2成分は、第1成分の組成物中における分散性を妨げることなく、かつ該組成物から得られる塗膜中で本発明の組成物の第1成分が形成するネットワークを破壊することなく、該機能を発揮すると考えられる。また、本発明の組成物から得られる塗膜の光学特性への影響が少ない。
【0037】
本発明の組成物に用いられるアミドを有する化合物の例としては、一般式(B−1)〜(B−8)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下「単量体(B)」ともいう。)または前記単量体の少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体(以下「重合体(B)」ともいう。)が挙げられる。重合体(B)は、50モル%以下の範囲で他の単量体から導かれる構成単位を含んでよく、重合度は1〜100000であることが好ましい。なお、以下において、式(B−1)で表わされる化合物を「化合物(B−1)」と表記し、他の式で表わされる化合物も同様に表記することがある。
【化2】

【0038】
式(B−1)〜(B−8)中、R1は、独立に、水素、ヒドロキシル、または基中の−CH2−が−O−で置き換えられていてもよい炭素数1から10のアルキルもしくはアルケニルであって、互いに同一でも異なっていてもよい。Xはオキシメチレン(OCH2)、オキシエチレン(OCH2CH2)、アミノメチレン(NHCH2)またはアミノエチレン(NHCH2CH2)である。mは1から10の整数である。
【0039】
式(B−1)〜(B−8)において、R1は、独立に水素、ヒドロキシルまたはメチルであることが好ましく、全てが水素であることがより好ましい。
【0040】
第2成分が上記単量体(B)または重合体(B)であると、本発明の組成物中の第1成分および第2成分の良好な分散性、ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の良好なパターニング性および良好な導電性の観点から好ましい。
【0041】
本発明の組成物中の第1成分および第2成分の良好な分散性、ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の良好なパターニング性および良好な導電性の観点から、上記単量体(B)および重合体(B)の中でも、化合物(B−1)〜(B−8)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体が好ましく、化合物(B−2)〜(B−6)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体がより好ましく、化合物(B−4)〜(B−6)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体がさらに好ましく、化合物(B−6)から導かれる構成単位を有する重合体が特に好ましく、ポリ(N−ビニルピロリドン)が最も好ましい。
【0042】
第2成分が重合体(B)である場合の重量平均分子量は、1万以上500万以下が好ましく、5万以上200万以下がより好ましく、10万以上100万以下がさらに好ましい。このような重量平均分子量であると、本発明の組成物中の第1成分および第2成分の良好な分散性、ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の良好なパターニング性および良好な導電性の観点から好ましい。
【0043】
1−3.第3成分:(メタ)アクリロイルを有する化合物
本発明の塗膜形成用組成物は、第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物を含有する。第3成分は、露光することで重合し硬化する。そのため、本発明の組成物から得られる塗膜に光エネルギーを照射する際に、露光部と非露光部を設けることにより、露光部が硬化して現像後も残存する一方で、未露光部分が硬化することなく現像により除去されて、塗膜にパターンが形成される。第3成分は、第1成分の組成物中における分散性を妨げることなく、かつ該組成物から得られる塗膜中で本発明の組成物の第1成分が形成するネットワークを破壊することなく、該機能を発揮すると考えられる。また、第3成分が光硬化した膜は、光線透過率が良好である。
【0044】
ここで、(メタ)アクリロイルを有する化合物とは、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを有する化合物をいう。
【0045】
(メタ)アクリロイルを有する化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
【0046】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロイロキシネオペンチルグリコール]アジペート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]スルホン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグルセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイロキシエチル]イソシアヌレート、(メタ)アクリロイル化イソシアヌレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、第3成分の(メタ)アクリロイルを有する化合物のさらなる具体例として、一般式(M−1)から(M−3)で表わされる化合物を挙げることができる。
【化3】

【0047】
式中、R2は、独立に、水素またはメチルであり、互いに同一でも異なっていてもよい。Zは、ヒドロキシルを有する炭素数1から10のアルキル、または、基中の−CH2−が−O−で置き換えられていてもよい炭素数1から10のアルキルもしくはアルケニルである。中でも、本発明の組成物中の第3成分の良好な分散性と該組成物から得られる塗膜の良好なパターニング性の観点からヒドロキシルを有する炭素数1から10の直鎖アルキルが好ましい。Aは、独立に、水素、アクリロイル、メタクリロイル、または末端に(メタ)アクリロイルを有し基中の−CH2−が−O−で置き換えられていてもよい炭素数1から10のアルキルもしくはアルケニルであり、互いに同一でも異なっていてもよい。Aのうち少なくとも1つはアクリロイルまたはメタクリロイルを有する置換基である。
