説明

変更された性質を有するα−アミラーゼ突然変異体

【課題】親Termamyl様α−アミラーゼの新規な変異体の提供。
【解決手段】本発明は、親Termamyl様α−アミラーゼの変異体(突然変異体)に関し、この変異体はα−アミラーゼ活性を有しかつ、特に高い温度および/または低いpH、および/または低いCa2+において、前記親α−アミラーゼに関して変更された安定性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、親Termamyl様α−アミラーゼの変異体(変異体)に関する。この変異体は、α−アミラーゼ活性を有しかつ前記親α−アミラーゼに関して下記の性質の少なくとも1つにおいて変更を示す:例えば、特に高い温度および/または低いpH条件、特に低いカルシウム濃度における、安定性。本発明の変異体は、澱粉の変換、エタノール製造、洗濯、皿洗浄、硬質表面のクリーニング、繊維材料の糊抜き、および/または甘味剤の製造に適する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
α−アミラーゼ(α−1,4−グルカン−4−グルカノヒドロラーゼ、E.C. 3.2.1.1) は、澱粉および他の直鎖状および分枝鎖状の1,4−グリコシドオリゴ−および多糖類の加水分解を触媒する、酵素のグループを構成する。
【発明の概要】
【0003】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、親Termamyl様α−アミラーゼを提供することである。この変異体は、対応する親α−アミラーゼ、すなわち、非変異のα−アミラーゼに比較して、α−アミラーゼ活性を有しかつ前記親α−アミラーゼに関して下記の性質の少なくとも1つにおいて変更を示す:例えば、特に高い温度および/または低いpH条件、特に低いカルシウム濃度における、安定性。
【0004】
命名法
本発明の説明および特許請求の範囲において、アミノ酸残基についての慣用の1文字コードおよび3文字コードを使用する。言及を容易にするために、下記の命名法を使用することによって、本発明のα−アミラーゼ変異体を記載する:1または2以上のもとのアミノ酸;1または2以上の位置;1または2以上の置換されたアミノ酸。
【0005】
本発明によれば、例えば、位置30におけるアスパラギンによるアラニンの置換は次のように示される:
Ala30Asn または A30N
同一位置におけるアラニンの欠失は次のように示される:
Ala* またはA30*
そして追加のアミノ酸残基、例えば、リシンの挿入は次のように示される:
Ala30AlaLysまたはA30AK
アミノ酸残基、例えば、アミノ酸残基30〜33の構成的ストレッチの欠失は、(30−33)* または Δ(A30−N33) として示される。
【0006】
特定のα−アミラーゼが他のα−アミラーゼと比較して「欠失」を含有しかつこのような位置において挿入を行う場合、これは位置36におけるアスパラギン酸挿入について次のように示される:
*36Aspまたは *36D
多重変異はプラス符号による分離される、すなわち:
Ala30Asp + Glu34Ser または A30N+E64S
これは位置30および34において、それぞれ、アスパラギンおよびセリンによりアラニンおよびグルタミン酸を置換する変異を表す。
【0007】
1または2以上の内のいずれかのアミノ酸残基を所定の位置に挿入するとき、それは次のように示される:
A30N、Eまたは
A30NまたはA30E
さらに、変更に適当な位置は本明細書において特定の変更を示唆しないで同定されるとき、その位置に存在するアミノ酸残基を任意のアミノ酸残基で置換させることができることを理解すべきである。こうして、例えば、位置30におけるアラニンの変更を説明するが、特定せず、アラニンを欠失させるか、あるいは任意の他のアミノ酸、すなわち、R、N、D、A、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、Vの任意の1つで置換することができることを理解すべきである。
【0008】
さらに、「30X」は下記の置換の任意の1つを意味する:A30R、A30N、A30D、A30C、A30Q、A30E、A30G、A30H、A30I、A30L、A30K、A30M、A30F、A30P、A30S、A30T、A30W、A30Y、またはA30V;または短縮して:A30R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、V。
親酵素 − ナンバリングに使用する − がその位置における置換のために示唆された問題のアミノ酸残基を既に有する場合、下記の命名法を使用する:
「X30N」または「X30N、V」、この場合において、例えば、NまたはVの1つが野生型で存在する。こうして、他の対応する親酵素が位置30において「Asn」または「Val」に置換されていることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】図1-1は、5つの親Termamyl様α−アミラーゼのアミノ酸配列のアラインメントである。一番左の番号は、次のように代表的アミノ酸配列を表示する: 1:配列番号4 (SP722) 2:配列番号2 (SP690) 3:配列番号10 (BAN) 4:配列番号8 (BLS) 5:配列番号6 (BSG)
【図1−2】第1-2図は、図1-1の続きである。
【図1−3】第1-3図は、図1-2の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な開示
本発明の目的は、親Termamyl様α−アミラーゼの変異体を提供することである。この変異体はα−アミラーゼ活性を有しかつ、高い温度および/または低いpH、特に低いカルシウム濃度において、変更された安定性を示す。
【0011】
Termamyl様α−アミラーゼ
バシラス(Bacillus)種による産生される多数のα−アミラーゼは、アミノ酸レベルで高度に相同性(同一性)である。既知のバシラス(Bacillus)α−アミラーゼの同一性を下記表1において見出すことができる:
【0012】
【表1】

【0013】
例えば、配列番号8に示すアミノ酸配列を含んでなるバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ(TermamylTMとして商業的に入手可能である)は、配列番号10に示すアミノ酸配列を含んでなるバシラス・アムロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼと約81%相同性であり、そして配列番号6に示すアミノ酸配列を含んでなるバシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)α−アミラーゼ(BSG)と約65%相同性である。
【0014】
さらに、相同的α−アミラーゼはWO 95/6397に開示されかつ、それぞれ、配列番号2および配列番号4に描写されているSP690およびSP722を包含する。他のアミロースはバシラス(Bacillus)種に由来し、配列番号12に示されているAA560、およびバシラス(Bacillus)種に由来し、配列番号13に示され、Tsukamoto他、Biochemical and Biophysical Research Communications 151(1988)、pp. 25−31に記載されている#707である。
KSM AP1378 α−アミラーゼはWO 97/00324(KAO Corporation)に開示されている。
【0015】
なお他の相同的α−アミラーゼは、EP 052666(ATCC 27811)に記載されているバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)株により産生されるα−アミラーゼ、およびWO 91/00353およびWO 94/18314において同定されているα-アミラーゼを包含する。他の商業的Termamyl様α−アミラーゼは下記の商品名で販売されている製品の中に含まれる:OptithermTMおよびTakathermTM (Solvay);MaxamylTM (Gist−brocades/ Genencor)、Spezym AATMおよびSpezyme Delta AATM (Genencorから入手可能である)、およびKeistaseTM (Daiwaから入手可能である)、Dex lo、GC 521(Genencorから入手可能である)およびUltraphlow(Enzyme Biosystemsから入手可能である)。
【0016】
これらのα−アミラーゼ間で見出される実質的な相同性のために、それらはα−アミラーゼの同一クラス、すなわち、「Termamyl様α−アミラーゼ」のクラスに属すると考えられる。
したがって、本発明の関係において、用語「Termamyl様α−アミラーゼ」は、アミノ酸レベルにおいて、TermamylTM、すなわち、本明細書において配列番号8に示すアミノ酸を有するバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼに対して実質的な同一性を示すα−アミラーゼ、特にバシラス(Bacillus)α−アミラーゼを示すことを意図する。
【0017】
換言すると、本明細書において配列番号2、4、6、8、10、12および13に示すアミノ酸配列を有する、すべての下記のα−アミラーゼは「Termamyl様α−アミラーゼ」であると考えられる。他のTermamyl様α−アミラーゼは、i) 配列番号2、4、6、8、10、12および13に示すアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%の相同性(同一性)を表示するα−アミラーゼ、および/または配列番号1、3、5、7、9から明らかであり、そしてこの明細書の上に特定したα−アミラーゼをコードするDNA配列に対してハイブリダイゼーションするDNA配列によりコードされるα−アミラーゼである(前記エンコーディング配列は、それぞれ、配列番号2、4、6、8、10および12に示すアミノ酸配列をコードする)。
