説明

変性され、二量化されたオレフィンを用いたアルキルアリールスルホネートの製造方法

本発明は、a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、かつ場合によりC1012−オレフィンを分離し、c)工程b)で得られたC1012−オレフィンをアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、線状オレフィンを添加することができ、d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、スルホン化の前に付加的に、線状アルキルベンゼンを添加することができ、e)場合により、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、線状アルキルアリールスルホネートと混合することにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルアリールスルホネートを製造するための方法、該方法により得られるアルキルアリールスルホネートならびに該方法において中間生成物として得られるアルキルアリール、界面活性剤としての、有利には洗剤および洗浄剤中でのアルキルアリールスルホネートの使用、および該アルキルアリールスルホネートを含有する洗剤および洗浄剤に関する。
【0002】
アルキルベンゼンスルホネート(ABS)は、久しい以前から、洗剤および洗浄剤中で界面活性剤として使用されている。まずこのような、しかし生物学的に分解しにくいテトラプロピレンをベースとする界面活性剤が使用された後、のちにできる限り線状のアルキルベンゼンスルホネート(LAS)が製造され、かつ使用された。しかし線状のアルキルベンゼンスルホネートは全ての適用分野のために十分な特性プロファイルを有しているわけではない。
【0003】
従ってたとえば、その低温洗浄特性または硬水中でのその特性を改善することは有利である。同様に、スルホネートの粘度およびその溶解度から生じる、容易な調製可能性が所望される。これらの改善された特性は、わずかに分岐した化合物もしくはわずかに分岐した化合物と線状の化合物との混合物により得られるが、しかしその際、分岐の適切な度合いおよび/または混合物の適切な度合いを達成しなくてはならない。分岐が強すぎると、生成物の生分解性が損なわれる。スルホネートの粘度および溶解度は、線状の生成物に対して否定的な影響を与える。
【0004】
さらに、内部のフェニルアルカン(4−、5−、6−などのフェニルアルカン)に対する末端のフェニルアルカン(2−フェニルアルカンおよび3−フェニルアルカン)の割合は、生成物の特性にとって重要である。約30%の2−フェニル割合および約50%の2−および3−フェニル割合は、生成物の品質(溶解度、粘度、洗浄特性)に関して有利でありうる。
【0005】
高すぎる2−および3−フェニル含有率を有する界面活性剤は、生成物の加工性がスルホネートの粘度の著しい上昇によって損なわれるという本質的な欠点を有する。
【0006】
さらに、最適でない溶解挙動が生じうる。従ってたとえば、極めて高いか、または極めて低い2−および3−フェニル割合を有するLASの溶解度のクラフト点は、2−および3−フェニル割合を適切に選択した場合よりも10〜20℃高い。
【0007】
本発明による方法は、メタセシスと二量化とを組み合わせることにより、芳香族化合物のアルキル化、スルホン化および中和の後に、優れた適用特性(溶解度、粘度、水の硬度に対する安定性、洗浄特性、生分解性)の組合せにより優れている界面活性剤が得られる、無類のオレフィン混合物が得られるという本質的な利点を提供する。アルキルアリールスルホネートの生分解性に関して、従来のLASよりも下水スラッジへの吸着が弱い化合物が特に有利である。
【0008】
従って一定の度合いで分岐したアルキルベンゼンスルホネートを開発すべきである。
【0009】
WO99/05241は、界面活性剤として分岐したアルキルアリールスルホネートを含有する洗浄剤に関する。該アルキルアリールスルホネートは、オレフィンをビニリデンオレフィンへと二量化し、かつその後、MORまたはBEAのような形状選択的な触媒を用いてベンゼンをアルキル化することにより得られる。その後、スルホン化が行われる。
【0010】
WO02/44114は、異なった方法により得られる1分岐C1014−オレフィンを、アルキル化触媒としてのホージャサイトタイプのゼオライトの存在下に芳香族炭化水素と反応させる、アルキルアリールスルホネートの製造方法に関する。C1014−オレフィンはたとえばC−オレフィン混合物のメタセシス、次いで得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンの、二量化触媒を用いた二量化により製造することができる。代替法はオレフィンの抽出、フィッシャー・トロプシュの合成、二量化または異性化である。
【0011】
WO02/14266は、まず2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを製造するためのC−オレフィン混合物のメタセシスを実施し、かつ生成物を二量化する、アルキルアリールスルホネートの製造方法に関する。その後、アルキル化触媒の存在下にアルキル化を行い、この後にスルホン化および中和が続く。
【0012】
従来、アルキル化のための使用されていたオレフィンは、部分的に、高すぎるか、または低すぎる分岐度を有しているか、または末端のフェニルアルカン対内部のフェニルアルカンの最適ではない比率を生じていた。他方、該オレフィンは、たとえばプロペンまたはα−オレフィンのような高価な出発原料から製造され、かつ部分的に界面活性剤の製造のために重要なオレフィンフラクションの割合はわずか約20%である。このことは高価な後処理工程につながる。最後に挙げた方法は、全ての場合において所望の特性スペクトルを示す生成物を生じるわけではない。
【0013】
本発明の課題は、少なくとも部分的に分岐しており、ひいては洗剤および洗浄剤中での使用にとって、公知の化合物と比較して有利な特性を有するアルキルアリールスルホネートの製造方法を提供することである。これらは特に、生分解性、水の硬度に対する不感受性、溶解度および粘度からなる適切な特性プロファイルを製造および使用の際に有しているべきである。さらに、アルキルアリールスルホネートは安価に製造できるべきである。
【0014】
前記課題は本発明により、
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、C1012−オレフィンを分離し、かつ分離したC1012−オレフィンに対して5〜30質量%のC1012−オレフィンの低沸点成分を分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、工程b)で得られるC1012−オレフィン混合物に対して0〜60質量%、有利には0〜40質量%の線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、工程c)で添加混合を行わない場合には、スルホン化の前に付加的に、工程c)で得られたアルキル芳香族化合物に対して0〜60質量%、有利には0〜50質量%の線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程c)およびd)で添加混合を行わない場合には、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートに対して0〜60質量%、有利には0〜30質量%の線状アルキルアリールスルホネートと混合する
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法ならびに
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、かつ場合によりC1012−オレフィンを分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィンをアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、スルホン化の前に付加的に、線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを線状アルキルアリールスルホネートと混合し、
その際、工程c)、d)およびe)の少なくとも1つの工程で、そのつど先行する工程で得られた混合物に対して5〜60質量%の線状化合物を添加し、かつ添加の合計が80質量%を超えることがない、有利には60質量%を超えることがない、特に有利には50質量%を超えることがない
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法により解決される。
【0015】
−オレフィンのメタセシスおよびその後の二量化および芳香族炭化水素のアルキル化の組合せにより、前記の条件下で安価な出発原料および、所望の生成物が高い収率で得られる製造方法の使用が可能になる。
【0016】
