説明

塗装方法

【課題】 圧送ローラー塗装機を用いた塗装方法において、塗装作業性を向上させ得る塗装方法を提供する。
【解決手段】 圧送ローラー塗装機2へ塗料供給体から加圧塗料を連続供給しつつ、圧送ローラー塗装機2のローラー部2bを被塗物に対して上下方向に往復平行移動させるとともに該往復移動の往移動と復移動とを水平方向へ平行にずらして、所望量の液状塗料を配り塗りし、該配り塗りに続いて、ハンドローラー塗装具30を用い、ハンドローラー塗装具30のローラー部を、塗布用塗料を含ませずに、被塗物に対して下方から上方へ一方向移動させるとともに該一方向移動を水平方向へ平行にずらせつつ、仕上げを行うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装作業性に優れた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、ビル、塀、船舶の内外壁面などにハンドローラー塗装具を用いて液状塗料を塗装することは広く行なわれている。ローラー塗装は、回転可能なローラーの多孔質部分に液状塗料を浸みこませ、それを被塗物の表面で回転させながら塗料を被塗面に転写することにより塗装を行う方法であり、噴霧塗装に比べて、塗料の飛散が少ないので作業環境上良好であり、しかも塗着効率がすぐれている。
【0003】
従来から、ローラー塗装による塗装方法としては、図6に示すように、先ず、(a)塗料を十分に含ませたハンドローラー塗装具、Wの文字を描くようにして「配り塗り」を行い、次いで、(b)若干量の塗料を含ませたハンドローラー塗装具を、横方向に往復移動させつつ、往移動と復とを縦方向ずらして「均し塗り」(ムラ切り)を行い、最後に、(c)ハンドローラー塗装具に塗料を含ませずに、ローラー部を被塗面に対して下方から上方への一方向移動を横方向へずらして繰り返すことにより、「仕上げ」を行うのが、ローラー塗装の定法である。
【0004】
上記従来のローラー塗装において、塗装面積が大きくなるとローラーの多孔質部分への塗料浸み込み作業の回数が増加し、労力が多大となって塗装能率が低下し、さらに塗装中に塗料がタレたりすることは避けられず周囲を汚染することがあるなどの欠陥を有している。
【0005】
そうした現状に鑑み、図7に示すように、液状塗料の入った密閉タンク20をエアコンプレッサー21によって加圧することにより、液状塗料を圧送ローラー塗装機22に圧送して塗装を行うタンク加圧式の圧送ローラー塗装装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この種の加圧式の圧送ローラー塗装装置は、一般に、金属製の高圧用ニードルバルブ23と、金属製の中空構造の塗料供給管兼支持部24とを具備し、重量(ローラーパイル部、コア、支持部、ニードルバルブの総重量)としては、例えば700g以上であり、全体的に重量が重い場合が多い。
【0007】
上記ローラー塗装装置によれば、圧送された液状塗料の吐出量の制御は、ニードルバルブ23のトリガーにより調整され、良好な塗装仕上りが得られるが、該ローラー塗装機では、重量が重く、重心が手元側(ローラー塗装機の把持部)に有るために重量感が増し、塗装作業が長時間にわたる等、ローラー塗装作業性が悪い場合があった。
【0008】
上記した問題点を解決すべく、図8に示すように、塗料供給ポンプ3bと圧送ローラー塗装機2のコア2aとを連結する塗料供給パイプ4に配設されたエアコントロールバルブ5を把持部2dに配設された操作スイッチ8により制御して、塗料容器3a内の液状塗料を塗料供給ポンプ3bから圧送ローラー塗装機2へ圧送するポンプ圧送式の圧送ローラー塗装機が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−119909号公報
【特許文献2】特開2004−358460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記ポンプ圧送式圧送ローラー塗装機は軽量化が図られ作業性も格段に向上しているが、上記従来の塗装方法を踏襲していたのでは、圧送ローラー塗装機の特性を十分に活かした高効率の塗装を実現しているとは言えなかった。また、圧送ローラー塗装機のローラー塗装機を持って仕上げを行う場合は、塗料供給体からの塗料供給を停止させ、ローラー部内の塗料を空にする必要があるが、従来のハンドローラー塗装と異なるため、作業者は、塗料供給を止めるタイミング等を取得する必要があり、熟練を要していた。
