説明

増幅器

【課題】 複数の増幅手段を接地電位と直流電源との間に接続していても、電源の省電力化を図る
【解決手段】 高周波信号を順に増幅するように増幅器6、8、集積増幅回路12の入出力が接続され、集積増幅回路12の出力信号をエミッタ共通接続のダブルエミッタトランジスタ20がベース電極に受けて増幅し、コレクタ電極から出力し、エミッタ電極20e1、20e2が接地電位点に接続されている。エミッタ電極20e1と接地電位点との間に、増幅器6及び集積増幅回路12の電源端子A、B、C、Dが、直列に接続され、エミッタ電極20e2と接地電位点との間に、増幅器8の2つの電源端子E、Fが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅器に関し、特に、増幅器の一部を構成する複数の増幅手段の電源端子が直列に接続されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の増幅手段の電源端子が直列に接続された増幅器としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術は、発振回路の発振信号を緩衝増幅器を介して負荷に供給するもので、発振回路としてコルピッツ発振回路を使用し、緩衝増幅器としてカスコード接続増幅器を使用している。即ち、コルピッツ発振回路を構成するシングルエミッタのトランジスタのエミッタを抵抗器を介して接地し、このトランジスタのコレクタを、カスコード接続増幅器の一部をなすエミッタ接地増幅器のシングルエミッタのトランジスタのエミッタに接続し、このトランジスタのコレクタがカスコード接続増幅器の他の部分をなすベース接地増幅器のシングルエミッタのトランジスタのエミッタに接続され、このトランジスタのコレクタが負荷を介して直流電源に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−179904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成された増幅器では、直流電源と接地電位との間に直列に3台のトランジスタが接続されており、接地電位に最も近い位置にあるトランジスタに印加することができる電圧が低くなっていた。この問題を解決するには、電源電圧を上昇させる必要があるが、そのためには、直流電源を大型なものにしなければならなかった。
【0005】
本発明は、複数の増幅手段を接地電位と直流電源との間に接続していても、省電力化を図ることができる増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の増幅器は、高周波信号を順に増幅するように入出力が縦続接続された少なくとも3台の増幅手段と、これら少なくとも3台の増幅手段の最終のものの出力信号をベース電極に受けて増幅し、コレクタ電極から出力し、第1及び第2のエミッタ電極が基準電位点、例えば接地電位点に接続されたエミッタ共通接続のダブルエミッタトランジスタとを、備えている。複数の増幅手段としては、FETを使用したものやバイポーラトランジスタを使用したものを使用することができる。第1のエミッタ電極と前記基準電位点との間に、前記複数の増幅手段のうち第1の増幅手段が第1及び第2の電源端子を有している。前記複数の増幅手段のうち第2の増幅手段が第3及び第4の電源端子を有している。前記第1の増幅手段の前記第2の電源端子と前記第2の増幅手段の前記第3の電源端子とが接続されている。前記第1の増幅手段の前記第1の電源端子と前記第2の増幅手段の前記第4の電源端子とが、前記第1のエミッタ電極と前記準電位点との間に接続されている。前記複数の増幅手段のうち残りのもののうち少なくとも1台の増幅手段である第3の増幅手段が、第5及び第6の電源端子を有している。前記第5及び第6の電源端子が、前記第2のエミッタ電極と前記基準電位点との間に、介在している。第3の増幅手段の他に増幅手段が設けられている場合、例えば第4の増幅手段が設けられている場合、第4の増幅手段が有する第7及び第8の電源端子のうち第7の電源端子が第3の増幅手段の第6の電源端子に接続され、第8の電源端子が前記基準電位点に接続される。
【0007】
このように構成された増幅器では、第1及び第2の増幅手段には、ダブルエミッタトランジスタの第1のエミッタ電極から電流が供給され、少なくとも第3の増幅手段には第2のエミッタ電極から電流が供給される。従って、第2の増幅手段の第3及び第4の電源端子間に印加される電圧が大きく低下することがない。
【0008】
第1のエミッタ電極が出力可能な電流よりも、第1及び第2の増幅手段が必要とする電流の合計値が大きいことがある。この場合、第1の増幅手段の電源端子と第2の電源端子との接続点に、補充用電流供給経路が設けられている。この補充用電流供給経路の電圧は、直流電源の電圧よりも低くすることができる。
【0009】
