説明

増殖症の治療のためのロスコビチンとHDAC阻害剤との組合せ

本発明の一番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム若しくはそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤とを含む組合せに関する。本発明の二番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、SAHA、バルプロ酸ナトリウム、及びTSAから選択されるHDAC阻害剤とを含む、治療において同時に、連続して、又は個別に用いるための組合せ調製物としての医薬品に関する。三番目の態様は、増殖症の治療方法であって、かかる治療方法が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、SAHA、バルプロ酸ナトリウム、及びTSAから選択されるHDAC阻害剤とを対象に同時に、連続して、又は個別に投与することを含むことを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖症(proliferative disorders)の治療に適切な医薬の組合せ(combination)に関する。本発明は、特に、がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)の治療のための組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、セリン/スレオニンキナーゼであって、細胞周期において重要な調節的な役割を果たす。CDKは、転写因子と腫瘍抑制タンパク質を含む、DNA複製及び細胞分裂に関与するさまざまなタンパク質のリン酸化により、細胞周期の進行を調節する(Senderowicz, AM. Small-molecule cyclin-dependent kinase modulators, Oncogene, 2003; 22: 6609-6620)。ある種のCDKは、RNAポリメラーゼII(polII)の一番大きなサブユニットのカルボキシ末端ドメイン(CTD)のリン酸化に関与することにより、RNA合成の調節における役割を果たしてもいる。それゆえ、CDKが魅力的な治療標的となっていることは、驚くことではない。結果として、CDKの活性を、そのATP結合部位と競合することにより妨害することができる多くの新しい薬剤(pharmacological agent)が、臨床試験で現在試験されている(Fischer PM and Gianella-Borradori A, CDK inhibitors in clinical development for the treatment of cancer, Expert Opin Investig Drugs. 2003; 12: 955-970)。
【0003】
従来技術としては、サイクリン依存性キナーゼを阻害することにより細胞周期を調節することができるいくつかの化合物の記述がある。これらの化合物としては、ブチロラクトン(butyrolactone)、フラボピリドール(flavopiridol)及び2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−メチルプリン(オロモウシン(olomoucine))を挙げることができる。オロモウシンと関連化合物は、cdc2の阻害剤であることが示されてきた。Cdc2(cdk1としても知られている)は、細胞周期調節に関与するサイクリン依存性キナーゼファミリーの触媒サブユニットである。
【0004】
これらのキナーゼは、少なくとも2つのサブユニット、すなわち触媒サブユニット(なかでもcdc2がそのプロトタイプである)と、調節サブユニット(サイクリン)を含んでいる。cdkは、サイクリンファミリーである、サイクリンA(cdc2、CDK2)、サイクリンB1−B3(cdc2)、サイクリンC(CDK8)、サイクリンD1−D3(CDK2−CDK4−CDK5−CDK6)、サイクリンE(CDK2)、サイクリンH(CDK7)と一時的に関連して調節される。
【0005】
これらの複合体はそれぞれ、細胞周期の各フェーズに関与する。CDK活性は、翻訳後の改変と、他のタンパク質との一時的な関連と、細胞内部の局在化の改変とにより調節されている。CDKレギュレーターは、アクチベーター(サイクリン、CDK7/サイクリンH、cdc25ホスファターゼ)、p9.sup.CKS及びp15.sup.CDK−BPサブユニット、並びに阻害タンパク質(inhibiting proteins) (p16.sup.INK4A、p15.sup.INK4B、p21.sup.Cipl、p18、p27.sup.Kipl)を含む。
【0006】
CDKとそれらの調節タンパク質が、ヒト腫瘍の進行において重要な役割を果たしているという仮説については、現在では多くの文献で裏付けられている。それゆえ、多くの腫瘍において、サイクリン依存性キナーゼの一過性異常発現、及び、タンパク質阻害剤の広範囲にわたる脱制御(de-regulation)が観察されてきた。
【0007】
ロスコビチン(Roscovitine)は、サイクリン依存性キナーゼ酵素、特にCDK2の強力な阻害剤であると実証されてきた。CDK阻害剤は、細胞が、細胞周期のG1/SとG2/Mフェーズを通過することをブロックすると理解されている。ロスコビチンの純粋なR−エナンチオマーであるセリシクリブ(seliciclib)(R−ロスコビチン;CYC202)は、様々な腫瘍細胞におけるアポトーシスの強力なインデューサーであることが、近年明らかとなり(McClue SJ, Blake D, Clarke R, et al, In vitro and in vivo antitumor properties of the cyclin dependent kinase inhibitor CYC202 (R-Roscovitin), Int J Cancer. 2002; 102: 463-468)、乳がん及び非小細胞肺がんを治療するための臨床試験にすでに入っている(Fischer PM and Gianella-Borradori A, CDK inhibitors in clinical development for the treatment of cancer, Expert Opin Investig Drugs, 2003; 12: 955-970)。ロスコビチンは、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)のリン酸化の阻害剤であり、Rb陽性腫瘍により強力に作用するものとして関与が示されてきた。
【0008】
活性医薬品を、治療計画を最適化するためにしばしば組み合わせて投与することができることは技術常識である。例えば、第二化学療法剤と組み合わせての、CDK阻害剤の使用は、国際公開第03/077999号パンフレット、国際公開第03/082337号パンフレット、国際公開第2004/041262号パンフレット、国際公開第2004/041267号パンフレット、国際公開第2004/041268号パンフレット、国際公開第2004/041308号パンフレット、国際公開第2004/110455号パンフレット、国際公開第2005/053699号パンフレットに記載されている(すべてCyclacel Limited社のものである)。
【0009】
本発明は、増殖症、とりわけがんの治療に特に適切である、公知の医薬品の新規の組合せを提供しようとするものである。より詳細には、本発明の好ましい態様は、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に有用な組合せを中心とするものである。
【特許文献1】国際公開第03/077999号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/082337号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/041262号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/041267号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/041268号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/041308号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/110455号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2005/053699号パンフレット
【非特許文献1】Senderowicz, AM. Small-molecule cyclin-dependent kinase modulators, Oncogene, 2003; 22: 6609-6620
【非特許文献2】Fischer PM and Gianella-Borradori A, CDK inhibitors in clinical development for the treatment of cancer, Expert Opin Investig Drugs. 2003; 12: 955-970
【非特許文献3】McClue SJ, Blake D, Clarke R, et al, In vitro and in vivo antitumor properties of the cyclin dependent kinase inhibitor CYC202 (R-Roscovitin), Int J Cancer. 2002; 102: 463-468
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明の一番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム若しくはそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(suberoylanilide hydroxamic acid)(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム(sodium valproate)、及びトリコスタチンA(trichostatin A)(TSA)から選択されるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤とを含む組合せに関する。
【0011】
ロスコビチン及び上述のHDAC阻害剤は、当該技術分野においてすでに確立した個別の治療剤であるけれども、本発明でクレームされる特定の組合せが、がんの治療において効果的であるということについては、何ら示唆されていなかった。さらに、特定のクレームされている組合せが、特に治療が困難であることが知られているNSCLCの治療に有用となろうということについては、何ら示唆がされていなかった。
【0012】
二番目の態様は、本発明の組合せと、薬学的に許容される担体(carrier)、希釈剤(diluent)、又は賦形剤(excipient)とを含む医薬組成物に関する。
【0013】