【0010】
そこで、本発明は、圧送ローラー塗装機を用いた塗装方法において、塗装作業性を向上させ得る塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る塗装方法は、ハンドローラー塗装具と、液状塗料を圧送するための塗料供給体に接続される塗料供給パイプ、該塗料供給パイプに接続されてローラー部から液状塗料を吐出させ塗装するためのローラー塗装機、該塗料供給パイプに介在され塗料供給路を開閉する開閉弁、及び該開閉弁に開閉駆動させる操作スイッチを有する圧送ローラー塗装機と、を併用する塗装方法であって、前記圧送ローラー塗装機へ前記塗料供給体から加圧塗料を連続供給しつつ、該圧送ローラー塗装機の前記ローラー部を被塗物に対して上下方向に往復平行移動させるとともに該往復移動の往移動と復移動とを水平方向へ平行にずらせて、所望量の液状塗料を配り塗りし、該配り塗りに続いて、前記ハンドローラー塗装具を用い、該ハンドローラー塗装具のローラー部を、塗料を含ませずに、被塗物に対して下方から上方へ一方向移動させるとともに該一方向移動を水平方向へ平行にずらせつつ、仕上げを行うことを特徴とする。
【0012】
前記塗装方法において、被塗物に対する目標塗布量に対し1割増しとなる塗料を前記圧送ローラー塗装機へ供給しつつ配り塗りを行うことが好ましい。
【0013】
前記圧送ローラー塗装機は、液状塗料を圧送するための塗料供給体に接続される塗料供給パイプと、該塗料供給パイプに接続されて液状塗料を吐出させ塗装するためのローラー塗装機と、該塗料供給パイプに介在され塗料供給路を開閉するエアコントロールバルブと、該エアコントロールバルブに駆動エアを供給するために該エアコントロールバルブにエアホースを介して接続される携帯型エアボンベと、前記塗装機若しくは前記エアコントロールバルブと前記ローラー塗装機との間における前記塗料供給パイプ上に取り付けられ前記エアコントロールバルブの開閉を制御する操作スイッチと、を有し、前記携帯型エアボンベ及びエアコントロールバルブを携帯して塗装することが好ましい。
【0014】
前記操作スイッチが前記塗料供給パイプ上を摺動自在であって且つ所望位置に位置保持可能に取り付けられていることが好ましい。
【0015】
前記操作スイッチを、前記塗料供給パイプ上の前記ローラー塗装機からの距離が20〜100cmの範囲内において調節することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧送ローラー塗装機から用いて所望量の液状塗料を定量供給できるので、所定方向に移動させることにより、ローラー塗装機の移動速度を略一定に保つことで、ムラ無く均等に塗布でき、均し塗りを省略できる。そして、配り塗りに続く仕上げは、ローラー塗装機によらずハンドローラー塗装具によることとしたので、ローラー塗装機の塗料供給を停止させ、ローラー部を構成するローラーパイル内部の塗料を空にするタイミングを計る手間を省略でき、塗装作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る塗装方法について、好適な実施形態を例として、以下に図1〜5を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、本発明方法に使用する圧送塗装装置の一例について説明する。圧送塗装装置1は、液状塗料を圧送ローラー塗装機2に供給するための塗料供給体3と、コア2aを内蔵したローラー部2b、支持部2c、把持部2dを具備する圧送ローラー塗装機2と、塗料供給体3と圧送ローラー塗装機2のローラー部コア2aとを連結するための塗料供給パイプ4と、塗料供給パイプ4に介在され塗料供給路を開閉するエアコントロールバルブ5と、エアコントロールバルブ5に駆動エアを供給するためにエアコントロールバルブ5にエアホース6を介して接続される携帯型エアボンベ7と、塗料供給パイプ4に取り付けられエアコントロールバルブ5の開閉を制御する操作スイッチ8と、を有する。
【0019】
