説明

塗装金属板の製造方法及び塗装金属板

【課題】粒径の大きな骨材を含有させたり母材である金属板や成膜後の塗膜に対する機械的な加工を行うことなく、塗膜の粗さを大きくすることができ、素焼き調の外観を有する意匠性の高い塗膜を形成することができる塗装金属板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属板表面に第一の塗料を塗布し、この第一の塗料を成膜する前に更に第二の塗料を塗布した後に、前記第一及び第二の塗料を加熱成膜する。前記塗料のうち少なくとも第二の塗料が縮み塗料である。このとき、第一の塗料も縮み塗料とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材等の建材に利用することができる塗装金属板の製造方法及び塗装金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき鋼板等の金属板の表面に予め塗装(プレコート)を施した塗装金属板は、建築分野において外装材等の建材として広く利用されている。
【0003】
従来、プレコート用の塗料として、ポリエステル/メラミン系塗料に、アミンでブロックした硬化触媒を添加することで、塗膜の硬化過程における表層と下層の硬化速度差を大きくし、表面に細かい縮み模様を形成した塗装金属板が提供されている。
【0004】
上記のような塗装金属板においては、塗膜における硬化速度差を細かく制御することで、縮みの大きさ、凹凸の大きさ(粗さ)を変更することが可能である。
【0005】
このように、縮み塗料を用いて意匠性を向上させた塗装金属板は近年広く利用されるようになっているが、ユーザーからは更なる意匠性の向上が求められるようになってきている。特に、外装材として近年、塗膜の表面の凹凸を大きくして素焼き調の外観と肌触りを有するものが求められるようになってきており、このため塗装金属板についてもこのような粗さの大きな塗膜を形成することが要望されるようになってきている。
【特許文献1】特開平11−104558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、縮み塗料による塗膜の粗さには限界があり、大きな粗さを有する塗膜を形成することは困難であった。単に塗膜の粗さを大きくするだけなら、粒径の大きな骨材を塗膜中に含有させることも考えられるが、塗装鋼板はコイル状で処理、搬送されることが多く、そのためコイル状に巻き回す際に骨材の欠け落ちや塗膜のひび割れ等が発生するおそれがある。また、塗膜の粗さを大きくするために母材である金属板に予め凹凸加工を形成したり、塗膜形成後に表面加工を施して凹凸を形成することも考えらるが、加工の手間が増大して製造コストの上昇に繋がり、また自然な風合いを有する粗面を形成することも難しいものである。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、粒径の大きな骨材を含有させたり母材である金属板や成膜後の塗膜に対する機械的な加工を行うことなく、塗膜の粗さを大きくすることができ、素焼き調の外観を有する意匠性の高い塗膜を形成することができる塗装金属板の製造方法及び塗装金属板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗装金属板の製造方法は、金属板表面に第一の塗料を塗布し、この第一の塗料を成膜する前に更に第二の塗料を塗布した後に、前記第一及び第二の塗料を加熱成膜する工程を含み、前記塗料のうち少なくとも第二の塗料が縮み塗料であることを特徴とするものである。
【0009】
このとき、第一の塗料も縮み塗料とすることが好ましい。
【0010】
また、上記縮み塗料としては、ポリエステル/メラミン系塗料にアミン類でブロックした硬化触媒を添加したものを好適に用いることができる。
【0011】
また、本発明に係る塗装金属板は、上記のような方法にて製造され、第一の塗料と第二の塗料とを加熱成膜して得られる塗膜の表面の十点平均粗さRzjis82が55μm以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗料中に粒径の大きな骨材を含有させたり機械的加工を施したりすることなく、金属板に形成される塗膜の十点平均粗さ(Rzjis82)を大きくすることができ、素焼き調の外観と肌触りを有する意匠性の高い塗装金属板を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその実施をするための最良の形態に基づいて説明する。
【0014】