本発明により、C−オレフィンのメタセシスによってわずかに分岐したC1012−オレフィン混合物へと二量化することができる生成物が得られることが判明した。これらの混合物は所望の分岐度を、たとえば低沸点成分の選択的な二量化または分離および/または線状オレフィンの添加によって調節することにより、芳香族炭化水素のアルキル化の際に有利に使用することができ、その際、スルホン化および中和の後に、特に硬度を形成するイオンに対する感受性、スルホネートの溶解度、スルホネートの粘度およびその洗浄特性に関して優れた特性を有する界面活性剤を生じる生成物が得られる。さらに、本発明による方法は極めて安価である。というのも、生成物流は、副生成物が生じないように柔軟に構成することができるからである。C−流から出発して本発明によるメタセシスによって、線状の、内部のオレフィンが製造され、該オレフィンは二量化工程により分枝鎖状のオレフィンへ変換される。
【0017】
本発明による方法の工程a)は、2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いたC−オレフィン混合物の反応および場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンの分離である。メタセシスはたとえばWO00/39058またはDE−A−10013253に記載されているように実施することができる。
【0018】
オレフィンのメタセシス(不均化)は、その最も簡単な形で、以下の反応式によるC=C−二重結合の切断または新たな形成による、金属触媒反応によるオレフィンの可逆的なアルキリデン交換である。
【0019】
【化1】

【0020】
特殊な場合には、非環式オレフィンのメタセシスを、1のオレフィンを異なったモル質量の2のオレフィンの混合物へと変換する(たとえばプロペン→エテン+2−ブテン)セルフメタセシスと、2の異なったオレフィンの反応を記載する(プロペン+1−ブテン→エテン+2−ペンテン)クロスメタセシスもしくはコメタセシスとに区別する。反応相手の一方がエテンである場合、これは一般にエテン分解(ethenolysis)という。
【0021】
メタセシス触媒として、原則として均一および不均一の遷移金属化合物、特に元素の周期表の第VI〜VIII副族の化合物ならびにこれらの化合物が含有されている均一および不均一の触媒系が適切である。
【0022】
−流から出発する異なったメタセシス法を本発明により使用することができる。
【0023】
DE−A−19932060は、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブテを含有する出発流を、C−オレフィンの混合物へと反応させることにより、C−/C−オレフィンを製造するための方法を記載している。その際、ブテンから特にプロペンが得られる。さらにヘキセンおよびメチルペンテンが生成物として搬出される。メタセシスにおいて、エテンは計量供給されない。場合によりメタセシスにおいて形成されるエテンを反応器に返送する。
【0024】
オレフィン系C−炭化水素を含有するラフィネート−II−出発流から場合によりプロペンおよびヘキセンを製造するための有利な方法は、
a)元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII副族の金属の少なくとも1の化合物を含有するメタセシス触媒の存在下で、メタセシス反応を実施し、入口流に含有されているブテンの範囲で、エテンと反応させてエテン、プロペン、ブテン、2−ペンテン、3−ヘキセンおよびブタンを含有する混合物が得られ、その際、ブテンに対してエテン0.6モル当量を使用することができ、
b)こうして得られた搬出流をまず蒸留により、場合によりC〜C−オレフィンを含有する低沸点フラクションAならびにC〜C−オレフィンおよびブタンを含有する高沸点フラクションへと分離し、
c)b)から場合により得られる低沸点フラクションAを引き続き蒸留によってエテンを含有するフラクションと、プロペンを含有するフラクションとに分離し、その際、エテンを含有するフラクションを方法工程a)へ返送し、かつプロペンを含有するフラクションを生成物として搬出し、
d)b)から得られる高沸点フラクションを引き続き蒸留によりブテンおよびブタンを含有する低沸点フラクションB、2−ペンテンを含有する中沸点フラクションCおよび3−ヘキセンを含有する高沸点フラクションDへと分離し、
e)その際、フラクションBおよび場合によりCを、完全にまたは部分的に方法工程a)へと返送し、かつフラクションDおよび場合によりCを生成物として排出する
ことを特徴とする。
【0025】
−アルケンを含有する炭化水素流(出発流C)からC−アルケンを製造するための代替的な有利な方法は、
a)工程a)で流Cを、元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII副族の金属の少なくとも1の化合物を含有するメタセシス触媒と接触させ、その際、C−アルケンの少なくとも一部をC〜C−アルケンへと反応させ、かつその際に形成されるC〜C−アルケンを含有する物質流(流C)をメタセシス触媒から分離し、
b)工程b)で流Cからエチレンを蒸留により除去し、かつこうしてC〜C−アルケンを含有する物質流(流C)を製造し、かつほぼエチレンからなる物質流(流C)を製造し、
c)工程c)で流Cを蒸留によりほぼプロピレンからなる物質流(流C)、ほぼC−アルケンからなる物質流(流C)および次の群:ほぼC−アルケンからなる物質流(流C)、ほぼC−アルケンからなる物質流(流C)およびほぼC−およびC−アルケンからなる物質流(流C)から選択される1もしくは複数の物質流へと分離し、
d)工程d)で、流C、流Cおよび流Cの群から選択される1もしくは複数の物質流もしくはその一部を、完全にまたは部分的に出発流Cの製造のために使用し(返送流)、かつ場合により返送流ではない流もしくは該流の一部を排出する
ことを特徴とする。
【0026】
その際、出発流Cに、EP−A1069101に記載されているような方法により、メタセシス反応を行う。
【0027】
その際、工程a)によるメタセシス反応は有利には、無機担体上に施与された、元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII族の金属の遷移金属化合物の群から選択されている、不均一で、異性化活性ではないか、またはわずかに異性化活性なメタセシス触媒の存在下で実施される。
【0028】
メタセシス触媒として有利には担体、有利にはγ−酸化アルミニウム上またはAl/B/SiOの混合担体上の酸化レニウムを使用する。
【0029】
特に触媒として1〜20質量%、有利には3〜15質量%、特に有利には6〜12質量%の酸化レニウム含有率を有するRe/γ−Alを使用する。
【0030】
メタセシスは液体運転法の場合、有利には0〜150℃、特に有利には20〜80℃の温度ならびに2〜200バール、特に有利には5〜30バールの圧力で実施する。
【0031】
メタセシスを気相中で実施する場合、温度は有利には20〜300℃、特に有利には50〜200℃である。圧力はこの場合、有利には1〜20バール、特に有利には1〜5バールである。メタセシス反応に関する詳細な記載はふたたびEP−A1069101に記載されている。
【0032】
メタセシスの際に形成される流Cのその後の後処理は、冒頭に記載した工程b)およびc)で行う。
【0033】
その際、有利には工程c)で以下の3つの代替法を実施する:
変法1は2つの部分工程c1)およびc2)の形で通常、2つの別々の塔中で、
c1)工程c1)で流Cを蒸留によりほぼプロピレンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)と、ほぼC−アルケン、C−およびC−アルケンとからなる、通常は塔底排出流である物質流(流C)とに分離し、かつ
c2)工程c2)で流Cを蒸留によりほぼブテンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)と、ほぼC−およびC−アルケンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)と、流Cとに分離する
ことにより実施される[変法CS]。
【0034】
変法2は2つの部分工程c3)およびc4)の形で、通常、2つの別々の塔中で、
c3)工程c3)で流Cを蒸留によりほぼC−アルケンからなる、通常は塔底排出流である物質流(流C)と、ほぼプロペン、ブテンおよびC−アルケンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)とに分離し、かつ
c4)工程c4)で流Cを蒸留によりほぼプロペンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)と、ほぼC−アルケンからなる、通常は側方排出流である物質流(流C)と、ほぼブテンおよびC−アルケンからなる、通常は塔底排出流である物質流(流C)とに分離する
ことにより実施される[変法DS]。
【0035】
変法3は3つの部分工程c5)〜c7)の形で、通常は3つの別々の塔中で、
c5)工程c5)では、流Cを蒸留によりほぼプロペンおよびC−アルケンからなる、通常は塔頂流である物質流(流C)と、ほぼC−およびC−アルケンからなる、通常は塔底排出流である物質流(流C)とに分離し、
c6)工程6c)で流Cを蒸留により通常は塔頂流である流Cと、通常は塔底排出流である流Cとに分離し、
c7)工程c7)で流Cを蒸留により、通常は塔頂流である流Cと、通常は塔底排出流である流Cとに分離する
ことにより実施される[変法F]。
【0036】
塔の分離能は、一般に、分離の際に99質量%より高い純度を有するプロペンおよびエチレンが得られるように調節する。
【0037】
工程c)の個々の変法において形成される流C、CおよびCは工程d)による返送流として、すでに記載したように、部分的に、もしくは完全に出発流Cの製造のために使用される。