塗料供給体3は、液状塗料を圧送する仕組みのものであれば、制限はないが、図示例の如く、塗料を収容した塗料容器3aを備えたポンプ3bにより塗料を圧送ローラー塗装機2へ供給するポンプ型とする他、例えばエアコンプレッサー等の空気供給体により耐圧性の密閉タンクを加圧することにより塗料が放出される耐圧タンク型等とすることもできる。
【0020】
ポンプ型の塗料供給体3は、例えば、ダイヤフラム式ポンプ、プランジャー式ポンプ、スネーク式ポンプ、チュービング式ポンプ等のポンプを備えることができる。ポンプ型の塗料供給体3は、塗料容器3aを構成するホッパーに液状塗料を注入し、該ホッパーから排出される液状塗料をポンプ3bによって加圧して圧送ローラー塗装機2へ送る。
【0021】
塗料供給体として、空気供給体により加圧する耐圧タンク型(不図示)としては、塗料流入口、エア供給口及び塗料排出口を具備する耐圧タンクが挙げられる。上記耐圧タンクは、エア供給口からエアを圧入されることにより加圧され、塗料排出口から塗料が送り出される仕組みになっている。また、該耐圧タンクは必要に応じて内部壁面底部に液面センサーを備えていてもよい。塗料残量が少なくなり、内部壁面底部に設けられた液面センサーが空気にさらされるとセンサーが感知され、塗料の補充時期を知ることができる。該耐圧タンク内の圧力としては0.1MPa〜3MPa、好ましくは0.1Mpa〜0.5MPaの範囲が適している。圧力が0.1MPaより低くなると塗料の吐出量が少なくなり、一方、3MPaより高くなると、塗料の供給量と転写量のバランスが崩れ、垂れ、飛散が発生しやすくなるので、好ましくない。
【0022】
塗料供給体3とローラー部コア2aを連結する塗料供給パイプ4は中空状で、その一端は塗料供給体につながっており、他端はローラー部コア2aに連結している。塗料供給パイプ4は、塗装作業性の点から重量が軽く、柔軟性に優れるものが好適に使用できる。また、塗料供給パイプ4を、塗料供給体3からエアコントロールバルブ5までを連結する耐圧性の高い塗料供給パイプ4−1とエアコントロールバルブ5からローラー部コア2aまでを連結する耐圧性の低い塗料供給パイプ4−2から構成することもできる。
【0023】
塗料供給パイプ4−1において、塗料を搬送するための高い圧力がかかることがあることから、塗料供給パイプ4−1の耐圧性が高いことが望ましく、具体的には耐圧性が0.1〜50MPaの範囲内であることが望ましく、内径が5〜13mmの範囲内、外径が7〜25mmの範囲内であることが望ましい。材質としては、ナイロン、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂製が挙げられ、鋼線やナイロン糸等で補強されたものであってもよい。
【0024】
他方、塗料供給パイプ4−2において、エアコントロールバルブ5からローラー部コア2aまでにかかる圧力が低いことから、塗料供給パイプ4−2の耐圧性は低いものであってもよく、具体的には、塗料供給パイプ4−2の耐圧性が、10MPa以下、好ましくは0.3〜2.5Mpaの範囲内であることが望ましく、内径は4〜13mmの範囲内、外径が5〜20mmの範囲内であることが望ましい。材質としては、ナイロン、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂製が挙げられ、塩化ビニル樹脂製が適している。
【0025】
液状塗料としては、それ自体既知のものが使用され、目的により任意に選択できる。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂などを基体樹脂として含有する水系、有機溶剤系、無溶剤系の塗料があげられ、これらは常温乾燥型、常温硬化型、重合反応硬化型などに分類され、いずれも適用できる。さらに、液状塗料は、無色透明、着色透明、着色不透明の塗膜を形成することができる。ここで「着色」とはソリッドカラー調、メタリック調、光干渉調などを包含する。
【0026】
上記液状塗料において、ポンプ型の塗料供給体を使用した場合においては、液状塗料の粘度を5000Pa・s/20℃以下、特に100〜4000Pa・s/20℃の範囲内であることが望ましく、耐圧タンク型の塗料供給体を使用した場合には、粘度を2000Pa・s/20℃以下、特に100〜700Pa・s/20℃の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本明細書において、液状塗料の粘度は、試料を20℃に調整し、B型粘度計にて20回転/分で測定した値とする。