【0018】
相同性
相同性は、第2配列から第1配列の由来を示す2つの配列間の同一性の程度として決定することができる。相同性は、この分野において知られているコンピュータープログラム、例えば、GCGプログラムパッケージで提供されるGAP(前述した)により決定することができる。こうして、Gap GCGv8を同一性についてのデフォルトスコアリングマトリックスおよび下記のデフォルトパラメーターとともに使用することができる:5.0のGAP発生ペナルティーおよび0.3のGAPエクステンションペナルティー、それぞれ核酸配列の比較のために、および3.0のGAP発生ペナルティーおよび0.1のGAPエクステンションペナルティー、それぞれタンパク質配列の比較のために。GAPはNeedlemanおよびWunsh、(1970)、J. Mol. Biol. 48、p. 443−453の方法を使用してアラインメントを作り、同一性を計算する。
【0019】
Termamyl(配列番号8)と、例えば、他のα−アミラーゼとの間の構造的アラインメントを使用して、他のTermamyl様α−アミラーゼ中の同等/対応位置を同定することができる。前記構造的アラインメントを得る1つの方法は、ギャップペナルティーのデフォルト値、すなわち、3.0のギャップ発生ペナルティーおよび0.1のギャップエクステンションペナルティーを用いて、GCGパッケージからパイル・アップ(Pile Up)プログラムを使用することである。他の構造的アラインメントは、疎水性クラスター分析(Gaboriaud他、(1987)、FEBS LETTERS 224、pp. 149−155)および逆スレッディング(reverse threading)(Hube, T;Torda, AE、PROTEIN SCIENCE Vol. 7、No. 1、pp. 142−149(1998))を包含する。
【0020】
ハイブリダイゼーション
上記Termamyl様α−アミラーゼの特性決定において使用するオリゴヌクレオチドプローブは、問題のα−アミラーゼの完全なまたは部分的ヌクレオチドまたはアミノ酸配列をベースとして適当に調製することができる。
ハイブリダイゼーションを試験するために適当な条件は、5×SSC中で前ソーキングし、および20%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、50 mMリン酸ナトリウム、pH 6.8、および50 mgの変性超音波処理仔ウシ胸腺DNAの溶液の中で40 ℃において1時間プレハイブリダイゼーションし、次いで同一溶液に100 mM ATPを40 ℃において18時間補充し、次いで2×SSC、0.2%SDSの中で30分間40 ℃において(低いストリンジェンシイ)、好ましくは50 ℃において(中程度のストリンジェンシイ)、より好ましくは65℃において(高いストリンジェンシイ)、なおより好ましくは75 ℃において(非常に高いストリンジェンシイ)フィルターを3回洗浄することを包含する。ハイブリダイゼーション法について、下記の文献にいっそう詳細に記載されている:Sambrook他、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、1989。
【0021】
本発明の関係において、「に由来する」は問題の生物の株により産生されたまたは産生可能なα−アミラーゼばかりでなく、かつまたこのような株から単離されたDNA配列によりコードされ、前記DNA配列で形質転換された宿主生物の中で産生されたα−アミラーゼを示すことを意図する。最後に、この用語は、合成および/またはcDNA由来のDNA配列によりコードされかつ問題のα−アミラーゼの同定特性を有する、α−アミラーゼを示すことを意図する。また、この用語は、親α−アミラーゼが天然に存在するα−アミラーゼの変異体、すなわち、天然に存在するα−アミラーゼの1または2以上のアミノ酸残基の修飾(挿入、置換、欠失)の結果である変異体であることができることを示すことを意図する。
【0022】
親Termamyl様α−アミラーゼ
本発明によれば、上に定義したTermamyl様α−アミラーゼのすべてを親(すなわち、バックボーン)α−アミラーゼとして使用することができる。本発明の好ましい態様において、親α−アミラーゼはバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)、例えば、上に言及したもの1つ、例えば、配列番号8に示すアミノ酸配列を有するバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼに由来する。
【0023】
親ハイブリッドTermamyl様α−アミラーゼ
親α−アミラーゼ(すなわち、バックボーンα−アミラーゼ)は、また、ハイブリッドα−アミラーゼ、すなわち、少なくとも2つα−アミラーゼに由来する部分的アミノ酸配列の組み合わせを含んでなるα−アミラーゼであることができる。
【0024】
親ハイブリッドα−アミラーゼは、アミノ酸の相同性(同一性)および/またはDNAハイブリダイゼーション(上に定義した)をベースとして、Termamyl様α−アミラーゼのファミリーに属することを決定できるものであることができる。この場合において、ハイブリッドα−アミラーゼは典型的にはTermamyl様α−アミラーゼの少なくとも1つの部分と、微生物(細菌または真菌)および/または哺乳動物由来のTermamyl様α−アミラーゼまたは非Termamyl様α−アミラーゼから選択される1または2以上の他のα−アミラーゼの1または2以上の部分とから構成される。
【0025】
こうして、親ハイブリッドα−アミラーゼは、少なくとも2つTermamyl様α−アミラーゼから、または少なくとも1つのTermamyl様および少なくとも1つの非Termamyl様細菌α−アミラーゼからに由来する、部分的アミノ酸配列の組み合わせを含んでなることができる。部分的アミノ酸配列が由来するTermamyl様α−アミラーゼは、本明細書において言及する特定のTermamyl様α−アミラーゼの任意のものであることができる。
【0026】
例えば、親α−アミラーゼは、バシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)の株に由来するα−アミラーゼのC末端部分と、バシラス・アムロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)の株またはバシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)の株に由来するN末端部分とを含んでなる。例えば、親α−アミラーゼはバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼのC末端部分の少なくとも430アミノ酸残基を含んでなることができ、そして、例えば、下記のアミノ酸セグメントを含んでなることができる:
【0027】
a) 配列番号10に示すアミノ酸配列を有するバシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼの37 N末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメントおよび配列番号8に示すアミノ酸配列を有するバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ、またはTermamyl配列と同一であるハイブリッドTermamyl様α−アミラーゼ、すなわち、配列番号8に示すバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ、ただしN末端の35アミノ酸残基(成熟タンパク質の)はBAN(成熟タンパク質)のN末端の33残基により置換されている、すなわち、配列番号10に示すバシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼ、の445 C末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント;または
【0028】
b) 配列番号6に示すアミノ酸配列を有するバシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)α−アミラーゼの68 N末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメントおよび配列番号8に示すアミノ酸配列を有するバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの415 C末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸セグメント。
【0029】
他の適当な親ハイブリッドα−アミラーゼは、BAN、バシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼのN末端(成熟タンパク質のアミノ酸1〜300)およびTermamylからのC末端(成熟タンパク質のアミノ酸301〜483)を構築するWO 96/23874(Novo Nordiskから)に前に記載されたものである。
【0030】
本発明の好ましい態様において、親Termamyl様α−アミラーゼは配列番号8または配列番号10のハイブリッドα−アミラーゼである。詳しくは、親ハイブリッドTermamyl様α−アミラーゼは、配列番号8に示すバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼの445 C末端アミノ酸残基と、配列番号10に示すバシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)に由来するα−アミラーゼの37 N末端アミノ酸残基(これは適当には下記の突然変異体をさらに有することができる:H156Y+A181T+N190F+A209V+Q264S (配列番号8におけるナンバリングを使用する))とを含んでなるハイブリッドα−アミラーゼであることができる。後者の記載するハイブリッドは下記の実施例において使用し、LE174と呼ぶ。