【0038】
返送流として使用される物質流C、CおよびCの割合は通常、返送流および排出された物質流C、CおよびCの割合の合計に対して10〜70%である。物質流CまたはC中に1−および2−ブテンならびにイソブテン以外にC−アルカンも存在する場合、C−アルカンの富化を回避するか、またはこの流の一部のみを返送流として使用する場合には、C−アルカンの少なくとも一部を除去しなくてはならない。
【0039】
個々の流およびフラクションは前記の化合物を含有するか、または該化合物からなっていてよい。これらが流または化合物からなる場合、少量のその他の炭化水素の存在は排除されない。
【0040】
その際、メタセシス反応の1工程の反応実施においてC−オレフィン、有利にはn−ブテンおよびブタンからなるフラクションを場合により可変的な量のエテンにより均一系もしくは有利には不均一系のメタセシス触媒を用いて、(不活性の)ブタン、未反応の1−ブテン、2−ブテンからなる生成物混合物ならびにメタセシス生成物であるエテン、プロペン、2−ペンテンおよび3−ヘキセンへと反応させる。所望の生成物である2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンは排出され、かつ残留する生成物および未反応の化合物を完全に、または部分的にメタセシスへと返送する。有利にはこれらはできる限り完全に返送し、その際、オーバーフローを回避するために少量のみを排出する。理想的には、オーバーフローは生じず、かつ3−ヘキセン以外の全ての化合物をメタセシスへと返送する。
【0041】
本発明によれば、C−供給流中のブテンに対して、0.6モル当量まで、有利には0.5モル当量までのエテンを使用する。これにより従来技術と比較して少量のエテンを使用するのみである。
【0042】
さらに本発明によれば、反応搬出物中に含有されているC−生成物および場合によりC−生成物の最大で可能な量が返送される。これは特に未反応の1−ブテンおよび2−ブテンならびに場合により形成された2−ペンテンの返送に該当する。
【0043】
−供給流中になお少量のイソブテンが含有されている場合には、分枝鎖状の炭化水素もまた少量形成されうる。
【0044】
メタセシス搬出物中の、場合により付加的に形成される分枝鎖状のC−およびC−炭化水素の量は、C−供給流中のイソブテン含有率に依存し、かつ有利にはできる限り少なく(<3%)維持する。
【0045】
複数の変法における本発明による方法を詳細に説明するために、メタセシス反応器中で行われる反応を3つの重要な個々の反応に区分する:
1.1−ブテンおよび2−ブテンのクロスメタセシス
【0046】
【化2】

【0047】
2.1−ブテンのセルフメタセシス
【0048】
【化3】

【0049】
3.場合により2−ブテンのエテン分解
【0050】
【化4】

【0051】
目的生成物であるプロペンおよび3−ヘキセン(3−ヘキセンの名称は、特に場合により形成される異性体を含む)もしくは2−ペンテンに対するそのつどの要求に依存して、プロセスの外部の物質収支(external mass balance)は、エテンの可変的な使用により、および特定の部分流を返送することによる平衡の推移により影響を受けうる。従ってたとえば3−ヘキセン収率は、2−ペンテンをメタセシス工程へ返送することにより1−ブテンと2−ブテンとのクロスメタセシスが抑制され、その際、1−ブテンは消費されないか、またはできる限り少なく消費されることによって高めることができる。その際に有利に進行する、1−ブテンから3−ヘキセンへのセルフメタセシスはさらにエテンを形成し、これはその後の反応において2−ブテンと反応して有価生成物であるプロペンを生じる。
【0052】
1−ブテンおよび2−ブテンおよび場合によりイソブテンを含有するオレフィン混合物は、特に種々の分解法、たとえば水蒸気分解またはFCC分解の際にC−フラクションとして得られる。あるいはブタンの脱水素の際に、またはエテンの二量化により生じるブテン混合物を使用することができる。C−フラクション中に含有されているブタンは不活性である。ジエン、アルキンまたはエニンは本発明によるメタセシス工程の前に通例の方法、たとえば抽出または選択的水素化により除去される。
【0053】
方法において使用されるC−フラクションのブテン含有率は1〜100質量%、有利には60〜90質量%である。ブテン含有率はこの場合、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブテンに対するものである。
【0054】
有利には水蒸気分解またはFCC分解の際に、またはブタンの脱水素の際に生じるC−フラクションを使用する。
【0055】
その際、C−フラクションとして有利にはラフィネートIIを使用し、その際、C−流はメタセシス反応の前に、吸着剤−保護床を用いた、有利には高表面積の酸化アルミニウムまたは分子ふるいを用いた相応する処理により、妨げとなる不純物を除去する。
【0056】
工程d)では、低沸点フラクションB、中沸点フラクションCおよび高沸点フラクションDへの分離をたとえば分離壁塔中で実施することができる。この場合、低物点フラクションBは塔頂を介して、中沸点フラクションCは中央の排出部を介して、および高沸点フラクションDは塔底生成物として得られる。
【0057】
メタセシス反応はこの場合、有利には不均一系の、異性化活性ではないか、またはわずかに異性化活性であるのみの、無機担体上に担持させた、元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII族の金属の遷移金属化合物の群から選択されているメタセシス触媒の存在下で実施される。
【0058】
有利にはメタセシス触媒として担体上の、有利にはγ−酸化アルミニウム上の、またはAl/B/SiO混合担体上の酸化レニウムを使用する。
【0059】
特に触媒として、1〜20質量%、有利には3〜15質量%、特に有利には6〜12質量%の酸化レニウム含有率を有するRe/γ−Alを使用する。
【0060】
メタセシスは液体運転法の場合、有利には0〜150℃、特に有利には20〜110℃の温度および2〜200バール、特に有利には5〜40バールの圧力で実施する。
【0061】
メタセシスを気相中で実施する場合、温度は有利には20〜300℃、特に有利には50〜200℃である。圧力はこの場合、有利には1〜20バール、特に有利には1〜5バールである。
【0062】
水蒸気分解流またはラフィネート−C−流からのC/C−オレフィンおよび場合によりプロペンの製造は部分工程(1)〜(4)を含んでいてよい:
(1)場合によりブタジエンをブタジエン選択的な溶剤により抽出することによるブタジエンおよびアセチレン系化合物の分離および引き続き/またはn−ブテンおよびイソブテンを含有し、かつほぼブタジエンおよびアセチレン系化合物を含有していない反応搬出物を得るための粗製C−カット中に含有されているブタジエンおよびアセチレン系不純物の選択的水素化、
(2)先行する工程において得られた反応搬出物とアルコールとを、酸性触媒の存在下で反応させ、エーテルを得ることによるイソブテンの分離、n−ブテンおよび場合により酸素化された不純物を含有する反応搬出物を得るための、エーテル化と同時に、またはエーテル化の後で行うことができるエーテルおよびアルコールの分離、その際、形成されたエーテルを排出するか、または純粋なイソブテンを得るために再分解することができ、かつエーテル化工程にイソブテンを分離するための蒸留工程が続いてもよく、その際、場合により連行されるC−、i−C−ならびにC−炭化水素もまた蒸留によりエーテルの後処理の範囲内で分離することができるか、または残留イソブテン0〜15%を含有する流を得るために、その酸の強度がオリゴ−もしくはポリイソブテンとしてのイソブテンの選択的な分離のために適切である酸性触媒の存在下で先行する工程で得られる反応搬出物からのイソブテンをオリゴマー化または重合する、
(3)相応して選択した吸着材料を用いた、先行する工程の搬出物の酸素化不純物の分離、
(4)こうして得られたラフィネート−II−流の記載したとおりのメタセシス反応。
【0063】
有利には部分工程である、粗製C−カット中に含有されているブタジエンおよびアセチレン系不純物の選択的水素化を、その中にイソブテン以外にn−ブテン、1−ブテンおよび2−ブテンがモル比2:1〜1:10で、有利には2:1〜1:3で存在し、かつほぼジオレフィンおよびアセチレン系化合物を含有していない反応搬出物を得るために、液相中の粗製C−カットと、担体上にニッケル、パラジウムおよび白金の群から選択される少なくとも1種の金属を含有する触媒、有利には酸化アルミニウム上のパラジウムとを、20〜200℃の温度、1〜50バールの圧力、毎時触媒1mあたり新鮮な供給流0.5〜30mの体積速度で、および供給流に対する返送流の比0〜30でジオレフィンに対する水素のモル比0.5〜50で接触させることにより2工程で実施する。最大のヘキセン搬出のために、有利には1−ブテンは過剰量で存在し、高いプロペン収率のためには有利には2−ブテンは過剰で存在する。このことは、全てのモル比は第一のケースでは2:1〜1:1で、および第二のケースでは1:1〜1:3であってよいことを意味する。
【0064】