【0028】
また、液状塗料が水系塗料又は有機溶剤系塗料である場合において、該液状塗料の固形分含有率としては、1〜95重量%、好ましくは40〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
圧送ローラー塗装機2は、図2、3に拡大して示すように、ローラー部2bを構成する回転可能な円筒状多孔質部材材から液状塗料を浸み出させ、それを被塗物の表面で回転させながら塗料を被塗面に転写することにより塗装を行う塗装機であり、ローラー部2b、支持部2c、把持部2dを具備している。
【0030】
ローラー部2bは、圧送ローラー塗装機2の先端部に位置しており、コア2aを内蔵し、コア2aを円筒状多孔質部材材で形成されたローラー部2bで覆い、コア2aに対してローラー部2bが回転自在となるように構成されている。
【0031】
コア2aは、円筒状多孔質部材で構成されるローラー部2bの中空内部に装着させるものであり、従来公知のものが使用できる。形状としては制限されないが、円柱及び三角柱、四角柱等の多角柱が挙げられ、これらが組み合わされた形状であってもよいが内部は中空であることが好ましい。特にローラー部への液状塗料の染み出しが均一になることから多角柱であることが望ましく、その太さは多角柱の外側綾線がローラー部2bの中空内壁に接する程度が好ましい。その結果、中空内壁面と多角柱の外面部分との間に、ほぼ「かまぼこ状」の中空部X(図3参照)が形成される。そして、コア2aの面部分(三角柱であれば、3面存在する)に複数の塗料整流孔2eを有せしめることが好適である。
【0032】
塗料整流孔2eは、塗料供給体3から圧送された液状塗料が、ローラー部の円筒状多孔質部材から均一に滲み出るように調整するために設けるものである。また、コア2aの中空部2fは、コア内部で液状塗料を搬送するための塗料流通経路として設けられるものであり、形状としては円筒状であることが望ましい。コア2aの内径は2〜5cm、長さは5〜30cmの範囲内が適している。
【0033】
圧送されてきた液状塗料は、ローラー部2bのコア2aの塗料流入部からコア内部の中空部2fに流入し、そして、コア内部から外部へ通じている塗料整流孔2eから出て、ローラー部2bの中空内壁面とコア2aの外側面部分との間に形成される「かまぼこ状」の中空部に達し、それからローラー部2bを構成する円筒状多孔質部材を通って外側に滲み出るようになっている。
【0034】
コア2aに設ける塗料整流孔2eは、コア内部と外部とを連通するように貫通しており、コア1本あたり、複数個、好ましくは、2〜10個、特に好ましくは2〜5個程度が望ましい。その内径は0.5〜10mm、特に1〜8mm程度が適している。また、単一のコアに複数の塗料整流孔を設ける場合は、その内径は同一であってもよいが、特に、液状塗料が流入する入り口付近は内径を小さく(例えば0.5〜4mm、好ましくは1〜3mm)、最も遠い位置では内径を大きく(例えば6〜10mm、特に7〜8mm)すると、円筒状多孔質部材から外側への液状塗料の滲み出し量が均一になりやすいので好適である。塗料整流孔は、コアのそれぞれの面に1個以上をほぼ同数設けてもよい。
【0035】
圧送された液状塗料が、ローラー部2bのいずれの部分からも適正なバランスで塗料が滲み出し、被塗物に均一に転写できるようにするために、コア2aに設ける塗料整流孔2eは、塗料流入口付近及び最も奥の部分にそれぞれ1個以上ずつ、さらに必要に応じてコアの中央部などに1個以上ずつを等間隔で設けることが好ましい。塗料入り口付近における整流孔の内径を1とすると、奥部における整流孔の内径は2〜5倍程度大きくしてもよい。
【0036】
塗料整流孔2eの方向としては、コアの面部分(三角柱であれば3面存在する)に対して垂直であっても傾斜角度を有していてもよく、具体的には該塗料整流孔が設けられているコア面部分又は該塗料整流孔を接点とする接平面に対して10°〜90°の範囲内であることが好ましく、特に10〜60°の範囲内の角度を有していることが望ましい。
【0037】
ここで、塗料整流孔2eが設けられているコア面部分とは、塗料整流孔2eが開口する面が平面である場合において該平面を意味する。また、塗料整流孔を接点とする接平面とは、塗料整流孔が曲面上に有している場合において、該曲面上の塗料整流孔を接点とする平面を意味する。
