説明

壁構造、それに用いる外壁パネル、及び建物ユニット

【課題】加工容易性と耐破壊性能とを両立した壁構造を実現する。
【解決手段】外壁構造体10において、外壁パネル11は、外壁面を形成するための矩形平板状の窯業系サイディング板12と、その裏面全体に貼付される耐破壊性フィルム13と、下地フレーム14とにより構成されている。耐破壊性フィルム13は、窯業系サイディング板12と下地フレーム14との間に挟み固定されている。この場合、耐破壊性フィルム13によりフィルム層Xが形成されている。外壁パネル11よりも屋内側の構成として、外壁パネル11の下地フレーム14には木レンガ23が組み付けられ、その室内側には上下方向に延びる木フレーム24が組み付けられている。そして、木フレーム24に対して石膏ボード22が組み付けられている。断熱材21は、外壁パネル11の下地フレーム14と石膏ボード22との間に介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造、それに用いる外壁パネル、及び建物ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅などの建物の外壁パネルとして、例えば窯業系サイディング材を用いたものが知られている。窯業系サイディング材は、主原料としてセメント質原料及び繊維質原料を用いて板状に成型し、養生・硬化させたものであり、軽量かつ安価であることに加えて、施工の簡便さ、デザインの豊富さ等の利点を有する。
【0003】
ところで、窯業系サイディング材は工場や施工現場での切断等が容易であり、加工容易性に優れるという特長があるが、それが故に、窯業系サイディング材を単体のまま外壁パネルとして建物に装着した場合には、工具による打ち破り等の破壊行為に対する耐破壊性能が弱く、ひいては防犯性能が低下してしまう。
【0004】
この点、特許文献1に記載されているように、窯業系サイディング材の裏面全体に薄板鋼板を一体に固着すれば、上記の耐破壊性能に関し効果が見込める。しかしながら、この場合、窯業系サイディング材の利点であった加工容易性が損なわれてしまい、住宅などの建物の外壁パネルとして利用するには難があった。
【特許文献1】特開2004−52477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加工容易性と耐破壊性能とを両立することができる壁構造とそれに用いる外壁パネルとを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
本発明の壁構造では、外壁面を形成する外壁面材(窯業系サイディング板12)よりも内側に、耐破壊性を有するフィルム層(フィルム層X)を少なくとも1層設けている。本構成によれば、フィルム層によって壁体(外壁構造体10)の耐破壊性が向上するため、例えば建物の外壁構造体として適用した場合において同外壁構造体の破壊による不審者の侵入等を抑制することができる。またこの場合、同じく耐破壊性の向上を目的として外壁面材の裏面全体に金属薄板を貼り付けた従来技術とは異なり、フィルム層を設けることに起因して外壁面材の加工容易性が損なわれることが回避できる。その結果、加工容易性と耐破壊性能とを両立した壁構造が実現できる。
【0008】
外壁パネル(外壁パネル11)の構成として、外壁面材の裏面(外視裏面)にフィルム材(耐破壊性フィルム13)を貼り付け、そのフィルム材により前記フィルム層を形成すると良い。この場合、外壁面材とフィルム材とが一体化されるため、外壁面材における耐破壊性の向上が見込める。したがって、例えば建物の外壁として実用化される場合において、外部からの侵入に対して高い防犯性能を付与することができる。
【0009】
特に、外壁面材として窯業系サイディング材を用い、同窯業系サイディング材の裏面にフィルム材を貼り付けると良い。この場合、窯業系サイディング材を使用する上での本来の優位点である加工容易性を損なうことなく、同窯業系サイディング材の耐破壊性を向上させることができる。
【0010】
外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材(下地フレーム14)を有する壁構造では、外壁面材とフレーム材との間にフィルム材を挟み固定すると良い。この場合、外壁面材の裏面に貼り付けられたフィルム材が剥がれたり、貼付位置がずれたりする不都合を防止することができる。