【0031】
他の特別に意図する親α−アミラーゼは、より少ない変異を有するLE174、すなわち、下記のものを包含する:A181T+N190F+A209V+Q264S;N190F+A209V+Q264S;A209V+Q264S;Q264S;H156Y+N190F+A209V+Q264S;H156Y+A209V+Q264S;H156Y+Q264S;H156Y+A181T+A209V+Q264S; H156Y+A181T+Q264S;H156Y+Q264S;H156Y+A181T+N190F+Q264S; H156Y+A181T+N190F;H156Y+A181T+N190F+A209V。また、これらのハイブリッドは本発明の一部分である。
【0032】
好ましい態様において、親Termamyl様α−アミラーゼは、LE174、SP722、またはAA560であり、下記の任意のものを包含する:LE174+G48A+T49I+G107A+1210F;LE174+M197L;LE174+G48A+T49I+G107A+M197L+I201F;またはSP722+D183*+G184*;SP722+D183*+G184*+N195F;SP722+D183*+G184*+M202L;SP722+D183*+G184*+N195F+M202L;BSG+I181*+G182*;BSG+I181*+G182*+N193F;BSG+I181*+G182*+M200L;BSG+I181*+G182*+N193F+M200L;AA560+D183*+G184*;AA560+D183*+G184*+N195F;AA560+D183*+G184*+M202L;AA560+D183*+G184*+N195F+M202L。
【0033】
他の意図する親α−アミラーゼは、I201Fの中に追加の置換を有するLE174であるLE429を包含する。本発明によれば、LE335は、LE429に比較して、T49I+G107Aの中に追加の置換基を有するα−アミラーゼである;LE399はLE335+G48A、すなわち、G48A+T49I+G107A+I201Fを有するLE174である。
【0034】
変更された性質
下記の節において、本発明の変異体の中に存在する変異と、それから生ずる性質の望ましい変更(親Termamyl様α−アミラーゼの性質に関する)との間の関係を説明する。
前述したように、本発明は、特に高温においておよび/または低いpHにおいて、特に低いカルシウム濃度において、変更された性質(前述した)を有するTermamyl様α−アミラーゼに関する。
本発明の関係において、「高温」は70〜120 ℃、好ましくは80〜100 ℃、特に85〜95 ℃の温度を意味する。
【0035】
本発明の関係において、用語「低いpH」は4〜6、好ましくは4.2〜5.5、特に4.5〜5の範囲のpHを意味する。
本発明の関係において、用語「高いpH」は8〜11、特に8.5〜10.6の範囲のpHを意味する。
本発明の関係において、用語「低いカルシウム濃度」は60 ppm、好ましくは40 ppm、より好ましくは25 ppm、特に5 ppmより低いカルシウムの遊離カルシウムレベルを意味する。
特別に意図する変更された性質に関して特別に意図する親Termamyl様α−アミラーゼは、前述の親Termamyl様α−アミラーゼおよび親ハイブリッドTermamyl様α−アミラーゼである。
【0036】
TermamylTMα−アミラーゼは出発点として使用するが、例えば、SP722、BSG、BAN、AA560、SP690、KSM AP1378、および#707の中の対応する位置は開示した通りであり、特別にまた意図されると理解すべきである。
好ましい態様において、本発明の変異体は特に高温においておよび/または低いpHにおける変更された性質を有する。
1つの面において、本発明は、前述の変更された性質を有する変異体に関する。
【0037】
第1の面において、親Termamyl様α−アミラーゼの変異体は、49、60、104、132、161、170、176、179、180、181、183、200、203、204、207、212、237、239、250、280、298、318、374、385、393、402、406、427、430、440、444、447、482のグループから選択される1または2以上の位置(アミノ酸のナンバリングについて配列番号8を使用する)に変更を含んでなり、ここで
(a) 1または2以上の変更は独立的に
(i) 前記位置を占めるアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入、
(ii) 前記位置を占めるアミノ酸の欠失、または
(iii) 前記位置を占めるアミノ酸の異なるアミノ酸による置換、
であり、
(b) 変異体はα−アミラーゼ活性を有し、そして
(c) 各位置は配列番号8に示すアミノ酸配列を有する親Termamyl様α−アミラーゼのアミノ酸配列の位置に対応する。
【0038】
TermamylTM (配列番号8) において、このような対応する位置は次の通りある:T49;D60;N104;E132;D161;K170;K176;G179;K180;A181;D183;D200;X203;D204;D207;X212;K237;S239;E250;N280;X298;L318;Q374;E385;Q393;Y402;H406;L427;D430;V440;N444;E447;Q482。
SP722 (配列番号4) において、対応する位置は次の通りある:T51;D62;N106;D134;D163;X172;K179;G184;K185;A186;D188;D205;M208;D209;X212;L217;K242;S244;N255;N285;S303;X323;D387;N395;Y404;H408;X429;D432;V442;X446;X449;X484。
他の親α−アミラーゼの中の対応する位置は前述したようにアラインメントによる見出すことができ、第1図におけるアラインメントに示す。
【0039】
好ましい態様において、本発明の変異体(ナンバリングについて配列番号8 (TermamylTM)を使用する) は、下記の置換の1または2以上を有する:T49I;D60N;N104D;E132A、V、P;D161N;K170Q;K176R;G179N;K180T;A181N;D183N;D200N;X203Y;D204S;D207V、E、L、G;X212I;K237P;S239W;E250G、F;N280S;X298Q;L318M;Q374R;E385V;Q393R;Y402F;H406L、W;L427I;D430N;V440A;N444R、K;E447Q;Q482K。
【0040】
好ましい態様において、本発明の変異体(ナンバリングについて配列番号4 (SP722)を使用する) は、下記の置換の1または2以上を有する:T51I;D62N;N106D;D134A、V、P;D163N;X172Q;K179R;G184N;K185T;A186N;D188N;D205N;M208Y;D209S;X212V、E、L、G;L217I;K242P;S244W;N255G、F;N285S;S303Q;X323M;D387V;N395R;Y404Y;H408L、W;X429I;D432N;V442A;X446R、K;X449Q、K;X484K、ここでナンバリングのために配列番号4(SP722)を使用する。
好ましい二重、三重および多重変異 − ナンバリングの基準として配列番号8を使用する − は、下記の変異から成る群から選択される:
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

ここでナンバリングのために配列番号8を使用する。
【0060】
好ましい態様において、変異体は下記の置換基を有する:K170Q+D207V+N280S;E132A+D207V;D207E+E250G+H406L+L427I;D207V+L318M;D60N+D207V+L318M;T49I+E132V+V440A;T49I+K176R+D207V+Y402F;Q374R+E385V+Q393R;N190F+A209V+Q264S;G48A+T49I+G107A+I201F;T49I+G107A+I201F;G48A+T49I+I201F;G48A+T49I+G107A;T49I+I201F;T49I+G107A;G48A+T49I;D161N+G179N+K180T+A181N+D183N+D200N+D204S+K237P+S239W+H406W+D430N+N444K+E447Q+Q482K、ここでナンバリングのために配列番号8を使用する。
特定の変異体は下記のものを包含す:LE399;LE174+G48A+T49I+G107A;LE174+G48A+T49I+I201F;LE174+G48A+G107A+I201F;LE174+T49I+G107A+I201F; LE174+G48A+T49I;LE174+G48A;LE174+G107A+I201F; LE174+I201F、これらは特に本発明の意図する変異体である。
【0061】
安定性
本発明の関係において、高温(すなわち、70〜120 ℃)および/または極端なpH (すなわち、それぞれ、低いまたは高いpH、すなわち、pH 4〜6またはpH 8〜11) において、特に60 ppm以下の遊離(すなわち、非結合、したがって溶液中の)カルシウム濃度において、変更された安定性、特に改良された安定性(すなわち、より高いまたはより低い)を達成することに関して重要な変異は、「変更された性質」の節において列挙した変異の任意のものを包含する。安定性は、下記の「材料および方法」の節に記載するように測定することができる。