三番目の態様は、増殖症を治療するための薬物(medicamen)の調製における本発明の組合せの使用に関する。
【0014】
四番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを含む、治療において同時に(simultaneously)、連続して、又は個別に用いるための組合せ調製物としての医薬品に関する。
【0015】
五番目の態様は、増殖症の治療方法であって、かかる治療方法が、ロスコビチン、又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを同時に、連続して、又は個別に投与することを含むことを特徴とする方法に関する。
【0016】
六番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の、増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる治療が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤を同時に、連続して、又は個別に投与することを含むことを特徴とする使用に関する。
【0017】
七番目の態様は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる治療が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩を同時に、連続して、又は個別に投与することを含むことを特徴とする使用に関する。
【0018】
八番目の態様は、(i)ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩;と、(ii)酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤;との、増殖症の治療のための薬物の調製における使用に関する。
【0019】
九番目の態様は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の、増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる薬物が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と併用療法において使用されることを特徴とする使用に関する。
【0020】
十番目の態様は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の、増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる薬物が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩での前治療(pretreatment)において使用されることを特徴とする使用に関する。
【0021】
十一番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の、増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる薬物が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤と併用療法において使用されることを特徴とする使用に関する。
【0022】
十二番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の、増殖症の治療のための薬物の調製における使用であって、かかる薬物が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤での前治療において使用されることを特徴とする使用に関する。
【0023】
十三番目の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、HDAC阻害剤との、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療のための薬物の調製における使用に関する。
(発明の詳細な説明)
【0024】
以下に記載されている好ましい実施態様は、上記の本発明の態様すべてに適用可能である。
【0025】
ロスコビチン、又は2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリン)は、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミン−9−イソプロピル−プリンとも記述される。本明細書で使用されている「ロスコビチン」なる用語は、分離したRとSのエナンチオマー、その混合物、及びそのラセミ体を含む。
【0026】
本明細書で使用されている「セリシクリブ」なる用語は、ロスコビチンのRエナンチオマー、すなわち、2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンを意味し、構造は以下に示される。
【0027】
【化1】

【0028】
本発明のすべての実施態様では、ロスコビチンは、Rエナンチオマーの形態、すなわち、2‐(1‐R‐ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピル−プリンであり、以下、「セリシクリブ」、「CYC202」、又はR−ロスコビチンという。
【0029】
ロスコビチンのインビトロ活性は以下の通りである。
【0030】
【表1】

【0031】
上述の通り、現在、請求の範囲に記載されている組合せは、ロスコビチンとヒスチジンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤とを含む。
【0032】
ヒストンは、塩基性アミノ酸に富んだ、正電荷を帯びた小タンパク質である(生理的pHにおいて正電荷を帯びている)。ヒストンは、主として5つのタイプがあり、すなわち、構造的に高度な類似性を示すH1、H2A、H2B、H3、及びH4である。ヒストンは、真正細菌(eubacteria)(例えば、大腸菌)には見い出されないが、これらのバクテリアのDNAは、バクテリアの細胞内のDNAをパッケージするためにヒストンのように機能すると推定される別のタンパク質と関連している。古細菌(archaebacteria)は、しかしながら、真核生物のクロマチンと類似する構造において、DNAをパッケージするヒストンを含まない(G. M. Cooper, “The Cell - A Molecular Approach”, 2ndEdition, Chapter II)。
【0033】
ヒストンの大部分は、細胞周期のS期の間に合成され、新しく合成されたヒストンは、DNAと結合するために速やかに細胞核に入る。合成後数分の間に新しいDNAは、ヌクレオソーム構造においてヒストンと結合する。
【0034】
ヒストンのアミノ末端尾部ドメインは、メチル基(リジン及びアルギニン基への)、アセチル基(リジン基への)、又はリン酸基(セリン基への)の翻訳後付加により、酵素的に改変されてもよい(Spencer et al, Gene, 1999, 240(1), 1)。このことにより、ヒストンの正味の正電荷が減少し、結果的に、ヒストンのDNAへの結合が弱まる場合がある。
【0035】
ヒストンデアセチレーター(HDAC)の研究は、HDACを阻害する化合物の研究と共に、いくつかの病状が作用するメカニズムを通じて解明されてきた。例えば、新規の抗マラリア化合物の探索において、天然に存在するアピシジン(apicidin)が、P.ファルスィパラム(P. falciparum)のインビトロの成長を、ヒストンを過剰アセチル化することにより阻害することが示された(K. T. Andrews et al, Int. J. Parasitol., 2000, 30(6), 761)。
【0036】
HDACは、それゆえ、白血病(Lin et al, Nature, 1998, 391, 811)、メラノーマ/扁平上皮カルシノマ(Gillenwater et al, Int. J. Cancer, 1998, 75217; Saunders et al, Cancer Res., 1999, 59, 399)、乳がん、前立腺がん、膀胱がん(Gelmetti et al, Mol. Cell Biol., 1998, 18, 7185; Wang et al, PNAS, 1998, 951, 10860)、及び大腸がん(C. A. Hassig, et al, 1997, Chem. Biol., 4, 783; S. Y. Archer et al, PNAS, 1998, 95(12), 6791)などの増殖症を含む多種多様な病気と関連していると信じられている。
【0037】
米国特許出願公開2005/0004007号明細書は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤と細胞分化を誘導する薬剤とを投与することに関与する、がん細胞におけるアポトーシスを促進する方法を開示する。細胞分化を誘導する薬剤のいくつかのカテゴリーとしては、すなわち、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、プロテインキナーゼC、レチノイド、及びビタミンD3を挙げることができる。しかしながら、ロスコビチンとHDAC阻害剤とを含む組合せは、具体的に開示されておらず、NSCLCのような固型腫瘍の治療におけるかかる組合せの使用も開示されていない。それどころか、米国特許出願公開2005/0004007号明細書は、白血病細胞株で試験した、選択されたHDAC阻害剤とフラボピリドール(flavopiridol)との組合せに限定している。
【0038】
したがって、現在までに、NSCLCのような肺がんの治療において治療上有用となろうことについての何らかの示唆については言うまでもなく、本願の請求の範囲に記載されている特定の組合せについては、何ら開示はされていない。
【0039】
本発明の好ましい一実施態様では、HDAC阻害剤は、酪酸ナトリウムである。
【0040】
酪酸ナトリウムは、大腸管腔内の食物繊維の発酵により形成される(G. J. Kelloff et al, Cancer Chemoprevention: Volume 1, page 665)。脊髄性筋萎縮リンパ細胞株におけるSMN2遺伝子由来のエクソン7を含むSMNタンパク質の発現を増加することが見い出されている。ヌクレオソームDNAと、SMN2遺伝子のエクソン7の選択的スプライシングを制御する別の因子とをアセチル化することにより、酪酸ナトリウムが作用することが提唱された(J.-G. Chang et al, PNAS, 2001, 98(17), 9809)。
【0041】
酪酸ナトリウムは、赤白血病培養細胞(A. Leder et al, Cell, 1975, 5(3), 319)とPC12クロム親和性細胞腫(J. C. Byrd et al, Brain Res., 1987, 428(1), 151)の分化を誘導し、ヒト及び他の動物の胎児ヘモグロビン遺伝子の発現を増加させる(S. P. Perrine et al, Adv. Exp. Med. Biol., 1989, 271, 177 and S. P. Perrine et al, PNAS, 1988, 85(22), 8540)ことが示されてきた。