【0048】
(メタ)アクリロイルを有する化合物は、好ましくは2個以上6個以下の(メタ)アクリロイルを有する。(メタ)アクリロイルの数が上記範囲にあると、良好なパターニングの観点から好ましい。
これらの(メタ)アクリロイルを有する化合物は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0049】
1−4.第4成分:溶媒
本発明の塗膜形成用組成物は、第4成分として溶媒を含有する。第4成分は、本発明の組成物中の他の成分を分散させるとともに、本発明の組成物の基板への塗布を容易にする。
溶媒の例としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素系溶剤および芳香族系溶剤が挙げられる。組成物中の各成分を良好に分散する観点から、水、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチルラクテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジ−1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましく、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルがより好ましく、1−メトキシ−2−プロパノールが特に好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
1−5.第5成分:光重合開始剤
本発明の塗膜形成用組成物は、第5成分として光重合開始剤を含有する。第5成分は、光の照射を受けて、第3成分の(メタ)アクリロイルを有する化合物の重合を開始する。
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4'−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907;商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下「IRGACURE 907」と記すことがある)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369;商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下「IRGACURE 369」と記すことがある)、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、
【0051】
3,4,4'−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2',4'−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2'−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4'−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2'−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4'−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'−ジ(メトキシカルボニル)−4,4'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、
【0052】
3,4'−ジ(メトキシカルボニル)−4,3'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4'−ジ(メトキシカルボニル)−3,3'−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオフェニル)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE01;商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下「OXE01」と記すことがある)等が挙げられ、本発明の組成物中での良好な分散性および良好な光硬化性の観点から、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1がより好ましい。
【0053】
1−6.任意成分
本発明の塗膜形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。
例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のポリアクリロイル化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリエステルナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル、ノボラック等の高共役性ポリマー、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ、ポリプロピレン、ポリメチルペンタン、環式オレフィン等のポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、ヒドロキシプロピルメチル セルロース(HPMC)、ニトロセルロース等のセルロース類、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマー等のバインダーを含んでいてもよい。
【0054】
また、添加剤成分として、ベンゾトリアゾール等の腐食防止剤、2−ヒドロキシメチルセルロース等の密着促進剤、商品名F―472SF(DIC(株)製)等の界面活性剤、粘度調整剤を含んでいてもよい。
【0055】
1−7.塗膜形成用組成物の組成および物性