【0062】
本発明の変異体における一般的変異
1つの態様において、本発明の変異体は、上に概説した修飾に加えて1または2以上の修飾を含んでなることができる。こうして、α−アミラーゼ変異体の一部分の中に存在する1または2以上のプロリン(Pro)は、非プロリン残基で修飾および/または置換されたことが好都合であることがある。このような非プロリン残基は、任意の可能な、天然に存在する非プロリン残基、好ましくはアラニン、グリシン、セリン、トレオニン、バリンまたはロイシンであることができる。
【0063】
同様に、1つの態様において、親α−アミラーゼの中に存在する1または2以上のシステイン残基を非システイン残基、例えば、セリン、アラニン、トレオニン、グリシン、バリンまたはロイシンで置換することができる。
さらに、配列番号10のアミノ酸フラグメント185〜209に対応するアミノ酸フラグメントの中に存在する1または2以上のAspおよび/またはGluが、それぞれ、Asnおよび/またはGlnで置換されるように、本発明の変異体を、唯一の修飾としてまたは上に概説した修飾の任意と組み合わせて、修飾することができる。また、配列番号10のアミノ酸フラグメント185〜209に対応するアミノ酸フラグメントの中に存在する1または2以上のLys残基を、Termamyl様α−アミラーゼにおいて、Argで置換することも重要である。
【0064】
本発明は、上に概説した修飾の一または2以上を組込んだ変異体を包含することを理解すべきである。
さらに、下記の位置(ナンバリングのために配列番号8 (Termamyl)を使用する):M15、V128、A111、H133、W138、T149、M197、N188、A209、A210、H405、T412の1または2以上の中に、下記の単一、二重または三重または多重の変異を導入することが有利であることがある:M15X、特にM15T、L;V128X、特にV128E;H133X、特にH133Y;N188X、特にN188S、T、P;M197X、特にM197T、L;A209X、特にA209V;M197/W138F;M197T/W138Y;M15T/H133Y/N188S;M15/V128E/H133Y/N188S;E199C/S130C;D124C/R127C;H133Y/T149I;G475R、H133Y/S187D;H133Y/A209V。
【0065】
本発明のα−アミラーゼ変異体を製造する方法
遺伝子の中に変異を導入するいくつかの方法がこの分野において知られている。α−アミラーゼをコードするDNA配列のクローニングを簡単に説明した後、α−アミラーゼをコードする配列内の特異的部位において変異を発生させる方法を説明する。
【0066】
α−アミラーゼをコードするDNA配列のクローニング
この分野においてよく知られている種々の方法を使用して、問題のα−アミラーゼを産生する任意の細胞または微生物から、親α−アミラーゼをコードするDNA配列を単離することができる。第1に、研究すべきα−アミラーゼを産生する生物からの染色体DNAまたはメッセンジャーRNAを使用して、ゲノムDNAおよび/またはcDNAライブラリーを構成すべきである。
【0067】
次いで、α−アミラーゼのアミノ酸配列が知られている場合、均質な、標識化α−アミラーゼコード配列を合成し、問題の生物から調製したゲノムライブラリーからα−アミラーゼコードクローンを同定するために使用することができる。選択的に、低いストリンジェンシイのハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下に、α−アミラーゼコードクローンを同定するプローブとして、既知のα−アミラーゼ遺伝子に対して相同的な配列を含有する標識化オリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。
【0068】
α−アミラーゼコードクローンを同定するなお他の方法は、ゲノムDNAのフラグメントを発現ベクター、例えば、プラスミドの中に挿入し、生ずるゲノムDNAライブラリーでα−アミラーゼ陰性細菌を形質転換し、次いでα−アミラーゼの基質を含有する寒天上に、形質転換された細菌をプレートし、これにより同定すべきα−アミラーゼをクローンに発現させることを包含する。
【0069】
選択的に、酵素を発現するDNA配列を確立された標準的法、例えば、S. L. BeaucageおよびM. H. Caruthers、Tetrahedron Letters 22、1981、pp. 1859−1869に記載されているホスホロアミダイト法、またはMatthes他、The EMBO J. 3、1984、pp. 801−805に記載されている方法により合成的に調製することができる。ホスホロアミダイト法において、オリゴヌクレオチドを、例えば、自動化DNA合成装置中で合成し、精製し、アニールし、結合させ、適当なベクター中でクローニングする。
【0070】
最後に、DNA配列は混合ゲノムおよび合成起源、混合合成およびcDNA起源または混合ゲノムおよびcDNA起源であることができ、標準的技術に従い、合成、ゲノムまたはcDNA起源のフラグメント(適当ならば、全体のDNA配列の種々の部分に対応するフラグメント)をすることによって調製することができる。また、DNA配列は、例えば、下記の文献に記載されているように、特定のポリマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により調製することができる:米国特許第4,683,202号またはR. K. Saiki他、Science 239、1988、pp. 487−491。
【0071】
位置指定変異誘発
いったんα−アミラーゼコードDNA配列が単離され、そして望ましい変異部位が同定されると、合成オリゴヌクレオチドを使用して変異を導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは所望の変異部位をフランクするヌクレオチド配列を含有する;ある種の方法において、α−アミラーゼ遺伝子を保持するベクターの中に、α−アミラーゼコード配列を架橋する、DNAの一本鎖ギャップをつくる。次いで、所望の変異を支持する合成ヌクレオチドを一本鎖DNAの相同的部分に対してアニールする。
【0072】
次いで残留するギャップをDNAポリメラーゼI (クレノウフラグメント)で充填し、T4ポリメラーゼを使用して構築物を結合する。この方法の特定の例はMorinaga他、(1984) に記載されている。米国特許第4,760,025号には、カセットの小さい変更を実施することによって、多重変異をコードするオリゴヌクレオチドを導入することが記載されている。しかしながら、種々の長さの多数のオリゴヌクレオチドを導入することができるので、Morinaga法によりなおより大きい種類の変異を一度に導入することができる。
【0073】
α−アミラーゼコードDNA配列の中に変異を導入する他の方法は、NelsonおよびLong (1989) に記載されている。それは、PCR反応におけるプライマーの1つとして、化学的に合成されたDNA鎖を使用することによって、導入された所望の変異を含有するPCRフラグメントを発生させる3工程方法を包含する。PCR発生フラグメントから、制限エンドヌクレアーゼを使用する切断により、変異を保持するDNAフラグメントを単離し、発現プラスミドの中に再挿入する。
【0074】
本発明の変異体を製造する別法は、例えば、WO 95/22625(Affymax Technologies N.V.)またはWO 96/00343(Novo Nordisk A/S)に記載するような、遺伝子シャフリング、あるいは1または2以上の問題の変異、例えば、1または2以上の置換および/または1または2以上の欠失を含んでなるハイブリッドを生ずる他の対応する技術を包含する。本発明による1または2以上の所望の変異を有するハイブリッドを提供するために適当に使用できる、親α−アミラーゼの例は、EP 1,002,334(引用することによって本明細書の一部とされる)に開示されているKSM−K36およびKSM−K38α−アミラーゼを包含する。
【0075】
α−アミラーゼ変異体の発現
本発明によれば、前述の方法により、またはこの分野において知られている任意の他の方法により製造された変異体をコードするDNA配列は、発現ベクターを使用して、酵素形態で発現させることができる。発現ベクターは、典型的には、制御配列、例えば、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル、および、必要に応じてリプレッサー遺伝子または種々のアクチベーター遺伝子を含む。
【0076】
本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA配列を保持する組換え発現ベクターは、組換えDNA手順に好都合に付すことができる、任意のベクターであることができ、そしてベクターの選択はベクターを導入する宿主細胞にしばしば依存するであろう。こうして、ベクターは自律的に置換するベクター、すなわち、その複製が染色体の複製に対して独立である、染色体外実在物、例えば、プラスミド、バクテリオファージまたは染色体外因子、ミニクロモソームまたは人工染色体として存在するベクターであることができる。選択的に、ベクターは、宿主細胞の中に導入したとき、宿主細胞ゲノムの中に組込まれ、それが組込まれた1または2以上の染色体と一緒に複製できるものであることができる。
【0077】
ベクターにおいて、DNA配列は適当なプロモーター配列に操作可能に結合されるべきである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示す、任意のDNA配列であることができ、そして宿主細胞に対して相同的または異質であるタンパク質をコードする遺伝子に由来することができる。特に細菌宿主において、本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA配列の転写を指令するために適当なプロモーターの例は、次の通りである:
【0078】
大腸菌(E. coli)のlacオペロンのプロモーター、バシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)α−アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)α−アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)α−アミラーゼ遺伝子(amyQ)のプロモーター、バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)のxylAおよびxylB遺伝子のプロモーター、およびその他。
【0079】
真菌宿主における転写に有効なプロモーターは、下記の酵素をコードする遺伝子に由来するものである:アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryze)TAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)中性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(A. niger)グルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、アスペルギルス・オリゼ(A. oryze)アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリゼ(A. oryze)トリオースホスフェートイソメラーゼまたはアスペルギルス・ニヅランス(A. nidulanns)アセトアミダーゼ。
【0080】
また、本発明の発現ベクターは、適当な転写ターミネーターと、真核生物において、本発明のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA配列に操作可能に結合したポリアデニル化配列を含んでなることができる。停止およびポリアデニル化配列は、適当にはプロモーターと同一源に由来することができる。
さらに、ベクターは、問題の宿主細胞におけるベクターの発現を可能とするDNA配列を含むことができる。このような配列は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1およびpIJ702の複製起点である。
【0081】
また、ベクターは、選択可能なマーカー、例えば、その産物が宿主細胞中の欠陥を補足する遺伝子、例えば、バシラス・ズブチリス(B. subtilis)またはバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)からのdal遺伝子、または抗生物質耐性、例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリン耐性を付与する遺伝子を含むことができる。さらに、ベクターはアンピシリン選択マーカー、例えば、amdS、argB、niaDおよびsC、ヒグロマイシン耐性を発生させるマーカーを含むことができるか、あるいは選択は、例えば、WO 91/17243に記載されているように、共トランスフォーメーションにより達成させることができる。
【0082】
細胞内発現はいくつかの関係において、例えば、ある種の細菌を宿主細胞として使用するとき、好都合であることがあるが、発現は細胞外であることが一般に好ましい。一般に、本明細書に記載するバシラス(Bacillus)α−アミラーゼは発現されたプロテアーゼを培地の中に分泌させる前領域(preregion)を含む。望ましい場合、この前領域は異なる前領域またはシグナル配列で置換することができ、それぞれの前領域をコードするDNA配列の置換により好都合に達成することができる。
【0083】
それぞれ、α−アミラーゼ変異体をコードするDNA構築物、プロモーター、ターミネーターおよび他の因子を結合し、かつ複製に必要な情報を含有する適当なベクターの中にそれらを挿入する手順は当業者によく知られており、(例えば、下記の文献を参照のこと: Sambrook他、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、1989)。
【0084】
上に定義した本発明のDNA構築物または発現ベクターを含んでなる、本発明の細胞は、本発明のα−アミラーゼ変異体の組換え体の産生において宿主細胞として好都合に使用される。好都合には、宿主染色体の中にDNA構築物(1または2以上のコピーで)組込むことによって、変異体をコードする本発明のDNA構築物で細胞を形質転換することができる。DNA配列は細胞の中で安定に維持される可能性が高いので、この組込み一般に1つの利点であると考えられる。宿主染色体の中へのDNA構築物の組込みは、慣用法に従い、例えば、相同的または異質的組換えにより実施することができる。選択的に、異なる型の宿主細胞に関して前述したように発現ベクターで細胞を形質転換することができる。
【0085】
本発明の細胞は、高等生物、例えば、哺乳動物または昆虫の細胞であることがあるが、好ましくは微生物細胞、例えば、細菌または真菌(酵母を包含する)細胞である。
【0086】
適当な細菌の例は次の通りである:グラム陽性細菌、例えば、バシラス・ズブチリス(B. subtilis)、バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・レンツス(Bacillus lentus)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus sterothermophillus)、バシラス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、
【0087】
バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・ラウツス(Bacillus lautus)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・スリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)、またはストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)またはストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)、またはグラム陰性菌、例えば、大腸菌(E. coli)。細菌の形質転換は、例えば、プロトプラストの形質転換により、またはそれ自体知られている方法においてコンピテント細胞を使用することによって実施することができる。
【0088】
酵母生物は、サッカロマイセス(Saccharomyces)またはシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae)の種から好適に選択される。フィラメント状真菌は好都合にはアスペルギルス(Aspergillus)の種、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryze)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に属する。真菌細胞は、プロトプラストを形成し、プロトプラストを形質転換し、次いでそれ自体知られている方法に従い細胞壁を再生することを包含するプロセスにより形質転換することができる。アスペルギルス(Aspergillus)宿主細胞を形質転換する適当な手順は、EP 238 023に記載されている。
【0089】
なお他の面において、本発明は、本発明のα−アミラーゼ変異体を製造する方法に関し、この方法は変異体の産生を促進する条件下に前述の宿主細胞を培養し、細胞および/または培地から変異体を回収することを含む。
細胞の培養に使用する培地は、問題の宿主細胞を成長させ、そして本発明のα−アミラーゼ変異体を発現させるために適当な、任意の慣用の培地を包含する。適当な培地は商業的供給会社から入手可能であるか、あるいは発表された処方に従い調製することができる(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)のカタログに記載されているように)。
【0090】
宿主細胞から分泌されるα−アミラーゼ変異体は、よく知られている手順により培地から好都合に回収することができる。このような手順は、遠心または濾過により培地から細胞を分離し、硫酸アンモニウムのような塩により培地のタンパク質成分を沈降させ、次いでクロマトグラフィー、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、またはその他の使用を包含する。
【0091】
工業的応用
本発明のα−アミラーゼ変異体は、種々の工業的応用を可能とする価値のある性質を有する。特に、本発明の酵素変異体は洗浄、皿洗浄、および硬質表面のクローニング用洗浄剤組成物の成分として使用することができる。
変更された性質を有する本発明の変異体は、澱粉プロセス、特に澱粉の変換、特に澱粉の液化において使用することができる(例えば、下記文献を参照のこと、米国特許第3,912,590号、EP特許公開No. 252 730および63 909、WO 99/19467、およびWO 96/28567、すべての参考文献は引用することによって本明細書の一部とされる)。また、本発明の変異体に加えて、AMG、プルラナーゼ、および他のα-アミラーゼを含んでなる、澱粉を変換する組成物が意図される。
【0092】
さらに、本発明の変異体は、澱粉および全穀粒から甘味料およびエタノール(例えば、米国特許第5,231,017号を参照のこと、引用することによって本明細書の一部とされる)、例えば、燃料、飲料および工業用エタノールを製造するとき、特に有用である。
