説明

変速機のシフト装置

【課題】変速機のシフト装置の操作フィーリングを向上させ、部品を共用して製造コストを低下させる。
【解決手段】ハウジング10,11に回動及び軸線方向摺動可能に支持されたシフトアンドセレクトシャフト12に、ボス部30aとフォークシャフトを駆動するレバー先端部30bよりなるインナレバー30を固定し、回動自在に設けたインターロック部材14の回動をハウジングに設けた回り止め部材35により拘束する。ボス部30aの外周に形成したカム面31に、回り止め部材に摺動自在に設けた摺動ピン36の先端を弾性的に押圧し、インナレバー30の作動に節度を与えて操作フィーリングを向上させ、またカム面に整列して設けた複数のガイドプレート32により摺動ピンを案内し、インナレバーのレバー先端部を正しい軌跡に沿って移動させて、操作フィーリングの向上に対する悪影響をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに使用する変速機のシフト装置、特に作動が円滑でしかも部品点数が少ない変速機のシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに使用する変速機のシフト装置には、例えば特許文献1に示すようなものがある。これは図1〜図4に示す本発明と同様、ハウジング(10,11。本発明の図で付した符号を参考のために示す。以下同じ。)に回動及び軸線方向移動自在に支持されたシフトアンドセレクトシャフト(12)と、このシフトアンドセレクトシャフトに固定されたボス部(30a)とそれから半径方向に突出するレバー先端部(30b)よりなるインナレバー(30)と、それぞれシフトヘッド(21a,22a,23a)とシフトフォーク(1個のみを二点鎖線24で示す)が設けられた3本のフォークシャフト(21,22,23)と、インターロック部材(14)よりなるものである。各シフトヘッドにはそれぞれコ字状の切欠き(21b,22b,23b)が形成されている。板材をコ字状に折り曲げたインターロック部材は、その両側部に形成した穴をインナレバーの両側となるシフトアンドセレクトシャフトに軸線方向相対移動が拘束されて回動のみ自在に嵌合され、背部に形成した一定幅の開口部(14b)が主ハウジング(10)に固定された収納筒に軸線方向摺動自在に保持されたボール保持部材の円筒状の外周に係合されてハウジングに対する回動が拘束され、また両側部から回り止め部材と反対向きに延びる1対の爪部(14a)はレバー先端部の幅と実質的に同じ幅として内向きに折り曲げられ、互いに対向する各爪部の先端部の間には、多少の隙間をおいてインナレバーのレバー先端部が通過可能である。インナレバーのレバー先端部とインターロック部材の両爪部がシフトアンドセレクトシャフトと平行な一直線上に整列された状態では、インナレバー及びインターロック部材はシフトアンドセレクトシャフトとともに軸線方向に移動可能であるが、整列されていない状態ではこれらの部材の軸線方向移動は不能である。
【0003】
この特許文献1に示す変速機のシフト装置は、図1〜図4に示す本発明と同様、手動の変速レバーにより、シフトアンドセレクトシャフト及びそれに固定されたインナレバーを軸線方向にセレクト運動させてから回動方向にシフト運動させ、先ずシフトヘッドを設けた複数のフォークシャフトからセレクト運動により1本のフォークシャフトを選択し、次いで選択したフォークシャフトをシフト運動により軸線方向に移動することにより、各フォークシャフトに設けたシフトフォークによりシンクロナイザ機構のクラッチハブスリーブを摺動させて各変速段を形成するものである。
【0004】
この特許文献1に示す変速機のシフト装置は、図1〜図4に示す本発明とは異なる構造の、転動カム部とコイルばねにより付勢されたロックボールよりなるボールロック機構を備えている。特許文献1の転動カム部はインナレバーのボス部(30a)の外周から盛り上がるように形成され、シフトアンドセレクトシャフト(12)の軸線と平行に形成された3本の浅い案内溝を有し、そのうちの両側となる各案内溝にはそれぞれ3個のディンプル(凹部)が形成されている。ロックボールは、主ハウジングにねじ込み固定した収納筒内に軸線方向摺動自在に嵌合されてコイルばねにより付勢されたボール保持部材の先端に回転自在に保持されて転動カム部に弾性的に押圧され、ロックボールが転動カム部の3本の浅い案内溝の間の突条を乗り越えることにより、シフトアンドセレクトシャフトのシフト方向の回動に節度が与えられ、また各シフト完了位置では各ディンプルによりガタを抑制することができるので、変速操作時の操作フィーリングを向上させることができる。
【0005】
しかしながらこの特許文献1では、セレクト運動の際にインナレバーを案内する案内溝は浅いので、ロックボールは必ずしも正確に案内溝の中心に沿っては導かれず、インナレバーがシフト方向に多少回動することは避けられず、またシフト運動の際にインナレバーがセレクト方向に移動することも避けられない。このためセレクト運動及びシフト運動の際にインナレバーのレバー先端部が各シフトヘッドに不規則に接触して抵抗が生じることが避けられないので、変速操作時の操作フィーリングの向上に悪影響を受ける。このような問題を解決する手段としては、特許文献2に示すシフトガイド機構がある。これはハウジングに固定されてシフトアンドセレクトシャフトに向かって延びるガイドピンと、インナレバーのボス部の一側に設けられた円弧部から径方向に突設された6本の突起部により構成されている。各突起部は円周方向に細長く、円周方向及び軸線方向にガイドピンがわずかの余裕を残して通過可能な隙間をおいて、円周方向に2列、軸線方向に3列となるように整列して配置されている。このようなシフトガイド機構によれば、シフトアンドセレクトシャフトのセレクト方向の移動及びシフト方向の回動の際に、ガイドピンが各突起部により案内されて正しい軌跡上を正確に移動し、セレクト運動の際にインナレバーがシフト方向に回動したり、シフト運動の際にインナレバーがセレクト方向に移動したりすることはないので、変速操作時の操作フィーリングの向上に悪影響を受けることがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−216603号公報(段落〔0017〕〜〔0026〕、図1〜図5)