本発明にて用いる金属板1としては、特に制限されるものではないが、例えばアルミニウムめっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、ステンレス板等を挙げることができる。また、このような金属板1としては、長尺のものを用いることができる。
【0015】
亜鉛めっき鋼板は、軟鋼板等の鋼板を溶融亜鉛めっき浴に浸漬する等して、鋼板表面に亜鉛めっき層を形成したものである。この溶融亜鉛めっき浴中においては、溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性、塗膜等との密着性等の特性を損なわない他の物質、例えば従来から溶融亜鉛めっきのための溶融亜鉛浴に許容されている不純物や、他の意識的な添加物が存在しても良く、例えば各原料成分中に含まれる鉛、鉄、銅、カドミウム、スズ等の微量の不純物、鉄、銅、鉛等のような製造工程上不可避的に混入される不純物、マンガン、スズ、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、クロム、チタン、カドミウム、アンチモン、ランタン、セレン等の添加物等の成分が含まれても良い。
【0016】
またアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板は、軟鋼板等の鋼板の表面に、アルミニウム、亜鉛、及び必要に応じて添加される他の金属成分を含む合金めっき層を形成したものである。この合金めっき層の組成としては、特に制限はされないが、例えば、アルミニウムを4〜10重量%、残りの大半を亜鉛及びCe−Laを配合した合金めっきを施した、いわゆる低アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板や、鋼板の表面に、25〜75重量%のアルミニウムと、アルミニウムの含有量に対して0.5重量%以上のケイ素とを含有し、残部は本質的に亜鉛からなる合金めっき層を形成したいわゆる高アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を用いることができる。
【0017】
上記のようなめっきを鋼板に施すにあたっては、亜鉛、アルミニウム、ケイ素等を、所望のめっき層の組成と同一の配合割合で含む溶融金属浴に、基材となる鋼板を浸漬させる等の公知の手段を用いることができる。このときのめっき層の形成条件は特に制限されないが、例えば550〜650℃の溶融金属浴に鋼板を1〜10秒間浸漬した後、20〜40℃/秒の冷却速度で冷却することにより、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を得ることができる。
【0018】
またステンレス鋼板としては、例えばSUS304製のものを用いることができる。
【0019】
このような金属板に対して、第一の塗料と第二の塗料を順次塗布するものであるが、これに先だって、必要に応じてクロメート処理やリン酸亜鉛処理等といった化成処理や、金属板1の表面の油脂、埃等の汚れの除去等の前処理を施したり、下塗り塗料の塗布をなすことができる。
【0020】
上記第一の塗料と第二の塗料としては、少なくとも第二の塗料として縮み塗料(ちりめん塗料)を用いる。縮み塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えばポリエステル/メラミン系塗料に、アミンでブロックした硬化触媒を添加した縮み塗料、すなわちポリエステル樹脂と、低核体メチル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂と、スルホン酸等の硬化触媒をアミンと反応させた反応混合物とを、適宜の溶剤中に含有させたものを用いることができる。また必要に応じて着色のための適宜の顔料や染料、塗膜の物性や縮み具合を調整するための有機パウダーやガラス繊維等を含有させることもできる。このとき、ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、メラミン樹脂の含有量は10〜50質量部、アミンでブロックした硬化触媒の含有量は1〜10質量部とすることが好ましい。また有機パウダーを含有させる場合にはその含有量は、ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に5質量部以下とすることが好ましく、またガラス繊維を含有させる場合にはその含有量は35質量部以下とすることが好ましい。
【0021】
また、第一の塗料としては特に制限されず、ポリエステル系塗料等の適宜の熱硬化性塗料が用いられる。また、特に第一の塗料としても上記第二の塗料と同様の縮み塗料を用いると、塗膜の表面粗さを更に大きくすることが可能である。
