説明

塗装建築板及び塗装建築板の塗装状態判定方法

【課題】ノズルヘッドからのインクの噴射のタイミングのずれによるカラー塗装の不良を容易に且つ迅速に検出することができ、カラー塗装不良が多発することを防ぐことができる塗装建築板を提供する。
【解決手段】基板1の一方の端縁に係合片を設けると共に、基板1同士の接続時に他の基板1の係合片の背面側に係合される受け係合片3を基板1の他方の端縁に突設し、異なる色のインクを噴射する複数のノズルヘッド9を一列に配置して形成されるインクジェットプリンター13に、基板1をノズルヘッド9の配列方向に沿って送ることによって、各ノズルヘッド9から噴射される複数色のインクで基板1の表面にカラー塗装を施した塗装建築板に関する。受け係合片3の表面に、このカラー塗装と同時に、全てのノズルヘッド9から噴射される複数色のインクで塗装状態確認用のマーク5を塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターでカラー塗装を施した塗装建築板、及びカラー塗装の塗装状態の判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装材などとして使用される塗装建築板は、窯業系等の基板の表面に塗装を施して作製されている。そして基板に塗装を施すにあたっては、従来からスプレー塗装機、ロールコーター塗装機、フローコーター塗装機などを用いて塗料を塗布することによって行なうのが一般的である。しかしこのようなスプレー、ロールコート、フローコートなどでは、複雑な柄模様に塗装を施すことが難しく、特に外装材のように不規則な凹凸を設けた基板に塗装を施すことは困難である。一方、凸版や凹版などの印刷ロールを用いて塗装することも行なわれているが、この場合には同じ柄模様が繰り返して表れる塗装になって、単調な模様になり易く、また塗装する柄模様を変更する場合には印刷ロールを取り替える必要があって、基板ごとに異なる模様を塗装することはできない。
【0003】
そこで最近、インクジェットプリンターを塗装機として用い、基板を送りながら、このインクジェットプリンターのノズルヘッドからインクを噴射させることによって、基板の表面をインクジェット印刷で塗装することが提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
インクジェットプリンターではノズルヘッドから噴射させたインクで、基板の表面に対して非接触で印刷して塗装を行なうことができるものであり、またノズルヘッドからのインクの噴射を制御することによって、基板の任意の位置に任意の柄模様となるようにインクを噴射することができるものであり、表面に凹凸を有する基板であっても複雑な柄模様で印刷して塗装を行なうことができるものである。
【0005】
ここで、基板1の表面にカラー塗装する場合、図2に示すようなインクジェットプリンター13が用いられている。インクジェットプリンター13についての詳細構成は後述するが、インクジェットプリンター13はノズルヘッド9とノズルヘッド9にインクを供給するインク供給タンク11を備えており、その下方に送りコンベア14が配置してある。ノズルヘッド9はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴出する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成してあり、各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kは送りコンベア14に沿って一列に配列してある。
【0006】
そして、基板1を送りコンベア14で送ってノズルヘッド9y,9c,9m,9kの下を順に通過させ、この際に、制御システムで制御しながら各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からインクを噴射させ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクのドットを基板1の表面に塗着させることによって、基板1に塗装を施すことができるものである。このように複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射される複数の色のインクのドットをマトリクス状に集合させ、集合した各色の混合色として視覚上認識される色を発色させることができるものであり、各色のドットの個数や配置を変えることによって、任意の色を発色させることができ、カラー塗装を行なうことができるものである。
【0007】
上記のように、インクジェットプリンター13の一列に配列される複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kに沿って基板1を送ってカラー塗装する場合、基板1の送りに対してタイミングを合わせて各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kからインクを噴射するように制御し、基板1の表面の所定の位置に各色のインクのドットが塗着されるようにする必要がある。このため、特許文献1にみられるように、インクジェットプリンター13に送られてくる基板1をセンサーで検出し、この検出信号に基づいて各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kからのインクの噴射のタイミングを制御するようにしている。
【特許文献1】特開2005−74686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにインクジェットプリンター13に送られてくる基板1に合ったタイミングで各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kからのインクの噴射が制御されていれば、所望の色でカラー塗装を行なうことができる。
【0009】
