説明

壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、及び地中連続壁

【課題】壁パネル同士を確実に接続することができるパネル接合構造及び、このパネル接合構造により構築された防振ゴム層を備えた地中連続壁を提供する。
【解決手段】地中連続壁10を構成する壁パネル2を接合する壁パネル接合構造1であって、各壁パネル2は、コンクリートパネル16と、コンクリートパネル16の外壁側を覆うように取り付けられ、かつその端部がコンクリートパネル16の内壁側に露出するように設けられた防振ゴム14を備え、隣接する壁パネル2の防振ゴム14の露出した端面を覆うように内壁側から、接合部防振ゴム15を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、及び地中連続壁に関し、特に、高い防振性能を確保できる壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、及び地中連続壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路や鉄道等の交通路に近接して構築される地下構造物には、交通路を通行する車両からの振動や騒音等の伝達を防止するために、前記地下構造物と一体に防振構造物が設けることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地盤を掘削して掘削孔を形成し、この掘削孔内に、地下構造物側の表面に防振材が取り付けられた鉄筋籠を挿入したのち、コンクリートを打設することで構築することにより、地中連続壁の地下構造物側の表面が防振材で覆われた地中連続壁を構築する工法が記載されている。
【特許文献1】特開平3−257226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の工法では、施工誤差や掘削孔の不陸により、防振材の接合部に隙間が生じてしまうことがある。このような隙間が生じてしまうと、交通車両の騒音等が侵入し、防音・防振効果が著しく低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的防振材同士を隙間なく接続して防音・防振性能を確保することができる壁パネル接合構造、地中連続壁の構築方法、及び地中連続壁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁パネルの接合構造は、地中連続壁を構成する壁パネルを接合する壁パネル接合構造であって、各壁パネルは、パネル本体と、当該パネル本体の外壁側を覆うように取り付けられ、かつその端部が前記パネル本体の内壁側に露出するように設けられた防振材を備え、隣接する壁パネルの前記防振材の露出した端面を覆うように内壁側から、接合部防振部材を取り付けたことを特徴とする。
【0007】
上記の壁パネルの接合構造によれば、防振材の接合端面が地中連続壁の地下構造壁側の表面に露出しているため、根切り工事の際に、目視により露出していることを確認した上で接続部防振部材を取り付けることができる。これにより、確実に防振材の露出した端面に接続部防振部材を取り付けることができ、防振・防音性能を向上することができる。
また、本発明は上記の壁パネルの接合構造により隣接する壁パネル間を接合してなることを特徴とする地中連続壁を含む。
【0008】
上記の地中連続壁によれば、地中連続壁の地下構造物側の面が露出しているため、スタッド等を取り付け地中連続壁と地下構造物の外壁を一体に構築することができる。これにより、根切り工事のための山留め壁のみに用いられていた地中連続壁を地中構造物の外壁の一部として用いることができ、工期の短縮及びコストの削減が可能になる。
【0009】
さらに、本発明は上記の地中連続壁の構築方法であって、先行の壁パネルに相当する地盤を掘削して掘削孔を形成し、前記先行の壁パネルの後行の壁パネル側の端部に相当する位置に仕切り板を建込み、前記先行の壁パネルの防振材を建て込み、前期掘削孔内に鉄筋籠を建て込み、前記掘削孔内に前記先行の壁パネルを構成するコンクリートを打設し、前記コンクリートが硬化したのち、前記仕切り板を取り外す、工程を繰り返して地中連続壁を構築したのち、地中連続壁の建物側を掘削し、隣接する壁パネルの防振材の露出した端面を覆うように、内壁側から接合部防振部材を取付けることを特徴とする地中連続壁の構築方法も含むものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の壁パネルの接合方法によれば、防振材の接合端面が地中連続壁の地下構造壁側の表面に露出しているため、根切り工事の際に、目視により露出していることを確認した上で接続部防振部材を取り付けることができる。また、本発明の地中連続壁によれば、地中連続壁と地下構造物の外壁を一体に形成することができるため、コストの削減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の地中連続壁10の一実施形態について、図面に基づき説明する。