【特許文献2】特開2008−032167号公報(段落〔0027〕〜〔0030〕、図3〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の技術に特許文献2の技術を適用すれば、シフトアンドセレクトシャフトの作動に節度が与えられ、各シフト位置では各ディンプルによりガタを抑制することができるのに加え、シフトアンドセレクトシャフトのセレクト運動及びシフト運動の際に、インナレバーがシフト方向に回動したりセレクト方向に移動したりすることはないので、変速操作時の操作フィーリングを向上させることができ、しかもこの操作フィーリングの向上に悪影響を受けることがなくなる。しかしながら特許文献1の技術と特許文献2の技術の組み合わせでは、使用するボールロック機構及びシフトガイド機構は互いに独立した2つの機構を別々に必要とするので、部品点数が増大して構造が複雑になり、製造コストが増大するという問題がある。本発明はこのような2つの機構の部品を共用化することにより部品点数を少なくして、変速操作時の操作フィーリングを向上させることができ、この向上に悪影響を受けることがなく、しかも部品点数が少ないので、構造簡単で製造コストが低い変速機のシフト装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明による変速機のシフト装置は、各変速ギヤの回転中心軸線と平行に中立位置及びそれから片側または両側に所定距離離れた2位置または3位置の間で移動可能にハウジングに支持されて変速ギヤを選択的に切り換える複数のシフトフォークと、この各シフトフォークとともに移動され多少の隙間をおいて移動方向と直交する方向に所定の重合ピッチで重ね合わされたそれぞれ同じ厚さの先端部を有する複数のシフトヘッドと、この各シフトヘッドの先端部にそれぞれ形成されて各シフトヘッドが何れも中立位置にある状態では互いに重合するように整列されるコ字状の切欠きと、各シフトヘッドの移動方向と直交するようにハウジングに回動及び軸線方向摺動可能に支持されたシフトアンドセレクトシャフトと、このシフトアンドセレクトシャフトに固定されたボス部とその外周から半径方向に突出して各切欠き内に係合可能なレバー先端部よりなるインナレバーと、コ字形断面形状でその両側部がシフトアンドセレクトシャフトのインナレバーのボス部の軸線方向両側部に回動のみ自在に支持され背部に形成された一定幅の開口部内にハウジングに固定された回り止め部材の外周が実質的に隙間なく摺動可能に係合されてハウジングに対し廻り止めされたインターロック部材と、このインターロック部材の両側部から回り止め部材と逆向きに延びてインナレバーのレバー先端部に接近するように折曲されレバー先端部の幅と実質的に同じ幅として各切欠き内に係合可能とした爪部と、インナレバーのボス部の回り止め部材側となる外周に形成されたカム面と、回り止め部材に同軸的に形成された案内孔に軸線方向摺動自在に支持されスプリングによりインナレバー側に付勢されて先端がカム面に当接される摺動ピンよりなる変速機のシフト装置において、カム面には、半径方向に突出して一体的に設けられて円周方向に延び、摺動ピンあるいはこれを摺動自在に囲むように回り止め部材の先端からインナレバー側に突出する円筒状の突出部がわずかの余裕を残して通過可能な隙間をおいて円周方向及び軸線方向に整列して配置された複数のガイドプレートを形成するとともに、複数のガイドプレートの間の隙間に沿ってボス部の軸線方向に延びる第1凹溝とこれと直交する方向に延びる第2凹溝を形成してこの両凹溝が互いに交叉する位置に深さが最大となる最深凹所を形成し、カム面のボス部の中心線を含み第1凹溝の中央を通る断面の形状は、ボス部の中心線と直交し第2凹溝の中央を通る面に対し対称形で、ボス部の中心線からカム面までの半径方向長さは、第2凹溝からの軸線方向距離が増大するにつれて増大して、各シフトヘッドの板状の各先端部の間の重合ピッチに達する前に最大値となる形状とし、カム面のボス部の中心線と直交する任意の断面の形状は、ボス部の中心線を含み第1凹溝の中央を通る面に対し対称形で、ボス部の回転中心線からカム面までの半径方向長さは、第1凹溝からの円周方向に沿った角度が増大するにつれて増大してインナレバーの片側の全回動範囲の中間部において最大となり、それを越えれば再び減少する形状としたことを特徴とするものである。
【0009】
前項に記載の変速機のシフト装置において、カム面には第2凹溝から重合ピッチだけボス部の軸線方向に離れた位置に、第1凹溝と直交する方向に延びる第3凹溝をさらに形成し、この両凹溝が互いに交叉する位置に第1及び第2凹溝の交叉位置に形成される最深凹所より浅い局部的凹所を形成することが好ましい。
【0010】
前2項に記載の変速機のシフト装置において、ボス部の軸線方向で異なる位置におけるカム面の軸線方向と直交する2つの断面の間では、第1凹溝から円周方向に離れる角度が同一である各位置におけるインナレバーの回転中心線からの半径方向長さの差は実質的に同一とすることが好ましい。
【0011】
前3項に記載の変速機のシフト装置において、摺動ピンは、その大部分を構成するピン本体とそのカム面側となる先端部に突出して回動自在に保持されたボールよりなり、このボールを介して摺動ピンをカム面に弾性的に押圧することが好ましい。
【0012】
請求項1〜3に記載の変速機のシフト装置において、摺動ピンは一体的に形成してそのカム面側となる先端部を半球状に形成し、この半球状の先端部を介して摺動ピンをカム面に弾性的に押圧してもよい。
【0013】
前各項に記載の変速機のシフト装置において、案内孔は回り止め部材及びその突出部を同軸的に貫通して形成し、案内孔に支持された摺動ピンは案内孔のカム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装したスプリングによりカム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列してカム面に設けられた複数のガイドプレートは、突出部がわずかな余裕をもってボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置することが好ましい。
【0014】