有利には部分工程である、粗製C−カットからのブタジエンの抽出は、後に実施される選択的水素化/異性化によりn−ブテンである1−ブテンおよび2−ブテンが2:1〜1:10、有利には2:1〜1:3のモル比で存在する反応搬出物を得るために、極性の非プロトン性溶剤、たとえばアセトン、フルフラール、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンの群から選択されるブタジエン選択的な溶剤を用いて実施する。
【0065】
有利には部分工程であるイソブテンのエーテル化は、メタノールまたはイソブタノール、有利にはイソブタノールを使用して酸性のイオン交換体の存在下に3段階の反応器カスケード中で実施し、ここでオーバーフローされる固定床触媒は上から下へと貫流され、その際、反応器の入口温度は0〜60℃、有利には10〜50℃であり、出口温度は25〜85℃、有利には35〜75℃であり、圧力は2〜50バール、有利には3〜20バールであり、かつイソブテンに対するイソブタノールの比は0.8〜2.0、有利には1.0〜1.5であり、ならびに全反応率は平衡反応率に相応する。
【0066】
有利には部分工程である、イソブテンのオリゴマー化または重合によるイソブテンの分離は、前記の工程であるブタジエンの抽出および/または選択的水素化により得られる反応搬出物から出発して、均一系および不均一系のブレンステッド酸またはルイス酸の群から選択される触媒の存在下で実施される。DE−A−10013253を参照のこと。
【0067】
粗製C−カットの選択的水素化
アルキン、アルキネンおよびアルカジエンはその重合傾向または遷移金属によるその顕著な錯化傾向に基づいて多くの工業的な合成において不所望の物質である。これらはこの反応の際に使用される触媒を部分的に著しく損なう。
【0068】
水蒸気分解のC−流は高い割合のポリ不飽和化合物、たとえば1,3−ブタジエン、1−ブチン(エチルアセチレン)およびブテニン(ビニルアセチレン)を含有する。存在する下流での加工により、ポリ不飽和化合物は抽出される(ブタジエン−抽出)か、または選択的に水素化される。最初に挙げたケースの場合、ポリ不飽和化合物の残留含有率は一般に0.05〜0.3質量%であり、最後に挙げたケースの場合、一般に0.1〜4.0質量%である。ポリ不飽和化合物の残留量は同様にその後の加工の際に妨げになるので、<10ppmの値までの選択的水素化によるさらなる富化が必要である。できる限り高いブテンの有価生成物割合を得るために、ブタンへの過水素化(overhydrogenation)はできる限り低く維持すべきである。
【0069】
代替法:粗製C−カットからのブタジエンの抽出
ブタジエンを異性化するための有利な方法は、抽出蒸留の物理的な原理に基づいている。選択的な有機溶剤の添加により、混合物の特定の成分、この場合はブタジエンの揮発性が低下する。従って該成分は溶剤と共に蒸留塔の塔底に残留し、その一方で蒸留により予め分離することができなかった随伴物質を塔頂を介して除去することができる。抽出蒸留のための溶剤として、主としてアセトン、フルフラール、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)およびN−メチルピロリドン(NMP)を適用する。抽出蒸留は特に比較的高い割合のアルキン、特にメチルアセチレン、エチルアセチレンおよびビニルアセチレンならびにメチルアレンを含有する、ブタジエンが富化されたC−分解留分のために適切である。
【0070】
粗製C−カットからの溶剤抽出の簡素化された原理は次のとおりに定義することができる:完全に蒸発したC−カットを抽出塔の下側端部へ供給する。溶剤(DMF、NMP)は上から気体混合物に対して向流で流れ、かつ下へ向かう途中でより溶解度の高いブタジエンおよび少量のブテンにより負荷される。抽出塔の下側端部では得られた純粋なブタジエンの一部を供給してブテンを十分に排除する。ブテンは塔頂で分離塔を離れる。デガッサーとよばれるもう1つの塔中で、ブタジエンを溶剤の沸騰により除去し、かつ引き続き精留する。
【0071】
通常、ブタジエンの抽出蒸留の反応搬出物を選択的水素化の第二工程へ供給してブタジエンの残留含有率を<10ppmの値まで低下させる。
【0072】
ブタジエンの分離後に残留するC−カットはC−ラフィネートまたはラフィネートIとよばれ、かつ主として成分のイソブテン、1−ブテン、2−ブテンならびにn−およびイソブタンを含有する。
【0073】
ラフィネートIからのイソブテンの分離
−流をさらに分離する際に、引き続き有利にはイソブテンが単離される。というのも、その分岐およびその比較的高い反応性により、残りのC−成分から区別されるからである。99%の純度を有するイソブテンを得ることができ、かつ分子ふるいの細孔に吸着されたn−ブテンおよびブタンを高沸点の炭化水素によりふたたび脱着することができる形状選択的な分子ふるい分離の可能性以外に、これは第一に蒸留により、イソブテンが1−ブテンおよびイソブテンと一緒に塔頂を介して分離され、かつ2−ブテンならびにn−ブテンがイソブテンおよび1−ブテンの残留量も含めて塔底に残留するいわゆる脱イソブテン剤(deisobuenizer)を使用して、または抽出によりイソブテンとアルコールとを酸性のイオン交換体を用いて反応させることにより行う。このために有利にはメタノール(→MTBE)またはイソブタノール(IBTBE)を使用する。
【0074】
メタノールとイソブテンとからのMTBEの製造は、30〜100℃で、およびわずかな過圧で液相中、酸性のイオン交換体を使用して行う。2つの反応器中で、または2段階のシャフト反応器(shaft reactor)中で作業して、ほぼ完全なイソブテン反応率(>99%)が得られる。メタノールとMTBEとの間での圧力に依存する共沸混合物の形成は、MTBEの精留のために多工程の加圧蒸留を必要とするか、または比較的新しい技術により、吸着樹脂を用いたメタノールの吸着により達成される。C−フラクションの全てのその他の成分は変化しないままである。
【0075】
ポリマー形成によるわずかな割合のジオレフィンおよびアセチレンはイオン交換体の寿命の短縮を生じる可能性があり、有利には少量の水素の存在下にジオレフィンおよびアセチレンのみを水素化する二官能性のPD−含有イオン交換体を使用する。イソブテンのエーテル化はこれによって影響を受けない。
【0076】
MTBEは第一にガソリンのオクタン価を高めるために役立つ。あるいはMTBEおよびIBTBEは酸性の酸化物を用いて気相中、150〜300℃で純粋なイソブテンを得るために再分解することができる。
【0077】
ラフィネートIからイソブテンを分離するためのもう1つの可能性は、オリゴ/ポリイソブテンの直接合成である。酸性の均一系および不均一系触媒、たとえば二酸化チタン上の三酸化タングステンはこの方法で95%のイソブテン反応率で、最大で5%のイソブテンの残留割合を有する排出流を得ることができる。
【0078】
吸着材料を用いたラフィネートII流の供給流の精製
その後のメタセシス工程のために使用される触媒の耐用寿命を改善するために、前記のとおり、触媒毒、たとえば水、酸素化した化合物、硫黄または硫黄化合物もしくは有機ハロゲン化物を分離するために、供給流の精製(guard bed)の使用が必要である。
【0079】
吸着および吸着精製のための方法はたとえばW.Kast、Adsorption aus der Gasphase、VCH、Weinheim(1988)に記載されている。ゼオライトの吸着剤の使用はD.W.Breck、Zeolite Molecular Sieves、Wiley、New York(1974)に記載されている。
【0080】
液相中でのC〜C15−炭化水素からの特定のアセトアルデヒドの除去はEP−A−0582901の記載により行うことができる。
【0081】
粗製C−カットの選択的水素化
水蒸気分解装置またはリファイナリーに由来する粗製C−フラクションからまずブタジエン(1,2−および1,3−ブタジエン)ならびにC−カット中に含有されているアルキンまたはアルケニンを2工程の方法で選択的に水素化する。リファイナリーに由来するC−カットは1実施態様によれば直接、選択的水素化の第二工程に供給してもよい。
【0082】
水素化の第一工程は有利には、担体としての酸化アルミニウム上のパラジウム0.1〜0.5質量%を含有する触媒を用いて実施する。反応は固定床の気/液相中で(トリクル運転(trickle procedure))、液体を循環させながら運転する。水素化は40〜80℃の範囲の温度および10〜30バールの圧力、ブタジエンに対する水素のモル比10〜50および毎時触媒1mあたり新鮮な供給流15mの体積速度LHSVおよび5〜20の供給流に対する返送流の比で行う。
【0083】
水素化の第二工程は有利には、担体としての酸化アルミニウム上のパラジウム0.1〜0.5質量%を含有する触媒を用いて実施する。反応は固定床の気/液相中で(トリクル運転)、液体を循環させながら運転する。水素化は50〜90℃の範囲の温度および10〜30バールの圧力、ブタジエンに対する水素のモル比1.0〜10および毎時触媒1mあたり新鮮な供給流5〜20mの体積速度LHSVおよび0〜15の供給流に対する返送流の比で行う。
【0084】
こうして得られた反応搬出物はラフィネートIとよばれ、かつイソブテン以外に1−ブテンおよび2−ブテンを2:1〜1:10、有利には2:1〜1:3のモル比で含有する。
【0085】
代替法:抽出による粗製C−カットからのブタジエンの分離
粗製C−カットからのブタジエンの抽出は、N−メチルピロリドンを使用して行う。
【0086】
抽出の反応搬出物は本発明の実施態様によれば、残留量のブタジエンを除去するために第二工程で前記の選択的水素化に供給し、その際、この選択的水素化工程で所望の1−ブテン対2−ブテンの比を調節する。