【0011】
フレーム材とフィルム材との間にゲル状材を介在させると良い。ゲル状材としては、例えば、硬化状態において粘弾性を示す弾性接着剤(変成シリコーン系接着剤等)が使用される。上記のようにフレーム材とフィルム材との間にゲル状材を介在させることにより、フレーム材と外壁面材との間において多少の相対移動が可能となる。これにより、フレーム材に多少の曲がりや折れ等が生じてもそれに追従できる。また、地震発生時などにフレーム材に揺れ(振動)が生じても、その揺れによる外壁面材の損傷等を抑制することも可能となる。
【0012】
外壁面材の裏側全面にフィルム材を貼り付けると良い。これにより、外壁面材の全体が強化され、防犯性能をより一層高めることができる。
【0013】
外壁面材の裏面に、同外壁面材から一部がはみ出すようにしてフィルム材を貼り付けるとともに、同フィルム材のはみ出し部分を、隣接する別の外壁面材の裏面に貼り付けると良い。本構成によれば、複数の外壁面材を左右上下等に並べて設置する場合において、隣接する外壁面材間(目地部分)でフィルム材を跨ぐようにして設置することができる。したがって、外壁面材間にできる隙間にフィルム材を配設することができ、当該隙間において止水機能や気密機能が付加できる。この場合、既存技術である止水シートを削除でき、構成の簡素化が期待できる。
【0014】
また、四辺形をなす外壁面材の裏面に、相対向する二辺の端縁部のうち一方の端縁部で外壁面材から一部がはみ出し、かつ他方の端縁部で未貼付部分ができるようにしてフィルム材を貼り付けるとともに、同フィルム材のはみ出し部分を、隣接する別の外壁面材の前記未貼付部分に貼り付けると良い。本構成によれば、複数の外壁面材を左右上下等に並べて設置する場合において、隣接する外壁面材間を跨ぐようにしてフィルム材を設置しても同フィルム材が重複し二重になることが防止できる。これにより、フィルム層が局部的に厚くなり、それに起因して壁体の厚みが不均一になるといった不都合が回避できる。
【0015】
外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材(下地フレーム14)を有する壁構造では、外壁面材の裏面においてフレーム材と重複しない部位にフィルム材を貼り付けると良い。この場合、高い防犯性能が得られるという効果を奏しつつも、フィルム材の必要量の低減を図ることができ、コスト削減効果も期待できる。この場合、1枚の外壁面材に対して複数のフィルム材を分散して貼り付けることも可能である。
【0016】
本発明の壁構造は、例えば外構(エクステリア)の囲い塀や建物のベランダ柵などにも適用できる。かかる場合、外壁面材を二重に設けることで表裏両面に外壁面を形成し、その二重の外壁面材の中間層として前記フィルム層を設けると良い。
【0017】
また、壁体として外壁面材よりも内側に内装材(石膏ボード22)を有する壁構造においては、内装材にフィルム材を貼り付け、そのフィルム材によりフィルム層を形成すると良い。本構成においても、上記同様、壁体に対する耐破壊性の向上が実現できる。
【0018】
ここで、外壁パネルとしては、施工現場への搬送前に(すなわち、工場等で)、外壁面材にフィルム材を貼り付けた状態で建物等における外壁寸法や開口寸法に合わせて切断加工され、さらにフレーム材が組み付けられてなるものであるのが望ましい。これにより、建物等を設置する施工現場での施工作業性を向上させることができる。
【0019】
ユニット式建物の一部を構成する建物ユニットでは、上記のとおり外壁面材やフィルム材等からなる外壁パネルを用い、当該外壁パネルを工場等であらかじめ装着しておくと良い。これにより、ユニット式建物を設置する施工現場での施工作業性を向上させることができる。また、安定した品質が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した外壁構造体について図面に基づいて説明する。本実施形態の外壁構造体は、住宅等の建物において屋内外を仕切るものとして構成されている。図1は外壁構造体10の構造を示す斜視図、図2は同外壁構造体10においてパネル接合部の断面構造を示す断面図、図3は外壁パネル11の分解斜視図である。