本発明の塗膜形成用組成物における各成分の含有量は、組成物中の各成分の良好な分散性ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の良好なパターニング性、高い導電性および良好な光学特性の観点から、塗膜形成用組成物総重量に対して、第1成分が0.05重量%以上2.0重量%以下の量であり、第2成分が0.05重量%以上2.0重量%以下の量であり、第3成分が0.05重量%以上2.0重量%以下の量であり、第4成分が93.5重量%以上99.845重量%以下の量であり、第5成分が0.005重量%以上0.5重量%以下の量であることが好ましく、第1成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量であり、第2成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量であり、第3成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量であり、第4成分が96.7重量%以上99.69重量%以下の量であり、第5成分が0.01重量%以上0.3重量%以下の量であることがより好ましい。
【0056】
本発明の塗膜形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。
本発明の塗膜形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.2mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、0.2mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
【0057】
本発明の塗膜形成用組成物は、組成物中で感光性を有する成分および成膜性を有する成分を含む全ての成分が第1成分の分散を妨げることなく良好に分散されているために、パターニング性および第1成分が良好に分散されることによる導電性を兼ね備えた塗膜を形成することができる。
【0058】
[2.パターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法]
本発明の塗膜形成用組成物を用いて、パターニングされた透明導電膜を有する基板を製造することができる。該製造方法は、以下の工程を含む。
(工程1)基板に上記組成物を塗布した後、溶媒を除去して、基板上に塗膜を形成する工程、
(工程2)工程1で得られた塗膜に、パターン情報を有するフォトマスクを通して光エネルギーを照射する工程、および
(工程3)工程2を経た塗膜を、現像液によって現像する工程。
【0059】
2−1.工程1
工程1においては、基板に上記組成物を塗布した後、溶媒を除去して、基板上に感光性および導電性を有する塗膜を形成する。
基板としては、堅くてもよく、曲がり易くてもよい。また、着色されていてもよい。基板の材料としては、たとえばガラス、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリロイル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の材料が挙げられる。これらは、高い光線透過率と低いヘイズ値を有することが好ましい。基板には、更に、TFT素子等の回路が形成されていてもよく、カラーフィルター等の機能性材料が形成されていてもよい。また基板は多数積層されていてもよい。
【0060】
本発明の組成物の基板への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等の一般的な方法を用いることができる。膜厚の均一性および生産性の観点から、スピンコート法とスリットコート法が好ましく、スリットコート法がより好ましい。
【0061】
塗布量は、用途により求められる膜厚に対して、決定される。
膜厚は、用途に基づいて選択される。所望の膜厚は、組成物の塗布量および塗布方法の条件を調整することにより得られる。膜厚は、低い表面抵抗の観点からは厚いほど良く、段差による表示不良の発生を抑制する観点からは薄いほど良いことから、これらを総合的に勘案すると、5nm〜500nmの膜厚が好ましく、5nm〜200nmの膜厚がより好ましく、5nm〜100nmの膜厚がさらに好ましい。
【0062】
溶媒の除去は、必要に応じて塗布物を加熱処理して行う。加熱温度としては、溶媒の種類によっても異なるが、通常40℃〜溶媒の沸点+50℃に加熱する。
得られた膜の表面抵抗および全光線透過率は、膜厚すなわち組成物の塗布量および塗布方法の条件の調整、本発明の塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度の調整により、所望の値とすることができる。
【0063】
一般に膜厚が厚いほど、表面抵抗および全光線透過率は低くなる。また、塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度が高いほど、表面抵抗および全光線透過率は低くなる。
上記のようにして得られた塗膜は、表面抵抗が5Ω/□以上1000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることが好ましく、表面抵抗が10Ω/□以上200Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が90%以上であることがより好ましい。
なお、本発明において、表面抵抗は、特に断らない限り、後述する非接触式測定法による測定値をいう。
【0064】
2−2.工程2
工程2においては、工程1で得られた塗膜に、パターン情報を有するフォトマスクを通して光エネルギーを照射する。工程1で得られた塗膜は、本発明の塗膜形成用組成物における第3成分である(メタ)アクリロイルを有する化合物および第5成分である光重合開始剤を含有するため、光エネルギーの照射により、重合が生じ、露光部分が硬化する。その一方、フォトマスクの使用により露光しなかった部分は、未硬化の状態で残される。
露光において、光エネルギー源としては、光源超高圧水銀ランプ等から生じる紫外線光が挙げられ、照射量としては、100〜1000mJ/cm2が好ましく、300〜600mJ/cm2がより好ましい。