しかし、基板1の送り方向に沿って複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kを配置して形成されるインクジェットプリンター13の場合、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kからの噴射のタイミングがずれることなく正確に制御されていないと、所望の色を発色させることができず、また色が滲むなどして、カラー塗装の精度が低下することになる。このため、カラー塗装に不良が多発するおそれがあるという問題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ノズルヘッドからのインクの噴射のタイミングのずれによるカラー塗装の不良を容易に且つ迅速に検出することができ、カラー塗装不良が多発することを防ぐことができる塗装建築板及び塗装建築板の塗装状態判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る塗装建築板は、基板1の一方の端縁に係合片2を設けると共に、基板1同士の接続時に他の基板1の係合片2の背面側に係合される受け係合片3を基板1の他方の端縁に突設し、異なる色のインクを噴射する複数のノズルヘッド9を一列に配置して形成されるインクジェットプリンター13に、基板1をノズルヘッド9の配列方向に沿って送ることによって、各ノズルヘッド9から噴射される複数色のインクで基板1の表面にカラー塗装を施した塗装建築板であって、受け係合片3の表面に、このカラー塗装と同時に、全てのノズルヘッド9から噴射される複数色のインクで塗装状態確認用のマーク5が塗装されていることを特徴とするものである。
【0012】
塗装状態確認用マーク5は、全てのノズルヘッド9から噴射される複数色のインクのドットで形成されているものであり、全てのノズルヘッド9の噴射タイミングが正確なときに塗装される塗装状態確認用マーク5に対して、一部でもノズルヘッド9の噴射タイミングがずれると、塗装状態確認用マーク5を形成するドットの配置が変わることによって、異なる色に発色されたり、マーク形状が変わったりするものであって、塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、ノズルヘッド9に噴射タイミングのずれが発生しているか否かの判定を迅速且つ容易に行なうことができるものである。しかも受け係合片3は、塗装建築板を家屋の外壁などに施工するにあたって、基板1同士を接続する際に、他の基板1の係合片2に隠れて見えなくなるものであり、受け係合片3に塗装した塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【0013】
また請求項2の発明は、請求項1において、塗装状態確認用マーク5は、受け係合片3に沿った複数個所に所定間隔で形成されており、基板1を切断する際の切断位置を示すマークを兼用していることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、塗装状態確認用マーク5を利用して、基板1の切断を行なうことができるものである。
【0015】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、基板1の表面に柄模様4がカラー塗装されており、塗装状態確認用マーク5は、柄模様4と所定の相対的な位置関係で形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、塗装状態確認用マーク5の塗装位置などに基づいて、基板1に対する柄模様4の塗装位置を確認することができ、柄模様4の塗装位置ずれの発生の有無を容易に且つ迅速に判定することができるものである。
【0017】
本発明の請求項4に係る塗装建築板の塗装状態判定方法は、基板1の表面にカラー塗装して請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片3に塗装された塗装状態確認用マーク5に基づいて、基板1に対する各ノズルヘッド9からのインクの噴射のタイミングのずれの有無を検出することを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、塗装状態確認用マーク5の発色や形状を視覚観察することによって、ノズルヘッド9に噴射タイミングのずれが発生しているか否かの判定を迅速且つ容易に行なうことができるものであり、カラー塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
【0019】
また請求項5の発明は、基板1の表面にカラー塗装して請求項3に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片3に塗装された塗装状態確認用マーク5の位置に基づいて、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれの有無を検出することを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば全てのノズルヘッド9の噴射タイミングが正確なときに塗装される塗装状態確認用マーク5に対して、一部でもノズルヘッド9の噴射タイミングがずれると、塗装状態確認用マーク5を形成するドットの配置が変わることによって、異なる色に発色されたり、マーク形状が変わったりするように塗装状態確認用マーク5が塗装されるものであり、塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、ノズルヘッド9に噴射タイミングのずれが発生しているか否かの判定を迅速且つ容易に行なうことができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。しかも受け係合片3は、塗装建築板を家屋の外壁などに施工するにあたって、基板1同士を接続する際に、他の基板1の係合片2に隠れて見えなくなるものであって、受け係合片3に塗装した塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