図1は、地中連続壁10を示す鉛直方向断面図である。同図に示すように、地下構造物12が地盤G内に構築され、地中連続壁10はこの地下構造物12の周囲を取り囲むように一体に設けられている。地中連続壁10は、地中連続壁本体13と、地中連続壁本体13と一体に構築された防振ゴム層11とを備えている。以下に詳細に説明するように、防振ゴム層11は各壁パネル2の外壁側に取り付けられた防振ゴム14と隣接する防振ゴム14の接合端面に覆うように接続された接合部防振ゴム15とからなる。防振ゴム層11は、地盤G側より伝搬した交通騒音や振動を吸収し、地下構造物12側へ伝わることを抑制する機能を有する。
【0012】
図2は、地中連続壁10の断面図である。同図に示すように、防振ゴム層11は地中連続壁10の壁幅方向に並置された複数の防振ゴム14と、隣接する防振ゴム14同士の接合部の隙間を覆うように設けられた接合部防振ゴム15とにより構成されている。防振ゴム14は地中連続壁10の外壁側に配置されたゴム製の部材であり、その両端面は屈曲し地中連続壁10の地下構造物12側の表面に露出している。防振ゴム14の露出している端面14Sには、それを覆うように接合部防振ゴム15が接続されている。防振ゴム14の壁幅方向の両端面の中央部付近は防振ゴム14の内側方向に突出している。
【0013】
また、地中連続壁本体13はコンクリートパネル16と、コンクリートパネル16に埋設された鉄筋籠17とからなる。コンクリートパネル16は防振ゴム14により複数のコンクリートパネル16A、16Bに区切られており、各壁パネル2は、コンクリートパネル16A、16Bと防振ゴム14とで構成される。
【0014】
次に、地中連続壁10を構築する手順について説明する。
図3から図8は、地中連続壁10を構築する手順を説明するための防振ゴム14の接合構造1の断面図である。地中連続壁10は地下構造物12を構築する際に、山留め壁として用いることができるため、地下構造物12に先だって構築する。まず、図3に示すように、先行の壁パネル2Aに相当する部分の地盤を掘削機を用いて掘削する。そして、掘削孔18の後行パネル側に仕切板19を建込む。この仕切り板19は、掘削孔18の壁厚方向の鉛直断面と略等しい形状をしている鋼製の部材であり、隙間なく掘削孔18内に建込むことができる。
【0015】
次に、先行の防振ゴム14Aを建込む。なお、防振ゴム14は複数の板状の防振ゴムを接続して構築したものであり、防振ゴム同士はビスにより隙間なく接続されている。このビスを取り付ける際に、防振ゴムを貫通してしまうと、防振・防音効果が低下してしまうため、適宜、ビスの長さを選定して用いる。
【0016】
次に、図4に示すように、掘削孔18内に鉄筋籠17を建込む。なお、鉄筋籠17には、鉄筋籠17と防振ゴム14との間隔を一定以上確保するためのスペーサ20が取付けられている。鉄筋籠17を建込んだ後、掘削孔18の仕切り板19で仕切られた部分にコンクリートを打設する。打設したコンクリートが硬化することでコンクリートパネル16A構築され、これにより、先行の壁パネル2Aが形成される。
【0017】
次に、図5に示すように、先行の壁パネル2Aを構築した場合と同様に、地盤の後行の壁パネル2Bに相当する部分を掘削する。掘削が終了した後、仕切板19を取り外し、掘削孔内の後行の壁パネル2Bの端部に相当する位置に移動する。
【0018】
次に、図6に示すように、後行の防振ゴム14Bを掘削孔18に建込む。次に、図7に示すように、鉄筋籠17を建て込む。そして、後行のコンクリートパネル(図8の16B)に相当する部分にコンクリートを打設する。また、同時に、掘削抗の先行の防振ゴム14Aと後行の防振ゴム14Bとの間の部分21にもコンクリートを打設する。このとき、防振ゴム14の壁幅方向の両端面に設けられた突出部の間にトレミー管を挿入し、コンクリートを流し込むことで、容易にコンクリートの打設作業を行うことができる。
【0019】
また、防振ゴム14A,14Bの接合部付近の地盤Gにセメントベントナイトを注入する。これにより、接合部付近の防振ゴム14と地盤Gの間の隙間を充填することができ、止水性を向上することができる。
以上の作業を繰り返し、壁パネル2を構築していくことで、地中連続壁本体13が形成される。
【0020】