【0038】
塗料整流孔2eが中空部2fの中心線方向に対して傾斜角度を有していると、コア内部の塗料流通経路からローラー部2bを構成する多孔質部材へ液状塗料を均一に効率よく移行させることができる。なお、塗料整流孔2eに液状塗料の流れ方向を調整できるノズルを付設することもできる。
【0039】
ローラー部2bを構成する円筒状多孔質部材は、通常、紙管などの円筒形ローラーの外側表面に羊毛や化学繊維、スポンジなどの多孔質体を巻き付けてなるウールローラー、マスチックローラーなどがあげられ、その内側から外側に液状塗料が滲み出るように多孔質構造を有している。
【0040】
ローラー部2bを支える支持部2cとしては従来公知のものが使用でき、内部を中空にして塗料供給パイプ4と兼用とした管状のも使用できる。
【0041】
把持部2dは、支持部2c及び後述の塗料供給パイプ4を部分的に包含する事が出来ればよい。把持部2dの材質、形状等については特に制限はなく、塗装時において重心をローラー部側近傍に位置させるために軽量な素材が好適であり、特に樹脂製が好適である。
【0042】
また、把持部2dには、必要に応じて跳ね返りの塗料を受けるための汚れ防止板(不図示)を付設することもできる。
【0043】
操作スイッチ8は、後述のエアコントロールバルブ5を遠隔操作するために設けられるものである。操作スイッチ8の構造としては、エア信号を発する押しボタンタイプ、ピンタイプなどが挙げられ、携帯型エアボンベ7からの加圧エア(エア信号)をオン・オフすることによって、エアコントロールバルブ5を開閉させる。エアコントロールバルブ5は、エア信号を受信して作動するエアオペレートバルブである。
【0044】
操作スイッチ8は、エアコントロールバルブ5と圧送ローラー塗装機2の塗料供給パイプ4上に取り付けられている。操作スイッチ8は、塗料供給パイプ4に摺動自在に取り付けられている。例えば、操作スイッチ8を固定したスパイラルラッピングバンド(不図示)を塗料供給パイプ4に巻き付けることにより、操作スイッチ4を塗料供給パイプ4上で摺動自在とし、且つ、塗料供給パイプ4上の所望位置で操作スイッチ4をずれ落ちないように位置保持することができる。なお、スパイラルラッピングバンドに限らず、クリップ、綿ファスナーベルト等、操作スイッチ8を塗料供給パイプ4上で位置調整できる留め具であれば良い。
【0045】
操作スイッチ8は、塗料供給パイプ4の把持部2dから20〜100cmの範囲内で摺動できることが好ましく、少なくとも40〜60cmの範囲で摺動可能とすることが好ましい。これは、塗装作業に際し、一方の手で圧送ローラー塗装機2を持ち、他方の手で操作スイッチ8を持って操作スイッチ操作する場合、操作スイッチ8と把持部2dとの間の塗料供給パイプ4が長すぎると垂れて作業の邪魔になり、短すぎると作業しづらいからである。なお、操作スイッチ8は、図4に示すように、把持部2dに設けることもできる。
【0046】
携帯型エアボンベ7は、容量200〜600cc程度のものが好ましく、作業者のベルト等に携帯させることができる。携帯型エアボンベ7は、例えば、エアブラシやエアガン等に使用されているエア缶を利用することができる。
【0047】
エアコントロールバルブ5は、圧送ローラー塗装機に供給される塗料の量を調整するために設けられるものであり、把持部2dと塗料供給体3とを連結する塗料供給パイプ4に介在されている。
【0048】
また、エアコントロールバルブ5の構造としては、ニードル式、ボール式、バタフライ式等が挙げられ、液体の制御ができる構造の物で在れば特に制限は無いが、好ましくは、ニードル方式がよい。
【0049】
エアコントロールバルブ5の設置位置としては、塗料供給パイプ上であれば、特に制限は無いが、エアコントロールバルブ5と圧送ローラー塗装機との距離が、50〜300cm、好ましくは100〜200cmの範囲内であることが望ましい。なお、エアコントロールバルブ5を塗料供給パイプ4上に配設させることにより、把持部2dの重量軽減が可能となっている。
【0050】
エアコントロールバルブ5と圧送ローラー塗装機2の距離が50cm未満では、塗装作業がやりにくくなることがあり、300cmを超えると、塗料を吐出したり、止めたりする場合に時間差が生じて、スムーズな塗装作業が出来ないばかりか、吐出する塗料の量も減少する傾向がある。
【0051】