請求項1〜5に記載の変速機のシフト装置において、回り止め部材は突出部を取り除いて案内孔を同軸的に貫通して形成し、案内孔に支持された摺動ピンは案内孔のカム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装したスプリングによりカム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列してカム面に設けられた複数のガイドプレートは、摺動ピンがわずかな余裕をもってボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置してもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述したような請求項1の発明によれば、各変速段を形成していない状態では、インナレバーは、軸線方向に延びる第1凹溝とこれと直交する第2凹溝の交叉位置である最深凹所が、軸線方向摺動自在に支持されてスプリングにより軸線方向に付勢された摺動ピンの先端により押圧される基本位置にある。この状態からインナレバーをシフトアンドセレクトシャフトとともに軸線方向に移動すれば、摺動ピンは先端部が第1凹溝に沿って移動し、スプリングの付勢力に抗して押し戻されるので、シフトアンドセレクトシャフトには抵抗力が生じる。しかしこの抵抗力はインナレバーが軸線方向に移動するにつれて減少し、インナレバーのレバー先端部が隣のシフトヘッドの先端部の切欠きに完全に係合する前に0となるので、シフトアンドセレクトシャフトの動きにレバー先端部が隣のシフトヘッドの切欠きに係合されたことを示す節度が与えられる。レバー先端部が何れか1つのシフトヘッドの切欠きに完全に係合された状態で、インナレバーを中立位置から回動すれば、軸線方向と直交する方向のカム面の断面形状によりその片側の全回動範囲の中間部までは中立位置に戻ろうとする力が作用するが、それを越えれば外向きに回動させる力となり、各シフト完了位置ではストッパに当接されて停止されるので、シフト運動に節度が与えられ、またシフト完了後のガタはより確実に抑制されて、変速機のシフト装置の操作フィーリングを向上させることができる。
【0016】
また請求項1の発明では、カム面には、上述のように半径方向に突出して一体的に設けられて円周方向に延び、円周方向及び軸線方向に整列して配置された複数のガイドプレートを形成し、シフトアンドセレクトシャフトの回動及び軸線方向移動の際に、回り止め部材に同軸的に軸線方向摺動自在に支持されスプリングにより付勢されて先端がカム面に当接される摺動ピンあるいはこれを摺動自在に囲むように回り止め部材の先端からインナレバー側に突出する円筒状の突出部は複数のガイドプレートにより案内される。これにより摺動ピンあるいはこれを囲む円筒状の突出部は正しい軌跡上を移動してそれから外れることはなく、セレクト運動の際にインナレバーがシフト方向に回動したり、シフト運動の際にインナレバーがセレクト方向に移動したりすることはないので、前述した変速操作時の操作フィーリングの向上に悪影響を受けることはなくなる。
【0017】
さらにこの請求項1の発明によれば、ガイドプレートをカム面上に形成しているのでガイドプレートを設けるための部材を新たに設ける必要はなく、ボールロック機構の摺動ピンあるいは回り止め部材の突出部をシフトガイド機構のガイドピンとして共用したので部品点数を少なくして構造を簡略化し、製造コストを低下させることができる。
【0018】
カム面には第2凹溝から重合ピッチだけボス部の軸線方向に離れた位置に、第1凹溝と直交する方向に延びる第3凹溝をさらに形成し、この両凹溝が互いに交叉する位置に第1及び第2凹溝の交叉位置に形成される最深凹所より浅い局部的凹所を形成した請求項2の発明によれば、インナレバーが基本位置から軸線方向に移動してレバー先端部が隣のシフトヘッドと係合したときに与えられる節度はより確実なものになり、これに加え反対側からそのシフトヘッドと係合したときにも節度が与えられるので変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0019】
ボス部の軸線方向で異なる位置におけるカム面の軸線方向と直交する2つの断面の間では、第1凹溝から円周方向に離れる角度が同一である各位置におけるインナレバーの回転中心線からの半径方向長さの差は実質的に同一とした請求項3の発明によれば、どのセレクト位置でシフトを行った場合でも、ほゞ同じシフトフィーリングを得ることができる。
【0020】
摺動ピンは、その大部分を構成するピン本体とそのカム面側となる先端部に突出して回動自在に保持されたボールよりなり、このボールを介して摺動ピンをカム面に弾性的に押圧するようにした請求項4の発明によれば、摺動ピンの先端部とカム面の間の摩擦抵抗が減少するので、変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0021】
摺動ピンは一体的に形成してそのカム面側となる先端部を半球状に形成し、この半球状の先端部を介して摺動ピンをカム面に弾性的に押圧した請求項5の発明によれば、構造が簡略化されるので、その分だけ製造コストを低下させることができる。
【0022】
案内孔は回り止め部材及びその突出部を同軸的に貫通して形成し、案内孔に支持された摺動ピンは案内孔のカム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装したスプリングによりカム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列してカム面に設けられた複数のガイドプレートは、突出部がわずかな余裕をもってボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置した請求項6の発明によれば、摺動ピンを摺動自在に支持する案内孔の長さが長くなるとともに、案内の際にガイドプレートから受ける力は突出部から直接回り止め部材に伝達されて摺動ピンに横向きのスラスト力が加わることはなく、これにより摺動ピンの摺動が円滑になるので、変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0023】