【0065】
2−3.工程3
工程3においては、工程2を経た塗膜を現像液によって現像する。現像により、工程2における未露光部分は除去され、露光部分が残留することになり、パターニングされた透明導電膜を有する基板を得ることができる。パターニングとして残された部分は、導電領域となり、現像により除去された部分は非導電領域となる。導電領域は通常表面抵抗が103Ω/□以下であり、非導電領域は通常表面抵抗が107Ω/□以上である。
【0066】
現像液は、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液のいずれを用いてもよい。導電領域の高い導電性、良好な解像性および矩形性の観点から、水またはアルカリ性水溶液が好ましく、水またはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液がより好ましく、水がさらに好ましい。
【0067】
現像方法としては、工程2で得られた膜を現像液中に静置状態または撹拌状態で浸漬する方法、または現像液を膜にシャワーする方法が挙げられる。
【0068】
2−4.任意の工程
上記(工程1)から(工程3)の各々の工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理および加熱処理等が挙げられる。また、水に浸漬する工程を入れてもよい。このように水に浸漬することは、低い表面抵抗の観点から好ましい。
【0069】
プラズマ表面処理は、塗膜形成用組成物または現像液に対する塗れ性を上げるために用いることができる。例えば、酸素プラズマを用いて、100ワット、90秒、酸素流量50sccm(sccm;standard cc / min)、圧力50パスカルの条件で、基板または塗膜形成用組成物の表面を処理することができる。超音波処理は、溶液中に基板を浸漬し、例えば、200kHz程度の超音波を伝播させることによって、基板上に物理的に付着した微粒子等を取り除くことができる。オゾン処理は、基板に空気を吹き付けると同時に紫外光を照射し、紫外光によって発生したオゾンの酸化力によって基板上の付着物等を効果的に取り除くことができる。加熱処理は、取り除きたい化合物を揮発させることによって基板中の化合物を取り除く方法である。加熱温度は、取り除きたい化合物の沸点を考慮して適宜設定する。例えば、取り除きたい化合物が水である場合は、50℃〜80℃程度の範囲で加熱する。
【0070】
上記製造方法により得られたパターニングされた透明導電膜を有する基板の透明導電膜の導電領域の表面抵抗および全光線透過率は、表面抵抗が5Ω/□以上1000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることが好ましく、表面抵抗が10Ω/□以上200Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が90%以上であることがより好ましい。ここで、「全光線透過率」は入射光に対する透過光の割合であり、透過光は直接の透過成分と散乱成分からなる。光源はC光源であり、スペクトルはCIE輝度関数yである。また、膜厚は、用途により異なるが、5nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上80nm以下がさらに好ましい。
【0071】
このような表面抵抗および全光線透過率は、膜厚すなわち組成物の塗布量および塗布方法の条件の調整、本発明の塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度の調整により、所望の値とすることができる。
上記パターニングされた透明導電膜の導電領域は、さらにその表面に絶縁膜、保護機能を有するオーバーコート、または配向機能を有するポリイミド層を設けることができる。
【0072】
2−5.パターニングされた透明導電膜を有する基板の用途
パターニングされた透明導電膜を有する基板は、その導電性および光学特性から、デバイス素子に用いられる。
デバイス素子としては、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、タッチパネル素子、太陽電池素子が挙げられる。
【0073】
液晶表示素子に用いられる透明導電膜は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板側に形成される画素電極およびカラーフィルター基板側に形成される共通電極等がある。LCDの表示モードには、TN(Twisted Nematic)、MVA(Multi Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment)、IPS(In Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、PSA(Polymer Subtained Alignment)、OCB(Optically Compensated Bend)等がある。また、これらの各々のモードに対して、透過型、反射型および半透過型がある。LCDの画素電極は、画素毎にパターニングされており、TFTのドレイン電極と電気的に接合されている。その他、例えば、IPSモードは、櫛歯電極構造を有しており、PVAモードは、画素内にスリットが入った構造を有している。
【0074】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる透明導電膜は、パッシブタイプの駆動方式の導電領域として用いられる場合は、通常基板上にストライプ状にパターニングされる。ストライプ状の導電領域(陽極)とこれに直交して配置されたストライプ状の導電領域(陰極)間に直流電圧を印加することによってマトリックス状の画素を発光させて表示する。アクティブタイプの駆動方式の電極として用いられる場合は、TFTアレイ基板側に画素毎にパターニングされる。
【0075】
タッチパネル素子は、その検出方法によって抵抗膜式や静電容量方式等があり、いずれも透明電極が用いられる。静電容量方式に用いられる透明電極はパターニングされる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各評価項目における測定方法または評価方法は下記方法に従った。