また塗料供給パイプ4に配設されたエアコントロールバルブ5は、塗装作業者の体や、作業現場の足場等に固定することができる。
【0052】
塗料供給体3から圧送された液状塗料は、塗料供給パイプ4を通り、エアコントロールバルブ5まで達する。エアコントロールバルブ5の開閉は、塗料供給パイプ4に付設された遠隔操作スイッチ8により行い、ローラー部2bに塗料が供給される。
【0053】
コア2aに供給された塗料は、コア2aから塗料整流孔2eを経て円筒状多孔質部材で構成されるローラー部2bの外側表面に滲み出し、そして、かかるローラー部2bを被塗面と接するようにあてがいながら回転することによって多孔質部材の液状塗料が被塗面に転写されて、塗装が行なわれる。
【0054】
被塗面への液状塗料の吐出量は特に制限されず、塗料供給体3の種類や塗布量に応じて任意に選択できる。
【0055】
たとえば、耐圧タンク方式で塗布量が0.15kg/mの塗装作業を行う場合、塗料の吐出量は0.15〜0.6kg/分の範囲内であることが望ましく、又ポンプ方式で塗布量1.0kg/mの塗装作業を行う場合は、吐出量を1.0〜2.0kg/分の範囲内に調整することが望ましい。
【0056】
上記のように、従来のエアコンプレッサーに代えて携帯型エアボンベ7を採用したことにより、携帯型エアボンベ7は作業者が携帯できるため操作スイッチ8から携帯型エアボンベ7迄のエアホースの距離も短縮でき、作業性が向上する。
【0057】
操作スイッチ8を把持部2dから離れた塗料供給パイプ4上に配置しておけば、操作スイッチ8から圧送ローラー塗装機2迄は塗料供給パイプ41本のみとなるため、圧送ローラー塗装機2の操作性が向上し得る。また、操作スイッチ8が圧送ローラー塗装機2の把持部2dに無い分、圧送ローラー塗装機2の軽量化が図られ、塗装作業がし易くなる場合がある。さらに、一方の手で圧送ローラー塗装機2を持ち、他方の手で操作スイッチ8を操作しつつ塗装が行えるので、操作スイッチ操作する手が塗料で汚れず、操作性が良くなる。
【0058】
次に上記のような圧送塗装装置を用いた本発明塗装方法の例について、以下に図5を参照して説明する。
【0059】
まず、圧送ローラー塗装機2へ塗料供給体3から加圧塗料を連続供給しつつ配り塗りを行う。配り塗りは、図2(a)に示すように、圧送ローラー塗装機2のローラー部2bを被塗物に対して上下方向に往復平行移動させるとともに、該往復移動の往移動と復移動とを水平方向へ平行にずらして行う。
【0060】
該配り塗りに続いて、ハンドローラー塗装具30を用いて仕上げを行う。仕上げは、ハンドローラー塗装具30のローラー部を、塗布用塗料を含ませずに、被塗物に対して下方から上方へ一方向移動させるとともに該一方向移動を水平方向へ平行にずらせつつ、仕上げを行う。
【0061】
なお、ハンドローラー塗装具30は、仕上げ開始前に必要最小限の塗料を含ませることがある。これは、仕上げ開始時にハンドローラー塗装具30に全く塗料が付与されていないと、配り塗りされた被塗物を仕上げ開始直後のハンドローラー塗装具30が過剰に取ってしまうことがあるからである。なお、仕上げ開始前にハンドローラー塗装具30に含ませられる塗料は、「塗布用塗料」ではなく、仕上げ開始直後に配り塗りされた被塗物から塗料を奪わないための塗料である。
【0062】
上記のように、本発明に係る塗装方法では、従来定法とされている均し塗りを省略する。均し塗りを省略することで、作業能率は大幅に向上する。本発明方法において均し塗りを省略できるのは、圧送ローラー塗装機2が液状塗料を定量供給できることに起因する。液状塗料をローラー部へ定量供給できるため、ローラー部の移動速度が大きく変わらなければ、従来の均しの仕上がりに近い塗面を配り塗りによって実現可能だからである。
【0063】
本発明方法では、均し塗りを省略して仕上げを行うため、仕上げで吸い取られる分を、圧送ローラー塗装機2による配り塗りの際に予め多目に供給することが望ましい。そのため、配り塗りにおいては、被塗物に対する目標塗布量に対して1割増し程度の塗料を、前記圧送ローラー塗装機へ供給しつつ配り塗りを行うことが望ましい。
【0064】
