説明

増殖因子結合化合物および使用方法

非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を有する増殖因子結合化合物および同様の薬学的組成物が開示されている。増殖因子結合化合物または増殖因子結合組成物を投与および使用する方法もまた開示されている。これら新規増殖因子結合化合物は、血管新生、過剰な細胞増殖、癌の成長、およびその組合せの治療、ならびに増殖因子の細胞への結合およびリン酸化の阻害において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、任意の図、表、核酸配列、アミノ酸配列、および図面を含む全体の内容が参照として本明細書に組み入れられる、2004年1月27日提出の米国仮特許出願第60/539,613号の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institute of Health)/米国国立癌研究所(National Cancer Institute)のグラント第CA78038号により支援された研究計画下の政府支援で行われた。連邦政府は本発明において一定の権利を有しうる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
数立方ミリメートルの体積を超える腫瘍の増殖能は、腫瘍の微環境内での新規血管の形成に依存する(Ferrara、N. Nat Rev Cancer, 2002, 2:795-803(非特許文献1); Kerbel, R.S. Carcinogenesis, 2000, 21:505-15(非特許文献2); Carmeliet, P. and Jain, R.K. Nature, 2000, 407:249-57(非特許文献3); Yancopoulos, G.D. et al. Nature, 2000, 407:242-8(非特許文献4))。この血管新生過程は、腫瘍から分泌されるいくつかの重要な増殖因子により引き起こされる。増殖因子は、内皮細胞上の受容体に結合し、新規血管形成を開始するそれらの増殖を刺激するだけではなく、血管の統合性を維持する周皮細胞のようなアクセサリー細胞上の受容体にも結合する(Ferrara, N. Nat Rev Cancer, 2002, 2:795-803(非特許文献1); Kerbel, R.S. Carcinogenesis, 2000, 21:505-15(非特許文献2); Carmeliet, P. and Jain, R.K. Nature, 2000, 407:249-57(非特許文献3); Yancopoulos, G.D. et al. Nature, 2000, 407:242-8(非特許文献4); Helmlinger, G., et al. Nat Med, 1997, 3:177-82(非特許文献5); Holash, J. et al. Science, 1999, 284:1994-8(非特許文献6))。もっとも研究されている増殖因子の中には、血管内皮増殖因子(VEGF)および血小板由来増殖因子(PDGF)がある。いくつかの研究は、VEGFは主に新規血管の形成の開始で重要な役割を果たし、PDGFはこれら血管の維持に関与することにより、これら2つの増殖因子が血管新生過程に関与することを実証している(Bergers, G. et al. J Clin Invest, 2003, 111:1287-95(非特許文献7); Dvorak, H.F. J Clin Oncol, 2002, 20:4368-80(非特許文献8); Ferrara, N. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:1-30(非特許文献9); Dvorak, H.F. et al. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:97-132(非特許文献10); Eriksson, U. and Alitalo, K. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:41-57(非特許文献11))。
【0004】
この観察は、血管新生を抑制し、かつ腫瘍を枯渇させる最終目的を伴う、VEGFおよびPDGFの機能を抑制する戦略を設計することに対する関心を促した。取られたアプローチは、これら増殖因子の作用の機作に関係する生化学的な段階を標的とすることに基づいていた。これらは、増殖因子に対する抗体を用いることにより、それぞれの受容体へのVEGFおよびPDGFの結合を阻害する段階を含む。これらの1つ、VEGFを標的とするAVASTINは、最近、転移性直腸結腸癌を伴う患者における臨床使用が承認された(Zhang, W. et al. Angiogenesis, 2002, 5:35-44(非特許文献12); Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4(非特許文献1))。もう一つのアプローチは、これら増殖因子により引き起こされるシグナル伝達経路の下流の抑制をもたらす、PDGFおよびVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤の開発を含んでいる(Kerbel, R.S. Carcinogenesis, 2000, 21:505-15(非特許文献2); Jain, R.K. Semin Oncol, 2002, 29:3-9(非特許文献13); Morin, M.J. Oncogene, 2000, 19:6574-83(非特許文献14); Miao, R.Q. et al. Blood, 2002, 100:3245-52(非特許文献15); Laird, A.D. et al. Cancer Res, 2000, 60:4152-60(非特許文献16); Wedge, S.R. et al. Cancer Res, 2000, 60:970-5(非特許文献17))。これらのうち多くの薬剤はATPの構造を模倣し、いくつかは現在臨床試験中の強力な抗腫瘍剤である。一方で、まだFDAにより承認されたものはない。
【0005】
転移性直腸結腸癌を伴う患者の平均生存期間を5ヶ月増加するAVASTIN(ベバシズマブ)のFDAによる承認は、癌を治療するための戦略として血管新生過程を標的とすることを、さらに実証する(Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4(非特許文献18))。しかしながら、本アプローチを十分に活用するためにはより多くのことが行われる必要がある。例えば、他の臨床試験において、AVASTINは転移性乳癌を伴う患者の寿命を延ばすことができなかった。この相反する作用の考えられる説明の1つは、進行した転移性乳癌は他の増殖因子の手段により抗VEGF血管新生療法を回避している可能性があるというものである。実際、本示唆の裏付けは、初期乳癌は主にVEGFを分泌するが進行した乳癌は追加の増殖因子を分泌することを示す前臨床試験から来ている(Relf, M. et al. Cancer Res, 1997, 57:963-9(非特許文献19))。さらに、膵臓癌モデル動物において、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるSU5416は、膵臓腫瘍の後期ではなく、初期の進行を抑制する。同じモデルにおいてさらに重要なことには、SU6668(VEGFおよびPDGF受容体チロシンキナーゼ両方を阻害する)での治療は、進行の後期段階の進行性膵臓腫瘍の後退を誘導し(Bergers, G. et al. J Clin Invest, 2003, 111:1287-95(非特許文献7))、抗VEGF療法の失敗は、それが血管の維持ではなく開始だけを阻害できることによる可能性があることを示唆する。さらに、本示唆の裏付けは、神経芽腫細胞がマウス腎臓に移植されている動物モデルにおいて、AVASTINは新規血管の形成を抑制したがすでに確立した血管の抑制には効果が無かったという、ごく最近の試験から来ている(Huang, J. et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2003, 100:7785-90(非特許文献20))。総合すると、血管新生過程に関する現在の理解は、血管を開始させる増殖因子(すなわち、VEGF)ならびに血管を維持する増殖因子(すなわち、PDGF)の同時の標的化が、1つの増殖因子だけを標的とするよりも、癌療法のより効果的なアプローチとなる可能性があることを示唆する。
【0006】
【非特許文献1】Ferrara, N. Nat Rev Cancer, 2002, 2:795-803
【非特許文献2】Kerbel, R.S. Carcinogenesis, 2000, 21:505-15
【非特許文献3】Carmeliet, P. and Jain, R.K. Nature, 2000, 407:249-57
【非特許文献4】Yancopoulos, G.D. et al. Nature, 2000, 407:242-8
【非特許文献5】Helmlinger, G., et al. Nat Med, 1997, 3:177-82
【非特許文献6】Holash, J. et al. Science, 1999, 284:1994-8
【非特許文献7】Bergers, G. et al. J Clin Invest, 2003, 111:1287-95
【非特許文献8】Dvorak, H.F. J Clin Oncol, 2002, 20:4368-80
【非特許文献9】Ferrara, N. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:1-30
【非特許文献10】Dvorak, H.F. et al. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:97-132
【非特許文献11】Eriksson, U. and Alitalo, K. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:41-57
【非特許文献12】Zhang, W. et al. Angiogenesis, 2002, 5:35-44
【非特許文献13】Jain, R.K. Semin Oncol, 2002, 29:3-9
【非特許文献14】Morin, M.J. Oncogene, 2000, 19:6574-83
【非特許文献15】Miao, R.Q. et al. Blood, 2002, 100:3245-52
【非特許文献16】Laird, A.D. et al. Cancer Res, 2000, 60:4152-60
【非特許文献17】Wedge, S.R. et al. Cancer Res, 2000, 60:970-5