(1)〜(3)は、ことわりのない限り、評価試料の導電領域について測定した。
【0077】
(1)表面抵抗の測定
評価方法は、四探針法と非接触式測定法の2種類用いた。
四探針測定法(JIS K 7194に準拠)には、Loresta−GP MCP−T610(三菱化学製)を用いた。測定に用いたプローブは、5mmのピン間距離と2mmのピン先の直径を有する専用のESP型プローブである。このプローブを評価試料に接触させて、外側2端子に一定の電流を流したときの内側2端子の電位差を測定し、この測定によって得られた抵抗に補正係数を乗ずることによって、表面抵抗(Ω/□)を算出した。このようにして得られた表面抵抗値と導電性膜の厚みにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。
【0078】
導電性膜上に少なくとも1層以上の絶縁膜を形成した基板における導電性膜の表面抵抗、および本明細書に示されるような金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが絶縁体中に分散した導電性膜の表面抵抗は、四探針測定法では安定して測定できない場合がある。この場合は渦電流を用いた非接触式の表面抵抗測定法を用いた。非接触式測定法としては、717B−H(DELCOM製)を用いて、表面抵抗(Ω/□)を測定した。この場合も得られた表面抵抗値と導電性膜の厚みにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。なお、四探針法と非接触式測定法の測定値はほぼ一致する。
【0079】
(2)全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定
全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定には、ヘイズガードプラス(BYKガードナー(株)製)を用いた。リファレンスは空気とした。
【0080】
(3)膜厚
膜厚の測定には、段差計P−16+(KLA−Tencor製)を用いた。
【0081】
膜厚の測定は、「ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式粗さ計による測定方法(JIS−R−1636)に準じた。パターニングされていない膜の膜厚を測定する場合は、評価試料の膜の一部を削り取り、その境界面の段差を測定した。
【0082】
(4)パターニング性の評価
パターニング性の評価は、以下の方法で行った。得られた評価試料のパターニング性は、未露光領域、露光領域および境界部のエッジ領域からなる表面を、倍率50倍から1000倍の偏光顕微鏡(NIKON製)で観察することによって評価した。具体的には、未露光領域における金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブおよびバインダーが完全に除去されている場合、露光領域において、金属ナノワイヤが均一に分散した塗膜が残る場合、ならびにエッジ領域において境界が明瞭である場合のすべてに該当する場合に、良好なパターニングであると判断した。
【0083】
(5)組成物の粘度の測定
実施例で用いた組成物の粘度はTV−22L形粘度計(東機産業(株)製)を用いて、測定した。
【0084】
(6)重合体の分子量の測定
実施例で用いた重合体の重量平均分子量(Mw)は、重量平均分子量が645〜132900のポリスチレンのスタンダード(VARIAN(株)製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、PLgel MIXED−D(VARIAN(株)製)カラムを用い、移動相としてTHFを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0085】
[評価試料の作成]
実施例で得られた塗膜形成用組成物から、以下のようにして評価試料を得た。
(1)厚さ0.7mmのガラス基板表面(Eagle2000 コーニング(株)製)をUVオゾン処理によって洗浄した。UVオゾン源は、低圧水銀灯(254ナノメートル)であり、照射エネルギーは1000mJ/cm2である。
(2)スピンコーター(MS−A150 ミカサ(株)製)にセットされた前記基板上に実施例で得られた塗膜形成用組成物を、1ml滴下し、500rpmの条件でスピンコートを行った。
(3)ホットステージ上で前記基板を50℃で90秒間の条件で予備焼成を行い、その後、80℃で90秒間の条件で本焼成を行い、20nmから60nmの透明導電膜を得た。
(4)露光機(型式 HB−20201CL、光源超高圧水銀ランプ、型式 USH−2004TO、ウシオ電機(株)製)を用いて、Cr蒸着のフォトマスクを介して、前記(3)で得た塗膜上に、上方から500mJ/cm2の条件でUV光を照射した。
(5)UV照射後の塗膜を超純水に30秒間浸漬することによって未露光部を除去しパターニングを行った。
(6)エアガンを用いて塗膜および基板に乾燥空気を吹き付けて乾燥させた。
【0086】
実施例4においては、上記(5)において、超純水の代わりにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38%水溶液を用いてパターニングを行った後、基板を超純水で10秒間洗浄した以外は、上記と同様に評価試料を作成した。
【0087】
なお、以下の実施例において塗膜形成用組成物を構成する材料の商品名、製造元は以下の通りである。Mwは重量平均分子量である。
ポリ(N−ビニルピロリドン):「ポリビニルピロリドンK90」、東京化成工業(株)製、Mw630,000、
ポリ(1−モルホリノ−2−プロペン−1−オン):「アクリロイルモルホリン(興人(株)製)」を重合して得られた重合体(Mw20,000)を用いた、
2−ヒドロキシプロパン−1,2−ジイルビス(2−メタクリレート):「ライトエステルG−101P」、共栄社化学(株)製、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート:「ライトエステル1,6HXA」、共栄社化学(株)製、