【0022】
そして、第一の塗料と第二の塗料とを塗布するにあたっては、第一の塗料の塗布後、その塗膜を加熱硬化させることなくウェットな状態のままで第二の塗料を塗布して塗膜を形成し、次いで第一の塗料による塗膜と第二の塗料による塗膜とを加熱硬化して成膜するものである。これにより、形成される塗膜の粗さは、単独の塗料にて塗膜を形成する場合や、第一の塗膜を成膜してから第二の塗膜を塗布成膜する場合と比べて大きくなるようにすることが可能である。
【0023】
このように塗膜の粗さが大きくなる理由は必ずしも明確ではないが、加熱成膜時に下層側にウェットな状態の第一の塗料が存在することで、成膜過程において第二の塗料が収縮することで塗膜表面が粗面化する際の第二の塗料の流動が容易となり、このために塗膜の表面の粗さが大きくなるものと考えられる。また、特に第一の塗料と第二の塗料が共に縮み塗料であると、第一の塗料も縮みの増大に寄与して、更に塗膜の表面の粗さが大きくなるものと考えられる。
【0024】
ここで、上記の塗膜の粗さは、十点平均粗さ(Rzjis82;JIS B 0601:2001 附属書1、JIS B 0601:1982)を意味している。素焼き調の粗面の外観やざらつきは、Rzjis82にて評価するのが最適だからである。上記のようにして塗膜を形成すると、塗膜のRzjis82を55μm以上となるようにすることも可能であり、このような塗装鋼板は塗膜が素焼き調の外観を有して非常に意匠性が高いものとなる。
【0025】
また、塗料の膜厚は大きくする程塗膜の粗さが大きなり、またこの膜厚が小さくなるほど塗膜の粗さが小さくなる傾向が生じるものであり、この傾向は第一の塗料と第二の塗料とが共に縮み塗料である場合に大きくなる。このため塗膜の膜厚は塗料の組成等に応じて、所望の粗さの塗膜が形成できるように適宜調整されるものであるが、特に第一の塗料による塗膜の膜厚は5〜30μmの範囲、第二の塗料による塗膜の膜厚は1〜10μmの範囲が好ましく、また全体の膜厚は8〜40μmの範囲となるようにすることが好ましい。
【0026】
また、第一の塗料と第二の塗料の粘度は塗布方法等に応じて適宜調整されるものであるが、塗膜の粗さを十分に大きくなるように形成するためには、第一の塗料のフォードカップNo.4による粘度が50秒以上であることが好ましく、第二の塗料のフォードカップNo.4による粘度については15〜40秒の範囲であることが好ましい。
【0027】
このように金属板1に対して塗装処理を行う工程の概要を図1に示す。この工程には、始端側から終端側にかけて、ペイオフリール12、前処理部13、下塗り塗装部14、焼付炉15、冷却装置16、第一の塗料の塗装用の塗料塗布装置17、二次塗装用の塗料噴霧装置21、焼付炉18、冷却装置19、巻取ロール22が順次配設されている。
【0028】
ペイオフリール12には長尺な金属板1がロール状に巻回されており、このペイオフリール12から長尺な金属板1が巻き解かれて繰り出され、工程の終端側に向けて長手方向に搬送されるようになっている。
【0029】
このペイオフリール12から繰り出された長尺な金属板1は、前処理部13に導入されて、クロメート処理やリン酸亜鉛処理等といった化成処理や、金属板1の表面の油脂、埃等の汚れの除去等の前処理が施された後、前処理部13から導出される。
【0030】
金属板1は前処理後に下塗り塗装部14に導入され、表面に下塗り塗料が塗布されて下塗り塗膜5が形成され、更に熱風炉や誘電加熱装置等の焼付炉15に導入されることにより下塗り塗膜5が加熱されて焼付硬化される。加熱後の金属板1は冷却装置16を通過して冷却される。
【0031】
このとき下塗り塗料としては、例えばエポキシ樹脂ワニス、エポキシウレタン樹脂ワニス、ポリエステル樹脂ワニス等の熱硬化性樹脂ワニスに、酸化チタン、微粉末クレー、炭酸カルシウム等の体質顔料や、防錆顔料などを分散させた樹脂系塗料を用いることができる。防錆顔料としては、例えばクロム酸ストロンチウムやクロム酸カルシウム等のクロム酸塩を主体としたものを用いることができる。下塗り塗装部14においては、このような組成を有する下塗り塗料を、金属板1の一面に塗布するものであり、また場合によっては金属板1の他面にも下塗り塗料を塗布する。また、金属板1の他面には、下塗り塗料とは異なる組成を有する裏塗り塗料を塗布しても良い。下塗り塗料や裏塗り塗料の塗布にあたっては、図示の例では塗料が供給された塗布ロール14a,14bを金属板1の上下両面にそれぞれ接触させることにより行われているが、浸漬、スプレー、はけ塗り、ロールコーター、エアーナイフ、静電塗布等から構成される通常の塗布装置を配設することができる。
【0032】