基板1は例えば窯業系の矩形の板として形成されるものであり、長手側での一方の側端に係合片2が、他方の側端に受け係合片3がそれぞれ全長に亘って一体に突設してある。この基板1から作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、複数の基板1を上下あるいは左右に並べて接続するが、図9に示すように、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させて接続を行なうものであり、従って受け係合片3は他の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。また図1の実施の形態では、基板1の表面(前面)には多数の凸部7aと、凸部7a間の凹部7bとからなる凹凸7が模様形状で形成してある。
【0024】
次に、この基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様4をカラー塗装する方法について説明する。インクジェットプリンター13は、図2に概略構成を示すように、ノズルヘッド9、ノズルヘッド9にインクを供給するインク供給タンク11、ノズルヘッド9からのインクの噴射を制御する印刷制御システム12などから形成されるものであり、インクジェットプリンター13は基板1を水平姿勢で送る送りコンベア14の上方に配置してある。
【0025】
ノズルヘッド9はインクジェットプリンター13の下端に設けられているものであり、建築板1の送り方向と垂直な方向に長いラインヘッドとして形成してある。ノズルヘッド9の下面には、ノズルヘッド9の長手方向に沿って多数の噴射ノズル10が設けてあり、高密度のdpiで塗装を行なうことができるようにしてある。ノズルヘッド9はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴出する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成してあり、フルカラー印刷によるカラー塗装を行なうことができるようにしてある。インク供給タンク11も同様に4種類のものからなるものであり、イエローのインクを供給するインク供給タンク11yはノズルヘッド9yに、シアンのインクを供給するインク供給タンク11cはノズルヘッド9cに、マゼンタのインクを供給するインク供給タンク11mはノズルヘッド9mに、ブラックのインクを供給するインク供給タンク11kはノズルヘッド9kにそれぞれ接続してある。そして各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kは基板1の送り方向に沿って配列してある。
【0026】
印刷制御システム12は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、印刷データ作成部、印刷制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。印刷データ作成部は、原画をスキャナ等して得た柄模様パターンのデータを入力して保存するものであり、印刷制御部は、塗装を行なう基板1に応じた柄模様パターンのデータを印刷データ作成部から取り出し、この柄模様パターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また噴射ノズル制御部はノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル10を制御するものである。各噴射ノズル10は例えばピエゾ制御方式により噴射を制御されるようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル10を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各インクの噴射と停止を個別に制御して、柄模様パターンに対応したフルカラー印刷による柄模様4のカラー塗装を行なうことができるものである。
【0027】
そして、基板1を送りコンベア14で送ってノズルヘッド9y,9c,9m,9kの下を順に通過させ、この際に、印刷制御システム12で上記のように制御しながらノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からインクを噴射させて、基板1の表面に塗着させることによって、基板1に柄模様4のカラー塗装を施すことができるものである。ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からのインクの噴射は、基板1の送り方向の先頭側の端縁がノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10の直下に達したときを基準にして開始されるように、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせる必要があるが、例えば、基板1の到達をセンサーなどで検知し、このセンサーによる検出信号が印刷制御システム12の噴射ノズル制御部に入力されると、検出信号が入力されてから所定時間後にノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からのインクの噴射が開始されるようにして、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせるようにしてある。
【0028】
上記のように基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様4をカラー塗装する際に、同時に、図1に示すように、基板1の受け係合片3に塗装状態確認用マーク5を塗装して形成するようにしてある。基板1は受け係合片3を設け端縁と直交する端縁を先頭にして送りコンベア14でインクジェットプリンター13に送られるものであり、柄模様4をカラー塗装する際に、同時に、並行して塗装状態確認用マーク5を塗装することができるものである。この塗装状態確認用マーク5は、インクジェットプリンター13が備える全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射される複数色のインクのドットによって形成されるようにしてある。また塗装状態確認用マーク5は例えば図1のように丸い点として形成することができるが、ラインや文字など、その形状は任意である。
【0029】