【0042】
別の好ましい実施態様では、HDAC阻害剤は、酪酸ナトリウムのプロドラッグである。
【0043】
特に好ましい実施態様では、プロドラッグは、ピバロイルオキシメチル酪酸(pivaloyloxymethyl butyrate)である。ピバロイルオキシメチル酪酸(ピバネックス(Pivanex)(登録商標))は、酪酸のアシルオキシアルキルエステルプロドラッグであり、白血病及び神経芽腫細胞におけるアポトーシス固有の(instrinsic)経路を誘導することが示されてきた(S. Mei et al, International Journal of Oncology, 2004, 25, 1509)。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様では、HDAC阻害剤はトリコスタチンA(trichostatin A)(TSA)である。
【0045】
抗真菌性抗生物質であるトリコスタチンは、最初にストレプトマイセス・ハイグロスコピカス株の代謝産物から単離された(N. Tsuji et al, J. Antibiot.,1976,29,1)。トリコスタチンA(TSA)は、HDACの特異的で可逆的な阻害剤である。ナノモル濃度では、TSAは、インビボでは、高度にアセチル化されたヒストンの顕著な蓄積を引き起こし、インビトロでは、部分的に精製されたヒストンデアセチラーゼの活性を強く阻害する(M. Yoshida et al, J. Biol. Chem., 1990, 265(28), 17174)。ヒトのジャーカットT細胞(Jerkat T cells)において、TSAは、G1における細胞周期の進行を阻止し、HD1デアセチラーゼの活性を50%抑制濃度の70nMで阻害した(Y. Hoshikawa et al, Exp. Cell Res., 1994, 214, 189)。
【0046】
TSAは、同時に遺伝子の発現を改変することもできる。Mishra et alは、TSAが、顕著にCDI54とIL−10とをダウンレギュレートし、全身性エリテマトーデス(SLE)T細胞におけるIFN−γ遺伝子発現をアップレギュレートしたことを実証した。SLEは、抗体の無調節な産生が特徴である自己免疫疾患であり、非可逆的な、免疫複合体介在性末端器官障害(complex-mediated end-organ failure)を導く(N. Mishra et al, PNAS, 2001, 98(5), 2628)。
【0047】
本発明の別の好ましい実施態様では、HDAC阻害剤は、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)である。
【0048】
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、TSAの合成誘導体であり、マイクロモル濃度でHDAC活性を阻害する。SAHAは、再発性又は難治性の進行性ホジキンリンパ腫の治療において使用するために、米国内でフェーズIIの臨床試験に現時点で進んでいる。
【0049】
SAHAの抗増殖剤効果は、十分に立証されている。米国特許出願公開第2005/097747号明細書(Aton Pharma)は、新生物(neoplasms)とチオレドキシン(TRX)が介する病気の治療、並びにCNS病の予防及び/若しくは治療におけるSAHAなどのHDAC阻害剤をベースとしたヒドロキサム酸のプロドラッグの使用について開示している。
【0050】
米国特許出願公開第2004/4127525号明細書(Bacopoulos et al)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのリンパ腫の治療におけるSAHAの使用について開示している。国際公開第2005/039498号パンフレット、国際公開第2005/018578号パンフレット(両者ともAton Pharma社)は、新生物の治療の方法についてさらに開示しており、国際公開第2005/039498号パンフレットは白血病に関し、国際公開第2005/018578号パンフレットは中皮腫又はリンパ腫に関する。
【0051】
本発明の好ましい一実施態様では、HDAC阻害剤は、バルプロ酸ナトリウム(若しくは、2−プロピルペンタン酸ナトリウムとしても知られている)である。バルプロ酸ナトリウムは、バルプロ酸のナトリウム塩であり、NICEに認可されているてんかんの治療において用いられる抗けいれん薬である。つい近年、進行性固型悪性腫瘍(advanced solid tumour malignancies)とがん関連の神経因性痛(neuropathic pain)の治療のためにバルプロ酸ナトリウムの使用についての研究が検討されてきた。バルプロ酸とUCN−01が関与する併用の研究が着手されている。これらにより、バルプロ酸それ自身の抗がん効果は弱いが、組み合わせて用いられる場合はがん細胞に対して非常に効果的であることが研究により示されている。
【0052】
本発明の別の態様は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを含む医薬の組合せに関する。
【0053】
別の態様は、増殖症の治療において用いられる本発明の組合せを含む医薬品に関し、疾患は、ガンが好ましく、NSCLCがより好ましい。
【0054】
さらに、本発明の態様は、同時に、連続して、又は個別に用いられる組み合わせた調製物としての、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを含む医薬品に関する。
【0055】
さらに、別の態様は、増殖症の治療方法に関し、かかる方法は、本発明の組合せを、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む。
【0056】
本明細書で用いられている「同時に」なる用語は、2つの薬剤が、時を同じくして(concurrently)投与されることを意味し、「組み合わせて(in combination)」なる用語は、同時にではないにしろ、2つの薬剤が投与されることを意味するために用いられ、「連続的に」とは、2つの薬剤が同じ時間枠の間に治療的に作用することができることを意味する。それゆえ、「連続的な」投与により、一方の薬剤が、他方の薬剤が提供された後5分、10分、又は数時間以内に、治療量として両方が同時に存在することができるよう投与される。構成成分の投与間の時間遅延は、それぞれの相互作用や半減期といった、成分の実際の性質に依拠して変化するものである。
【0057】
「組み合わせて」又は「連続的に」とは対照的に、本明細書で用いられる「個別に」とは、一方の薬剤と他方の薬剤を投与する間にギャップがあることを意味する。すなわち、投与された第1薬剤が、第2薬剤が投与された場合には、治療効果量としては血流中にもはや存在しないことを意味する。
【0058】
好ましい態様では、HDAC阻害剤は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩より前に、連続して、又は個別に投与される。
【0059】
別の好ましい態様では、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩は、HDAC阻害剤より前に、連続して、又は個別に投与される。
【0060】
別の好ましい態様では、HDAC阻害剤とロスコビチン又はその薬学的に許容される塩は、時を同じくして投与される。
【0061】
HDAC阻害剤が、酪酸ナトリウム若しくはそのプロドラッグ、又はTSAである場合、HDAC阻害剤とロスコビチンは、同時に、個別に、又は連続して、投与の順序にかかわりなく投与してもよい。
【0062】
HDAC阻害剤が、SAHAである場合、SAHAは、ロスコビチンより前に投与され、すなわち、対象にSAHAによる前治療が行われることが好ましい。
【0063】
HDAC阻害剤が、バルプロ酸ナトリウムである場合、ロスコビチンとバルプロ酸ナトリウムは、個別に、又は連続して、投与の順序にかかわりなく投与される。
【0064】
好ましい実施態様では、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩とHDAC阻害剤とは、個々の成分に関しての治療効果量でそれぞれ投与される。
【0065】
別の好ましい実施態様では、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、HDAC阻害剤とは、個々の成分に関しての準治療量でそれぞれ投与される。
【0066】
「準治療量(sub-therapeutic amount)」なる用語は、ロスコビチン単独又はHDAC阻害剤単独による治療に対して治療効果をもたらすために一般に要求されている量よりも低い用量を意味する。
【0067】
さらに別の一態様は、増殖症の治療のための薬物の調製における本発明の組合せの使用に関する。
【0068】
本明細書における「薬物の調製」なる表現は、1又は複数の上述の構成成分の薬物としての直接的な使用、又はかかる薬物の製造の任意のステージにおける使用を含む。
【0069】
別の態様は、増殖症の治療のための薬物の調製におけるロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の使用であって、かかる治療は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤を、対象に、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む。
【0070】
さらに別の態様は、増殖症の治療のための薬物の調製における酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の使用に関し、かかる薬物は、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と併用療法において使用される。あるいは、かかる療法は、前治療であってもよい。
【0071】
別の態様は、増殖症の治療のための薬物の調製におけるロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の使用に関し、かかる薬物は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤と併用療法において使用される。あるいは、療法は、前治療でもよい。
【0072】
本明細書における「併用療法」なる用語は、HDAC阻害剤とロスコビチンが、同時にではないとしても、両方が同一の時間枠内で治療上作用することができるような時間枠内で連続的に投与される療法を意味する。
【0073】
本明細書における「前治療療法(pretreatment therapy)」、又は「前治療(pretreated)」が、一つの薬剤が、第二の薬剤の前に、個別に又は連続的のいずれかで投与される形態を意味する。第二の薬剤は、第一の薬剤の投与後少なくとも2時間後に投与されることが好ましい。第二の薬剤は、第一の薬剤の投与の少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6時間又は8時間後に投与されることがより好ましい。第二の薬剤は、第一の薬剤の投与の少なくとも12時間、又はより好ましくは少なくとも18時間又は24時間後に投与されることがさらにより好ましい。