本発明に係る塗装方法によって塗装する被塗物は特に制限されず、ローラー塗装が可能な被塗物に適用することができ、例えば、一般住宅、ビル、建造物の屋根、塀、外壁、内壁、天井など、さらに船舶、橋梁、土木関連などの塗装に適用することができる。また、仕上げられる塗膜として、ソリッドカラー調、メタリック調、光干渉調などの他に、さらに、凹凸模様、ユズ肌模様などがあげられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る塗装方法に用いられる圧送塗装装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示された塗装機を示す拡大断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1の圧送塗装装置の変更態様を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係る塗装方法を説明するための説明図である。
【図6】従来の塗装方法を説明する説明図である。
【図7】従来の加圧式ローラー塗装装置を示す概略構成図である。
【図8】従来の圧送塗装装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1 圧送塗装装置
2 圧送ローラー塗装機
3 塗料供給体
4 塗料供給パイプ
5 エアコントロールバルブ
6 エアホース
7 携帯型エアボンベ
8 操作スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドローラー塗装具と、液状塗料を圧送するための塗料供給体に接続される塗料供給パイプ、該塗料供給パイプに接続されてローラー部から液状塗料を吐出させ塗装するための圧送ローラー塗装機、該塗料供給パイプに介在され塗料供給路を開閉する開閉弁、及び該開閉弁に開閉駆動させる操作スイッチを有する圧送ローラー塗装装置と、を併用する塗装方法であって、
前記圧送ローラー塗装機へ前記塗料供給体から加圧塗料を連続供給しつつ、該圧送ローラー塗装機の前記ローラー部を被塗物に対して上下方向に往復平行移動させるとともに該往復移動の往移動と復移動とを水平方向へ平行にずらして、所望量の液状塗料を配り塗りし、
該配り塗りに続いて、前記ハンドローラー塗装具を用い、該ハンドローラー塗装具のローラー部を、塗布用塗料を含ませずに、被塗物に対して下方から上方へ一方向移動させるとともに該一方向移動を水平方向へ平行にずらせつつ、仕上げを行うことを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
被塗物に対する目標塗布量に対して1割増しの塗料を、前記圧送ローラー塗装機へ供給しつつ配り塗りを行うことを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】
前記圧送ローラー塗装機は、液状塗料を圧送するための塗料供給体に接続される塗料供給パイプと、該塗料供給パイプに接続されて液状塗料を吐出させ塗装するためのローラー塗装機と、該塗料供給パイプに介在され塗料供給路を開閉するエアコントロールバルブと、該エアコントロールバルブに駆動エアを供給するために該エアコントロールバルブにエアホースを介して接続される携帯型エアボンベと、前記塗装機若しくは前記エアコントロールバルブと前記ローラー塗装機との間における前記塗料供給パイプ上に取り付けられ前記エアコントロールバルブの開閉を制御する操作スイッチと、を有し、
前記携帯型エアボンベ及びエアコントロールバルブを携帯して塗装することを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項4】
前記操作スイッチが前記塗料供給パイプ上を摺動自在であって且つ所望位置に位置保持可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項5】
前記操作スイッチを、前記塗料供給パイプ上の前記ローラー塗装機からの距離が20〜100cmの範囲内において調節することを特徴とするで請求項4記載の塗装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−7519(P2007−7519A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189207(P2005−189207)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】