図3はインクのドットがマトリクス状に集合して形成される塗装状態確認用マーク5を模式的に示すものであり、ノズルヘッド9yから噴射されるイエローのインクのドットDy、ノズルヘッド9cから噴射されるシアンのインクのドットDc、ノズルヘッド9mから噴射されるマゼンタのインクのドットDm、ノズルヘッド9kから噴射されるブラックのインクのドットDkによって塗装状態確認用マーク5が形成されるようにしてある。図2の矢印は、基板1の送り方向を示す。
【0030】
ここで、送りコンベア14でインクジェットプリンター13に送られる基板1に対して、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングが正確に合っているときには、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射されるインクは正規の位置において受け係合片3の表面に塗着し、例えば図3(a)のように、基板1の送り方向で等間隔に配置されたドットDy、Dc,Dm,Dkで塗装状態確認用マーク5が形成されるようにしてある。
【0031】
一方、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち、例えばノズルヘッド9cの噴射タイミングが遅れるようにずれると、図3(b)のように、ノズルヘッド9y,9m,9kから噴射されるインクのドットDy、Dm,Dkは正規の位置において受け係合片3の表面に塗着するが、ノズルヘッド9cから噴射されるインクのドットDcは基板1の送り方向に対して後方にずれた位置で塗着される。また例えばノズルヘッド9cの噴射タイミングが早すぎるようにずれると、図3(c)のように、ノズルヘッド9y,9m,9kから噴射されるインクのドットDy、Dm,Dkは正規の位置において受け係合片3の表面に塗着するが、ノズルヘッド9cから噴射されるインクのドットDcは基板1の送り方向に対して前方にずれた位置で塗着される。さらに例えばノズルヘッド9kの噴射タイミングが遅れるようにずれると、図3(d)のように、ノズルヘッド9y,9c,9mから噴射されるインクのドットDy、Dc,Dmは正規の位置において受け係合片3の表面に塗着するが、ノズルヘッド9kから噴射されるインクのドットDcは基板1の送り方向に対して後方にずれた位置で塗着される。
【0032】
このように、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち一部の噴射タイミングがずれると、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングが正確なときに塗装される塗装状態確認用マーク5のドットDy、Dc,Dm,Dkの配置に対して、一部のドットDy、Dc,Dm,Dkの配置がずれることになる。このため、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングが正確なときに塗装される塗装状態確認用マーク5の発色に対して、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち一部の噴射タイミングがずれた状態で塗装される塗装状態確認用マーク5の発色が異なるものになる。
【0033】
従って、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングを正確に設定した状態で塗装した塗装状態確認用マーク5の色見本を作製しておき、上記のように基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様4をカラー塗装する際に同時に受け係合部片3に塗装した塗装状態確認用マーク5の色と、この色見本の色とを視覚観察して比較することによって、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングがずれているか否かを判定することができるものである。そして塗装状態確認用マーク5の視覚観察でノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングがずれているか否かの判定は迅速にかつ容易に行なうことができるので、インクジェットプリンター13で基板1にカラー塗装した直後に、塗装状態確認用マーク5を視覚検査することによって、直ちに噴射タイミングのずれの有無を判定することができ、噴射タイミングがずれていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、カラー塗装の不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
【0034】
また、塗装状態確認用マーク5を図4のように丸い点として塗装する場合、送りコンベア14でインクジェットプリンター13に送られる基板1に対して、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングが正確に合っているときには、図4(a)のように、真円形に塗装状態確認用マーク5が形成されるようにしてある。
【0035】
そしてノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち、一部の噴射タイミングが遅れるようにずれると、図4(b)のように、塗装状態確認用マーク5は基板1の送り方向(図4に矢印で示す)に長い長円形に形成されることになり、またノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち、一部の噴射タイミングが早すぎるようにずれると、図4(c)のように、塗装状態確認用マーク5は基板1の送り方向に短い長円形に形成されることになる。
【0036】
このようにノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングがずれていると、塗装状態確認用マーク5の形が変形するので、塗装状態確認用マーク5を視覚観察して検査することによって、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの噴射タイミングがずれているか否かを判定することができるものである。そして塗装状態確認用マーク5の視覚検査は迅速にかつ容易に行なうことができるので、インクジェットプリンター13で基板1にカラー塗装した直後に、塗装状態確認用マーク5を視覚検査することによって、直ちに噴射タイミングのずれの有無を判定することができ、噴射タイミングがずれていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、カラー塗装の不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