【0074】
ロスコビチンとHDAC阻害剤とは、相乗的に作用することが好ましい。本明細書で用いられる「相乗的」なる用語は、ロスコビチンとHDAC阻害剤とを組み合わせて用いた場合に、2つの構成成分の個々の効果を合計したものよりも大きな効果をもたらすことを意味する。相乗的相互作用は、患者に投与する各構成成分の投与量を減少させる点で有利であり、それゆえ、同じ治療効果をもたらしつつ、及び/又は維持しつつ、化学療法の毒性を減少させることができる。それゆえ、特に好ましい実施態様においては、各構成成分は、準治療量を投与することができる。
【0075】
別の好ましい実施態様では、ロスコビチンとHDAC阻害剤は、単剤療法における個々の構成成分の使用における副作用、又はこれら成分の公知の使用における副作用を軽減し、又は排除するように相互作用する。
【0076】
上記の実施態様すべてについて、HDAC阻害剤は、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されることが好ましい。
【0077】
(増殖症)
本明細書で使用される「増殖症」なる用語は、細胞周期の制御を必要とする任意の疾患を含む広い意味で用いられ、例えば、動脈再狭窄(restenosis)及び心筋症(cardiomyopathy)などの循環器疾患や、糸球体腎炎(glomerulonephritis)及びリウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)などの自己免疫疾患や、乾癬(psoriasis)などの皮膚疾患、抗炎症性、抗真菌性、マラリアなどの抗寄生虫性の疾患、肺気腫(emphysema)並びに脱毛症(alopecia)を挙げることができる。これらの疾患においては、本発明の化合物は、アポトーシスを誘導し、必要とされる望ましい細胞内で均衡状態を維持できる。
【0078】
上述の態様及び実施態様のすべてにおいて、増殖症はがんが好ましい。
【0079】
(非小細胞肺がん)
特に好ましい本発明の実施態様において、増殖症は、肺がん、より好ましくは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0080】
肺がん(気管支がん)は、小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の2つの広義のカテゴリーに分けてもよい。これらの2つのタイプのがんの相違は、顕微鏡下で観察した場合の腫瘍細胞の外観に基づくものである。
【0081】
SCLCは、肺がんと診断されたうちの20%を占め、細胞核に大部分満たされている小細胞により特徴づけられる(よって、この名前となっている。)。時には、「燕麦細胞(oat cell)」がんと呼ばれることがもある。SCLCは、最も侵襲性の強いがんのタイプであって、急速に体の他の部分に転移する。がんが体中に拡がった後にやっとSCLCであると診断されることが、しばしばおこる。SCLCは、ほとんどの場合、喫煙の結果引き起こされるのが一般的である。
【0082】
NSCLCは、肺がんに関するグループに分類することができ、例えば、類表皮(epidermoid)又は扁平上皮がん、腺がん、及び大細胞がんを挙げることができる。
【0083】
肺扁平上皮がん(squamous cell lung cancer)は、すべての肺がん症例の30%を占める。肺及び気管支の粘膜の補充細胞(reserve cells)(損傷上皮細胞を置換する役割を有する)から発症する。結果として、がんは、まず肺の中心で発症する。肺扁平上皮がんは、多くの場合成長は遅く、限局腫瘍から湿潤がんへ進行するために数年かかることもある。10〜20%の症例では、がんは、肺内部で空洞を作る。転移する場合は、骨、肝臓、副腎、小腸、脳にしばしば拡大する。
【0084】
腺がん(squamous cell lung cancer)は、すべての肺がん例の30〜40%を占める、最も一般的な肺がんの形態である。肺の外側部分に発症し、粘液を発生する細胞から発症する。このがんの経過は、広範囲にわたって変化に富むが、進行は遅く、患者が訴える症状は少ないか、全くない。いくつかの症例では、しかしながら、極度に侵襲的であり、速やかに死に至る。転移すると50%の症例では、脳にのみ拡大する。腺がんが転移する他の部位としては、肝臓、副腎、及び骨を挙げることができる。
【0085】
大細胞がんの発生率は、腺がん又は肺扁平上皮がんのいずれよりもそれほど多くはないが、肺がんの例の10〜20%を占める。がんは、本来未分化である大球性細胞からできており、しばしば気管支で発症する。大細胞がんは、肺の周辺で進行し、複数に転移しうる。
【0086】
現在、肺がんは、外科手術、放射線療法、又は化学療法によって治療されうる。化学療法は、単独で、又は、ほかの治療の選択肢と組み合わせて行われてもよい。一般のNSCLCドラッグ又は形態としては、カンプトサール(camptosar)(イリノテカン;CPT−11)、カンプトテシン、カルボプラチン(パラプラチン)、シスプラチン(プラチノール(platinol))、エピルビシン、ゲムシタビン(gemcitabine)、ナベルビン(navelbine)(ビノレルビン(vinorelbine))、オキサリプラチン(oxaliplatin)、タキソール(パクリタキセル)、及びタキソテール(taxotere)、ドセタキソール(docetaxol)(NSCLC治療−化学療法、肺がんオンライン)を含む。
【0087】
しかしながら、化学療法は治癒的ではない。この治療法の別の不都合な点としては、毒性、正常組織へのバイスタンダーダメージと薬剤耐性である(W. Wang et al, Cancer Sci., 2005, 96(10), 706)。さらに、研究によると、ビノレルビンなどの公知の治療法のいくつかによる延命効果は、ほとんどないことが示されている(M. A. Socinski et al, Clin. Adv. Hematol. Oncol., 2003, 1(1), 33)。トロキサシタビンなどの新規の活性剤(active)を、3週間ごとに30分以上にわたって10mg/mの投与量を静脈内投与しても、NSCLCにおいてはほとんど作用しないことが示されてきた。
【0088】
ゲムシタビン/シスプラチンの組合せは、ヨーロッパではNSCLCの治療について広く用いられてきた。シスプラチンは、しかしながら、患者において嘔吐を伴い、顕著な非血液毒性(中毒性難聴(ototoxicity)及びネフロキシシティ(nephroxicity))を起こすというある種の副作用が知られている(P. Zatloukal et al, Lung Cancer, 2002, 38, S33)。
【0089】
肺がんと診断された患者の予後は不良である。すなわちすべての治療例のうち10年後の生存率は、約8%ほどであり、引き続き効果的な治療を開発する必要がある。
【0090】
(医薬組成物)
特に好ましい実施態様では、本発明の医薬品は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物の形態である。
【0091】
本発明の化合物(その薬学的に許容される塩、エステル、及び薬学的に許容される溶媒和を含む)は、単独で投与できるが、これらは、特にヒトの治療においては担体、賦形剤、又は希釈剤を混合して、通常投与される。医薬化合物は、ヒト及び動物の医学において、ヒト又は動物のために使用してもよい。
【0092】
本明細書における医薬化合物の多様な異なる形態のかかる適切な賦形剤の例は、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, 2nd "Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerにおいて見い出すことができる。
【0093】
治療上の使用のために容認できる使用担体又は希釈剤は、医薬業界において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0094】
適切な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、その他を挙げることができる。適切な希釈剤としては、エタノール、グリセロール及び水を挙げることができる。
【0095】
医薬的な担体、賦形剤、又は希釈剤の選択肢としては、所望の投与経路及び、標準的な薬務に関連して選択してもよい。医薬組成物は、担体、賦形剤、希釈剤として、又は担体、賦形剤、希釈剤に加え、任意の適切な1又は複数のバインダー、1又は複数の潤滑剤、1又は複数の懸濁剤、1又は複数のコーティング剤、1又は複数の可溶化剤を含んでもよい。
【0096】
適切なバインダーの例としては、デンプンや、ゼラチンや、グルコースなどの天然糖や、無水ラクトースなどの天然糖や、フリーフローラクトースや、ベータラクトースや、コーンシロップや、アカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ガムや、カルボキシメチルセルロースや、ポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0097】
適切な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、その他を挙げることができる。
【0098】
防腐剤、安定剤、色素、さらには着香料が、医薬組成物に提供されてもよい。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルを挙げることができる。酸化防止剤及び懸濁化剤が用いられてもよい。
【0099】
(塩/エステル)
本発明の薬剤は、塩又はエステルとして、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在してもよい。
【0100】
薬剤の薬学的に許容される塩は、その適切な酸付加塩又はその塩基性塩(base salt)を挙げることができる。適切な医薬塩の概説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)に見い出すことができる。塩は、例えば、硫酸、リン酸、又はハロゲン化水素酸といった鉱酸などの強い無機酸類;酢酸等の非置換の若しくは置換された(例えばハロゲンで)1〜4炭素原子のアルカンカルボン酸類などの有機強酸類;例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、若しくはテトラフタル酸などの飽和又は不飽和のジカルボン酸類; 例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸といったヒドロキシカルボン酸類;例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸といったアミノ酸類;安息香酸;あるいはメタン酸又はp−トルエンスルホン酸などの非置換の若しくは置換された(例えばハロゲンで)(C1−C4)−アルキル−又はアリールのスルホン酸類などの有機スルホン酸類を挙げることができる。
【0101】