このように構成すると、第1及び第2の増幅手段において必要な電流の不足分を、補充用電流供給経路から補充することができ、第1及び第2の増幅手段のうち基準電位側にあるものを正常に動作させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ダブルエミッタトランジスタを使用して、このダブルエミッタトランジスタの第1及び第2のエミッタ電極からそれぞれ電流を供給するので、第1のエミッタ電極と基準電位点との間に直列に接続された第1及び第2の増幅手段にそれぞれ必要な電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1実施形態の増幅器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1実施形態の増幅器は、例えば共同受信システムにおいて使用する中継増幅器やブースタとして使用されるもので、図1に示すように入力端子2を有している。入力端子2には、高周波信号、例えばUHF帯またはVHF帯等のテレビジョン放送信号が供給される。
【0013】
このテレビジョン放送信号は、第1の増幅手段、例えば増幅器6によって増幅された後、第3の増幅手段、例えば増幅器8によって増幅される。増幅されたテレビジョン放送信号のチルト特性がチルト回路10によって調整され、第2の増幅手段、例えば集積増幅回路12によって増幅され、レベル調整手段、例えばゲインコントロール回路14によってゲインコントロールが行われた後、最終段増幅器16によって増幅が行われ、出力端子18から出力される。
【0014】
最終段増幅器16は、ダブルエミッタのバイポーラトランジスタ20を有し、そのコレクタ電極には、負荷抵抗器22を介して直流電源から、例えば+24Vの電圧が供給されている。コレクタ電極は出力端子18に接続されている。この直流電源は、バイアス抵抗器23を介してダブルエミッタのバイポーラトランジスタ20のベース電極に接続され、このベース電極はバイアス抵抗器24を介して接地電位点に接続されている。ダブルエミッタのバイポーラトランジスタ20の第1及び第2のエミッタ電極、例えば2つのエミッタ電極20e1、20e2は、コンデンサ26、27を介して基準電位点に接続され、高周波的に接地されている。負荷抵抗器22、バイアス抵抗器23、24は、ダブルエミッタのバイポーラトランジスタ20のエミッタ電極20e1、20e2の電圧が、例えば10Vであって、例えば40mAの電流を出力することが可能に選択されている。
【0015】
エミッタ電極20e1は、増幅器6及び集積増幅回路12に動作電流を供給するように構成されている。即ち、増幅器6は、トランジスタ、例えばFET28を有し、そのドレイン電極が高周波コイル30を介してエミッタ電極20e1に接続されている。FET28のソース電極は、コンデンサ32によって高周波的に接地され、さらにソース抵抗器34の一端に接続されている。ソース抵抗器34の他端は、高周波コイル37を介してFET28のゲート電極に接続されている。これら高周波コイル30、37及びソース抵抗器34によってFET28にバイアスが与えられている。FET28のドレインと接続されていない高周波コイル30の端部が、増幅器6の第1の電源端子Aであり、FET28のソースに接続されていない抵抗器34の端部が増幅器6の第2の電源端子Bである。
【0016】
ソース抵抗器34の端部は、抵抗器36、パターンコイル38を介して集積増幅回路12の出力端に接続されており、この出力端が第3の電源端子Cに接続されている。集積増幅回路12は第4の電源端子Dを有し、これは接地電位点に接続されている。
【0017】
トランジスタ20のエミッタ電極20e1から供給された電流は、FET28のドレイン・ソース間を流れ、更に抵抗器34、36、パターンコイル38、集積増幅回路12を介して接地電位点に流れる。これによって、FET28と集積増幅回路12とが、それぞれ増幅動作を行う。
【0018】
集積増幅回路12を動作させるために最適な電流は、例えば約50mAであり、エミッタ20e1からの電流のみでは不足である。そこで、抵抗器34、36の接続点に、補充用電流供給経路、例えば抵抗器40を介して別の直流電源から+15Vの電圧が供給され、エミッタ20e1からの電流では不足する分を補っている。この+15Vの電源は、この増幅器と共に使用する図示していない回路用のものを流用している。なお、FET28のドレイン・ソース間電圧は約3Vであり、抵抗器34、40の接続点の接地電位に対する電圧は約7Vであり、抵抗器36とパターンコイル38との接続点の接地電位に対する電圧は約5Vである。集積増幅回路12の対接地電位も約5Vである。
【0019】
なお、集積増幅回路12の出力は、直流阻止コンデンサ39を介してゲインコントロール回路14に供給され、ゲインコントロール回路14の出力は、直流阻止コンデンサ41を介してダブルエミッタトランジスタ20のベース電極に供給されている。
【0020】