【0037】
ここで、図1の実施の形態では塗装状態確認用マーク5は受け係合片3に沿って所定の間隔で複数個所に設けるようにしてある。具体的には、図1の実施の形態では、目地となる凹部7bを介して複数の凸部7aが規則的に配置されるようにして凹凸7が形成してあり、塗装状態確認用マーク5は凸部7aと凹部7bとの境界部に対応する位置に設けるようにしてある。そして、表面に凹凸7を形成した基板1を切断して、例えば切断個所で基板1同士を垂直に突き合わせて接続する際に、凹凸7の連続性などのために、凸部7aと凹部7bとの境界に沿って基板1を切断する必要のある場合がある。このとき、受け係合片3に塗装した塗装状態確認用マーク5の位置で基板1を切断すれば、基板1を凸部7aと凹部7bとの境界に沿って切断することができるものである。このように、塗装状態確認用マーク5を受け係合片3に沿った複数個所に所定間隔で形成しておくことによって、基板1を切断する位置を示すマークとして利用することができるものである。
【0038】
本発明において塗装状態確認用マーク5は図1に示すものに限定されるものではない。受け係合片3に形成する塗装状態確認用マーク5の個数は、1点から100点程度まで可能であり、その形状も、図5(a)のように「+」、図5(b)のように「L]、あるいは「□」、「△」、「−」、「T]など任意である。あるいは、図5(c)のように点線で形成するようにしてもよく、図5(d)のように複数個所の「I]で形成したり、図5(e)のように受け係合片3を横切る線で形成したりすることもできる。
【0039】
また、図6に示すように、基板1の送り方向の先端部と、中央部と、後端部など、係合受け片3に沿った複数個所に塗装状態確認用マーク5を形成するようにしてもよい。このように塗装状態確認用マーク5が基板1の送り方向の複数個所に塗装されるようにすることによって、基板1の先端部においてインクの噴射タイミングがずれた場合でも、基板1の中央部においてインクの噴射タイミングがずれた場合でも、基板1の後端部においてインクの噴射タイミングがずれた場合でも、その位置に対応して塗装される塗装状態確認用マーク5によって検出することができるものであり、また基板1のどの部分でインクの噴射タイミングがずれたかも検出することができるものである。送りコンベア14の送り速度の同調の不具合で基板1に部分的に塗装ずれが発生するおそれがあるが、このように基板1の送り方向に沿った複数個所に塗装状態確認用マーク5が形成されるようにすることによって、部分的な塗装のずれに対応することが可能になるものである。
【0040】
また、上記のように基板1の表面に柄模様4をカラー塗装するにあたって、同時に、塗装状態確認用マーク5が柄模様4と相対的な所定の位置関係で受け係合片3に塗装されるので、基板1の表面に対する柄模様4の位置ずれの有無を、塗装状態確認用マーク5を利用して判定することができる。基板1の表面に柄模様4をカラー塗装する場合、基板1の送りに対してインクジェットプリンター13のノズルヘッド9からのインクの噴射のタイミングが合っていないと、基板1の表面のずれた位置に柄模様4が塗装されることになる。特に、例えば図1のように基板1の凹凸7の凸部7aに同調させて柄模様4を塗装する場合、凹凸7に対して柄模様4がずれると、柄模様4の位置ずれが目立って、塗装不良となり易い。そこで、塗装状態確認用マーク5を利用して基板1の表面に対する柄模様4の位置ずれの有無を判定できるようにするのである。
【0041】
上記のように塗装状態確認用マーク5は、基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様4をカラー塗装する際に、同時に受け係合片3に塗装して形成するようにしてあるが、送りコンベア14で送られる基板1の先頭の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときにノズルヘッド9からのインクの噴射を開始して、塗装状態確認用マーク5を塗装するようにしてある。そして、基板1は係合片2や受け係合片3を設けた端縁と直交する端縁を先頭にして送りコンベア14で送られるものであり、従って塗装状態確認用マーク5は図7に示すように、基板1の送り方向(図7に矢印で示す)の先頭側の端縁から始まって、受け係合片3を設けた側の基板1の端縁に沿った所定長さで受け係合片3に形成されるものである。塗装状態確認用マーク5は例えば、受け係合片3の先頭側の端縁からL=100mmの長さとなるように設定してあり、また塗装状態確認用マーク5の先頭側の端縁と反対側の後端に、塗装状態確認用マーク5に直交する屈折部16を形成してあり、塗装状態確認用マーク5の後端の位置が明確になるようにしてある。
【0042】
そして基板1に柄模様4を塗装するにあたって、インクジェットプリンター13に送りコンベア14で送られる基板1がセンサーで検知されると、この検知信号の入力に基づいたタイミングでノズルヘッド9からインクが噴射され、基板1の表面に柄模様4が塗装されると共に、受け係合片3に塗装状態確認用マーク5が塗装されるが、基板1の送りとノズルヘッド9からのインクの噴射のタイミングが合っていると、送り方向の先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときにノズルヘッド9からのインクの噴射が開始されるので、図7(a)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から始まる位置に塗装状態確認用マーク5が塗装される。このとき、受け係合片3に塗装される塗装状態確認用マーク5の長さが設定されたL=100mmの寸法である場合、基板1の表面に塗装される柄模様4の位置ずれはないので、図7(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
