説明

増幅回路

差動入力段(M1,M2)と、この差動入力段(M1,M2)のそれぞれの出力端子に結合された2つのクロスカップリング型電流ミラー(M3,M4;M5,M6)と、これらの電流ミラーの出力端子に結合された最小値選択回路(M11,M12,M13,M14)を具えている増幅回路を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【非特許文献1】K.J. de Langen, J.H. Huijsing, "Low- Voltage Power-Efficient Operational Amplifier Design Techniques - An Overview", IEEE Custom integrated circuits conference, 2003, pp. 677-684.
【非特許文献2】K.J. de Langen, J.H. Huijsing, "Compact Low- Voltage Power-Efficient Operational Amplifier Cells for VLSI", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 33, no. 10, October 1998, pp. 1482-1496.
【非特許文献3】R. van Dongen, V. Rikkink, "A 1.5 V Class AB CMOS Buffer Amplifier for Driving Low-Resistance Loads", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 30, no. 12, December 1995, pp. 1333-1338.
【非特許文献4】D.M. Monticelli, "A Quad CMOS Single-Supply Op Amp with Rail-to-Rail Output Swing", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. SC-21, no. 6, December 1986, pp.1026-1034.
【非特許文献5】M.D. Pardoen, M.G. Degrauwe, "A Rail-to-Rail Input/Output CMOS Power Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 25, no. 2, April 1990, pp. 501-504.
【非特許文献6】T. Stockstad, H. Yoshizawa, "A 0.9 V 0.5 μA Rail-to-Rail CMOS Operational Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 37, no. 3, March 2002, pp. 286-292.
【非特許文献7】J.H. Huijsing et al., "Low-Power Low- Voltage VLSI Operational Amplifier Cells", IEEE Transactions on circuits and systems-I: Fundamental theory of applications, vol. 42, no. 11, November 1995, pp. 841-852.
【0003】
(発明の背景)
良い性能と低零入力電流とを組み合わせるために、多くの増幅回路はAB級出力段で実現されている。さらに、低いひずみ率を得るために、高いゲインを有する第2増幅段を持つことが望まれる。高いゲインは一般に、ソース共通型の回路、あるいはバイポーラトランジスタの場合にはエミッタ共通型の回路を用いることによって実現される。小型の二段増幅器では、このことは、ソース共通型の回路においてAB級動作が求められることを意味する。ソース共通の出力トランジスタとAB級動作との組合せは、K.J. de Langen, J.H. Huijsing, "Low- Voltage Power-Efficient Operational Amplifier Design Techniques - An Overview", IEEE Custom integrated circuits conference, 2003, pp. 677-684.(以下参考文献1と称す)、K.J. de Langen, J.H. Huijsing, "Compact Low- Voltage Power-Efficient Operational Amplifier Cells for VLSI", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 33, no. 10, October 1998, pp. 1482-1496.(以下参考文献2と称す)、R. van Dongen, V. Rikkink, "A 1.5 V Class AB CMOS Buffer Amplifier for Driving Low-Resistance Loads", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 30, no. 12, December 1995, pp. 1333-1338.(以下参考文献3と称す)、D.M. Monticelli, "A Quad CMOS Single-Supply Op Amp with Rail-to-Rail Output Swing", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. SC-21, no. 6, December 1986, pp.1026-1034.(以下参考文献4と称す)、M.D. Pardoen, M.G. Degrauwe, "A Rail-to-Rail Input/Output CMOS Power Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 25, no. 2, April 1990, pp. 501-504.(以下参考文献5と称す)、T. Stockstad, H. Yoshizawa, "A 0.9 V 0.5 μA Rail-to-Rail CMOS Operational Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 37, no. 3, March 2002, pp. 286-292.(以下参考文献6と称す)、及びJ.H. Huijsing et al., "Low-Power Low- Voltage VLSI Operational Amplifier Cells", IEEE Transactions on circuits and systems-I: Fundamental theory of applications, vol. 42, no. 11, November 1995, pp. 841-852.(以下参考文献7と称す)に提示されている順方向回路の一つを使用することによって実現することができる。
【0004】
【非特許文献8】V.C. Vincence et al, "A Low- Voltage CMOS Class-AB Operational Amplifier", IEEE International Symposium on Circuits and Systems 2002, Vol. 3, 26-29 May 2002, p. III-603 - III-606.