【非特許文献18】Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4
【非特許文献19】Relf, M. et al. Cancer Res, 1997, 57:963-9
【非特許文献20】Huang, J. et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2003, 100:7785-90
【発明の開示】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明の1つの目的は、VEGFおよび/またはPDGFに結合する化合物群を設計し、それぞれの細胞表面受容体へのこれら増殖因子の結合を抑制することである。例えば、化合物GFB204は、VEGFおよびPDGFにより刺激される、それらの受容体チロシンキナーゼのリン酸化反応およびシグナル伝達(Erk1/2、AktおよびSTAT3)の強力な選択的阻害剤であることが見出された。この薬理作用のある薬剤はまた、インビトロでの内皮細胞遊走および毛細血管網の形成、ならびにヌードマウス異種移植片におけるインビボでの血管形成およびヒト腫瘍増殖を強く阻害した。
【0008】
本発明のさらなる目的は、上述の化合物群の薬学的組成物およびそれらの投与の方法を提供することである。
【0009】
材料および方法
GFBによる増殖因子依存性受容体チロシンリン酸化の阻害
飢餓Flk-1/KDR過剰発現NIH 3T3細胞(Flk-1/NIH 3T3)またはNIH 3T3細胞を、それぞれVEGF(50ng/ml)またはPDGF-BB(10ng/ml)で10分間刺激する前に、GFBで5分間前処理した。それから細胞を回収および溶解し、かつ溶解物由来のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロースに転写した。それから膜を活性化Flk-1に対する抗ホスホ-VEGFR2抗体(Cell Signaling Technologies、Beverly、MA)または活性化PDGFRに対する抗ホスホ-チロシン抗体(4G10、Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)のいずれかで免疫ブロットした。ホスホチロシンFlk-1およびPDGFRを、Bio-Rad Model GS-700 Imaging Densitometer (Bio-Rad Laboratories, Inc、Hercules、CA)を用い定量化した(Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)。
【0010】
Erk1/2、AktおよびSTAT3のリン酸化の、増殖因子により媒介される刺激
飢餓NIH 3T3細胞(PDGF-BB、bFGF)、EGFRを過剰発現しているNIH 3T3細胞(EGFR/NIH 3T3、EGF)、Flk-1(Flk-1/NIH 3T3、VEGF)、およびIGF-1R NIH 3T3(IGF-1R/NIH 3T3、IGF-1)を、PDGF-BB(10ng/ml)、EGF(100ng/ml)、bFGF(50ng/ml)、VEGF(50ng/ml)およびIGF-1(50ng/ml)で10分間刺激する前に、GFB204の示された濃度で5分間前処理した。細胞溶解物をSDS-PAGEゲル上に泳動し、それからニトロセルロースに転写し、かつ発明者らにより以前記載されたように(Blaskovich, M.A. et al. Cancer Res, 2003, 63:1270-9)、抗リン酸化Erk1/Erk2(Cell Signaling Technologies)、抗リン酸化Aktまたは抗リン酸化STAT3でウェスタンブロットした。
【0011】
受容体への125I-増殖因子の結合
125I-VEGF、125I-PDGFおよび125I-EGFのそれぞれの受容体への結合アッセイを、以前に記載されたように(Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)行った。簡単に言えば、Flk-1/NIH 3T3細胞、NIH 3T3細胞およびEGFR/NIH 3T3細胞を、それぞれ125I-VEGF、125I-PDGFおよび125I-EGF(50000cpm/well)および増加する濃度のGFB204と共にインキュベートした。細胞を4℃で0.5時間インキュベートし、それからガンマ計数装置(Beckmann Inc.)で125Iカウント数を測定する前にPBSで3回、ならびに25mMトリス、pH8.0、1%Triton-X-100、10%グリセロール、および1%SDSで3回洗浄した。過剰の未標識増殖因子を非特異的結合レベルを得るために用いた。
【0012】
毛細血管網形成
200μlのマトリゲル(Matrigel)を24穴培養プレートの各ウェルの中に4℃で置き、以前に記載されたように(Papadimitriou, E. et al. Biochem Biophys Res Commun, 2001, 282:306-13)、37℃でのインキュベーションにより重合させた。ヒト中大脳内皮細胞(5×104個)を1mlのVEGF(20ng/ml)含有EBM中でマトリゲル上に接種した。細胞を、図面の説明中に示された濃度のGFB204の存在下または非存在下でインキュベートした。各サンプルを10×対物レンズを用いて撮影し、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetic, Inc.、MD)を用いて各写真における管構造の全長を定量化した。
【0013】
ヒト脳内皮細胞遊走アッセイ
成人ヒト脳内皮細胞の遊走を改変ボイデン(Boyden)チャンバーアッセイ(BD BioCoat Matrigel Invasion Chamber)を用いて評価した(Papadimitriou, E. et al. Biochem Biophys Res Commun, 2001, 282:306-13)。細胞を4×104/mlでマトリゲル基盤膜マトリックスの薄膜で覆われた細孔サイズ8μmの膜上に置いた。GFB204を外側チャンバーの培地に添加し、かつ細胞を18時間、VEGF依存的状態(VEGF 20ng/ml)下で下部チャンバーで培養した。非浸潤細胞を綿棒で上面から取り除いた。それから膜挿入物を4%パラホルムアルデヒドで固定し、かつクリスタルバイオレット色素で染色した。フィルターの下面へ遊走した細胞の数を、無作為に選択した顕微鏡視野(10×)中に遊走した細胞を数えることにより定量化した。サンプルを、独立したサンプルに関するステューデントt検定を用いて有意差について解析した。
【0014】
ヌードマウス腫瘍異種移植片モデルにおける抗腫瘍活性
ヌードマウス(Charles River、Wilmington、MA)は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)の手法およびガイドラインに従って維持された。A-549細胞を回収し、かつPBSに再懸濁し、それから以前に報告されているように(Sun, J. et al. Cancer Res, 1999, 59:4919-26)、8週齢のメスのヌードマウスの右および左の横腹の中へ皮下投与で注射した(10×106細胞/横腹)。腫瘍が約100mm3に達したとき、動物に0.2ml溶液を1日1回腹腔内投与した。処理動物がGFB204(1または5mg/kg/日)を注入されるのに対し、対照動物は偽薬(vehicle)を受けた。腫瘍体積を、以前に記載されているように(Sun, J. et al. Cancer Res, 1999, 59:4919-26)、長さ(l)および幅(w)を計測し、体積(V=lw2/2)を計算することにより測定した。対照と処理動物との間の統計的有意性をステューデントt検定を用いて評価した。
【0015】
IHC 試験
抗腫瘍実験の終了日に腫瘍を抽出し、10%中性緩衝ホルマリン中で6時間固定した。固定化後、組織サンプルをパラフィンブロックに加工した。組織切片(厚さ4μm)をパラブロックから得て、標準的な組織学的技法を用いてヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。組織切片をアビジンビオチンペルオキシダーゼ複合体技法を用いるCD31(BD Biosciences、San Diego、CA)による免疫染色(Blaskovich、M.A. et al. Nat Biotechnol、2000、18:1065-70)にも供した。マウスモノクローナル抗体は1:50希釈で用いられ、引き続きマイクロウェーブ抗原回復(microwave antigen retrieval)が行われた(0.1Mクエン酸緩衝剤中で、それぞれ「高」を5分、4サイクル)。
【0016】
発明の詳細な開示
本発明は増殖因子結合化合物に関する。より詳細には、本発明は、VEGFおよび/またはPDGFのような増殖因子に結合し、これら増殖因子のうち1つまたは複数のそれぞれの細胞表面受容体への結合を阻害することができる(表1で示されているような)化合物に関する。本発明はまた、これら化合物のうち1つまたは複数、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物にも関する。
【0017】
加えて、本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物(または、1つまたは複数の化合物を含む組成物)をインビトロまたはインビボで細胞に接触させることにより、細胞への前記増殖因子の結合を阻害するための方法に関する。他の局面において、本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物または組成物をインビトロまたはインビボで標的細胞に接触させることにより、増殖因子により刺激されるリン酸化(例えば、Erk1、Erk2、Akt、および/またはSTAT3のリン酸化)を阻害するための方法、血管新生を阻害するための方法、および癌および/または腫瘍増殖を阻害するための方法を含む。
【0018】
特定の態様において、本発明は、増殖因子の細胞への結合を阻害するため、増殖因子により刺激されるリン酸化を阻害するため、血管新生を阻害するため、癌および腫瘍増殖またはその組合せを阻害するために有用な方法に関し、方法は少なくとも1つの増殖因子結合化合物または任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩をインビトロまたはインビボで細胞に接触させる段階を含み、増殖因子結合化合物は非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を含み、増殖因子結合化合物のそれぞれ、または任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩は薬学的に許容される担体で運ばれても運ばれなくてもよく、ただし以下の一般構造を有する化合物は除く:

ここで、それぞれのR1は、

であり、それぞれのR2は、

である。
【0019】
またもう一つ特定の態様において、本発明の薬学的組成物は、血管新生の阻害、腫瘍増殖の阻害、および/または癌の阻害のために、局所的または全身的に患者へ投与される。
【0020】
ひとつの態様において、本発明は非ペプチド有機骨格に結合している複数の非環式イソフタル酸基を含む増殖因子結合化合物を含む。さらなる態様において、有機骨格はカリックス[4]アレーン骨格である。本発明の化合物の非環式イソフタル酸基は、酸性基、疎水性基、または両方で官能性を与えることができる。
【0021】
もう1つの態様において、本発明の増殖因子結合化合物は以下の一般構造を有する:

ここで、それぞれのR1は以下の化学基の中から独立に選択され、


かつ、それぞれのR2は以下の化学基の中から独立に選択される:



【0022】
特定の態様において、本発明の化合物はGFB201、GFB202、GFB203、GFB204、GFB205、GFB206、GFB207、GFB208、GFB209、GFB210、GFB211、GFB212、GFB213、GFB214、GFB215、GFB216、GFB217、GFB218、およびGFB219からなる群(表1に記載のように)より選択される。
【0023】
本発明の化合物により標的化されるか、または作用を受ける増殖因子は、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または両方を含みうるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
もう1つの局面において、本発明は、本明細書で開示されているように、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0025】
もう1つの局面において、本発明は過剰な細胞増殖、過剰な血管新生、腫瘍、または前記の任意の組合せを含む疾患を有する患者を治療する方法を提供し、方法は患者に本発明の化合物または組成物の有効量を投与する段階を含む。特定の態様において、腫瘍は上昇した量の血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または両方のような増殖因子を発現する可能性がある。また、PDGFおよびVEGFのレベルの上昇は、血管新生内皮細胞および血管による腫瘍の微環境に由来している可能性がある。
【0026】
またもう1つの特定の態様において、本発明は過剰な細胞増殖、過剰な血管新生、腫瘍、または前記の任意の組合せを含む疾患を有する患者を治療するための方法を提供し、方法は薬学的組成物の有効量を投与する段階を含み、薬学的組成物は少なくとも1つの増殖因子結合化合物もしくは任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体、または1つまたは複数の増殖因子化合物を含み、増殖因子結合化合物は以下の一般構造を有する化合物を除く、非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を含む:

ここで、それぞれのR1は、

であり、かつそれぞれのR2は、

である。
【0027】
製剤(本明細書において組成物とも言及される)は、経口、直腸、経鼻、局所(経皮、口腔内、舌下を含む)、膣内、腸管外(皮下、筋内、静脈内および皮内を含む)および経肺投与のような、局所的または全身的投与に適した製剤を含む。製剤は単位剤形で簡便に提示することができ、かつ製薬学の当業者に周知の任意の方法により調製されうる。そのような方法は、活性成分を、1つまたは複数の副成分を構成する担体と結合した状態にする段階を含む。概して製剤は、活性成分を液体担体または微粉化した固体担体または両者と均等かつ密に結合した状態にすることにより調製され、それから必要であれば製品に成形する。経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが活性成分の所定の量を含むカプセル、カシェ剤または錠剤のような個々の単位として、または水中油滴乳剤、油中水滴乳剤、もしくは例えば紅茶のような水溶液中の補給物として提示することができる。活性成分はまたボーラス、舐剤、またはペーストとして提示することができる。
【0028】
口腔中の局所的投与に適した製剤は、通常ショ糖およびアカシア(acacia)またはトラガントの風味付けした基剤中に活性成分を含むトローチ剤(lozenge)、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアのような不活性基剤中に活性成分を含むトローチ(pastille)、および適した液体担体中に活性成分を含むうがい薬を含む。
【0029】
本発明による局所的投与のための薬学的組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、噴霧剤、エアロゾルまたはオイルとして製剤化することができる。または、製剤は、活性成分および任意で1つまたは複数の賦形剤または希釈剤が浸漬されている貼付剤、または包帯もしくは粘着性硬膏のような包帯剤を含みうる。
【0030】
眼への局所的投与に適した製剤はまた、点眼液をも含み、活性成分は適した担体、特に薬剤のための水溶性溶媒中に溶解または懸濁される。
【0031】
直腸投与のための製剤は、例えばココアバターまたはサリチル酸塩を含む適した基剤を伴う座剤として提示することができる。
【0032】
膣内投与に適した製剤は、薬剤に加えて、適当であることが当技術分野において公知である担体を含む膣座剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡または噴霧製剤として提示することができる。
【0033】
担体が固体である場合、経鼻投与に適した製剤は、例えば約20〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末を含み、鼻から息を吸う方法で、すなわち鼻に近づけて保つ粉末の容器から鼻腔を通じて急速に吸入することにより投与される。担体が噴霧器による投与のための液体である場合、適した製剤は、薬剤の水性または油性溶液を含む。
【0034】
腸管外投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および対象とする受容者の血液と等張な製剤とする溶質を含みうる水性および非水性の等張無菌注入溶液、ならびに、懸濁化剤および増粘剤、および化合物を血液成分または1つまたは複数の器官へ標的化するよう設計されたリポソームまたは他の微粒子システムを含む、水性および非水性の等張無菌懸濁液を含む。製剤は単位用量または複数用量または例えばアンプルおよび水薬瓶のような複数用量を密閉した容器で提示することができ、かつ、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用滅菌水の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。即席の注射液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉剤、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0035】
好ましい単位用量製剤は、本明細書において前述したような一日用量もしくは単位、一日下位用量(daily subdose)、またはそれらの適切な画分の薬剤を含むものである。特に上記に記載の成分に加え、本発明の製剤は、問題の製剤の種類に関する本技術分野において慣例的な他の薬剤を含みうるということが理解されるべきである。例えば、経口投与に適している製剤は、甘味料、増粘剤、および香料のようなさらなる薬剤を含むことができる。本発明の薬剤、組成物、および方法が他の適当な組成物および療法と組み合わされることもまた意図されている。
【0036】
様々な送達システム、例えばリポソームへのカプセル化、微小粒子、マイクロカプセルおよび受容体媒介エンドサイトーシスなどが公知であり、本発明の化合物を投与するのに利用されうる。送達の方法は、動脈内、筋内、静脈内、鼻腔内、および経口経路を含むが、これらに限定されるわけではない。特定の態様において、本発明の薬学的組成物は治療を必要とする領域に局所的に投与することができ、このような局所的投与は、例えば手術中の局所注入により、注射により、またはカテーテルの手法により達成されうる。
【0037】
治療量は経験的に決定することができ、治療される病状、治療される被験体、および薬剤の効果および毒性により様々である。同様に、投与の適した用量製剤および方法は当業者により容易に決定されうる。
【0038】
薬学的組成物は経口、鼻腔内、腸管外のような任意の様々な経路により、または吸入療法により投与することができ、かつ、錠剤、トローチ剤、顆粒、カプセル、丸剤、アンプル、座剤の形態またはエアロゾルの形態で服用することができる。それらはまた、水性または非水性の希釈剤、シロップ剤、顆粒または粉末剤中で、活性成分の懸濁液、溶液および乳剤の形態で服用することができる。本発明の化合物に加えて、薬学的組成物は他の薬学的に活性のある化合物または本発明の複数の化合物も含むことができる。
【0039】
理想的には、薬剤は疾患の部位で活性化合物のピーク濃度を達成するように投与されるべきである。疾患部位でのピーク濃度は、例えば、任意で生理食塩水中における薬剤の静脈内注入、または活性成分を含む、例えば錠剤、カプセルまたはシロップを経口的投与することにより達成しうる。
【0040】
有利には、組成物は抗癌剤のような他の薬物または生理活性物質と同時にまたは引き続いて投与されうる。例としては、抗酸化剤、フリーラジカル排除剤、ペプチド、増殖因子、抗生物質、静菌剤、免疫抑制薬、抗凝血薬、緩衝剤、抗炎症剤、抗発熱剤、持続放出結合剤、麻酔薬、ステロイドおよびコルチコステロイドを含むが、これに限定されるわけではない。
【0041】
好ましくは、投与は経口、腸管外、皮下、静脈内、筋内、腹膜内、経皮的に、または経粘膜で行われる。
【0042】
「癌」という用語は、その独特の形質が、制御不能な増殖、分化の欠如および局部組織への侵入および転移能をもたらす正常な制御の喪失である任意の細胞の悪性疾患を意味することを意図している。癌は任意の器官の任意の組織で進行しうる。より具体的には、癌は前立腺癌、白血病、ホルモン依存性癌、乳癌、結腸癌、肺癌、表皮癌、肝癌、食道癌、胃癌、脳の癌、および腎臓の癌を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0043】
「治療」および「治療する」などという用語は、所望の薬理学的および/または生理的効果を得ることを意味することを意図しており、例えば癌細胞増殖の阻害または癌細胞のアポトーシスの誘導である。効果は、完全または部分的に疾患またはその症状を防止するという点で予防的である場合があり、かつ/または、疾患および/または疾患に起因する悪影響を部分的または完全に治癒するという点で治療的である場合もある。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療に及び、以下の段階を含む:(a)疾患にかかりやすい可能性があるがまだ診断されていない個体の疾患または状態の発症を予防する(例えば、癌を予防する)段階、(b)疾患を阻害する(例えば、その発達を阻む)段階、および(c)疾患を緩和する(例えば、疾患に関係する症状を縮小する)段階。