回り止め部材は突出部を取り除いて案内孔を同軸的に貫通して形成し、案内孔に支持された摺動ピンは案内孔のカム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装したスプリングによりカム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列してカム面に設けられた複数のガイドプレートは、摺動ピンがわずかな余裕をもってボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置した請求項7の発明によれば、突出部を取り除いた分だけ摺動ピンの径を太くすることができ、あるいは各ガイドプレートの厚さを厚くすることができるので、摺動ピンまたはガイドプレートあるいはこの両者の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による変速機のシフト装置の第1実施形態の要部を示すシフトアンドセレクトシャフトに沿った長手方向断面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図1の4−4断面図である。
【図5】本発明による変速機のシフト装置の第2実施形態の要部の一部を示す部分断面図である。
【図6】図5の6−6断面図である。
【図7】図5の7−7断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、図1〜図4により、本発明による変速機のシフト装置の第1実施形態の説明をする。主として図1に示すように、互いに一体的に固定された主ハウジング10及び副ハウジング11よりなるハウジングには、シフトアンドセレクトシャフト12、インナレバー30、インターロック部材14、フォークシャフト21,22,23、シフトヘッド21a,22a,23a、回り止め部材35などが設けられている。
【0026】
一端にシフトヘッド21a,22a,23aが、他端にシンクロメッシュ機構(図示省略)のクラッチハブスリーブと係合して変速歯車の切り換えを行うシフトフォーク24(3個のうち1個のみを二点鎖線で示す)が固定された3本のフォークシャフト21,22,23は、変速歯車及びクラッチハブスリーブを設けた変速軸の中心軸線Oと平行に、中立位置及びそれから両側に所定距離離れた3位置の間で軸線方向移動可能に支持されている。各シフトヘッド21a,22a,23aは互いにほゞ平行となるようにシフトアンドセレクトシャフト12の方向に延び、各先端部は厚さ及び幅がほゞ同一で、多少の隙間をあけて所定の重合ピッチで、フォークシャフト21,22,23の軸線方向に相対移動可能に重ね合わされている。各先端部にそれぞれ形成されたコ字状の切欠き21b,22b,23bは、フォークシャフト21,22,23が何れも中立位置にある状態では、板状の各先端部と直交する方向から見て互いに重合するように整列されている。各フォークシャフト21,22,23と直交するように、ブッシュ10a,11cを介してハウジング10,11に回動及び軸線方向摺動可能に支持されたシフトアンドセレクトシャフト12には、インナレバー30のボス部30aがスプライン係合されてノックピン11dにより固定され、このボス部30aには各シフトヘッド21a,22a,23a側に突出するレバー先端部30bが一体的に形成されている。レバー先端部30bは、厚さがシフトヘッド21a,22a,23aの各先端部の厚さとほゞ同じであり、各切欠き21b,22b,23b内に係合されるその外周は中心が同じ2つの円弧を有している。なお各フォークシャフト21,22,23の一部は、上述のように3位置の代わりに、中立位置及びその片側の2位置の間で移動可能に支持するようにしてもよい。
【0027】
副ハウジング11から外方に突出するシフトアンドセレクトシャフト12の一端部には、半径方向に突出するアウタレバー13の基端部がかしめなどにより固定されている。このアウタレバー13の先端部にはシフトアンドセレクトシャフト12と平行に延びるアウタレバーピン13aがかしめなどにより固定され、アウタレバー13はこのアウタレバーピン13aに連結されたシフトケーブル(図示省略)を介して手動の変速レバー(あるいは自動車の作動状態に応じて自動的に作動するアクチュエータ)により往復回動され、これによりシフトアンドセレクトシャフト12はシフト方向に往復回動される。
【0028】
インターロック部材14は厚い板材をコ字状に折り曲げたもので、インナレバー30のボス部30aの軸線方向厚さよりも大きい距離を隔てて互いに平行に形成された両側部に形成した穴をボス部30aの両側となるシフトアンドセレクトシャフト12に回動自在に嵌合することにより支持され、両側部の一方の内面をボス部30aの端面に当接させ、他方の内面をシフトアンドセレクトシャフト12に設けた止め輪12bに当接させることにより、インナレバー30に対する軸線方向相対移動は拘束されている。また主ハウジング10には円筒状の回り止め部材35がインナレバー30に向かうようにねじ込み固定され、インターロック部材14は、その背部に形成された一定幅の開口部14b内にこの回り止め部材35の外周が実質的に隙間なく摺動可能に係合されて、ハウジング10,11に対し廻り止めがされている。インターロック部材14の両側部から回り止め部材35と反対向きに延びる1対の爪部14aはレバー先端部30bの幅と実質的に同じ幅として内向きに折り曲げられ、互いに対向する各爪部14aの先端部の間には多少の余裕を持ってレバー先端部30bが通過可能な隙間が形成されている。各爪部14aとレバー先端部30bは、シフトアンドセレクトシャフト12と平行な一直線上に整列された状態では、各シフトヘッド21a,22a,23aが何れも中立位置にある状態で同じく一直線上に整列された各切欠き21b,22b,23b内に係合されて、シフトアンドセレクトシャフト12とともに軸線方向移動可能である。
【0029】
副ハウジング11の内部に位置するシフトアンドセレクトシャフト12の一部には円周方向に溝部12aが形成され、インターロック部材14よりもこの溝部12a側となるシフトアンドセレクトシャフト12に摺動自在に嵌合されたフランジカラー16は、インターロック部材14との間に介装した第1スプリング16により溝部12a側に向けて付勢され、自由状態ではシフトアンドセレクトシャフト12に設けた止め輪12cに当接して停止されている。またシフトアンドセレクトシャフト12は、アウタレバー13と反対側となる端部に形成された段部と主ハウジング10の間に介装された第2スプリング17により、アウタレバー13側に向けて付勢され、この第2スプリング17の付勢力は第1スプリング16の付勢力よりも小さく設定されている。従って、シフトアンドセレクトシャフト12及びインナレバー30は、自由状態では図1に示すように、フランジカラー16のフランジ面が副ハウジング11の内面に形成した内向きリブ11aの端面11bに当接する中間位置で停止され、この状態ではインナレバー30のレバー先端部30bは第1シフトヘッド21aの先端部のコ字形の切欠き21b内に係合されている。