【非特許文献9】F.N.L. op 't Eynde et al., "A CMOS Large-Swing Low-Distortion Three-Stage Class AB Power Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 25, no. 1, February 1990, pp. 265-273.
【非特許文献10】J.H. Botma et al., "A low-voltage CMOS Op Amp with rail-to-rail constant-gm input stage and a class AB rail-to-rail output stage", IEEE International Symposium on Circuits and Systems 1993, 3-6 May 1993, pp. 1314-1317.
【非特許文献11】J.H. Huijsing, D. Linebacher, "Low- Voltage Operational Amplifier with Rail- to-Rail Input and Output Ranges", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. SC-20, no. 6, December 1985, pp. 1144-1150.
【0005】
また、フィードバック回路を用いることができ、フィードバック回路は一般に、零入力電流をより正確に制御し、より対称的な挙動を与えることができ、このことはひずみ性能によって良いことである。これらの例は、参考文献1、2、7、V.C. Vincence et al, "A Low- Voltage CMOS Class-AB Operational Amplifier", IEEE International Symposium on Circuits and Systems 2002, Vol. 3, 26-29 May 2002, p. III-603 - III-606.(以下参考文献8と称す)、F.N.L. op 't Eynde et al., "A CMOS Large-Swing Low-Distortion Three-Stage Class AB Power Amplifier", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. 25, no. 1, February 1990, pp. 265-273.(以下参考文献9と称す)、J.H. Botma et al., "A low-voltage CMOS Op Amp with rail-to-rail constant-gm input stage and a class AB rail-to-rail output stage", IEEE International Symposium on Circuits and Systems 1993, 3-6 May 1993, pp. 1314-1317.(以下参考文献10と称す)、及びJ.H. Huijsing, D. Linebacher, "Low- Voltage Operational Amplifier with Rail- to-Rail Input and Output Ranges", IEEE Journal of solid-state circuits, vol. SC-20, no. 6, December 1985, pp. 1144-1150.(以下参考文献11と称す)に提示されている。これらの回路は最小値選択器を利用し、この最小値選択器は、出力段トランジスタにおける最小値電流と基準電流と比較する。こうして、フィードバックループは、最小電流が基準レベルに留まることを保証し、従って、どの出力トランジスタも完全にスイッチオフしないことが保証される。フィードバックループは、出力段における零電流及び最小電流の正確な制御を可能にする。
【0006】
参考文献1及び2に提示されている解決法は、本発明の一部の好適例と同じ種類の最小値選択器を用いるが、AB級電流制御用の追加的な段を必要とし、この追加的な段では、出力段トランジスタにおける最小電流を基準電流と比較し、比較の結果を、出力段トランジスタにフィードバックされる差動信号に変換している。
【0007】
参考文献7、9及び10に提示されている解決法は、他の種類の最小電流選択器を使用するが、これらの選択器も、最小電流と基準電流とを比較し、比較の結果を出力トランジスタにフィードバックすることのできる差動信号に変換するための、多数の追加的なトランジスタを必要とする。
【0008】
参考文献11では、最小電流を制御するのではなく、出力トランジスタにおける2つの電流の積を一定に保っている。このことも、どの出力トランジスタも完全にスイッチオフされないことを保証する。
【0009】
参考文献8に提示されている解決法も、最小値選択器から出力トランジスタに電流を搬送するための追加的な段を使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の目的及び概要)
本発明の目的はとりわけ、改良された増幅回路を提供することにある。この目的を達成するために、本発明は請求項1に規定する増幅回路を提供する。有利な好適例は従属請求項に規定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主な態様は、差動入力段と、この差動入力段のそれぞれの出力端子に接続された2つのクロスカップリング(交差結合)型電流ミラーと、これらの電流ミラーの出力端子に結合された最小値選択回路とを具えた増幅回路を提供する。
【0012】
本発明の有利な好適例は、AB級動作を実現するために、最小値選択器に接続された追加的な中間増幅段を必要としない。このようにして、回路面積、及び供給電流も節減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に図面を参照して説明する実施例より明らかになる。