エステルは、有機酸又はアルコール/水酸化物を用いて、エステル化される官能基に応じて形成される。有機酸類としては、酢酸等の非置換の又は置換された(例えばハロゲンで)1〜12炭素原子のアルカン−カルボン酸類などのカルボン酸類;例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、若しくはテトラフタル酸などの飽和又は不飽和のカルボン酸類;例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸などのヒドロキシカルボン酸類;アミノ酸類、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸といったアミノ酸類;あるいはメタン酸又はp−トルエンスルホン酸などの非置換の若しくは置換された(例えばハロゲンで)(C1−C4)−アルキル−又はアリールのスルホン酸類などの有機スルホン酸類を挙げることができる。適切な水酸化物類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物類を挙げることができる。アルコールとしては、非置換の又は例えばハロゲンにより置換した1〜12炭素原子のアルカン−アルコール類を挙げることができる。
【0102】
[光学異性体/互変異性体]
本発明は、薬剤のすべての適当な光学異性体と互変異性体をも含む。当業者であれば、光学的性質(1又は複数の不斉炭素原子)又は互変異性的特徴を有する化合物について認識するであろう。対応する光学異性体及び/又は互変異性体は、当該技術分野において公知の方法により単離/調製してもよい。
【0103】
[立体異性体/幾何異性体]
本発明のいくつかの薬剤は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在してもよく、例えば、1又は複数の不斉及び/又は幾何学的中心を有し、2又はそれ以上の立体異性体及び/又は幾何異性体(geometric forms)として存在してもよい。本発明は、すべての個々の阻害剤の立体異性体及び幾何異性体の阻害剤、及びそれらの混合物の使用を意図するものである。クレームに用いられる用語は、これらの形態が適当な機能活性を保持することを条件に、かかる形態を包含する(必ずしも同一の程度ではないが)。
【0104】
本発明は、薬剤又はその薬学的に許容される塩のすべての同位体バリエーションをも含む。本発明の薬剤の同位体バリエーション又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも一つの原子が、同一の原子番号を有するが、原子質量が天然に見出される原子質量と相違する原子により置換されているものとして定義される。薬剤に組み込むことのできる同位体の例としては、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Cl等の水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素の同位体などを挙げることができる。薬剤のある種の同位体バリエーションとその薬学的に許容される塩としては、例えば、3H又は14Cなどの放射性同位体が取り込まれているものを挙げることができ、ドラッグにおいて及び/又は基質組織分布研究において有用である。トリチウムすなわち3H、炭素14すなわち14C同位体は、調製の容易さと検出能において特に好ましい。さらに、重水素、すなわち2Hなどの同位体との置換は、代謝的安定性からもたらされる、ある種の治療上の利点を得ることができ、例えば、インビボでの半減期が増加し、必要な用量が減少し、それゆえ、状況次第で好ましい。本発明の薬剤の同位体バリエーション又はその薬学的に許容される塩は、同位体バリエーションの適切な試薬を用いることにより、適当な慣用の手順で通常調製することができる。
【0105】
[溶媒和物]
本発明は、本発明の薬剤の溶媒和物(solvates)の形態をも含む。クレームにおいて用いられる用語は、これらの形態を含む。
【0106】
[多形]
本発明は、様々な結晶形態、多形形態、及び(無)水和形態をさらに含む。製薬業界では、化合物は、かかる化合物を合成して調製するときに使用した溶剤や、精製及び/又は単離方法を若干変更した形式で単離できるということが立証されている。
【0107】
[プロドラッグ]
本発明は、プロドラッグの形態での本発明の薬剤をさらに含む。一般的に、かかるプロドラッグは、その中の1又は複数の適当な基が修飾されており、修飾は、ヒトやほ乳類対象への投与時に復帰(reversed)しうる化合物である。かかる復帰は、かかる対象において天然に存在する酵素により通常行われるが、インビボで復帰を行うためにかかるプロドラッグと共に第二の薬剤を投与することもできる。かかる修正の例としては、エステル(例えば、上述のいずれか)を挙げることができ、エステラーゼその他により復帰変異が行われる。別のシステムも当業者に周知であろう。
【0108】
[投与]
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、膣内、非経口、筋肉内、腹腔内(intraperitoneal)、動脈内、くも膜下腔内(intrathecal)、気管支内、皮下(subcutaneous)、皮内、静脈内、鼻腔内、口腔(buccal)又は舌下の投与経路に適応させてもよい。
【0109】
経口投与においては、特定の使用は、圧縮錠、ピル、タブレット、ジェルレ(gellules)、ドロップ、及びカプセルを含む。好ましくは、かかる組成物は、1〜2000mg、より好ましくは1用量あたり50〜1000mgの活性成分を含むことが好ましい。
【0110】
別の投与形態としては、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹腔内又は筋肉内に注射できる溶液又はエマルジョンを含み、消毒した又は消毒可能な溶液から調製される。本発明の医薬組成物は、坐薬、ペッサリー、懸濁液、エマルジョン、ローション、軟膏、クリーム、ジェル、スプレー、溶液、又はパウダーの形態でもよい。
【0111】
経皮投与の別の手段としては、スキンパッチの使用を挙げることができる。例えば、活性成分は、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性エマルジョンからなるクリームに組み入れることができる。活性成分は、必要に応じて安定化剤や保存料とともに、白ろう又は白軟パラフィンベースからなる軟膏に1〜10質量%の濃度で組み入れることができる。
【0112】
注射剤型としては、1用量あたり10〜1000mg、好ましくは10〜500mgの活性成分を含むことができる。
【0113】
組成物は、単一剤形(unit dosage form)、すなわち、1回服用量(unit dose)又は1回服用量の複数、若しくはサブユニットを含む、個別の量(portion)で処方されてもよい。
【0114】
特に好ましい実施形態では、本発明の組合せ又は医薬組成物は、静脈内に投与される。
【0115】
(投与量)
当業者であれば、過度な実験なしに、対象に投与する本発明の組成物の一つの適当な投与量を容易に決定することができる。通常、医師が、個々の患者のために最も適切な実際の投与量を決定するものであり、用いられている特定の化合物の活性を含む様々な因子や、代謝安定性や、化合物の作用の長さや、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、投与方法及び時間、食事、排出速度、ドラッグの組合せ、特殊状況の重篤性、個人が受けている治療法に依拠するものである。本発明における投与量は、平均的ケースにおける典型的な例である。もちろん個々の事例としては、本発明の範囲を逸脱することなく、より高い又はより低い投与量が利益となることもある。
【0116】
必要に応じて、薬剤は、体重1kgあたり0.1〜30mg/kgという用量で投与してもよいが、体重1kgあたり2〜20mg/kg、より好ましくは0.1〜1mg/kgである。
【0117】
ガイダンスにより、HDAC阻害剤は、上述の関連資料に記載されている投与量を医師の指示により投与されるのが通常である。ピバネックスは、一日あたり約2.34g/m通常投与される。ピバネックスは、静脈注射により投与することが好ましい。スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、一日あたり100〜600mg通常投与される。スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、経口投与することが好ましい。HDAC阻害剤の一日あたりの合計投与量は、単回投与又は個別の容量に分割されて、一日に2回、3回、4回投与されることが好ましい。
【0118】
ロスコビチンは、通常、一日あたり約0.05〜約5g投与され、好ましくは、一日あたり約0.4〜約3g投与される。ロスコビチンは、タブレット又はカプセルで経口投与することが好ましい。ロスコビチンの一日あたりの合計投与量は、単回投与又は個別の容量に分割されて、一日に2回、3回、4回投与されることが好ましい。
【0119】
好ましい実施態様では、ロスコビチンは、一日あたり約0.4〜約3g経口投与又は静脈内投与され、HDAC阻害剤は、上述の適当な容量でもっとも適切とみなされる方法で投与される。HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与の少なくとも2時間前に投与されることが好ましい。HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与の少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6時間又は8時間前に投与されることがより好ましい。HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与の少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18時間又は24時間前に投与されることがさらにより好ましい。
【0120】
別の好ましい実施態様としては、HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与の少なくとも2時間後に投与されることが好ましい。HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与後、少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも6時間又は8時間後に投与されることがより好ましい。HDAC阻害剤は、ロスコビチンの投与後、少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18時間又は24時間後に投与されることがより好ましい。
【0121】
(キットのパーツ)
さらに、本発明の態様は、キットのパーツに関するものであり、かかるキットのパーツは、
(i)ロスコビチン、又はその薬学的に許容される塩であって、任意で薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合したもの、及び
(ii)酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤であって、任意で薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と混合したもの.