【0021】
図1に示す外壁構造体10において、屋外側(図面手前側)には外壁パネル11が設けられており、その屋内側(図面奥側)に断熱材21や石膏ボード22等の内装材が設けられている。
【0022】
図3に示すように、外壁パネル11は、外壁面を形成するための矩形平板状の窯業系サイディング板12と、その裏面に貼付される耐破壊性フィルム13と、下地フレーム14とにより構成されている。窯業系サイディング板12は、例えば厚み寸法=16mm、縦寸法=2825mm、横寸法=990mmの大きさを有し、その表面には目地状溝12aが複数凹設されている。ただし、窯業系サイディング板12の大きさ及び表面デザインは任意に変更できる。
【0023】
耐破壊性フィルム13は、窯業系サイディング板12と同じ縦横寸法を有するフィルム材であり、接着剤により窯業系サイディング板12の裏面全体に貼付されるようになっている。耐破壊性フィルム13は、可撓性、柔軟性、弾性及び高強度な特性を有する材質よりなり、例えば、ポリエステル樹脂を主成分とする合成樹脂や、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニルプチラール(PVB)、ポリカーボネートなどの樹脂を主成分とする合成樹脂からなる。これら合成樹脂よりなるフィルム層(比較的薄いフィルム層)を複数層設け、それら各層間に接着剤層を介在させる構成とすることも可能である。
【0024】
耐破壊性フィルム13を窯業系サイディング板12に接着するために用いる接着剤としては、耐候性及び耐変色性を備えたパーマネントタイプの接着剤が用いられている。なお、窯業系サイディング板12側、耐破壊性フィルム13側のいずれかに粘着シートを貼り付けておき、その粘着シートによりそれら両者を接着することも可能である。
【0025】
下地フレーム14は、断面コ字状の軽量鉄骨材により構成され、窯業系サイディング板12と同じ縦横寸法で四辺形に組まれた縦枠部14a及び横枠部14bと、その縦枠部14a及び横枠部14bの内側に連結される中間枠部14cとを有する。
【0026】
そして、図1及び図2に示すように、外壁パネル11としては、窯業系サイディング板12の裏面に耐破壊性フィルム13が貼り付けられ、さらにその耐破壊性フィルム13を挟み固定するようにして下地フレーム14が組み付けられている。この場合、耐破壊性フィルム13によりフィルム層Xが形成されている。ちなみに、窯業系サイディング板12と下地フレーム14とはタッピングネジ(図示略)等により接合固定され、その状態においてそれら両者の間に耐破壊性フィルム13が介在することとなる。
【0027】
上記構成の外壁パネル11では、耐破壊性フィルム13を貼付していない既存の外壁パネルと比較して耐破壊性能(耐衝撃性や耐貫通性)が大幅に向上する。そのため、建物の外壁等に対する「打ち破り」や「こじ破り」等の破壊行為に対して抑止力が大いに期待できる。ちなみに、建物の防犯性能に関しては、警察庁、国土交通省、経済産業省、関係民間団体からなる官民合同会議が建物部品の防犯試験を実施しており、例えば防犯フィルムを粘着した窓ガラスに対して所定の破壊行為を行った場合には、侵入までに5分以上の時間を要することを防犯基準としている。これに鑑み、上記防犯基準を満たすように耐破壊性フィルム13が選定されると良い。
【0028】
建物においては、複数の外壁パネル11が横並びの状態で組み付けられるようになっており、図2に示すように、左右2枚の外壁パネル11について下地フレーム14同士(縦枠部14aのウエブ面同士)が接合され、ボルト及びナット等の締結具16により互いに連結固定されている。この状態において、左右2枚の外壁パネル11の間には10mm程度の隙間Cが形成され、その隙間Cを埋めるようにして、合成ゴム製の長尺の止水定形シール17が組み付けられている。
【0029】
