説明

壁面穿孔に用いる集塵容器

【課題】穿孔時に発生する振動に対応できる機械的な固定化によって、壁面から容器が脱落するようなことがなく、また、容器内に塵を確実に捕捉することができ、壁の穿孔による室内の汚損発生を確実に防ぐことができる壁面穿孔に用いる集塵容器を提供する。
【解決手段】蓋部材3と容器本体2で内部中空となる集塵容器1を形成し、この集塵容器1の前壁4と後壁5に穿孔工具の挿入孔6と7を設け、前記後壁5の外面に壁面へ突き刺す固定手段8を突設し、この集塵容器1の内部で前壁4と後壁5の間に穿孔時に発生した塵の旋回を防ぐための第1の羽根板9と第2の羽根板10を逆傾斜の配置で設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の室内壁面に孔をあける場合に、発生した塵が飛散しないように収集するための壁面穿孔に用いる集塵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、室内の壁に空調機を取り付ける場合、室内機と室外機とを接続する連結配管やドレン管及び電気配線等を通すために、ドリルを用いて孔をあける必要がある。
【0003】
室内の壁にドリルを用いて孔をあけると、削られた壁材が大量の粉塵となって飛散し、室内を汚損するため、保護用のシートや毛布を部屋中に敷き詰め、電気製品のような精密機械にはシートを被せるような、施工時に室内全体を保護しなければならないだけでなく、施工後に部屋中を掃除する必要があり、穿孔作業の準備や後始末に膨大な時間がかかってしまうことになる。
【0004】
このような不都合を解消するため、ドリルによる穿孔時に、ドリルの周りをカバーで覆う方法(例えば、特許文献1参照)や、室内の壁面に容器を両面粘着テープで取付け、この容器に設けた挿入孔からドリルで壁を穿孔することにより、発生した塵を容器内に収納する集塵容器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特願平11−147693号公報
【特許文献2】実用新案登録第3056919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前者のドリルの周りをカバーで覆う方法は、ドリルを回転させる工具によって引き起こされる連続した微振動によって、ドリルと接続されたカバーも同じく振動してしまい、その際、カバーに付いた塵を壁面に擦り付け、このため、壁面を汚してしまうという問題がある。
【0006】
また、後者の集塵容器は、ドリルの回転によって巻き起こる渦巻状の風によって塵が吸い上げられ、この風と共にドリル挿入孔から塵が室内に飛び出してしまい、大量の粉塵を室内に撒き散らすことになり、実際に塵を回収することができない。
【0007】
しかも、両面粘着テープの使用による容器の固定には、壁紙を傷めない程度の粘着力を有する両面粘着テープを使用する必要があり、このような両面粘着テープでは、穿孔時に発生する振動に粘着強度が対応できず、壁面から容器が脱落してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、穿孔時に発生する振動に対応できる機械的な固定化によって、壁面から容器が脱落するようなことがなく、また、ドリルの回転によって巻き起こる渦巻状の風を遮ることによって、容器内に塵を確実に捕捉することができ、壁の穿孔による室内の汚損発生を確実に防ぐことができる壁面穿孔に用いる集塵容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、穿孔せんとする壁面に取付ける内部中空容器の前壁と後壁に穿孔工具の挿入孔を設け、この容器の内部で前壁と後壁の間に穿孔時に発生した塵の旋回を防ぐための羽根板を設けた構成を採用したものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記容器は、後壁の外面に壁面への固定手段が設けられている構成を採用したものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、上記容器は、挿入孔の中心に対して上部空間よりも下部空間の容積を大きく設定し、この下部空間内に羽根板を配置した構成を採用したものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、上記羽根板は、気流に巻き込まれた塵を分離する第1の羽根板と、この第1の羽根板に対して穿孔工具の回転方向の後方に位置し、分離された塵が再び動き出すことを防ぐ第2の羽根板とで形成されている構成を採用したものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの発明において、上記羽根板は、直方体形状となり、前壁と後壁の何れか一方に接触し、他方との間に隙間がある構成を採用したものである。