【実施例1】
【0014】
図1の実施例では、2つのクロスカップリング型電流ミラー対M3、M4及びM5、M6が、差動入力電圧VIN+、VIN-を受ける差動入力段M1およびM2の上に配置されている。これら2つの電流ミラーは、入力段からの通常モード信号(バイアス電流)に対しては低いインピーダンスを呈し、差動電流(信号電流)に対しては高いインピーダンスを呈する。これらの差動電流は、第2差動段を形成するソース共通型のPMOSトランジスタM7及びM8のゲートに至る。トランジスタM7及びM8におけるバイアス電流は良好に制御され、電流ミラーM3、M4及びM5、M6におけるバイアス電流のスケーリング(拡大縮小)コピーである。このスケーリングは、PMOSトランジスタの寸法をスケーリングすることによって行うことができる。トランジスタM7及びM8の差動出力電流は、電流ミラーM9、M10によってシングルエンド電流に変換される。出力電圧VOUTはトランジスタM10のドレインにおいて得られる。
【0015】
電流ミラートランジスタM9及びM10における最小電流を制御するために、単一の最小値選択器を追加する。この最小値選択器は基本的に、2つのMOSトランジスタM11及びM12を直列に有し、そのうち最小の駆動信号をゲート上に有する方が電流を決定する。MOSトランジスタの第2の直列接続M13及びM14は、対称的な挙動を得るために追加する。最小値選択器の電流が意図した値未満である場合には、より多くの電流が、トランジスタM1及びM2、従ってトランジスタM3〜M6を通って流れ、最終的に出力段を通って流れる。このようにして、出力段における電流が正確に制御される。
【実施例2】
【0016】
図1の実施と比較すれば、図2の実施例は、第1最小値選択器M11、M12、M11a、M12a、および第2最小値選択器M13、M14、M13a、M14aを具えて、最小電流がもはや差動対のテール電流に影響しないことを保証し、これによりひずみを低減する。
【実施例3】
【0017】
第2の代案実施例を図3に示し、ここでは、第1の非対称の最小値選択器M11、M12、及び第2の非対称の選択器M13、M14を用いる。このことは、コモンモード−差動の変換を生じさせ、PMOS電流ミラー段の差動入力インピーダンスを低減する。このことは、回路のループゲインが低減されることを意味するが、図2の回路に対して複雑性も低減される。
【0018】
本発明の有利な実施例は、ソース共通型AB級出力段を実現する非常に小型の回路を提供する。従来技術のAB級出力段は一般に、非常に複雑な回路から成り、大きなチップ面積を生じさせる。本発明の実用的な実施例は、2つのクロスカップリング型電流ミラーを単一のMOS最小値選択器と組み合わせて非常に小型の二段増幅器を得て、この増幅器は、単一の電流源のみから非常に容易にバイアスをかけることができる。この回路は、高いループゲイン及びAB級動作が所望されるあらゆる回路において使用することができる。この例は、A/D変換器内の電流−電圧変換、オーディオ回路、及び基準電圧用のバッファ回路である。この回路は、MP3プレーヤIC内の、基準キャパシタを充電及び放電するための基準バッファ回路に使用されることができる。必要な充電時間及び放電時間を達成するために、大きな電流を必要とする。さらに、基準電圧の高い精度を達成するために、高いループゲインが要求される。
【0019】
なお、上述した実施例は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は請求項の範囲から逸脱することなしに、多くの代案実施例を設計することができる。例えば、図示した種類の電流ミラーの代わりに、例えばツインミラー、カスコード、またはウィルソンミラーを使用することができる。全てのNMOSトランジスタをPMOSトランジスタに置き換えること、及びその逆によって本発明を実現することができる。入力段およびトランジスタM9、M10は、NMOSトランジスタの代わりにバイポーラトランジスタにすることができる。
【0020】
「具えている」等は、請求項中に挙げた以外の要素及びステップの存在を排除するものではない。各要素は複数存在し得る。単に、互いに異なる従属請求項中に特定の方策が挙げられているということは、これらの方策の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による増幅回路の第1実施例を示す図である。
【図2】入力段用の一定のテール電流を有する実施例を示す図である。
【図3】入力段用の一定のテール電流及びおよび非対称の最小値選択器を有する実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動入力段と;
前記差動入力段のそれぞれの出力端子に結合された2つのクロスカップリング型電流ミラーと;
前記電流ミラーの出力端子に結合された最小値選択回路と
を具えていることを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記最小値選択回路が、対称型最小値選択器で構成されることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記最小値選択回路が、2つの最小値選択器で構成されることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記最小値選択器が非対称型であることを特徴とする請求項3に記載の増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−524327(P2009−524327A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550891(P2008−550891)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050154
【国際公開番号】WO2007/083271
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】