【0030】
図1及び図4に示すように、副ハウジング11には溝部12aと対応する位置にシフトアンドセレクトシャフト12と直交するようにセレクト軸18が回動自在に支持されている。セレクト軸18には、副ハウジング11から突出する一端部に半径方向に突出するセレクトレバー19がかしめなどにより固定され、副ハウジング11内となる部分にはノックピンなどによりセレクトアーム20が固定されて、その先端部20aはシフトアンドセレクトシャフト12の溝部12aに係合されている。セレクトレバー19の先端部にはセレクト軸18と平行に延びるセレクトレバーピン19aがかしめなどにより固定され、セレクトレバー19はこのセレクトレバーピン19aに連結されたセレクトケーブル(図示省略)を介して手動の変速レバーあるいは自動車の作動状態に応じて自動的に作動するアクチュエータにより往復回動され、これによりシフトアンドセレクトシャフト12は、インナレバー30のレバー先端部30bが第1シフトヘッド21aの切欠き21bに係合される第1位置と、第2シフトヘッド22aの切欠き22bに係合される第2位置と、第3シフトヘッド23aの切欠き23bに係合される第3位置との間で軸線方向に往復動される。
【0031】
次に図1〜3により、インナレバー30に設けられるカム面31及びガイドプレート32と、回り止め部材35に設けられてカム面31を弾性的に押圧する摺動ピン36の説明をする。インナレバー30の回り止め部材35側となる外周にはボス部30aから盛り上がるようにカム面31が形成され、このカム面31には4個のガイドプレート32が設けられている。またこの第1実施形態の回り止め部材35にはインナレバー30側となる先端に突出部35bが設けられ、回り止め部材35及び突出部35bを同軸的に貫通して突出部35b側の方が細い段付きの案内孔35aが形成されている。この案内孔35aに軸線方向摺動自在に支持された摺動ピン36は、その大部分を構成するピン本体36aとそのカム面31側となる一端部に突出して回動自在に保持されたボール36bにより構成されている。摺動ピン36は、ピン本体36aの他端部に形成した小さい頭部とカム面31と反対側となる案内孔35aの一端にねじ込まれてこれを閉じる栓部材37との間に介装したスプリング38によりインナレバー30側に付勢されて、先端のボール36bを介してカム面31を弾性的に押圧している。
【0032】
カム面31に設けられる4個のガイドプレート32は半径方向に突出して一体的に形成されて円周方向に延び、摺動ピン36を囲むように回り止め部材35の先端からインナレバー30側に突出する円筒状の突出部35bがわずかの余裕を残して通過可能な隙間をおいて、円周方向及び軸線方向に整列して配置されている。このようにすれば、シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向セレクト運動及び回動方向シフト運動に際して、突出部35bは4個のガイドプレート32に案内されて移動し、その軌跡は狭い幅内に規制されてガタが抑制されるので、シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向のセレクト運動及び回動方向のシフト運動はガタを生じることなく円滑に行われる。この第1実施形態では、このようなガイドプレート32と突出部35bが、変速操作の際に操作フィーリングを向上させるシフトガイド機構を構成している。
【0033】
カム面31には、複数のガイドプレート32の間の隙間の中央に沿ってボス部30aの軸線方向に延びる第1凹溝31aと、これと直交する方向に延びる第2凹溝31bが形成され、この両凹溝31a,31bが互いに交叉する位置には深さが最大となる最深凹所が形成されている。カム面31のボス部30aの中心線を含み第1凹溝31aの中央を通る断面の形状は、ボス部30aの中心線と直交し第2凹溝31bの中央を通る面に対し対称形であり、ボス部30aの回転中心線からカム面31までの半径方向長さは、第2凹溝31bからの軸線方向距離が増大するにつれて増大して、各シフトヘッド21a,22a,23aの板状の各先端部の間の重合ピッチに達する前に最大値となる形状である。一方、カム面31のボス部30aの中心線と直交する任意の断面の形状は、ボス部30aの中心線を含み第1凹溝31aの中央を通る面に対し対称形であり、ボス部30aの回転中心線からカム面31までの半径方向長さは、第1凹溝31aからの円周方向に沿った角度が増大するにつれて増大してインナレバー30の片側の全回動範囲の中間部において最大となり、それを越えれば再び減少する形状である。またボス部30aの軸線方向で異なる位置におけるカム面31の軸線方向と直交する2つの断面の間では、第1凹溝31aから円周方向に離れる角度が同一である各位置におけるインナレバー30の回転中心線からの半径方向長さの差は実質的に同一である。これにより、第1及び第2凹溝31a,31bの各位置における深さは、図1及び図2に示すように、ほゞ同一となる。
【0034】
次に図1〜図4に示す変速機のシフト装置の作動の説明をする。図に示すように、回り止め部材35に軸線方向摺動自在に支持されてスプリング38により軸線方向に付勢された摺動ピン36の先端が、軸線方向に延びる第1凹溝31aとこれと直交する第2凹溝31bが交叉する最深凹所を押圧している状態では、インナレバー30は、レバー先端部30bが第1フォークシャフト21の切欠き21bに係合され、各変速段が形成されていない基本位置にある。この状態では、各フォークシャフト21,22,23は何れも、それぞれのシフトヘッド21a,22a,23aの切欠き21b,22b,23bがインターロック部材14の爪部14aと重なるよう整列される中立位置にあり、インナレバー30はそのレバー先端部30bが第1シフトヘッド21aの切欠き21bと係合する第1位置にセレクトされている。