地中連続壁本体13が構築された後、地中連続壁本体13を山留め壁として用いて、地下構造物12に相当する部分の掘削を行う。このとき、地下構造物12側より、防振ゴム14A,14Bの端面14Sが露出していることを目視で確認する。そして、図8に示すように、地中連続壁10の内壁側壁面に露出している防振ゴム14の端面14Sを覆うように、接合部防振ゴム15を取付けることで防振ゴム層11を備えた地中連続壁10を構築することができる。なお、防振ゴム14の露出している部分に不陸がある場合は、防振ゴム14の端面14Sと接合部防振ゴム15との間に薄いゴム製の部材を介在させ、不陸を調整して取付ければよい。
【0021】
上記の防振ゴム14の接続構造1によれば、以下の効果が得られる。防振ゴム14の接合端面14Sが地中構造物12側の表面に露出しているため、根切り工事などで地中連続壁10の地中構造物12側の地盤を掘削した際に、目視により確認しながら、接合部防振ゴム15を隙間なく取付けることができる。このため、隣接する防振ゴム14同士の間に隙間が生じることがなく、防音・防振性能を向上することができる。
【0022】
また、上記特許文献1に開示される従来の方法では、防振ゴムを、コンクリートパネルの地下構造物側を覆うように地下構造物に取付けていたため、地中連続壁と地下構造物とを一体に形成することができなかった。しかし、本実施形態の地中連続壁によれば、地中連続壁の地下構造物側の面にスタッド等をとりつけ、地中連続壁と地下構造物の外壁を一体に構築することができる。これにより、山留め壁のみに用いられていた地中連続壁を地下構造物の一部として用いることができ、工期の短縮及びコストの削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】地中連続壁を示す鉛直方向断面図である。
【図2】壁パネルの接合構造を示す水平方向断面図である。
【図3】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その1)である。
【図4】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その2)である。
【図5】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その3)である。
【図6】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その4)である。
【図7】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その5)である。
【図8】地中連続壁の構築方法を説明するための水平方向断面図(その6)である。
【符号の説明】
【0024】
1 壁パネルの接合構造 2 壁パネル
2A 先行の壁パネル 2B 後行の壁パネル
10 地中連続壁 11 防振ゴム層
12 地下構造物 13 地中連続壁本体
14 防振ゴム 14A 先行の防振ゴム
14B 後行の防振ゴム 14S 接合部端面
15 接合部防振ゴム 16、16A、16B コンクリートパネル
17 鉄筋籠 18 掘削孔
19 仕切板 20 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中連続壁を構成する壁パネルを接合する壁パネル接合構造であって、
各壁パネルは、パネル本体と、当該パネル本体の外壁側を覆うように取り付けられ、かつその端部が前記パネル本体の内壁側に露出するように設けられた防振材を備え、
隣接する壁パネルの前記防振材の露出した端面を覆うように内壁側から、接合部防振部材を取り付けたことを特徴とする壁パネル接合構造。
【請求項2】
請求孔1記載の壁パネルの接合構造により隣接する壁パネル間を接合してなることを特徴とする地中連続壁。
【請求項3】
請求項2記載の地中連続壁の構築方法であって、
先行の壁パネルに相当する地盤を掘削して掘削孔を形成し、
前記先行の壁パネルの後行の壁パネル側の端部に相当する位置に仕切り板を建込み、
前記先行の壁パネルの防振材を建て込み、
前期掘削孔内に鉄筋籠を建て込み、
前記掘削孔内に前記先行の壁パネルを構成するコンクリートを打設し、
前記コンクリートが硬化したのち、前記仕切り板を取り外す、
工程を繰り返して地中連続壁を構築したのち、
地中連続壁の建物側を掘削し、隣接する壁パネルの防振材の露出した端面を覆うように、内壁側から接合部防振部材を取付けることを特徴とする地中連続壁の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−348523(P2006−348523A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173869(P2005−173869)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】