外壁パネル接合部分(目地部分)における止水構造を図4に拡大して示す。止水定形シール17は、建物外壁の止水構造として一般に使用されているため、ここでは詳細な説明は割愛するが、概略として、屋外側に露出する頭部17aと、その頭部17aよりも内側に複数形成され、窯業系サイディング板12の端面に弾性変形状態で接触するリップ部17bとを有する構成となっている。また、窯業系サイディング板12の裏面側端部には、左右2枚の窯業系サイディング板12に跨るようにして、防水性を有する止水シート18が貼り付けられている。上述した止水定形シール17及び止水シート18によれば、左右2枚の窯業系サイディング板12間に形成される目地からの雨水等の浸入が防止されるようになっている。
【0030】
図2の説明に戻り、外壁構造体10において外壁パネル11よりも屋内側の構成として、外壁パネル11の下地フレーム14(縦枠部14a)にはタッピングネジ等により木レンガ23が組み付けられ、その室内側には、上下方向に延びる木フレーム24がタッピングネジ等により組み付けられている。そして、木フレーム24に対して石膏ボード22がタッピングネジ等により組み付けられている。なおここではタッピングネジの図示を省略している。断熱材21は、例えば防湿層付きのグラスウールにて構成されており、外壁パネル11の下地フレーム14(中間枠部14c)と石膏ボード22との間に介装されている。窯業系サイディング板12(正確には耐破壊性フィルム13)と断熱材21との間は空気層25となっている。
【0031】
ここで、外壁パネル11は、施工現場への搬送前に、必要となる大きさに各々分けて作製される。すなわち、工場等において、窯業系サイディング板12に耐破壊性フィルム13を貼り付けた状態で建物における外壁寸法や開口寸法に合わせて切断加工され、さらに下地フレーム14が組み付けられることで作製される。これにより、建物を設置する施工現場での施工作業性を向上させることができるようになっている。
【0032】
複数の建物ユニットを結合させて構成されるユニット式建物においてその外壁構造体として適用されることも考えられる。この場合、上記のとおり窯業系サイディング板12、耐破壊性フィルム13及び下地フレーム14からなる外壁パネル11を用い、工場等において当該外壁パネル11を建物ユニットにあらかじめ装着しておく。これにより、ユニット式建物を設置する施工現場での施工作業性を向上させることができる。また、建物ユニットとして安定した品質が確保できる。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、外壁パネル11において窯業系サイディング板12の裏面に耐破壊性フィルム13を貼り付ける構成としたため、同パネル11における耐破壊性(耐衝撃性や耐貫通性)が向上する。そのため、外壁パネル11の破壊による不審者の侵入等を抑制することができる。またこの場合、同じく耐破壊性の向上を目的として窯業系サイディング板の裏面全体に金属薄板を貼り付けた従来技術とは異なり、耐破壊性フィルム13を貼り付けることに起因して同サイディング板の加工容易性が損なわれることが回避できる。その結果、加工容易性と耐破壊性能とを両立した外壁構造が実現できる。
【0034】
窯業系サイディング板12と耐破壊性フィルム13とを接着剤等を用いた貼付により一体化したため、耐破壊性フィルム13が有する耐破壊性能が、窯業系サイディング板12での耐破壊性能として発揮できる。したがって、建物外部からの侵入に対して高い防犯性能を付与することができる。
【0035】
また、窯業系サイディング板12の裏面全体に耐破壊性フィルム13を貼付したため、窯業系サイディング板12の全体が強化され、防犯性能をより一層高めることができる。
【0036】
窯業系サイディング板12と下地フレーム14との間に耐破壊性フィルム13を挟み固定したため、耐破壊性フィルム13が剥がれたり、貼付位置がずれたりする不都合を防止することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、外壁パネル11において窯業系サイディング板12と耐破壊性フィルム13とを同じ縦横寸法とし、かつ窯業系サイディング板12からはみ出すことなく耐破壊性フィルム13を貼付したが、本実施形態ではこれを変更する。すなわち、窯業系サイディング板12の裏面に、同サイディング板12から一部がはみ出すようにして耐破壊性フィルム13を貼り付けるとともに、同フィルム13のはみ出し部分を、隣接する別の窯業系サイディング板12の裏面に貼り付ける構成とする。以下、本実施形態における外壁構造体について、先の第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0038】