【0044】
「抗癌活性」という用語は、癌および/またはその転移(例えばこのような癌および/または転移の開始、増殖、蔓延、および/または進行)を実質的に阻害する、遅くする、阻止する、抑制する、予防する、遅らせるおよび/または停止することができる活性を意味することが意図されている。
【0045】
「投与する」、「投与」、および「接触させる」という用語は、送達の様式を意味するよう意図され、経口、直腸、腸管外、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、動脈内、経皮または経粘膜を含むが、これらに限定されるわけではない。好ましい方法は経口的である。投与は局所的に、標的部位で、または全身的に実施されうる。当業者は、錠剤、丸剤、カプセル、トローチ剤、粉末剤、徐放錠剤、液体、液体懸濁液、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁剤などを含むがこれに限定されるわけではない、経口製剤の適した剤形を認識している。例えば、一日用量は、期間にわたって1回、2回またはそれ以上の回数で投与されるのに適した剤形で、1回、2回またはそれ以上の用量に分割されうる。
【0046】
「治療的に有効である」という用語は、疾患または病状に関係するいくつかの症状を実質的に改善するのに十分な本発明の化合物の量を意味するよう意図されている。例えば、癌の治療において、疾患の任意の症状を減少する、阻止する、遅らせる、抑制するまたは停止する化合物は治療的に有効であろう。化合物の治療的有効量は、疾患の治癒を必要とせず、疾患の始まりを遅らせる、阻止するまたは予防する、または疾患の症状を改善する、または例えば個体において疾患の期間を変更する、例えば軽症とするか、または回復を促進するような、疾患の治療を提供する。
【0047】
「独立に」という用語は、本発明の増殖因子結合化合物4つのR1置換基のぞれぞれおよび4つのR2置換基それぞれが、それぞれ同じ置換基でもよく、またはそれぞれ異なる置換基でもよいことを意味するよう意図されている。
【0048】
本発明の化合物が他の薬剤との併用療法で投与される場合、化合物を個体に連続してまたは同時に投与してもよい。または、本発明による薬学的組成物は、本明細書において記載されている本発明の化合物および当技術分野において公知の別の治療的または予防的薬剤の組合せから構成されてもよい。
【0049】
薬学的に許容される酸付加塩は無機酸および有機酸から調製されうる。無機酸に由来する塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などを含む。有機酸に由来する塩は、クエン酸、乳酸、酒石酸、および脂肪酸などを含む。
【0050】
塩はまた塩基で形成されてもよい。このような塩は無機塩基または有機塩基、例えばマグネシウムまたはカルシウム塩のようなアルカリ金属塩、およびモルフォリン、ピペリジン、ジメチルアミンまたはジエチルアミン塩のような有機アミン塩由来の塩を含む。
【0051】
本明細書において用いられる、「薬学的に許容される担体」という用語は、任意および全ての溶媒(例えば、リン酸緩衝生理食塩緩衝液、水、生理食塩水)、分散媒、被膜剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の慣例的な媒体または薬剤が活性成分と適合しない場合を除き、治療的組成物における使用が企図される。補助的な活性成分もまた組成物中に組み入れることができる。本発明の薬学的組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化されうる。製剤は、当業者にとって周知かつ容易に入手可能な多くの出典に記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Science(Martin EW (1995) Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company, 19th ed.)は本発明に関連して用いることができる製剤について記載している。
【0052】
本明細書において用いられる、「個体」および「患者」という用語は、ヒトおよび動物のような任意の脊椎動物種を指し、互換的に用いられる。好ましくは、患者は哺乳動物種である。開示された方法により恩恵を受ける哺乳動物種は、以下を含むがそれらに限定されない:類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ベトナム産ダルマブタ、ウサギおよびケナガイタチのような飼い慣らされた動物(例えば、ペット);ウシ、バッファロー、バイソン、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ、およびヤギのような飼い慣らされた家畜;クマ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、カバ、サイ、キリン、レイヨウ、ナマケモノ、ガゼル、シマウマ、ヌー、プレーリードッグ、コアラ、カンガルー、フクロネズミ、アライグマ、パンダ、ハイエナ、アザラシ、アシカ、ゾウアザラシ、カワウソ、ネズミイルカ、イルカおよびクジラのような典型的には動物園で見られる珍しい動物。ヒトのまたは非ヒト動物の患者は新生児から老年までの年齢範囲にわたりうる。
【0053】
本発明のもう1つの態様に従って、本発明の薬学的組成物の薬学的有効量を個体に投与する段階を含む、癌を治療する方法が提供される。
【0054】
好ましくは、本発明の態様に従って治療される癌は、前立腺癌、白血病、ホルモン依存性癌、乳癌、結腸癌、肺癌、表皮癌、肝臓癌、食道癌、胃ガン、脳の癌、および腎臓の癌からなる群より選択される。
【0055】
実施例1 Flk-1およびPDGF受容体チロシンリン酸化のVEGFおよびPDGFによる刺激を強く阻害する、カリックスアレーン誘導体であるGFB204の同定
増殖因子とその受容体との関係のような生物学的に有意なタンパク質-タンパク質相互作用を崩壊させる最初のアプローチは、カリックス[4]アレーン骨格に結合した4つの合成ペプチドループを含む分子を設計することからなった(図1、反応(a))(Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)。ペプチドループ成分は、カリックスアレーンの孔への結合を提供する5-アミノ基で修飾されたジペプチド模倣体3-アミノメチル安息香酸により2つの残基が置換されている環状ヘキサペプチドに基づいていた。本設計は、ループ中に異なるペプチド配列およびタンパク質表面に結合できる広い表面領域を有するカリックスアレーン誘導体のライブラリの合成を可能にした。ライブラリのメンバーの1つ、GFB111は、μMの濃度において他の増殖因子に対して選択的にPDGFに結合し、かつPDGFRへの結合を阻止した(Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)。GFB111中の4つのペプチドループは、GDGY配列中に酸性疎水性残基を含み(図1、反応(a))、それはPDGFRへの結合に重要なホモ二量体型PDGFのループI、IIおよびIII中の塩基性疎水性アミノ酸にマッチする(Oefner, C. et al. Embo J, 1992, 11:3921-6; Andersson, M. et al. Growth Factors, 1995, 12:159-64)。GFB111および類似化合物は、全ての図および表を含むその全体の内容が参照として本明細書に組み入れられる、2001年3月21日出願の米国公開出願第US2003/0118589号および2001年3月21日の出願国際公開出願第WO01/70930号に記載されている。本設計を改良するために、ペプチドループの代わりに、広い範囲の酸性基および疎水性基(R1およびR2、図1、反応(b)、および表1)で官能性を与えられた、単純な非環式イソフタル酸基がカリックス[4]アレーン骨格に結合する、第2世代ライブラリが設計されている。
【0056】
【表1】