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において、上記羽根板は、第1の羽根板と第2の羽根板が、それぞれ前記挿入孔の半径方向に沿うような角度の配置になっている構成を採用したものである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の発明において、上記容器の後壁における挿入孔の周囲が外側に向けて突出し、壁面に圧接する弾性をもっている構成を採用したものである。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の発明において、上記容器の後壁における挿入孔の周囲内面側が挿入孔に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面になっている構成を採用したものである。
【0017】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の発明において、上記容器の後壁には、弾性を持たせた部分及び傾斜面になっている部分の外面側に、挿入孔に達する空気補充用の通路が設けられている構成を採用したものである。
【0018】
ここで、容器は、透明な合成樹脂を用いて内部中空の角形の箱に形成され、後壁の周囲に低い周壁を設けた蓋部材と、この蓋部材の一方側縁にヒンジを介して連成した深い容器本体とからなり、蓋部材と容器本体はヒンジを支点に開閉自在となり、係止手段によって閉じた状態を保持できるようになっており、前記蓋部材の後壁には、挿入孔を設けると共に四隅の位置に固定手段となるピンが外面に突出するよう固定されている。
【0019】
また、容器本体は、前壁に挿入孔を設けると共に、この前壁の内面側で挿入孔の下部両側の位置に第1の羽根板と第2の羽根板が設けられている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によると、内部中空となる容器の前壁と後壁の間に穿孔時に発生した塵の旋回を防ぐための羽根板を設けたので、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流を羽根板によって遮ることができ、穿孔時に発生した塵はこの羽根板によって気流から分離され、容器内の下部に堆積することになり、塵が風に乗って挿入孔から容器外に飛散することがなく、穿孔時に室内が粉塵によって汚損されるのを確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項2の発明によると、後壁の外面に壁面への固定手段を設けたので、この固定手段によって壁面に対する容器の固定が簡単に行え、しかも、穿孔時に発生する振動に対応する容器の固定強度が得られ、穿孔時に壁面から容器本体が脱落するようなことがない。
【0022】
請求項3の発明によると、容器内の下部空間の容積を大きく設定し、この下部空間内に羽根板を配置したので、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流から塵の堆積位置を離すことができ、風羽根板の作用で一度容器内に堆積した塵が気流によって再び巻き上げられるのを有効に防ぐことができる。
【0023】
請求項4の発明によると、羽根板を、気流に巻き込まれた塵を分離する第1の羽根板と、この第1の羽根板に対して穿孔工具の回転方向の後方に位置し、分離された塵が再び動き出すことを防ぐ第2の羽根板とで形成したので、第1の羽根板によって気流から分離した塵を第2の羽根板で気流に乗るのを抑えることができ、捕捉した塵が容器の外部に流出するのを確実に阻止することができる。
【0024】
前記第1の羽根板と第2の羽根板の間に閉空間が発生すると、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流と反対方向の気流が発生し、これによって、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流が第1の羽根板と第2の羽根板間に侵入できなくなり、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流内にある塵を気流外に脱落させることができないが、請求項5の発明によると、羽根板が直方体形状となり、前壁と後壁の何れか一方に接触し、他方との間に隙間があるようにしたので、塵を分離する際、気流を均等な方向に遮断することによって、気流遮断時に気流を逃がすことがなく、気流のゆがみを最小限に抑えることで、変則的な気流の発生による塵の巻き上がりを防止でき、また、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流は、前記隙間の存在によって気流の流れが確保され、第1の羽根板と第2の羽根板間に閉空間の発生がないので、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流内にある塵を第1の羽根板と第2の羽根板間に確実に捕捉することができる。