【0087】
アルコールを用いたエーテル化によるイソブテンの分離
エーテル化工程において、イソブテンをアルコール、有利にはイソブタノールを用いて、酸性触媒、有利には酸性のイオン交換体によりエーテル、有利にはイソブチル−t−ブチルエーテルへと反応させる。反応は本発明の実施態様によれば、三段階の反応器カスケード中、オーバーフローされる固定床触媒中で、上から下へと貫流させる。第一の反応器中で、入口温度は0〜60℃、有利には10〜50℃であり、出口温度は25〜85℃、有利には35〜75℃であり、かつ圧力は2〜50バール、有利には3〜20バールである。イソブテンに対するイソブタノールの比が0.8〜2.0、有利には1.0〜1.5である場合、反応率は70〜90%である。
【0088】
第二の反応器中で、入口温度は0〜60℃、有利には10〜50℃であり、出口温度は25〜85℃、有利には35〜75℃であり、かつ圧力は2〜50バール、有利には3〜20バールである。2つの工程における全反応率は85〜99%、有利には90〜97%まで高まる。
【0089】
第三の、最も大きい反応器中で、0〜60℃、有利には10〜50℃の同一の入口および出口温度で平衡反応が達成される。形成されるエーテルのエーテル化および分離の後にエーテル分解が続く:吸熱反応が酸性の触媒、有利には酸性の不均一系触媒、たとえばSiO担体上のリン酸を用いて、150〜300℃、有利には200〜250℃の入口温度および100〜250℃、有利には130〜220℃の出口温度で実施される。
【0090】
従ってFCC−C−カットを使用する際に、プロパンが1質量%前後の量で、イソブテンが30〜40質量%前後の量で、ならびにC−炭化水素が3〜10質量%前後の量で供給されるが、これはその後に続く方法の連続を損なう可能性がある。従ってエーテルの後処理の範囲で前記の成分を蒸留により分離する可能性が予測される。
【0091】
こうして得られた、ラフィネートIIとよばれる反応搬出物は、0.1〜3質量%のイソブテン残留含有率を有する。
【0092】
搬出物中のイソブテンが比較的大量である場合、たとえばFCC−C−フラクションを使用する場合、またはイソブテンを酸性触媒反応によりポリイソブテンへと重合(部分反応)して分離する際に、残留するラフィネート流を本発明の実施態様によりその後の後処理の前に蒸留により処理することができる。
【0093】
吸着材料を用いたラフィネートII流の精製
エーテル化/重合(もしくは蒸留)の後に得られるラフィネートII流は、高表面積の酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩または分子ふるいからなる少なくとも1つのガードベッド(guard bed)を用いて精製する。この場合、ガードベッドはC−流の乾燥のために、ならびにその後のメタセシス工程において触媒毒として作用しうる物質を除去するために役立つ。有利な吸収材料はSelexsorb CDおよびCDOならびに3Å−およびNaX−分子ふるい(13X)である。精製は、乾燥塔中、全ての成分が液相として存在するように選択されている温度および圧力で行う。場合によりその後のメタセシス工程のための供給流を予熱するために精製工程を使用する。
【0094】
残留するラフィネートII流は水、酸素化された化合物、有機塩化物および硫黄化合物をほぼ含有していない。
【0095】
MTBEを製造するためのメタノールを用いたエーテル化工程を実施する際に、複成分としてジメチルエーテルの形成に基づいて、複数の精製工程を組み合わせるか、または連続して接続することが必要でありうる。
【0096】
メタセシス触媒として、文献公知の不均一系レニウム触媒、たとえばγ−Al上または混合担体、たとえば異なった金属含有率を有するSiO/Al、B/SiO/AlまたはFe/Al上のReが有利である。酸化レニウムの含有率は選択される担体とは無関係に1〜20%、有利には3〜10%である。
【0097】
触媒は新鮮にか焼されたものを使用し、かつその他の活性化(たとえばアルキル化剤による)を必要としない。失活した触媒は、空気流中400℃を上回る温度でコークス残留物を燃焼させ、かつ不活性ガス雰囲気下で冷却することにより数回再生することができる。
【0098】
不均一系触媒相互の比較により、Re/Alがすでに極めて緩和な反応条件下(T=20〜80℃)で活性であり、その一方でMO/SiO(M=Mo、W)は100〜150℃を超える温度で初めて活性になり、かつ従って副反応としてC=C−二重結合の異性化が現れうることが判明した。
【0099】
さらに次のものが挙げられる:
●J.Mol Catal.1995、95、第75〜83頁の(C)W(CO)ClおよびSiOから製造されるWO/SiO
●J.Mol. Catal.1991、64、第171〜178頁およびJ.Mol. Catal.1989、57、第207〜220頁の[Mo(NO)(OR)、SnEtおよびAlClからなる3成分系;
●J.Organomet. Chem.1982、第229頁の高活性触媒前駆体からなるニトリドモリブデン(VI)錯体、C19〜C23
●J.Chem.Soc.、Faraday Trans./1982、78、第2583〜2592頁の不均一系SiO担持MoOおよびWO触媒;
●J.Chem.Soc.、Faraday Trans./1981、77、第1763〜1777頁の担持Mo触媒;
●J.Am.Chem.Soc.、1980、102(21)、第6572〜6574頁の活性タングステン触媒前駆体;
●J.Catal.1975、38、第482〜484頁のアセトニトリル(ペンタカルボニル)タングステン;
●Z.Chem.1974、14、第284〜285頁の触媒前駆体としてのトリクロロ(ニトロシル)モリブデン(II);
●J.Catal.1974、34、第196〜202頁のW(CO)PPH/EtAlCl
●J.Catal.、1973、28、第300〜303頁のWCl/n−BuLi;
●J.Catal.、1972、26、第455〜458頁のWCl/n−BuLi;
FR2726563:R=C〜C40−炭化水素、n=1〜10、x=0または1およびL=ソルベンスのOReO[Al(OR)(L)O]ReO
EP−A−1910675、EP−A−1290474、BE899897:タングステン、2置換されたフェノレート基および4つの別のリガンド、特にハロゲン基、アルキル基もしくはカルベン基からなる触媒系。
【0100】
FR2499083:タングステン、モリブデンまたはレニウムのオキソ遷移金属錯体とルイス酸とからなる触媒系。
【0101】
US4,060,468:タングステン塩、酸素を含有する芳香族化合物、たとえば2,6−ジクロロフェノールおよび選択的に分子酸素からなる触媒系。
【0102】
BE776,564:遷移金属塩、有機金属化合物およびアミンからなる触媒系。
【0103】
使用される触媒、特に担持触媒のサイクル寿命を改善するために、吸着剤床(ガードベッド)による供給流の精製を使用することが推奨される。この場合、ガードベッドはC流の乾燥のために、ならびにその後のメタセシス工程において触媒毒として作用する可能性のある物質を除去するために役立つ。有利な吸着剤材料はSelexsorb CDおよびCDOならびに3Å−およびNaX−分子ふるい(13X)である。精製は乾燥塔中、全ての成分が液相中に存在しているように選択された温度および圧力で行う。場合により精製工程をその後のメタセシス工程のための供給流の予熱のために使用する。複数の精製工程を相互に組合せるか、または連続して接続することが有利な場合がある。
【0104】
メタセシス工程における圧力および温度は、全ての反応相手が液相中に存在するように(通常T=0〜150℃、有利には20〜80℃、p=2〜200バール)選択されている。あるいは、特に比較的高いイソブテン含有率を有する供給流の場合、反応を気相中で実施するおよび/または酸性度が低い触媒を使用することが有利な場合がある。
【0105】
通常、反応は1秒〜1時間後、有利には30秒〜30分後に終了する。反応は反応器、たとえば圧力ガス容器、流管または反応蒸留装置中で連続的または不連続的に実施することができ、その際、流管が有利である。
【0106】
工程b)
工程b)では工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下でC1012−オレフィン混合物へと二量化する。
【0107】
得られた、本発明による二量体のオレフィン混合物は有利には、1〜2.5、特に有利には1〜2.0、特に1〜1.5およびとりわけ1〜1.2の範囲の平均分岐度を有する。その際、純粋なオレフィンの分岐度として3個の炭素原子と結合している炭素原子の数に、4個の炭素原子と結合している炭素原子の数の二倍を加えたものと定義される。この場合、純粋なオレフィンの分岐度はH−NMRにより、メチレン−およびメチンプロトンに対するメチル基の信号の積分によって全水素化後に容易に測定可能である。
【0108】
オレフィンを混合する際に、分岐度をモルパーセントにより数値を決定し、こうして平均分岐度を算出する。
【0109】
モル割合はこの場合、最適な方法ではガスクロマトグラフィーにより測定する。
【0110】
この場合、オレフィンにおける分岐度の種類は有利には、水素化後に、メチル−、ジメチル−、エチルメチル−およびジエチルアルカンに含まれないアルカンが10%未満、有利には5%未満、特に有利には1%未満で得られるように構成されている。このことは、分岐がメチル−およびエチル−分岐のみであることを意味する。