を含み、
ロスコビチンとHDAC阻害剤とは、それぞれ単一剤形であることが好ましい。好ましくは、キットのパーツは、各構成成分、すなわち上述の(i)及び(ii)の構成成分の単一剤形を複数含むことが好ましい。
【0122】
あるいは、キットのパーツは、特定の投与計画によるコンプライアンスを促進する手段をさらに含んでもよく、例えば、各構成要素の単一剤形が、いつ、どの様に、どれぐらいの頻度で摂取されなければならないかについて記載した指示書である。
【0123】
本発明は、添付の図面と併せて読むべき以下の実施例を参照して説明される。
【実施例】
【0124】
[R−ロスコビチン]
R−ロスコビチンは、欧州特許0874847号明細書(CNRS)が開示している方法により調製された。
【0125】
[HDAC阻害剤]
酪酸ナトリウム及びバルプロ酸ナトリウムは、Sigma社から取得し、TSAは、AG Scientific, Inc.社から取得し、SAHAは、Toronto Research Chemicals, Inc.社から取得した。
【0126】
[細胞培養]
実験は、96ウェルプレートで行われ、細胞株は、A549については2000/ウェル、及びH460については3000/ウェルの密度にて播種された。処理24時間後及び処理72時間後のIC50値が、それぞれの細胞株における酪酸ナトリウムについてと、H460細胞株におけるSAHA、バルプロ酸ナトリウム及びTSAについて、アラマーブルーアッセイ(Alamar blue assay.)を用いて測定された。各HDAC阻害剤は、同時処理、セリシクリブ前処理後にHDAC阻害剤処理、HDAC阻害剤前処理後にセリシクリブ処理、というセリシクリブと組み合せた異なる併用投与計画(regime)を用いて試験された。
【0127】
(カルクシン(Calcusyn)薬剤組合せプロトコル)
併用療法においては、セリシクリブ、HDAC阻害剤、又は両方の薬剤の1.5倍の段階希釈が同時に、24時間培養後細胞に添加され、37℃にて72時間置かれた。選択された薬剤濃度は、被検薬剤のIC50値に及ぶように選ばれた。前処理投与計画においては、第一の薬剤は、細胞をプレート培養した後2時間して添加された。培地は、吸引され、第二の薬剤を含む新鮮培地と置き換えられ、72時間インキュベートされた。それぞれの連続的処理の二つのコントロールは、一つの薬剤処理を培地と置換することに関連する。薬剤処理後、各ウェルの細胞数は、その後10%アラマーブルー(Roche社製, Lewes, East Sussex, U.K.)を含む培地に1時間細胞をインキュベートし、544〜595nmの吸光度を読むことにより推測された。ドラッグの相互作用は、Chou及びTalalayの50%有効モデル(median effect model)に基づく市販のソフトウェアパッケージであるカルクシンを用いて解析された(Chou, T.C. & Talalay, P. (1984) Adv. Enzyme Regul. 22, 27-55. Quantatative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors)。組合せ指数(Combination Index)(C.I.)が1である場合は、付加的な薬剤相互作用を示す一方、C.I.が1よりも大きい場合は拮抗的であり、スコアが1よりも小さい場合は相乗的である。
【0128】
(ウエスタンブロット分析)
タンパク質溶解物は、10%FCSを含む培地に約5×10細胞/ウェルにて播種した10cmプレートから作製された。細胞は、指示された濃度にてHDAC阻害剤及び/又はセリシクリブと共に、集菌するまで培養された。培養後、上清は除去され、いずれの浮遊細胞をもペレットにするため5分間2000rpmにて遠心分離された。プレート上の細胞は、氷冷バッファーA(20mMNaClを含む50mMHEPES、pH7.0)で一度洗浄された後、各プレートは、DTT1mMと、プロテアーゼ阻害剤(バッファーAで1:1000に希釈した)と、ホスファターゼ阻害剤(10mMピロリン酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、及び1mMオルトバナジウム酸ナトリウム)とを含むバッファーA0.15mlでスクレープ(scrape)された。細胞上清ペレットは、DTTと、プロテアーゼ阻害剤と、ホスファターゼ阻害剤とを含む50μLバッファーAに懸濁し、プレートに由来する適当なサンプルと共にプールされた。細胞は、超音波処理によって溶解され(2×3sプローブソニケーターにより破砕)、各試験管のタンパク質濃度は、BCAアッセイを用いて測定された。溶解物(20〜30μgタンパク質/ウェル(loaded/well))は、12%アクリルアミドを含むビス−トリスゲルに再溶解し、ウエスタンブロットによる分析のためにニトロセルロースにトランスファーされた。メンブレンは、0.02%(v/v)トゥイーン20と5%(w/v)無脂肪粉ミルクとを含むPBSで室温にて1時間ブロッキングされた。抗体培養は、0.02%(v/v)Tween20と3%(w/v)粉ミルクとを含むPBSにおいて、2〜8℃にて一晩行われた。ニトロセルロースメンブレンは、以下の抗体をプローブとして分析された。

【0129】
【表2】

【0130】
(フローサイトメトリー:セリシクリブ/酪酸ナトリウムの組合せ)
約3×10細胞/プレートのH460細胞が、10cmプレートに播種され、定着させるために一晩置かれた。次の日、指示された濃度のセリシクリブ、酪酸ナトリウム、又は両方の薬剤が添加された。24時間又は72時間のいずれかの処理の後に、細胞はトリプシン処理(trypsinisation)により集菌された。ヨウ化プロピジウム(propidium iodide)(PI)染色による細胞周期解析は、フローサイトメトリー解析の前に、−20℃にて70%(v/v)エタノールで一晩細胞を固定して行った。アネキシンV染色は、非固定生細胞について、製造者の使用説明書の指示どおりに行われた。
【0131】
(フローサイトメトリー:セリシクリブ/バルプロ酸ナトリウムの組合せ)
約0.5×10細胞/プレートのH460細胞が、10cmプレートに播種され、24時間で静置された。細胞はバルプロ酸ナトリウムで24時間処理され、さらにセリシクリブで24時間処理された。用いられた化合物の濃度は、1×IC50に相当した。単剤コントロール処理が行われた。かかる処理は、細胞をバルプロ酸ナトリウムでの24時間の処理後、薬剤を含まない培地による24時間の処理すること、或いは、薬剤を含まない培地による24時間の処理後セリシクリブによる24時間の処理することを含む。すべての細胞は培地を変更する前と48時間後に集菌された。接着細胞は、トリプシン処理により集菌され、細胞懸濁液にプールされ、PBSで2回洗浄し、氷冷70%エタノール1mLに再懸濁することで固定した(fixed)。ヨウ化プロピジウムによる標準細胞周期解析を、フローサイトメーターにより行った。結果は、2つのサンプルの平均をとった。
【0132】
[M30/TPSタイムギャップ実験の解析]
A549細胞を、96ウェルプレートに播種し、定着させるために一晩置いた。細胞は、指示された濃度のセリシクリブ、酪酸ナトリウム、又はその組合せで処理された。処理72時間後、培地は集菌され、維持され、−20℃にて保存した。サンプルは、M30ELISAで、製造者の使用説明書の指示通りに解析された。
【0133】
(結果)
[NSCLC細胞株におけるセリシクリブとHDAC阻害剤との組合せ]
セリシクリブは、H460細胞株とA549細胞株において、指示どおりにHDAC阻害剤と組み合わせた3つの異なる投与計画を用いて試験された。各ドラッグの処理の組合せの指標値は、ED50、ED75、及びED90の値(曲線上で50%、75%、及び90%が細胞死した地点)を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験の平均である(表1参照)。
【0134】
【表1】

【0135】
これらの結果により、セリシクリブと酪酸は、H460細胞株とA549細胞株とにおいて、3つの投与計画で相乗的であることが実証している。セリシクリブとSAHAは、H460細胞株において、SAHAの前処理の後セリシクリブで処理した場合に中程度に相乗的であり、別の2つの治療計画では追加的であった。相乗的作用は、投与の順序に関係なく、セリシクリブとバルプロ酸ナトリウムとの連続的処理において観察された。それゆえ、細胞がHDAC阻害剤で前処理された場合、セリシクリブは、試験された4つのHDAC阻害剤すべてと組み合わせて用いられた場合に相乗的であり、HDAC阻害剤をセリシクリブと組み合わせることは、NSCLC細胞株の処理のために優れた概念である。
【0136】
(フローサイトメトリー試験)
[セリシクリブと酪酸は、サブG1A549細胞において、相乗的増加を誘導する。]
A549細胞は、IC50酪酸、0.25〜1.5×IC50セリシクリブ、又はIC50酪酸存在下で0.25〜1.5×IC50セリシクリブにおいて、72時間インキュベートされた。細胞はその後集菌され、ヨウ化プロピジウムにより染色され、そのDNA含量がフローサイトメトリーで解析された。データは、2つの独立した実験を代表するものである(図1参照)。
【0137】