【0025】
請求項6の発明によると、第1の羽根板と第2の羽根板を、それぞれ前記挿入孔の半径方向に沿うような角度に配置したので、第1の羽根板と第2の羽根板は、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流の向きに対して逆傾斜の配置となり、第1の羽根板で気流に含まれている塵を捕捉すると共に、第2の羽根板が気流によって塵が巻き上げられるのを防ぐことができ、捕捉した塵が容器の外部に流出するのを確実に阻止することができる。
【0026】
請求項7の発明によると、容器の後壁における挿入孔の周囲が外側に向けて突出し、壁面に圧接する弾性をもっているので、容器を壁面に取付けたとき、突出部分の先端が壁面に圧接し、壁面と容器の接触面を少なくすることで、壁面にある凹凸の影響をできるだけ受けにくくし、かつ、単位面積当たりの圧接力が大きくなり、より確実に後壁と壁面を密着させ、後壁と壁面間からの気流の流出を防ぐことができる。
【0027】
請求項8の発明によると、容器の後壁における挿入孔の周囲内面側が挿入孔に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面になっているので、傾斜面の部分が可曲性を有することになり、上述した請求項7の発明と同様の効果が得られる。
【0028】
請求項9の発明によると、容器の後壁で弾性を持たせた部分及び傾斜面になっている部分の外面側に、傾斜面になっている部分の外面側に、挿入孔に達する空気補充用の通路を設けたので、穿孔工具の回転によって発生する塵を含んだ渦巻き状の気流によって、容器内の気圧が低下するのを防ぐことができ、気圧の低下による塵の動きの高速化を抑え、気流内にある塵を第1の羽根板と第2の羽根板間に確実に捕捉させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図示のように、壁面穿孔に用いる集塵容器1は、透明な硬質の合成樹脂を用い、容器が容器本体2と蓋部材3で内部中空の角形の箱に形成され、容器本体2の前壁4と蓋部材3の後壁5に穿孔工具Aの挿入孔6と7を設け、前記後壁5の外面に壁Bへ突き刺す固定手段8を突設し、この容器本体2の内側で挿入孔6の下部両側の位置に、穿孔時に発生した塵の旋回を防ぐための第1と第2の羽根板9と10が設けられている。
【0031】
上記集塵容器1は、矩形状となる後壁5の四周囲に低い周壁11を設けた蓋部材3と、同じく矩形状となる前壁4の四周囲に高い周壁12を設けた容器本体2の組み合わせからなり、前記蓋部材3と容器本体2は周壁11と12の側部において折り曲げ可能なヒンジ13を介して連成され、この蓋部材3と容器本体2はヒンジ13を支点に開閉自在となり、壁Bに固定する蓋部材3に対して容器本体2を閉じた位置にしたとき、両者の周壁11と12が互に嵌り合うようになっている。
【0032】
上記蓋部材3と容器本体2の周壁11と12で開閉操作側の位置に、一方に形成した突条14と他方に連成した弾性係止片15からなる係止手段を設け、蓋部材3と容器本体2の閉じた状態を保持できるようになっている。
【0033】
上記蓋部材3における後壁5には、穿孔工具Aの挿入孔7と四隅の位置に固定手段8が設けられ、図5(a)の場合、後壁5の内面は、挿入孔7の外側適宜位置から挿入孔7に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面16になっていると共に、固定手段8は、押し込み用頭部17からピン18が突出する押ピンを用い、集塵容器1の成形時にこの押ピンを金型内にセットし、後壁5の外面にピン18が突出するように蓋部材3に固着されている。
【0034】
また、図5(b)と(c)に示す例は、容器本体2の後壁5における挿入孔7の周囲を、内面の傾斜面によって挿入孔7の外側適宜位置から挿入孔7に向けて順次肉厚を薄くすると共に、この肉厚を薄くした部分を外側に向けて屈曲する突出部16aとし、この突出部16aに壁面Bに圧接する弾性をもたせた構造になっている。
【0035】