図5は、本実施形態におけるフィルム付きサイディング板の横断面図である。ここで、窯業系サイディング板12と耐破壊性フィルム13とは基本的に前記と同じものであるが、違いとして、窯業系サイディング板12に対して耐破壊性フィルム13がずらして貼付されている。そのため、窯業系サイディング板12の裏面においては、耐破壊性フィルム13の余剰部分(はみ出し部分)F1と未貼付部分F2とが形成されている。このとき、窯業系サイディング板12において、相対向する二辺の端縁部のうち一方の端縁部にフィルム余剰部分F1が形成され、他方の端縁部にフィルム未貼付部分F2が形成されることとなる。なお、耐破壊性フィルム13の余剰部分F1と未貼付部分F2のそれぞれの長さ寸法L1,L2は20〜50mm程度である。ただし、L1>L2である。
【0039】
図6は、外壁パネル接合部分(目地部分)において二枚の窯業系サイディング板12の接合前の状態(a)と、接合後の状態(b)とを示す要部拡大断面図である。
【0040】
図6(a),(b)に示すように、左右二枚の窯業系サイディング板12では、その一方(窯業系サイディング板12Aとする)のフィルム余剰部分F1と、他方(窯業系サイディング板12Bとする)のフィルム未貼付部分F2とをペアとして両サイディング板12A,12Bが横並びの状態で接合されている。特にこの場合、窯業系サイディング板12A側のフィルム余剰部分F1が、他側の窯業系サイディング板12Bのフィルム未貼付部分F2まで延び同未貼付部分F2に貼り付けられている。つまり、耐破壊性フィルム13が、両サイディング板12A,12B間の目地部分を跨ぐようにして設置されている。
【0041】
なお本構成では、窯業系サイディング板12A側のフィルム余剰部分F1が、他側の窯業系サイディング板12Bと下地フレーム14(縦枠部14a)との間に挟まれるため、先に左右2つの窯業系サイディング板12A,12B間でのフィルム貼付が行われ、その後、両サイディング板12A,12Bについて下地フレーム14の組み付けが行われるようになっている。
【0042】
以上第2の実施形態によれば、左右二枚の窯業系サイディング板12A,12Bの間の目地部分に耐破壊性フィルム13が存在するため、当該フィルム13により止水機能や気密機能が付加できる。またこの場合、耐破壊性フィルム13が止水シートとして機能するため、目地部分の止水シート18(図4参照)が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0043】
また、窯業系サイディング板12には、フィルム余剰部分F1とフィルム未貼付部分F2とができるように耐破壊性フィルム13を貼り付け、フィルム余剰部分F1を、隣接する別の窯業系サイディング板12のフィルム未貼付部分F2に貼り付ける構成としたため、隣接するサイディング板間を跨ぐようにして耐破壊性フィルム13を設置しても同フィルム13が重複し二重になることが防止できる。これにより、耐破壊性フィルム13(フィルム層X)が局部的に厚くなり、それに起因して外壁構造体10の厚みが不均一になるといった不都合が回避できる。
【0044】
上記した図5及び図6の構成では、窯業系サイディング板12において一方の端縁部でフィルム余剰部分F1が形成され、他方の端縁部でフィルム未貼付部分F2が形成されるよう耐破壊性フィルム13を貼り付けたが、これを変更する。例えば、図7の(a)に示すように、左右両方の端縁部でフィルム余剰部分F1が形成されるよう耐破壊性フィルム13を貼り付ける構成であっても良い。この場合、左右二枚の窯業系サイディング板12が接合される目地部分では、耐破壊性フィルム13がオーバラップし重なり合うこととなる。これにより、同目地部分において、耐破壊性フィルム13による止水性や気密性が向上することとなる。
【0045】
その他、図7の(b)に示すように、窯業系サイディング板12において一方の端縁部でフィルム余剰部分F1が形成され、他方の端縁部では過不足が生じないよう耐破壊性フィルム13を貼り付けることも可能である。