【0111】
本発明の特に有利な実施態様によれば、触媒反応により直接、分岐構造に関して所望の有利な組成が得られるように二量化を実施する。
【0112】
本発明のもう1つの実施態様によれば、得られるC10〜C12−オレフィンを分離し、かつ分離したC1012−オレフィンに対して5〜30質量%、有利には5〜20質量%、特に10〜20質量%までの、C1012−オレフィンの低沸点成分を分離する。低沸点成分とは、蒸留の際に最初に通過するか、または最も低い沸点を有するC1012−オレフィン混合物である。従って前記の質量割合は、蒸留の際に最初に通過し、ひいては分離することができる成分に相応する。あるいはまた分離は任意のその他の適切な方法により行うことができる。特に精製蒸留を実施する。本発明により実施される分離により、複数分岐したオレフィンは部分的に、または完全にC1012−オレフィン混合物から分離される。分離は2もしくは複数分岐したオレフィンの少なくとも80%、有利には少なくとも90%、特に少なくとも95%が分離されるように実施することもできる。従って工程b)の最後におけるC1012−オレフィン混合物中に、線状および1分岐したオレフィンおよび場合によりわずかな割合の複数分岐したオレフィンが残留する。複数分岐したオレフィンの含有率を測定するために適切な分離法および分析法は当業者に公知である。
【0113】
前記の実施態様は、工程c)で線状オレフィンを、工程d)で線状アルキルベンゼンを、工程e)で線状アルキルアリールスルホネートを添加することにより、またはこれらの組合せと組み合わせることができる。しかしこのような線状の化合物の添加もまた省略することができる。
【0114】
工程c)、d)および/またはe)において線状化合物を添加する場合、1実施態様によれば工程b)における低沸点成分の分離もまた省略することができる。
【0115】
二量化混合物中に、アルカンは<30質量%、有利には<10質量%および非C1012−オレフィンは<5質量%含有されていてよい。
【0116】
有利には二量化のためにメタセシス生成物中に含有されている内部の、線状ペンテンおよびヘキセンを使用する。特に有利であるのは3−ヘキセンの使用である。
【0117】
二量化は均一系触媒によって、または不均一系触媒によって実施することができる。均一系触媒による二量化は、分岐構造に関して、広い範囲で変化することができる。ニッケル系以外に、たとえばその他の助触媒およびリガンドにより適切に変性することができるTi−、Zr−、Cr−もしくはFe−系を使用することができる。
【0118】
特に有利には均一系触媒による二量化をアルキルアルミニウムAlRを有する遷移金属の不存在下で触媒する。このα−オレフィンは極めて緩和な条件において選択的にビニリデンへと反応する一方で、劇的な条件では内部のオレフィンの相応する反応も行われる。この場合にも高いビニリデン割合を有する二量体が形成される。2および3分岐した異性体の割合は極めて低い。
【0119】
AlR触媒による二量化は有利には150〜300℃、特に有利には180〜240℃、特に210〜230℃の範囲の温度で実施され、触媒は有利には蒸留により塔底を介して分離され、かつ触媒反応へ返送される。
【0120】
不均一系触媒反応のために、有利にはたとえばDE−A−4339713から公知であるような、酸化ケイ素および酸化チタンからなる担体材料上の酸化アルミニウムと第VIII副族の金属の酸化物との組合せを使用する。不均一系触媒は、固定床中、その場合、1〜1.5mmのスプリットとして有利には粗粒状の形で、または懸濁させて(粒径0.05〜0.5mm)使用することができる。二量化は不均一系触媒による実施の際には有利には80〜200℃、有利には100〜180℃の温度で、反応温度で支配的な圧力下に、場合により保護ガスゲージ圧下で、閉鎖された系において実施する。最適な反応率を達成するために、反応混合物を数回循環させ、その際、循環する生成物の一定の割合を連続的に排出し、かつ出発材料により補充する。
【0121】
本発明による二量化の際に、その成分が主として出発オレフィンの二倍の鎖長を有するモノ不飽和炭化水素の混合物が得られる。
【0122】
本発明により製造されるC12−オレフィン混合物の場合、分岐点における主鎖は有利にはメチル基またはエチル基である。
【0123】
前記の方法(たとえばWO00/39058)により得られるオレフィン混合物は、特に以下に記載される、界面活性剤を製造するための分枝鎖状のアルキル芳香族の製造のために貴重な中間生成物である。
【0124】
工程c)
工程c)では工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物を、アルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成する。
【0125】
工程c)で使用されるC1012−オレフィン混合物は、最適な構造/直線性を有する。このことは、分岐度および分岐の種類は、工程c)において有利なアルキル芳香族化合物を得るために最適に選択されていることを意味する。工程c)において最適に使用すべきC1012−オレフィン混合物の調節は、線状のオレフィンを添加することにより行うことができる。しかし有利には線状オレフィンを添加する代わりに、分岐度がより高いオレフィンを分離する。特に有利には二量化の際に、適切な触媒を適切な方法と組合せて最適なC1012−オレフィン混合物が得られる。この方法の場合、アルキル化の際に直接、所望の構造が得られる。この場合、線状オレフィンの添加および分岐度のより高いオレフィンの分離を省略することができる。記載の方法の組合せもまた可能である。
【0126】
工程b)において、低沸点成分の分離を実施する場合、選択的に工程c)において、工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物に対して0〜60質量%、有利には0〜50質量%、特に0〜30質量%の線状オレフィンを添加することができる。線状オレフィンを添加する場合、その量は少なくとも1質量%、有利には少なくとも5質量%、特に少なくとも10質量%である。
【0127】
本発明の第二の実施態様により工程b)で低沸点成分の分離を実施しない場合、工程c)、d)およびe)の少なくとも1つの工程において、そのつど先行する工程で得られた混合物の60質量%までの線状化合物を添加することができる。このことは、工程c)において付加的に線状オレフィンが添加され、かつ/または工程d)において付加的に線状アルキルベンゼンが添加され、かつ/または工程e)において付加的に線状アルキルアリールスルホネートが添加されることを意味する。従って工程c)、d)およびe)のそれぞれにおいて、個々の工程で、もしくは2つの工程で線状化合物を添加することができる。工程c)ではたとえば、工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物に対して、線状オレフィンを5〜60質量%、有利には10〜50質量%、特に10〜30質量%添加することができる。
【0128】
工程c)、d)およびe)全てに対して、有利には最大で60質量%、特に有利には最大で40質量%、特に最大で30質量%の線状化合物を添加することができる。この最大量はすでに工程の1つにおける添加により達成される場合、その他の工程では線状化合物の添加は省略される。
【0129】
線状化合物の添加により、アルキルアリールスルホネートの特性プロファイルは有利な合成の連続によりそのつど所望される適用分野および要求プロファイルに適合させることができる。
【0130】
そのつど挙げられる下限は本発明により可能な範囲まで、そのつど挙げられる上限と組み合わせることができる。
【0131】
その際、有利にはアルキル基中にH/C指数1を有する1〜3個の炭素原子を有するアルキル芳香族化合物を生じるアルキル化触媒を使用する。
【0132】
原則としてアルキル化は任意のアルキル化触媒の存在下に実施することができる。
【0133】
AlClおよびHFを原則として使用することができるが、不均一系もしくは形状選択的な触媒が有利である。装置の安全性および環境保護の理由から、今日では固定床触媒が有利であり、これにはたとえばDETAL法において使用されるフッ素化されたSi/Al触媒、一連の形状選択的な触媒もしくは担持された酸化金属触媒、ならびに層状ケイ酸塩および粘土が挙げられる。
【0134】
触媒を選択する際に、使用される供給原料の大きな影響にもかかわらず、アルキル基中にH/C指数0を有する炭素原子を有することを特徴とする触媒により形成される化合物の最小化は重要である。さらに、アルキル基中に平均して1〜3個の、H/C指数1を有する炭素原子を有する化合物を形成すべきである。このことは特に、一方ではその形状により不所望の生成物の形成を抑制し、かつ他方では十分な反応速度を可能にする適切な触媒の選択により達成される。
【0135】
本発明によるアルキル芳香族化合物はアルキル基(側鎖)中に、第一、第二、第三および第四炭素原子の特徴的な割合を有する。これは0〜3のH/C指数を有するアルキル基中の炭素原子の数を反映する。その際、H/C指数はアルキル基中の炭素原子あたりのプロトンの数を定義する。有利には本発明によるアルキル芳香族化合物の混合物は、0のH/C指数を有するアルキル基中の炭素原子のわずかな割合を有するのみである。有利には0のH/C指数を有するアルキル基中の炭素原子の割合は全ての化合物を平均して<15%、特に有利には<10%である。同時に芳香族に結合している、H/C指数0を有するアルキル基中の炭素原子の割合は、H/C指数0を有するアルキル基中の全ての炭素原子の80%以上、有利には90%以上、特に有利には95%以上である。