下塗り塗膜5の厚みは特に制限されず、適宜設定されるものであるが、3〜25μmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
下塗り塗膜5が形成された金属板1は、次いで第一の塗料の塗装用の塗料塗布装置17と二次塗装用の塗料噴霧装置21とを順次通過して表面に第一の塗料と第二の塗料が共にウェットな状態で順次塗布され、更に熱風炉や誘電加熱装置等の焼付炉18に導入されることにより上塗り塗膜4が加熱されて焼付硬化される。
【0034】
第一の塗料の塗装用の塗料塗布装置17では金属板1の一面の全面に第一の塗料が塗布されるものであり、また場合によっては金属板1の他面にも第一の塗料を塗布する。また金属板1の他面には、第一の塗料に代えて、第一の塗料とは異なる組成を有する裏塗り塗料を塗布しても良い。
【0035】
第一の塗料の塗装時の塗装方式として、図示の例ではロールコートを採用している。すなわち、塗料塗布装置17は裏塗り塗装用の塗布ロール17aと第一の塗料の塗装用の塗布ロール17bとから構成されており、第一の塗料や裏塗り塗料の塗布は、図示の例では塗料が供給された塗布ロール17a,17bを金属板1の上下両面にそれぞれ接触させることにより行われている。塗料塗布装置17の構成はこのようなものに限られず、浸漬、スプレー、はけ塗り、ロールコーター、エアーナイフ、静電塗布等の適宜の方式による塗布装置を用いることができる。この第一の塗料は下塗り塗膜5が形成された金属板1の表面の全面に亘って塗布されるものであり、これにより第一の塗料による塗膜が形成される

【0036】
このように第一の塗料による塗膜が形成された後、この塗膜を加熱硬化させることなくウェットな状態のままで第二の塗料10を塗布して塗膜を形成する。第一の塗料による塗膜の形成後、第二の塗料10を塗布するまでにどの程度の時間をあけるかは特に制限されないが、90秒以内であることが好ましい。
【0037】
第二の塗料10を塗布する塗料塗布装置20は塗布ロール17a,17b等からなる第一の塗料の塗料塗布装置17の下流側に配設されている。
【0038】
この塗料塗布装置20には、図示の例では、金属板1の上方に塗料噴霧装置21が配設されており、第一の塗料が塗布された金属板1には、塗料噴霧装置21にて、金属板1の一面側の表面において、焼付硬化される前の未硬化状態の第一の塗料の塗膜上に第二の塗料10がスプレー噴霧されて塗布される。
【0039】
塗料塗布装置20の構成はこのようなスプレー噴霧によるものに限られず、カーテンコートによるものなどを採用することができるが、未硬化の第一の塗料の上面に塗布するため、塗料を塗布するためのノズル等が第一の塗料による塗膜の上面と離間した状態で第二の塗料10の塗布を行う非接触方式での塗布方法を採用することが好ましく、ロールコート等のような接触方式の塗布方法は採用しないことが好ましい。
【0040】
また、特に上記のように第二の塗料10をスプレー塗布する場合には、形成される塗膜の粗さが更に大きくなる。これは、第二の塗料10の噴霧後、第一の塗料の塗膜の上面に到達するまでの間における、第二の塗料10中の溶剤の揮散量が大きくなり、第一の塗料の塗膜の上面に塗布された第二の塗料10は樹脂濃度が高くなることに起因して第二の塗膜10における塗膜の縮みが大きくなるためと推察される。
【0041】
このように第二の塗料10をスプレー塗布する場合の噴霧圧は適宜調整されるが4.9×104〜3.9×105Pa(0.5〜4.0kgf/cm2)の範囲とすることが好ましい。
【0042】
そして、第二の塗料が塗布された後の金属板1は、熱風炉や誘電加熱装置等の焼付炉18に導入されることにより上塗り塗膜4が焼付硬化されるものであり、このとき第一の塗料による塗膜と第二の塗料による塗膜とが同時に加熱されて焼付硬化されるものである。第二の塗料10による塗膜の形成後、焼付硬化するまでにどの程度の時間をあけるかは特に制限されないが、90秒以内であることが好ましい。また焼付硬化の加熱条件は第一の塗料や第二の塗料10の組成、塗膜の厚み等に応じて適宜調整される。加熱後の金属板1は冷却装置19を通過して冷却される。
【0043】
このようにして塗膜が成膜された金属板1は、工程の終端側に配設された巻取ロール22に巻回される。またこの工程の終端において、金属板1を幅方向に沿って裁断して積載することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0045】
(実施例1〜10、比較例1〜6)
金属板1としては幅1250mmの長尺の溶融亜鉛めっき鋼板を用い、この塗装亜鉛鋼板を長手方向に50m/分の搬送速度で連続的に搬送しながら、塗装前処理、下塗り塗装、上塗り塗装を順次施すことにより、塗装金属板を得た。