【0046】
[第3の実施形態]
本発明の壁構造は、建物において室内外を仕切るための外壁以外に、ガレージの外壁や外構(エクステリア)にも適用できる。例えば、図8の(a)に示す建物30では、その一階部分にインナガレージ31を設け、その前面部に防犯シャッタ等の開閉部材32を設けている。また、インナガレージ31と屋外とを仕切る壁部にガレージ用壁構造体33を設けている(ハッチング部分)。このガレージ用壁構造体33に本発明の壁構造を適用する。又は、図8の(b)において、建物40を含む敷地周りに設けられた囲い塀41に本発明の壁構造を適用する。なお、囲い塀41において建物40の玄関部40aに通じる部位は非連続となっており、当該部位に門扉42が設けられている。
【0047】
上記のようなガレージ用壁構造体33や外構としての囲い塀41に本発明を適用する場合、室内外を仕切るための外壁構造体10(図1等参照)とは異なり内装材が不要となる。この場合、壁構造体として、例えば、窯業系サイディング板を二重に設けることで表裏両面に外壁面を形成し、その二重の窯業系サイディング板の中間層としてフィルム層を設けると良い。図9に、本実施形態で用いられる壁構造体の断面構造を示す。
【0048】
図9に示すように、壁構造体50は、支柱材51と、その支柱材51を挟んで設けられる二枚の外壁パネル52,53とからなる。外壁パネル52,53は、前述した外壁パネル11と同様の構成を有しており、矩形平板状の窯業系サイディング板54と、その裏面に貼付される耐破壊性フィルム(ここでは便宜上図示略、図3等参照)と、軽量鉄骨材からなる下地フレーム55とにより構成されている。この場合、各外壁パネル52,53の下地フレーム55が支柱材51に対してそれぞれ固定されることで、壁構造体50の表裏両壁面が共に窯業系サイディング板54にて構成されるようになっている。
【0049】
以上第3の実施形態によれば、耐破壊性を有するフィルム層をガレージ用壁構造体33に設けることにより、ガレージ壁を破壊することによる不審者の侵入を阻止することができる。また、耐破壊性を有するフィルム層を囲い塀41に設けることにより、囲い塀41を破壊することによる不審者の侵入を阻止することができる。いずれにしろ、防犯性能を高めることができる。
【0050】
窯業系サイディング板を二重に設けることで表裏両面に外壁面を形成する壁構造体を、ガレージ壁や囲い塀以外に、建物のベランダ柵などに適用することもできる。この場合、上記図9の構成に代えて、図10の構成を採用すると良い。図10に示す壁構造体60では、二枚の窯業系サイディング板61,62を、それらの各裏面(外視裏面)が向き合うようにして二重に設け、その中間層として耐破壊性フィルム63を挟み固定している。この場合、壁構造体60において十分な耐破壊性を実現することができる。
【0051】
[別の実施の形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されても良い。
【0052】
外壁パネルにおいて、耐破壊性フィルムと下地フレームとの間にゲル状材を介在させる構成としても良い。具体的には、上記第1の実施形態で説明した外壁パネル11において、耐破壊性フィルム13と下地フレーム14との接合部に、ゲル状材としての弾性接着剤を介在させる構成とする。弾性接着剤としては、例えば変成シリコーンポリマをベースとした変成シリコーン系接着剤が使用できる。変成シリコーン系接着剤はゴム弾性を有することから内部応力を分散、吸収する効果を有する。本構成によれば、窯業系サイディング板12と下地フレーム14との間で多少の相対移動が可能になる。これにより、下地フレーム14に多少の曲がりや折れ等が生じてもそれに追従できる。また、地震発生時などに下地フレーム14に揺れ(振動)が生じても、その揺れによる窯業系サイディング板12の損傷等を抑制することも可能となる。
【0053】