また、本発明の変異体は、繊維材料の糊抜きに使用することができる(例えば、下記文献を参照のこと、WO 95/21247、米国特許第4,643,736号、引用することによって本明細書の一部とされる)。
【0093】
洗浄剤組成物
前述したように、本発明の変異体は洗浄剤組成物の中に適当に混入することができる。洗浄剤組成物に関係する成分(例えば、洗濯または皿洗浄用洗浄剤)、このような洗浄剤組成物の中に変異体を配合するために適当な方法、および洗浄剤組成物の関係する型の例についてのそれ以上の詳細については、例えば、下記の文献を参照のこと:WO 96/23874およびWO 97/07202。
【0094】
本発明の変異体を含んでなる洗浄剤組成物は、下記の他の酵素の1または2以上をさらに含んでなることができる:プロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、他のデンプン分解酵素、グルコアミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、CGTアーゼおよび/またはセルラーゼ、マンナナーゼ(例えば、MannawayTM、Novozymes、デンマーク国)、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、キチナーゼ、ラッカーゼ、および/または他のα−アミラーゼ。
本発明のα−アミラーゼ変異体は好都合に使用される濃度において洗浄剤の中に混入することができる。本発明の変異体は、慣用レベルの洗浄剤を使用するとき、洗浄/皿洗浄液の1リットル当たり0.00001〜10 mg(純粋な、活性酵素タンパク質として計算する)のα−アミラーゼに対応する量で混入されることが現在考えられる。
【0095】
組成物
本発明は、また、本発明の変異体、および好ましい態様において、また、バシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)α−アミラーゼ(BSG)、特にそれらの変異体を含んでなる組成物に関する。
【0096】
他の態様において、組成物は、本発明の変異体に加えて、下記の酵素を含んでなる:グルコアミラーゼ、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に由来するグルコアミラーゼ(例えば、G1またはG2アスペルギルス・ニガー(A. niger)AMGは下記の文献に開示されている:Boel他(1984)、「アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からのグルコアミラーゼG1またはG2は2つの異なるが、精密に関係するmRNAから合成される」、EMBO J. 3(5)、p. 1097−1102)、またはそれらの変異体、特にWO 00/04136またはWO 01/04273に開示されている変異体またはWO 99/28448に開示されているタラロマイセス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)AMG。
【0097】
特定の組み合わせは、LE399およびWO 00/04136またはWO 01/04273に開示されている変異体、特に下記の置換の1または2以上を有する変異体:N9A、S56A、V59A、A119P、A246T、N313G、E342T、A393R、S394R、Y402F、E408R、特にすべての変異を有する変異体である。
ある態様において、本発明の組成物は、また、プルラナーゼ、特にバシラス(Bacillus)プルラナーゼを含んでなる。
【0098】
材料および方法
酵素:
pDN1528は、Termamylをコードする完全な遺伝子amyLを含有し、その発現はそれ自身のプロモーターにより指令される。さらに、このプラスミドはプラスミドpUB110からの複製起点oriと、クロラムフェニコールに対する耐性を付与するpC194からのcat遺伝子を含有する。pDN1528はWO 96/3874の第9図に示されている。
【0099】
方法:
低pHフィルターアッセイ
10μg/mlのクロラムフェニコールを含むTY寒天プレート上の酢酸セルロース(OE 67、Schleicher & Schuell、ドイツ国ダッセル)およびニトロセルロースフィルター(Protran−Ba 85、Schleicher & Schuell、ドイツ国ダッセル)のサンドイッチ上に、37℃において少なくとも21時間バシラス(Bacillus)ライブラリーをプレートする。酢酸セルロース層をTY寒天プレート上に配置する。
【0100】
各フィルターサンドイッチにプレーティング後であるが、インキュベーション前に針でしるしをつけて、フィルター上に陽性の変異体を局在化できるようにし、クエン酸塩緩衝液、pH 4.5を含む容器に、結合した変異体を有するニトロセルロースフィルターを移し、80 ℃において20分間(野生型バックボーン中の変異体についてスクリーニングするとき)または85 ℃において60分間(LE399バックボーン中の変異体をスクリーニングするとき)インキュベートした。コロニーを有する酢酸セルロースフィルターを温室においてTYプレート上で使用するまで貯蔵する。
【0101】
インキュベーション後、クエン酸塩緩衝液、pH 6.0中に1%アガロース、0.2%澱粉を含有するアッセイプレート上で、残留活性を検出する。フィルターサンドイッチと同一方法でニトロセルロースフィルターを有するアッセイプレートにしるしをつけ、50 ℃において2時間インキュベートした。フィルターを除去した後、アッセイプレートを10%ルゴール溶液で染色する。澱粉分解性変異体を暗青色バッ上にクグラウンド白色スポットとして検出し、次いで貯蔵プレート上で同定する。陽性変異体を第1スクリーンと同一条件下に2回再スクリーニングする。
【0102】
二次スクリーニング
再スクリーニング後、陽性形質転換体を貯蔵プレートから取り上げ、二次プレートアッセイにおいて試験する。陽性形質転換体を5 mlのLB+クロラムフェニコール中で37℃において22時間成長させる。各陽性形質転換体のバシラス(Bacillus)培養物および対照として対応するバックボーンを発現するクローンをクエン酸塩緩衝液、pH 4.5中で90 ℃においてインキュベートし、0、10、20、30、40、60および580分に試料を取る。3μlの試料をアッセイプレート上にスポッティングする。アッセイプレートを10%ルゴール溶液で染色する。改良された変異体はバックボーンよりも高い残留活性(アッセイプレート上でハローとして検出される)を有する変異体として見られる。改良された変異体をヌクレオチド配列決定により決定する。
【0103】
未精製変異体の安定性アッセイ
分析すべき変異体を発現するバシラス(Bacillus)培養物を、10 mlのLB+クロラムフェニコール中で37℃において21時間成長させる。800μlの培養物を200μlのクエン酸塩緩衝液、pH 4.5と混合する。試料の時点数に対応する数の70μlのアリコートをPCR管中で作り、PCR装置中で種々の時点(典型的には5、10、15、20、25および30分)について70 ℃(野生型バックボーン中の変異体について)または90 ℃(LE399中の変異体について)においてインキュベートする。
【0104】
0分の試料は高温においてインキュベートしない。「α−アミラーゼ活性についてのアッセイ」において後述するように、20 μlを200μlのα−アミラーゼPNP−G7基質MPR(Boehringer MannheimのカタログNo. 1660730)に移すことによって、試料中の活性を測定する。結果を活性百分率(0時点に関して)対時間としてプロットするか、あるいはある時間インキュベートした後の残留活性百分率として記載する。
【0105】
α−アミラーゼ変異体の発酵および精製
−80 ℃のストックからの10μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天上に、関係する発現プラスミドを収容するバシラス・ズブチリス(B. subtilis)株をストリークし、37℃において一夜成長させる。500 mlの震蘯フラスコ内の10μg/mlのクロラムフェニコールを示す100 mlのPS−1培地に、コロニーを移す。
PS−1培地の組成:
パール糖 100 g/l
ダイズ荒粉 40 g/l
Na2HPO4・12 H2O 10 g/l
PluronicTM PE 6100 0.1 g/l
CaCO3 5 g/l
培養物を37℃において270 rpmで5日間震蘯する。
【0106】
4500 rpmにおいて20〜25分間遠心することによって、細胞を細胞デブリを発酵槽から除去する。次いで、上清を濾過して完全に透明な溶液を得る。濾液を濃縮し、UFフィルター(10000カットオフ膜)上で洗浄し、緩衝液を20 mM酢酸塩pH 5.5に交換する。UF濾液をS−セファローズF.F.上に適用し、同一緩衝液中の0.2 M NaClを使用する段階的溶離により溶離を実施する。溶出液を10 mM Tris、pH 9.0に対して透析し、Q−セファローズF.F.上に適用し、6カラム体積の直線勾配0〜0.3 M NaClで溶離する。活性を含有する分画(Phadebasアッセイ)をプールし、pHをpH 7.5に調節し、0.5%w/v活性炭で5分間で処理することによって残留する色を除去する。
【0107】
精製された変異体の安定性の測定
同一構成を使用して、精製された変異体のすべての安定性の試験を実施する。この方法は次の通りである:酵素を関係する条件下にインキュベートする(1〜4)。試料が種々の時点において、すなわち、0、5、10、15および30分後に取り、アッセイ緩衝液(0.1 mlの50 mM Britton緩衝液pH 7.3)中の25倍に希釈し(すべての採取した試料について同一)、標準的条件pH 7.3、37 ℃においてファデバス(Phadebas)アッセイ(Pharmacia)を使用して活性を測定する。