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート:「SR213」、サートマー(株)製、
トリス[(メタ)アクリロイロキシエチル]イソシアヌレート:「アロニックスM315」、東亜合成(株)製、
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1:「イルガキュア369」、チバスペシャリティケミカル(株)製、
1−メトキシ−2−プロパノール:関東化学(株)製、
ポリ(メチルメタクリレート):メタクリル酸メチル(関東化学(株)製)を重合して得られた重合体(Mw10,000)を用いた、
ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルメタクリレート):「FA−712HM(日立化成(株)製)」を重合して得られた重合体(Mw2,100)を用いた、
ポリ(テトラヒドロフルフリルメタクリレート):「SR−203(サートマー(株)製)」を重合して得られた重合体(Mw29,000)を用いた、
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:「TMA−508」、関東化学(株)製。
【0088】
<PGME分散の銀ナノワイヤの合成>
ポリ(N−ビニルピロリドン)(製品名ポリビニルピロリドンK30、Mw40000、東京化成工業(株)製)4.171gとテトラブチルアンモニウムクロリド(製品名テトラブチルアンモニウムクロリド、和光純薬工業(株)製)70mgと硝酸銀(製品名硝酸銀、和光純薬工業(株)製)4.254gとエチレングリコール(製品名硝酸銀、和光純薬工業(株)製)500mLを1000mLのフラスコに入れ、15分間撹拌し均一に溶解した後、オイルバス中110℃で16時間撹拌することで、銀ナノワイヤを含有した反応液を得た。
次いで、反応液を室温に戻した後、反応液に水を注ぎ入れ生じた沈殿物を濾過し乾燥させた。この操作により反応液中の未反応の硝酸銀、鋳型として用いたポリ(N−ビニルピロリドン)やテトラブチルアンモニウムクロリド、エチレングリコール及び粒径の小さな銀のナノ粒子を除去した。濾紙上の沈殿物を1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に加えることで任意の濃度の銀ナノワイヤ分散PGME溶液を得た。銀ナノワイヤの短軸、長軸およびアスペクト比の平均値はそれぞれ68nm、18μm、265であった。
【0089】
[実施例1]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物の粘度、評価試料についての表面抵抗、全光線透過率およびヘイズ、膜厚ならびにパターニング性を測定または評価した結果を表1に示す。
【0090】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は、2.7mPa・sであった。
得られた評価試料の写真(倍率50倍)を図1に示す。なお、各図面中、境界より上部が露光領域、境界より下部が未露光領域である。未露光領域においては金属ナノワイヤおよびポリ(N−ビニルピロリドン)が全く残っておらず、露光領域においては金属ナノワイヤが均一に分散した塗膜が残り、また、未露光領域と露光領域の境界は明瞭であり、パターニング性が良好であることがわかる。また、得られた評価試料の露光領域における導電性領域の表面抵抗を、非接触式測定法を用いて測定した結果、151Ω / □と高い導電性を示した。露光領域における導電性領域の全光線透過率およびヘイズは、それぞれ、91.7%および1.07%となり、良好な光学特性を示した。膜厚は22ナノメートルであった。
【0091】
[実施例2]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0092】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は、3.0mPa・sであった。
得られた評価試料の写真(倍率50倍)を図2に示す。未露光領域においては金属ナノワイヤおよびポリ(N−ビニルピロリドン)が全く残っておらず、露光領域においては金属ナノワイヤが均一に分散した塗膜が残り、また、未露光領域と露光領域の境界は明瞭であるため、パターニング性は良好であることがわかる。また、得られた評価試料の導電領域は、非接触式測定法で測定した表面抵抗が138Ω / □と高い導電性を示し、全光線透過率が91.7%、ヘイズが1.01%と良好な光学特性を示した。膜厚は24ナノメートルであった。
【0093】
[実施例3]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0094】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は2.9mPa・sであった。
得られた評価試料の写真(倍率50倍)を図3に示す。未露光領域においては金属ナノワイヤおよびポリ(N−ビニルピロリドン)が全く残っておらず、露光領域においては金属ナノワイヤが均一に分散した塗膜が残り、また、未露光領域と露光領域の境界は明瞭であるため、パターニング性は良好であることがわかる。また、得られた評価試料の導電領域は、非接触式測定法で測定した表面抵抗が130Ω / □と高い導電性を示し、全光線透過率が91.6%、ヘイズが1.17%と良好な光学特性を示した。膜厚は26ナノメートルであった。
【0095】
[実施例4]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0096】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は2.8mPa・sであった。
得られた評価試料の写真(倍率50倍)を図4に示す。未露光領域においては金属ナノワイヤおよびポリ(N−ビニルピロリドン)が全く残っておらず、露光領域においては金属ナノワイヤが均一に分散した塗膜が残り、また、未露光領域と露光領域の境界は明瞭であるため、パターニング性は良好であることがわかる。また、得られた評価試料の導電領域は、非接触式測定法で測定した表面抵抗が74Ω / □と高い導電性を示し、全光線透過率が92.1%、ヘイズが2.00%と良好な光学特性を示した。膜厚は23ナノメートルであった。