トランジスタ20のエミッタ20e2は、増幅器8に対して動作電流を供給している。即ち、エミッタ20e2は、電圧降下用抵抗器42、負荷抵抗器44の直列回路を介して、増幅器8のトランジスタ、例えばバイポーラトランジスタ46のコレクタ電極に接続されている。このコレクタは直流阻止コンデンサ48を介してチルト回路10に接続されている。バイポーラトランジスタ46のエミッタ電極は、エミッタ抵抗器50を介して基準電位点に接続されると共に、コンデンサ52を介して基準電位点に高周波的に接続されている。負荷抵抗器44と電圧降下用抵抗器42の接続点と、バイポーラトランジスタ46のベース電極との間にバイアス用抵抗器54が接続され、ベース電極はバイアス用抵抗器56を介して接地電位点に接続されている。エミッタ電極20e2に接続されている抵抗器42の端部が第5の電源端子Eであり基準電位点に接続されている、エミッタ抵抗器50の端部が第6の電源端子Fである。なお、ベース電極には、直流阻止コンデンサ58を介してFET28の出力が供給されている。また、電圧降下用抵抗器42、負荷抵抗器44、エミッタ抵抗器50、バイアス用抵抗器54、56の値は、バイポーラトランジスタ46のエミッタ電流が約40mAで、コレクタ・エミッタ間電圧が約7Vとなるように設定されている。
【0021】
このように構成された増幅器では、最終段の増幅器を構成しているダブルエミッタトランジスタ20のエミッタ20e1から増幅器6、集積増幅回路12に動作電流を供給し、ダブルエミッタトランジスタ20のエミッタ20e2から増幅器8に動作電流を供給しているので、増幅器6、集積回路12が直流的に直列に接続されていても、接地電位点側に近い集積回路増幅回路12にも、これを動作させるために必要な動作電圧を充分に供給することができる。また、この集積回路増幅回路12においてエミッタ電極20e1からの電流では動作させるのに不足する分は、+15Vの電源から供給しているので、集積増幅回路12は正常に動作する。
【0022】
上記の実施形態では、増幅器6をFET28によって構成したが、これに限らず、バイポーラトランジスタによって構成することもできるし、集積増幅回路を使用することもできる。同様に、増幅器8をバイポーラトランジスタ46によって構成したが、FETによって構成することもできるし、集積増幅回路を使用することもできる。また、集積増幅回路12に代えて、FETまたはバイポーラトランジスタで構成した増幅器を使用することもできる。また、上記の実施形態では、ダブルエミッタトランジスタ20のエミッタ20e1からの電流によって増幅器6と集積増幅回路12とを動作させたが、増幅器6、8を動作させることもできるし、増幅器8と集積増幅回路12とを動作させることもできる。同様に、ダブルエミッタトランジスタ20のエミッタ20e2からの電流によって増幅器8を動作させたが、増幅器6または集積増幅回路12を動作させることもできる。上記の実施形態では、チルト回路10やゲインコントロール回路14を設けたが、場合によっては除去することができる。上記の実施形態では、エミッタ電極20e1から増幅器6と集積増幅回路12との動作電流を供給したが、エミッタ電極20e1に電流の余裕があれば、補充用電流供給経路は不要であるし、また電流を供給する増幅器の台数を増加させることができる。同様に、エミッタ電極20e2から増幅器8に動作電流を供給したが、エミッタ電極20e2に電流の余裕があれば、電流を供給する増幅器の台数を増加させることができる。
【符号の説明】
【0023】
6 増幅器(第1増幅手段)
8 増幅器(第3増幅手段)
12 集積増幅回路(第2増幅手段)
20 ダブルエミッタトランジスタ
20e1 エミッタ電極(第1のエミッタ電極)
20e2 エミッタ電極(第2のエミッタ電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を順に増幅するように入出力が縦続接続された少なくとも3台の増幅手段と、
これら少なくとも3台の増幅手段の最終のものの出力信号をベース電極に受けて増幅し、コレクタ電極から出力し、第1及び第2のエミッタ電極が基準電位点に接続されたエミッタ共通接続のダブルエミッタトランジスタとを、
備える増幅器において、
第1のエミッタ電極と前記基準電位点との間に、前記複数の増幅手段のうち第1の増幅手段が第1及び第2の電源端子を有し、前記複数の増幅手段のうち第2の増幅手段が第3及び第4の電源端子を有し、前記第1の増幅手段の前記第2の電源端子と前記第2の増幅手段の前記第3の電源端子とが接続され、前記第1の増幅手段の前記第1の電源端子と前記第2の増幅手段の前記第4の電源端子とが、前記第1のエミッタ電極と前記準電位点との間に接続され、前記複数の増幅手段のうち残りのもののうち少なくとも1台の増幅手段である第3の増幅手段が、第5及び第6の電源端子を有し、前記第5及び第6の電源端子が、前記第2のエミッタ電極と前記基準電位点との間に、介在している増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の増幅器において、前記第1のエミッタ電極が出力可能な電流よりも、前記第1及び第2の増幅手段が必要とする電流の合計値が大きく、前記第1の増幅手段の第2の電源端子と前記第2の増幅手段の前記第3の電源端子との接続点に、補充用電流供給経路が設けられた増幅器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−228887(P2011−228887A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95900(P2010−95900)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】