インキュベーション前(0分)に測定した活性を参照(100%)として使用する。百分率の傾斜をインキュベーション時間の関数として計算する。例えば、30分のインキュベーション後の残留活性を表に示す。
【0108】
比活性の測定
ファデバス (Phadebas)アッセイ(Pharmacia)を使用して活性/mg酵素として、比活性を測定する。製造業者の使用説明書に従う(また、「α−アミラーゼ活性についてのアッセイ」参照)。
【0109】
α−アミラーゼ活性についてのアッセイ
1.ファデバスアッセイ
基質としてファデバス(PhadebasTM)錠剤を使用する方法により、α−アミラーゼ活性を測定する。ファデバス錠剤(PhadebasTM、Pharmacia Diagnosticにより供給される)は、ウシ血清アルブミンおよび緩衝物質と混合され、錠剤化された、架橋した青色澱粉ポリマーを含有する。
【0110】
単一の測定毎に、5 mlの50 mM Britton−Robinson緩衝液、0.1 mM CaCl2、pHをNaOHで問題の値に調節する)を含有する管中に、1つの錠剤を懸濁させる。試験を問題の温度において水浴中で実施する。試験すべきα−アミラーゼをx mlの50 mM Britton−Robinson緩衝液の中に希釈する。1 mlのこのα−アミラーゼ溶液を5 mlの50 mM Britton−Robinson緩衝液に添加する。澱粉をα−アミラーゼで加水分解して、可溶性の青色フラグメントを得る。α−アミラーゼ活性の関数として、生ずる青色溶液の吸収を620 nmにおいて分光光度測定的に測定する。
【0111】
10または15分のインキュベーション(試験時間)後に測定する620 nmにおける吸収は620 nmにおいて0.2〜2.0吸収の範囲であることが重要である。この吸収範囲において、活性と吸収との間に線形性が存在する(ランバート−ベールの法則)。したがって、酵素の希釈をこの基準に適合するように調節しなくてはならない。特定した組の条件 (温度、pH 、反応時間、緩衝条件)下に、1 mgの所定のα−アミラーゼはある量の基質を加水分解し、青色が発生するであろう。色強度を620 nmにおいて測定する。測定した吸収は、所定の組の条件下における問題のα−アミラーゼの比活性(活性/mgの純粋なα−アミラーゼタンパク質)に直接比例する。
【0112】
2.別法
PNP−G7基質を使用する法により、α−アミラーゼ活性を測定する。PNP−G7は、p−ニトロフェニル−α,D−メトヘプタオシドの略号であり、エンド−アミラーゼにより切断することができるブロックドオリゴ糖である。切断後、キットの中に含まれているα−グルコシダーゼは基質を加水分解して遊離PNP分子を解放し、この分子は黄色を有し、λ=405 nm(400〜420 nm)における可視分光測定により測定することができる。PNP−G7基質およびα−グルコシダーゼを含有するキットは、Boehringer Mannheim(カタログNo. 1054635)により製造されている。
【0113】
試薬溶液を調製するために、供給業者が推奨するように、10 mlの基質/緩衝液を50 mlの酵素/緩衝液に添加する。20μlの試料を96ウェルのマイクロタイタープレートに移し、25 ℃においてインキュベートすることによって、アッセイを実施する。25 ℃に前もって平衡化した200μlの試薬溶液を添加する。この溶液を混合し、1分間前インキュベートし、OD 405 nmにおける吸収を30秒毎に4分間にわたってELISAリーダーにより測定する。
時間従属的吸収曲線の勾配は、所定の条件下に問題のα−アミラーゼの活性に直接比例する。
【実施例】
【0114】
実施例1
親酵素と比較した、低いpH 、高温および低いカルシウムイオン濃度において改良された安定性を有するバシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ変異体の、誤りがちのPCR変異誘発による、構築。
【0115】
誤りがちのPCR変異誘発およびライブラリーの構築
親バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼの低いpHおよび低いカルシウム濃度における安定性を改良するために、誤りがちのPCR変異誘発を実施した。野生型バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ遺伝子をコードするプラスミドpDN1528を鋳型として使用して、誤差の割合の増加がランダム点変異に導くPCR条件下に、下記のプライマーを使用して、この遺伝子を増幅した:22149:5’−CGA TTG CTG ACG CTG TTA TTT GCG−3’ (配列番号14)および24814:5’−GAT CAC CCG CGA TAC CGT C−3’ (配列番号15)。利用したPCR条件は次の通りであった:10 mM Tris HCl、pH 8.3、50 mM KCl、4 mM MgCl2、0.3 mM MnCl2、0.1 mM dGTP/dATP、0.5 mM dTTP/dCTP、および2.5単位のTaqポリメラーゼ/100μlの反応。
【0116】
生ずるPCRフラグメントをゲル上で精製し、下記のプライマーを使用するpDN1528のPCR増幅によりつくられたゲル精製ベクターフラグメントとともにPCRをベースとするマルチマー化工程において使用て、挿入フラグメントに対するオーバーラップを形成した:#24:5’−GAA TGT ATG TCG GCC GGC AAA ACG CCG GTG A−3’ (配列番号16)および#27:5’−GCC GCC GCT GCT GCA GAA TGA GGC AGC AAG−3’ (配列番号17)。マルチマー化反応を引き続いてバシラス・ズブチリス(B. subtilis)の中に導入した(Shafikhani他、Biotechniques、23(1997)、304−310)。
【0117】
スクリーニング
前述の誤りがちのライブラリーを低pHフィルターアッセイにおいてスクリーニングした(「材料および方法」参照)。再スクリーニング時に陽性と試験されるクローンを二次スクリーニングに付して、材料および方法に記載されている液体アッセイにおいて安定性についてスクリーニングした。
【0118】
結果:
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
実施例2
親酵素と比較して、低いpHおよび低いカルシウムイオン濃度において改良された安定性への実施例1から新しい(非野生型)バックボーンへの変異の選択の、位置指定変異誘発による、転移。
【0122】
位置指定変異誘発
KE493(K176R+D207V+Y402F)からの変異をLE399に転移させて、LE495を生成した。これはオーバーラップPCR法による実施した(KirchhoffおよびDesrosiers、PCR Methods and Applications、2(1933)、301−304)。
【0123】
下記のプライマーを使用するLE399鋳型の増幅により、2つのオーバーラップPCRフラグメントを発生させた:フラグメントA:#312 Mut176 5’−CCC GAA AGC TGA ACC GCA TCT ATA GGT TTC AAG GGA AGA CTT GGG ATT−3’ (配列番号18)(変異したコドンをボールドフェースで示す)および290 D207オーバーラップ 5’−AGG ATG GTC ATA ATC AAA GTC GG−3’ (配列番号19);フラグメントB:#313 Mut207 5’−CCG ACT TTG ATT ATG ACC ATC CTG TTG TCG TAG CAG AGA TTA AGA GAT GGG G−3’ (配列番号20)および#314 Mut4025’−CGA CAA TGT CAT GGT GGT CGA AAA AAT CAT GCT GTG CTC CGT ACG−3’ (配列番号21)。
【0124】
フラグメントAおよびBを等モル比で混合し、引き続いて外部のプライマーを使用して全長フラグメントを増幅した:#312 Mut176および#314 Mut402。前述したように鋳型LE399上でプライマー#296 Y402multi 5’−TTT CGA CCA CCA TGA CAT TGT CG−3’ (配列番号22)および#305 399Multi176 5’−TAT AGA TGA GGT TCA GCT TTC GGG−3’ (配列番号23)を使用してつくられたベクターPCRフラグメントとのマルチマー化反応において、このフラグメントを使用した。マルチマー化反応を引き続いてバシラス・ズブチリス(B. subtilis)の中に形質転換した。
【0125】
クローンを前述のアッセイにおいて安定性についてスクリーニングした。安定性が増加したいくつかのクローンにおけるLE493からの変異の存在を配列決定により確認した。
LE399をコードする鋳型をプライマー#312 Mut176および#314 Mut402を使用して増幅し、プライマー#296 Y402multiおよび#305 399Multi176を使用してLE399鋳型をPCR増幅して得られたベクターフラグメントとのマルチマー化反応において、生ずるPCRフラグメントを使用することによって、LE497を得た。
結果:
【0126】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
49、60、104、132、161、170、176、179、180、181、183、200、203、204、207、212、237、239、250、280、298、318、374、385、393、402、406、427、430、440、444、447、482のグループから選択される1または2以上の位置に変更を含んでなる親Termamyl様α−アミラーゼの変異体であって、ここで
(a) 1または2以上の変更は独立的に
(i) 前記位置を占めるアミノ酸から下流のアミノ酸の挿入、
(ii) 前記位置を占めるアミノ酸の欠失、または