【0097】
[実施例5]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0098】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は3.1mPa・sであった。
得られた評価試料は、パターニングは良好であった。また、得られた評価試料の導電領域は、非接触式測定法で測定した表面抵抗が197Ω / □であり、全光線透過率が90.6%、ヘイズが1.72%と良好な光学特性を示した。膜厚は26ナノメートルであった。
【0099】
[実施例6]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0100】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であった。組成物の粘度は2.6mPa・sであった。
【0101】
得られた評価試料は、パターニングは良好であった。また、得られた評価試料の導電領域は、非接触式測定法で測定した表面抵抗が196Ω / □であり、全光線透過率が90.7%、ヘイズが1.66%と良好な光学特性を示した。膜厚は28ナノメートルであった。
【0102】
[比較例1]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0103】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびポリ(メチルメタクリレート)(pMMA)が残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。
【0104】
[比較例2]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0105】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。
【0106】
[比較例3]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0107】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。
【0108】
[比較例4]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0109】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。また、露光領域において、銀ナノワイヤのネットワーク性が悪く、導電性を示さなかった。
【0110】
[比較例5]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0111】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。また、露光領域において、銀ナノワイヤのネットワーク性が悪く、導電性を示さなかった。
【0112】
[比較例6]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0113】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。また、露光領域において、銀ナノワイヤのネットワーク性が悪く、導電性を示さなかった。
【0114】
[比較例7]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0115】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。
【0116】
[比較例8]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0117】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニング性は不良であった。
【0118】
[比較例9]
表1に示す組成の塗膜形成用組成物を調製し、該組成物を用いて上記方法にて評価試料を作成した。組成物および評価試料の物性について、実施例1と同様に測定または評価した結果を表1に示す。
【0119】
得られた組成物は、組成物中で銀ナノワイヤが凝集することなく均一に分散しており分散性が良好であったが、得られた評価試料は、未露光領域において、銀ナノワイヤおよびpMMAが残っており、また未露光領域と露光領域の境界は不明瞭であり、パターニングは不良であった。
【0120】
表中の略号は、以下の通りである。
AgNW:銀ナノワイヤ、表に記載の濃度は純分の濃度である。
PVP:ポリ(N−ビニルピロリドン)
pACMO:ポリ(1−モルホリノ−2−プロペン−1−オン)
G101P:2−ヒドロキシプロパン−1,2−ジイルビス(2−メタクリレート)
16HXA:1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート
SR213:1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート
M315:トリス[(メタ)アクリロイロキシエチル]イソシアヌレート
PGME:1−メトキシ−2−プロパノール
Irg369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1
pMMA:ポリ(メチルメタクリレート)
pTMPMA:ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジルメタクリレート)
pTHFMA:ポリ(テトラヒドロフルフリルメタクリレート)2.38%水溶液
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド。
【0121】
【表1】

【0122】

【表2】

【0123】