この状態からアウタレバー13によりインナレバー30を図1の右側から見て時計回転方向に回動すれば、シフトアンドセレクトシャフト12及びインナレバー30も同じ向きに回動されて、第1シフトヘッド21a及び第1フォークシャフト21は図1の手前向きに移動され、それに設けられたシフトフォーク及びクラッチハブスリーブを介して第1の変速段が形成される。この状態におけるカム面31に対する突出部35bの位置は、図3の二点鎖線6Xで示される通りであり、ボス部30aの軸線方向に並んだ2つのガイドプレート32の間にわずかの余裕をおいて挟まれているので、インナレバー30はシフト運動の際にセレクト方向に移動することはなく、正しい軌跡上を正確に移動する。この状態から、前述と逆にインナレバー30を反時計回転方向に回動すれば、第1シフトヘッド21a及び第1フォークシャフト21は図1の奥向きに移動され、突出部35bはカム面31の第1凹溝31aを横切って円周方向の反対側に移り、第1フォークシャフト21に設けられたシフトフォーク24及びクラッチハブスリーブを介して第2の変速段が形成される。
【0035】
インナレバー30のレバー先端部30bをインターロック部材14の爪部14aの間となる中立位置に戻して、セレクトレバー19を反時計回転方向に回動すれば、シフトアンドセレクトシャフト12及びインナレバー30は図1において左向きに移動され、インターロック部材14の左側部が主ハウジング10の内端面10bに当接して停止され、インナレバー30はそのレバー先端部30bが第2シフトヘッド22aの切欠き22bと係合する第2位置にセレクトされる。このインナレバー30の左向きセレクト運動の際には、インナレバー30のレバー先端部30bは、ボス部30aの軸線方向と直交する方向に並んだ2つのガイドプレート32の間をわずかの余裕をおいて通るので、シフト方向に回動することはなく、正しい軌跡上を正確に移動する。この状態で、前述と同様、インナレバー30を時計回転方向に回動すれば、第2シフトヘッド22a及び第2フォークシャフト22は図1の手前向きに移動されて第3の変速段が形成され、逆向きに回動すれば、同様にして第4の変速段が形成され、突出部35bはカム面31の第1凹溝31aを横切って円周方向の反対側に移り、各ガイドプレート32に対し二点鎖線6Yで示す位置に移る。この際には、片側のガイドプレート32との間にはわずかの余裕しかないので、レバー先端部30bがその側に移動することはない。ガイドプレート32は片側にしかないので、突出部35bは反対側に移動することは可能であるが、その側にはレバー先端部30bが係合すべき切欠き21b,22b,23bを備えたシフトヘッド21a,22a,23aは存在しないので、たとえ移動したとしても、レバー先端部30bがそのような部材に接触して操作フィーリングの向上に悪影響を与えることはない。
【0036】
またインナレバー30のレバー先端部30bがインターロック部材14の爪部14aの間となる中立位置から、セレクトレバー19を時計回転方向に回動すれば、インナレバー30は図1において右向きに移動され、インターロック部材14の右側部がフランジカラー15の先端に当接して停止されて、インナレバー30はそのレバー先端部30bが第3シフトヘッド23aの切欠き23bと係合する第3位置にセレクトされる。そして前述と同様、インナレバー30を時計回転方向に回動すれば、第3シフトヘッド23a及び第3フォークシャフト23が移動されて第5の変速段が形成され、インナレバー30を反時計回転方向に回動すれば、第3シフトヘッド23a及び第3フォークシャフト23が逆向きに移動されて第6の変速段が形成される。これら第1〜第6の変速段は、前進の各変速段及び後進段を含んでいる。
【0037】
上述した第1実施形態によれば、インナレバー30が基本位置にあり、各変速段を形成していない状態では、スプリング38により軸線方向に付勢された摺動ピン36の先端は、互いに直交する第1凹溝31aと第2凹溝31bが交叉する最深凹所を押圧しているので、インナレバー30はその位置に安定して保持されている。この状態からシフトアンドセレクトシャフト12とともにインナレバー30を軸線方向に移動すれば、摺動ピン36は先端部が第1凹溝31aに沿って移動し、スプリング38の付勢力に抗して押し戻されるので、シフトアンドセレクトシャフト12には抵抗力が生じる。しかしこの抵抗力はインナレバー30が軸線方向に移動するにつれて減少し、インナレバー30のレバー先端部30bが隣のシフトヘッド22aの先端部の切欠き22bに完全に係合する前に0となるので、シフトアンドセレクトシャフト12の動きにレバー先端部30bが隣のシフトヘッド21aの切欠き21bに係合されたことを示す節度が与えられる。また、レバー先端部30bが何れか1つのシフトヘッド21aの切欠き21bに完全に係合された状態で、インナレバー30を中立位置から回動すれば、軸線方向と直交する方向のカム面31の断面形状によりその片側の全回動範囲の中間部までは中立位置に戻ろうとする力が作用するが、それを越えれば外向きに回動させる力となり、各シフト完了位置ではストッパに当接されてその位置に保持されるので、シフト運動には節度が与えられ、またシフト完了後のガタはより確実に抑制される。従って、変速操作の際の操作フィーリングを向上させることができる。
【0038】
上述した変速操作の際に、回り止め部材35から同軸的に突出する円筒状の突出部35bは複数のガイドプレート32により案内され、上述のように突出部35bは正しい軌跡上を移動しそれより外れることはなく、従ってインナレバー30のレバー先端部30bが周囲の部材と接触することもないので、インナレバー30の移動は円滑になり、変速操作時の操作フィーリングの向上に悪影響を受けることはなくなる。
【0039】
またこの第1実施形態では、ガイドプレート32をカム面31上に形成しているのでガイドプレート32を設けるための部材を新たに設ける必要はなく、回り止め部材35の突出部35bをシフトガイド機構のガイドピンとして共用したので部品点数を少なくして構造を簡略化し、製造コストを低下させることができる。
【0040】
また上述した第1実施形態では、カム面31のボス部30aに対する軸線方向位置が異なる軸線方向と直交する2つの断面の間では、第1凹溝31aから円周方向に離れる角度が同一となる各位置におけるインナレバー30の回転中心線からの半径方向長さの差が実質的に同一となるようにしており、このようにすればどのセレクト位置でシフトを行った場合でも、ほゞ同じシフトフィーリングを得ることができる。