(iii) 前記位置を占めるアミノ酸の異なるアミノ酸による置換、
であり、
(b) 変異体はα−アミラーゼ活性を有し、そして
(c) 各位置は配列番号8に示すアミノ酸配列を有する親Termamyl様α−アミラーゼのアミノ酸配列の位置に対応する、
親Termamyl様α−アミラーゼの変異体。
【請求項2】
変異体が下記の変異の1または2以上を有する、請求項1に記載の変異体:T49I;D60N;N104D;E132A、V、P;D161N;K170Q;K176R;G179N;K180T;A181N;D183N;D200N;X203Y;D204S;D207V、E、L、G;X212I;K237P;S239W;E250G、F;N280S;X298Q;L318M;Q374R;E385V;Q393R;Y402F;H406L、W;L427I;D430N;V440A;N444R、K;E447Q;Q482K、ここでナンバリングのために配列番号8を使用する。
【請求項3】
変異体が下記の変異を有する、請求項1または2に記載の変異体:
【化1】

【化2】

ここでナンバリングのために配列番号8を使用する。
【請求項4】
親Termamyl様α−アミラーゼがバシラス・リヘニフォルミス(B. licheniformis)(配列番号8)、バシラス・アミロリクファシエンス(B. amyloliquefaciens)(配列番号10)、バシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)(配列番号6)の株に由来する、請求項1〜3のいずれかに記載の変異体。
【請求項5】
親Termamyl様α−アミラーゼが下記のいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の変異体:LE174;LE174+G48A+T49I+G107A+I201F;LE174+M197L;LE174+G48A+T49I+G107A+M197L+I201F。
【請求項6】
変異体が下記の位置の1または2以上において変異されている、請求項1に記載の変異体:T51I;D62N;N106D;D134A、V、P;D163N;X172Q;K179R;G184N;K185T;A186N;D188N;D205N;M208Y;D209S;X212V、E、L、G;L217I;K242P;S244W;N255G、F;N285S;S303Q;X323M;D387V;N395R;Y404Y;H408L、W;X429I;D432N;V442A;X446R、K;X449Q、K;X484K、ここでナンバリングのために配列番号4(SP722)を使用する。
【請求項7】
変異体が下記の変異を有する、請求項1または6に記載の変異体:E21V+N285S;D134A+E212V;N255G+H408L+X429I;E212V+X323M;D62N+E212V+X323M;T51I+D134V+V442A;T51I+K179R+E212V+Y404F;D387V+N395R;N195F+X212V+K269S、ここでナンバリングのために配列番号4(SP722)を使用する。
【請求項8】
親Termamyl様α−アミラーゼがSP690(配列番号2);SP722 (配列番号4);AA560(配列番号12);#707α−アミラーゼ(配列番号13);KSM−AP1378から成る群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の変異体。
【請求項9】
親Termamyl様α−アミラーゼが下記のいずれかである、請求項1〜8のいずれかに記載の変異体:SP722+D183*+G184*;SP722+D183*+G184*+N195F;SP722+D183*+G184*+M202L;SP722+D183*+G184*+N195F+M202L;BSG+I181*+G182*;BSG+I181*+G182*+N193F;BSG+I181*+G182*+M200L;BSG+I181*+G182*+N193F+M200L;AA560+D183*+G184*;AA560+D183*+G184*+N195F;AA560+D183*+G184*+M202L;AA560+D183*+G184*+N195F+M202L。
【請求項10】
親Termamyl様α−アミラーゼが、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも約90%、なおより好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも97%、なおより好ましくは少なくとも99%の配列番号8に対する同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の変異体。
【請求項11】
親Termamyl様α−アミラーゼが、低い、好ましくは中程度の、より好ましくは高いストリンジェンシイの条件下に、配列番号7のアミノ酸配列とハイブリダイゼーションする核酸配列によりコードされる、請求項1〜10のいずれかに記載の変異体。
【請求項12】
変異体が、特に70〜120 ℃の高い温度および/またはpH 4〜6の低いpHにおいて、変更された安定性を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の変異体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体をコードするDNA配列を含んでなるDNA構築物。
【請求項14】
請求項13に記載のDNA構築物を保持する組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載のDNA構築物または請求項14に記載のベクターで形質転換された細胞。
【請求項16】
微生物、好ましくは細菌または真菌である、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
細胞がグラム陽性細菌、例えば、バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バシラス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・レンツス(Bacillus lentus)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus sterothermophillus)、バシラス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バシラス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・ラウツス(Bacillus lautus)またはバシラス・スリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)である、請求項16に記載の細胞。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体を含んでなる組成物。
【請求項19】
バシラス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus) (BSG)α−アミラーゼ、特にSP961を、特に1:10〜10:1、好ましくは1:2の比で、さらに含んでなる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組成物がグルコアミラーゼ、プルラナーゼおよび/またはフィターゼをさらに含んでなる、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体を含んでなる洗浄剤組成物。
【請求項22】
他の酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、他のデンプン分解酵素、グルコアミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、CGTアーゼ、マンナナーゼ、キチナーゼ、ラッカーゼおよび/またはセルラーゼをさらに含んでなる、請求項21に記載の洗浄剤組成物。
【請求項23】
澱粉を液化のための請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体または請求項18〜20のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項24】
エタノールを製造するための請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体または請求項18〜20のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項25】
洗浄および/または皿洗浄のための請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体または請求項18〜20のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項26】
繊維材料を洗浄するための請求項1〜12のいずれかに記載のα−アミラーゼ変異体または請求項18〜20のいずれかに記載の組成物の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【公開番号】特開2011−224015(P2011−224015A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−161957(P2011−161957)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2002−516073(P2002−516073)の分割
【原出願日】平成13年7月12日(2001.7.12)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】