【0057】
PDGFおよびVEGFの受容体への結合を阻止する能力をもつ分子に関する本ライブラリを評価するために、材料および方法の項で記載されているようにPDGFおよびVEGFにより刺激される受容体チロシンリン酸化の阻害能を最初に測定した。ライブラリ中の19種の化合物から、190nM(PDGF)および480nM(VEGF)のIC50値を有するVEGFRおよびPDGFR両方のチロシンリン酸化の強力な阻害剤としてGFB204が同定された(表1)(ここでR1はカルボン酸およびR2はベンジルエステル)。少なくとも4つのカルボキシル基を有するライブラリのメンバー全てが、低μM濃度(IC50≦6μM)でPDGFシグナル伝達を阻害し、一方で酸性基を欠いた唯一の化合物(GFB217)は有意な活性を有さなかった。表1のデータの解析は、強い阻害剤(IC50≦0.6μMを有する)全てがR1=COOHおよびR2=疎水性エステルまたはアミドを含んでいることを明らかした。R2=ベンジルアミドであるGFB211は、GFB204よりわずかに低いだけ(IC50=1.34±0.32μM)の活性を有し、一方GFB209(R2=メチルエステル)はより弱かった(IC50=2.9±2.05μM)。これらのデータは、メチル基より大きい限り、疎水性置換基の構造はPDGFシグナル伝達阻害において決定的ではないことを示唆する。芳香族および脂肪族基を有する化合物は同程度に活性があり、より安定なアミドはそのエステル類似体と類似の活性を有する。
【0058】
対照的に、アミノ酸置換基を含むカリックスアレーン誘導体(すなわち、GFB202、GFB203、GFB205、GFB206、GFB207およびGFB208)は概してより低い活性(IC50が1〜6μMの範囲)を示す。これは、骨格上のイオン基の疎水基に対する比率の変化(これらの誘導体は8〜16個のカルボン酸置換基および0〜4個のみの疎水性置換基を有する)か、それらの間が非最適距離化であるか、いずれかのためである可能性がある。さらに、イソフタル酸スペーサー上の酸性基の存在は、疎水性置換基の存在よりも重要であるように思われる:GFB201、GFB202、GFB203およびGFB206はR1およびR2位置に疎水性基を欠くが、カルボン酸基を持たないGFB217よりも強い活性である。おそらく、イソフタル酸基それ自身が、PDGFの受容体結合ドメインの疎水性領域と相互作用する疎水性領域を提供する。
【0059】
最終的に、本試験における多くの活性化合物が、GFB111の同定をもたらした以前の試験(Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)と一致する、骨格中の4つのイソフタル酸成分上にある正確に1つのカルボン酸および1つの疎水性基を有することに注意することが重要である。SAR試験もまた、VEGFにより刺激されるFlk-1チロシンリン酸化の阻害のために本系列において必要な特性がさらにより厳密であることを示した。実際、GFB204(IC50=0.48±0.31μM)を除いて、他の1つの強力な化合物であるGFB213が、Flk-1チロシンリン酸化を0.85±0.44μMのIC50値で阻害した(表1)。VEGFシグナル伝達に対する阻害活性を決定する要因は、表1のデータから推測することは難しい。
【0060】
GFB204はPDGFおよびVEGF両方に結合する。GFB204のVEGFおよびPDGF両方への結合能は蛍光滴定曲線により示された。VEGFおよびPDGF両方は、294nMで励起した場合334nMで蛍光を発するトリプトファンを含む。図2Dおよび2Eは、GFB-204の増加する濃度が、PDGFおよびVEGFの蛍光発光能を濃度依存的に減少させたことを示す。
【0061】
実施例2 GFB204はVEGFおよびPDGFのそれぞれの受容体への結合を阻害するが、EGFについては阻害しない
GFB204の、PDGFおよびVEGFにより刺激される受容体チロシンリン酸化の阻害能は、GFB204がリガンド/受容体結合、受容体二量化または受容体チロシンキナーゼ活性のいずれかを阻害することを示唆した。したがって、GFB204が、PDGFおよびVEGFとそれぞれの受容体との間の相互作用を阻害するが、他の増殖因子については阻害しないかどうかを測定した。この目的で、発明者らは、材料および方法の項に記載のように、[I-125]-PDGF、[I-125]-VEGFおよび[I-125]EGFの、NIH 3T3細胞上(PDGF)、ヒトFlk-1(VEGF)およびヒトEGFR(EGF)を過剰発現するNIH 3T3細胞上のそれらの受容体に対する結合を阻止する、GFB204の能力を評価した。GFB204は、[I-125]-PDGFおよび[I-125]-VEGFのそれらの受容体に対する結合を、それぞれ150±1.0nMおよび469±94nMのIC50値で効果的に阻害した(図2A-2C)。対照的に、[I-125]EGFのその受容体への結合は100μMにものぼる濃度のGFB204によっても影響されなかった。このように、GFB204はEGFと比較してPDGFおよびVEGFに対してより選択的であった。
【0062】
実施例3 GFB204はPDGFおよびVEGFの刺激によるErk1、Erk2、AktおよびSTAT3のリン酸化を阻害するが、EGF、bFGFまたはIGF-1の刺激については阻害しない。
他の増殖因子と比較した、PDGFおよびVEGFに対するGFB204の選択性をさらに証明するために、発明者らはErk1、Erk2およびAktのキナーゼ群ならびに転写因子STAT3のシグナル伝達物質および活性化因子の増殖因子による刺激を阻止するGFB204の能力を測定した。この目的で、NIH 3T3細胞(PDGFおよびbFGF)、またはFlk-1(VEGF)、EGFR(EGF)またはIGF-IR(IGF-1)を過剰発現するNIH 3T3細胞を飢餓状態にし、GFB204の存在下または非存在下で対応する増殖因子により刺激し、かつ材料および方法の項で記載されているように細胞を抗ホスホチロシン(PDGFおよびVEGF)で、および抗ホスホErk1/2、AktおよびSTAT3(PDGF、VEGF、EGF、bFGFおよびIGF-1)でウェスタンイムノブロット法で処理した。図3Aは、表1に記載されているように、PDGFまたはVEGFでの飢餓細胞の処理が受容体チロシンリン酸化の強い刺激をもたらし、かつGFB204での処理がそれぞれ190nMおよび480nMのIC50値でこの刺激を阻害したことを示す。同様に、Erk1およびErk2のPDGFおよびVEGFによる刺激もまた、同様のIC50値で阻害される。さらに、この阻害は、GBF204がPDGFおよびVEGFの刺激によるErk1、Erk2、AktおよびSTAT3のリン酸化は阻止したが、EGF、bFGFおよびIGF-1の刺激に対してはほとんど効果が無いという点で、選択的であった(図3B)。
【0063】
実施例4 GFB204はインビトロおよびインビボで血管新生を阻害し、ヌードマウスでヒト腫瘍の増殖を抑制する
PDGFおよびVEGF/リガンド受容体結合ならびに続いてのシグナル伝達を強力かつ選択的に阻害するGFB204の能力は、発明者らに、この薬剤がインビトロおよびインビボで血管新生を阻害し、続いて腫瘍増殖を阻害できるかどうか測定することを促した。最初に、GFB204がインビトロで血管新生を阻害できるかどうか、材料および方法の項に記載されているように、VEGF誘導性ヒト脳内皮毛細血管網形成を抑制する能力を評価することにより測定された。GFB204は、VEGF誘導性毛細血管網形成を700nMのIC50値で阻害する高い効果を示した(図4C)。材料および方法の項に記載されているように、GFB204のヒト脳内皮細胞遊走阻害能を次に測定した。GFB204はマトリゲル孔を通じた下部チャンバーへのVEGF誘導性内皮細胞の遊走を600nMのIC50値で阻害した(図4B)。
【0064】
VEGF誘導性内皮細胞遊走および毛細管網形成を阻害する能力と共役している、VEGFおよびPDGFの受容体への結合および続いてのシグナル伝達を阻害するGFB204の能力により、GFB204が全個体における血管新生および腫瘍形成を阻害する可能性があることが示唆された。したがって、ヌードマウスへのヒト肺癌A-549細胞の皮下注射移植によるインビボでの腫瘍増殖および血管新生をGFB204が抑制できるかどうか、次に評価した。腫瘍が100mm3の平均サイズに達したとき、材料および方法の項に記載されているように、マウスを偽薬かGFB204かのいずれかで処理し、3週間後に腫瘍を取り除き、GFB204の抗血管新生効果を測定することを目的としてCD31免疫染色のために処理した。対照動物由来の腫瘍は749±111mm3の平均サイズに増殖した(図6)。対照的に、GFB204処理動物はそれぞれ、650±114mm3(GFB204、1mg/kg)のみ、および248±108mm3(GFB204、5mg/kg)のみの平均サイズに増殖した。したがって、GFB204での処理は5mg/kgで統計的に有意な(p<0.05)腫瘍増殖阻害(73%)をもたらしたが、1mg/kgでは有意な阻害をもたらさなかった(15%)。GFB204処理動物由来の腫瘍切片はCD31染色の有意な阻害を示す(図5A〜5C)。視野倍率(400×)での微細血管の定量化は、偽薬処理マウス由来の腫瘍は11.3±1.9の微細血管を含み、GFB204(5mg/kg)処理マウス由来の腫瘍は2.6±0.9のみの微細血管を有することを示した。総合すれば、結果はインビボでGFB204がA-549異種移植片の腫瘍増殖および血管新生を阻害することを明確に証明した。
【0065】