【0043】
また基板1の送りとノズルヘッド9からの塗料の噴射のタイミングが合っていないとき、例えば先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下を通過した後にノズルヘッド9からのインクの噴射が開始されると、図7(b)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から送り方向の後方へずれた位置から始まるように塗装状態確認用マーク5が塗装される。そしてこのようにインクの噴射のタイミングが遅いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の後方に位置ずれすることになるので、図7(b)のように凸部7aに対して後方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
【0044】
あるいは、例えば先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達する前にノズルヘッド9からのインクの噴射が開始されると、受け係合片3の前方位置でインクが噴射され始めるので、図7(c)のように受け係合片3に塗装される塗装状態確認用マーク5の長さは短くなる。そしてこのようにインクの噴射のタイミングが早いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の前方に位置ずれすることになるので、図7(c)のように凸部7aに対して前方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
【0045】
このように、受け係合片3にその先頭側の端縁を含む位置から塗装状態確認用マーク5が塗装されており、その長さが設定された寸法Lであれば、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがないと判定することができるものであり、また受け係合片3にその先頭側の端縁から外れた位置において塗装状態確認用マーク5が塗装されているとき、あるいは受け係合片3に塗装された塗装状態確認用マーク5の長さが設定された寸法Lよりも短いときは、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがあると判定することができるものである。
【0046】
そして塗装状態確認用マーク5の長さの測定は定規で測ったり、CCDカメラなどの光学式測定器を用いたりして、短時間でかつ容易に行なうことができるものであり、また受け係合片3の先頭側の端縁から外れた位置に塗装状態確認用マーク5が塗装されているときは視覚で確認することができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、塗装状態確認用マーク5を確認することによって、直ちに柄模様4の位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
【0047】
一方、上記の塗装状態確認用マーク5によって、基板1の送り方向と垂直な幅方向での柄模様4の位置ずれを判定することもできる。すなわち、受け係合片3の突出幅方向での塗装状態確認用マーク5の位置を測定し、塗装状態確認用マーク5の位置ずれが所定寸法以下であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていないと判定することができ、塗装状態確認用マーク5の位置ずれが所定寸法以上であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていると判定することができる。例えば、基板1が幅方向に位置ずれしていず、正しい位置でインクジェットプリンター13に送られて塗装状態確認用マーク5が塗装されるときには、図7(a)のように受け係合片3の基部から所定のW(例えば5mm)の寸法で幅方向の中央側に塗装状態確認用マーク5が形成されるようにし、受け係合片3の基部から塗装状態確認用マーク5の塗装位置までの寸法を測定することによって、柄模様4の幅方向での位置ずれの有無を判定することができるものである。この受け係合片3の幅方向での塗装状態確認用マーク5の位置の測定は、定規を用いて行なう他、CCDカメラなどの光学式測定器を用いて自動的に行なうことも可能である。
【0048】
また、図8の実施の形態では、受け係合片3に2本の塗装状態確認用マーク5を平行に塗装するようにしてある。この2本の塗装状態確認用マーク5の間隔Wは、受け係合片3の突出幅寸法の1/3の寸法に設定してあり、基板1が幅方向に位置ずれしていず、正しい位置でインクジェットプリンター13に送られて塗装状態確認用マーク5が塗装されるときには、図8(a)のように、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の寸法Wと、内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の寸法Wは、それぞれWと等しくなるようにしてある(W=W=W)。
【0049】
このものにあって、2本の塗装状態確認用マーク5間の間隔と、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の間隔、及び内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の間隔がそれぞれ等しくなるように、受け係合片3に塗装状態確認用マーク5が塗装されていれば、基板1の表面に塗装される柄模様4の幅方向の位置ずれはないので、図8(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
【0050】
また、図8(b)のように、2本の塗装状態確認用マーク5間の間隔よりも、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の間隔が狭く、内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の間隔が広くなるように、受け係合片3に塗装状態確認用マーク5が塗装されていれば、基板1が受け係合片3と反対側に幅方向で位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図8(b)のように受け係合片3の側に幅方向でずれた位置に塗装される。