【0041】
また上述した第1実施形態では、摺動ピン36は、その大部分を構成するピン本体36aとそのカム面31側となる先端部に突出して回動自在に保持されたボール36bよりなり、このボール36bを介して摺動ピン36をカム面31に弾性的に押圧するようにしており、このようにすれば、摺動ピン36の先端部とカム面31の間の摩擦抵抗が減少するので、変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0042】
また上述した第1実施形態では、案内孔35aは回り止め部材35及び突出部35bを同軸的に貫通して形成し、案内孔35aに支持された摺動ピン36は案内孔35aのカム面31と反対側となる一端を閉じる栓部材37との間に介装したスプリング38によりカム面31に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列してカム面31に設けたられた複数のガイドプレート32は、突出部35bがわずかな余裕をもってボス部30a,30Aaの円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置しており、このようにすれば、摺動ピン36を摺動自在に支持する案内孔35aの長さが長くなるとともに、案内の際にガイドプレート32から受ける力は突出部35bから直接回り止め部材35に伝達されて摺動ピン36に横向きのスラスト力が加わることはなく、これにより摺動ピン36の摺動が円滑になるので、変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0043】
次に図5〜図7により、本発明による変速機のシフト装置の第2実施形態の説明をする。この第2実施形態は、第1実施形態のカム面31に第3凹溝31cを加え、回り止め部材35の先端の突出部35bを除き、摺動ピン36からその先端のボール36bを除いたものであるので主としてこの相違点につき説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0044】
図5〜図7に示すように、この第2実施形態のインナレバー30Aのカム面31Aには、第1実施形態のガイドプレート32と同様の4個のガイドプレート32Aが設けられ、また第2凹溝31bの中央から軸線方向で両側に、各シフトヘッド21a,22a,23aの各先端部の間の重合ピッチだけ離れた位置に、第1凹溝31aと直交する方向に延びる第3凹溝31cが形成されている。この両凹溝31a,31cが互いに交叉する位置には、第1及び第2凹溝31a,31bの交叉位置に形成される最深凹所より浅い局部的凹所が形成されている。これにより、インナレバー30が基本位置から軸線方向に移動してレバー先端部30bが隣のシフトヘッド22aと係合したときに与えられる節度はより確実なものになり、これに加え反対側からそのシフトヘッド22aと係合したときにも節度が与えられるので変速操作時の操作フィーリングをさらに向上させることができる。
【0045】
この第2実施形態の回り止め部材35Aからは突出部35bが取り除かれ、第1実施形態と同様の段付の案内孔35Aaは回り止め部材35Aを同軸的に貫通して形成されている。この案内孔35Aaに軸線方向摺動自在に支持された摺動ピン36Aは全体が一体的に形成されてそのカム面31A側となる一端部は半球状に形成され、第1実施形態と同様、他端部の小さい頭部とカム面31Aと反対側となる案内孔35aの一端にねじ込まれてこれを閉じる栓部材37Aとの間に介装したスプリング38Aによりインナレバー30側に付勢されて、半球状の先端部を介してカム面31Aを弾性的に押圧している。この第2実施形態では、摺動ピン36Aが複数のガイドプレート32Aによりわずかの余裕をおいて案内され、こけにより摺動ピン36Aは正しい軌跡上を移動しそれより外れることはなく、従ってインナレバー30のレバー先端部30bが周囲の部材と接触することもないので、インナレバー30の移動は円滑になり、変速操作時の操作フィーリングの向上に悪影響を受けることはなくなる。
【0046】
またこの第2実施形態では、回り止め部材35Aの先端の突出部35bは取り除かれ、これに対し、各シフトヘッド21a,22a,23aの板状の各先端部の間の重合ピッチは変わらないので、突出部35bを取り除いた分だけ摺動ピン36Aの径と各ガイドプレート32Aの厚さの両方あるいは一方の寸法を大きくすることができる。これにより摺動ピン36Aまたはガイドプレート32Aあるいはこの両者の強度を高めることができる。
【0047】
さらにこの第2実施形態では、摺動ピン36Aは一体的に形成してそのカム面31A側となる先端部を半球状に形成しており、構造が簡略化されるのでその分だけ製造コストを低下させることができる。
【0048】
上記各実施形態では、回り止め部材35には突出部35bを設け、摺動ピン36はピン本体36aとボール36bよりなるものとした組み合わせ、及び、回り止め部材35は突出部35bを取り除いたものとし、摺動ピン36は一体物とした組み合わせについて説明したが、回り止め部材35には突出部35bを設け、摺動ピン36は一体物とした組み合わせ、及び、回り止め部材35は突出部35bを取り除いたものとし、摺動ピン36はピン本体36aとボール36bよりなるものとした組み合わせも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…主ハウジング、11…副ハウジング、12…シフトアンドセレクトシャフト、14…インターロック部材、14a…爪部、14b…開口部、21a,22a,23a…シフトヘッド、21b,22b,23b…切欠き、24…シフトフォーク、30,30A…インナレバー、30a,30Aa…ボス部、30b…レバー先端部、31,31A…カム面、31a…第1凹溝、31b…第2凹溝、31c…第3凹溝、32,32A…ガイドプレート、35,35A…回り止め部材、35a,35Aa…案内孔、35b…突出部、36,36A…摺動ピン、36a…ピン本体、36b…ボール、37,37A…栓部材、38,38A…スプリング、O…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各変速ギヤの回転中心軸線と平行に中立位置及びそれから片側または両側に所定距離離れた2位置または3位置の間で移動可能