上記実施形態では、窯業系サイディング板の裏面全体に、下地フレームにより挟み固定した状態で耐破壊性フィルムを貼り付けたが、これを変更する。図11は、別の実施形態としての外壁パネル71について裏面側から見た図である。外壁パネル71は、外壁面を形成するための窯業系サイディング板72と、その裏面に貼付される耐破壊性フィルム73と、下地フレーム74とにより構成されている。ここで、窯業系サイディング板72と下地フレーム74については、上記実施形態(窯業系サイディング板12、下地フレーム14)と同様の構成を有し、耐破壊性フィルム73のみ相違する。この場合、耐破壊性フィルム73は、窯業系サイディング板72の裏面に、下地フレーム74と重複しない部位に3つに分離して貼り付けられている。本構成によれば、高い防犯性能が得られるという効果を奏しつつも、耐破壊性フィルム73の必要量の低減を図ることができ、コスト削減効果も期待できる。
【0054】
図12に示すように、窯業系サイディング板12の裏面に耐破壊性フィルム13を貼り付けるのに加え、石膏ボード22にも耐破壊性フィルム75を貼り付ける構成としても良い。この場合、断熱材21と石膏ボード22との間に耐破壊性フィルム75が設けられ、その耐破壊性フィルム75によりフィルム層Xが形成されている。本構成によれば、外壁構造体10における耐破壊性をより一層向上させることができる。なお、窯業系サイディング板12の裏面側には耐破壊性フィルム13を貼り付けず、石膏ボード22にのみ耐破壊性フィルム75を貼り付ける構成であっても良い。要するに、外壁面材(窯業系サイディング板12)の内側に、耐破壊性を有するフィルム層(フィルム層X)を少なくとも1層設ける構成であれば良い。
【0055】
上記実施形態では、複数の外壁面材(窯業系サイディング板12等)を横方向に並べる事例について説明したが、これら複数の外壁面材(窯業系サイディング板12等)を上下方向に並べるものであっても良い。
【0056】
外壁面材として、窯業系サイディング材以外の外壁材を用いることも可能である。例えば、セラミック外壁材や陶板外壁材を用い、これらの外壁材の裏面に窯業系サイディング材を貼り付ける構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】外壁構造体の構造を示す斜視図。
【図2】外壁構造体においてパネル接合部の断面構造を示す断面図。
【図3】外壁パネルの分解斜視図。
【図4】外壁パネル接合部分における止水構造を拡大して示す断面図。
【図5】第2の実施形態において窯業系サイディング板と耐破壊性フィルムとを示す断面図。
【図6】パネル接合部分において二枚の窯業系サイディング板の接合前の状態(a)と、接合後の状態(b)とを示す要部拡大断面図。
【図7】窯業系サイディング板と耐破壊性フィルムとを示す断面図。
【図8】第3の実施形態においてガレージ付き建物(a)と、建物周りの囲い塀(b)とを示す略図。
【図9】第3の実施形態における壁構造体の構成を示す断面図。
【図10】第3の実施形態における壁構造体の構成を示す断面図。
【図11】別の実施形態において外壁パネルを裏面側から見た図。
【図12】別の実施形態において外壁構造体のパネル接合部の断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0058】
10…外壁構造体、11…外壁パネル11、12…窯業系サイディング板、13…耐破壊性フィルム、14…下地フレーム、21…断熱材、22…石膏ボード、33…ガレージ用壁構造体、41…囲い塀、50…壁構造体、52,53…外壁パネル、54…窯業系サイディング板、55…下地フレーム、60…壁構造体、61,62…窯業系サイディング板、63…耐破壊性フィルム、71…外壁パネル、72…窯業系サイディング板、73…耐破壊性フィルム、74…下地フレーム、75…耐破壊性フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切る壁体の構造であって、外壁面を形成する外壁面材よりも内側に、耐破壊性を有するフィルム層を少なくとも1層設けたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記外壁面材の裏面にフィルム材を貼り付け、そのフィルム材により前記フィルム層を形成した請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記外壁面材として窯業系サイディング材を用い、同窯業系サイディング材の裏面に前記フィルム材を貼り付けた請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材を有し、前記外壁面材と前記フレーム材との間に前記フィルム材を挟み固定した請求項2又は3に記載の壁構造。