血管新生に対する腫瘍増殖の厳密な要求および厳格な依存関係は、多くの研究者に、癌細胞の栄養の欠乏および本質的な腫瘍飢餓をもたらす血管新生阻害による癌治療ための戦略を設計することを促した(Zhang, W. et al. Angiogenesis, 2002, 5:35-44; Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4; Jain, R.K. Semin Oncol, 2002, 29:3-9; Morin, M.J. Oncogene, 2000, 19:6574-83; Miao, R.Q. et al. Blood, 2002, 100:3245-52; Laird, A.D. et al. Cancer Res, 2000, 60:4152-60; Wedge, S.R. et al. Cancer Res, 2000, 60:970-5; Relf, M. et al. Cancer Res, 1997, 57:963-9; Huang, J. et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2003, 100:7785-90; Blaskovich, M.A. et al. Nat Biotechnol, 2000, 18:1065-70)。癌療法へのアプローチとしての血管新生への標的化は数十年前に示唆されていたが、血管新生の複雑な過程における段階を標的として設計された最初の薬剤がFDAにより認可されたのは、非常に最近になってからである(Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4)。実際、ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体であるAVASTINは、転移性大腸癌に対して活性を示している。ヒトで血管新生を標的とするための概念の実証を提供するためにきわめて重要であるにもかかわらず、本アプローチは十分には開発されなかった。追求されている1つの改良点は、血管新生過程における異なる段階を同時に標的とする戦略を設計することである(Bergers, G. et al. J Clin Invest, 2003, 111:1287-95; Relf, M. et al. Cancer Res, 1997, 57:963-9; Huang, J. et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2003, 100:7785-90)。発明者らは、新規血管の開始および維持をそれぞれ媒介することが示されている増殖因子であるVEGFおよびPDGF両方の機能を阻害する新規合成薬学的薬剤を開発した(Bergers, G. et al. J Clin Invest, 2003, 111:1287-95; Dvorak, H.F. J Clin Oncol, 2002, 20:4368-80; Ferrara, N. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:1-30; Dvorak, H.F. et al. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:97-132; Eriksson, U. and Alitalo, K. Curr Top Microbiol Immunol, 1999, 237:41-57)。これは、VEGFおよびPDGF両方の受容体への結合を阻害し、続いてチロシンリン酸化および下流のシグナル伝達経路(Erk、AktおよびSTAT3)を抑制する薬剤の最初の報告である。GFB204はまた、内皮細胞の遊走能(IC50=600nM)ならびにインビトロでのそれらの毛細血管形成能(IC50=700nM)を強く阻止した。インビボでの、ヒト腫瘍を有するマウスの皮下への処理は、腫瘍塊の周囲の血管形成の阻害ならびに腫瘍増殖の阻害をもたらした。GFB204は、VEGFおよびPDGF両方のそれらの受容体への結合を強く阻害した(200-500nM)にもかかわらず、EGFのその受容体への結合は100μMという高い用量でも影響されなかったことから、リガンド/受容体結合の全てに対する非特異的阻害剤ではなかった。GFB204がPDGFおよびVEGFによるErk1、Erk2、AktおよびSTAT3の活性化を阻害したが、EGF、bFGFまたはIGF-1による活性化を阻害しなかったことを証明することにより、選択性に対するさらなる支持が提供された。
【0066】
VEGFおよびPDGF両方の受容体への結合を阻止することができるカリックス[4]アレーン誘導体の同定は、チロシンキナーゼシグナル伝達受容体を標的とする全く新規なアプローチである。抗VEGF抗体であるAVASTINもまた、VEGFの受容体への結合を阻止するが(Zhang, W. et al. Angiogenesis, 2002, 5:35-44; Ferrara, N. Semin Oncol, 2002, 29:10-4)、PDGFおよびVEGF両方の受容体に対する結合を阻止する他の薬剤がないことは明らかである。さらに、AVASTINに対してGFB204が有利な点は、治療目的のための抗体を生成するのに関連した困難かつ高価な方法とは異なり、GFB204は低コストで容易に合成されうる、より小さな分子であることにある。本報告以前にVEGFおよびPDGFの受容体への結合に対する二重阻害剤は存在しなかったが、VEGFおよびPDGF受容体チロシンキナーゼの二重阻害剤は作製されており、いくつかは臨床試験中である(Kerbel, R.S. Carcinogenesis, 2000, 21:505-15; Jain, R.K. Semin Oncol, 2002, 29:3-9; Morin, M.J. Oncogene, 2000, 19:6574-83; Miao, R.Q. et al. Blood, 2002, 100:3245-52; Laird, A.D. et al. Cancer Res, 2000, 60:4152-60; Wedge, S.R. et al. Cancer Res, 2000, 60:970-5)。
【0067】
これらのATP模倣体とGFB204との間には明確な差異がある。GFB204の標的は細胞外表面上の細胞外に生じるリガンド/受容体相互作用であるが、一方ATP模倣体は細胞内にある受容体のチロシンキナーゼドメインを標的とする。したがって、GFB204とは異なり、キナーゼ阻害剤は標的に到達するために細胞に入らなければならない。さらに、多くのチロシンキナーゼ阻害剤はATP結合部位を標的とし、その変異体は細胞中に広く存在する。したがって、GFB204で治療する患者の結果は、PDGFおよびVEGF受容体チロシンキナーゼ両方を標的とするATP模倣体で治療する患者の結果とかなり異なる可能性がある。さらなる前臨床試験が、ヒトでのGFB204の第1相試験のためのIND申請に備えて進行中である。
【0068】
本明細書において言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、全ての図および表を含む全体の内容が参照として、本明細書の明確な開示と相反しない範囲で、組み入れられる。
【0069】
本明細書において記載されている実施例および態様は例示を目的としているだけに過ぎず、それを踏まえた様々な改変または変更が当業者に示唆され、かつ本願の精神および範囲内に含まれることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】非ペプチド有機骨格に結合する非環式イソフタル酸基を有する、本発明のGFB204、ならびにGFB-111の構造を示す。
【図2】図2A〜C:GFB204はマウス繊維芽細胞において125I-VEGFおよび125I-PDGFの受容体への結合を阻害するが、125I-EGFの受容体への結合は阻害しないことを示す。Flk-1/NIH 3T3、NIH 3T3およびEGFR/NIH 3T3細胞を、GFB204の濃度増加を伴い、125I-VEGF、125I-PDGFおよび125I-EGF(50,000cpm/well)と共にそれぞれインキュベートした。細胞を4℃で0.5時間インキュベートし、それから材料および方法の項に記載されているように125Iカウント数を測定する前にPBSで3回、溶解緩衝液で3回洗浄した。過剰の未標識VEGF、PDGFおよびEGFを非特異的結合レベルを得るために用いた。図2A〜CはPDGFR、Flk-1およびEGFRそれぞれに対する特異的結合(%対照)を示す。図2DおよびE:PDGFおよびVEGFそれぞれに、増加した量のGFB204を添加した時、増殖因子トリプトファンにより示されるように、GFB-204がPDGFおよびVEGFに結合することを図示する。蛍光はそれぞれ295nmおよび228nmでの励起、および334nmでの放射により測定された。
【図3】図3AおよびB:増殖因子刺激Erk1、Erk2、Akt、およびSTAT3リン酸化に対するGFB204の効果を示す。GFB204は、Flk-1チロシンリン酸化およびErk1/Erk2リン酸化のVEGFおよびPDGF刺激を阻害する(図3A)。NIH 3T3細胞またはFlk-1/NIH 3T3細胞を、PDGFBB(10ng/ml)またはVEGF(50ng/ml)それぞれによる10分間の刺激前に5分間、増加する濃度のGFB204で処理した。それから細胞を溶解し、ホスホチロシン-Flk-1、またはPDGFRチロシンリン酸化またはホスホ-Erk1/2に対する抗ホスホチロシンに特異的な抗体を伴うSDS-PAGEウェスタンブロッティングで処理した。GFB204は増殖因子刺激Erk1、Erk2、AktおよびSTAT3リン酸化に対して影響を与える(図3B)。NIH 3T3、Flk-1/NIH 3T3、IGF-1R/NIH 3T3またはEGFR/NIH 3T3細胞を、PDGF(NIH 3T3)、VEGF(Flk-1/NIH 3T3)、EGF(EGFR/NIH 3T3)、bFGF(NIH 3T3)またはIGF-1(IGF-1R/NIH 3T3)での刺激前にGFB204(10μM)で処理した。それから細胞を回収し、ホスホ-Erk1/2、ホスホ-Aktおよびホスホ-STAT3に対して特異的な抗体でSDS-PAGEウェスタンブロッティングで処理した。
【図4】図4A〜C:インビトロでの血管新生へのGFB204の効果を示す。GFB204は、用量依存的方式で毛細血管網形成を阻害する(図4C)。材料および方法の項に記載されているように、ヒト中大脳動脈内皮細胞(5×104個)をマトリゲル上に接種し、細胞をGFB204の存在下(図4B)または非存在下(図4A)でVEGFと共にインキュベートした。
【図5】図5A〜C:GFB204がインビトロでVEGF依存性ヒト脳内皮細胞遊走を強く阻害することを図示する。成人ヒト脳内皮細胞の遊走を、材料および方法の項に記載されているように改変ボイデンチャンバーアッセイを用いて評価した。偽薬対照(図5A)またはGFB204(図5B)を外側チャンバー中の2%FBS含有培地に添加し、かつVEGFを含有する下部チャンバーへ遊走した細胞の数を18時間のインキュベート後に測定した(図5C)。
【図6】GFB204がヌードマウスにおいてA-549異種移植片の増殖を阻害することを図示する(図6)。A-549細胞をヌードマウスの横腹中に移植し、腫瘍が約100mm3の平均サイズに達したとき、マウスを無作為に選択し、偽薬(◆)またはGFB204 1mg/kg(■)および5mg/kg(●)で処理し、材料および方法の項に記載されているように腫瘍サイズを計測した。腫瘍は、最後の腹腔内注入後2時間において、材料および方法の項に記載されているようにCD31 IHI染色のために処理された。
【図7】図7A〜B:最後の腹腔内注入の2時間後に処理された、対照(図7A)およびGFB204(図7B)の腫瘍についての、材料および方法の項に記載されているCD31 IHC染色を図示する。微小血管密度の定量化(400×)が、材料および方法の項に記載されたように測定された。SE、標準誤差。図7Aおよび7B、微小血管数、図7A=11.3±1.9、図7B=2.6±0.9。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を含む増殖因子結合化合物。
【請求項2】
非環式イソフタル酸基のそれぞれが酸性基または疎水性基で官能性を与えられる、請求項1記載の増殖因子結合化合物。
【請求項3】
非ペプチド有機骨格がカリックスアレーン(calixarene)である、請求項1記載の増殖因子結合化合物。
【請求項4】
非ペプチド有機骨格がカリックス[4]アレーンである、請求項1記載の増殖因子結合化合物。
【請求項5】
複数のイソフタル酸基が以下の構造(I)に記載されている非ペプチド有機骨格に結合する、請求項1記載の増殖因子結合化合物:

ここで、各R1は以下からなる群より独立に選択され、

各R2は以下からなる群より独立に選択される:



【請求項6】
GFB201、GFB202、GFB203、GFB204、GFB205、GFB206、GFB207、GFB208、GFB209、GFB210、GFB211、GFB212、GFB213、GFB214、GFB215、GFB216、GFB217、GFB218、およびGFB219からなる群より選択される、請求項1記載の増殖因子結合化合物。
【請求項7】
血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または前記の任意の混合物を標的とする、請求項1記載の増殖因子結合化合物。
【請求項8】
1つまたは複数の増殖因子結合化合物または任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含み、増殖因子結合化合物が非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
非環式イソフタル酸基のそれぞれが酸性基または疎水性基で官能性を与えられる、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
非ペプチド有機骨格がカリックスアレーンである、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項11】
非ペプチド有機骨格がカリックス[4]アレーンである、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項12】
複数のイソフタル酸基が以下の構造(I)に記載される非ペプチド有機骨格に結合する、請求項8記載の薬学的組成物:

ここで、各R1は以下からなる群より独立に選択され、

各R2は以下からなる群より独立に選択される:



【請求項13】
増殖因子結合化合物が、GFB201、GFB202、GFB203、GFB204、GFB205、GFB206、GFB207、GFB208、GFB209、GFB210、GFB211、GFB212、GFB213、GFB214、GFB215、GFB216、GFB217、GFB218、およびGFB219からなる群より選択される、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項14】
増殖因子結合化合物のそれぞれが、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または前記の任意の混合物を標的とする、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項15】
生理活性物質をさらに含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項16】
過剰な細胞増殖、過剰な血管新生、腫瘍または前記の任意の組合せを含む疾患を有する患者を治療する方法であって、方法が薬学的組成物の有効量を投与する段階を含み、薬学的組成物が少なくとも1つの増殖因子結合化合物もしくは任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体、または1つまたは複数の増殖因子化合物を含み、増殖因子結合化合物は非ペプチド有機骨格に結合する複数の非環式イソフタル酸基を含む、方法。
【請求項17】
非環式イソフタル酸基のそれぞれが酸性基または疎水性基で官能性を与えられる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
非ペプチド有機骨格がカリックスアレーンである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
非ペプチド有機骨格がカリックス[4]アレーンである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
複数のイソフタル酸基が以下の構造(I)に記載される非ペプチド有機骨格に結合する、請求項16記載の方法:

ここで、各R1は以下からなる群より独立に選択され、

各R2は以下からなる群より独立に選択される:


【請求項21】
増殖因子結合化合物のそれぞれが、GFB201、GFB202、GFB203、GFB204、GFB205、GFB206、GFB207、GFB208、GFB209、GFB210、GFB211、GFB212、GFB213、GFB214、GFB215、GFB216、GFB217、GFB218、およびGFB219からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
増殖因子結合化合物が血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または前記の任意の混合物を標的とする、請求項16記載の方法。
【請求項23】
患者に生理活性物質を同時にまたは続いて投与する段階を含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
増殖因子の細胞への結合を阻害するため、増殖因子により刺激されるリン酸化を阻害するため、血管新生を阻害するため、癌および腫瘍増殖、またはその組合せを阻害するために有用な方法であって、方法が少なくとも1つの増殖因子結合化合物または任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩を、インビトロまたはインビボで細胞へ接触させる段階を含み、増殖因子結合化合物が非ペプチド有機骨格に結合している複数の非環式イソフタル酸基を含み、増殖因子結合化合物のそれぞれ、または任意の増殖因子結合化合物の薬学的に許容される塩が薬学的に許容される担体で運ばれても運ばれなくてもよい、方法。
【請求項25】
非環式イソフタル酸基のそれぞれが酸性基または疎水性基で官能性を与えられる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
非ペプチド有機骨格がカリックスアレーンである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
非ペプチド有機骨格がカリックス[4]アレーンである、請求項24記載の方法。
【請求項28】
複数のイソフタル酸基が以下の構造(I)に記載されている非ペプチド有機骨格に結合する、請求項24記載の方法:

ここで、各R1は以下からなる群より独立に選択され、

各R2は以下からなる群より独立に選択される:


【請求項29】
増殖因子結合化合物のそれぞれが、GFB201、GFB202、GFB203、GFB204、GFB205、GFB206、GFB207、GFB208、GFB209、GFB210、GFB211、GFB212、GFB213、GFB214、GFB215、GFB216、GFB217、GFB218、およびGFB219からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項30】
増殖因子結合化合物のそれぞれが、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、または前記の任意の混合物を標的とする、請求項24記載の方法。
【請求項31】
同時にまたは続いて生理活性物質をインビトロまたはインビボで細胞に投与する段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項32】
Erk1、Erk2、Akt、またはSTAT3のリン酸化が阻害される、請求項24記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−519748(P2007−519748A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551569(P2006−551569)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/003108
【国際公開番号】WO2005/072779
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【出願人】(500114601)イエール ユニバーシティー (4)
【Fターム(参考)】