【0051】
逆に図8(c)のように、2本の塗装状態確認用マーク5間の間隔よりも、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の間隔が広く、内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の間隔が狭くなるように、受け係合片3に塗装状態確認用マーク5が塗装されていれば、基板1が受け係合片3の側に幅方向で位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図8(c)のように受け係合片3と反対側に幅方向でずれた位置に塗装される。
【0052】
このように、2本の塗装状態確認用マーク5間の間隔よりも、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の間隔が狭く、内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の間隔が広い場合や、2本の塗装状態確認用マーク5間の間隔よりも、外側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の突出先端との間の間隔が広く、内側の塗装状態確認用マーク5と受け係合片3の基部との間の間隔が狭い場合は、柄模様4は幅方向にずれた位置で塗装されていると判定することができるものである。そしてこのように間隔が等しいか等しくないかは、寸法を定規で測定したりする必要なく、目視によって容易に判断することができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、2本の塗装状態確認用マーク5を視覚検査することによって、直ちに柄模様4の幅方向での位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
【0053】
ここで、上記の各実施の形態のように、塗装状態確認用マーク5は受け係合片3に塗装されるが、記述の図9に示すように、基板1とカラー塗装して作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させるので、受け係合片3は他方の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。従って、受け係合片3に塗装される塗装状態確認用マーク5は施工状態では外部に露出しないものであり、塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る塗装建築板の実施の形態の一例を示す一部の斜視図である。
【図2】同上のインクジェットプリンターによる塗装を示す概略図である。
【図3】同上の塗装状態確認用マークの一例を示すものであり、(a)乃至(d)はそれぞれ概略図である。
【図4】同上の塗装状態確認用マークの他の一例を示すものであり、(a)乃至(c)はそれぞれ概略図である。
【図5】同上の他の実施の形態を示すものであり、(a)乃至(e)はそれぞれ一部の平面図である。
【図6】同上の他の実施の形態を示す平面図である。
【図7】同上の他の実施の形態を示すものであり、(a)(b)(c)はそれぞれ一部の平面図である。
【図8】同上の他の実施の形態を示すものであり、(a)(b)(c)はそれぞれ一部の平面図である。
【図9】塗装建築板の施工状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 係合片
3 受け係合片
4 柄模様
5 塗装状態確認用マーク
9 ノズルヘッド
13 インクジェットプリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の端縁に係合片を設けると共に、基板同士の接続時に他の基板の係合片の背面側に係合される受け係合片を基板の他方の端縁に突設し、異なる色のインクを噴射する複数のノズルヘッドを一列に配置して形成されるインクジェットプリンターに、基板をノズルヘッドの配列方向に沿って送ることによって、各ノズルヘッドから噴射される複数色のインクで基板の表面にカラー塗装を施した塗装建築板であって、受け係合片の表面に、このカラー塗装と同時に、全てのノズルヘッドから噴射される複数色のインクで塗装状態確認用のマークが塗装されていることを特徴とする塗装建築板。
【請求項2】
塗装状態確認用マークは、受け係合片に沿った複数個所に所定間隔で形成されており、基板を切断する際の切断位置を示すマークを兼用していることを特徴とする請求項1に記載の塗装建築板。
【請求項3】
基板の表面に柄模様がカラー塗装されており、塗装状態確認用マークは、柄模様と所定の相対的な位置関係で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装建築板。
【請求項4】
基板の表面にカラー塗装して請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片に塗装された塗装状態確認用マークに基づいて、基板に対する各ノズルヘッドからのインクの噴射のタイミングのずれの有無を検出することを特徴とする塗装建築板の塗装状態判定方法。
【請求項5】
基板の表面にカラー塗装して請求項3に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片に塗装された塗装状態確認用マークの位置に基づいて、基板に対する柄模様の塗装位置ずれの有無を検出することを特徴とする塗装建築板の塗装状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−29941(P2008−29941A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205150(P2006−205150)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】