ここで、集塵容器1を取付ける壁面Bは、クロスの凹凸や石膏ボードの継ぎ目等に完全な平らな状態ではなく、そのため、平らな容器本体2の後壁5を壁面Bにいくら押付けても、若干の隙間ができ、この隙間から気流の流出が生じることになるが、上記のように、外側に向けて屈曲する突出部16aに壁面Bに圧接する弾性をもたせるようにすると、集塵容器1を壁面Bに取付けたとき、図5(c)のように、突出部16aの先端が壁面Bに圧接し、壁面Bと後壁5の接触面を少なくすることで、壁面Bにある凹凸の影響をできるだけ受けにくくし、かつ、単位面積当たりの圧接力が大きくなり、より確実に後壁5と壁面Bを密着させ、後壁5と壁面B間からの気流の流出を防ぐことができる。
【0036】
また、壁面と後壁の接触面積を減らすことで、広い面で壁面と後壁を圧着させようとした時と同じ力を加えた場合でも、単位面積当たりの圧着力が大きくなりより確実に後壁と壁面を密着させることができる。
【0037】
なお、図5(a)の例のように、後壁5における挿入孔7の周囲を傾斜面16によって薄肉厚とすることにより、この傾斜面16の部分が弾性をもつことになり、容器本体2内の気流圧で挿入孔7の周囲が壁面Bに圧着することで、図5(b)と(c)に示す例と略同様の効果が得られることになる。
【0038】
なお、上記固定手段8は、図示の例では、後壁5の外面にピン18が突出するように蓋部材3に固着した例を示したが、このような蓋部材3に対して一体に設けた構造に限定されるものではなく、例えば、蓋部材3の後壁5に複数のピン孔を設けておき、蓋部材3の後壁5を壁面に重ねた状態で各ピン孔から壁にピンを突き刺して蓋部材3を固定するようにしたり、蓋部材3の後壁5を両面粘着テープで壁面に固定する手段を採用することができる。
【0039】
上記容器本体2は、前壁4にドリル等の穿孔工具Aの挿入孔6を設け、この挿入孔6の下部で両側のコーナ位置に気流に巻き込まれた塵を分離する第1の羽根板9と、この第1の羽根板9に対して穿孔工具Aの回転方向の前方に位置し、分離された塵が再び動き出すことを防ぐ第2の羽根板10が設けられている。
【0040】
上記前壁4に設ける挿入孔6は、穿孔工具Aの外径が丁度嵌り合うか、穿孔工具Aの外径よりも少し大径となる内径に設定し、後壁5の挿入孔7は穿孔工具Aの外径よりも大径に形成し、穿孔工具Aの挿入時に後壁5との干渉が生じにくくしている。
【0041】
この第1の羽根板9と第2の羽根板10は、図1のように、先端が挿入孔6に接近した直方体形状となり、前壁4と周壁12に二辺を固定することにより、図5(d)のように、容器本体2の前壁4と一体成形され、図3のように、周壁12よりも低く形成されることにより、容器本体2と蓋部材3を閉じた時、蓋部材3の後壁5との間に隙間19を生じるようになっている。
【0042】
上記第1の羽根板9と第2の羽根板10は、それぞれ挿入孔6の半径方向に沿うような角度になっており、従って、この第1の羽根板9と第2の羽根板10は、穿孔工具Aの回転によって発生する渦巻き状の気流の向きに対して逆傾斜となるハ字状の配置となり、第1の羽根板9で気流に含まれている塵を捕捉すると共に、第2の羽根板10が気流によって塵が巻き上げられるのを防ぐことができ、捕捉した塵が集塵容器1の外部に流出するのを確実に阻止することができる。
【0043】
ちなみに、第1の羽根板9と第2の羽根板10の傾斜角度は、羽根板の先端面が気流の進行方向を向くときを0°とすると、第1の羽根板9は先端部を支点として30°〜150°、第2の羽根板10は先端部を支点として210°〜330°の角度を持たせるのが好ましい。
【0044】
図1と図2及び図6(a)に示す第1の例の集塵容器1は略正方形とし、前壁4と後壁5の中心部に挿入孔6と7を設け、容器本体2における容積を挿入孔6、7の上下で略同様とし、下部の空間を集塵スペース20としたが、図6(b)の第2の例のように、集塵容器1を上下に長い長方形とし、前壁4と後壁5の上部寄りに挿入孔6、7を設け、容器本体2における容積を挿入孔6、7の上部よりも下部を大きく設定し、下部空間の集塵スペース20を大きくすることにより、収塵量を増大させることができるようにしてもよい。
【0045】
この第2の例のように、集塵容器1における下部空間の集塵スペース20を大きくすることにより、第1の羽根板9と第2の羽根板10は、その先端部を挿入孔6の周縁から離れた位置になるように配置することができ、図6(b)の矢印のように、穿孔工具Aの回転によって発生する渦巻き状の気流Cの一部が、第1の羽根板9の先端部から第2の羽根板10の先端部に向けて流れることになり、気流に含まれている塵を第1の羽根板9と第2の羽根板10間に効率よく捕捉できることになる。
【0046】