【0136】
有利には本発明によるアルキル芳香族化合物の混合物は平均して1〜3、有利には1〜2.5、特に有利には1〜2個の、H/C指数1を有する炭素原子を側鎖中に有する(つまり芳香族の炭素原子を数えない)。このタイプの3個の炭素原子を有する化合物の割合は、有利には<30%、特に有利には<20%、特に<10%である。
【0137】
特定のH/C指数を有する炭素原子の割合の制御は、使用される触媒を適切に選択することによって行うことができる。有利なH/C分布が達成される、有利に使用される触媒は、モルデナイト、β−ゼオライト、L−ゼオライト、MCM−58、MCM−68およびホージャサイトである。モルデナイトおよびホージャサイトが特に有利である。
【0138】
触媒を選択する際にはさらに、失活に関するその傾向にも注意すべきである。一次元的な細孔系は、多くの場合、方法からの分解もしくは合成生成物による細孔の迅速な閉塞の欠点を有する。従って数次元的な細孔系を有する触媒の使用が有利である。
【0139】
使用される触媒は、天然もしくは合成由来のものであってよく、その特性は文献公知の方法により(たとえばイオン交換、スチーミング、酸性中心のブロック化、外格子種(extralattice species)の洗浄など)一定の範囲で調節することができる。本発明にとって重要なことは、触媒が少なくとも部分的に酸性の特性を有することである。
【0140】
適用の種類に応じて、触媒は粉末として、または成形体として存在している。成形体のマトリックスの化合物は十分な機械的安定性を保証するが、しかし触媒の活性成分への分子の自由な接近は該マトリックスの十分な多孔度により保証される。そのような成形体の製造は文献公知であり、かつ従来技術により記載されている。
【0141】
有利な反応の実施
アルキル化は、芳香族化合物(芳香族化合物の混合物)とオレフィン(の混合物)とを適切な反応帯域で触媒と接触させることにより反応させ、反応後に反応混合物を後処理し、かつこうして有価生成物が得られるように実施する。
【0142】
適切な反応帯域はたとえば管型反応器または撹拌反応器である。触媒が固体の形で存在している場合、これは懸濁液(スラリー)として、固定床として、または流動床として使用することができる。触媒反応による蒸留として実施することも可能である。
【0143】
反応相手は液状および/または気体状で存在する。
【0144】
反応温度は一方ではオレフィンのできる限り完全な反応が行われ、かつ他方ではできる限り少ない副生成物が生じるように選択する。温度操作の選択はさらに、選択した触媒に決定的に依存する。50℃〜500℃(有利には80〜350℃、特に有利には80〜250℃)の反応温度を適用することができる。
【0145】
反応の圧力は、選択された運転法(反応器タイプ)に合わせ、かつ0.1〜100バールの間であり、触媒負荷(WHSV)は0.1〜100の間で選択する。通常、固有圧力(系の蒸気圧)またはそれ以上で作業する。
【0146】
反応相手は場合により不活性の物質により希釈することができる。不活性の物質は有利にはパラフィンである。
【0147】
芳香族化合物:オレフィンのモル比は通常、1:1〜100:1(有利には2:1〜20:1)に調節する。
【0148】
芳香族の使用物質
式Ar−Rの全ての芳香族炭化水素が可能であり、その際、Arは単環式もしくは二環式の芳香族炭化水素基であり、かつRはH、C−、有利にはC−アルキル、OH、ORなど、有利にはHまたはC−アルキルから選択されている。ベンゼンおよびトルエンが有利である。
【0149】
工程d)
工程d)では工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和する。
【0150】
アルキルアリールは、
1)スルホン化(たとえばSO、オレウム、クロロスルホン酸などを用いる、有利にはSOを用いる)および
2)中和(たとえばNa、K、NH、Mgの化合物を用いる、有利にはNaの化合物を用いる)
により、アルキルアリールスルホネートへと反応させる。スルホン化および中和は文献に十分に記載されており、かつ従来技術により詳細に説明されている。スルホン化は有利には流下薄膜型反応器中で実施されるが、しかしまた、撹拌反応器中で行うこともできる。SOを用いたスルホン化はオレウムを用いたスルホン化よりも有利である。
【0151】
混合物
上記の方法により製造された化合物は、そのままでさらに加工するか、または予め線状のアルキルアリールと混合し、かつ次いでその後の加工に供給する。この方法を簡素化するために、上記のその他のアルキルアリールを製造するために使用される原料を、直接、本方法の原料と混合し、かつ次いで本発明による方法を実施することが有意義であり得る。従ってたとえば本発明による方法からのわずかに分岐したオレフィン流の混合物を、線状のオレフィンと混合することが有意義である。アルキルアリールスルホン酸もしくはアルキルアリールスルホネートの混合物もまた適用可能である。混合は常に、アルキルアリールから製造される界面活性剤の生成物の品質を最適化することに関して実施される。
【0152】
工程d)では、スルホン化の前に付加的に、線状のアルキルベンゼンを添加することができる。その量は、0〜60質量%、有利には0〜50質量%、特に0〜30質量%である。工程b)で低沸点成分の分離を実施せず、かつ工程c)およびe)で線状化合物の添加を行わない場合、最低量は5質量%、有利には10質量%である。添加される線状化合物の全量のための前記の記載を参照されたい。線状のアルキルベンゼン中で、アルキル基の鎖長は有利には工程c)からアルキル芳香族化合物中で得られるアルキル基の鎖長に相応する。(C10−アルキル)−ベンゼンに有利には線状(C10−アルキル)−ベンゼンを添加し、相応して(C12−アルキル)−ベンゼンには線状の(C12−アルキル)−ベンゼンを添加する。
【0153】
アルキル化、スルホン化、中和に関する例示的な概要は、たとえばSurf. Sci. Ser.56(1996)、第2章、Marcel Dekker、New York中の”Alkylarylsulfonates:History, Manufacture, Analysis and Environmental Properties”およびここに含まれている参考文献に記載されている。
【0154】
工程e)
工程e)では、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートをさらに線状のアルキルアリールスルホネートと混合することができる。
【0155】
工程e)では有利には線状アルキルアリールスルホネートを0〜60質量%、特に有利には0〜50質量%、特に0〜30質量%添加混合する。工程b)において低沸点成分の分離を実施せず、かつ工程c)およびd)において、線状化合物の添加を行わない場合、最低量は有利には5質量%、好ましくは少なくとも10質量%である。線状化合物を添加する際の前記の有利な全量を参照されたい。
【0156】
全ての質量の記載はそのつど先行する工程で得られた混合物に対する。
【0157】
本発明は前記の方法により得られるアルキルアリールスルホネートにも関する。
【0158】
本発明によるアルキルアリールスルホネートは有利には界面活性剤として、特に洗剤および洗浄剤中で使用する。本発明は、前記のとおり、通常の含有物質以外にアルキルアリールスルホネートを含有する洗剤および洗浄剤にも関する。
【0159】
本発明による洗剤および洗浄剤の含有物質に関する、限定的ではない例は、たとえばWO02/44114およびWO02/14266に記載されている。
【0160】
本発明を以下の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0161】
例1
84.2質量%の全ブテン含有率を有し、ならびに1−ブテン対2−ブテンのモル比1:1.06を有するブタジエン不含のC−フラクションを40℃および10バールで連続的にRe/Al−不均一系触媒を備えた管型反応器中に導通する。触媒の負荷は実施例中で4500kg/mhである。反応搬出物は蒸留により分離され、かつ次の成分を含有する(質量%での記載):
エテン1.15%、プロペン18.9%、ブタン15.8%、2−ブテン19.7%、1−ブテン13.3%、i−ブテン1.0%、2−ペンテン19.4%、メチルブテン0.45%、3−ヘキセン10.3%。生成物から蒸留により2−ペンテンおよび3−ヘキセンが>99質量%の純度で得られる。
【0162】
例2
固定床法での3−ヘキセンの連続的な二量化
触媒:NiO 50%、SiO 34%、TiO 13%、Al(DE4339713による)3%、1〜1.5mmのスプリットとして使用(100ml)、160℃で24時間、N中でコンディショニング、
反応器:等温、直径16mmの反応器、
WHSV:0.25kg/l・h、
圧力:20〜25バール、
温度:100〜160℃。
【0163】
【表1】

【0164】
集めた生成物をC12の純度が99.9質量%になるまで蒸留した。
【0165】
例3
ラフィネートIIのメタセシスからの2−ペンテンを例2と同様に、連続的にNi−不均一系触媒を用いて二量化した。生成物を精製蒸留することにより、純度99.5%を有するデセンフラクションが得られた。
【0166】
例4