酪酸単独では、死んだ、又はアポトーシスを遂げつつあるサブ−G1細胞(<2nDNA)において、少しの増加を誘導した。セリシクリブ処理の治療は、サブ−G1細胞において、用量依存的な増加を誘導し、酪酸を含めることで、相乗的に促進された。これらのデータは、セリシクリブと酪酸とが、死んだ又は死にかけている細胞において相乗的な増加を誘導することを示している。
【0138】
[セリシクリブと酪酸は、アポトーシスを遂げつつある460細胞において、相乗的増加を誘導する。]
H460細胞株は、0.25〜1.5×IC50酪酸、0.25〜1.5×IC50セリシクリブ、又は0.25〜1.5×IC50セリシクリブと酪酸とで、72時間培養された。細胞はその後集菌され、アネクシンV(annexinV)により染色され、フローサイトメーターで解析された。データは、2つの独立した実験を代表するものである(図2参照)。
【0139】
アネクシンVは、アポトーシスを遂げつつある生細胞を標識する。0.67×と1×IC50濃度において、酪酸とセリシクリブは、2つの単剤処理を組み合わせたよりも顕著に大きいアネクシンVのシグナルを誘導し、アポトーシス細胞における相乗的増加を示唆した。酪酸とセリシクリブ(1.5×IC50)の一番高い濃度では、アポトーシスを遂げつつある細胞は、0.67×又は1×IC50濃度で処理された細胞より少ない様に思われたが、この理由については、現時点では明らかでない。
【0140】
[セリシクリブと酪酸は、A549細胞においてアポトーシスを相乗的に誘導する。]
A549細胞株は、DMSO(コントロール)で処理され、又は、セリシクリブ、酪酸ナトリウム、若しくはセリシクリブと酪酸とで、72時間指示どおりに処理された。細胞培養上清は集菌され、M30ApoptosenseELISAで試験され、集菌された細胞は、ウエスタンブロットにより、切断されたPARPとMcl−1について解析した。データは、2つの独立した実験を代表するものである(図3参照)。
【0141】
結果は、セリシクリブと酪酸とが一緒に、2つの単独処理を組み合わせたよりも大きいM30シグナルのシグナルを示し、アポトーシス細胞における相乗的増加を示唆した。このデータは、セリシクリブと酪酸とが、セリシクリブと酪酸単独よりも大きい切断されたPARPシグナルを示し、アポトーシスにおける追加的/相乗的増加を示唆した。セリシクリブと酪酸は、また、A549細胞において、抗アポトーシスタンパク質であるMcl−1を減少させた一方、単剤処理では、このタンパク質に何ら重要な効果を及ぼさなかった。この結果は、検出されたアポトーシスの増加を促進する役割を果たすものかもしれない。
【0142】
[セリシクリブと酪酸は、いくつかのアポトーシス性のタンパク質を容量依存的に制御する。]
H460細胞は、1×若しくは1.5×IC50濃度にて、酪酸、セリシクリブ、又はセリシクリブと酪酸とで24時間処理された。細胞は集菌され、生じた細胞溶解物は、指示された抗体で、ウエスタンブロットにより分析された。データは、2つの独立した実験の代表である(図4参照)。
【0143】
データによれば、24時間の処理により、セリシクリブと酪酸は、抗アポトーシスタンパク質であるMcl−1とカスパーゼ阻害剤であるXIAPのタンパク質レベルを、相乗的に減少させる。酪酸処理は、抗アポトーシスタンパク質であるBcl−2とカスパーゼ阻害剤であるサーバイビン(survivin)のレベルを減少させる。共に、これらの変化は、強いプロアポトーシス性のシグナルとなる。実際、増加した1.5×IC50で切断されたPARPは、せいぜい追加的効果があるように思われただけであったが、1.5×IC50濃度で切断されたPARPにおいてのみ相乗的増加があり、図2において、1.5×IC50で作成されたアネクシンVデータと一致するものである。
【0144】
[セリシクリブと酪酸は、いくつかアポトーシス性のタンパク質を時間依存的に制御する。]
H460細胞は、1×IC50酪酸、セリシクリブ、又はセリシクリブと酪酸で指示された時間処理された。細胞は集菌され、生じた細胞溶解物は、指示された抗体でウエスタンブロットにより解析された。データは、2つの独立した実験の代表である(図5参照)。
【0145】
酪酸は、サーバイビンとBcl−2のレベルを減少させ、セリシクリブと酪酸は、Mcl−1とXIAPのレベルを相乗的に減少させることから、結果は、図4による観察を確認するものである。これらのデータによれば、薬剤の組合せは、カスパーゼ3とカスパーゼ9の活性型の相乗的増加を誘導するものであることをも示しており、切断されたPARPにおける増加とほぼ同時に見い出される。興味深いことに、アポトーシスの増加は(切断されたPARPの出現として測定される)、Mcl−1と、Bcl−2と、サーバイビンと、XIAPとが減少する後まで起こらず、この細胞株では、これらの変化のいずれか又はすべてがアポトーシス効果を促進するために要求されてもよいことを示している。
【0146】
[セリシクリブ/バルプロ酸ナトリウムの組合せ]
バルプロ酸ナトリウム/セリシクリブの組合せのフローサイトメトリー解析を上述の通り行った。バルプロ酸ナトリウム前処理のスケジュールが、カルクシンにより相乗的作用を示したため選択された。H460細胞において、セリシクリブによる処理は、サブG1(アポトーシスを遂げつつある細胞)における細胞の多少の増加を誘導するが、用いられている濃度においては、H460細胞の全体的な細胞周期の配分に対して顕著なインパクトを与えるものではなかった(図6参照)。
【0147】
セリシクリブとバルプロ酸ナトリウムとの組合せは、サブG1(アポトーシスを起こした細胞)の割合を顕著に増加させ、単剤コントロールの合計と比較した場合に、カルクシン解析により得られたデータと一致するものである。
【0148】
上記に例証されているデータは、セリシクリブが、スケジュールと独立した方法で、H460細胞においてHDAC阻害剤であるバルプロ酸ナトリウムと相乗的作用のあると思われる証拠を提供するものである。
【0149】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の改変及び変更は、当業者には明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関して説明してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明がこうした特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、関連分野の当業者には自明である、本発明を実施するためのここに記載した形態の種々の改変は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】セリシクリブと酪酸ナトリウムとの同時の処理が、A549細胞において、72時間の処理後にアポトーシスの増加を相乗的に導き、サブG1細胞フラグメントにおける増加により決定されることを示す。
【図2】セリシクリブと酪酸ナトリウムとの同時の処理が、H460細胞において、72時間の処理後にアポトーシスの相乗的増加を導くことが、アネクシンVにより測定により、決定されることを示す。
【図3】セリシクリブ/酪酸ナトリウムの組合せについては、IC50濃度でアポトーシスの増加があり、サイトケラチン18(M30ELISA)のカスパーゼ切断及びPARP切断により決定される。加えて、図3によると、細胞のアポトーシスを引き起こす抗アポトーシスタンパク質の欠如におそらく関連しているMcl1レベルの相乗的減少を示すものである。
【図4】セリシクリブ/酪酸ナトリウムの組合せに関連して詳細にアポトーシスの分子経路を示す。Mcl1とBcl2(両方とも抗アポトーシスタンパク質)の欠如が細胞のアポトーシスを引き起こす。XIAPとサーバイビンは、アポトーシス経路の阻害剤であり、これらのたんぱく質の欠如が、再び細胞をアポトーシスに向かわせる。XIAPとMcl1は、相乗的であるので、この効果は、PARPの存在により示される。ヒストンのウエスタンブロットは、HDAC阻害剤がアセチル化ヒストンの量を増加させる(脱アセチル化が阻害されているから)ことを示す。
【図5】セリシクリブ/酪酸ナトリウムの組合せにおけるIC50の細胞事象の経時変化を示す。カスパーゼ3とカスパーゼ9(アポトーシスが誘導されていることが示唆されている)の相乗的活性化をみることができる。
【図6】DMSO(コントロール)、バルプロ酸ナトリウム、セリシクリブ、及びバルプロ酸ナトリウム/セリシクリブの組合せによる処理後の細胞周期の分配を示す。H460細胞は、フローサイトメーターのPI解析前に示される。H460細胞は、フローサイトメーターのPI解析前に示された時間指示された薬剤で処理された。結果は、2つのデュプリケートの平均である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを含む組合せ。
【請求項2】
HDAC阻害剤が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグであることを特徴とする請求項1の組合せ。
【請求項3】
プロドラッグが、ピバロイルオキシメチル酪酸であることを特徴とする請求項2の組合せ。
【請求項4】
HDAC阻害剤が、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)であることを特徴とする請求項1の組合せ。
【請求項5】
HDAC阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする請求項1の組合せ。
【請求項6】