図2と図5(e)のように、上記蓋部材3の後壁5の内面は、上述したように挿入孔7の周囲が挿入孔7に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面16になっていると共に、この後壁5には、傾斜面16になっている部分の外面側に、挿入孔7に達する空気補充用の通路21が設けられている。
【0047】
この空気補充用の通路21は、図5(b)と(c)に示した突出部16aの外面にも設けることができる。
【0048】
上記のように、蓋部材3の後壁5の内面を、挿入孔7の周囲が挿入孔7に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面16にすると、蓋部材3と壁Bの密着性が向上し、穿孔工具Aの回転によって発生する塵を含んだ渦巻き状の気流が、蓋部材3と壁Bの間から外部に流出するのを有効に防ぐことができ、また、蓋部材3の後壁5で、傾斜面16になっている部分の外面側に、挿入孔7に達する空気補充用の通路21を設けると、穿孔工具Aの回転によって発生する塵を含んだ渦巻き状の気流によって、集塵容器1内の気圧が低下するのを防ぐことができ、気圧の低下による塵の動きの高速化を抑え、気流内にある塵を第1の羽根板9と第2の羽根板10間に確実に捕捉させることができる。
【0049】
この発明の集塵容器は上記のような構成であり、次に、この集塵容器を用いた穿孔方法を説明する。
【0050】
図7のように、室内の壁Bに穿孔工具Aを用いて孔をあける場合に、先ず、集塵容器1の蓋部材3に設けた挿入孔7が壁Bの穿孔位置に一致する蓋部材3を壁Bに臨ませてピン18を壁Bに突き刺し、蓋部材3の後壁5を壁Bに接触させた状態とし、この状態で容器本体2を蓋部材3に重ねて係止し、集塵容器1を組み立てて壁Bに固定する。
【0051】
このとき集塵容器1は、容器本体2内に設けた第1の羽根板9と第2の羽根板10が、挿入孔6と7に対して下部の両側に位置するような位相とする。
【0052】
次に、集塵容器1に対して駆動源と接続した穿孔工具Aを回転させながら前壁4の挿入孔6から後壁5の挿入孔7に向けて挿入し、その先端を壁Bに押し当てて穿孔を開始する。
【0053】
図8のように、上記穿孔工具Aの回転により先端の刃先で壁を削り取り、削り取られた壁材が細かい粉塵となって容器本体2内に排出されると共に、穿孔工具Aの回転によって容器本体2内に回転方向に沿って渦巻き状の気流が発生し、容器本体2内にこぼれ出た粉塵は気流に巻き込まれて旋回する。
【0054】
粉塵は重量があるので、渦巻き状の気流に巻き込まれて旋回すると、遠心力によって気流の外側に移行する。
【0055】
容器本体2の前壁4と蓋部材3の後壁5の間に第1の羽根板9と第2の羽根板10が設けてあるので、先ず、第1の羽根板9に粉塵を含む気流が衝突することによって、気流に巻き込まれた塵が分離され、次に、第2の羽根板10が分離された塵が再び気流に乗って動き出すことを防ぐことにより、捕捉された塵は容器本体2の下部空間の集塵スペース20内に堆積する。
【0056】
第1の羽根板9と第2の羽根板10は直方体形状となり、前壁4と接触して後壁との間に隙間19があるので、穿孔工具の回転によって発生する渦巻き状の気流から塵を分離する際、気流を均等な方向に遮断することによって、気流遮断時に気流を逃がすことがなく、気流のゆがみを最小限に抑えることで、変則的な気流の発生による塵の巻き上がりを防止でき、また、前記隙間19の存在によって渦巻き状の気流の流れが確保され、第1の羽根板9と第2の羽根板10間に閉空間の発生がないので、穿孔工具Aの回転によって発生する渦巻き状の気流内にある塵を第1の羽根板9と第2の羽根板10間に確実に捕捉することができ、塵が風に乗って挿入孔6から容器外に飛散することがなく、穿孔時に室内が粉塵によって汚損されるのを確実に防ぐことができる
【0057】
また、蓋部材3の後壁5の内面を、挿入孔7の周囲が挿入孔7に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面16にしたので、後壁5と壁Bの密着性が向上し、穿孔工具Aの回転によって発生する塵を含んだ渦巻き状の気流が、蓋部材3と壁Bの間から外部に流出するのを有効に防ぐことができ、容器本体2内の気圧の低下を蓋部材3の後壁5に設けた空気補充用の通路21によって防ぐことができ、気圧の低下による塵の動きの高速化を抑え、気流内にある塵を第1の羽根板9と第2の羽根板10間に確実に捕捉させることができる。
【0058】
このようにして穿孔工具Aが壁Bを貫通すると、回転を止めて壁B及び集塵容器1から抜き取り、この後、壁Bから集塵容器1を取り外し、集塵容器1の蓋部材3と容器本体2を開き、捕捉した塵を廃棄処理して集塵容器1を再使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明に係る集塵容器の開いた状態を示す水平配置の斜視図