にハウジングに支持されて前記変速ギヤを選択的に切り換える複数のシフトフォークと、この各シフトフォークとともに移動され多少の隙間をおいて移動方向と直交する方向に所定の重合ピッチで重ね合わされたそれぞれ同じ厚さの先端部を有する複数のシフトヘッドと、この各シフトヘッドの先端部にそれぞれ形成されて各シフトヘッドが何れも前記中立位置にある状態では互いに重合するように整列されるコ字状の切欠きと、前記各シフトヘッドの移動方向と直交するように前記ハウジングに回動及び軸線方向摺動可能に支持されたシフトアンドセレクトシャフトと、このシフトアンドセレクトシャフトに固定されたボス部とその外周から半径方向に突出して前記各切欠き内に係合可能なレバー先端部よりなるインナレバーと、コ字形断面形状でその両側部が前記シフトアンドセレクトシャフトの前記インナレバーのボス部の軸線方向両側部に回動のみ自在に支持され背部に形成された一定幅の開口部内に前記ハウジングに固定された回り止め部材の外周が実質的に隙間なく摺動可能に係合されて前記ハウジングに対し廻り止めされたインターロック部材と、このインターロック部材の両側部から前記回り止め部材と逆向きに延びて前記インナレバーのレバー先端部に接近するように折曲され前記レバー先端部の幅と実質的に同じ幅として前記各切欠き内に係合可能とした爪部と、前記インナレバーのボス部の前記回り止め部材側となる外周に形成されたカム面と、前記回り止め部材に同軸的に形成された案内孔に軸線方向摺動自在に支持されスプリングにより前記インナレバー側に付勢されて先端が前記カム面に当接される摺動ピンよりなる変速機のシフト装置において、
前記カム面には、半径方向に突出して一体的に設けられて円周方向に延び、前記摺動ピンあるいはこれを摺動自在に囲むように前記回り止め部材の先端から前記インナレバー側に突出する円筒状の突出部がわずかの余裕を残して通過可能な隙間をおいて円周方向及び軸線方向に整列して配置された複数のガイドプレートを形成するとともに、前記複数のガイドプレートの間の隙間に沿って前記ボス部の軸線方向に延びる第1凹溝とこれと直交する方向に延びる第2凹溝を形成してこの両凹溝が互いに交叉する位置に深さが最大となる最深凹所を形成し、
前記カム面の前記ボス部の中心線を含み前記第1凹溝の中央を通る断面の形状は、前記ボス部の中心線と直交し前記第2凹溝の中央を通る面に対し対称形で、前記ボス部の中心線からカム面までの半径方向長さは、前記第2凹溝からの軸線方向距離が増大するにつれて増大して、前記各シフトヘッドの板状の各先端部の間の重合ピッチに達する前に最大値となる形状とし、
前記カム面の前記ボス部の中心線と直交する任意の断面の形状は、前記ボス部の中心線を含み前記第1凹溝の中央を通る面に対し対称形で、前記ボス部の回転中心線から前記カム面までの半径方向長さは、前記第1凹溝からの円周方向に沿った角度が増大するにつれて増大して前記インナレバーの片側の全回動範囲の中間部において最大となり、それを越えれば再び減少する形状とした
ことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機のシフト装置において、前記カム面には前記第2凹溝から前記重合ピッチだけ前記ボス部の軸線方向に離れた位置に、前記第1凹溝と直交する方向に延びる第3凹溝をさらに形成し、この両凹溝が互いに交叉する位置に前記第1及び第2凹溝の交叉位置に形成される前記最深凹所より浅い局部的凹所を形成したことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変速機のシフト装置において、前記ボス部の軸線方向で異なる位置における前記カム面の前記軸線方向と直交する2つの断面の間では、前記第1凹溝から円周方向に離れる角度が同一である各位置における前記インナレバーの回転中心線からの半径方向長さの差は実質的に同一としたことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記摺動ピンは、その大部分を構成するピン本体とそのカム面側となる先端部に突出して回動自在に保持されたボールよりなり、このボールを介して前記摺動ピンを前記カム面に弾性的に押圧したことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記摺動ピンは一体的に形成してそのカム面側となる先端部を半球状に形成し、この半球状の先端部を介して前記摺動ピンを前記カム面に弾性的に押圧したことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記案内孔は前記回り止め部材及びその突出部を同軸的に貫通して形成し、前記案内孔に支持された摺動ピンは前記案内孔の前記カム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装した前記スプリングにより前記カム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列して前記カム面に設けられた前記複数のガイドプレートは、前記突出部がわずかな余裕をもって前記ボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置したことを特徴とする変速機のシフト装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の変速機のシフト装置において、前記回り止め部材は前記突出部を取り除いて前記案内孔を同軸的に貫通して形成し、前記案内孔に支持された摺動ピンは前記案内孔の前記カム面と反対側となる一端を閉じる栓部材との間に介装した前記スプリングにより前記カム面に向けて付勢し、円周方向及び軸線方向に整列して前記カム面に設けられた前記複数のガイドプレートは、前記摺動ピンがわずかな余裕をもって前記ボス部の円周方向及び軸線方向に通過可能な隙間をおいて配置したことを特徴とする変速機のシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19469(P2013−19469A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153144(P2011−153144)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】