【請求項5】
前記フレーム材と前記フィルム材との間にゲル状材を介在させた請求項4に記載の壁構造。
【請求項6】
前記外壁面材の裏側全面に前記フィルム材を貼り付けた請求項2乃至5のいずれかに記載の壁構造。
【請求項7】
前記外壁面材の裏面に、同外壁面材から一部がはみ出すようにして前記フィルム材を貼り付けるとともに、同フィルム材のはみ出し部分を、隣接する別の外壁面材の裏面に貼り付けた請求項2乃至6のいずれかに記載の壁構造。
【請求項8】
四辺形をなす前記外壁面材の裏面に、相対向する二辺の端縁部のうち一方の端縁部で外壁面材から一部がはみ出し、かつ他方の端縁部で未貼付部分ができるようにして前記フィルム材を貼り付けるとともに、同フィルム材のはみ出し部分を、隣接する別の外壁面材の前記未貼付部分に貼り付けた請求項2乃至6のいずれかに記載の壁構造。
【請求項9】
前記外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材を有し、前記外壁面材の裏面において前記フレーム材と重複しない部位に前記フィルム材を貼り付けた請求項2又は3に記載の壁構造。
【請求項10】
二枚の外壁面材を重ね合わせて表裏両面に外壁面を形成する壁構造において、前記二枚の外壁面材の中間層として前記フィルム層を設けた請求項1乃至9のいずれかに記載の壁構造。
【請求項11】
前記壁体として前記外壁面材よりも内側に内装材を有する壁構造において、前記内装材にフィルム材を貼り付け、そのフィルム材により前記フィルム層を形成した請求項1乃至9のいずれかに記載の壁構造。
【請求項12】
外壁面を形成する外壁面材の裏面に、耐破壊性を有するフィルム材を貼り付けたことを特徴とする外壁パネル。
【請求項13】
前記外壁面材として窯業系サイディング材を用い、同窯業系サイディング材の裏面に前記フィルム材を貼り付けた請求項12に記載の外壁パネル。
【請求項14】
前記外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材を有し、前記外壁面材と前記フレーム材との間に前記フィルム材を挟み固定した請求項12又は13に記載の外壁パネル。
【請求項15】
前記フレーム材と前記フィルム材との間にゲル状材を介在させた請求項14に記載の外壁パネル。
【請求項16】
前記外壁面材の裏側全面に前記フィルム材を貼り付けた請求項12乃至15のいずれかに記載の外壁パネル。
【請求項17】
前記外壁面材の裏面に、同外壁面材から一部がはみ出すようにして前記フィルム材を貼り付けた請求項12乃至16のいずれかに記載の外壁パネル。
【請求項18】
四辺形をなす前記外壁面材の裏面に、相対向する二辺の端縁部のうち一方の端縁部で外壁面材から一部がはみ出し、他方の端縁部で未貼付部分ができるようにして前記フィルム材を貼り付けた請求項12乃至16のいずれかに記載の外壁パネル。
【請求項19】
前記外壁面材の裏面側に一体的に固定されるフレーム材を有し、前記外壁面材の裏面において前記フレーム材と重複しない部位に前記フィルム材を貼り付けた請求項12又は13に記載の外壁パネル。
【請求項20】
施工現場への搬送前に、前記外壁面材に前記フィルム材を貼り付けた状態で建物等における外壁寸法や開口寸法に合わせて切断加工され、さらにフレーム材が組み付けられてなる請求項12乃至19のいずれかに記載の外壁パネル。
【請求項21】
ユニット式建物の一部を構成する建物ユニットにおいて、請求項12乃至20のいずれかに記載の外壁パネルを用い、当該外壁パネルを工場等であらかじめ装着したことを特徴とする建物ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−115637(P2008−115637A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301132(P2006−301132)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】