ラフィネートIIのメタセシスからの2−ペンテンおよび3−ヘキセンの混合物を例2および例3と同様に連続的に二量化した。生成物を精製蒸留することにより、純度99.5%を有するデセン/ウンデセン/ドデセンフラクションが得られた。
【0167】
例5
3−ヘキセン100gをトリエチルアルミニウム3gと反応させる。22時間後、温度220℃で反応を終了する。
【0168】
得られた生成物混合物中で三量体に対する二量体のモル比は58である。2−ブチル−1−オクテンの割合は69%である。分岐度は1.03である。2倍および3倍分岐した異性体の割合は2%である。
【0169】
例6
循環空気炉中に存在する管型反応器に、粒径0.7〜1mmの触媒スプリット(SiO:Al=24.5を有するH型モルデナイト60%、CondeaのPural(R)SB 40%により成形)32gを充填し、かつ500℃で6時間、活性化した。次いで系を冷却し、例5からのベンゼン:ドデセンからなる供給流(10:1モル)をオーバーフローさせ、0.62g/g触媒hで負荷し、かつ10倍量の循環流を調節した。最後に反応器を180℃(単相の液相、液圧30バール)に加熱し、かつ時間に関する排出流中の原料および生成物の含有率をGCにより検出した。得られたC18−アルキルアリール混合物を蒸留により精製し、かつガスクロマトグラフィー質量分析法によるカップリングおよびH/13C−NMRを用いて分析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、C1012−オレフィンを分離し、かつ分離したC1012−オレフィンに対して5〜30質量%のC1012−オレフィンの低沸点成分を分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、工程b)で得られるC1012−オレフィン混合物に対して0〜60質量%の線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、工程c)で添加混合を行わない場合には、スルホン化の前に付加的に、工程c)で得られたアルキル芳香族化合物に対して0〜60質量%の線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程c)およびd)で添加混合を行わない場合には、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートに対して0〜60質量%の線状アルキルアリールスルホネートと混合する
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法。
【請求項2】
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、かつ場合によりC1012−オレフィンを分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、スルホン化の前に付加的に、線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、線状アルキルアリールスルホネートと混合し、
その際、工程c)、d)およびe)の少なくとも1つの工程で、そのつど先行する工程で得られた混合物に対して5〜60質量%の線状化合物を添加し、かつ添加の合計が80質量%を超えることがない
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法。
【請求項3】
工程a)におけるメタセシス触媒が、元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII副族の金属の化合物から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b)で、元素の周期表の第VIII副族の少なくとも1の元素を含有する二量化触媒を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程b)で得られた二量体のオレフィン混合物が1〜2.5の範囲の平均分岐度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程b)で得られた二量体のオレフィン混合物が1〜2.0の範囲の平均分岐度を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程c)で、アルキル基中で1〜3個の炭素原子がH/C指数1を有するアルキル芳香族化合物を生じるアルキル化触媒を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法で得られる、中間生成物としてのアルキルアリール。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により得られるアルキルアリールスルホネート。
【請求項10】
界面活性剤としての、請求項9記載のアルキルアリールスルホネートの使用。
【請求項11】
洗剤および洗浄剤としての請求項10記載の使用。
【請求項12】
通常の含有物質以外に、請求項9記載のアルキルアリールスルホネートを含有する洗剤および洗浄剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、C1012−オレフィンを分離し、かつ分離したC1012−オレフィンに対して5〜30質量%のC1012−オレフィンの低沸点成分を分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物に対して0〜60質量%の線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、工程c)で添加混合を行わない場合には、スルホン化の前に付加的に、工程c)で得られたアルキル芳香族化合物に対して0〜60質量%の線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程c)およびd)で添加混合を行わない場合には、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートに対して0〜60質量%の線状アルキルアリールスルホネートと混合する
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法。
【請求項2】
a)2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを含有するオレフィン混合物を製造するためのメタセシス触媒を用いてC−オレフィン混合物を反応させ、かつ場合により2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを分離し、
b)工程a)で得られた2−ペンテンおよび/または3−ヘキセンを二量化触媒の存在下にC1012−オレフィンを含有する混合物へと二量化し、かつ場合によりC1012−オレフィンを分離し、
c)工程b)で得られたC1012−オレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下に芳香族炭化水素と反応させてアルキル芳香族化合物を形成し、その際、反応の前に付加的に、線状オレフィンを添加することができ、
d)工程c)で得られたアルキル芳香族化合物をスルホン化し、かつアルキルアリールスルホネートへと中和し、その際、スルホン化の前に付加的に、線状アルキルベンゼンを添加することができ、
e)場合により、工程d)で得られたアルキルアリールスルホネートを、線状アルキルアリールスルホネートと混合し、
その際、工程c)、d)およびe)の少なくとも1つの工程で、そのつど先行する工程で得られた混合物に対して5〜60質量%の線状化合物を添加し、かつ添加の合計が80質量%を超えることがない
ことにより、アルキルアリールスルホネートを製造する方法。
【請求項3】
工程a)におけるメタセシス触媒が、元素の周期表の第VIb族、第VIIb族または第VIII副族の金属の化合物から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b)で、元素の周期表の第VIII副族の少なくとも1の元素を含有する二量化触媒を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程b)で得られた二量体のオレフィン混合物が1〜2.5の範囲の平均分岐度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程b)で得られた二量体のオレフィン混合物が1〜2.0の範囲の平均分岐度を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程c)で、アルキル基中で1〜3個の炭素原子がH/C指数1を有するアルキル芳香族化合物を生じるアルキル化触媒を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2006−511578(P2006−511578A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562814(P2004−562814)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014712
【国際公開番号】WO2004/058692
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】