【0046】
このとき、塗装前処理としては塗布型クロメート処理(Cr付着量18.6mg/m2)を行った。
【0047】
また下塗り塗装部14において塗布する下塗り塗料としてはポリエステル系下塗り塗料(日本油脂BASFコーティングス株式会社製、品番「FX−39P」)を用い、下塗り塗膜5の膜厚は、上面側を5μm、下面側を3μmとした。また焼付炉16における下塗り塗膜5の焼付条件は加熱温度210℃、加熱時間50秒とした。
【0048】
また、第一の塗料及び第二の塗料としては、下記の表1に示すポリエステル/メラミン系塗料(通常塗料)、又はポリエステル/イソシアネート系塗料にアミン類でブロックした硬化触媒を添加した縮み塗料を用いたものであり、各塗料の粘度は溶剤を加えることで調整した。そして、各実施例及び比較例について、表2,3に示す条件で塗膜の形成を行った。このとき、第一の塗料の塗布と第二の塗料の塗布との間の間隔は5秒間とし、また塗料の塗布後、焼付硬化開始までの間隔は5秒間とした。
【0049】
(表面粗さ測定)
各実施例及び比較例の塗装アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板における塗膜について、、東京精密工業社製の粗度測定装置「ハンディーサーフE−35A」を用いて十点平均粗さRzjis82を測定した。
【0050】
(加工性試験)
各実施例及び比較例の塗装アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を、20℃又は5℃の室内に1時間おいた後、塗面を外側にして180度曲げて、折り曲げ部分に粘着テープを貼着した後に引き剥がした場合に塗膜の剥離が発生しなくなるT数を測定した。T数とは、折り曲げ部分の内側に何も挟まず、180度折り曲げを行った場合を0T、塗装アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板と同じ厚さの板を1枚挟んで折り曲げた場合を1T、2枚、3枚、4枚を挟んだ場合をそれぞれ2T、3T、4Tと表した。
【0051】
(衝撃測定)
各実施例及び比較例の塗装アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板について、JIS K 5400.5.3:1990に準拠したデュポン式衝撃試験にて耐衝撃強度を測定した。このとき、錘の落下させる際の高さを0〜50cmの範囲で変化させて錘落下後の塗膜の剥離の有無を確認した。下記評価においては、分母に錘

の高さの変更範囲である50(cm)を示し、分子には錘の落下後に塗膜の剥離が生じない場合の錘の最大高さ(cm)を示している。
【0052】
(鉛筆硬度測定)
各実施例及び比較例について、塗膜の硬度を、JIS K 5400:1990に準拠して求めた。
【0053】
これらの結果を併せて表2,3に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0058】
1 金属板
10 第二の塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板表面に第一の塗料を塗布し、この第一の塗料を成膜する前に更に第二の塗料を塗布した後に、前記第一及び第二の塗料を加熱成膜する工程を含み、前記塗料のうち少なくとも第二の塗料が縮み塗料であることを特徴とする塗装金属板の製造方法。
【請求項2】
第一の塗料が縮み塗料であることを特徴とする請求項1に記載の塗装金属板の製造方法。
【請求項3】
上記縮み塗料が、ポリエステル/メラミン系塗料にアミン類でブロックした硬化触媒を添加したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装金属板の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の方法にて製造され、第一の塗料と第二の塗料とを加熱成膜して得られる塗膜の表面の十点平均粗さRzjis82が55μm以上であることを特徴とする塗装金属板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−218448(P2006−218448A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36244(P2005−36244)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000207436)日鉄鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】