以上のとおり、本実施例で得られた組成物は、銀ナノワイヤの分散が良好であった。また、本実施例で得られた組成物は、良好な導電性と光学特性を有し、パターニングが可能な膜を1回の塗布工程によって基板上に形成可能であるため、パターニングされた導電性を有する膜の形成において、従来の方法と比較して大幅な工程削減が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分としてアミドを有する化合物、第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物、第4成分として溶媒、および第5成分として光重合開始剤を含有する塗膜形成用組成物。
【請求項2】
第2成分が一般式(B−1)〜(B−8)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重量平均分子量1万以上500万以下の重合体である請求項1に記載の塗膜形成用組成物。
【化1】

(式(B−1)〜(B−8)中、R1は、独立に水素、ヒドロキシル、または基中の−CH2−が−O−で置き換えられていてもよい炭素数1から10のアルキルもしくはアルケニルであって、互いに同一でも異なっていてもよい。Xはオキシメチレン、オキシエチレン、アミノメチレンまたはアミノエチレンである。mは1から10の整数である。)
【請求項3】
第2成分が重量平均分子量10万以上100万以下の重合体である請求項2に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項4】
第4成分が1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項5】
第3成分が(メタ)アクリロイルを2個以上6個以下有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項6】
第1成分の短軸の長さの平均が5nm以上100nm以下であり、かつ長軸の長さの平均が2μm以上50μm以下であり、さらにアスペクト比が100以上である請求項1〜5のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項7】
塗膜形成用組成物総重量に対して、第1成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第2成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第3成分が0.1重量%以上1.0重量%以下の量で、第4成分が96.7重量%以上99.69重量%以下の量で、第5成分が0.01重量%以上0.3重量%以下の量で含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項8】
25℃における粘度が0.2mPa・s以上10mPa・s以下である請求項1〜7のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項9】
第2成分がポリ(N−ビニルピロリドン)である請求項2〜8のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項10】
第4成分が1−メトキシ−2−プロパノールである請求項4〜9のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項11】
第1成分が銀のナノワイヤである請求項1〜10のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項12】
感光性および導電性を有する塗膜の形成に用いられる請求項1〜11のいずれかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項13】
(工程1)基板に請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を塗布した後、溶媒を除去して、基板上に塗膜を形成する工程、
(工程2)工程1で得られた塗膜に、パターン情報を有するフォトマスクを通して光エネルギーを照射する工程、および
(工程3)工程2を経た塗膜を、現像液によって現像する工程
を含むパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法。
【請求項14】
現像液が、水またはアルカリ性水溶液である請求項13に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板の製造方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の製造方法で製造されたパターニングされた透明導電膜を有する基板。
【請求項16】
導電領域の膜厚が5nm以上100nm以下であって、導電領域の表面抵抗が10Ω/□以上200Ω/□以下の範囲にあり、かつ導電領域の全光線透過率が90%以上である請求項15に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板。
【請求項17】
請求項15または16に記載のパターニングされた透明導電膜を有する基板を用いたデバイス素子。
【請求項18】
液晶表示素子である請求項17に記載のデバイス素子。
【請求項19】
有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項17に記載のデバイス素子。
【請求項20】
タッチパネル素子である請求項17に記載のデバイス素子。
【請求項21】
太陽電池素子である請求項17に記載のデバイス素子。
【請求項22】
第1成分として金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ、第2成分として光重合開始剤、および第3成分として(メタ)アクリロイルを有する化合物を含有する塗膜形成用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9383(P2012−9383A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146338(P2010−146338)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(508041046)カンブリオス テクノロジーズ コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】