【図2】この発明に係る集塵容器の開いた状態を示す平面図
【図3】この発明に係る集塵容器の開いた状態を示す縦断正面図
【図4】(a)はこの発明に係る集塵容器の開いた状態を示す正面図、(b)は集塵容器の蓋部材に容器本体を閉じた位置にした状態を示す側面図
【図5】(a)は図2の矢印a−aの拡大断面図、(b)は容器本体の後壁における挿入孔の周囲に設けた突出部を示す断面図、(c)は容器本体を壁面に取付けたときの突出部の状態を示す断面図、(d)は図2の矢印b−bの拡大断面図、(e)は図2の矢印c−cの拡大断面図
【図6】(a)はこの発明に係る集塵容器の第1の例を示し、蓋部材に対して容器本体を閉じ状態で容器本体を縦断した縦断面図、(b)は同第2の例を示し、蓋部材に対して容器本体を閉じ状態で容器本体を縦断した縦断面図
【図7】この発明に係る集塵容器の使用状態を分解して示す壁への取り付け前の縦断面図
【図8】この発明に係る集塵容器を使用した穿孔状態を示す拡大縦断面図
【符号の説明】
【0060】
1 集塵容器
2 容器本体
3 蓋部材
4 前壁
5 後壁
6 挿入孔
7 挿入孔
8 固定手段
9 第1の羽根板
10 第2の羽根板
11 周壁
12 周壁
13 ヒンジ
14 突条
15 弾性係止片
16 傾斜面
16a 突出部
17 押し込み用頭部
18 ピン
19 隙間
20 集塵スペース
21 空気補充用の通路
A 穿孔工具
B 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔せんとする壁面に取付ける内部中空容器の前壁と後壁に穿孔工具の挿入孔を設け、この容器の内部で前壁と後壁の間に穿孔時に発生した塵の旋回を防ぐための羽根板を設けた壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項2】
上記容器は、後壁の外面に壁面への固定手段が設けられている請求項1に記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項3】
上記容器は、挿入孔の中心に対して上部空間よりも下部空間の容積を大きく設定し、この下部空間内に羽根板を配置した請求項1又は2に記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項4】
上記羽根板は、気流に巻き込まれた塵を分離する第1の羽根板と、この第1の羽根板に対して穿孔工具の回転方向の後方に位置し、分離された塵が再び動き出すことを防ぐ第2の羽根板とで形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項5】
上記羽根板は、直方体形状となり、前壁と後壁の何れか一方に接触し、他方との間に隙間がある請求項1乃至4の何れかに記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項6】
上記羽根板は、第1の羽根板と第2の羽根板が、それぞれ前記挿入孔の半径方向に沿うような角度の配置になっている請求項4又は5に記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項7】
上記容器の後壁における挿入孔の周囲が外側に向けて突出し、壁面に圧接する弾性をもっている請求項1乃至6の何れかに記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項8】
上記容器の後壁における挿入孔の周囲内面側が挿入孔に向けて順次肉厚が薄くなる傾斜面になっている請求項1乃至7の何れかに記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。
【請求項9】
上記容器の後壁には、弾性を持たせた部分及び傾斜面になっている部分の外面側に、挿入孔に達する空気補充用の通路が設けられている請求項7又は8に記載の壁面穿孔に用いる集塵容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−103042(P2006−103042A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290064(P2004−290064)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000181963)若井産業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】