HDAC阻害剤が、バルプロ酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1の組合せ。
【請求項7】
ロスコビチンが、R−ロスコビチンであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の組合せ。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の組合せと、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とを含む医薬的組成物。
【請求項9】
増殖症を治療するための薬物の調製における請求項1〜7いずれか記載の組合せの使用。
【請求項10】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩、並びに、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤を含み、治療上同時に、連続して、又は個別に用いるための組合せ調製物としての医薬品。
治療における
【請求項11】
HDAC阻害剤が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグであることを特徴とする請求項10記載の医薬品。
【請求項12】
プロドラッグが、ピバロイルオキシメチル酪酸であることを特徴とする請求項11記載の医薬品。
【請求項13】
HDAC阻害剤が、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)であることを特徴とする請求項10記載の医薬品。
【請求項14】
HDAC阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする請求項10記載の医薬品。
【請求項15】
HDAC阻害剤が、バルプロ酸ナトリウムであることを特徴とする請求項10記載の医薬品。
【請求項16】
ロスコビチンが、R−ロスコビチンであることを特徴とする請求項10〜15いずれか記載の医薬品。
【請求項17】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形態としての、請求項10〜16いずれか記載の医薬品。
【請求項18】
増殖症の治療において用いられることを特徴とする請求項10〜17いずれか記載の医薬品。
【請求項19】
増殖症が、がんであることを特徴とする請求項18記載の医薬品。
【請求項20】
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)であることを特徴とする請求項19記載の医薬品。
【請求項21】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤とを、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む増殖症の治療方法。
【請求項22】
ロスコビチンが、R−ロスコビチンであることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
酪酸ナトリウムのプロドラッグが、ピバロイルオキシメチル酪酸であることを特徴とする請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩、及びHDAC阻害剤を、個々の成分の治療効果量でそれぞれ投与することを特徴とする請求項21〜23いずれか記載の方法。
【請求項25】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩、及びHDAC阻害剤を、個々の成分の治療量以下でそれぞれ投与することを特徴とする請求項21〜23いずれか記載の方法。
【請求項26】
HDAC阻害剤、及びロスコビチン又はその薬学的に許容される塩が、同時に投与されることを特徴とする請求項21〜25いずれか記載の方法。
【請求項27】
HDAC阻害剤、及びロスコビチン又はその薬学的に許容される塩が、連続して又は個別に投与されることを特徴とする請求項21〜25いずれか記載の方法。
【請求項28】
HDAC阻害剤が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩より前に、連続して又は個別に投与されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩が、HDAC阻害剤より前に、連続して又は個別に投与されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項30】
増殖症が、がんであることを特徴とする請求項21〜29いずれか記載の方法。
【請求項31】
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)であることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
増殖症の治療のための薬物の調製におけるロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の使用であって、前記治療が、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤を同時に、連続して、又は個別に対象に投与することを含むことを特徴とする使用。
【請求項33】
薬物の調製における酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の使用であって、前記治療が、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩を同時に、連続して、又は個別に対象に投与することを含むことを特徴とする使用。
【請求項34】
増殖症の治療のための薬物の調製におけるロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤との使用。
【請求項35】
ロスコビチンとその薬学的に許容される塩との併用療法において使用される、増殖症の治療のための薬物の調製における、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤の使用。
【請求項36】
酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤との併用療法において使用される、増殖症の治療のための薬物の調製における、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤との前治療において使用される、増殖症の治療のための薬物の調製における、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項38】
ロスコビチンが、R−ロスコビチンであることを特徴とする請求項32〜37いずれか記載の使用。
【請求項39】
酪酸ナトリウムのプロドラッグが、ピバロイルオキシメチル酪酸であることを特徴とする請求項32〜38いずれか記載の使用。
【請求項40】
増殖症が、がんであることを特徴とする請求項32〜39いずれか記載の使用。
【請求項41】
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)であることを特徴とする請求項40記載の使用。
【請求項42】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩とHDAC阻害剤の、非小細胞肺がんを治療するための薬物の調製における使用。
【請求項43】
ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩と、酪酸ナトリウム若しくはそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤との、非小細胞肺がんを治療するための薬物の調製における使用。
【請求項44】
以下の(i)〜(ii)を含むキット。
(i)任意で薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を混合した、ロスコビチン又はその薬学的に許容される塩;及び
(ii)任意で薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を混合した、酪酸ナトリウム又はそのプロドラッグ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、バルプロ酸ナトリウム、及びトリコスタチンA(TSA)から選択されるHDAC阻害剤
【請求項45】
本明細書中に実質的に記載された、パーツの組合せ、医薬組成物、医薬品、方法、使用又はキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−515862(P2009−515862A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539503(P2008−539503)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004226
【国際公開番号】WO2007/054727
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】